刹那「学園都市?」 (92)
「む」
目を覚ませばそこには彼にとってはあまり見慣れない光景があった。
(地球か?...それより、ティエリアは...)
『僕なら大丈夫だ。 どういうわけだか僕たちは地球にいるらしい』
ティエリアと呼ばれる男ーー実際には性という概念が無いのだがーーが、彼の疑問を解消していく。
『クアンタはどうなっている?』
『今は僕の肉体に擬態している。 これ以上人目に触れる心配はいらない筈だ』
ここまでティエリアとテレパシーで会話をした後、彼の前に困惑した表情を浮かべて立っている人がいることに気がつく。
「あ、あの...上条さんのベランダで何をやってるのでせうか?」
「どうするも何もーー」
気づいたらここにいた。 と答えようとしたところで、彼の言葉は隣にいた布団らしきものが発した次のような言葉によって遮られた。
「おなかへった」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397309809
>>1です。このssを読むに当たっての注意点を書こうと思います。
・>>1はssを書くのは初めてです。
・誤字脱字などがあるかもしれません。もし見つかった場合は報告お願いします。
・そうならないように気をつけますがキャラ崩壊が起こる可能性もあります。
最低でも上記の3つを踏まえた上で読むことをお勧めします。
セッさんはメタルなの?
>>3
メタルです
彼ーー刹那・F・セイエイーーは今、隣に座っている上条当麻の部屋の居間にいた。
小さなテーブルをはさんで目の前にいるシスターのような格好をした少女ーーインデックスーーは、先ほどから上条の作ったサラダを頬張っている。
「おい、さっきから表情が強張っているぞ」
隣にいた上条に小声で喋りかける。
まあ、朝一番にベランダに人が2人も干されていたらそうなるのも仕方が無いように思えるのだが。
「うう...やっぱりそれ食べちゃ駄目!」
「え!?なんで!?まだ私のお腹は満たされてないんだよ!」
「いいから返しなさい!」
そう言って、上条はインデックスから皿を取り上げ、中に入ったサラダを全て平らげた。
彼が表情を強張らせていたのは、上記の理由ではなく、目の前の少女に腐ったサラダを食べさせてしまったことに自分の良心を傷めていたためだったらしい。
「んで、インデックスはなんで俺んちのベランダに干されていたんだ?」
「ん? えっと、屋上から飛び移ろうとして失敗したんだよ」
「はあ?」
最近はそういうデンジャラスな遊びが流行っているのか、と上条は内心思っていた。 すると、
「そんな遊びが流行っているのか?」
上条の内心を代弁するかのように刹那が質問する。
「遊びじゃないんだよ!これでも追われている身なんだからね!」
追われている、という単語が頭に入り、刹那の表情が一変する。
(また、どこかで争いが起きようとしているのかもしれない)
「誰に追われている?」
「魔術師なんだよ!」
「なんだと?」
「はあ?」
インデックスから放たれたその言葉に、少しの間彼女と刹那の会話を聞いていた上条までもが驚きを口にする。
『そんな人間は見たことがないし、ヴェーダにも載っていなかった筈だ』
ティエリアまでもが思いを口にしていた。勿論、そのことは刹那しか知らないのだが。
「そ、それで? その魔術師とやらはなんでお前を追っているんだ?」
魔術師という単語を聞いてから、彼女の話を信じられなくなってきている上条がそう質問した。
「うーん...多分、私が持ってる10万3000冊の魔導書を狙ってるんだと思う」
これまた衝撃の新事実、彼女は10万3000冊の魔導書を持っていて、それを狙う魔術師に追われているのだ。
「その魔導書はどこにあるんだ?」
「私の頭の中にちゃんとあるんだよ!」
彼女がそう返したところで、刹那はティエリアに質問した。
『信じられるか?』
『これは僕の仮説だが、彼女は完全記憶能力を持っているのかもしれない』
完全記憶能力。覚えたことを決して忘れることがない現実離れした能力。
『そんなものが現実にあるのか?』
『そういう体質の人はほんの少しだがいるらしいし、これはあくまで仮説さ。』
『そうか...』
チラリ、と上条の方を見ると、彼は完全に信じることをやめてしまったようで、いかにもだるそうな、死んだ魚のような目をしていた。
「むむっ、とーまのその目は私の話を信じてなさそうに見えるんだよ!」
「うわーすげーインデックスまじすげー」
彼の棒読みに腹を立てたインデックスが反論する。
「むきーっ! 魔術はほんとにあるんだよ! 魔導書も全部記憶してるんだよ!」
「はいはい分かった分かった。ところで、刹那さん、だっけ?」
暴れ出しそうなシスターを左手でいなし、話題を転換する。
「む、どうした?」
「なんで肌が銀色なんですか?」
眠いので今日の投下はここまでです。
見てくださった方、ありがとうございます。
ではお休み
クアンタはELSバージョン?
乙
それといくらわかるからと言って≫4でネタバラシは良くないぞ少年
お休みと言っておきながら寝てません。
>>8
ELSクアンタです。
時系列は対話終了後なんですが、そこの描写をしておけば良かったですね...ごめんなさい
ほんとだ...教えすぎも良くないものですね。
ありがとうございます。
エタる未来しか見えないな
とりあえずつまらないよ
これから用事なので1レス分だけ投下します。
「確かに、体が銀色になる魔術は見たことがないかも...」
腕を組みながらうーん、と唸る銀髪のシスター。
(まずい...俺としたことが擬態するのを忘れていた...)
彼は地球外生命体であるELSと対話の後融合し、その体はELSの銀色に染まっていた。そんなものを事情を知らない人が見たらどうなるかは明白である。
『困ったな...さっきからヴェーダに接続出来ないから、ここがどんな場所かもよく分からない。 もしかしたらここにはELSという存在が無いのかもしれない』
ELSからは、ほかの仲間と連絡が取れないと来た。
『話せばどうなるかは分からないが、インデックスは彼の知らない事を話していた。 彼がELSの存在を知らないのなら、俺たちの話もそれに当たるだろう...危険な賭けだが話してみることにする』
目の前には神妙な面持ちで答えを待っている少年と少女がいた。
『了解した。 健闘を祈る』
ティエリアがそう言うと同時に、刹那は口を開いた。
「この体はELSによるものだ」
「はい?エロス?」
上条がちょっとした冗談を言った瞬間、
ガブリ! と何かを噛んだような音が響く
「いってえ! 何するんだよ!」
「ふぉんなことをひふほーまはひはひはも!(そんなことを言うとーまは嫌いかも!)」
「悪かった、謝るから離せ!」
なんとも茶番としか言いようがないその光景を見て、
(案外大丈夫な気がしてきた...)
と思う刹那であった。
「話を続けるぞ? ELSとはだな...」
これから用事なので1レス分だけ投下します。
「確かに、体が銀色になる魔術は見たことがないかも...」
腕を組みながらうーん、と唸る銀髪のシスター。
(まずい...俺としたことが擬態するのを忘れていた...)
