姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」(96)
男「姉のコネによって無理やり入学させられたこの学校」
男「地元だが、国内屈指の珍学校でもある」
男「だって入学が12月だし。そっからもうおかしいだろ」
男「その学校の名は――」
姉「インターナショナル"帰宅"学園高等部っ!」
男「なんてこったい」
なんてこったい
・日をまたぎます。
・途中までしか書いてないので、そこまで投下して寝ます。
・初SSです。一応。
・質問は随時受け付けています。
・が、作者は残念ながら夜型ではないです。あしからず。
男「数時間前」
姉「あんたの入学が決まったから転学届出してきたわ」
男「……えっ?」
姉「あなたは私と同じ高校に入るの。オッケー?」
男「マジかよ……」
男「受験勉強捨ててて正解だったわ」
男「でも、インターナショナル帰宅ってそもそも何?」
姉「行ったら分かるわ。インターナショナルな帰宅ね」
男「いやいや何にも修飾されてないからそれ!」
姉「うちには公的なワークスチームもあるのよ」
男「いやいや、帰宅のワークスチームって何さ」
姉「要は主賓に認められてる協力母体ね」
男「帰宅に必要なのか、それ――?」
期待
姉「何言ってるの? 帰宅は過酷なんだよ!?」
姉「世界には舗装されてない帰宅路だってあるんだよ!」
姉「雨あり雪ありのサバイバル・ゲームなんだよっ!!」
姉「それを個人でやろうだなんて、実に滑稽だよ?!」
男「……そうかもな」トオイメ
姉「オッケー。これは私の命令よ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」
姉「帰宅部何個かと無所属しか無いのに!?」
姉「こんだけ帰宅制度が充実してるのに無所属だなんて――」
姉「就学支援金受け取れないし、第一滑稽だよ!!」
男「分かった分かった。じゃあ入部ってことで」
姉「大いに歓迎するよ。第二帰宅部へようこそ」
男「……第二?」
姉「第一帰宅部は、方針がクズなんだよね……」
男「第一なのにクズなんだ……」
姉「確かにその方針のお蔭で全国有数の実力なのは否めないけどね」
男「ランキングとかあるんだ」
姉「グローバルランキングだよ! 履歴書に書けるよっ!」
男「帰宅部から一般職種を目指すの!?」
姉「いんや、それはもうたぶん帰宅で食っていけるね」
男「帰宅ってそんなに世界的に認められてたんだ……」
姉「まぁ、世界大会だしね」
姉「ところで、第一帰宅部の方針は――」
姉「"実力の無い部員は即退部"だよ」
男「それ本当に帰宅部なの?!」
姉「信じられないでしょ。だから、あんたは第二ね」
男「そういうことなら……了解かな」
男「でも、帰宅の技能とか特に具えてないよ? 大丈夫?」
姉「本来は具えてなきゃキツいけど、まぁ大丈夫かな」
姉「私達が、全力でサポートしてあげるから!」
男「帰宅部なのに……」
姉「じゃあ、明日入学式だから。起こされるのを待ってね」
姉「翌朝のこと」
姉「おはよう、男!」
男「お、おはよう……」
姉「さぁ、登校するよっ! 早くっ!」
男「朝からはしゃぎすぎだろ……」
姉「登校は帰宅の準備だから!」キリッ
姉「そして学校にて」
学園長「インターナショナル帰宅学園へ、ようこそ」
学園長「一月までは帰宅の練習に勤しむように。以上」
男「えっ」
姉「あの人が学園長だね。高等部含む学園の長」
男「偉いだけにスピーチもエライ短かさだったね」
姉「……さて、部室に行こうか。みんなが待ってる」
男「部長は忙しいもんね、そうだよね」
姉「ここは第二帰宅部・部室」
男「殺風景だね。ディスカッションテーブルに椅子が4つしかない」
姉「本来ならあと二人は来るはずなんだけど……」
男「えっ、二人しか居ないの?」
姉「まぁ、うちの花形は第一帰宅部だからね……」
姉「少し事の経緯を話すよ」
姉「まず第一に、無理やり入部させちゃってごめん」
男「退学と入学もだな」
姉「それは、1月までに部員が4人は必要だったからなの」
男「たしかに、俺が居たほうが確実だな」
