モバP「桜の季節」 (40)


加蓮へ

まさかあの奈緒がそんなことするなんてな

笑ったよ

なんか事務所の雰囲気が思い出されてすっごくなつかしくなった

久しぶりにみんなに会いたいよ


                  Pより



加蓮「……Pさん」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402033065


加蓮『Pさんへ』

加蓮『私も奈緒がそこで店員さんにそれを言うとは思わなかったよ』

加蓮『ほんと、おもしろいよね』

加蓮『相変わらず、トライアドはそんな感じです』





コンコン


加蓮「はーい」

加蓮母「おはよう、加蓮」

加蓮「おはよ、忙しい中わざわざお見舞いなんか来てくれなくてもいいのに」

加蓮母「来たいから来てるんだからいいのよ」

加蓮「そっか」

加蓮母「ええ」

加蓮「……」

加蓮母「リンゴでも食べる?」

加蓮「……いらない」


加蓮『私はPさんがアメリカに行っちゃってからも学校にアイドルに』

加蓮『Pさんに言われた通りに』

加蓮『頑張ってるよ』


加蓮『加蓮より』




加蓮「……お母さん、私の病気って治るんだよね?」

加蓮「またアイドル活動できるよね?」

加蓮母「……もちろん、そうに決まってるわ」



加蓮母「だって私の娘だもの」










P「新年度からアメリカに転勤ですか?」

社長「そうだ、ウチとアメリカの大手プロモーションが経営統合したのは君も知ってるだろ?」

P「はい」

社長「その一環としてウチの社員をアメリカの本社に一人置くことになってな」

社長「何も強制してるわけじゃない」

社長「ただ、今までの君の能力を評価して適任だと判断したまでだ」

社長「君のキャリアアップにもつながるだろう」

社長「……どうだね?」



P「……」

P「考えさせてください」



P「社長のバカ野郎!!」ゴクゴク

ちひろ「プロデューサーさん、飲みすぎですよ」

P「今日はいいんです!」

P「なにが『強制してるわけじゃない』だよぉ!!」

P「そもそも俺しか英語できる奴いないの分ってるくせに!!」

ちひろ「ま、そうかもしれませんけど……」

P「しかもそういう話ならもう少しはやく……」

P「もう三月末じゃねぇーかよぉ!!!」

ちひろ「……」


P「ちひろさん、グラス空いてますよ」

ちひろ「いや、私はもう……」

P「……そうっすか」

ちひろ「……」

P「……」

P「……今までみんなをプロデュースしてきて」

P「困難も一緒に乗り越えてきて」

P「喜びだってずっといっしょだったのに」

P「家族みたいに一緒に頑張ってきたのに……」



P「……やっとここまで来たのに」


ちひろ「……」

P「……」

P「よりによって……あっ、ビール追加お願いします」

ちひろ「それ、お冷にかえてください」

P「ちょっ、なんでですか、ちひろさん!!」

P「ビール、ビール!!」


P「おはようございまーす、……うっ、頭いてぇ」

ちひろ「おはようございます、あれだけ飲んでたらそりゃそうなりますよ」

加蓮「えっ、何? 二人で昨日飲みに行ってたの?」

P「ま、ちょっとな」

加蓮「いいなぁー、Pさん、今度は私も連れて行ってよ」

P「何言ってるんだよ、未成年」

加蓮「えー!!」

P「分った、成人したらいくらでも連れて行ってやるよ」

加蓮「ほんと?約束だよ?」

P「ああ」


ちひろ「……」


ちひろ「そのかわりと言ってはなんですけど」

ちひろ「今度、お花見でも行ってみたらどうですか?」

加蓮「お、お花見!?」キラキラ

P「あっ、もうそんな時期なんですね」

加蓮「行こうよ、Pさん、お花見!!」

P「うーーん、さすがにみんなのオフ、重ならないからな~」

加蓮「いいじゃん、2人で行けば」

P「いや、さすがに2人っきりはまずいだろ」

加蓮「この前、私、舞台頑張ったじゃん」

P「そのご褒美は確かにやるっていったけどさ……」

加蓮「じゃ、シャネルのバックとお花見の二択!!」



P「……お花見でお願いします」

急用入ったのでまた夜にやります

急用代行はよ

お、フジファの人かな?