彼は地球外生命体であるELSと対話の後融合し、その体はELSの銀色に染まっていた。そんなものを事情を知らない人が見たらどうなるかは明白である。
『困ったな...さっきからヴェーダに接続出来ないから、ここがどんな場所かもよく分からない。 もしかしたらここにはELSという存在が無いのかもしれない』
ELSからは、ほかの仲間と連絡が取れないと来た。
『話せばどうなるかは分からないが、インデックスは彼の知らない事を話していた。 彼がELSの存在を知らないのなら、俺たちの話もそれに当たるだろう...危険な賭けだが話してみることにする』
目の前には神妙な面持ちで答えを待っている少年と少女がいた。
『了解した。 健闘を祈る』
ティエリアがそう言うと同時に、刹那は口を開いた。
「この体はELSによるものだ」
「はい?エロス?」
上条がちょっとした冗談を言った瞬間、
ガブリ! と何かを噛んだような音が響く
「いってえ! 何するんだよ!」
「ふぉんなことをひふほーまはひはひはも!(そんなことを言うとーまは嫌いかも!)」
「悪かった、謝るから離せ!」
なんとも茶番としか言いようがないその光景を見て、
(案外大丈夫な気がしてきた...)
と思う刹那であった。
「話を続けるぞ? ELSとはだな...」
これから用事なので1レス文だけ投下します。
「確かに、体が銀色になる魔術は見たことがないかも...」
腕を組みながらうーん、と唸る銀髪のシスター。
(まずい...俺としたことが擬態するのを忘れていた...)
彼は地球外生命体であるELSと対話の後融合し、その体はELSの銀色に染まっていた。そんなものを事情を知らない人が見たらどうなるかは明白である。
『困ったな...さっきからヴェーダに接続出来ないから、ここがどんな場所かもよく分からない。 もしかしたらここにはELSという存在が無いのかもしれない』
ELSからは、ほかの仲間と連絡が取れないと来た。
『話せばどうなるかは分からないが、インデックスは彼の知らない事を話していた。 彼がELSの存在を知らないのなら、俺たちの話もそれに当たるだろう...危険な賭けだが話してみることにする』
目の前には神妙な面持ちで答えを待っている少年と少女がいた。
『了解した。 健闘を祈る』
ティエリアがそう言うと同時に、刹那は口を開いた。
「この体はELSによるものだ」
「はい?エロス?」
上条がちょっとした冗談を言った瞬間、
ガブリ! と何かを噛んだような音が響く
「いってえ! 何するんだよ!」
「ふぉんなことをひふほーまはひはひはも!(そんなことを言うとーまは嫌いかも!)」
「悪かった、謝るから離せ!」
なんとも茶番としか言いようがないその光景を見て、
(案外大丈夫な気がしてきた...)
と思う刹那であった。
「話を続けるぞ? ELSとはだな...」
連投してるな
とりあえず乙
>>12
そうですよね...これから面白くなる、なんて台も吐ける自信はありませんし...ごめんなさい
やばい連投してた
>>12
そうですよね...これから面白くなる、なんて台も吐ける自信はありませんし...ごめんなさい
やばい連投してた
>>12
そうですよね...これから面白くなる、なんて台も吐ける自信はありませんし...ごめんなさい
また連投してもうた...
みなさん申し訳ないです。
気にしないで書いてくれ
時系列は一巻か
なんかエラーが出たりいつまでたっても書き込みが完了しなくても
実は書き込めている、ってこともあるので一度リロードしてみるといいよ
つまんない
メタルセッさんのSSは珍しいから頑張って続けてほしい
続き期待するよ
デビチルかと思った
>>20
エラーが出てもたいていは書き込めてるから一息ついてからリロードしろ
うわあ寝過ごした...そして読んでくださったみなさんありがとうございます。
投下します。
「はあ...不幸だ...」
上条当麻の脳は処理落ちを起こしかけていた。
ベランダに人が干されていただけならまだしも、片方は魔術師というこの街では信じがたい存在で、もう片方は宇宙人と融合して体が銀色になっちゃいましたという始末である。
「なんなら証明できるぞ?」
と刹那は言い、上条の肩を触ろうとするが、
「いや、遠慮しときます」
上条は嫌な予感しか頭に浮かばなかったのでそれを拒否した。
すると、何かを閃いたインデックスがいかにもなドヤ顔をしながら口を開く。
「とーま、私を叩いてみて!」
「はあ?そんなことできるかよ」
「この修道服は『歩く教会』と言って、縫い目などに魔術的な要素が」
ここまで来たところで上条が彼女の言葉を遮った。
「要するにどんな効果があるんだ?」
「うう...この服は攻撃という攻撃が効かないんだよ!」
なんでそんなことが出来るんだ? と聞けば、そういう魔術なんだ、で全て解決されてしまう。
魔術とはつくづく便利な言葉だ。
「ふむ、確かにELSが浸食出来ていないな。 魔術というのは本当にあるのかもしれん」
上条が考え事をしている間に、刹那はインデックスの肩に触れてELSに浸食をさせようと実験していた。 そしてインデックスはドヤ顔100%である。
「浸食ってアンタ何やってんだよ! それを俺にもやろうとしてたってことかよコンチクショー!」
ツッコミを華麗(?)に決めたところで、
(魔術があの服に施されているとして、この右手で触れたらどうなるんだ...?)
上条にはそんな好奇心が生まれていた。
彼の右手には、幻想殺し(イマジンブレイカー)という能力があり、あらゆる異能の力を打ち消すことが出来る。
「インデックス、その服に触らせてくれないか?」
「何をするつもりなのか知らないけど、おーけーなんだよ!」
「んじゃ失礼」
彼の右手が徐々に服に近づいていく。 そして触れたその瞬間、
バチン!