姉「たぶん、誰も入部しないし」ボソッ
姉「そして、この部活にはあんまり予算が無い」
姉「これは、第一帰宅部の方針とうちが違うからだね」
姉「多少出してもらってるだえでも万々歳だよ」
男「なかなか辛い現実だな」
姉「ちなみに、うちには借金もあるしね」
男「おい」
姉「まぁこんなところね。あっ、誰か来たわ!」
先輩「お疲れっすー」
姉「お疲れっすー。彼は同じく3年生の会長よ」
会長「会長です。趣味はナンパです。よろしくです」
男「こんなのが会長で大丈夫か!?」
姉「まぁ、だからホームルームが遅かったってのは、あるよね」
会長「まぁそう冷たくしないでくださいよ。君が噂の進入部員?」
男「はい。無理やり入部させられました男です」
会長「まぁ男性男子に興味は無いから心配なさるな」
男「えっ、誰かもう襲われたんですか!?」
会長「拉致なら一人」男「ないわー」
姉「ところで、会長含む私達はほとんど帰れないよ」
男「……世界大会、ですもんね。帰宅の」
会長「まぁ、世界紀行はなんだかんだ楽しいよ?」
姉「会長はどの言語でもナンパできるよね」
会長「Bien s?r! C'est un morceau de g?teau!」
姉「勿論!朝飯前だよ! だってさ」
男「誇っちゃうかそこ……」
みてる
男「ところで、あと一人が見当たらないね」
姉「んー、もうすぐ来ると思うけど――あっ」
少女「す、すみません……遅れました……っ」
会長「君のような可憐な華が、咲き遅れるなんてまた珍しい」
少女「……私、実は動物なんです」
姉「知ってた」
姉「紹介しよう。彼女は2年生の先輩で、うちのマネージャー」
先輩「新入部員の――男、さんですよね。よろしくお願いします」
男「よろしくお願いします」
会長「一通りメンバーも揃ったし、練習しようぜっ!」
姉「練習いいね練習! 行こう!」
先輩「あ、じゃあ私、事務室から鍵とってきますね」タッタッ
男「見知らぬ倉庫の前にて」
男「ここは何の倉庫?」
姉「第二帰宅部の備品倉庫だね」
男「帰宅部なのに、備品とかあるんだ……」
姉「ちなみに、第一帰宅部の備品は多すぎてここにはないよ」
男「? じゃあどこにあるの?」
姉「学校の裏の敷地の南側半分」
男「マジか……予算って大きいな」
姉「まぁ、予算の壁を覆すのが私達の仕事だよっ!」
会長「それに、現地人の手を借りるのも厭わないッ!!」
姉「いや、それはレギュレーションに抵触するからやめて」
会長「分かってますよ、そんなこと」
男「レギュレーションとかあるんか――」
姉「あるね。実はFIAっていう世界の組織が定義してるよ」
男「へぇ……あっ、先輩さんが来た」
先輩「お待たせしました。カギ開けますね」
会長「待ってました! さすが君臨した救世主っ!」
先輩「開きましたっ」
男「おおーっ……!!」
男「明らかに帰宅に使わないと思わしき自動車が2台」
男「それと、メモと落書きとノートが一杯……」
男「……って、どれが備品なの?」
会長「あなた、まさか、本気で言っているのですか?」
会長「このクルマですよォォっ!!!」
男「いや、こんな広告だらけの派手なのを、どうやって?」
姉「ねぇ、男? 一般的に車ってどうやって使うと思う?」
男「乗る、とか」
姉「そう。じゃあ私達も乗らなきゃ滑稽だよ!!」
男「えっ、じゃあ、帰宅部って何?」
先輩「……あの、っ、実はですね――」
先輩「帰宅部世界大会では、帰宅の早さを競うんです」
先輩「昔は、そうじゃなかったらしいんですけど、今は」
先輩「もっぱら帰宅の早さを競います。そして、車はその道具です」
男「……なるほど、合点がいった」
男「レースかなんかだな?」
先輩「えっ……知らないで入部したんですか……?」
男「そうです……けど、何か問題でしょうか」
姉「いや? まぁ問題ないんじゃない? 実践あるのみだよ」
男「そういうもんなのか……でも、免許持ってないぞ?」
姉「生徒手帳は帰宅競技において免許として使えるよ」
男「マジかっ!?」
姉「その代わりといっちゃナンだけど、一切の補填は効かないよ」
男「補填?」
会長「まぁ、帰宅は極めると危険ですからねー。死者も出る」
男「なんか怖いなぁ。それでも保険は降りないのかー」
会長「その代わり、警察にも基本は捕まらない」
姉「あっ、だから生徒手帳は大切に扱ってね!」
男「はーい」
姉「練習を始めよう! 私は男の同伴をするよ」
先輩「……よろしくお願いします、会長さん」
会長「そろそろ敬語は不要だよ?」
先輩「……行きましょう」
会長「なんか不憫だなー……もう一年来の付き合いなのに」
捕まんないなら入学したい()
姉「さぁ、男はとりあえず助手席に座って」
男「助手席……左側だよね」
姉「あぁ、ごめん。助手席は右側だよ」
男「……本当だ。じゃあ右に座るよ」
姉「じゃあ、シートベルトをやたらしっかり締めてね!」
男「なんかやたらしっかりしてるっ! 着け方が分からん!!」
姉「慣れるしかないね。6点式とか12点式とかが一般的だね」
男「やっぱり危ないのか?」
姉「やっぱりそこは切っても切れない縁だねー」
姉「森から野生動物! とかもザラだからね。仕方ない」
男「そこは『不運だった』で済ませられちゃうの?」
姉「そうだね。人為的じゃなかったら、大抵は」
男「人為的なのもあるんだね」
姉「あんまり無いかな」
男「無いんだ」
姉「観客が飛び出して! なんかもあったらしいね」
姉「ちなみにその扱いは『天災』だよ」
男「そんな……」
男「数分後」
姉「♪」
男「無作為の運転だけど、上手いね」
姉「何をもって上手いとしてるの?」
男「曲がるのがスムーズだし、なにより酔いづらいし」
姉「あははっ! それは嬉しいね! ありがとっ」
姉「本番はきっと酔うから、覚悟しときなよ」
男「……承知しました」
男「さらに数分後」
姉「オッケー。今日の調子は悪くないね」
男「何をもってのオッケーなんだ?」
姉「特に何も無いけどね。パイロンジムカーナは」
男「……憧れるよ」
姉「やる?」
男「……とりあえず、さわりだけ」
姉「さわりだけ教えるね。まず足元を見て」
姉「一番右はアクセル。踏むと加速してくれるよ」
姉「真ん中はブレーキ。こっちは踏むと減速するよ」
姉「最後に、左側はクラッチだけど……説明が難しいなぁ」
姉「次に、男の左にある棒のうち、奥の棒はギアボックス」
姉「これをいじるときには、クラッチを必ず踏んでね」
姉「ふふふ」
男「笑う要素あったか?」
姉「いいの。そして、手前にあるのはサイドブレーキね」
姉「曲げるためのブレーキだから、急旋回したいときに引くのよ」
姉「男の奥にあるのは計器類ね。中央にあるのはタコメーター」
姉「要は回転数を表示してるんだけど、赤ゾーンに入ったら」
姉「ギアボックスのギアをひとつ分上げてね。2なら3」
姉「ちなみに、この車はかなり回転力が強いわ。注意してね」
姉「右は速度。速さと同義かもね。いろいろ使えるわ」
姉「左はごちゃごちゃしてるけど……まぁ、いいや」
男「えっ」
姉「……まぁ、燃料計とかがあるわ。たぶん」
姉「ごめん。あんまりメカとか詳しくないんだ、えへへ……」
男「……まぁ大事なのはきっと実践だね。大丈夫だよ」
姉「男……ありがとっ! 早速行こう!」
姉「数分後のこと」
男「……」フラフラ
姉「まぁ、慣れるまでの辛抱かな――」
と、とりあえず書いたのはここまでです。
起きてのち、質問があったら回答しますね。
おやすみなさい。
部屋の片付けをしつつ再開しますね
先輩「その数日後」
先輩「姉さんも、皆に続いて、真面目に練習しましょうよ」
姉「ねぇねぇ先輩ちゃん?」
先輩「はい、何でしょうか」
姉「先輩ちゃんって、なんだか猫っぽいよね」
先輩「猫……では、それは何故でしょうか?」
姉「なんとなくだけどさ、ほら、雰囲気?」
先輩「あんまり自覚無いですが……どうなんでしょう」
姉「いや、猫ってよりは子猫って感じかなー」
先輩「子猫……ますます自覚無いです」
姉「ほら! 子猫って……そう! 可愛いじゃないっ!」
先輩「可愛い……って……」///
姉「じゃあ今から先輩ちゃんは子猫ちゃんだね!」
子猫「何でですかぁ……はっ」
姉「さては、自覚し始めたね?」
子猫「そ、そんなこと……さぁ、練習しましょう、練習!」
