ナルト「卑劣な術だってばよ!さっそくやってくれ!!」
扉間「囮に最適だぞ」
ナルト「うるせー!俺はそんな卑劣な使い方しねーってばよ !!」
扉間「……」シュン
以下ホモスレ
ナルト「あとさぁ、サスケェの動きを制限する術とかねーの?」
扉間「? 腹に爆弾でも詰めるのか?」
ナルト「だからァ!誰がそんな卑劣な真似するかってばよ!」
扉間「……」ショボン
ナルト「とにかく、なんだっけあの…紅先生の、魔幻・樹縛殺?だっけ、あんな風に拘束なしで自由を奪う術ねェ?」
扉間「うーむ。その幻術でいいだろう?」
ナルト「サスケは写輪眼持ちだから幻術はなァ…」
扉間「薬でも盛れ」
ナルト「さすが卑劣様だってばよ!!」
以下、地の文ありです。
―――いつから寝ていただろう。
やけに重い体を起こす。
―――?
何か、体に違和感がある。
というか、思うよう動かない。
「どうなってんだ…クソ」
真っ白な部屋の壁を睨む。
だいたいどこなんだ、ここは。
記憶を辿ろうとするけれど、頭痛が酷い。
確か俺は、戦争の最中に木の葉に加勢して、そして戦争が終わって、それから…
……… それから?
「よぉ、サスケ。体調はどうだってばよ?」
ナルトが部屋に入ってきた。一旦思考が止まる。
「最悪だ」
よろけそうになりながら立ち上がる。
それを見たナルトがうん、と頷いた。
「いい感じだってばよ」
「てめェ、どういう意味だ…?」
ナルトは、持っていたやけにデカい鞄を床に置いて、いつも通りの表情で答えた。
「ん?俺が薬盛ってやっただけだってばよ?」
「…!?」
「あ、大丈夫!動けなくなるだけだってばよ!」
「意味のわからねェこと抜かしやがって…一から説明しろ」
怒鳴りたいのに、腹に力が入らない。
「ナルト、一体何をする気だ…」
ナルトが話しながら近づいてくる。
「そりゃあ、何って…」
ぐっ、と拳を握りしめて、
「――こうするためだってばよ」
そのまま、その拳を俺の鳩尾に叩きこんできた。
「ゔぁッ…!?」
とっさのことで、何も反応出来なかった。鳩尾に拳が、ぐりぐりと抉るように押しつけられる。
「え゙ぐっ…ぅあ、」
肩がビクンと大きく揺れる。のどの奥に込み上げてくる何かを、必死に押さえる。
ナルトが襟首を掴んでいるせいで、身が引けなかった。
「うっ、」
苦痛に声を漏らす俺を見ながら、ナルトは満足げだった。
「なんだかさァ、最近気づいたんだけど」
ナルトは、拳がめり込んでいく俺の鳩尾に目をやりながら呟く。
「俺ってばサスケがそういう顔してっと、なんかゾクゾクするんだってばよ」
何でだろうな、と言いながらナルトは拳を当てたまま中指の第二関節が食い込むように、ぐっ、と下から突き上げる。
「………っ、…」
漏れだしそうな呻きを飲み込む。少しでも口を開けば、腹の中のものが出てしまいそうだ。
ナルトがいきなり、襟首を掴んでいた手を離した。
吐き気を押さえることに専念していた俺は踏みとどまれず、床に転がる。
「はぁ、は、はぁっ、はぁ…」
やっと吐き気から解放された。息が整うのも待たずにナルトを睨み付ける。
「………、…」
口にしかけた罵りを押さえる。体が言うことを聞かないこの状況で、仮に怒らせでもしたらどうなるか想像もしたくない。
睨んでいた視線も床にそらす。
「やっぱりいい目ェしてんな、サスケェ」
床につっぷしたままの俺を眺めながら、ナルトは楽しげに言う。
その言葉がどうにも癪で、床を睨んでいた目を閉じた。
がさがさと言う音が聞こえる。目を開けると、ナルトはしゃがんで先程の鞄をあけていた。
「やっぱ最初はこれか」
そう言ってナルトが取り出したのは3本の瓶。中には液体が入っていて、ゆうに5リットルはある。
「ほら、」
その瓶を両手に持って、ナルトが差し出してきた。
「飲めってばよ、サスケ」
「……………」
「………飲めって!!」
おもいっきり、背中を踏み抜かれた。
「ぁ、が…」
「中身は普通の水だってばよ」