「うおっ!?...げげっ! イ、インデックスさん...?」
上条の顔から血の気がどんどん引いていく。彼の右手は「歩く教会」をバラバラに破いてしまっていたのだ。
『刹那!』
『ああ、やることは分かってる!!』
刹那は冷静に対応し、事態を収束させるためにELSを出現させた。円錐、角柱などの様々な形をした金属生命体が破れた服を回収し、素っ裸のインデックスの周りを回り始める。
そして、自分の状況を知った銀髪の少女は、過去最高であろう大きな悲鳴を上げた。
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その悲鳴は窓を通り抜け、空まで響いていった。
「もういいんだよ...グスッ...ありがとなんだよ、えるすとせつな...」
修道服が引き裂かれるという緊急事態は、ELSで布と布をつなぎ合わせるという応急処置を施したことによって早めに収束に向かった。 歩く教会の効果は消えてしまったが。
そして今はインデックスがELSがしていた役割を安全ピンで代用する作業を終わらせたところである。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい...」
さっきから呪詛のように謝罪の旨を唱えているツンツン頭の少年は土下座の体勢を崩さずにいた。
「聖職者に対してこんなことするなんて、もうとーまなんて信じられないんだよ!」
グサリ! という音が聞こえたのは気のせいだろうか。 このままでは気まずいことこの上ないため、刹那は話題転換をした。
「それよりインデックス、これからはどうするつもりだ?」
「うーん、やっぱり、とーまとせつなにはこれ以上迷惑かけられないからここを出るつもりなんだよ」
『馬鹿な! これから先は防御の魔術も無いのに、どうやって逃げるつもりだ!?』
ティエリアの心を、土下座から体制を戻した上条が代弁した。
「お前、ただでさえ追われてるんだろ? 歩く教会とやらがなきゃ、屋上を飛び移ることも出来ないと思うぞ?」
上条ーーティエリアもだがーーの言葉に、幼いシスターは悲しそうな笑みを浮かべながらこう答えた。
「なら、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
その冷たく重みのある言葉に、上条は押し黙ってしまう。
だが、刹那の言葉は、彼女の幻想を打ち砕いた。
「お前と一緒に行った先にどんな地獄が待っているのかは分からない。 だが、俺達は見知らぬ誰かの平和を守るために戦ってきた。今回もそうさせて欲しい。」
それを聞いて、上条も彼女の地獄に立ち向かう覚悟が出来たのか、
「俺も参加させてくれ、インデックス。 お前の重荷を俺も背負うよ」
と言った。
2人の言葉を受け、今まで心の奥底に閉じ込めておいた悲しみが一気に溢れ出す。 少女は2人に抱きついた。
「2人とも...ヒッグ...優し...過ぎるんだよ...ふぇぇぇぇぇぇん!」
ここ1年より前の記憶が無く、いきなり得体の知れない敵に追い回された日々。誰にも頼れず独りで逃げ回っていた彼女に、救いの手が舞い降りた。
『戦うんだな、彼女のために』
ティエリアのその一言に返事をする。
『ああ、また忙しくなりそうだ』
その時、この良い空気をぶち壊すかのように上条の携帯が鳴る。
「はいもしもし上条ですが...げげっ!? 先生!? はい...はい...ごめんなさい...今すぐ行きます...」
「どうした?」
「補修あることすっかり忘れてた...すまんが昼飯はこれで済ませてくれ!」
そう言って財布から2千円札を取り出し、刹那に渡すと、筆記用具と教科書をバッグに詰め込んで駆け足で家を出ていってしまった。
「もう! ほんとにとーまはとーまなんだから!」
インデックスは刹那に微笑む。
刹那もそれに応えるように言った。
「本当に、そうらしいな」
あれから数時間、もう既に空は赤く染まっている。刹那としてはこの世界の事もまだよくわからないため少しだけ散歩がしたかったのだが、インデックスの追っ手が現れる可能性があったため、昼食以外は上条の部屋で過ごしていた。
「うう...すっごく暇なんだよ! はやくごはんが食べたいな」
「いつ頃帰るかを聞いておけばよかったな...」
そんなことを喋っていたとき、刹那は不意に異変に気がついた。 イノベイターでなくとも微弱ながらに発している脳量子波が遠くからしか感じられないのだ。上条が住んでいる学生寮付近に感じられる脳量子波はごくわずかとなっていた
『ティエリア...』
『気をつけろ刹那、もしかしたら追っ手かもしれない!』
『了解した』
そのとき、誰かの脳量子波が玄関に近づいてきた。野生の勘が告げる。危険だ! と。
「インデックス!」
刹那は咄嗟にインデックスを抱き留めた。
その瞬間、ガゴン! という大きな音を立ててドアが破壊された。破壊した人物は外からゆっくりと入ってくる。
その髪は赤く染まっており、右目の下には刺繍が施されてあった。
タバコをくわえたその人物は名をーー
「失礼するよ。 その子をこちらに引き渡してもらえないかい?」
ーーステイル・マグヌスという。
(あの男はっ...! いや、違う...!)
刹那は一瞬、とある戦争屋の顔が浮かんだが、すぐに取り消す。 あんなに若くはなかった筈だ。
「貴様...何が狙いだ!?」
「それを僕が言うと思うかい?」
そう言うと、落ち着いた表情の魔術師は手から炎を発現させた。 それを見る前に刹那はインデックスを抱えてベランダの方へ駆け出す。
「炎よ、巨人に苦痛の贈り物を!」
魔術師の叫びと共に、上条の部屋に爆発的な速度で炎が広がった。
今回はここまでです。出来れば夜にも投下します。
補習
乙
赤髪長身柄悪いで似てたな
2日ぶりですね、投下します。
ここ以外もあると思いますが、
ここからはいろいろと独自解釈やら改変やらされてると思います。ご了承ください。
「チッ、取り逃がしたか」
開いていた窓が、そこから彼らが逃走したことを物語っている。
「まあいい、まだ策はある」
そう言って、赤髪の神父はベランダへと歩みを進めた。
「危なかった、あと一歩遅ければ焼かれていたかもしれない」
ELSの助けを借りて屋上からの着地に成功した刹那は、インデックスを抱えて走りながらそう言った。
「これからどこへ行くつもりなのかな?」
「とりあえず人が大勢いるところまで逃げる。 少し遠いがな」
ふと自分がさっきまでいた上条の部屋のベランダを見る。 そこには、修道服を着た赤髪の男がこちらに視線と手を向けながら立っている。
その手からはオレンジ色の炎が見えた。
(まずい...!)
何らかの攻撃が来るだろう、と感じた。 角を曲がって敵から見て死角になりそうな場所に隠れた。
次の瞬間、ボォォゥ!と言う音がして、刹那達がいた場所を含めた半径数メートルが焦土と化した。 敵は炎弾を発射したのである。
(正確すぎる...)
その正確さに、ふと成層圏の向こう側まで狙い撃つ男の事を思い出す。 彼もまた、卓越した射撃能力を持っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふむ、なかなかに手強そうだな」
そんな独り言を口にした時、背後に気配を感じた。
「ここで何やってんだよ...! インデックスと刹那はどうした!」
振り返れば、そこにはここの部屋の主である上条当麻が、怒りの表情を浮かべ、立っていた。
「どうするも何も、ここで殺し合...ぐふぅっ!」
すべてを言う前に拳がステイルの顔面にめり込んでいた。 ドサリ、と1人の大男がその場に倒れた。
「クソ、2人はどこに...!」
不意に、アスファルトが削がれたような大きな音が街の景色の中から聞こえた。
その音の方向にを向くが、マンションが邪魔をして事態をこの目で見ることが出来ない。 だが、音の主は現れた。
マンションより遙か上を飛んでいる左腕に少女を抱えた男と、
マンションより遙か上を跳んでいる刀を持った女が衝突していた。
片や世界に変革をもたらしたイノベイター、
片や神の子に似た特徴を持つ世界に20人ほどしかいない聖人。
彼らが街への被害を気にしていなければ、上条の住んでいる学区は一晩で消えてしまうかもしれない。
(行かないと!)
