新聞部部長「何故に彼がモテるのか、調査の必要が有る!」 (23)


~新聞部の部室にて ~



部長「部員諸君、定例会議に集まってくれてありがとう」

後輩「部員諸君なんて畏まっても、部長を含めて三人しか居ないんですけどね。
   しかもその三人目は幽霊部員で顔も見た事ないし」

部長「人数の少なさは部員各々のクオリティでカバー出来ているから問題ない。
   三人目の人もちゃんと頑張ってるよ。 さ、それより、本日の会議に早速入ろう」

後輩「また“広報誌の発行部数を増加に繋ぐためにどうするか”を話すんですか……。
   最近もうそればっかりで、新鮮味が全然ないですよ……」

部長「では、なぜ新鮮味がないのか。 それを君は考えた事があるのか?」

後輩「そりゃ同じ事ばかりを話し合うからでしょう」

部長「否。 それは、話し合いばかりで現状に進展が無いからだ。
   結果、それがマンネリを生むことになっている」

後輩「そこまで言うからには、何かマンネリを打破する方法を今回は考えてきたんですか」

部長「その通り! と、いうわけで、今回はゲストを呼んでいる!」

後輩「ゲスト?」

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部長「ゲストの方、どうぞ入ってください!」

男友「あ、どうも。 会議中にお邪魔します」

後輩「?」

部長「(誰やねんこのオール平均点のパッとしない男は……)、なんて思っていそうな顔をしているね」

後輩「ちょっと疑問符を浮かべたらえげつない曲解をされた、もう辞めたい」

部長「調子に乗って申し訳ありませんでした。辞めるとか言うたらアカン」

男友「来て早々、何故か美しい土下座を見させられた。 もう帰りたい」

部長「まぁまぁ、これも一つの部内スキンシップだよ」

男友「土下座したままの格好で言われると説得力とは何なのか考えさせられるな」


部長「では、改めて。彼は昔からの友人で……」

男友「自己紹介がまだだったな。 2年5組、男友って言います」

後輩「あ、じゃあ先輩ですね。 初めまして。 1年1組、後輩って言います」

男友「おお、部長の知り合いにしてはえらく礼儀正しいな」

後輩「部長と類友に思われていたのなら心外です」

男友「ははっ、そりゃ申し訳ない」

部長「あれ? 僕なんか既に蚊帳の外の雰囲気?」


後輩「それで、男友さんは何故に新聞部の部室へ?」

男友「部長に頼まれていたんだよ、なんか記事に出来そうなネタは無いかって」

後輩「……」

部長「もの言いたげな瞳だね?」

後輩「……部長。 入部当時に私に言ったこと覚えてます?」

部長「“記者たるもの、スクープとは自分の足で摘み取ってくるものだ!” かな」

後輩「そこまで覚えていながらも、スクープに足を運ばせてくる辺りは流石ですね」

部長「もっと褒めていいよ」

後輩「……」

部長「どうしたんだい、急に熱烈な視線を浴びせてきて?」

後輩「浴びせたいのは罵声ですよ」


男友「あー、話が進まないんで俺から話すよ」

後輩「お手数かけてすみなせん」

男友「気にするなって。今回俺が呼ばれたのは、その広報誌に書けそうなネタの事なんだ。
   ちょっと面白そうな事が身内で起こっていてな」

後輩「それで身内を売りに来た、と」

部長「こいつはとんでもないクズ野郎が来たもんだね」

男友「帰るわ」

部長・後輩「「大変申し訳ありませんでした」」

男友「……なんだかんだ似たもの同士か、お前らは」


男友「話を戻すぞ。 その俺の身内で起こっているのが、俗に言うラブコメ展開なんだ」

後輩「ラブコメですか?」

部長「豊作なのかい?」

男友「米の新種名じゃねぇよ。 なんだよ豊作展開って」

後輩「部長ちょっと10分だけ部室から出ていってくれませんか?」


男友「で、だ。 そのラブコメの中心人物が、俺の友人である 男 なんだ」

後輩「男さん、ですか」

男友「あいつは授業中によく寝ているような昼行灯だが、気がつけばいつの間にかハーレムが出来上がっていた」

後輩「このご時勢にハーレムとは景気の良い話ですね」

男友「こういうのは普段なら与太話って事で、くだらない色恋沙汰になるってのは重々承知さ。
   だがな、どうにもアイツの周りを見ると、剣呑としてる場合じゃないくらい女に囲まれてるんだよ」


後輩「私は男さんを知りませんので、外見的特長などの情報を」

男友「身長は170cm前後。 前髪で顔の半分が隠れていて、体格は細身。
   口数は少ないほうではないが、率先して喋るほうでもない。 何故かいつも疲れていてよく眠っている」

後輩「趣味は?」

男友「見たところだと読書と音楽鑑賞。無趣味が趣味のような感じだな」

後輩「ちなみに先輩の趣味は?」

男友「最近は料理に凝っている。……って、俺は関係ないだろ」

後輩「ついインタビューのクセで。失礼しました」

男友「で、どうだ。何か人物像は捉えることが出来たか?」

後輩「捉えどころのない人というのがよく伝わってきました」


男友「自分で羅列しておきながら、アイツの周りに女の子が寄ってくるのが理解できないな」

後輩「顔が良いからではなく?」

男友「それも要因なんだと思うが、それだけでは済まされないくらい異様にモテているんだよ」

後輩「私も新聞部として校内のイケメンは粗方メモしていた筈ですが、完全にノーマークの人物ですね」

男友「という事は、君は校内の美人も大体チェックしているのか?」

後輩「ええ、まぁ百位までくらいならランキングで番付していますよ」

男友「そのランキングの中に、例えば誰がいる?」

後輩「まぁ名前を挙げるとすれば、そうですね。
   上位陣だと女さん、ツンデレさん、幼馴染さん、委員長さん、転校生さん。
   他には音楽教師や女子バスケのキャプテン、私のクラスメイト、等等ですね」