背中に体重をかけながら、ナルトはむしろ優しい声色だった。何かが、ゾクッと背中を這い上がる気がして、気づいたら俺は瓶を受け取っていた。
「…飲めばいいんだろ」
俺がそう言うと、ナルトは足をどけた。
かなりの時間をかけて、水を飲み終えた。
よくもあれだけの量が入っているなと思いながら腹を触ると、肋骨のすぐ下あたりが異様に膨らんでいた。少し動くたびにくぐもった水音が聞こえる。
「…飲んだぞ」
座ってナルトはその言葉を聞いて、ゆっくりと立ち上がった。
液体は本当に水だったようで、無味無臭だった。今のところは、変な感じもない。
ただ、内側からの凄まじい圧迫感には耐え難いものがあった。
異様に唾がわいてくる。
「よし、そのまま胸を反らして、腕を後ろで組むってばよ」
「…?」
ナルトの言葉とおりの体制を作る。圧迫感が増したような気がした。
「息、止めるなよ?サスケ」
ナルトが拳を握る。ついさっき見たのと同じ肘の引きかたに、強い恐怖を覚えた。
予想と同じように、拳は鳩尾に叩き込まれた。
さっきと違うのは、俺が吐き気に耐えきれなかったことだ。
「がッ、…おえっ、!」
腹がグッとへこんで、大量の水が逆流してきた。びちゃびちゃと床に水溜まりができる。
胃に何も入っていなかったらしく、水がそのまま出てきたようだ。
「はぁっ、はぁっ」
「まだだってばよ」
また殴られる。
「うっ、ごぽっ…」
「ほらほら!」
「あぐっ、うあ、」
「おっかしいな、もう終わりかァ?」
ナルトが首をかしげる。一回目で大量に出たせいか、三回目はろくに出なかった。
立っているのがやっとだった俺は、べちゃっと水浸しの床に倒れこんだ。
腹が痛い。さっき何回か嫌な音がした。あばらの何本かは無事ではないだろう。
「おら、立てってばよサスケェ」
ナルトが俺の髪を掴む。頭だけが床から浮いた。痛みに、眉をひそめる。
「黒髪って太いっていうけどさ、サスケのは細っそいなァ」
「………」
「何黙ってんだよ」
「ぶっ!!!」
床に顔を叩きつけられて、鼻の奥がつんとした。
―――――窓からの光で目が覚めた。
―――俺は、何をしていたんだっけ。
ああ、そうだった。
すぐに思い出せたのが気に入らない。それ以前の記憶はあい変わらず途切れているのに。
床に顔を打ち付けられた時に、意識が飛んでいたらしい。
そのまま朝になったのか?
それにしては床は綺麗だし、俺は敷かれた布団に横たわっている。一体誰が?
ナルトが?
……まさかな。
と、そこでまた思考は止まる。
窓が誰かに強く叩かれたからだ。
思うように動かない体を引きずって窓際へ向かう。
窓を叩いていたのはサクラだった。
窓の鍵を弄ると、案外簡単に開いた。サクラが身をよじって入ってくる。
「サスケくん、無事でよかった…」
本当に安心したように、サクラは息を吐く。
聞かなくてはならないことがたくさんあった。
「サクラ、な…」
言おうとしたことが遮られる。
「聞きたいことがたくさんあるのはわかってる。でも、きっと肋骨とか肺が傷ついてるわ。先に治療するから」
どうして、俺が昨日殴られたと知っているのだろう。
だが、それよりも疑問なのはその殴られた箇所だった。
確実に骨折していたはずなのに、腫れすら残っていない。
何もなかったかのように見える。痛みもない。
同じ疑問をサクラも抱いたらしい
治療を始めていた手をそっと引っ込めた。
「治ってる、よね…?」
まさか、という顔でサクラが確認する。
俺が頷くと、怪訝そうな顔をしながら腕を組んだ。
「どうして…」
「サクラ…」
訪ねようとして、また制された。
「サスケくん、とりあえず座って。立っているのがやっとのはずよ。サスケくんの疑問には、順を追って答えるわ」
俺は床に腰をおろす。サクラもしゃがんだ。
「サスケくんに盛られたらしい薬はあてがついたんだけど…成分の解析は出来なかったの。ごめんなさい…」
サクラは、そう言いながら小瓶を差し出した。
「これは、体の代謝を早める薬。どんな