と思い、駆け足で家を出ようとしたが、その足を掴まれる。
「まったく、人払いのルーンを広範囲に貼っておいて正解だった...僕が起きるのが遅ければ騒ぎになっていたかもしれない」
掴んだ右足に、もう一方の手で炎を押し付ける。 皮膚が焼けただれ始めた
「ぐっ...このっ!」
掴まれた右足を強引に振り解き2歩ほど後ずさる。 赤髪の神父はむくり、と起き上がり、言った。
「Fortis931」
「何を言って...」
「魔法名だよ。 魔術師はそれをいちいち名乗らないと殺しが出来ないんだ。 いわば殺し名、と言ったところか」
上条の言葉を遮るように言ったステイルは続けて、
「さて、勝負を早めに終わらせるためにも奥の手を使おうとしよう」
奥の手という言葉を聞いて、幻想殺しに少年は身構える。 ルーンの魔術師は詠唱を始めた。
「世界を構築する五大元素の1つ、偉大なる始まりの炎よーー」
上条は右手を前に突き出す。
「ーー顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ...、魔女狩りの王(イノケンティウス)!!」
詠唱は終わった。 だが、部屋には何の変化も見られない。
「え...?」
「別に、君との勝負のことを指していた訳じゃない。 君よりも彼の方がだいぶ強いようでね、ああいうのは早めに消しておかなきゃ後が面倒だと思っただけさ」
「テメェ...」
「それより、あれは一体何なんだい? 明らかに空中で出来ないようなことをやってのけてるよね? しかも、左腕にインデックス抱えてさ。 そういう能力なの?」
ステイルがそう聞くのを無視し、拳を飛ばす。 だが、
「おっと、2度も喰らわないよ? 僕とてそんなに馬鹿じゃない」
その拳はいとも容易く避けられた。
「さて、始めよう。 こちらもあまり時間は残されていないのでね」
「ぐっ...!」
刹那は苦戦していた。 相手が日本刀を持った女だけならまだしも、炎の巨人が突然現れて、相手側に加勢したのだ。 左腕にはインデックスがいる。 下手にトランザムを使えば歩く教会の恩恵を受けていない彼女は被害を受けるだろう。
「どこかでELSとすり替える事が出来れば...!」
だが、ELSの追跡から未だに逃げることが出来ていたり、その上で刹那に攻撃を仕掛けていたりと、そんな事が出来る者に隙があるとは思えない。 しかも、炎の巨人の出現によってELSによる攻撃を防がれる可能性が格段に上がってしまった。
「インデックス!」
巨人の攻撃を防ぎながら、少女を呼ぶ。
「う、うん!?」
「この巨人は、どうすれば無力化できる!?」
魔導書があるならそういうことにも使えるはずだろう? と付け加えながら聞いた。
「これは、ルーンを使ってるんだよ!」
「そのルーンは破壊可能か?」
「カードだから出来るんだよ!」
見渡せば、公園のあらゆるところに何かの模様を描いたカードが貼ってあった。
「了解した。 ルーンを破壊する」
だがそれは神裂によって妨害される。
「させませんよっ!」
2メートルはありそうな長い刀を振るい、衝撃波をぶつけてきた。
その衝撃波をELSの壁を大きめに、そして厚めに展開して防ぐ。
(今だ!)
インデックスが声を出さないように、ELSを口に塗り付け、たまたま後ろにあった遊具のところまで後退し、そこに
隠れさせた。 そして彼女に擬態したELSを左腕に抱え、完成した。
直後、壁を飛び越えた神裂が一瞬で間合いを詰め、ELSが擬態したインデックスを刹那の左腕ごと奪い取った。
相手側と刹那との距離、神裂が取った判断、展開した壁の大きさ、遊具の場所。 何かが違えば失敗していたかもしれない。
軍配は刹那に上がっていた。
「この子は預かりまし...ぐっ!? こ、これ...は...?」
銀色の生命体が聖人の右半身を包んでいく。
「くっ...七閃!」
迫り来るワイヤーは、様々な形で射出されたELSに絡め取られてしまう。
「行け!ファング!」
イノケンティウスが刹那に迫るが、ファングがルーンのカードを削り取っていったため、十字架を振るう寸前で消失してしまった。
「これ以上は無駄だ。 抵抗をやめろ」
ふと見れば、遊具からELSの擬態ではない本物のインデックスが遊具から出てきていた。
ああ、自分がもっと距離を詰めていれば。 と神裂は後悔し、そのまま座り込んでしまった。
「何故、この子の10万3000冊の魔導書を狙う?」
刹那は座り込んだままこちらを向かない女にそう問いかけた。
今回はここまでです。
修正出来るところは修正したいので、アドバイスをお願いします。
お疲れさま
投下します
「なんでインデックスを狙うんだよ!?」
「言うわけがないだろう?」
上条達は焼け焦げている部屋で戦っていた。
ステイルの放った炎が上条の体を焼かんと襲いかかるが、右手がそれを阻む。
「ぐっ...!」
「へぇ、割と強めにするとさすがに打ち消すのに手こずるようだね?」
幻想殺しは確かに対異能で効果を発揮するが、打ち消せる範囲は右手のみで、しかも威力が強かったりすると完全に打ち消す事が困難になってしまう。
「んじゃ、その方法で行くとするよ」
再びステイルは威力強めの炎を放った。 上条は右手を突き出すが、威力が強い分、打ち消すのに時間がかかってしまう。
(マズい...!)
隙を突かれた上条の鳩尾に強烈な蹴りが炸裂した。 痛みに思わずもがいてしまう。
「さて、終わりにしようか」
赤髪の魔術師は気だるそうに死刑宣告を行った。 手には炎が発現されていた。
(ああ、不幸だ...)
そう思った。 幼少から周りに不幸を呼んでしまい、ついにはその不幸が自分の命を喰らおうとしている。 このまま自分は死んでしまうのだろうか?
(嫌だ...)
頭に浮かんだ思いを否定する。
(まだインデックスを助けられてないのに...死ぬのは...嫌だ...!...誰かを助けるためなら、どんな不幸とだって向き合ってやる!)
