王子「おかしいと思わないか?」  大臣「えっ」 (32)

処女です!

処女作の間違いでした!

優しくして下さい!

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王子「先代勇者……勇者の父君が音信不通になって久しい」

王子「僕は生まれて間もなかったから、当時の記憶はないが……」

王子「さぞかし大きな期待をされていたのだろうなあ」

王子「永きに渡る人族と魔族の争いに、終止符が打たれるかもしれないのだ」

王子「そしてその期待は、彼の息子へと引き継がれる」

王子「今代の勇者の旅立ち、あと1周間となったか……」

王子「上手くやってくれるといいのだが」

王妃「王子く~ん、いるかしら~?」 パタパタ

王子「おや、母上ではありませんか」

王妃「母上よ~」

王子「珍しいですね。僕の部屋まで足を運ばれるとは」

王妃「夜這いよ~」

王子「まだ朝ですよ!?」

王妃「あら?」

王子「あら、ではありません! そもそも息子に夜這いとは、一体どういう了見ですか!」

王妃「うふふ、冗談よ。冗談」

王子「冗談でも言っていい事と駄目な事があるでしょう!?」

王妃「まあまあ。ほら、紅茶でも飲んで落ち着いて?」 スッ

王子「さもご自身が用意されたかのように出してますけど、それ僕が自分で淹れたものですから!」

王妃「あら、この香り」 クンクン

王子「他人の話、聞いてますか……?」

王妃「……南国の茶葉かしら」

王子「えっ、お判りになるのですか」

王妃「もちろんよ~」

王子「そういえば、母上は植物については第一人者でしたね」

王妃「大した事ではないわ~。ただちょっと、趣味をこじらせただけよ~」

王子「魔術研究に薬草類の知識は欠かせませんからねえ」

王子「ところで母上」

王妃「なぁに~?」

王子「何かご用があったのでは?」

王妃「あっ」

王子「ははは、すっかりお忘れになっておいででしたか」

王妃「うっかりしちゃったわ~」

王妃「あのね、王子くん。落ち着いて聞いて欲しいのだけど」

王子「伺いましょう」

王妃「国王陛下が、病でお倒れになられたのよ~」

王子「そんな大切な事忘れないでくださいよおおお!!!」

――執務室。

王子「父上が復帰されるまで、僕が政務を代行する事になった」

大臣「殿下にはご難儀をお掛け致しますなあ」

王子「構わないさ。これも務めだ」

大臣「頼もしいお言葉にございます」

王子「とは言え、大臣がいなければ僕は何も決められない」

王子「力を貸してくれるかな」

大臣「無論でございます」

王子「ありがとう。貴方の忠節には、僕の勤勉で応えよう」

王子「さて、早速取り掛かろうか。まずは……そうだな」

王子「勇者の出立について、進捗状況を把握したい」

大臣「来週がその日ですな。ご安心下さい、計画は順調です。支給品も用意させております。

王子「支給品?」

大臣「はい。世界の危機に立ち向かってもらう事になります。手ぶらで旅立たせる訳には参りますまい」

王子「もっともだ。国として最大限の支援をしなくてはならないな」

王子「それで、何を支給するのだ?」

大臣「銅の剣でございます」

王子「……」

大臣「?」

王子「……済まない。もう一度言ってもらえるか」

大臣「はい。銅の剣1本を支給致します」

王子「……」

大臣「……?」

王子「おかしいとは思わないか」

大臣「えっ」

王子「えっ、じゃないだろおおおおお!!!!!」

王子「大臣!」

大臣「は、はい」

王子「貴方は先ほど何と言った!」

大臣「えっ」

王子「そこじゃないんだよおおお!!!」

王子「勇者が世界の危機に立ち向かう、というところだ!」

大臣「す、済みません」

王子「銅の剣1本で世界が救えると、本気で思っているのか!」

王子「イノシシ退治をするにしても、もっとまともな武具を持っていくだろう!」

王子「そんな装備で救えるほど世界の危機は安上がりではない!」

大臣「お、仰る通り……」

王子「理解したのなら、直ちに支給品を変更せよ!」

大臣「そ、それでは銅の剣に加え、皮の鎧を用意させましょう」

王子「……」

大臣「即刻鋼の剣と魔法の鎧を調達致しますううう!!!」

王子「よろしい」

王子「勇者に旅立ちに添えるものは、これだけなのか」

大臣「い、いえ。支度金も交付する予定です」

王子「おいくらかな」

大臣「……」

王子「そんなに怯ないでくれ。酷い金額である事は想像に難くない」

大臣「ご、50ゴールドです……」

王子「……」

大臣「50,000ゴールドに増額致しますううう!!!」

王子「是非ともそうしてくれ……」

王子「何だかとても疲れたよ」

王子「まさかこんな阿呆な計画が進んでいるとは思わなかった」

大臣「阿呆は言い過ぎでは……」

王子「控えめに表現したつもりだが……?」

大臣「ひぃ」

王子「余り物の装備とはした金で魔王を倒してもらおうなど、正気の沙汰とは思えん」

大臣「はい……」

王子「あまり言いたくはないが、たるんでいる……としか言えないぞ?」

大臣「申し訳ございません……」

王子「もうよい……今後はしっかり監督してもらわねば困るぞ」

大臣「肝に銘じます」

王子「そもそもだな、こんな馬鹿げた内容を計画する事自体が異常なのだ」

王子「本計画の立案者を呼び出してくれ。僕が直々に問いただしてくれる」

大臣「えっ」

王子「ん?」

大臣「それが、その……立案者は現在療養中でして……」

王子「……」

大臣「……」

王子「まさかとは思うが」

大臣「……ノーコメントです」

王子「父上ええええええええええ!!!!!!!!!!」

――翌朝。

大臣「おはようございます」

王子「おはよう。昨日は声を荒らげてしまって済まなかった」

大臣「滅相もない! 私こそ、己の浅慮を恥じるばかりです」

王子「いやいや、貴方は我が国の頭脳に等しい」

王子「その知略、どうか人々のために役立てて欲しい」

大臣「有難きお言葉! 不肖大臣、粉骨砕身お仕えさせて頂きます」

王子「頼りにしている。ところで、父上の容態は?」

大臣「病状の進行は食い止められたようですが、未だ高熱にうなされておられます」

王子「悪い意味で平行線、と言ったところか」

大臣「はい、残念ながら」

王子「父上もまだ老け込むお歳ではないし、看病には母上が付いていらっしゃる」

王子「ここは焦らず、快復を待つとしよう」

大臣「殿下、支給品の変更について手配が完了致しました」

王子「早いな」

大臣「(殿下が怖いからですよ……)」

大臣「武器と防具は2日後に王宮に到着する見込みです」

王子「結構。支度金はどうか」

大臣「はぁ、それが……」

王子「何か問題が?」

大臣「予算が足りません」

王子「国庫はもう空なのか」

大臣「魔物のために国情が不安定なのはご存知かと思われますが……」

王子「ああ、存じている」

大臣「色々と対策に追われ、対症療法的に予算を注ぎ込む状態なのです」

王子「対応が後手に回っているのだな……」

大臣「お恥ずかしながら、その通りでございます」

王子「致し方あるまい。大臣、王家の資産について売却を許可する。その売却益を予算に投入してくれ」

大臣「よろしいのですか?」

王子「国家……いや、世界の一大事だ。背に腹は代えられない」

大臣「ご立派です」

王子「あ。それと父上のおやつ代は今後永久に廃止する」

大臣「ひぃ……」

王子「時に大臣」

大臣「何でございましょう」

王子「勇者を補佐する者はいるのか?」

大臣「候補者はおります」

王子「まだ決定していないのか。もう1週間を切っているのだが」

大臣「最終的決定は勇者に委ねる事としております」

大臣「勇者にも仲間を選ぶ権利はございましょう」

王子「ふむ。それもそうか。して、候補者はどのような顔ぶれだ?」

大臣「それにつきましては、国では把握をしておりません」

王子「は……? どういう事だ」

大臣「城下の酒場にて冒険者を募っておりまして、全てそちらに一任しております」

王子「……済まない。もう一度言ってもらえるか」

大臣「魔王討伐隊の人員選考については、城下の酒場に委任しております」

王子「……」 プルプル

大臣「?」

王子「おかしいとは思わないか」

大臣「えっ」

王子「えっ、じゃないだろおおおおお!!!!!」

王子「大臣! 貴方は先ほど何と言ったか!」

大臣「えっ」

王子「ごめん間違えた! 昨日何と言ったか!」

大臣「えっ」

王子「そうじゃないだろおおおおお!!!!!」

大臣「す、済みません。つい……あの、私何か言いましたっけか」

王子「世界の危機云々という話の事だ!」

王子「魔王を倒すのに酒場でメンバー募集してどうするのだ!」

王子「まるっきり隣町までお使いに行かせる程度のノリじゃないか!」

大臣「い、いえ。そんな事は……」

王子「そんな事はない、と言えるのか?」 ギロリ

大臣「い、いやあ……」 タジタジ

王子「まったく……もっと重大性を認識してもらわねば困る!」

王子「凶悪な敵を討伐しようという時に、民間に丸投げというのは大問題だ!」

大臣「冒険者募集事業に対しては、国から助成金を出しておりますが……」

王子「そんな金があったら、選りすぐりの兵を魔王討伐のために育成したらよいではないか!」

大臣「し、しかし飲食業への予算投入による経済効果がですね」

王子「景気対策と魔王対策を分離したらいいだろ! なんでセットでやろうとするのだ!」

王子「呑んだくれ引き連れて魔王に突撃させるつもりか?」

王子「魔王城はアル中リハビリセンターじゃないんだよおおお!!!」

大臣「お、仰る通り」

王子「時間は限られている。王宮から即戦力となる者を選抜せよ」

大臣「志願はどう致しましょうか」

王子「受け付けて構わん。危険を承知で自ら名乗り出る意気込みは、高く評価されるべきだ」

王子「とは言え、実力と意気込みに著しく乖離が見られる場合はこの限りではない」

――時は流れて、勇者旅立ちの日。

大臣「おはようございます」

王子「おはよう」

大臣「いよいよこの日がやって参りましたな」

王子「ああ。今日、歴史は大きく変わる」

王子「我々人族が、平穏と安寧を取り戻す大いなる第一歩が刻まれるのだ」

大臣「……」

王子「どうした」

大臣「少し、昔の事を思い出しておりました」

王子「昔の事?」

大臣「ええ。16年前にも陛下が同じような事を仰っておられたなあ、と」

王子「前言を撤回する!」

大臣「えっ」

王子「過去に似た言葉を贈られた者と、同じ運命を辿らせる訳にはいかないさ……」

大臣「ところで、報告が遅れましたが」

王子「勇者の随行員だな」

大臣「はい。ギリギリまで選考させて頂きましたので」

王子「よい。簡単に決められる案件ではないからな」

王子「一足先に顔を見たい。呼び出せるか?」

大臣「すぐにお呼び致し……」

国王「王子!」

大臣「おや、陛下ではございませんか」

王子「父上! お体の具合はもうよろしいのですか?」

国王「うむ。この通りすっかり治ったわい」

王子「あまり無理をなされませぬよう」

国王「そうも言うてはおられまい。今日が何の日であるかは、余とて承知しておる」

国王「それにしても、政務を執る姿も随分と板に付いたようだのう」

王子「僕などまだまだ未熟者。早く父上に復帰して頂きたいものです」

国王「謙遜致すな。これからはそなたに頑張ってもらわければならぬ」

大臣「陛下の仰る通りですぞ。殿下には皆期待しておるのです」

王子「これはこれは。期待を背負い込むのは勇者ばかりと思っておりましたよ」

国王「そうそう楽はさせぬよ」

大臣「これからもよろしくお願い申し上げますぞ」

王子「微力ながら尽力致しましょう」

王子「そうだ。これから勇者を旅をする者を招くのでした」

大臣「おっと。そう言えばそのお話が途中でしたな」

王子「父上もお会いになられますか」

国王「会うも何も、余にとっては見知った顔だがの」

王子「おや。誰が旅の供をするのかご存知なのですか」

国王「うむ。そなたもよく知る者たちだ」

王子「僕は何も聞いておりませんが」 ジトー

大臣「す、済みません。お見舞い申し上げた際、この件についてご相談を……」

王子「……まあよい。貴方も相談を持ちかける相手は選んでいるだろうからな」

国王「これこれ、あまり怖い顔をするでない。それよりも大臣、早速もう一人を呼んで参れ」

王子「もう一人? お待ち下さい、どういう意味ですか。というか、そもそも随行する者の数は?」

国王「三名だが」

王子「あと二人はどうしたのです」

国王「その二人は既に待機しておるぞ」

王子「話が見えません」

大臣「あのー……私はもう一人をお呼びしてもよろしいのでしょうか?」

王妃「その必要はないわ~」

王子「母上、なぜこちらに」

王妃「なぜって、呼ばれた気がしたもの~」

王子「いや、母上のお話は特に……」

国王「王妃、よいところに来た。丁度そなたの事を呼ぶところだったのだ」

王子「……」

王子「母上が魔王討伐に?」

王妃「そうよ~、頑張っちゃうわよ~?」

王子「……」

王子「大臣」

大臣「はい」

王子「残りの二人は誰だ」

大臣「陛下と私です」

王子「……」

大臣「?」

王子「おかしいとは思わないか」

大臣「えっ」

王子「えっ、じゃないだろおおおおお!!!!!」

王子「首脳引っこ抜いて魔王城に投げ込む国がどこにある!」

国王「ここ」

王子「父上は少し黙っていて下さい!」

王妃「ここ~」

王子「代わりに言えって意味じゃありませんよおおお!!!」

大臣「こ……」

王子「……」

大臣「何でもありません」

王子「まったく……どういう選び方をしたらこうなるのだ!」

大臣「ええと、まず剣術で陛下の右に出る者はおりませぬ」

国王「まだまだ若い者には負けぬわい」

王子「そういう問題ではなくだな……」

大臣「また、魔術の扱いにおいては王妃様が他の追随を許しませぬ」

王妃「すごいでしょ~」

王子「知ってますよ!」

王妃「ええ~……」 シュン

大臣「なお、手前味噌ではございますが、回復系統魔術は私に少々心得がございます」

国王「少々どころの騒ぎではあるまい。世界的に見ても大臣の才覚は抜きん出ておる」

王妃「私もそっちの分野では敵わないのよ~」

大臣「もったいなきお言葉」

王子「実力のほどはよく判った……判ったがな」

王子「三人が不在の間、どうやって国家を運営するんだ!」

国王「そなた」

王妃「王子くん」

大臣「殿下」

王子「色々とぶん投げすぎだろおおお!!!」

王子「役職に対する責任とか、何も感じないのか!」

国王「王たる者、まずは人々に規範を示さねばならぬ」

王妃「夫を助けるのが妻の仕事よ~」

大臣「地の果て天の果て、何処なりともお供致します」

王子「その覚悟をもう少し違うところで発揮出来ないのか!?」

王子「くっ……他に、他に志願者がいるだろう。政治を疎かには出来ん。その者達が代わりを務めればよいだろう」

大臣「志願者は総勢三名ですが」

王子「あんた達だけかあああああ!!!!!」

勇者「あ、あの……」

王子「取り込み中だ!」

勇者「ひぃ!(なんで出会い頭に罵声!?)」

王子「ん……見ない顔だな。何者だ」

勇者「こ、ここに行くように言われて……」

王子「もしや、貴方が勇者か」

勇者「は、はい」

王子「そうか……それでは、勇者っ!」

勇者「はいぃ!」

王子「よいか、心して聞いてくれ」

勇者「な、なんでしょう?」

王子「こいつら引き取って、さっさと行って来いいいいいい!!!!!」

おわり

さくっと以上までです!

お気付きの点がございましたら、容赦なくご指摘下さい!

ありがとうございました!

乙です。
テンポいいな、こういう話好き……ただ短いのが残念。

大体のRPGの謎、最初の国の援助よりも、少し先の貧しい村からのお礼の方が良いものくれる事。


面白かった


こういう国になら税金取られてもいい

GJ



勢いで突っ走る話って長いとだれるからこれくらいが丁度よかった。

処女にしては熟れた……じゃなくて、処女作とは思えぬ出来栄え。
乙!

おつ!

乙!
丁度良い長さと面白かった!

処女ビッチ乙

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