【習作】百合SS、 (47)
「ねえ、あなたの瞳には一体何映っているのかしら」
そう問いかけるのは私の向かい座っている、高校二年生のわりに幼い顔立ちに、長いおさげが目立つ女の子
ここでは彼女を「A子」とでも呼ばせてもらおう
A子がそう問いかけていた相手は向かいに座る私ではなく、ここから中庭を隔てた教室にいる
(いかにも、名家のお嬢様風な・・・)
先輩であった。
うっとりとした表情で、A子は先輩を見つめている
そう、A子は「同性愛者」なのだ
だから他の生徒は彼女を避けている、なにしろ彼女の想いは軽い物ではなく
「あなたのためならなんだってできる」程の物だ
「あなたの為なら、私はなんだってできるのに」
考えたそばから、A子はそんな事を口走る
「ああ、私、こうしてるだけで凄く幸せ」
A子がそんな少女漫画チックな言葉を迷いなく吐く、
まあ少なからずそこにも避けられる原因はあるのだろうが。
なぜ、私はそんなA子の側にいるのかと思った人も少しはいるだろう
それは私が解説役をしたいからでも、A子と同じく先輩が好きだからでもない
他ならぬ私が、彼女を初めて見た時・・・「A子のためなら、なんだってできる」と
そう、思わされてしまったからだ。
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彼女は避けられていると前記したが、先輩に対する彼女の想いを理解できない者はごく少ないと言っていい
なにしろその先輩の美しい事、端正な顔立ち、流れるような黒髪、白くきめ細かい肌は、誰もが先輩を
(この世のものともおもえぬほど、美しい)
と、そう思わせるに十分な程だ
そうそう、いつまでも文章中で私を「私」としか表現できないのは不便なので
私の事は無難に「B子」とでも書かせてもらおう
「B子、ねえ見て、先輩が本を読んでる!」
「そりゃあ、本くらい読むでしょ」
「よく見て、あの本・・・政治経済の本なのよ!!」
知った事か。
あやうくこんな言葉が出かかったが、私の口から出たのは
「あ」
という、はっとした声だけだった
先輩と、目が合った
先輩は、確かにこちらを見ていた
「B子?」
「あ・・・」
目を、そらせなかった
まるで、蛇に見込まれた蛙のように、私は動けなかった
「B子!」
「!」ビクッ
A子の声で、私は我に帰った
「ずるい!何見つめあってるの」
「いや、見つめ合ってるってそんな」
「羨ましい・・・」
(・・・先輩の目、まるで私を敵視するような・・・?)
そう思ったが、杞憂だとろうと忘れる事にした
「A子、そろそろ帰ろう」
「まだ、眺めていたいわ」
「いいから」
少し乱暴かとも思ったが、無理やりA子の手を引いて
一緒に帰る事にした
そして、その道中
「ちょっと、どうしたのよ」
「A子はさ、先輩に告白はしないわけ?」
質問を投げ掛けた瞬間、A子は立ち止まって
「えっ?」と言い、顔を赤くした
「教えて」
「告白・・・なんて」
こんな、冴えない女があの先輩に告白なんて、嫌われるかもしれないのに
(私に、出きるわけがないじゃない)
とでもいいたそうな顔をして、A子は下を向いた
「でも、先輩が好きなんでしょ」
「私は・・・見てるだけ、それでもいいの」
彼女は自分に言い聞かせるようにそう言った、
「・・・そっか」
「なんでそんなことを聞くのよ」
「友達は、こういう話をするものだよ」
「ふうん、じゃあ私からも聞いちゃおうかな」
「何?」
「B子は、どうして私の友達になったの?」
「友達なんて、なろうとしてなるものじゃないよ」
「じゃあ、私が友達じゃあいや?」
その質問に、私は少し戸惑って
「出来れば、友達であり続けたいな」と答えた
~
自分の部屋で、私は絵を描いていた
私は運動が得意で、よく部活の助っ人として呼ばれるのでその様子は実に
「似つかわしくない」
物だった、
「まだ、寒い」
私はそう呟いて、絵を描く手を止めた
(A子は、今どうしてるんだろう)
窓の外を見ると、はらはらと白い物が落ちてきていた
「積もりそうだね」とA子にメールをし、再び絵を描き始めた。
翌朝、やはり雪はすっかり積もっていた
朝早くから既に何人かの大人が雪かきを初めていたようで
道は確保されている
「おはよう」
「おはよう、早く食べちゃいなさい」
リビングではお母さん既に朝ごはん作って待っていた
テーブルの上には、豆腐の味噌汁に、目玉焼きとトーストが二枚
ほかほかと立ち上る湯気が、私の目をさまさせた
卵の黄身を割り醤油を少し垂らして、それにパンをちょん、とつけて食べるのが私の好みで