目に光を取り戻した上条に迫る炎。 彼はすんでのところでそれを避けた。
「なっ!?」
突然の出来事にステイルはうろたえ、気づいた時には相手に間合いをとられていた。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
叫びと共に拳が突き出され、バギン! という音が部屋中に響いた。
「なんだと...!?」
「そんな...」
刹那とインデックスは驚愕していた。
「ですから、私とステイルはその子と同じ、必要悪の教会(ネセサリウス)に所属していると言っているのですが」
「じゃ、じゃあ、なんで私を狙ったのかな?」
そう聞くと、目の前の聖人は悲しそうな表情で答えた。
「記憶を...消すためです...インデックス、あなたは、そうしなければ死んでしまうのですよ?」
「ちょっと待て、話が飛びすぎてる。 なぜ記憶を消さなければならないのだ?」
インデックスが驚愕を口に出そうとしたところで、刹那が割り込んだ。
「完全記憶能力と言うものを知っていますか?」
『っ...僕の推測は当たっていたようだな』
ティエリアの推測が的中していたことが、余計に刹那に焦りを覚えさせた。
「その子の脳の85%は、10万3000冊の魔導書を記憶しています。 忘れることが出来ない彼女は、残りの15%も僅か1年で使い切ってしまうんですよ? 1年を過ぎれば、その子の脳はパンクしてしまいます」
「だから、記憶を消すために追い回していたという訳か」
『嘘だな』
ティエリアがいとも簡単にその矛盾点を見破った。
『だが、彼女の表情からして、嘘をついているようには思えないんだ...騙されたのかも知れない』
刹那のその言葉に、ティエリアは1つ推測を立てた
『騙された、それはありそうな線だ。 魔導書というものがかなり危険で、それ自体が戦争の火種になりかねないような代物だとしたら、それを記憶したインデックスを彼らの上司が放っておく筈がない』
『とりあえず、彼女に真実を話そう』
刹那の横では、あまりの衝撃に腰を抜かしてしまったインデックスがいた。 相当驚いただろう、1年より前の彼女も同様に世界中を逃げ回っていたのだから。 そして、自分の今の状況がよく理解できたのだから。
「貴様には話さなければいけないことがいくつかある。 まず1つはーー」
「記憶のし過ぎで脳がパンクする、なんてことは有り得ない」
「え...?」
神裂は思わずキョトンとした表情になった。
「だから、記憶のし過ぎで脳がパンクする、なんてことは有り得ないと言っている。 彼女の記憶を消す必要はない。」
「そん...な...私達がしてきた事は...」
神裂の表情が曇る。 心を痛めながらもやってきた事がすべて無駄だったのだ。 言いようのない虚無感が彼女を襲う。
「だが、この際そんなことはどうでもいい、」
全てを一蹴し、話題を切り替える。
「なぜ、彼女の...インデックスの敵になったんだ?」
「そ、それは...」
「彼女は記憶を消される前も後も、右も左も分からぬまま得体の知れない敵に追い回されていたんだぞ? その負担が貴様等に理解できるのか!?」
今にも殴りかかりそうな刹那に、気を取り戻したインデックスが止めに入った。
「ちょ、ちょっとまってよせつな!...ん?」
「うぅ...ごめんなさい...インデックス...今まで側にいなくて...」
すすり泣く聖人を銀髪のシスターは優しく抱きしめた。
「ううん、良いんだよ。 あなた達は、私を助けようとしてくれてたんでしょ?」
公園にはすすり泣く声だけが虚しく響いていた。
今日はここまでです
クアンタはファングじゃなくてGNソードビット
間違えてました...ごめんなさい
ええんやで
投下します
上条が放った拳はステイルの顔面に見事に命中していた。
「ハァ...ハァ...」
意識が朦朧としていた。 このまま倒れてしまえば楽になれるが、彼はそうしなかった。 なぜなら、彼には理由があるから。
「これくらい...の拳でっ...ぐっ...僕たちを止め...ることは...出来...ないよ?」
記憶を消して、彼女を死の淵から救い出す為に。
彼女のために生きて死ぬと誓ったのだ。 ここで立ち止まるわけには行かない。
「なんで...なんでそこまでしてインデックスを狙うんだよ! てめえらの勝手なエゴに彼女を巻き込んでんじゃねえ!」
エゴ、そう言われればそうかもしれない。 命を救うという理由で記憶消去を正当化しているだけだ。
だが...
「だが! ここ...でそう...しなけ...れば彼女は...死ぬんだ...ぞ...!?」
「なんだって!?」
「全てを...話さ...ないと、いけないよう...だな」
ステイルはかすれた、今にも途切れてしまいそうな声で言った。
「泣き止んだ?」
銀髪の幼い少女は、そう言った。
「ええ、もう大丈夫です。 お恥ずかしい所を見せてしまいましたね...申し訳ないです」
謝罪をしているのは少し目が赤い神裂火織である。
「気にするな。 誰にだってそう言うときはある」
気さくに微笑むのは刹那・F・セイエイ。
彼らは和解を終えていた。
「ですが、こんなことをしている場合じゃありません!」
表情を引き締め、神裂が言った。
「ああ、彼らが戦う理由はない」
刹那もそう言い、ある場所を向いた。
彼らはどうしているだろうか、まだ勝負をつけていないと良いが...
「俺が先に行く。 インデックスは任せた!」
体を赤く発光させた刹那は、空間移動を連想させるスピードで上条の部屋へ飛んだ。
「す...すごいんだよ...」
「ええ、では私達も行きますよ? くれぐれも舌を噛まないようにご注意を」
「うん!」
インデックスを右腕に抱え、神裂はジェットコースター並みの速度で跳んだ。
彼女の所属している組織、彼女が持っている体質、どんな物を頭の中に記憶しているか、そして背負わされた運命。
全てを話すと、案外と気が少し楽になった気がする。
「ーー以上だ。 これだけのことを話しても、君は僕に立ちはだかるつもりかい?」
選択肢は2つ、戦うか引くか、
「ふっざけんなあぁ!」
答えは前者であった。 上条は怒号と共に相手に襲いかかる。
「そんなこと...そんなことっ! インデックスの命を救うためにインデックスの存在を何度も殺してるだけじゃねえかよ!」
上条の右拳をかわし、苦し紛れに放った左拳も受け止めながら、言う。
「素人は黙ってなよ。 仲間を何度も殺すことに僕達が心を痛めない訳ないじゃないか」
再び鳩尾を蹴飛ばされた上条は痛みのあまりけほっ、けほっ、と咳をした。
それに追い討ちをかけるようにして上条の目の前には炎弾が迫る。 威力強めに放たれたそれを右手で受け止め、そのまま受け流した。
「何っ!?...ぐぇっ!」
思わず隙を見せてしまったステイルは、上条の拳をモロに顔に受けてしまった。
「なんでこんなに力があるのにっ...! なんで女の子1人救えないんだよ!?」
拳を喰らったがしかし、倒れることは許さなかったステイルが反撃する。
「そう...そうさ、出来るようになったのは...こんな事ばかり...だっ!!」
上条はステイルの左拳を何とかかわしたが、それを見越した炎の魔術師は右手で上条の顔を掴み、壁に押さえつけた。
「良い勝負だったよ、君の名前は何と言うんだ?」
左手には炎が燃えたぎっている。
「名前なんて...言うつもりねえよ...! ここで死ぬつもりも毛頭ねえっ!!」
「フッ...君は相当負けず嫌いのようだな...」
そう笑って上条の体を焼こうとしたとき、どこからか
「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
という叫びが聞こえた。
その叫びは段々近づきーー
「っ!?」
「なっ、なんだ!?」
ーーその叫びの主はベランダから颯爽と登場した。
今回はここまでです。
地の文って難しいですね...。SSに限らずこういう物を書いたことがないのでかなり手こずってます。
やっぱり少し鍛えてから投下するべきだったなあ、と後悔してます。
では皆さん良い夜を
投下します
「今すぐ戦うのをやめろ。 お前等がそうする必要はない」
「なぜなのか理由をーー」
説明してくれ、と言おうとしたところでベランダから現れた女にそれを阻まれたのは、上条の頭を掴んだままのステイル・マグヌスである。
「ステイル、もうそこまでです。 その人と戦う必要はないのですよ?」
「君までどうしたんだい? しかもインデックスまで連れてるじゃないか!」
「これにはいろいろな事情があるんです」
そんな会話を聴いていたもう1人の人間が口を開いた。
「あ、あの?、その事情を聞く前にこの手を離してくれないでせうか?」
このままの体勢もそれなりにキツいんで、と付け加えると、「あ、ああ...」と言って、ステイルは手を離した。
「良いですか? まず、この子の記憶ですがーー」
「マジで?」
そう聞くのは上条当麻。
「はい、マジです」
それにそう返したのは神裂火織であった。
「そんな...僕達は今まで騙されて...そうだとしたらインデックスは...」
ステイルの頭の中で結論が弾き出される。 まず最初に、なにをしなければならないか...それは...