こんなSSを待ってた


加蓮「ふふっ」

P「何笑ってるんだよ、加蓮」

加蓮「Pさんも案外ロマンチストなところがあるんだなって思って」

加蓮「小さい丘の上に桜の木が1本なんて……」

加蓮「普通お花見って桜がいっぱいある公園とか行くんじゃないの?」

P「だってそういうところは混むだろ?」

加蓮「……」

P「それに俺、ここが大好きなんだ」


加蓮「……」

加蓮「……私も好き、かな」


加蓮「じゃーーん!!!」

P「おっ、お弁当?」

加蓮「なんと手作りなんですよ、Pさん」

P「手作り? うわ、めっちゃうれしい!」

加蓮「あれっ、Pさんちょっと涙目になってない?」

P「そりゃ、お前、まさか加蓮の手作りが食べられるなんて思ってなかったからな」

加蓮「感謝する気持ちがあるならシャネルのバックを」

P「それとこれとは話が別だ」


加蓮「じゃ、Pさん何食べたい?」

P「え?なんでだ?」

加蓮「いいから」

P「……この卵焼きかな」

加蓮「それじゃ、あーん」ヒョイ

P「は?」

加蓮「は?っていいじゃん、別に、私たちしかいないんだし」

P「でもな……」

加蓮「もしかして間接キスとか気にしてるの?」

P「アイドルだし……」

加蓮「……もし、Pさんがいなかったら私は普通の女の子だよ?」

加蓮「だからPさんの前では普通の女の子でもいいの」

加蓮「それに知ってる?」

加蓮「今どきの女の子は間接キスとかそういうのあんまり気にしないんだよ?」


P「……わかったよ」

加蓮「じゃ、あーん」ヒョイ

P「……」パクッ



P「なにこれ、めっちゃうまい!!!」

加蓮「ほ、ほんと?」

P「ああ、こんなおいしい卵焼き、初めて食べたよ」

加蓮「ふふっ」

加蓮「ありがと、お世辞でもうれしいよ」


加蓮「もう一個、あーん」ヒョイ

P「さ、さすがにもう自分の箸で食べるから」

加蓮「そっか」

P「うん」


P「からあげ、いただきます」パクッ

加蓮「……」

P「……」モグモグ

加蓮「……」

P「これもうまいな」

加蓮「……」

P「ってどうした、加蓮、箸をじーっと見つめて」


加蓮「べ、別に何も気にしてないから」パクッ

P「?」


P「ふーっ、お腹いっぱい、ごちそうさまでした」

加蓮「おそまつさまでした」

P「それにしても加蓮の手作りなんてほんとにうれしいよ」

加蓮「そういって貰えると早起きした甲斐があったかな」

P「……」

P「なあ、加蓮」

加蓮「なに、Pさん」

P「あんまり無茶はするなよ」


加蓮「あーーっ、なんか今のPさんのまだ出会ったばっかりの時のPさんみたい!!」

P「えっ?」

加蓮「ちょっとくらい早起きしたぐらいで、今の私がへばると思う?」



P「……確かにそうだな」

P「ごめん」


加蓮「……それにさ」

加蓮「Pさん、私が大変にならないように」

加蓮「色々とスケジュールとか管理してくれてるじゃん」

P「バレてた?」

加蓮「もちろん」

加蓮「だからさ、こーやってPさんがいつまでも私を見ていてくれたら」

加蓮「私はずっと元気でいられると思うよ?」

加蓮「だから、よろしくね?」

P「……ああ」



加蓮「あっ、この部分、もう葉っぱになっちゃてるんだね」

P「そうだな」

P「……桜って綺麗だけどあっという間に散っちゃうんだ」

加蓮「そうなんだ」

加蓮「私、今まであんまり花見とかしたことなかったからさ」



加蓮「……」

加蓮「咲くときはみんなの話題の的だけど」

加蓮「散るときは誰にも見られずにいつの間にか散っていく」

加蓮「……」

加蓮「なんだか寂しいね」


加蓮「……」

加蓮「……Pさんは」

加蓮「Pさんは、いつの間にかいなくなったりなんかしないよね?」

P「……」

P「……どうだろうな」ボソッ


加蓮(数日後、)