パンの一枚目をそうして平らげ、残った白身はもう一枚のパンにのせて食べる
その間に熱い味噌汁を火傷しないよう少しずつ、はふはふ言いながら飲んでいく
珍しくもない朝食だが、これが冬の寝起きの空きっ腹には堪らない。
「いってきます」
味噌汁をもう一杯おかわりした後、私は家を出た
~
教室に入ると、そこにA子の姿はなかった
「おかしいな・・・」
普段なら、朝早くから来て先輩を見ているのに
(まあ、そういうこともあるか)
そう思って、ちらと先輩の教室を見ると
先輩と、また目が合ってしまった
でも、今回は以前のような冷たい眼差しではなく、
いつも通りの優しい目でこちらを見ていた
しばらくすると、先生が教室に入ってきて
「A子さんは今日、風邪でお休みらしいです」と告げた
A子が風邪・・・
そう思うと、今日という日をとたんにつまらなく感じて来た
(どうやら私は、あの子がいないとダメらしい)
くすり、と笑うと
(帰りに、A子の好きな物を買っていってあげよう。)
その日の事はもうあまり覚えていない
A子と友達であるというだけで、クラスの皆から避けられている
話しかけられる事があるとすれば、精々部活の助っ人依頼くらいのものだ
最も私もそんな奴らとつるむ積もりもないので
別に居心地が悪いというわけでもなかった。
「A子、」
「B子・・・お見舞いに来てくれたの?」
「まあね、A子の好きなチョコクッキー買ってきたけど、食べる?」
「いいの?」
「手作りにしようかとも思ったんだけどね、すぐ顔見たかったから買ってきちゃった」
「じゃあ、明日からは手作り?」
「A子がそれがいい、って言うなら」
「じゃあお願い!B子の作るお菓子、美味しいもの」
「外見に似合わず、ね」
「あら、そんなことないわ、良く似合ってると思う」
「とにかく、早く治して学校来なよ」
「クッキーがあんまり美味しいと、それを楽しみにわざと休んじゃうかもね」
「A子、今日は先輩の話、しないね」
「・・・風邪だから、かな」
その翌日、黄色い歓声が聞こえたと思うと
「A子さんは・・・いる?」
先輩が、A子を訪ねて来た
教室にいる面々が顔を見合わせた
「A子・・・?ああ、あいつか、いてもいなくてもかわんないから忘れてましたw」
「先輩があんなやつに・・・あいつなんかやらかしたの?」
私はそこに割り込んでいって
「A子に何か用ですか?」
「用・・・そうね、もしかして、いないの?」
「・・・今、風邪で休んでますよ」
「そう・・・じゃあ、また来るわね」
残念そうにして、先輩は立ち去っていった
私は直感で、
(これは、なにかある・・・)
そう、思った
その日の帰り、昨日作ったクッキーを持ってA子の家に行った
しばらく談笑して、その日は帰った
先輩の事はあえて伏せておいた、A子も、今日は先輩の話はしなかった
熱が、まだあるようだった。
先輩は、その後も毎日私達の教室に現れた
私は思いきって聞いてみることにした
「A子に、何かしたんですか?」
彼女が先輩の話をしない理由は、きっと先輩にある
そう思ったからだ
教室が静まり帰り、先輩の顔が一瞬ぴくりと歪んだ
そして、先輩は少しため息をついて
「私、A子さんにお礼を言いたいの」
「お礼を?」
「ええ、そう」
「だって彼女は、私の命の恩人なんだもの」
~
「A子、先輩がA子にお礼を言いたいって、教室まで来てたよ」
「えっ?」
私の言葉に、少し間を開けてから彼女は驚き、顔を赤くした
「先輩・・・」
A子は頬をリンゴのように赤くしながら、ポーっとした顔で宙を見ている
私は明日のお見舞いはリンゴがいいか・・・などと思いつつ、何があったのか聞き出す事にした
「あの日B子と別れたあと、先輩が不良に絡まれてたのを見かけたの」
「それで、頭が真っ白になって、気がついたら先輩を助けに行ってた」
「え!?それで・・・大丈夫だったの?」
「うん、私はB子と友達なんですよ!って言ったら皆一目散に逃げていったよ」
私は護身術という名目で昔から空手と柔道を習っている
自分で言うのもなんだが、腕には相当の自信がある
不良の12人20人くらいなら無傷で制圧することも出来るだろう
だが、まさか自分の技がこんなふうに役に立つとは思っていなかったので
「まさか、こんな形でねえ」
と、思わず口をついて出てしまった
どうやらA子は、思い詰めて先輩について話さなかったのではなく
少し距離が縮まったはずの先輩の事をあまりにも考えすぎて、話せなかったようだ
「全く、呆れるわ」
「うふ、ふふ・・・」
A子は、まだ赤いままだった
(しかし、それだけで「命の恩人」?)