「すまなかった!! インデックス!」
少女の前で土下座をする神父。 それに対して少女は
「ううん、良いんだよ! 私を追っかけ回してたのはゆるせないけど...私を助けようとしてくれてたのは大いに感謝かも!」
「本当に...すまない...!」
そんな光景を傍らで見ながら、上条と刹那もまた別の会話をしていた
「いやほんとにありがとうございます。
あそこで駆けつけてくれなかったら上条さんは死んでましたよ...」
「礼はいい。それより、病院に行かないと...」
「刹那さんもどこか怪我したんすか?」
「左腕を丸ごと持って行かれた。 これはELSで結合させてるだけの応急処置にしか過ぎない」
「ひ、左腕を丸ごと!?」
あまりの出来事に上条は目を丸くした
「ああ、それと敬語はやめてくれ」
「は、はあ...」
「という訳で、お前達はどうする?」
場を仕切るのは刹那である。 魔術師達はその質問に答えた。
「私達は今日はひとまず退散します」
「また明日来るよ。 あ、あと街とここの修理代はこちらで引き受けさせてもらうよ」
ステイルと神裂の頭には、金髪の女の顔が浮かんでいた。
「あ、そうだ! たぶん俺ら明日は病院にいるからそこのメモ渡しとくわ」
そう言って上条はギリギリのところで焼けていなかったメモ帳と文房具で簡易的に病院の場所と地図を書き、魔術師達に手渡した。
「ふむ...わかった、では僕達はここで退散するとしようか」
「ええ」
ステイルは受け取ったメモをしまい、神裂と共に玄関へと歩みを進める。
「また明日なんだよ! すている、かおり!」
その呼びかけに、魔術師達は一度振り返り、言った。
「ああ、また病院でな」
「ええ、明日また会いましょう!」
彼らは満足したように上条の部屋を後にした。
彼らが出て行ったと同時に『人払い』の効果が無くなったのか、それとも消したのかは分からないが、脳量子波がぽつ、ぽつ、と増えていくのを刹那は感じていた。
「それにしても、IDが無いのはいろいろと困るんだよね?」
カエル顔の医者はのんびりとした口調でそう言う。
「すまない。 だが、こんな事をしていていいのか?」
左腕を吊した刹那がそう聞く。
「患者を救うのが僕の使命なんだ。 気にすることはないね?」
「恩に着る」
彼はこの街では必要になるIDを所持していないため、門前払いを喰らいそうになったが、受付の人の目の前で左腕を外した(?)事と、それをたまたま見かけたカエル顔の医者のお陰で、今こうしてベッドの上にいる。
「僕としては、君を詳しく調べたいね? 自分の腕を自分で千切るなんていう芸当は人の力ではとても出来ないことだろうし、君の場合はどちらかと言うと『外す』に近かったしね?」
「ああ、それは色々と事情があってだな...」
そんなふうな話をしていた時、
コンコン、とドアをノックする音が響いた。
今回はここまでです
乙
oz
投下します
「上条ちゃ?ん! お見舞いに来たのですよ?!」
「私も一緒なんだよ!」
入ってきたのは2人の少女ーー片方は先生ーーだった。
「んじゃ、僕は出ていくとするよ」
病室に入ってきた2人を見た医者は、そう言って病室を後にした。
「話は全部お医者さんから聞いてるのですよ? 上条ちゃんもですがそこのあなたも自分の体を大事にしてくださいねー?」
「あ、ああ、すまない」
急に話を振られて少し戸惑う刹那。 ところでこの幼女は誰なんだろうか?
「おっと、刹那は初めて会うんだったな。 この幼児体型の人は俺のクラスの先生なんだ」
「幼児体型は余計なのですよー!!」
「!?」
目の前でギャーギャー騒いでいる幼女らしき人物は沙慈やルイスの愚痴からよく聞いていた先生という存在であった。
「ここではその幼さでもそういう物に就けるのか?」
自分の頭には、先生というのは将来を担う子供に教養を教える大事な職だと記憶されていた。
「だーかーら!! せんせーは幼くなんかないのですよーっ!!」
プンスカと怒ってはいるものの、あまり怖さが感じられない。 それどころか、可愛いとすら思ってしまう。
「こもえはこれでも成人を終えてるんだよ!」
インデックスが弁明しようと発したその言葉に、刹那は驚愕を顔にした。
「なん...だと...!?」
『世の中にはどんな人でもいるんだな...』
さっきから静観してきたティエリアは、この事について強引に結論づけた。
『だが、これはあまりにもひどすぎだと思うぞ? そういう能力なのだろうか...』
ティエリアの強引な結論に異議を唱えるが、刹那本人も考えることを諦めかけていた。
「すまない、俺のミスだ」
『何かおかしくなってるぞ刹那』
「フフン! 謝れば良いのですよ!」
『...』
ティエリアは突っ込むのをやめ、静観に戻った。
「自己紹介がまだだったな、俺は刹那・F・セイエイだ。 よろしく頼む」
「月詠小萌です。 こちらこそよろしくなのですよー」
2人が和解するところを見て、インデックスはこう言った。
「うんうん! やっぱり仲良しが一番な...んだ...よ...」
だが、突然襲った目眩と頭痛で足がふらついてしまう。 小萌が抱き留めることで床に倒れるのは免れたが、彼女は気を失ってしまった。
「シスターちゃん!? シスターちゃん! しっかりしてください! 」
突然の事態に場が騒然となった。
「やはり...!」
刹那は歯ぎしりをする。 嫌な予感は現実になった。
「それは本当なのか!?」
驚いている上条の質問に刹那が答える。
「わからない。 だが、これだと全ての辻褄が合う」
現在、インデックスは上条のベッドに寝かせてある。 依然、様態は優れないままだ。
そして、彼らの病室にはステイルと神裂もいた。
「確かに、それだと納得がいきますね...」
「女狐め...!」
刹那は、過去にティエリアが言っていたことを思い出していた。
ーー魔導書というものがかなり危険で、それ自体が戦争の火種になりかねないような代物だとしたら、それを記憶したインデックスを彼らの上司が放っておく筈がないーー
上層部は彼女になんらかの『首輪』をつけ、1年ごとにメンテを必要とする体にしたのだ。
(歪んでいる...)