男友「……」

後輩「それが何か?」

男友「……少なくとも今挙げたそいつら全員、男に惚れている」

後輩「……は?」


後輩「いやいや、流石に全員は言いすぎでは?」

男友「本当だ。 昼休みの弁当時間は、男目当てで1クラス人数相当の女子が来る」

後輩「凄い光景ですね」

男友「光景、とは絶妙な喩えだな。 光があれば闇だって深くなる。
   男がモテている眺めを、モテない男子たちが修羅の形相で見つめている様は、まさに社会のカーストだ」

後輩「血の涙を流しながら見つめているんでしょう」

男友「その男子生徒たちの顔は、アレに似ている」

後輩「アレ?」

男友「ベヘリット」


※存じない方はgoogleの画像検索を参考



後輩「……壮絶すぎる」


男友「まぁ表向きの依頼としては、男のハーレム実態を探ってほしいって事なんだが。
   本当は男が他の男子生徒の恨みを買いすぎて闇討ちされないよう、
   対策の為にアイツの詳細くらいは知っておきたいんだ」

後輩「本人に聞けばいいじゃないですか」

男友「どうせ聞いても知らぬ存ぜぬの一点張りさ。それに、本人に気を使わせるのも何かアレだろ」

後輩「友情ですね」

男友「そんなんじゃねぇよ」

後輩「愛情ですか!?」

男友「そんなんじゃねぇよ!」

後輩「なんだ、ちょっとビビりましたよ」

男友「君の倍くらいは俺もビビったわ」



ガラガラッ


部長「あ、もう話は終わった?」

後輩「……本当に10分も外に出ている謎の律儀さにイラっとします」


部長「まぁまぁ。 詳細は僕自身、最初から男友くんに聞いて知っていたからね。
   それで、我が新聞部としては是非とも色々な子に取材をしてみたいんだけれど、どうかな?」

後輩「でも、こういうのって直接聞いても話してくれるものですか?」

部長「今回はあくまでも君のメモにある“話題の美人にインタビュー”という体で取材を敢行。
   その中で男くんの話題を上手いこと入れ込んで、真意を引き出すのが手段さ」

後輩「……プライバシーの侵害な気がして、ちょっと二の足を踏んじゃいますね」

部長「そこは記事にするかどうかを会議するんだよ。
   会議にしたくないような内容を聞いたら、君が胸に密やかに留めておけばいいだけの話さ」


後輩「無理に記事にしないのであれば、まぁ取材はし易いですね。
   お題目もあるし、もし駄目ならインタビューを学内新聞に載せればいいだけですか」

部長「飲み込みが早くて助かるね。 じゃ、宜しく頼んだよ」

後輩「先輩は?」

部長「僕はもう一人の部員と“学園地下に潜む謎の怪物”を取材しなくちゃならないから、君に一任するよ」

後輩「言ったからには絶対記事にしてくださいよ、それ」

男友「……俺もそれは正直読んでみたいわ」


~ それから数日後 ~



男友「これが俺の知り得る限りで作成した“男に惚れている女性”の一覧表だ」

後輩「ありがとうございます、先輩」

男友「礼を言うのはこっちだよ。忙しい中で時間を割いてくれてありがとな。
   暇なときにもでリサーチしてくれたら嬉しいよ」

後輩「…先輩って、なんかモテそうですね」

男友「そうか?」

後輩「まぁいいです。 もし上手く調べる事が出来たら、なんか奢ってくださいよ」

男友「ああ、いいぞ。 詳細がもし分からなかったら、労い兼ねて近場で甘い物でも奢ってやるよ」

後輩「……ちょっとだけ、楽しみにしておきます」


後輩「さて、じゃあ先輩から貰った一覧表でも見てみようかな」

後輩「けっこう人数多いみたいに言ってたから、流石に全員にインタビューは無理か」

後輩「……どれどれ。 何人くらいいるのかな?」


ペラッ



後輩「……」

後輩「……」

後輩「……」


後輩「校外まで含めると、150人を越えている、だと……!?」


後輩「……」

後輩「……」

後輩「これ男さんも凄いけれど、男友さんの情報収集力も相当すごいよね……」


後輩「とりあえず全員は無理。 私一人でやるには150人は多すぎる。
   学内の美人にインタビューという観点からも、これは相手をピックアップしておくべきかな」

後輩「労力を考えると、ざっとまとめてこんな感じ」




・女さん  ・ツンデレ
・幼馴染  ・委員長
・転校生  ・保健室登校の先輩
・ヤンキー ・お嬢様
・メンヘラ ・王子



後輩「濃いメンバーね……朝食にカツ丼食べたときの胸やけを思い出すわ」


後輩「さて、まず初日は誰にコンタクトを取ろうかしら」

後輩「……」

後輩「……」

後輩「人数多いし、くじ引きで決めよう」



【最初のインタビュー相手】

>>20

委員長

玉子

転校生

王子ってなんだよ。ホモかよ

まこちーだろ

忙しさが突然背中をつついてきたので、投下途中のままになってしまい申し訳ありません
後日改めて続きを書き連ねるのでゆるりとお待ち頂けると幸いです

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