確かに、何人もの不良に絡まれればそう思うかもしれない
先輩も頭が真っ白になっていた事だろう
それに、確かに私は色んな大会で立て続けに優勝しているが、
不良達がそんな私の事を知っていたのだろうか・・・
結局、私はもやもやとしたままだった
翌週の月曜日、A子は風邪をなおして学校に来ていた
「おはよう、B子」
「おはよう」
やっと、学校でもA子と一緒に過ごせる
A子といれるだけで幸せ・・・なんて、A子のような事を考えてしまい
私は少し照れくさかった
「A子さん、いるかしら?」
先輩が、またもやA子を訪ねてきた
「せ、先輩!」
A子が私の向かいの席から離れ、先輩へと駆け寄って行った
前は見てるだけだったのに、A子、よかったね
そう思おうとしたけど、誰もいなくなった席を見て、
(A子が、私を必要としなくなってしまう・・・)気がして
本当は、A子と先輩を二人きりにさせてあげたかったのに
体が勝手に動いて、気が付けばA子の手を掴んでいた
(私も一緒に)
その言葉を口にしようとした瞬間、我に帰って
「・・・頑張って」
それだけ言って、私は席に戻った
中庭で、先輩とA子が話している
A子は言うまでもなく緊張でガチゴチになっていた
会話の内容は聞こえないが、先輩は楽しそうに笑っていた
結局、二人の会話は朝のホームルームが始まるまで続いた
~
それから休み時間の度に、先輩はA子に会いに来た
「せ、先輩・・・」
A子は、急激に縮まった先輩との距離に馴染めず
今にも溶け出しそうな顔をしている
「A子さん、一緒に帰らない?」
「いいい、いいんですか!?」
「私からお願いしてるのよ、ダメ?」
「A子は私と一緒に帰るんで」
私は自分を抑えることが出来なかった
「あら・・・あなたは」
「話くらい、聞いてますよね」
A子はおどおどと私と先輩を交互に見ている
「やっぱり、あなたがB子さんね」
「はい、A子の友達の」
「A子さんったら、私といる間ずっとあなたの話をしてたわよ、楽しそうにね」
私は先輩を睨み付けた
私と話す先輩の言葉に、心がないのを感じたからだ
「び、B子・・・?」
「そういえば、あなたも私を助けてくれたんだったわね」
そう言うと先輩は悪戯な笑みを浮かべて
「じゃあ、三人で帰りましょう?」
と言った
改行
やっぱ改行したほうがいいですかね、
こっから改行で
帰り道、A子は恨めしげに此方を見ている
「二人とも、すこし寄り道していかない?」
「そんなことしていいんですか?先輩ともあろう人が」
「ちょ、ちょっとB子!いいじゃない寄り道くらい」
「いいのよA子さん、私、皆が思ってるほど優等生じゃないのよ?」
A子を怒らせても仕方がないので、目的を聴く事にした
「どうして寄り道を?」
「あなた達にお礼がしたいからよ」
嘘だ、
今の言葉を聞いてわかった、この人は私達にお礼をしたいわけじゃない
「友達のいない子に手を差し伸べて、気分が良さそうですね」
「B子!なんでさっきからそんな事ばかり・・・」
「随分、嫌われちゃったみたいね」
先輩は冷たく笑った
「私は、出来る事なら二人と仲良くしたいと思ってるのよ?」
そう言うと一歩私に近づいて、
「心も体も・・・ね」
と、耳元で囁いた
私は思わず顔を赤らめてしまった、
それと同時に、この人の本性を確信した、恐らく先輩も勘づいていたのだろう
(この人は、自分と同類だ)
という事に
私は以前、才色兼備、文武両道の秀才として人気者だった
ところが、A子と仲良くなったとたんに、皆手のひらを返した
憧れの視線が、ゴミを見るような冷たい視線に変わったのだ
この人は、そうなる前の私と全く同じ「人気者」で
それと同時に「同性に恋をする」同類。
今まで、自分の性癖を隠してきたのだろう
絶対に白日に晒すまい、と
だけど、私という「同類」がいる事を知り、A子と私(名前だけ)に不良の手から救われ、恋をした
他はどうでもいい、この性癖をさらけ出して皆から避けられても、この子達の側に居られるなら大丈夫だと
そして、葛藤している
私を蹴散らし、A子だけを愛するか、同類の私を含めた三人で仲良く過ごすか
だからこそ、私には先輩の言葉が嘘らしく聞こえたに違いない
私は先輩にとって
(居てもいなくてもいい)
存在だったから。
「先輩、あなたは・・・」
「しーっ」
「ち、ちょっとB子、今何を言われたのかしら・・・?」
「先輩が、ご飯奢ってくれるって」
「B子さんが機嫌をなおしてくれてよかったわ」
「先輩!ホントごめんなさいうちの食いしん坊が!」
「食い気では、私もA子には負けるよ」
「余計な事言わなくていーの!」
「ふふ・・・」
私は、A子が幸せならそれでいいのだ
この人が悪い人ではなくただただ苦悩している人である事がわかった以上、私はもう探りをいれまい
「先輩ってお金持ちそうですよね!」
A子がそう言うと、先輩がビクッと反応した
「そ、そうね、なにが食べたい?あ、親御さんには連絡入れないとダメよ?」
恐らく、好きな相手の前でイメージを崩したくないのだろう、
名家のお嬢様風・・・ではあっても、実際は普通の「女の子」だったようで
私は先輩がとことん同類である事を知って少し満足したと共に、先を歩く先輩の後ろ姿から少し凛々しさが消えているのを見て
少し、先輩に申し訳ない嘘をついてしまったかな、と思った。
ゴミグズ以下スレ