今まで幾度となく色々な歪みを見てきた。 そしてまた、新たなる歪みと直面しようとしている。
(その歪み...この俺が破壊する!!)
記憶消去するはずだった日まで今日含めてあと3日だ、とステイル達は言った。 恐らくそれがタイムリミットで、それまでに『首輪』を破壊しなければならない。
「その『首輪』が魔術なら、俺の右手で壊せる筈だ!」
上条は今すぐにでもインデックスのもとへ向かおうとしたが、
「ぐっ...!」
全身の痛みが彼を襲った。
「落ち着いてください」
神裂が制止する。
「だけどっ...!!」
その時、再び病室のドアを叩く音が響いた。
「開いているぞ」
刹那の返事を聞き、叩いた人物はドアをゆっくりと開けた。
「ちょっと話したいことがあるね? あと、病室には鍵はついてないよ」
入ってきた人物は、冥土返し(ヘブンキャンセラー)と呼ばれている、カエル顔の医者であった。
「で、話したいことってのはなんですか?」
上条がそう聞くと、医者はポケットからある紙を取り出した。
「あのシスターの子をついでにと言っちゃ何だが調べたんだけどね? 彼女の口腔内にーー」
それは写真で、それに写っていたのは...
「ーー数字の4みたいなのがくっついてたんだ、何か知ってるかい?」
その写真を見て、ステイルと神裂ははっ、とした表情を浮かべ、そそくさと病室を出て行った。
(こうしている間にも...インデックスは苦しんでいるんだ...! 早く行かないと!)
「ちょ、あまり動かない方が...」
病室を出ようとした上条を医者は止めるが、
「すみません、でも今は...!」
上条はそれを振り払い、痛みを抱えながらも病室を出て行った。
「まさか君まで行くつもりかい?」
そう言って刹那の方を向くと、彼は左腕の医療器具を外していた。
「本当にすまない。 お前には迷惑をかける」
病室を走って出て行く刹那の後ろ姿を見ながら、医者は頭を抱えて呟いた。
「はあ...まったく、ため息しか出てこないよ?」
今回はここまでです。
投下します
「ダメだ...解析できない...!」
ステイルはその齢にして独自のルーンを生み出すという難儀をやってのけた天才、だがそれですらも目の前の術式を解くことは出来なかった。
「なあ...俺に代わってくれないか?」
その様子を見ていた上条が寝息を立てているインデックスの元へ歩み寄った。
「君の右手は確かに不可解なものだが、僕としては慎重に行きたいところなんだ」
「ここまできてなんでそうな...ぐっ...!」
上条とステイルは揉めだした。 それを神裂が間に入る。
「2人とも! ここで揉めるのは止めなさい!」
「しかし神裂...!」
「今は...彼の右手に賭けてみるべきです。 かなり曖昧で、危険な可能性なのかもしれません。 ですが...」
神裂は刹那の支えを借りてなんとか立っている上条に目を向けた。
神裂は続きを言おうとしたが、それはとある少女の、呟きにも思えるような微かな声に遮られた。
「とーま...せつな...すている...かおり...」
「みんな...ありがとうなんだよ...」
「とーまとせつなは...見知らぬ...わた...しを...助け...て...くれた...」
「すていると...かおりは...私を...命の...危険からた...すけて...くれ...た...」
その声は掠れていたが、静かな病室には十分と言って良いほど響いた。
「私は...みんなを...信じてる...から...」
上条は、煌びやかな銀髪を撫でながらこう言った。
「インデックス...お前は俺達が必ず救う。 だから、今は楽にしていてくれ...!」
インデックスはそれを聞いて、また眠りについた。
「なあ...」
その光景を見ながら、刹那はステイルに呼びかける
「うん? なんだい?」
「ここら一帯に“人がいなくなる”魔術を仕掛けてくれないか?」
「“人払い”かい? まあいいけど」
戦場で培ってきた勘は、何か危険なことが起きると告げていた。
上条はすでにインデックスの口内へ右手を入れていた。
沈黙は、バギン!という大きな音によって破られた。 吹っ飛ばされた上条を神裂が抱き留める。
「ーー警告、第三章第二節」
インデックスがむくり、と起き上がる。
「“首輪”の破壊を確認。 再生、ーー失敗」
その瞳に光がないように見えるのは、気のせいだろうか。
「“書庫”の保護のため、侵入者の排除を優先します」
ドアを背にして立った彼女であり彼女ではない何かーーその名も自動書記ーーは、淡々と上条達に死の宣告を下した。
長い夜が始まった。
「侵入者に対して最も有効な術式を構築、ーー成功」
「これより、“聖ジョージの聖域”を発動、侵入者を排除します」
自動書記の目の前の空間が裂けた。
「『Salvare000』」
神裂はそう呟いた。 7本のワイヤーがインデックスの立っていた場所を削る。
仰向けに倒れた自動書記の顔あたりーー正確には、空間の裂け目の真ん中ーーから、光線が発射された。
「フッ...上が屋上で幸いだったな」
「彼女が魔術を使えないのも、嘘だったという訳ですか」
自動書記が放った光線は、天井を貫き、空へと消えていった。
「あれは、“竜王の殺息(ドラゴンブレス)”!! 無限の射程を誇る高威力の光線です!」
『トランザムライザーのような魔術があるとはね』
確かに、刹那が放った物と“竜王の吐息”は似ていた。
自動書記が体勢を立て直し、無限の射程を誇る光線は、上条達に迫る。だがーー
「『Fortis931』...イノケンティウス!!」
ーー突如として顕現した炎の巨人が、自らを盾にしてそれを防いだ。
「 ーー警告、第二十二章第一節。 炎の魔術の術式の逆算に成功しました」
「曲解した十字教の教義をルーンにより記述したものと判明、対十字教用の術式を構築ーー成功」
「命名“神よ、何故私を見捨てたのですか(エル・エリ・レマ・サバク)”、発動」
自動書記が“竜王の殺息”に対イノケンティウス用の術式を付加したことにより、炎の巨人は光線に押されて間もなく貫かれたが、その後ろには刹那が仕込んだELSの厚い壁があった。
「ぐっ…!」
(ELSの再生が追いついていない…! なんて威力なんだ!?)
刹那は手を前に出して、掌から現出させたELSを壁に付加させることで光線を食い止めようとするが、それすらも間に合わない程に光線の威力は強かった。
(このままじゃ…!)
