海未ちゃん。
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園田 海未
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カタンッ。
ペンを置いた音が部屋に響いた。
……なんとか書き上がりましたね。
海未「ふぅ……っ」
安堵感から漏れた溜息。
私はすっかりと冷たくなったお茶をコクリと一口。
段々と緊張が解けていくこの感じ……。
じわりじわりと広がる達成感。
自然と笑顔になってしまいます。
心も身体も緩まったところでもう一度ノートを手に取り……読み返す私。
海未「────『みんなで叶える物語』ですか……」
……穂乃果は、やっぱりすごい。
普段はあんなにもダラけているのに……。
……ダラけて……いて…………。
いや、今はそのことは置いておいて。
こんな言葉を紡げるなんて。
きっと私では思いつくことすらなかったでしょう。
そう思ってしまうほど綺麗で力強くて…………。
────ふと思い立ち、パラパラとページをめくった。
私が……私たちが、紡いだ言葉たち。
海未「…………色々なことがありましたね」
ページをめくり、たどり着いたのは先ほど書き終えた詩。
海未「…………おや?」キョトン
やれやれ、夢中になっていて気がつかないなんて。
パタンと私はノートを閉じて、
身体をできる限り大きく反らして伸びをした。
海未「────そろそろ寝ましょうか」
明日は新しいノートを買いに行かなくてはなりませんね。
海未「みんなは、気に入ってくれるでしょうか?」
この歌詞を……歌を。
みんなはどう思うのでしょうか?
最後のステージもみんなで輝けるのでしょうか?
私も…………。
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海未と真姫 放課後の音楽室にて
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真姫「こ、これ…………っ!?」
ちょっと控えめに差し出したノート。
読み進める真姫の表情は段々と険しくなって…………。
そんな真姫を見ていたら誰だって不安になってしまいます。
だっていつもだったら、
「へぇ、いいじゃない?」
とか。
「この真姫ちゃんのイメージ通り。
新曲にぴったりだわ」
とか。
思わず笑顔になってしまうようなことを言ってくれる真姫ちゃんなんですもん。
海未「ど、どうですか?」アセアセ
真姫「どうもこうもないわ! こんな────」ジワァ
そう言うと、ゴシゴシと眼をこする真姫。
こんな……?
こんなってなんでしょうか?
うぅっ、なんだか自信がなくなってきました。
海未「真姫! どうしたのです!?
こんな? こんな、なんです!?」ガバッ!
真姫「ちょっ、やめっ! いま、ダメッ!」グズッ
頑なに顔を隠そうとして…………。
────やっぱり。
海未「────ダメ、ですか?」ギュッ
真姫「へ? う、海未?」
いつもはツンとしてるけれど優しい真姫。
そんな真姫が私の歌詞を褒めてくれないなんて。
なんだかそれが無性に悲しくて…………。
海未「すみません……力不足でした。
せっかく穂乃果が素晴らしいキャッチフレーズを考えてくれたのに」グスッ
真姫「いやいやいや! そんなこと言ってないでしょ!?」アセアセ
海未「少し、時間をください……
必ず真姫が納得できる詩を書きます────」ダッ
真姫「ちょっ!? 海未!? どこ行くのよ!? うーーみーーーっ!」
私は、いつかの時のように逃げ出してしまうのでした。
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にこりんぱなは公園に
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海未「はぁっ」
やってしまいました。
うぅっ、明日どんな顔をして真姫に会えば良いのか。
しかも、書き直すと言っておいてノートを忘れてしまうなんて……。
格好の悪い話です。
なんだかまた悲しく……。
「あれ? 海未ちゃん?」
突然響いた綺麗な声に心臓がどきりと跳ね上がります。
海未「は、花陽……それに」チラッ
花陽の後ろにはお菓子を巡ってじゃれている二人の姿。
にこ「げっ! 海未!? ちょ、凛ストップ! 海未よ海未!」
凛「にゃーっ! にこちゃん! そんな嘘までついて!
そこまでして凛にポッキーあげたくないにゃ!?」
にこ「後にしなさいよ! 食べ歩きしてるのバレたら怒られるわよっ!?」
花陽「もう、遅いと思うな……」アハハッ
────いつもでしたら、
「にこ! 凛!? 食べ歩きなんていけませんよ!