結局、ファミリーレストランに入ることになった
「お会計、5080円になります」
おかしい、先輩はコーヒー一杯だけだし、私は水しか頼んでないのに、恐るべしA子
「ぷは!美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「ご馳走さまでした」
「・・・さ!そろそろ帰りましょうか!」
その声は、少し震えていた
先輩、本当にごめんなさい
その後、私達は先輩とメアドを交換し、それぞれの家に帰った
~
私は自分の部屋で先輩へのメールを打っていた
「今日はごめんなさい、あんな態度をとってしまって・・・今は私も、先輩と仲良くやっていけたらいいと思っています(>_<;)」
そんな旨のメールを送ると、数分とかからず返信が来た
「あなたの事、信じてるからね(^_-)」
絵文字とか使うんだ。
そう思いつつ、私からもたった一言だけ、
「私もです」と返した
お互い性癖が同じで
お互い好きな相手が同じで
お互い秘密を知っている
いつ私が蹴落とされるかはわからないけど、
そうなったらそうなったで、仕方のない事だろう
きっと、この人は彼女を幸せにしてくれるに違いない、と
先輩もそう思っている事だろう
A子は、人気者を惹き付ける、そういう人間なのだ
飛び抜けて可愛らしいわけでもないし、頭がいいわけでも、運動神経がいいわけでもない
ただ、周りに避けられても気にせず、今ある幸せだけを見つめているような瞳が
相手の内懐を突かない純粋な言葉が
私や先輩に、「A子の幸せ」を願わせるのかもしれない
~
私は、正直言って人気者だ
誰もが私を「美しい」とか「流石」とか、そんな言葉で誉め讃える
だけど、もう限界
(我慢をするのは、もう・・・限界なのよ
私は、普通の家に生まれて、偶然お嬢様学校に入っただけ
それなのに・・・)
私は、疲れきっていた
見栄っ張りな性格も災いして、人一倍知識を身につけた
誰がどう見ても「秀才」のイメージが崩れないように
少しでも頭がよさそうに見せるために、つまらない政治経済の本まで買ってしまった
でも、だそこまでしたからこそ今になってイメージを崩すまいと、どんどんこの沼に足を取られてしまう
実際は、こんな駄目な人間なのに・・・
少し凛々しく振る舞うだけで、皆が私に黄色い声をあげる
もう、こんな生活にはうんざりしている、でも、私の性格がそれを止めることを許さない
(自分も周りも、いやになるわ)
ある日、B子さんと一緒に活動した事があった、生徒会関連の事だったと思う
その子の仕事の早さに私は目を奪われた
いや、仕事の早さよりも、その態度に目を引かれたのかも
だって、彼女の目に「私」が映っていなかったから
こんな事は初めてだった、私は彼女の事が知りたくて仕方がなくなってしまった
私は、彼女の事を知ってそうな人に、彼女の事を聞いてまわった
・・・今思うと、少しストーカーみたいだけど
解ったことは、彼女が運動神経バツグンで、成績も常に上位だと言うこと
(あれ?でも・・・)
彼女はあの時、一度も話しかけられていなかった
それこそ「避けられている」ような・・・
それほど凄い人がどうして周りから好かれていないのだろう
私は、ますます彼女にのめりこんで行った。
中庭越しに彼女のいる教室を眺める、彼女も私も丁度窓際の列だったから彼女の顔までしっかり見えた
彼女はずっと1人の女の子と喋っていた、地味で、幼げな顔立ちの、おさげの女の子と
(あの子がうらやましい・・・)
そう思ってしまった
私の中で既に彼女は、それほどに特別な存在になっていた
彼女の一挙一動気になって仕方がない、
私の見ていないところではどんな表情をしてるんだろう
(って私、少女マンガの恋する乙女みたいじゃない・・・)
恋・・・
まさかね、私に限って女の子に恋なんてするわけないじゃない。
そう思って彼女の方を見ると、彼女と
目が、合った
私は息が詰まりそうになった、こんな視線を受けたのは初めてだった
彼女は”私の事を見ようとしていない”
目が合っているにもかかわらず、それしか言い表せる言葉がなかった
初めての経験に胸がドキドキする、
彼女が欲しい、と本気で思うほどに
(あれ?なんだか彼女、顔色が悪くなったような・・・)
それで私は我に帰り、目を反らした
(もしかしたら、今ので私の印象が悪くなったかも?)
そういえば、私の事を何て呼ぼうか決めてなかったわ、
面倒だから。C子でいい、少しダサいかしら?
~
「おい姉ちゃん、ちょっと俺らと遊んでよ」
そんな古典的セリフで、不良達が私の行く手を阻んだ
私は、わざと路地裏連れていかれて、
「た、助けて・・・」
「誰も来やしねえよ、ほら、こっちこプベッ!」
皆から誉められるために習った見栄っ張り拳の威力をなめてはいけない
ここで反撃すれば目撃されることもないわ
「せ、せんぱい!」
そう思った瞬間、後輩らしき人物の声が聞こえたものだから、私は驚いて後ずさってしまった
後輩(?)は私の前に躍り出て
「~~~~~!」
声にならない声を発していた
どうやらパニックになっているらしい
私が不良達を睨み付けると、先ほどのパンチを見て恐れをなした不良達が一目散に逃げていった
影で倒れてる不良が後輩に見つからないようにしながら、後輩と二人して路地裏から出た
「ぶ、無事でよかったです・・・!ありがとうB子!」
(B子?)
