男「…………もう一度言おうか」
男「僕の妹は人を殺した」
男「今まで隠しててごめん」
女「…………どういう……?」
男「……今から言うこと、他人には話さないで欲しい」
男「妹や、僕の家族のこと。全部聞いたうえで考えてほしいんだ」
男「僕との結婚を」
女「…………」
女「…………」
男「もう僕らも28歳。結婚を考えるのか、考えないのかはちゃんと決めておかないとだろ?」
女「そう……ですね」
男「…………ちょうど、10年前のことだ」ガサゴソ
女「……、それは?」
男「この瓶は……僕が、あの事件を忘れないためにいつも持ってるもの……」
男「僕の妹……って言うのは、父さんの再婚相手の連れ子でね……」
***
男(18)「今日から大学生だよ」
妹(15)「気持ち悪いから、朝から話しかけてこないでって言ってるじゃん」
男「ごめん……」
妹「はぁ……高校と大学方向同じだから電車も同じとか最悪」
男「……ははは、朝ごはん食べて早く行こう」
***
ガタンガタンガタン
男「(妹ちゃんと同じ時間に家を出て、同じ道を通って、同じホームで電車を待って)」
妹「…………」
男「…………」
男「(妹ちゃんと同じ車両に乗っている……けど)」
男「(…………)」
男「(すごく距離があるなあ)」
妹「…………」ポチポチ
男「(ずっと携帯いじってて全然、僕と目が合わないし)」
男「(はぁ、昔はもっと仲良くて一緒に遊びに行ったりとかしたのになあ)」
***
男「大学生活楽しめそうだなあ!よかった」
男「一日目でいきなり友達できちゃったし、明日さっそくみんなで遊びに行けるなんて!」
僕はとても大学生活をぞんぶんに楽しんだ。
毎日の学校の往復での妹ちゃんとの距離は変わらなかったけど。
それから数か月……
***
母「できたわね」
妹「うん」
男「ただいまー」
母「あら、おかえりなさい」
妹「…………」
男「あれ、なんかすごい荷物だね」
母「ええ、妹ちゃん明日学校に色々持っていかなきゃいけなくってね」
男「ああ、なるほどー」
男「でもそれ重すぎない?もしよかったら明日僕が電車一緒のところまで持っていくよ」
母「妹ちゃん、どう?」
妹「…………気持ち悪いから私のに触らないで」
男「あ……ははは」
***
翌日
男「(やっぱり今日も二人で黙って同じ道を距離置いて歩くんだよね)」
妹「…………っ」
男「(重そうだなあ)」
男「(手袋したら荷物持たせてくれるかな)」
男「(あれ、こっち向いた)」
妹「ねえ」
男「荷物、持とうか!」
妹「そうじゃなくて」
男「あ、あ……あー……うん」
妹「同じ空間にいると気持ち悪くなるから私より後の電車に乗って」
男「え……」
妹「いいでしょ?」
男「う……うん……」
***
男「あーあー……欠席ゼロだったのに……」
友「まあ仕方ないんじゃねえの?電車一本逃したんだろ?」
男「うん……」
友「んで、お前今日はもちろん飲み会行くよな?」
男「あー……」
母『今日はおいしいもの食べるから早く帰ってきてね!』
男「ごめん!ちょっと家族で用事あるんだ」
友「まじかー、んじゃ仕方ねえわな」
男「うん、また誘ってね」
***
男「ただいま!」
母「っ!」
妹「…………」
男「どうしたの?」
母「いえ、なんでもないのよ。おかえりなさい」
男「今日はごはん何?」
母「お肉よ!」
男「やったー!……ってあれ、お肉これ足りる?」
母「あー……確かに足りないかも……買ってきてくれる?」
男「うん、わかった」
母「ごめんねえ、帰ってきたばっかりなのに」
男「いいっていいって」
***
数か月後
男「(大学に入ってから半年が経ったけど……妹ちゃんは増々強く当たってくるようになったな……)」
男「はぁ」
友「どうしたんだよ?」
男「いやあ、ね。妹が最近、冷たくてさ……」
友「ははは、反抗期かなんかじゃねえの?父さんいないんだろ?」
友「お前を父さん代わりに反抗してんのかも」
男「うん、ただの反抗期だといいんだけどね」
友「本当にお前シスコンだよなあ」
男「あーもうやめてやめて!」
友「まあでもわかるけどな。俺もあんな可愛い義妹がいたら好きになるわ」
男「でしょ?」
友「ああ、それにお前のお母さんも綺麗だよな」
男「うん、妹ちゃんお義母さん似なんだ」
男「お父さんが死んじゃってから二人はずっと僕を実の家族みたいに扱ってくれて……」
友「まあだからこそ妹ちゃんはそうなったんじゃないか?高1だろ?」
男「うん……」
***
男「ごちそうさま」
母「えらく疲れてるわね?」
男「うん、ちょっとバイトがきつくってね」
母「まったく、遊ぶお金のためにバイトで倒れちゃ元も子もないわよ?」
男「はーい」
母「それに、山登りもまだやってるんでしょ?」
男「ワンダーフォーゲル、だよ」
母「そうそう、それよ。いかにも疲れそうじゃない」
母「あ、それから妹ちゃんは勉強に気合入れ過ぎよ?」
妹「…………うん」
母「ちょっと待ってね、疲れがとれるスープを作ってあげるわ」
男「もうお腹いっぱいだよ」
母「ちょっとだけだからちゃんと飲みなさい」
男「はーい……」
***
男「はぁ、お腹いっぱいで眠くなったや」
男「はやくお風呂入って寝よう……」
妹「ねぇ」
男「ん?何?」
妹「私、今日まだ風呂入ってないから」
男「あーうん、すぐ上がるからちょっとだけ待ってくれない?」
妹「はぁ……」
妹「…………気持ち悪いから私より先に入らないで」
妹「今日は長くなるから諦めて明日入れば」ガチャ
男「あ……」
***
友「おいおい、それで本当に風呂入らなかったのかよ」
男「うん、でもショックでかやたらとぐっすり眠れた……」
友「まあ、妹ちゃんお父さんいなくて甘えたり反抗したりすることができず育ったわけだし」
友「今はドーンと受け止めてやれよ」
男「う、うん」
***
男「ただいま」
母「おかえりなさい、ねえ、これ見て?」
男「え?これって、この近くの山の?」
母「そうそう、それでね。ネットのクチコミで見たんだけど」
母「こっちの道から入るのが普通じゃない?」
男「まあ道も整備されてるしまず迷わないだろうし……」
男「でも少し難易度が低すぎる気もするなあ」
母「そうなの。それでね、こっちの…柵のところから登るのが通らしいのよ」
男「へぇー!おもしろそうだね」
母「私、山登りはよくわからないけどあなたが好きだって言ってたから、調べてみたの」
男「ありがとう、お母さん!」
男「さっそく今度の休みに行ってみるよ」
***
友「え、あの山に?」
男「うん、おもしろそうな道を見つけてね」
友「へえー、俺は山とか興味ないからわかんねえけどルートにも良い悪いとかあるんだな」
男「そうなんだよ」
男「あ、そうそう。この前借りた本、月曜日返すよ」
友「おお、そっかそっか。わかった」
***
日曜日
男「よーし!今日は山登り行くぞー!」
男「いってきまーす!」
母「いってらっしゃい、気を付けるのよー」
妹「……私も友達の家に遊び行ってくる」
母「あら、友達の家?」
妹「何?」
母「あなたが友達と遊びに行くなんて珍しいから!」
母「よかったわ、私妹ちゃんに友達ができてないんじゃないかと思ってたの」
妹「はぁ……いるよ」
男「それじゃあ妹ちゃん一緒に行こうか」
妹「気持ち悪いから先に行って」
***
男「ふう、結構乗り継いだなあ」
男「近くの山だとは言ってもやっぱり結構遠いからね」
男「それにしても、いい雰囲気だなあ」
男「上まで登ったらきっと気持ちいいんだろうね」
男「ワクワクしてきた。よし!」
男「じゃあさっそく例のポジションを探そう……」
男「ここだなー……よしよし」
男「柵を登って……」prrrrr
男「え……電話?」
男「ったく、なんだってこんな時に…………って妹ちゃん!?」
男「(珍しいな!なんだろう!頑張ってとかかな!いやそんなわけないか!)は
い」ガチャ
妹「あー……あのさ」
男「うん」
妹「今すぐ迎えに来て」
男「え?」
妹「家に帰るバスのためのお金落としちゃったから」
男「え?え?」
妹「すぐに駅に来てくれないとあの本捨てるからね」
男「えええええ!?!」
男「(あの本って友から借りた本だよね……)」
妹「じゃあ」ガチャ
男「…………」
***
男「はぁ……結局行けなくてさ」
友「おいおい……流石にひどいな」
友「一回ガツンと言った方がいいかもしれないな」
男「うーん、それはちょっとできないかなあ」
友「シスコン」
男「ははは……」
男「あ、そうそうこれこれ。死守した本」スッ
友「おう、どうだった?」
男「女だとばかり思っていたけど実は男だったってわかったときなんて……も
う絶望すら覚えたね」
友「ああ、でもちゃんと読み返してみたらちゃんと男なんだよな」
男「今度は別の貸してよ」
友「いいぜー」
***
数週間後
ホテル
男「さて……今日は遠くの山だったけど頂上は気持ちよかったなあ」
男「車飛ばしてまで来た価値はあったよ」
男「この前の山に登ろうと思ったのに、『マナーの悪い人が増えたため登山禁止』になってたし」
男「あの時登れてたらなあ……」
男「……今日は早く寝て明日はお土産買って帰ろう」
prrrr
男「あれ……?」
男「また妹ちゃんか……嫌な予感しかしない」
男「…………はい」
妹「……あの」
男「うん」
妹「ケガしたから、病院に連れて行ってほしいの」
男「……っ!?」
男「大丈夫!?すぐいくから、どこ?」
妹「家……階段から落ちちゃって」
男「母さんは!?」
妹「遊びに行ってる……」
男「わかった、すぐに行くから!じっとしてて!」
男「でもお母さんには電話して!あ、あと本当にだめだと思ったら救急車呼んで!」
***
男「大丈夫!?どこ?」
妹「足……ここ」
男「青くなってる……!」
妹「ちょっと痛い」
男「車に乗せるから……その」
妹「何?」
男「触ってもいい?」
妹「ああ……うん」
***
数か月後
男「妹ちゃん、治って良かった」
友「おお、そっかそっかもうそんな時期か」
男「何故か入院をかたくなに拒んで困ったよ」
友「なんか勉強のことになるとやたらと妹ちゃんは譲らないよなあ」
男「うん……入院すればひと月程度で治ったと思うんだけど」
友「俺が高校の時は何とかして学校休みたがったもんだがね」
***
男「ただいまー……ってあれ?」
男「……誰もいない」
男「おなかすいたー」
男「?」
男「1人分の食材はあるのか、ふむふむ、今日はカレーだね」
男「よーし、そんじゃまあ自分で作るかなあっと」
***
男「あとはルー入れるだけだなー」
妹「……」ガチャ
男「あ、おかえりなさい、妹ちゃん」
妹「……っ!」
男「何?」
妹「……」ガサゴソ
男「え?それって部活の絵具だよね?それをどうするつも……」
妹「……」ポチャン
男「あああああ!!!なんでカレーに入れてんの!?!?!」
妹「お……お…お前のカレーなんか食べないから!!」ザッパア
妹「……」タッタッタ
男「…………え」
男「これ僕の……」
男「とどめにカレー全部捨てられてしまった……」
男「………………」
男「今日はもう寝よう………………」
男「はあ…………」
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この男は幼児退行でもしてんの?口調がwww