はしたないっ!」
なんていう私ですが。
今日に限ってはそんな元気もなく。
それに、こんな顔を凛に見せたくなくて…………。
どうしたらいいかわからずに黙って俯いてしまうのでした。
花陽「……海未、ちゃん? どうしたの?」
凛「────海未ちゃん?」
花陽の心配する声を聴いて気付いたのでしょう。
凛の声にはいつもの明るさはなくなってしまって……。
あぁ、穂乃果、ことり! 私はこんな時どうしたら良いのでしょう!?
不器用な私はこんなにも弱くて────
花陽「────にこちゃん」
にこ「────凛、先にお店に行くわよ」
凛「にこちゃん、海未ちゃんが」
にこ「いいから、花陽に任せましょう?」
凛「でも、海未ちゃんが────」
にこ「だからよ」
にこの声には熱が篭っていて、
きっと、『強い先輩』のにこが顔を出しているのでしょう。
凛「……………………わかったよ」
暫く考えてそう呟く凛。
私はチラリとその後ろ姿を見送った。
……あなたの瞳に私はどう映ったでしょうか?
私は、弱い先輩、ですよね。
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海未と花陽
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花陽は、私の隣にちょこんと座った。
私は変わらず俯いて……二人の間に会話はありませんでした。
だけど、先ほどと違い少しずつ落ち着いてきて……。
こちらから話しかけようかと思ったその時、花陽が言いました。
花陽「うわぁーっ! 海未ちゃん見て! 空が綺麗だよっ♪」
その言葉に反応して、私は空を見上げる。
海未「わぁ……」
見上げると茜色の空。
たくさんのビルに遮られながらも、
真っ赤に燃える空。
いつかどこかで見た景色。
まるでそれは────
花陽「まるで海未ちゃんみたいっ♪」
海未「────はいっ?」キョトン
花陽「え? 花陽、変なこと言った?」
海未「いや、変でしょう? こんなにも茜色の空が私みたいだなんて」
花陽「…………? どうして?」
花陽は本当にわからないというように首を傾げます。
海未「どうして、って……穂乃果や真姫みたいというならわかりますが…………」
プツプツと言葉を繋ぎながら話す。
花陽「それはきっと、考え方の違いだね」ウフフッ
海未「か、考え方?」
花陽「海未ちゃんは青い空のような人。
だけど時々、燃えるような情熱が顔を出すんですっ♪」
そう話す花陽はとっても嬉しそう。
花陽「だから穂乃果ちゃんに『海未ちゃんの鬼!』、
なんて言われちゃうんですけどね」クスクスッ
海未「な────/// し、心外ですっ!
花陽まで私のことをそんな風に思っていたなんてっ!///」カァーッ
花陽「冗談ですよ、海未ちゃんっ!」ニコリ
……花陽と話していると、なんだか落ち着きます。
花陽「良かったです。海未ちゃん、少し元気になったみたい」
海未「そう、ですかね……」
花陽「海未ちゃんはちょっと頑張りすぎですよっ♪
変な意地は張らなくてもいいんです。
────あ、そうだ! 見て見てっ!」
海未「こ、れ…………」
スマホを取り出し一枚の画像を私に見せる。
それは一枚の写真。
私たちがはじめて────
花陽「花陽たちは『μ's』なんだもん」
────『夢を叶えた時』の写真。
花陽「誰かが立ち止まったら誰かが引っ張る。
それがμ'sだよ。
だから、海未ちゃんは海未ちゃんのままでいいんです」
花陽は満面の笑みでそう言いました。
「私たちの大好きな海未ちゃんのままで」
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海未の部屋 絵里との電話
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「────そう、花陽がそんなことを」
スマホから聞こえる絵里の声はとても優しく……。
そして、少し寂しそうだった。
「凛に落ち込んだ顔を見せたくない海未の気持ちを、すぐに察するなんてね……」
うふふっと笑う絵里。
海未「穂乃果とことりの影響でしょうか?