毒薬も多少は効果時間が縮まるはずよ」
とりあえず受けとるが、握ったまま薬を眺める俺に、サクラは悲しげに言う。
「……信用できなかったら、飲まなくっても大丈夫よ…」
「…考えておく」
俺は、瓶を手元に置いた。
「さて、サスケくんの疑問に答えるわ。…いや、最初から
全部話したほうがいいかしら?」
と言っても、私の知ってる範囲でだけど…
そうサクラは前置きした。
「戦争が終わって、ナルトは私たちとサスケくんを連れて木の葉に帰った。
でも、戦争で重傷を負ったサスケくんは意識がなくって、木の葉に帰ってからも三日間は眠っていたの。
その間に、手続きとかも済んであっという間にナルトは火影になったわ。」
「火影になったナルトは、そりゃ難しいこともあったみたいだけど本当に一生懸命に仕事に取り組んだわ。
まだ火影になったばかりなのに、里の人からの印象もバッチリ。
でも、私は気になることがあってずっと見張っていたの。ナルトをね」
「気になること…?」
「サスケくん、あなたのことよ」
サクラは、じっと俺を見た。
「実は、サスケくんの居場所はナルト以外誰も知らないみたいなの…私も、ナルトを見張っていなかったら見つけられなかった」
「連れて帰ったはずなのに、誰もあなたの行方を知らない。ナルトは何か知っているようだけど知らないの一点張り。
だからおかしいと思って監視してたのよ。
そしたら、この部屋に着いたわ。ナルトはずっとここにサスケくんを寝かしていたみたい。
私もずっと24時間体制で監視してたわけじゃないから、知らないことのほうが多いわ。
でも昨日、見てしまったの…」
「そうか…」
「……ごめんなさい」
そう言うと、サクラは正座して頭を下げた。
どうも、泣き出してしまったらしい。
「あのとき、無理にでもナルトを止めていたらサスケくんはあんな目には会わなかったのに…!」
サクラは言いながら、自分の肩を抱くように腕を組んだ。カタカタと小さく震えながら。
「でも、怖くなってしまったの…あんなナルト、初めて見たから…私じゃ敵わないって思って、何もできなかった…!!」
真っ白な床に、サクラの涙が落ちる。
「もういい、顔をあげろ」
見ていられなくなって、俺はそう言った。
一度殺そうとまでしたはずなのに、サクラの涙は妙に心に刺さった。
「…どうしてこうなっちゃったのかな」
顔をあげても、サクラはまだしゃくり上げていた。
「戦争が終わって…やっとサスケくんがかえってきて…ナルトは、ずっと夢見てた火影になれた。…それなのに…」
「……」
サクラにかけるべき言葉は見当たらない。少しの沈黙の後。
サクラは涙を拭いて、俺を見た。
「…今日は、ナルトが帰ってくるまではまだ時間があるわ」
サクラは、いきなり立ち上がった。
「逃げよう、サスケくん」
「…本気か、サクラ」
「このままここにいたらサスケくんは死ぬわ」
サクラは自分のポーチから起爆札を取り出した。
「行こう、サスケくん。ナルトとも話しをつけなきゃ」
「いや、駄目だ」
「サスケくん…」
「ナルトにばれたらどうする、今の俺とサクラでは相手にならないだろう」
「……」
「もう帰れ、俺は大丈夫だ」
「……うん、」
サクラは、とても悲しそうに頷いた。
自分の口下手に、つくづく嫌気がさす。
お前まで巻き込みたくないから、危ない真似はするな。
そう言いたかったのに。
窓から出て行こうとするサクラに、さっきの薬の小瓶を投げる。
「サスケくん…!」
受け取ったサクラは、驚いたように目を見開いた。
「…今飲んだ。瓶、捨てておいてくれ」
「…うん!」
少しだけ明るい表情を取り戻したサクラは、軽い身のこなしで小さな窓から飛び降りた。
近くの木に降りたつと、厳しい顔に戻ってこちらに呼びかける。
「今夜、私はどうしてもここに来れないの…きっと、無事でいて」
「ああ」
「また来るわ。…鍵、閉めといてね」
そう言い残して、サクラはこちらを振り返りながら遠ざかって行った。