姉(やっぱり、子猫だなぁ……可愛いなぁ……)
姉「数十分後、車内にて」
姉「そういえば子猫ちゃん」
子猫「あ、やっぱりその呼び方なんですね……」
姉「そうだよ? 猫足のセッティングが上手いからね」
子猫「あぁ……なるほど。ようやく理解できました」
姉「本当に上手いよね……私は硬めのほうが好きだけど」
子猫「いえいえ姉さん。サスペンションは帰宅の"足"です」
子猫「それくらい大事なんですよっ」
姉「そりゃそうだ。足だもの」
子猫「……実は分かってないですよね?」
子猫「私が、しっかりと分からせてやります……!」
子猫「先ず、サスペンションとはタイヤと車体をつなぐ部分です」
姉「あーあ、また始まっちゃった……終わらないよこれ」
子猫「もとはといえば姉さんが私のこと、こ、子猫だなんて!」
姉「いいじゃない」
子猫「でも、動機が不純なんですっ!」
姉「でも、子猫ちゃんの猫足セッティングには感謝してるよ?」
子猫「感謝は実績で示してください! 前年度だって――」
姉「あーはいはい。でもその話はしないって約束したでしょ?」
子猫「……っ、つい、熱くなってしまいました……」
姉「まぁ、実績で示せてないのはみんな同じだけどねぇ」
子猫「……私も、今年こそは――」
姉「その意気だよっ、子猫ちゃんっ!!」
子猫「感謝は実績で示してください! 前年度だって――」
姉「あーはいはい。でもその話はしないって約束したでしょ?」
子猫「……っ、つい、熱くなってしまいました……」
姉「まぁ、実績で示せてないのはみんな同じだけどねぇ」
子猫「……私も、今年こそは――」
姉「その意気だよっ、子猫ちゃんっ!!」
子猫「それで、足回りはおおよそ3つの部品から構成されています」
姉「そっちは続けるんだね」
子猫「アーム、ダンパー、そしてスプリングです」
姉「質問だけど、どこまで制約されてるの?」
子猫「……いえ、特には。でも懸架方式まで変えちゃうのは駄目かと」
姉「へぇ」
子猫「例えば、この車の前輪はストラット式なのでやや貧弱です」
子猫「ですが、これをより強固なマルチリンク式などに変更は出来ません」
姉「出来ればかなり楽なんだけどねぇ」
子猫「でも、FIAはレギュレーションオタクなので」
姉「酷い言われようだね、そりゃ」
子猫「ですが、そんなFIAルールにも例外はあります」
子猫「確か……リアサスペンションを変更できたっけかな?」
姉「ずいぶん適当だね……私は何も言えないけどさ」
子猫「あの数百ページもある英文を記憶するって――無茶ですよ」
姉「やっぱりレギュレーションオタクで問題ないみたいだね」
子猫「毎年変更されてますし」
姉「ねー」
子猫「ねー」
子猫「ですが、形式以外は結構自由なわけです」
子猫「そこで、メカニックの腕の見せ所ですっ!」
子猫「タイヤの設置力に大きく影響するのは、3つの要素です」
子猫「空力、タイヤグリップ、足回りです」
子猫「ですが! そのうち空力は変更が効きづらいです!」
姉「効きそうなのに」
子猫「車体の全長・幅が制限されていますから、大掛かりなのは無理です」
子猫「そしてタイヤ選びですが、それはまた後日話します」
姉「話すんだね」
子猫「こちらもかなり重要な要素ですからね」
子猫「つまり、実質はサスペンションで走っているようなもの!」
姉「いや、それは言いすぎでしょ……」
子猫「……こほん、ニキ・ラウダさんは知っていますか?」
姉「馬鹿にしないでよ。元F1ドライバーでしょ?」
子猫「そうです。彼がフェラーリに移籍したときの、こんなエピソードがあります」
子猫「当時、フェラーリF1ではマシンの批判が禁止されていました」
姉「ってことは、1970年代のことだね」
子猫「その際アレジは、フロントサスペンションに文句をつけました」
子猫「そして、"1秒以上速く走らないとクビ"と宣告されました」
姉「そりゃひどいね」
子猫「ちなみに、ちゃんと1秒以上速く走って一命を取りとめました」
姉「そんなに危険なの!?」
子猫「歴史人はいつだって偉大です。偉大だから歴史に残るんです」
子猫「それはさておき、サスペンションはそんな部品です」
子猫「柔らかくすると曲線で粘り、硬くすると直線で安定します」
子猫「あまり柔らかくすると速度が落ちます」
子猫「しかし反面、硬くしすぎると粗い路面で跳ねます」
子猫「それらを極めたバランスこそが、この猫足なのです!!」
子猫「ちなみに、アーム・スプリング・ダンパーは一緒に弄ります」
子猫「その際、車高やキャンバー角・トー角なども弄れます」
子猫「姉さんも、たまには弄ってみたらどうですか?」
姉「……」ウトウト
子猫「もう、知らないです」ボソッ
子猫「姉さん、日が暮れますよ、起きてくださいっ!」
今日はここまでです。おやすみなさい。
明日仕事早いので……ノシ
さて、今日もしこたま書いてゆくですよー。
ごめんなさい。キリがいい所までたどり着けませんでした。
明日はちゃんと書きます。それではおやすみなさい。
書きますよ!
会長「時は少しだけ遡り、放課後が始まって間もない」
会長「姉と猫耳が乗っていない方・カーナンバー#2にて」
会長「さて男くん。昨日、操作方法は教わったんだっけ?」
男「忘れてなければ、大丈夫です」ドアカチャッ
会長「それでもまぁ、助手席に乗るんだね」ドアガチャッ
男「お姉ちゃんの運転は乗りましたけど……まぁ」
会長「イマイチ信用できないって? まぁ信用されるのもキャラじゃない」
会長「時は少しだけ遡り、放課後が始まって間もない」
会長「姉と猫耳が乗っていない方・カーナンバー#2にて」
会長「さて男くん。昨日、操作方法は教わったんだっけ?」
男「忘れてなければ、大丈夫です」ドアカチャッ
会長「それでもまぁ、助手席に乗るんだね」ドアガチャッ
男「お姉ちゃんの運転は乗りましたけど……まぁ」
会長「イマイチ信用できないって? まぁ信用されるのもキャラじゃない」
男「ごめんなさい。でもビビリは治せないです」
会長「何事も諦めちゃ駄目さ……まぁ、練習を始めようか」
会長「ペースノートを、読んでくれないか?」
男「……ペースノートって、何でしょうか?」
会長「……」ハァ
男「?」
会長「じゃあ、ちょっと説明を入れつつ、やることにしようかね」
会長「では第一問。われわれ帰宅部は1月から、何をする予定でしょうか?」
(2013・センター試験・改/配点1)
男「……帰宅、です。カーレースの一種だと思われます」
会長「まぁあらかたオッケーだが、センターは4択だから取れないぞ――」
男「センターって、大学入試センター試験ですよね!? そんな問題出ませんよ!」
会長「いや、いいんだ。何でもない。忘れてくれ」
男「そうですか……」ハァ
会長「帰宅やレースってのは慣例名だな。一般的には"ラリー"と呼ばれている」
男「……聞いたことしかないな。聞いたことはあるが」
会長「人はそれを"知らない"って言うんだ。冷酷だよな」
会長「ラリーは英語で書くとR,A,L,L,Y、R-Al-Lyを原型としている。英語は得意か?」
男「まぁ、人並みには。でもリスニングは無理ですね」
会長「将来困るかもだな。まぁ英語は俺に任しとけっ!」
男「あ、ナンパとかしないんで大丈夫ですよ」
会長「ちゃうわ、ドアホ」
会長「意味としては"再び此処へ集う"だな。すなわち"帰宅"だ」
男「なるほど、だから帰宅部なんですね」
会長「その通り。でも、昔は今と違ってスピード勝負じゃなかったんだ」
男「では、何勝負だったんですか?」
会長「たぶん、体力勝負だな。それか、機転とか計算力とか」
会長「とにかく、そこまでスピードは重要じゃ無かったんだ」
会長「まぁ、坂は全速力じゃなきゃ登れなかったぐらい昔の話ではある」
男「だいたい何年前くらいなんですか?」
会長「……記憶が正しければ、だがな。1911年――だいたい100年前だ」
男「マジか……まだ明治時代ですかね」
会長「まぁ、その頃は5日くらいの競技で、競争ではなかったらしい」
会長「でも規定平均時速はあったから、計算機片手にやってたそうな」
男「なかなか複雑ですね」
会長「その"現在のペースをメモするノート"が、今のペースノートの原型だ」
会長「そして、当時のラリーストたちは皆モンテカルロを目指していた」
会長「再び集まる、とはこの事だな」
会長「って、歴史の授業で習った」
男「……授業あるんだ、この学校」
会長「安心してくれ。英語以外まともな授業はないっ!」
会長「ちなみに、英語もリスニングとかが主になるがな――」
会長「ま、ペースノートは現代ではもっぱらルートやコツなどが書いてあるな」
男「それで、どこにあるんですか?」
会長「ああ、目の前の段……ダッシュボードの上にあるぞ」
男「本当だ……綺麗な字で色々書いてあります」
会長「ああ、それを書いたのは後輩ちゃんだ」
男「後輩さん、ですか……綺麗な字ですね」
会長「俺としては"情報が少ねぇ!"って言いたいがなぁ」
男「いや、かなり色々書いてありますけど……っ」
会長「ほれ、これ俺のペースノート。モンテカルロのコルデ・ブロースのだな」
男「……これ、情報多すぎてどれを読めばいいのか分からないです」
会長「そこはドライバーによるな……姉とかには、ほとんど必要ないぞ」
会長「姉には、太陽の向きとコーナーの路面状態だけ読めばいい」
会長「あいつは、そういうとこノリでできちゃうんだよな……憧れるさ」
男「会長さんは、どれくらい必要ですか?」
会長「んー……向きと進入速度、それから留意点くらいかな。俺は」
会長「じゃあ、実際に読んでみてくれ。"ホーム"ってやつな」
男「分かりました――100m,右,約90度,40km/s,ショートです!」
会長「敬語はいらんぞ! 逆に怖い!」ブロロロロキィィ
男「はい! 27m,右,30度,20-30km/s,出口重視でs」
会長「もう少し、早口にできるか?」キィッ ブロロロ
男「はいっ! ――」
会長「いやー、実に危なっかしいね……!」
男「ごめんなさい! 俺、まだまだ未熟で――」
会長「第二帰宅部でやる限り、ドライバーとコ・ドライバーは両方できる必要がある」
会長「あ、コ・ドライバーってのは今の男みたいな。別名ナビゲーター」
会長「ルール的にはその両者が入れ替わるのは問題ない」
会長「だが、人数が足りないともしもの時に困るからな」
会長「……せめて、全員が無事に帰ってくるためには、必要なんだよ」
男「えっ……?」
会長「――っと、口が滑ったな……まぁ忘れてくれたまえ」
男「? はい、分かりました」
会長「ちなみに、コ・ドライバーはレッキっていうのも行うな」
会長「これはコースの下見のことで、レッキをもとにペースノートを作るわけ」
会長「こうやって色々あるけど、俺はコ・ドライバーの方が好きだな」
男「それはまた、どうしてでしょうか?」
会長「そもそも俺、コ・ドライバー志望で第一帰宅部に入ってたんだ」
会長「でもその方針を、俺は心底懼れていたんだ」
会長「一年生のときには、とりあえず修行を積んだね」
会長「おかげでこうして、初対面でナンパできるくらい口が回るようになった」
男「逆じゃなかったんですね」
会長「……さぁな? まぁどうあれ男には興味ないから安心しろ」
男「……」ハァ
会長「でも2年になったとき、俺は見ちまったんだよ……」
会長「ドライバー志望の1年生の女の子が、部長に脅されてたんだ」
会長「『お前は、ドライバーには向いてない!』ってな」
男「……っ、それは……どうなんでしょう」
会長「正直、憤りを覚えたね、あの時だけは――」
会長「だが終わりじゃない。その女の子は反抗してたんだ」
会長「『才能によって努力が摘まれるのは、おかしい……ッ!』って」
会長「そこで一度部長に殴られてからは、泥沼だったね」
会長「それでもその女の子は、諦めず、殴り返さなかった」
会長「そして、最後の一発が彼女に下されたとき、彼女は気絶した」
男「そんな……」
会長「部長はまんざらでも無さそうな面してやがったよ……忘れやしないね」
会長「思わず、衝動的に、俺は退部を宣言してたよ」
会長「その女の子を、保健室に拉致するために、な」
会長「……っと、そいつが今の先輩ちゃんってわけだ」
男「」ウルウル
会長「まったく……涙もろいのって、血なのかな……ははは」
会長「泣き止んだか? だったら、ドライバーズシートにつくがよい」
男「あっ、こんどは俺がやるんですね、分かりました」
男「準備オッケーです、会長さん」
会長「この会長の本気、見せてあげようではありませんかっ!!」
会長「――ワンハンドレッド,ミディアムライト,スピード:フォーティー,ショート」ペラペラ
男「凄い……情報が的確に、すばやく認識されてる気がするっ!」
会長「サーティー,タイト・ライト,アクセラレーションッッ」スラスラ
男「なんだか、必要な情報以外がうまくカットされてる気がする――」
会長「そこもウデだね。 フィフティー,ルーズレフト,――」
男「つ、疲れました……よっ……」
会長「……なんと! 姉には及ばないが、現・最速記録だ!!」
男「……嘘だぁ」
会長「ホント。会長は嘘付かないからね」
男「本当だ……お姉ちゃんは3秒以上速いけど……」
会長「まぁ姉は、ターマック(舗装路)の天才だからな。血、かもな」
男「初めてなのに……実感ないです」
会長「でも、やれば、もっと縮むと思う。こっから頑張ろうぜ、男っ!」
男「はいっ!!」
疲れたのですよ。今日はここまでです。
見ている皆さんも、お疲れ様です。 テノヒラヒラヒラ
おつ
意味分からんけどおもしろいよ
PCが壊れた。今日は来られるか分からない。
とりあえず別PCで来ているが、夜は来られない……
よし、入れた。
しばらくしたら書いてくよー
姉「練習後」
姉「――ということで彼女の名前は子猫ちゃんになりましたっ!」
会長「確かに猫らしくて繊細だな……賛成するよ」
男「……本人の意思は確認したの?」
姉「したよ! 許可はもらったー」
子猫「……」コクリ
男「じゃあ、今後もよろしくお願いします、子猫さん」
子猫「男さんはサスペンションについて、なにかご存知ですか?」
男「いえ、まったく……」
子猫「……それはそうと、今週末、みんなでどこかに集まりませんか?」
姉「本当!? ご飯おごってもらえるのはうれしいな!」
会長「じゃあ、今後の日程とかもついでに話しましょうか」
姉「それ、週末である必要ある?」
会長「まぁいい機会だしさ。親睦会って事で」
姉「オッケー! じゃあ、今日は解散!」
しばし退席ですー
強引な姉の行動。
会長の意味深な言葉。
先輩の過去。
そして、それらに翻弄される男は、
必死に、
されども楽しそうに、
辛く厳しい現実の中を、生きてゆく。
悠久の"帰宅"がいま、始まろうとしていた――
姉「……」
姉「はい! 体験版なのでここまで!」
姉「本当は、ここからが本番なんだけどね……まだ帰宅してないし」
姉「ってことだから、私は製品版で待ってるからね!」
姉「あんたの購入が決まったから、予約特典先に貰っといたわ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」 完
◆GYD5w6gAss先生の次回作にご期待下さい!
姉「……」
姉「はい! 体験版なのでここまで!」
姉「本当は、ここからが本番なんだけどね……まだ帰宅してないし」
姉「ってことだから、私は製品版で待ってるからね!」
姉「あんたの購入が決まったから、予約特典先に貰っといたわ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」 完
◆GYD5w6gAss先生の次回作にご期待下さい!
また連投しちゃいましたね。ほんと、機械は実に苦手です。
重大なミスに気が付きつつ、書き溜めの重要さに気が付きつつ……略
今度はしっかり、製品版として書き溜めてから上げるのですよ。
それではしばし、そして少しの間、皆さんさようならです。
とりあえず、書いてる身としては、やはりチョコレートでしたよ!
チョコレートでした! ◆GYD5w6gAss
あ、15行制限で切れてますね。こちら完です。
『
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」 完
』
自分でHTML化しときますねー
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