加蓮(桜がちょうど散ってしまった頃)

加蓮(いつも通り、事務所に行くと)

加蓮(Pさんは居なくなっていた)

すみません、また明日やります
先に今回の元ネタ貼っときます

フジファブリック 桜の季節
http://www.youtube.com/watch?v=gBkPaCnQ8_g

このPV、めっちゃ好きです

サーファーキングのPVで無表情でビーム撃つ奈緒の夢を見る呪いをかけました



加蓮「おはよーございます」

ちひろ「あっ、加蓮ちゃんおはよう」

加蓮「今日のお仕事は何でしたっけ?」

ちひろ「午後から撮影があったはずよ」

加蓮「わかりましたー、じゃ、それまでの間レッスン室行ってますね」

ちひろ「……加蓮ちゃん、最近頑張りすぎじゃない?」

加蓮「これくらい今の私なら平気ですよ」


加蓮「あっ、そうだ」

加蓮「この手紙、いつものようにPさんに送っておいてください」

加蓮「愛をこめて書きましたので」

加蓮「なーんて」



ちひろ「……」

ちひろ「……いつも言ってるけど」

ちひろ「加蓮ちゃんだけ特別だからね」

加蓮「わかってますって、レッスン行ってきまーす」


加蓮(私にはわからない)

加蓮(なんでPさんが私には何も言わずにアメリカに行ってしまったのか)

加蓮(ならばと私は心に決めたのだった)

加蓮(アメリカにいるPさんにも届くように)

加蓮(今度は私のことを無視できないようにと)

加蓮(そんなビッグなアイドルになってやるんだって)













コンコン

看護師「北条さーん、検温の時間ですよー」

看護師「って、北条さん?」




加蓮(だけど、)

加蓮(分っていたことだけれども)

加蓮(やっぱり、私ひとりじゃダメだったのだ)

加蓮(Pさんがいなくなって一か月もしないうちに)

加蓮(私はPさんと出会う前の私に戻ってしまったのだ)

加蓮(病弱で夢ばっかりみてる)

加蓮(普通の女の子な私に)


加蓮「Pさん…………会いたいよぉ」ポロポロ

看護師「だ、大丈夫ですか、北条さん!?」


Pさんへ


今日はなんとオーディションを受けてきました

結果はなんと合格!!!

これで私も主役……じゃなくて、脇役なんだけどさ

でもこういう仕事も大事なんだよね、Pさん!!

私、成長したんだよ!


追伸

Pさんもアメリカでいろいろと大変だと思うけど

体には十分気を付けてね

          加蓮より


加蓮へ


合格おめでとう!!!

そうだ、さすが加蓮!

そういう仕事の積み重ねがだいじなんだ!

しっかり脇役をこなしてやれよ!


追伸

そういえばそろそろ日本では桜が咲くころか

アメリカにはあんまり桜がないから

お花見はできそうにもないよ

だから俺の分もお花見を楽しんで

          Pより













看護師「北条さん、見てくださいよ、窓の外」

看護師「今年も桜がきれいに咲いてますよ」

看護師「……えっ?」

看護師「……そうですね、ちょっと残念ですけど手術が終わるころには」

看護師「桜のシーズンはちょうど終わりかもしれません」



看護師「……あはは、その方が都合がいいって」

看護師「北条さんは変わってますね」



看護師「桜が枯れるのを見届けたいなんて」

終わりです、相変わらず雰囲気だけのSSでした

元ネタは>>26ですが若干独自解釈が入りました
気分を害された方がいたらすみません

それと最後の1レスは蛇足とも思ったんですけど
入れずにはいられませんでした

さすがにくどいのでフジファブリックではあと1つか2つ書いて終わります
候補としては「Sugar!!」か「雨のマーチ」、「茜色の夕日」あたりかなと思ってます

おつー

おつ

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