そういえばこの子、あの・・・
乙
この子を手懐ければ、あの子に近づけるかも
「助けてくれてありがとう、あなたは・・・」
「わ、私はA子って言います!前から先輩に憧れててですね!」
「そう、A子さんね!」
私はA子さんの手を取り、目一杯の笑顔を浮かべた
でもそれは私にとって特別な事ではなく、”誰からも愛される為”に身に付けた物の一つでしかなかったけど
「は、はわあ・・・!」
くらっ、っとA子さんが私に倒れかかる
そしてそれと同時に、雪が降り始めてきた
(これは、積もりそうね・・・)
A子さんは私の胸に顔を埋めて完全に脱力している
「A子さん、A子さん?」
「ふあ・・・?せんぱい・・・」
「雪が降ってきたわ、帰らないと」
「はい・・・」
「A子さんの家はどのあたり?」
「はい・・・」
(駄目ね、これは・・・)
私はA子さんを屋根つきのベンチに連れていき、正気に戻るまで一緒に座っていた
(あの子は、B子さんはなんでこの子と一緒にいるのかしら)
さっきこの子は、私に憧れてると言った、ならもしもこの子がB子さんにとって大切な人なら
(私は、B子さんにどう思われているのだろう、疎ましい存在なのかしら)
それでも、私ならできるはず
A子さんとB子さんの仲を壊さず、B子さんを私の虜にする事が
だって、私に今まで実現出来なかった事はないのだから
私は頭がいい、というほんの見栄からテストで学年一位になった
私は料理が得意、というほんの見栄から和洋中の基本を身に付けた
だから今度も、どれだけ努力が必要だろうと、絶対にB子さんを私のものに・・・
「きゃっ!?」
突然A子さんが叫び声を上げた、どうやら正気に戻ったみたい
「せ、先輩!どうして先輩が私の隣に!?」
「あなたが心配だったから、迷惑だった?」
我ながら、よくもまあこんな言葉が出る
「さ、そろそろ帰りましょう?」
「あう・・・」
A子さんは顔を真っ赤にしてうつむいている、その様子は実に可愛らしかった
「また明日、学校で・・・」
私はそう言い残して、再び帰路についた
地の文がただの状況説明になっている。
頭の中で文章を組み立てて形にしてから文字におこしてみ
支援
好きな感じだ。支援
更新ペースがあまりにも安定しなさすぎてすみまそん
全部積みゲーが悪いんや
アドバイスにも気を付けて書いてきます
翌日、この日は私にとって初めての「楽しみな登校日」となった、
(待ってなさいよ、B子さん)
そう意気込みながら玄関のドアを開けると、私の母を含む近所の人々が雪かきをしていた
「C子、おはよう」
「おはようお母さん、言ってくれれば手伝ったのに、今からでも・・・」
「なーにいってんの、あんたはいっつも頑張りすぎなんだから、気にせずいってらっしゃい」
「ふふ、じゃあ行ってきます」
首にチェックのマフラー、昔作った手編みの手袋に、胸ポケットには使い捨てカイロ
そんな完全防備でも、まだ寒いと感じさせられてしまう
(冬はやっぱり嫌いだわ・・・とはいえ、夏が好きな訳でもないけど、やっぱり春か秋・・・)
~
学校に着くと、私は授業の準備をととのえてすぐB子さんの教室へ向かった
中庭を隔てて20数メートル程度の距離なので、あっという間だ
私の登場に、後輩の面々がキャーキャー騒ぎだす、
ところが
「A子さんは・・・いる?」
私がそう言うと教室が一気に静まり帰った、次第にざわついては来たものの、そこから聞こえる言葉は
「A子はいてもいなくても変わらないから忘れてた」とか
「あいつ、先輩になにかやらかしたのか?」という物だった
(もしかして、B子さんが避けられていたのは・・・)
その矢先、B子さんが私の前にずいと現れた、
「A子に何か用ですか?」
「用・・・(近い!近いわよ!)」
唐突なB子さんの登場には驚いたが、そこはいつものポーカーフェイスで・・・
「そうね、もしかして、いないの?」
(ポーカーフェイス・・・ああ駄目、ぎこちない!無理よ無理!こんなにB子さんと接近した状態で・・・!)
「・・・今、風邪で休んでますよ」
私は助け船を出された気分だった、これ以上続けていたら、頭からつま先まで真っ赤になってしまう
「そう・・・じゃあ、また来るわね」
感情を出来るだけ抑えつつ教室を出た、今日はもうB子さんと会う口実がないと思うと残念だけど、そうも言っていられなかった
「ぷはっ!」
(B子さん・・・手強い!この私にあ、あんな態度で接近してくるなんて・・・あ、あんな・・・)
ドキドキしすぎて火傷しそうなほど顔が熱い、これも初めての経験だった
(水道で顔を洗ってから教室に戻ろう・・・こんな顔を皆に見せる訳にはいかないわ)
(それにしても、風邪、ね・・・A子さん大丈夫かしら)
~
最初の目的はともかく、もう私にとってA子さんは「可愛い後輩」だった
私は職員室でA子さんの住所を聞き、放課後になると真っ先にお見舞いに向かった
「ここね・・・」
インターホンを押すと、A子さんのお母さんが出迎えてくれた
「B子ちゃん、お見舞いに来てくれたの?悪いわねえ・・・って、あら?」
「初めまして、私C子って言います、入っても・・・?」
「まー、B子ちゃんに負けず劣らずキレイな子ねえ!A子ったら友達に恵まれてるわあ」
「あの」
「三年生?忙しいのにホント悪いわねえ」ペチャクチャ
「あの~」
「あ、やだわもう私ったら、つい話込む所だったわ、昔っからそうなのよ~ごめんなさいねホントに」
「いえ、大丈夫ですよ」
「あらそう?いい子ね~うちのA子とは大違いだわ、あの子ったらすぐ怒るのよ~」
「あの・・・(いつになったら入れるのかしら)」
それから五分くらい経った後、私はようやくA子さんの家に入ることが出来た
お、更新されてる
A子さんはベッドに横たわってぐっすりと寝ていた、
熱の具合が気になるけど、生憎体温計などは持ってないので断念する事に
(B子さんならこういう場合、A子さんの額におでこをくっつけたりしちゃうのかしら・・・)
勝手な想像なのはわかっているけど、そう思うとこの間のようにまたA子さんが羨ましくなって来る
なにしろ、B子さんの彼女に対する態度を遠くから見ていると、そんな事も
やりかねない・・・と、思わされる所があるから
B子さんももうすぐお見舞いに来るはず、出来るなら一緒にいたい所だけど
私が一緒にいたのではB子さんもやりづらいだろうし、A子さんに至ってはこの間のようになる恐れがある
(A子さんが目を覚ます前に帰ろうと思ったけど・・・何も出来ず帰るのもなんだし、少しでも、ね。)
A子さんの頭を少しだけ撫でた、
A子さんは心地よさげな息を漏らし、寝苦しそうにしていた顔を弛ませる
その幸せそうな顔を見ると、先ほどまで彼女に抱いていた感情も吹き飛んでしまい
少しだけ、のつもりが3分近く撫で続けてしまった
(なんでB子さんが彼女の側にいるのか、分かった気がする)
そんな事を思いながら私はすっ、と立ち上がり
A子さんの家を後にした
~
翌日も、その翌日も、私はB子さんの教室に赴いた
そしてその度「A子さんは今日も来ていない」という助け船を得て自分の教室に帰る、という事を繰り返していた
私が恥ずかしさからB子さんとマトモに会話できない事に、B子さん自身周りの人を遠ざけている事も相まって
結局週末になっても、B子さんと友達になることすら出来ていなかった
そしてB子さんとの距離を縮めるには、やはりA子さんの存在が必要不可欠だという事を知って、自分が情けなくなった
「C子さん、お弁当作ってきたんだけど・・・」
「C子さん、い、一緒に学食に・・・」
私は、友人を作った事はない
誰もが私を慕うが故に、次々に友人を作っていてはそれぞれに構うのが面倒だし、
ある程度の距離で踏み留まれば、このように声をかけられても
「ごめんなさい、」
と、断るのに心も傷まず、気にも病むことはない。
誰に取り入ろうとしなくとも、誰を遠ざけようとしたって、私の周りに誰もが集まってくる
(それが、私のはずだったのに・・・)
彼女だけが、私に興味を示さない
彼女だけが、私に冷たい視線を送る
そんな彼女だけが、私を夢中にさせていった
(彼女になら、私はどんな事をされてもいい・・・)
最近はそんな妄想すらしてしまうほど、
見栄っぱりな性格といい、彼女への想いといい・・・
全く私の行く道はどこまでも、まるで泥沼のようなのでした
~
「A子に、何かしたんですか?」
彼女、B子さんの言葉が胸に突き刺さる
(また、冷たい目を向けられちゃった・・・)
私はB子さんの態度に倒錯的な興奮を覚えてしまうようになったが、それはまあ別の話
「私、A子さんにお礼を言いに来たのよ」
「お礼を?」
「ええ、そう
だって彼女は、私の命の恩人なんだもの」
本当は私が助けた形なんだけどA子さんはそれに気づいてないし、それにこの方がこの教室に来る口実としてもちょうどいいわ
少し・・・、かなり誇大すぎたかもしれないけどね。
「・・・」
「え、ええと、じゃあ教室に戻るわね?」
「はい、じゃあまた・・・」
(どこまでもクールな子ね・・・なんで私が話しかけているのに、こんなに淡々と・・・まあ、私もそこに惹かれている訳だけどね)
自分の教室へ戻ろうとすると、数人の後輩が私を呼び止めた
なにか、言いづらい要件のように伺える表情をしていた
「何かしら?」
「あの~A子、・・・さんのことなんですけど、あまり関わらない方がいいですよ」
「・・・?」
私は薄々気づいていた、B子さんが避けられてる理由に
その原因は・・・A子さんにあるであろう事を
「A子は、いえ、A子さんは、凄い変人で・・・なんというかその、」
「もうすぐHRが始まるわよ、単刀直入にお願い」
「は、はい・・・A子さんは・・・レズビアンらしいんですよ」
「それだけ?」
「しかも、先輩の事がその・・・好きみたいで」
「だから・・・それだけ?」
後輩達はまだ何か言いたそうな顔はしたものの、それ以上なにも言わなかった
初めて見せる私の威圧的な態度に、驚いてしまったのかもしれない
それにしても、盲点だった
A子さんが私を慕っている事は、彼女と出会ってすぐに分かった
しかし、自分がB子さんに恋をしてしまったが故に、それ(同性に恋心を抱く事)がおかしい事だとはすっかり忘れていたようで
でも、それだけであそこまで「避けられる」はずはない、きっとも他に避けられる要因があるはずよね
もしあるとすれば・・・
~
「レズビアン・・・か」
その言葉の響きがなんだか不愉快だった私は、珍しく、絵を描いていた
珍しく、とは言っても勿論腕のはかなりの自信がある、これも見栄っ張りの成果だ
描いているのは、百合の花
女性同士の同性愛を表す言葉としても使われている、百合
(私は、好きになってしまった相手が偶然女の子だった、それだけ
どっちみち、もうレズビアンと言われて避けられても構わないんだけどね・・・他の子達なんて、どうでもいい)
B子さんとA子さん、二人と仲良くなれればそれでいい
(ん?A子さんとは仲良くなるだけ・・・それで、いいのよね?)
~
「A子さん、いるかしら?」
「せ、先輩!」
A子さんがB子さんの向かいの席を離れてこちらに駆け寄ってくる
しかし、いつのまにかA子さんの腕をB子さんが引いていた
「・・・頑張って」
普段通りに振る舞ってはいたが、その様子は行かないでと訴えているようだった
彼女にとって、A子さんはそれほどに大切な存在だという事だろう
自分の欲望を抑えて、A子さんの幸せを選ぶほどに
「中庭で、少しお話しましょう?」
「ええっ!?いいんですか!」
「私から、お願いしてるのよ」
まずはあなたと仲良くならなくちゃ始まらないもの
「えっと・・・あの、その・・・」
「もう、そんなに緊張しないで」
「でも、本当にいいんですか?私なんかが話相手で・・・」
「あら、どうしてそんな事を聞くの?」
「だって、先輩はクラスメイトの皆ともろくに喋ってな・・・
ああ!違うんです!決してずっと先輩をみてた訳じゃなくて!」
「見てたんだ?私の事」
私が笑いながら問いかけると、A子さんは今にも火を吹きそうに赤くなっていた
「うう~・・・」
「うふふ、恥ずかしい?」
「恥ずかしいですよう!」
「A子さんは少女漫画みたいな事を平気で言う子って聞いてたけど、実際は恥ずかしがりやさんなのね」
「先輩の・・・前、だから・・・」
「えっ?」
「だって、先輩は私の憧れで・・・その先輩が、こうして近くにいて、しかも喋ってるなんて・・・」
「・・・可愛い。」
「どえ!?」
私は、思わず口走っていた
(別に、A子さんの事は好きじゃない・・・のに、どうして?)
「あ、あら、もうすぐHRの時間ね、それじゃあまた休み時間に会いましょう?」
「いいんですか!?」
「もう、そればっかりね」
「あ・・・」
「また後で、ね?」
「は、はい!」
支援
次の更新は一週間くらい後になりそうです、
只でさえ更新遅いというのに・・・
その間に文章練っときます
乙乙
再開
私が、B子さんについて聞き回っていた時小耳にはさんだ話によると
B子さんは俗にいう「天才」で、これはもう以前から知っていた話なのだが
その実は、私の想像する物とは全く違う物だった
授業中はまともに授業を聞いていたためしがない、つまり努力せずしての天才だったのだ
これも、避けられている原因の一つであることは否めない
私が天才天才と言われながら誰からも好かれていたのは、その才が努力ありきの物だったからだし
彼女のその「努力しなくても出来る」事に憤りを覚える人間は少くないだろう
生徒だけに限らず、教師までもが彼女を嫌な顔をして扱っている事も考えるまでもない
「ふむ・・・」
私は、少しずつ彼女達のことが分かって行くのが堪らなくたのしかった
「じゃあここの問題、C子さん解いて」
「あ、はい」
正直ぼーっとしていた私だが、それでもさらさらと問題を解いていく
こんな問題はずっと前に何度も予習していたので、聞いていなくても普通に出来ただけだけど
「おお、」「さすがC子さん」「凄い・・・」
そんな声が後ろから聞こえてくる
B子さんが同じ事をしたら、舌打ちを浴びせるだろうに・・・
これだから、私は周りの人とは仲良くしたくない
後輩も、A子さんとB子さんだけが私にとって初めての「かわいい後輩」と呼べる存在だった
「A子さん、一緒に帰らない?」
私は、B子さんの目の前でA子さんを誘って見せた
「いいい、いいんですか!?」
「私からお願いしてるのよ、ダメ?」
「A子は私と一緒に帰るんで」
かかった!
直接B子さんを誘うことは、関係上まだ出来ない・・・から、こうするしかなかったけど、うまくかかってくれた
でも油断はできない、彼女ほどの人物に安い嘘は通じないはずだ
最初は全くB子さんを意識していなかった体で、話を続けなくては
「あら・・・あなたは・・・」
「話くらい、聞いてますよね」
本当は、色んな人から聞いて回ってたんだけど
「やっぱり、あなたがB子さんね」
「はい、A子の友達の」
「(や、やたら”友達”を強調するわね・・・)A子さんったら、私といる間ずっとあなたの事を話してたわよ、楽しそうにね」
「・・・」
B子さんがこちらを睨み付けてきた
なるほど、彼女の経歴通りその気迫は尋常ではなく、危うく表情を歪めてしまうところだったが
私のポーカーフェイスも、それなりのもの
A子さんはなにやらあうあう言ってるけど、それは今はどうでもいい!
「そういえば、あなたも私を助けてくれたんだったわね・・・じゃあ、三人で帰りましょうか」
私は微笑んで断りにくい雰囲気を出した
さすがにB子さんもこれを突っぱねることは出来なかったらしく、渋々承諾してくれた
(やった!これで距離が少しは縮められる・・・と、いいけど・・・)
帰り道、念願のB子さんとの帰り道・・・
A子さんも、いるけど
「二人とも、すこし寄り道していかない?」
「いいんですか?先輩ともあろう人が寄り道なんて・・・」
「ちょっとB子!いいじゃない寄り道くらい!」
「いいのよA子さん、私、皆が思ってるほど優等生じゃないのよ?」
「はあ・・・どうして寄り道を?」
「あなた達にお礼がしたいからよ」
少しでも長くあなたといたい・・・なんて、さすがの私もそうそう言えない、けど・・・
「・・・友達のいない子に手を差しのべて、楽しそうですね」
今ほどタイムマシンが欲しいと思った事はない
どれだけ悪く見られてるの!?
やっぱり、本音で話すのが一番いいのかも・・・特に、彼女には
「B子!なんでさっきからそんな事ばっかり!」
「随分、嫌われちゃったみたいね・・・私は、出来る事なら二人と仲良くしたいと思ってるのよ?」
そうして、B子さんにだけ聞こえるように、耳元で
「心も体も・・・ね」
(本音は本音で恥ずかしい・・・タイムマシンはいらないけど、これほど恥ずかしい事も初めてよ!)
しかし、かなり効果はあったようだ、その証拠にB子さんが顔を真っ赤にしている
「先輩、あなたは・・・」
「しーっ」
「ち、ちょっとB子・・・今なにを言われたのかしら・・・?」
「あ、先輩がご飯奢ってくれるって」
えっ
「B子さんが機嫌を直してくれてよかったわ」
「先輩!ほんとごめんなさいうちの食いしん坊が!」
「食い気では、私もA子には負けるよ」
「余計な事言わなくていいの!」
「ふふ・・・」
幸い、まだおこづかいは6000円ほど残っている
二人に奢った所で、2000円としないはず
「先輩ってお金持ちそうですよね!」
やめて
「そ、そうね、何が食べたい?あ、親御さんには連絡しないとだめよ?」
「そこのファミリーレストランでもいいですか?あそこ美味しいんですよ~!」
さっきからテンションが普段と全く違う!しかもそこ微妙に高いし!
まあでも、この帰り道で縮まった距離に比べればそれくらい安いもの・・・かな?
「お会計、5080円になります」
安い・・・もの・・・
「ぷは!ご馳走さまでした!」
「ご馳走さまでした」
「・・・さ!そろそろ帰りましょうか」
ポーカーフェイス終了のお知らせ・・・
私、コーヒー一杯だし、B子さんにいたっては水だけだったのに・・・
A子さん、侮れない
そうして落ち込みながらも彼女達との会話を楽しみ、
惜しみながらも、その日はもう別れることにした
ー
自宅にて、B子さんからメールが届いた
《今日はあんな態度をとって本当にごめんなさい、今は私も先輩と仲良くやりたいとおもってます(>_<;)》
「!私も・・・」
《あなたの事、信頼してるからね(^_-)》
こうしてみると改めて、近づけた事を実感する
なにしろ、絵文字なんて初めて使ったから・・・やっと彼女と友達になれた気がした
そのあと、A子さんからもメールが来た
あまりにも長文すぎるので、かいつまんで要点だけ
《もっと遠慮すればよかったですよね、すみません、恥ずかしい》
Re:《あんまり気にしないでね(>_<) それじゃあまた明日ね》
彼女に対しても普通に顔文字を使ってしまったあたり
やはり彼女ももうかわいい後輩から「大切な友達」になっているということだろうか
どちらにしても、私にはそれが嬉しい事であるのにかわりなかった
ー
「先輩、私の目に何が映ってるか解ります?」
「うーん、その質問をするならもっと近くに来て欲しいわ、遠くて目が見えないじゃない」
「きゃっ、近寄ってだなんて・・・!」
A子さん、大分慣れてきたようで、少女漫画節全開である
「せんぱーい!」
「A子、あんまりしつこいと先輩に嫌われるよ」
「大丈夫よB子さん、慣れてるもの、でも・・・A子さん」
「はい?」
「そろそろやめて、勉強しましょう?」
実は今日、私とB子さんでA子さんに勉強を教えるためにA子さんの部屋に集まったのだ
なぜかというと、A子さんの成績がはっきりいってやばいからである
「わかりました・・・先輩がそう言うなら」
私は小学校~高校で習う範囲くらいなら隙間なく網羅しているし、しかもB子さんまでいる
私達二人で教えれば、誰でも満点に近い点を取れるようになるはず・・・
(そう言って、B子さんと一緒に過ごせるように図ったのよね、)
以前の私から考えたら今はまさに夢のような状況である、狭い部屋のなかでB子さんと一緒に・・・
「ピタゴラスの定理って何ですか?」
まあ、A子さんもいるけど
「ああ、それはね・・・」
「せ、先輩近いです!顔が!」
まだ90cm位離れてるんだけど、どれだけ過敏に反応してるのよ
「じゃあB子さん、代わりに・・・いい?」
「ほらA子、教科書121pを開いて」
「はーい・・・」
B子さんがA子さんに教えている・・・ということは
(暇になっちゃった)
私はその間なんとなく窓の外を見たり、B子さんをチラチラ見たりするしかなかった
「分かった?」
「うん、ここだけテストに出れば100点取れる」
「小学生並みに軽い自信だなあ・・・」
(む・・・B子さんが楽しそうにしてる)
羨ましい・・・って、これじゃ学校にいるときと変わらないじゃない
「先輩!次こそ先輩が教えてください!」
(ここはひとつ、どわすれした事にして私もB子さんに手取り足取り・・・)
「先輩ってB子よりも頭よさそうですよね!」
「・・・そ、それはないかな、でもまあ、教えてあげられるわよ?」
こんな事言われたらどわすれした事になんて出来ない・・・自分の意地っ張りな性格と彼女の発言のタイムリーさが憎い!
しかしA子さん、私が教えると意外にも目を輝かせてまじめに話を聞いてくれて
どこまでいっても、やはり憎めない子だった
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