なんだか花陽と話していると二人と一緒にいるみたいで……とても暖かいんです」
「いいわよねーprintemps。
あの子達と一緒にいると毎日が春みたいにぽかぽかするわ」
海未「花陽は…………強くなりました。
私なんかより、ずっと」
「……………………海未は、弱くなった?」
海未「……絵里は、どう思いますか?」
「私は……『変わった』と思う」
海未「『変わった』?」
「きっとね、海未には大切なものがたくさん出来たのよ。
大好きな二人の幼馴染以外にも、ね」
海未「茶化さないでください」
「仕方ないじゃない? 私、海未のそういうところ大好きなんだもの」
そう言って絵里はウインクをす……
訂正。
しているような気がします。
海未「どういうところですか! まったく……」
それはね、と意地悪をするように呟く絵里。
「────壁にぶつかってもそれを乗り越えられるところ、かしら?」
海未「な、なんですかそれ。私はそんなにカッコよくないですよ」アワアワ
「あら? あんなに手紙を貰ってるモテモテ海未ちゃんなのに?」
海未「────切りますよ?」
「うふふっ、冗談よ。
真面目に話すと、花陽の言う通りだと私も思うな」
海未「考え方の違い、ですか?」
「強い人っていうのはきっと、より多くのモノを護れる。
花陽やにこが海未を護ったようにね。
だけれど、強くなければ何も護れない。
弱い人は大切なモノをどんどん失っていくわ」
海未「私は失っていくだけ、ということですか?」
「いいえ違うわ。
だって護りたいなら強くなればいいんだもの」
海未「だから────」
「それにね、大切なモノがたくさん出来たってことは……、
逆に考えれば、『あなたはそれだけ強くなった』。
という風にも考えられるんじゃないかしら?」
海未「…………よく、わかりません」
「そうかしら?」
海未「やっぱり私、自信がないんです。
自分自身に。
新しい詩にも。
絵里たちが…………卒業してからのことも。
どうしても不安な気持ちが消えなくて……」
震える声で、そう伝えた。
「…………そう」
海未「一体どうしたら…………どうしたら良いのでしょう?」
ダメ……せっかく花陽に元気を貰ったというのに。
私はまた────
「────歌詞、書いてみたら?」
海未「……は?」
一瞬、絵里が何を言っているのかわからなかった。
「うん。それがいいと思う。
今の海未の気持ちを歌詞にしてみましょう?」
何を、言っているのですか?
「別に、みんなに見せる必要はないわ。
μ'sとかスクールアイドルとかそういうのはあまり深く考えないで。
ありのままのあなたで作詞をしてみたらどうかしら?」
…………本当に、何を言っているのだろう?
頭ではそう考えていました。
けれどなぜでしょう?
なぜだか私は、
海未「────絵里が、そういうのなら」
そう、答えてしまうのでした。
きっと、それだけ絵里のことを信頼しているんだと思います。
μ'sを導いてくれた、優しくて強い絵里先輩のことを。
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『最初のページ』
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『海未ちゃんは中学生の時にポエムを書いていた』
……それが私がμ'sの作詞担当になったきっかけ。
元々は本が好きで、
『私もこの小説のような素敵な文章を書きたいっ!』
そんな憧れからコツコツはじめたのが『作詞』でした。
ある時、ことりと穂乃果にそのノートを発見され、
なし崩しにノートを見せることになってしまい…………。
『すごい! すごいよ海未ちゃん!』
『うんっ♪ まるで詩人さんみたいっ!』
あの時の恥ずかしさときたらもう。
今でも顔から火が出そうです。
けれど、あの時恥ずかしい思いをしたからこそ。
……大切な今がある。
いつも私のことを気にかけてくれる二人。
優しい幼馴染のことり。
大好きです。
明るい幼馴染の穂乃果。
大好きです。
けれど。
私はそんな二人が…………羨ましいのです。
…………私も、そんな風になれたら、な。
なんて。
幼い頃からずっと思ってました。
もしかして、私がスクールアイドルとして活動出来たのは二人への憧れから……?
海未「────っ」
開いた眼に映ったのは買ったばかりのノート。
それを手に取りページをめくった。
……真っ白なノート。
はじめて作詞をしたときも、こうやってノートを眺めていましたね。
あの時は…………そう。
これから先どうなるか不安でいっぱいで…………。
『一人で練習しても意味がありませんよ。
やるなら三人でやらないと』
けれど、こんな私でも輝くことが出来るかもしれないと。
『緊張しませんように』
淡い期待に心を躍らせて。
『そ、そうですか。あのステップ私が考えたのですが……』
…………スクールアイドルが好きだったから。
『みんなのハート、撃ち抜くぞぉ~!』
みんなといるのが楽しかったから。
『ばぁんっ♪』
私は『私』でいられた。
『ラブアローシュート!』
────私は。
ペンが勝手に動いている気がした。
私は描く。
みんなとの今までと。
みんなとのこれからを。
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『最後のページ』
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もう何度目になるだろう。
私は見慣れた音楽室の扉の前に立っています。
放課後になってから少し時間が経ってしまったので心配をしていたのですが…………。
臆してはいけません。
真姫に詩を見てもらう。
そのために来たのですから。
…………さあ、行きましょうか。
ガラッ!
海未「────真姫! 新しい詩を書きました!
こちらも見て…………あれっ」
扉を開くとそこには私以外のμ'sメンバーがいました。
みんなの表情は少し曇っていて、凛に至っては涙目になっています。
海未「み、みんな揃ってどうしたのですか?
練習は曲が出来てからだと────」
真姫「私が呼んだの」
海未「真姫?」
椅子から立ち上がった真姫も表情は暗く、
その手には作詞ノート……。
そうですか。
みんな、見てしまったのですね。
海未「────だ、大丈夫ですよ真姫! 作詞は任せてください!
その詩のことはわかっていますから!
新しい詩も書きましたし、それに────」
真姫「────ごめんなさいっ!」ペコッ
海未「……………………はっ?」
突然頭を下げる真姫。
真姫「私、海未が勘違いするような行動を取っちゃって……その…………」グスッ
海未「真姫? どうして泣いて……」
ことほの「「海未ちゃん!」」
海未「穂乃果? ことり?」
穂乃果「ちがうの、あのね。勘違いなんだよ」
海未「勘違い……?」
ことり「ことり見たよ。海未ちゃんの歌詞っ!」
海未「だから、それでみんな暗いのでしょう?
あまりに出来が悪くてそれで────」
希「──────そんなことないっ!」
海未「の、希?」
ど、どうしたのです?
そんなに大きな声を出して。
こんなにも険しい顔を私へ向けて……。
希「あーもう! うち、我慢できないっ!」
その言葉を聞いた絵里は真姫が持っていた作詞ノートをその手から攫う。
そのまま希にそれを渡して──
絵里「だったらさっさと…………」
にこ「行きなさいよっと!」
──にこと一緒に背中を押した。
意味がわからなくて、二人の顔を交互に見る。
二人はよく見るいたずらっぽい笑顔をしていて。
────その瞬間、私の体は希の暖かさに包まれていた。
海未「の、希!? どうしたのですか急に!?
なんだかあなたらしくな────」
希「海未ちゃんの馬鹿! ポンコツ!
なんで人の話ちゃんと聞けないん!?」
海未「なっ!? ぽ、ポンコツ!?」
希「なんで『無理です』とか『出来ません』とか、自信がないん?」
海未「そ、そんなことは────」
希「なんで作詞のこと……………………うちに相談してくれないん?」
海未「そ、それは…………」
なんで、だろう。
私の言葉に反応して、希は腕に力を込めた。
希「うちが頼りない?」
……そんなわけないです。
希「うちは信用出来ない?」
…………そんなわけないです。
希「私じゃ海未ちゃんの力になれない?」
……………………そんなわけ。
海未「そんなわけ、ないじゃないですか」ジワァ
なぜだか、私は泣いてしまって。
ずっと、ずーっと我慢していたモノがポツポツとこぼれた。
海未「──私、いい歌詞を描きたくてっ!
それで……っ!
優勝したくて頑張って書いたけど。
上手くいかなくてっ!
凛の前では強い先輩でいたかったけど。
だけど、出来なくて…………っ!」ボロボロ
希「うん。
うん…………」ポロポロ
海未「希がちゃんと卒業出来るように、
頑張ろうと思ったのに!
私のことは心配ないですよって…………
見せたかったのに……っ!」ヒッグ
希「うん……うん! 大丈夫やよ?
うちはわかってるよ。海未ちゃんが誰よりも頑張り屋さんだって」ボロボロ
海未「────でも、私はまだ、ダメなんです。
上手く描けないっ!
穂乃果みたいな強さも……っ!
ことりみたいな優しさもっ!
私には…………っ」
────そこまで言って、私は気がついた。
あぁ、なんてことでしょう。
私の不安を消してくれる存在は、こんなにも近くにいたのだ。
海未「どうしてですか? どうしていなくなってしまうのですか?
姉のようなあなたと。
妹のような凛と。
三人で!
私はもっと一緒にいたかったっ!
もっともっと一緒に過ごしたかったのですっ!」ボロボロ
希「ごめんね。ごめんね海未ちゃん。
私が三年生でごめんね」グスッ
海未「嫌ですよぉ! 行かないで下さいよぉっ!
またふざけてお約束のネタをやって下さいよ。
また、凛と二人で私を困らせて下さいよっ!
海未ちゃんはまだまだ甘いなって!
からかって下さいよっ!」グズッ
子供のような駄々を捏ねて。
これでもないくらい涙を流した後、希は言った。
希「…………なんだ、ちゃんと強くなってるやん」ポロポロ
海未「えっ?」
希「うち、安心した。
海未ちゃんはやっぱり強いよ。
それに誰よりも頑張り屋さんなのだ」
希は震える声でそう言った。
海未「そんなことないです。私は────」
希「だって、ワガママ言えたやん?
いつも我慢して自分の中に溜め込んじゃう海未ちゃんが……。
はじめてワガママ言ってくれたんよ?」
────それが強くなったのかどうかなんて、
私にはわからなかった。
少なくとも、強くはないように感じた。
希「さてと」
希は私の体から離れると、にっこりと笑った。
希「はいっ♪ これ、うちらの気持ち」
希が手渡して来たのは私のノート。
……昨日、音楽室に忘れてしまったノート。
希「最後のページを見てほしいんよ」
たしか、最後のページは真っ白だった、はずですが……。
いつもと同じようにパラパラとノートをめくった。
『僕らのLIVE君とのLIFE』……。
『Snow halation』……。
『KiRa-KiRa Sensation!』……。
────そして、最後のページには。
海未「こ、これは……っ」
たくさんの『ありがとう』が…………
私へのお礼の言葉が記されていた。
希「みんなね、海未ちゃんが書いた歌詞に感動しちゃったのだ。
真姫ちゃんなんて声も出せないくらいに、ね」アハハッ
思わずみんなの顔を見渡すと……とても綺麗な笑顔で。
けれど、その笑顔は涙でだんだんと見えなくなって────
凛「にゃーーーっ! 凛ももう我慢できないにゃっ!」ダッ
真姫「凛!?」
花陽「凛ちゃん!?」
凛は小走りにこちらに近づいて来て、
私たちの周囲をくるりと一回転。
そして────
凛「ぎゅーーーっ! えへへっ♪二人ばっかりずるいにゃ!
凛も……凛もずっと一緒がいいよ」
濡れた目尻を拭おうともせず、凛はにっこりと笑った。
希「わっ! 凛ちゃんくすぐったいよぉっ♪」
凛「えへへっ♪ たまにはいいじゃーん!」
にゃーっと声を上げる二人。
海未「ちょっと、二人とも!
やめて!
やめてください!」
絵里「まあまあ、いいじゃないの」アハハッ
にこ「そうそう、こんなこと滅多にないわよ」
ことり「海未ちゃんは照れてるだけだもんねっ♪」
いつの間にかみんなが私の周りに集まってくれて。
穂乃果「違うよ、恥ずかしいんだよっ!」
真姫「そんなのどっちでもいいでしょ?」
花陽「っていうか、どっち同じような意味だと思うよ?」
────あとはみんなでいつものようにわいわいがやがや。
私の歌詞を褒めてくれたり。
自分の歌いたいパートを言いあったり。
────そんな『みんな』との今の中で思った。
まだまだ未熟な私だけれど、
『みんな』と一緒なら輝けるんだって。
例え姿が共に無くとも。
心は共にあるのだから。
海未「みんな……私、その…………本当に────」
…………未来がどうなるかなんてわからない。
けれど、真っ白だった最後のページが教えてくれたように。
未完成な明日は自分たちの力で変えていけるのから。
自分一人では叶えられない夢も、
海未「────ありがとうございます」ニコッ
『μ's』とだったら────。
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【ラブライブ!】海未「────そして、最後のページには」
おしまい
史上最悪のSS作者、ゴンベッサこと先原直樹
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg
痛いssの後書き「で、無視...と。」の作者。
2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。
以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。
自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう精神が崩壊した → http://Goo.gl/GWDcPe
2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。
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