その時、何者かの叫び声が聞こえた。
「刹那あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
窓ガラスを割って登場した叫び声の主は、刹那のよく知る人物であった。
「ティエリア!?」
「説明は後だ!」
彼はそう言って刹那の隣に立ち、刹那と同じように掌からELSを現出させ、新たに壁に付加した。
一度は貫かれんとされた金属生命体の壁は、どんどん厚みを増していった。
「何をしている上条当麻!」
突然の事態の連続でどこかへ行っていた彼の意識は、ステイルの叫びで再び現実に引き戻された。
「彼女を救うと本人の目の前で誓ったのに…いつまでそこで突っ立っている気だ!」
「っ…!?」
「君達も僕達も願ってきた最高の結末は目の前にある! 君は今更それを台無しにするつもりかい!?」
普段のステイルには似合わない叱咤を受け、上条は走り出す、この物語をハッピーエンドで終わらせるために。
(そうだよな…救わねえとな!!)
彼女を上層部のエゴから救い出すために。
「いいぜ、神様!」
上条は駆ける
「この世界がテメェの作ったシステム通りに動いてるってんなら…まずは…」
右手が
「その幻想をぶち殺す!!」
触れた。
ーーバギン!
気を失った少女を抱きかかえるヒーローの姿は…彼らの周りに浮かぶ白い羽とも相まって、とても幻想的であった。
長い夜は…終わった。
今回はここまでです。
多分次の投下で終わりかな…? 明日くらいにまたする予定です。
乙でした。
おつかれさまでした
* \ 刹那あぁぁぁぁぁぁぁぁ!! /*
* ( \/ /_∧ <./| /| + /\___
+ ..ヽ/ /Д`/⌒ヽ / .| / / / //
。 / /\/ ,ヘ i  ̄ > \_/ * /____//
し' \_/ i />  ̄ ̄ ̄ ̄
+ i⌒ヽ ./  ̄>__ + 。 ..|| |::
/⌒ヽ i i \( .|/ / /\ + .|| |::
* ..i | /ヽ ヽ *∠__/  ̄ + *..|| |::
ヽ ヽ| |、 \_ノ > <> * || |::
。 \| )  ̄ ./V * 。 .|| |::
____ .ノ ./⌒)∧ / ..+_________||___
。 / し'.ヽ ( .∨ /\________|__|
投下します。
翌日 病院内にて、
「この病院に風が吹き込んでくる穴を作ってもらっては困るんだけどね?」
「本当にすまない」
「まあ君の体内のELSだったかね? あってよかったよ、工事が終わるまではそれが天井を作ってくれてるね?」
昨夜の出来事は、“人払い”によって目撃者はいなかった。騒音はやばかっただろうが。
刹那は今、左腕を吊して上体を起こした状態でベッドにいた。
「じゃあ、僕は診察があるから戻るとするよ」
冥土返しはそう言うと病室を出ていった。
しんと静まり返る病室には、刹那以外にもう1人患者がいた。
「それにしても刹那さん、」
「ん? なんだ?」
と、そこで、医者と入れ違いのような形で病室に入ってきた人物がいた。
「とーま! せつな! お見舞いにきたんだよ!」
彼女は嬉しそうにそう言うが、
「…病室間違ってないですか?」
返ってきたのは予想外の言葉であった。
「え…?」
その言葉に、インデックスは困惑した。
刹那の方を向くと、彼はダメだった、と言わんばかりの表情を返した
「覚えて…ないの?」
「とーまは…ベランダに引っかかってた私に、サラダを作ってくれたんだよ?」
「見知らぬ私を地獄の底から引きずり上げてくれたんだよ?」
「すまない、俺のミスでこいつは記憶を失ってしまったんだ」
刹那が険しい表情でそう言った。 その言葉は、彼女の胸に深く突き刺さった。
「そんな…どうしてとーまが…」
シスターはその場に崩れた。
「なーんてな、ほら顔上げろよ」
俯いていた彼女が言われた通りに顔を上げてみると、そこにはドッキリ大成功! と書かれたプラカードならぬELSカードを掲げた上条がいた。
「えっ…え!?」
「お前みたいな濃い奴を忘れる訳ないだろ?」
見れば刹那も微笑んでいた。
「っ???!」
ガブリ! と嫌な音と、上条の悲鳴が病室に響いた。
「とーまなんてもー知らない! せつなも知らないもんっ!」
白いシスターは怒って病室を後にしてしまった。
「刹那さん」
「なんだ?」
「あの子がインデックスで間違いないですよね?」
「ああ…そうだ」
「この僕が負けるなんて悔しいことだ」と言ったときの医者の表情を刹那は忘れられなかった。
昨夜、白い羽の危険性を聞いたときには既に遅かった。 ELSで羽を防ごうとしたが、間に合わなかった。
(もっと早く動けていれば…!)
彼はずっと後悔している。 一生の不覚となり得るかもしれない。
「刹那さん、さっきの続きですけど…」
「ああ…」
「俺、あなたとさっきの子とはどこかで会ったような気がするんです…」
「…」
そう言った彼は、どこか遠い目をしていた。
「…上条」
しばらくして刹那が上条に呼びかけた。
「はい?」
「敬語はいらないし、さん付けも不要だ」
「さいでっか…」
自分が思っていた事と全く違う返答がきたので、上条は少しうろたえた。
「これを言うのも2回目だぞ?」
「そうなんだ…」
「少し外の空気を吸ってくる」
そう言って刹那は立ち上がった。
「おう」
適当な返事をして上条はベッドに寝そべる。
「あああと、刹那」
「なんだ?」
言い忘れたことがあったため、上条は慌てて刹那を呼び止めた。
「俺は、記憶を失ったことは確かに不幸なことだと思うけど、だからと言ってそれを恨んだりはしないつもりだ」
「…そうか」
全てを見透かされているような気がして、刹那はむずがゆさを覚えながらも病室を後にした。
「さて、これからどうすっかねぇ…」
上条1人だけとなった病室で、彼はぽつんと独り言を呟いた。
後日 某所
イギリス清教の最大主教ことローラ・スチュワートは目の前の紙を凝視していた。
その紙には請求書という3つの文字がでかでかと並べられており、また、それは学園都市から送られてきていた。
そこには公園、道路、学生寮、病院などの修理費用が記載されており、合計金額の欄に書いてある数字は地球人口などとうに超えていた。
「Oh no…」
ローラはバタリと倒れるのであった。 請求書は、並みの魔術師より強かったのである。
ーーーーーおわり
>>83
ワロタ
はい。ということでここで本編終了です。
物書き自体初めてだったのでよくわからず迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ありません。
それと、こんな駄文を最後まで見てきて下さった方々、本当にありがとうございます。
機会があれば続きか、新作を書こうかと思っています。台本形式にも挑戦してみたいですね!
ではではノシ
乙
よかったよ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません