楓「ゆずレモン、みかん味」 (33)




夜 楓家 自室

楓「はぁーーー……」

楓(あの後、ゆずと上手くお話……出来なかったなぁ……)

楓(もう何十回も、練習したんだけどな……)

楓「……」ポフッ

楓(みんなには悪いけど、ぜーんぶ見させてもらったよ……)

楓(しずくちゃんはコトネが好きで、コトネはしずくちゃんが好き。相思相愛ってヤツだ)

楓(……コトネとしずくちゃん、互いを支えあえる……幸せな関係になれそう)

楓(春香は優が好き……を通り越して愛している、か。優はどうだろう。……きっと同じようなモノか)

楓(春香達も大丈夫。優が素直になれてない分、春香が素直過ぎるから、これはこれで良いバランス)

楓「はぁー……」

楓(私の好きな人は……どの記憶にもいる、一人の少女)

楓「……」

楓(ゆずは、一体誰が好きなんだろう……)



前スレ:コトネ「しずくドロップス」
コトネ「しずくドロップス」 - SSまとめ速報
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期待





1週間後 夕方 教室

ゆず「帰ろうぜー」

楓「ん、もう少し待って」ガサガサ

ゆず「さー、今日はどうする? いつもんとこ寄っていくか?」

楓「そうだねー」

ゆず「っても、あたしらだけ、だけどな」

楓「あれ、みんなは?」

ゆず「春香と優は知らないな。コトネとしずくちゃんは二人で買い物に行ったよ」

楓「ふぅん……」

楓(ぜーんぶ知ってるよ。私がみんなに予定を聞いたから、ね……。だから、今日こそ……)

ゆず「ついでに言うと、かいちょーは春香を尾行しに、探しに行った」

楓「妬いてるねぇ……」

ゆず「?」

楓「ううん、独り言」







ゆず「準備出来たかー? いくぞー。モタモタしてるといつもの店、閉まっちゃうぞ」

楓「……いいんじゃないかな」

ゆず「え?」

楓「たまにはさ、ここで話をするのもオツじゃないかなって」

ゆず「えー、ここで? まぁ誰もいないけどさぁ……新鮮味無いなぁ、やっぱり」

楓「そう? 私はここでも満足してるよ? いつだって新鮮だからね」

ゆず「ヘンなの。……まぁいいや、飲み物買って来る。要るか?」

楓「ううん。さっき買ってきたよ。はい」

ゆず「ぉ、サンキュー」プスッ チューゾゾゾー

楓「……ねぇ、最近はど、どう?」

ゆず「どうって?」

楓「ほら、もう1年も半分過ぎたけど、うちのクラスじゃ浮いた話はあまり聞かないからね」

楓「ゆず、彼氏出来たかなぁ、と」

ゆず「はぁ? こんだけあたしと一緒にいたら、いるワケないって分かるだろ……」

楓「ん……そ、そうだね……」







楓「ねぇ、女の子同士の恋愛ってどう思う?」

ゆず「そうだなぁー。同姓ってのは大変なんじゃないかぁー?」

楓「ん、どうでもよさそうだね」

ゆず「どうでもいいっつーか、そういう知り合いもいないしなぁ。よくわかんねーな」

楓「……」

ゆず「それに、ああいうのってお嬢様学校の中くらいじゃないのか?」

楓「それは偏見だよ……好きになるのは環境じゃなくて、人だからね」

楓「人がいるならどこだって起きてしまうんだよ」

ゆず「そんなもんかぁ。……で、どうしてそんな話を?」

楓「や、私の知り合いでね。女の子が好きな女の子がいるんだ」

ゆず「私の知ってるヤツか?」

楓「さぁ、どうだろうね。知っているし、知らないかな」

ゆず「なんだよ、歯切れが悪いな」

楓「まぁ聞いてよ」






楓「その子とその子が好きな女の子はね、小学生の頃からの同級生同士なんだって」

楓「たまにケンカをしたけれど、それでも毎日一緒にいたんだ。いつも遊んで話して楽しくしてた」

楓「けれど、いつしか自分の中に楽しいと思う以上の感情が出てきた」

楓「ソレが、好きだという気持ちに気づいたのは中学生の頃。何でもない夕日の帰り道」

楓「それからは毎日が幸せだった。だって一緒にいられるだけで良かったんだから」

楓「でも高校に入ってから、好きでいるだけじゃ耐えられなくなった」

楓「環境の変化……周りの幸せを見てしまうと、自分も求めてしまう。相手にも好意を持って欲しい、と」

楓「そして女の子は、ついに耐えられなくなった。そして……」

ゆず「そして……?」

楓「……私が聞いたのはここまで。その先は知らないんだ」

ゆず「ふぅん。なんていうか、難しい問題だな」

楓「そうだね……」

ゆず「まぁ、こういうのは当人同士の問題だからな。他人がどうこう言えるもんじゃないよなぁ」





楓「……ねぇ。もし、もしだよ。私がゆずを好きだと言ったら、ゆずはなんて言うんだろうね」

ゆず「いや、何言ってんだよお前……だって、」

楓「女の子同士は、やっぱりヘン?」

ゆず「当たり前だろー? それに、そんなことあるはずないし……」

楓「うん……」

ゆず「お互い、そんなキャラじゃないだろ? うん、やっぱり想像できねーなー」

楓「そう……だよね……」ニコッ

ゆず「まったく、冗談もそれくらいにしてそろそろ帰ろ……っ!」

楓「……」ポロポロ

ゆず「なんで……」

楓「な、なに?」

ゆず「何泣いてんだよ、楓……」

楓「え……ぁ、うん……あれ、おかしいな……」ゴシゴシ

ゆず「楓……?」

楓「ずっと、こうやって話す時のシミュレーションしてたんだけどなぁ……あはは」

楓「私は、不器用みたいだから……やっぱり、涙が止まらないよ……」

ゆず「楓……」

楓「……っ!」ダッ

ゆず「あっ、おい! どこ行くんだよ、おぃ!」







廊下

楓「はっ……はっ……はぁっ……」タッタッタッ

楓(バカだなぁ、私って)

楓「っく……はっ……はぁっ!!」

楓(何言ってるんだろう。何してるんだろう)

楓(あんなに練習したのに、どうして上手くいかないんだろう……)

楓(ウソをついて、予防線を張って、保険を掛けて……)

楓(バカ、バカバカ……バカだ、私は……)








屋上

ガチャッ キィィィ

楓「はーっ……はーっ……」スタスタ

楓(やっぱり、追いかけてきてはくれないんだよね……)

楓(ただの友達だもん……)

楓(今頃は、明日になればまた元通り、なんて思ってるに違いない……)

楓(それでいいんだよ、だってヘンだもん)

楓(こんな恋は、許されないんだから……)

楓(……でも、おかしい、おかしいよ……)

楓(みんなは、あんなに幸せそうなのに)

楓(どうして、私だけ)

楓(……どうして、どうしてどうして……私だけ……)







楓「……」ボーッ

楓「夕日、キレイだなぁ……」

楓「そういえば、こんな夕日の帰り道だったかな……」

楓(いいな、みんなは)

楓(好きな人が、自分を好いてくれて……)

楓(私も、そういう人を好きになれば良かったのに)

楓(羨ましい……みんなが)







楓(相手が自分を好いてくれると限らないのに、バカみたい……)

楓(恋をするのって、とっても……辛いんだ。ううん、恋じゃなくて、失恋かな)

楓(……漫画で読んだ時は共感なんて出来なかった)

楓(どうしてこの主人公の少女は泣いているんだろうって思った)

楓(フラれて、逃げて、また泣いて)

楓(恋が実らなかったくらいで、大げさな……なんて)

楓(そう思っていた)

楓(でも春香達やコトネ達のコトを知ってしまった今、そして……)

楓(こうして消沈している私……)

楓(……今なら分かる)

楓(本当に好きな人がいるって、とても辛くて悲しいんだ)

楓(こんなことなら、いっそ……ゆずのこと、ゆずのことを……好きになんて、)

楓「っ……!!」








ガチャッ キィィィィ 

ゆず「ここにいたのか……探したぞ。ほら、カバンだ。まったく、何飛び出してるんだよ」

楓「ん、ありがとう……」

ゆず「……」

楓「じゃあ、帰ろっか……」

ゆず「……待てよ。いくら鈍感のあたしだって、さっきの意味くらいは分かるよ」

楓「分かんないよ、絶対に……」

ゆず「いいや、分かるよ」

楓「ふぅん……。じゃあ言ってみてよ、さっきの意味をさ。分かるんでしょ?」

ゆず「楓……お前……」







楓「早く、言ってよ!」

ゆず「……さっきのは、その……あたしを好きだってこと、なんだろ……?」

ゆず「それなのに、あたしは楓のことを傷つける言い方をした……。ごめんな」

ゆず「知らなかったんだ……楓が、そう思っているなんて……本当にごめん」

楓「へぇー……。そういう意味で取ったんだ」

ゆず「な、なんだよ。だって今のは」

楓「もういいよ。たらればの話だったんだ」

ゆず「楓……? でも、さっきお前泣いて……」

楓「何勘違いしてるんだい。ちょーっとゆずを驚かせようと思っただけだよ。ホントホント」

ゆず「……」

楓「高校入ってからは、私のターゲットが春香に変わったからね」

楓「ゆずはイジって貰えなくて寂しがってるかと思ってさー」

楓「しっかし、引っかかってくれたねー。うん、私の泣き真似は上手いみたいだ」

楓「これなら演技派としてもやっていけるね~……」

ゆず「……」

楓「じゃあ、帰……」






ゆず「ウソだ」

楓「……」

ゆず「なんでウソをつくんだよ。あたしらの仲だろ? なんで、なんでウソつくんだよ!!」

楓「何言ってるのさ、ウソなんか、」

ゆず「……いいや、あたしには分かるよ。楓と何年一緒だと思ってるんだ」

楓「っ……!」ダッ

ゆず「逃げるな!」グイッ

ゆず「……楓はあんまり感情を表に出さないから、みんなには分からないだろうけど」

ゆず「あたしには分かる」

ゆず「なぁ、教えてくれよ……」

楓「……」

楓「そうだよ……」

楓「ほんと、こんなに長く一緒にいなければよかったよ……」

ゆず「楓……?」

楓「いまさら私が、ゆずを好きだなんて、言えると思う……?」ポロポロ








ゆず「……」

楓「いつも一緒にいて、何でも話せていたのに、何でもは話せなかった」

楓「周りが幸せになっていくから、私は悩んだ。すごく、すごく」

楓「そのうち、一緒にいることさえ辛くなった。そうでしょ? だって好きなのに言えないんだよ……」

楓「知っていたから。この気持ちは、許されるモノじゃないって」

楓「そんな辛いこと、耐えられるワケがないよ……」

楓「でも、一緒にいないなんて選択肢は無かった。いつもゆずが私といてくれたから」

楓「このままじゃ、私は……私の気持ちは、壊れちゃうよ……」

楓「ゆずは、私の何なの?」

ゆず「……」

楓「ねぇ、答えてよ……ゆず……」

ゆず「楓……」






タッタッタッ

???「もぉ! なんで私が……こんなところに……」

???「いいからいいから!」








ゆず「お、おぃ……誰か来るぞ……」

楓「っ!」ドンッ

ゆず「うわっ!」

楓「じっとして……」

ゆず「でも、この体勢……」

楓「……」ギュゥッ

楓(ゆずの心臓の音が聴こえる……)

楓(これも、私が視た、一つの夢……)








ガチャッ 

春香「うわー、キレイ!」

優「ぁー、そうだね、キレイだね。……ねーねー、もう行こうよぉー」

春香「えー、もう少しだけ、ねっ、ねっ?」

優「もぉー、その言葉、今日何回目だと思ってるのさ」

春香「んー……2回目くらいかな?」

優「……帰る」プイッ

春香「あーん、分かった! 抹茶アイスね、あとでおごってあげるから、ね? ね? いいでしょ?」

優「チョロイ人みたいな扱い、止めてくれないかなっ」プンプン

春香「じゃあいらないの?」

優「いる……」

春香「ねー、あっち! あっちの方が夕日、キレイだよ!」タッタッタ

優「はぁ~……しょうがないなぁー……」テクテクテク







物陰

ゆず「あのさ、近い……」

楓「うん……」

ゆず「アイツら向こうに行ったし、そんなに抱きつかなくても……」

楓「ううん……」

ゆず「……楓?」

楓「……」スッ

ゆず「……ぉ、おい……どこに手を回して……っ!」

楓「……」ピタッ

楓(あと、1秒)

楓(あと、3cm)

楓(あと、ほんの少しの勇気があれば、私は。私は……)






優「……まったく。こんなと……で……スしようだなんて、春香は……」

春香「ぇー、私は夕日に染ま……屋上でキ……って、すごく青春し……と思う……なー」

優「それは、まぁそうだけど……」

春香「それに、優ちゃんとっても可愛かったよ? ふふー」

優「……っ!! 知らない知らない! 早く行かないとお店閉まっちゃうよ!」タッタッタ

春香「もぉ、照れちゃって……あーん、待ってよ優ちゃーん!」

ガチャッ キィィィィ バタンッ






楓「……」

ゆず「……」ジッ

楓「……」

ゆず「……」

楓「……」スッ

ゆず「……」

楓「ごめんね……」

ゆず「ん……」







楓「ほんの少しの勇気も持ってないなんて……弱い人間だね……私は」

ゆず「そんなことない。今、シてたら……きっと私は楓をキライになってたと思う」

楓「そっか……じゃあ私は正しかったんだね……」

ゆず「なぁ、どうしてそこまで焦ってるんだ……?」

楓「どうしてだろうねぇ……周りの幸せに当てられたのかな」

ゆず「でも、あたしも楓も、楓が言う“みんな”じゃない。だろ?」

楓「うん。でも、やっぱり寂しいよ。私の気持ちは、一体どこへ行けばいいんだろうって」

ゆず「……さっきの答え、だけどな」

楓「……うん」

ゆず「あたしは、楓を……恋愛対象に見てなかったから、すぐに恋人になるってのは出来ない」

楓「そうだよね……」

ゆず「でも、あたしもきっと好き……だぞ……それがまだ恋愛感情になってないだけで」

ゆず「これから変わっていくかもしれない。たぶん、そうだと思う。こんなに好意を向けられたのは初めてだから」

ゆず「……虫のいい話かな」

楓「さぁ、どうだか。でも、それはとっても嬉しいよ、ゆず」






ゆず「なぁ。もし……キスしたかったら、その……するか?」

楓「え……?」

ゆず「さっきさ、楓の気持ちを貶しちゃったから、そのお詫びに……楓も、したそうだったから、さ……////」

楓「もういいのに……でも」

ゆず「ん?」

楓「……シて、欲しいな……v」

ゆず「わ、分かった……いくぞ?」

ゆず(あ、あれ……あたし、口大丈夫かな。さっき飲んだジュースの味で、いいかな……)

ゆず(唇、大丈夫だっけ? さっきリップを塗ってたような……うぅ、もういくしかない……)

楓「……」

ゆず「……」オソルオソル

楓「……」

ゆず「んー……」ドキドキドキ







楓「……」フイッ

ゆず「え、なんで……」

楓「……まだ、いい」

ゆず「どうして……」

楓「これじゃあ私のワガママだからね……」

ゆず「……」

楓「ゆずが本当の意味で私を好いてくれた時まで、待ってるよ」

ゆず「そっか……ありがとな」

楓「……友達以上、恋人未満……か」

ゆず「やっぱり不満?」

楓「ううん、上出来だよ。やっぱり、私達はここから始めたほうが良いんだよね」

ゆず「あたし達らしく、な」







楓「ねぇ。昔さ、手を繋いで帰ったこと、覚えてる?」

ゆず「さぁ。もうそんな昔の話は忘れちゃったよ」

楓「そっか……」

ゆず「だって……。ずーっと楓といるんだぞ? どれがどの記憶だったか、もう分からないよ」

楓「……うん」

ゆず「その記憶のどこにも、楓がいる。昨日までも、今も、明日からもな」

楓「嬉しいね……」

ゆず「どうする? 手……繋いで帰るか?」

楓「恥ずかしいよ……」プイッ

ゆず「たまには、いいだろ」ギュッ

楓「ん、そうだね……」ギュッ

ゆず「楓、これからもよろしくな」

楓「こちらこそよろしく……ゆず」







テテテテンッ デデデンッ!           つづく







オワリナンダナ
読んでくれた方、ありがとうございました。

次は、別の作品です。たぶんR-18です。よろしくどうぞ、です。

某まとめサイト様、並びに各所でコメントくださる方、いつもありがとうございます。
それでは、また。

ストパンO.V.A並ビニT.V.Aアルマデ戦線ヲ維持シツツ別命アルマデ書キ続ケルンダナ



楓はガチ(確信)

>>2さん
期待に沿えたかは分かりませんが、ありがとうございました。


>>27
楓はガチですね……。
周りを見て、私も私も、と思っているに違いありません。

あんただったか!
スト魔女じゃねーから分からなかったが……面白かったで乙

こんなの待ってた!
続きも待ってる!
乙!

乙!
良かったよ!

乙!

すっごく良かった

かえゆずいいね

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月06日 (金) 02:13:28   ID: s3Xk_bz9

楓は春香の次くらいにガチかもね

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