支援
鍵を閉めて、またよろけながら布団に戻る。
さっきの薬、代謝を促進するとか言ってたな。
即効性が有るものでもなさそうだ。
布団に寝転びながら考えを巡らせる。
ナルトは、俺がどうにかするべきだろう。
ナルトはああ言っていたが、どうにも信じられない。ナルトがあんなやつじゃないのは、ずっと離れていた俺にもわかる。
とにかく、ナルトの帰りを待つしかなかった。
ナルトは、思ったよりは早く帰ってきた。
小さな窓から漏れる光はまだオレンジになりかけたばかりだ。
「おとなしく待ってたか?サスケ」
「……何かしようにもなにもできねぇよ」
「そりゃそうか」
サクラのことはまだ気づいていないらしい。
ナルトが昨日よりかなり大きい鞄を床に置いた。何が入っているかは想像したくない。
「さあサスケ、何するってばよ?」
ナルトはそう言いながら鞄の中を漁る。
「なぁナルト、どうして…」
疑問は、最後まで口にできなかった。
また、ナルトの拳が飛んできたからだ。
「う…」
慣れたのか、昨日ほど痛くもなかった。だが、俺を黙らせるには充分だった。
「サスケェ、お前は俺が聞いたことだけしゃべってりゃいいんだ」
ナルトは、鞄から何かを取り出した。
それは、正直言って何なのか良くわからなかった。
透明のパックの中に、何か黄色っぽいどろどろしたものが入っている。
そのパックの端から、長さ1メートルくらいのやはり透明な管が伸びていた。
ちょうどホースのような太さで、先端の切り口は丸く削られている。
「サスケってば、しばらく何も食ってねぇからさ、腹へってんじゃねーかと思ってさ」
ナルトは、そんなことを言いながらパックをいじる。
「綱手のばーちゃんに、流動食もらってきたんだってばよ」
たしかに流動食と言われれば、見えないこともない。ただ、透明の管は謎だった。
「俺、ちょっと味見してみたんだけどさ、これが本っっ当に不味くってさァ!
だから、胃に直接流しこめるやつもらってきたんだってばよ」
ナルトは、笑顔で握っていた管を揺らした。
あんな太い物を?胃に?
急に嫌な汗が吹き出してきた。
ナルトが寝たままの俺の顎を掴む。
「さー、口開けるってばよ」
指が差し込まれ、口が開いてしまった。
拒否する間もなく、管が口に入ってくる。
のどの奥を伝うようにして、 ねじ込まれていく。
「お゙ぇっ…うっ…」
舌の付け根に当たったとき、強烈な吐き気が襲ってきた。
「あ゙っっ、え゙えっ!!」
明らかな異物を排除しようと、体が抵抗を始める。
横隔膜が痙攣して、肩が大きく揺れる。
顎を伝うのは、涙か唾液かもうわからなかった。体のすべてが、侵入を拒否していた。
「吐くなよ、サスケ」
肩を押さえながら、ナルトは管を進める。
体全体の反応とは別に、のどは勝手に動いて、早く下に飲み込んでしまおうとしているようだった。
そこから先は、案外スムーズだった。
するすると管が入っていくのを、他人事のように眺めていられるほどに吐き気はましだった。
なんとも言えない異物感と挿入感は全く収まらなかったが。
「そろそろいいかなー、」
管を半分以上飲み込んだあたりで、ナルトはパックに手を伸ばした。
ナルトがパックを握ると、中身が流れ込んできた。
収まっていた吐き気が再び胃を襲う。
胃に直接流し込まれるのは、想像以上に気持ちが悪かった。
「んっ、っ……!んぅっ、」
叫びたいくらい不快なのに、全く声が出ない。
「泣くほど旨いか、サスケ!」
涙で、ナルトの表情は良くわからない。
「ん゙っ、ゔっ、……」
「お、もう空だってばよ」
だいたい注ぎ終わったらしく、ナルトが管を引き抜いていく。
「……っ!」
物凄い不快感と、そしてすこしのくすぐったさが背中を震わせた。
ぽんっ、と管が口から抜ける。
「っはァ!がふっ、う…」
深呼吸をいくらしても、息が落ち着かない。
「は、あ、はぁ、は…」
ちらとナルトを見ると、また鞄をまさぐっていた。
まだ何かする気なのか…?
俺の視線に気づいたらしいナルトが、こちらを見返した。
「腹ごしらえも済んだし、本番行けるな?サスケ」
その言葉に、目眩がしたような気がした。
次にナルトがとりだしたのは、いくつかの黒いパッドのようなものだった。
糸が伸びていて、何か機械の様なものにつながっている。
これは、何かわかった。いや、わかってしまった。
体のずっと奥のほうから震えがかけ上がってくる。
「次は電気パッドいくってばよ!」
体が動くなら、本当に逃げてしまいたい。
体に電気パッドが貼られていくのを見ていることしか出来ないなんて、もう恐怖でどうにかなってしまいそうだった。
腹に4枚、太ももに二枚ずつ。
貼り終えると、ナルトはパッドの糸が集まる機械をいじくりだした。
大丈夫、大丈夫、
根拠のない言葉を胸中で繰り返すことしか出来ない。
ナルトは、俺の苦しむ顔が見たいだけなんだ。殺しはしないはずだ………
意味のない深呼吸を繰り返すうちに、ナルトがスイッチに手をかける。
「それじゃ、いくってばよ」
カチッと小さな音がした。
「あ、あ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああああああ!!!」
「やっぱり電気は反応が違うってばよ」
全身の筋肉が硬直して、激痛が走る。
「い゙い゙ああああ゙あ゙あ!!!」
腹と太ももが、ビクビクと大きく痙攣しだした。
「お゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああっ!ああ゙ああああ
!!!」
「すっげェな」
「あ゙っ、あ゙っ!あ゙っ!」
「おっと、致死量超えてたってばよ。そろそろ止めるか」
電流が切られたらしく、刺激がぱたっと止まる。
硬直が解けて、浮いていた腰が布団に落ちた。
「サスケェ、すっげェ顔してんぞ?焦点あってねぇし、涎たらして舌だして」
舌を指で摘ままれる。
「あえ゙っ、へっ…へぇっ、へ…」
「舌出したまんま息するから、犬みてーになってんじゃねーか」
「…いうな……っ」
「お、まだ元気じゃねーか!そう来ないとつまんねぇってばよ!!」
ナルトが最後に取り出したのは――――
何の変鉄もない、縄だった。
ただ、それだけのことに目の前が真っ暗になる。もう、俺の精神は限界だった。
「嫌だ、嫌だ…」
死なんて何度も近付いて何度も意識して、もう身近なものだとすら思っていた。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ…!」
それなのに、死に対してこれ程までに恐怖を覚えるなんて。
縄の輪が俺の首にかかる。
「あ、あ、…」
ナルトが、輪の反対側を天井の出っ張りに引っかけた。
「ああああああああああ!嫌だ!止めてくれ!!嫌だああァ!!」
ナルトは取り乱す俺に、膝立ちのような体勢をとらせる。
「サスケも、そんな風に命乞い出来んだなァ…、大丈夫、ゆっくり引っ張るからな」
ナルトが天井から垂れる縄を握ると、少しだけ首が締まる気がした。
「止めてくれ!何でもする!!何でもするから殺すのは止めてくれェ!!!」
「やだってばよ」
ナルトがゆっくり縄を引いて行くと、首をかけた縄の輪が同じようにゆっくり上がって
首を締め付ける。
「クソ……」
動かない体に鞭打って、なんとか縄に合わせて立ち上がることができた。
まだ首は締まっていない。
「頑張るな、サスケェ」
「………」
喋る余裕はない。
「じゃあ、ここで一旦止めてやるってばよ。そのつま先がぎりぎり床に付いてる状態で、どこまで持つかな」
「…………!?」
どうすればいい!?
この体勢を維持できているのも奇跡のようなもんなのに!
「ほら、ふくらはぎビクビクしてんぞ。もっと踏ん張るってばよ」
「……………」
さっきの電流で、少し動かしただけの筋肉がすぐに悲鳴をあげる。
あと、どれくらい持つのだろうか。
「――――もう限界か?サスケェ」
ナルトが不満げに言う。
俺は本当に限界だった。
時計のない部屋だから詳しくはわからないが、5分と持たなかったはずだ。
ただ、その5分は俺の考え方を変えるには充分だった。
こんなに苦しいなら、死んだほうがましなんじゃないか?
今なら、死ねるんじゃないか?
死への恐怖は安息と憧れに変わりつつあった。
俺は、できるだけ何も考えないようにして、全身の力を抜いた。
「が、ぐぇっ…」
縄がゆっくり食い込んでくる。
顎の付け根が締め付けられて、口が勝手に薄く開く。
「はー…はー…」
喉が押さえつけられてるせいか、掠れたあえぎが漏れた。
頭の奥で、何かがキィーーーンとなっている。
これで、苦しみとはおさらばだ。
頭がぼーっとしてきて苦しいけれど、これで終わりだ―――――
「なーんか、安心したような顔してんな、サスケェ」
「…はー……はー…」
「お前さぁ、何か勘違いしてねぇ?」
「……………」
「死んだら楽になれるとか考えんなよ?お前、この程度じゃ死なない体になってっから」
「……………?」
「昨日の傷が一晩で治ってる時点で、おかしいと思わなかったのかァ?」
「…………あ、」
普通の状態なら、こんなこと言われても笑い飛ばして終わりだったはずだ。
だが、今の俺の酸素が足りない頭は絶対の真実として理解してしまった。
死ねないだと!?ずっとこの苦しみの中でもがき続けるなんてごめんだ!!嫌だ、嫌だ!!
「…あ゙…うぁっ」
縄をどうにかしようとして、首に巻き付いた縄を両手で掴むが何も改善されない。
「そんな暴れんなってばよ」
体が空中でぶらぶらと踊る。
だがそのうちにだんだん力が抜けて行って、結局腕はだらんと落ちた。
頭がぼんやりしていて、何も感じなくなっていた。
「死ななくても、脳に酸素行かねーから意識は遠退くみたいだな」
「………はー、…」
ナルトが喋っているのはわかるし声もはっきり聞こえるけど、意味は理解できなかった。
「おいサスケェ!しょんべん漏れてんぞ」
「…はぁっ………」
「泣くほど恥ずかしいか?…ってそういう意味の涙じゃなさそうだってばよ。また涎垂れてるし」
「…は、………」
「……おい、サスケェ?」
「…………」
「……もう、いいってばよ」
ナルトが縄を放した。
俺の意識は、そこで完全に途切れた。
「 ――――ごめんな、サスケェ……」
―――また、窓からの光で目が覚めた。
何もない床にまっさらな布団。清潔な服をきていて、やはり俺は無傷だった。
布団から起き上がろうとして、驚く。
体が思うように動いたのだ。
頭も澄みきったように冴えている。解毒薬が効いたらしい。
俺は自由になった体で床に突っ伏して、
―――――――叫ぶように泣いた。
思いだした、全てを。
その時窓が蹴破られ、サクラが躍り込んできた。
うずくまっている俺に、慌てて駆け寄る。
「どうしたの?!サスケくん!」
「サクラ……」
「朝から来てたんだけど、サスケくんが寝てたから待ってたの…サスケくん、一体何が…」
「サクラ、もういいんだ…」
「…え?」
「全部、思いだした」
立ち上がり、サクラを窓際まで連れて行く。
「サスケくん……?」
「これは、俺に対する罰だ」
「サスケくん、何言って……」
「サクラ、もう帰れ。俺のことは忘れろ」
「ふざけないで!そんなこと出来るわけないでしょ!!」
怒鳴るサクラの肩を掴む。
俺は一度目を閉じて、大きく息をした。
「サクラ、…ありがとう」
そして、サクラを正面から見据える。
サクラは一瞬息を飲んで、そして表情をなくした。
サクラの瞳に、俺が映っている。
赤い瞳をした俺は、確かに笑っていた。
「ここから去れ」
案外簡単に催眠にかかったサクラは、割れた窓を慎重に抜け出して足早に去って行った。
もう、ここに来ることもないだろう。
これでいいんだ。
ナルトが俺を痛めつけるのも、俺が外に出られないのも。
全て、俺のせいなのだから。
俺が、望んだことなのだから。
―――――戦争が終わって、ナルトは帰路についていた。
背中に、意識を失った俺を背負って。
だが、正しくいえば俺は意識があった。
体が動かないだけで、周りの声は聞こえていた。
疲れながらも、歓喜に満ち満ちた帰路だった。誰もが勝利と平和を喜び、
そして、英雄を祝福していた。
ナルトは、誇らしげに先頭を歩んでいた。
木の葉の里が目視できる距離まで来たとき、五代目がナルトに声をかけた。
里に帰る前に、ナルトに話があると。
皆から少し離れた森の中で、ナルトと五代目は立ち止まった。
「ナルト、単刀直入に言う。サスケを置いていけ」
「…何言ってんだってばよ、ばーちゃん」
「サスケは、木の葉には連れて帰れん」
「なんで…」
「サスケは、最後は戦いに貢献したとはいえ、五影会談で暴れ過ぎた。のこのこ連れて帰ったら、特に雷影あたりが黙っていないだろう」
「だからって…!」
このあたりで、俺は喋れるくらいには回復していたが口を出す気にはなれなかった。
「それだけではない。サスケは罪を重ね過ぎた」
「見損なったぞばーちゃん!そんなんでサスケを置いていけるかァ!!
サスケはやっと正しい道を行こうとしてんだ!なのに…」
「わかっている!だから、本来は縛って連れてかえって処刑のところを、温情をかけているんだ!
そうなったらナルト、お前がサスケの首を飛ばすんだ、火影になるお前がな!!」
「…ばーちゃん、」
「……私としても、そんなことはさせたくない。…置いていけ、ナルト。今なら、帰路の途中で容態が悪化したとでも何とでも言える」
「……いやだ」
「ナルト!!」
「そんなの、ぜってーいやだ!!仲間ひとり守れなくて、火影になんかなれっかァ!」
「いい加減にしろ、事の重大さが分からないわけではないだろう!」
「連れて帰れねーなら、俺はサスケとここに残る。それでいいはずだ」
「…………」
ナルトは俺を地面に横たえて、地面に額をつけた。
五代目に、土下座したのだ。
「ばーちゃん、お願いだ…里の奴らにばれないようにするから…絶対、分からないようにするから…
せめて、サスケが元気になるまで…」
どうして俺なんかのためにそこまで出来るのか、不可解でたまらなかった。
泣きながら土下座するナルトに根間けしたのか、五代目は
「……勝手にしろ」
と捨て吐いて、どこかへ行ってしまった。
俺を抱えて、もう一度背負うとするナルト。
俺は、やっと声をかけた。
「……ナルト」
「サスケ、お前いつから…!」
「全部、聞いた」
「……そっか」
ナルトは悲しそうに目を伏せる。
「ナルト、置いていけ」
「馬鹿、そんなことできっかよ!!」
「……連れてかえるなら、きっちり殺せ」
「サスケェ、何でだってばよ……」
「五代目も言っていただろう、俺はそれだけのことをしたんだ」
「サスケェ……」
「犯した罪の分の罰は、受けるべきなんだ」
「だからって、サスケが死ぬことねーだろ!」
「……どうして俺なんかのためにそこまでできる。もう良いだろ」
「俺なんかとか、言うんじゃねぇ!お前はずっと俺の憧れで……
今だって、俺はお前をすげェって思ってるし、何より大事な仲間だ!」
「…………罰を受けないで生きているほうが辛いんだ。もう、兄さんと同じところにいきたい…」
「だったら、罰くらい俺がくれてやるから……そんなこと、もう、言わないでくれってばよ…」
「……そうかよ」
―――――そこまで思い出せば充分だった。
鍵がかかっているはずのドアを、誰かが触る音がする。
ナルトが来たのだろう。
俺は、軽くなった足で歩み寄った。
笑みを浮かべながら。
完!!!
くぅ疲。リョナサスケェ は素敵だと思っていただけなのにちょっとわけがわからないですね。
この前かいた
ナルト「サスケェのアナルに住むってばよ!」
サスケ「戦争が終わった」
も読んでくれたら嬉しいです。お粗末様でした。
これはハッピーエンドなのか…?
乙
全部読んでたわ
>>59
ありがとう!嬉しいです
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません