藤原肇「お弁当ですか」 (44)
リスペクトと言う名の便乗
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P「………」カタカタ
P「………」カタカタッターン
P「あ~ ひと段落ついたかな」
P「って、こんな時間か。昼飯にするかな」
P「さてさて、今日のお昼ご飯はー?」
藤原肇「プロデューサー、誰に向かって話しているんですか…?」
P「お、肇。戻ってたのか。おつかれさん」
肇「はい、お疲れ様です。それで、何を…?」
P「いや~、寂しい一人者だとついつい独り言が増えちゃってな」
肇「一人者なんですか、プロデューサーって…」
肇(いいこと聞いてしまいました)
P「なんでそこでちょっと笑顔になるんだよ…」
肇「えっ! いえ、なんでも///」
P「俺が哀れで笑えちゃったか、そうかそうか…」
肇「ち、違います… なんでそんなに卑屈なんですか…」
肇ちゃんだと?(ガタッ
P「それはね、事実だからさ」
肇「そ、そうですか」
P「………」
肇「そんなに物憂げな顔しないでください…」
P「………」
肇「えっと… お、お昼ごはんでしたよね?! ご一緒してもいいですか?」
P「ん? ああ、勿論だ」
P「誰かと一緒に食べるとうまく感じるしな」
肇「それは何よりです」
P「肇と一緒だったら猶更だよ、なーんて」
肇「…もう、お上手なんですから///」
肇「どこかに食べに出るんですか?」
P「いや、午後からも予定がたっぷりだからな。事務所でサクッと食べるよ」
肇「お忙しいんですね…」
P「俺が面倒臭がって仕事を溜めてたからだけどな」
肇「その情報はいりませんでした…」
肇「それでしたら、お弁当とかでしょうか?」
P「さっき俺、一人者だって言ったのに… 弁当とかある訳ないだろ…」
P「そうやって俺の傷を抉って… 実は肇って俺の事嫌いなんだろ…」
肇「そんなことありません! むしろ、好きと言いますか」
P「ん?」
肇「い、いえ。なんでもありません…///」
P「そっか。何て言ったかよくわかんなかったし別に気にしてないよ」
P「若年性の難聴かな? って、肇と俺とで十歳違うし、俺もおっさんだな」
肇「おっさんだなんて… プロデューサーはまだまだ十分お若いです」
P「はは、お世辞でもありがとう」
肇「それで、用意したお昼ごはんというのは?」
P「おう。これだ」ドンッ
肇「こ、これは…」
P「すごいだろ? 毎日食べても飽きないんだ」
肇「ただのカップラーメンじゃないですか…」
P「まあ、そうだな」
肇「そうだなって… 毎日これなんですか?」
P「ああ。ここの所は三食これだな」
肇「三食これは体に障ってしまいますよ」
P「あ、違った。朝は食べないから二食だ」
肇「猶更です…」
肇「兎に角です、今日は仕方がないにしても、辞めた方が…」
P「そんなこと言われてもなぁ。俺、料理なんかしたことないし」
肇「学生時代はどうなさっていたんですか?」
P「もちろんこれだ!」
つカップラーメン
肇「………」
肇「…わかりました」
P「え? なにが?」
肇「明日から、私がプロデューサーの為にお弁当を作ってきます」
P「いやいや、そんなの申し訳ないって」
肇「寮で余った食材は自由に使えますし、どうせ私はいつもお弁当を作ってますし」
P「いや、でもさ。二人分ともなると手間だろ」
肇「一人分も二人分も変わりません。それに、何よりプロデューサーのお身体の方が心配で…」
P「でもなあ…」
肇「でしたら、せめて明日だけでも。それでお口に合わなければ、今後は持ってきません」
P「…そうか。せっかく肇が作ってくれるって言ってくれたことだし、お言葉に甘えることにするか」
P「だけどな、肇」
肇「なんでしょうか?」
P「肇が俺の為に作ってくれた弁当が、口に合わない訳がないんだ」
P「だから、これからずっとお世話になっちゃうって事だ。それでもいいのか?」
肇「…勿論です。何しろ、そのつもりで言いましたから」
肇「それに、これからもずっと、プロデューサーのために作り続けたってかまいません」
肇「プロデューサーが望むのであれば、ですけれど…」
P「肇…」
肇「す、少し、余計な事を言ってしまいました。忘れてください…///」
P「…そんな事言って、勘違いされるぞ? まぁ、とにかく、明日から頼むよ」
P「じゃあ俺、お湯沸かしてくるからな」
肇「…はい」
肇「勘違い、何かでは無いですよ…?」ボソッ
___
翌日
P「全く、今日も今日とて仕事三昧だな」
P「………」
P「そういえば、今日からは肇が弁当作ってくれるんだったな」
P「…楽しみだ」
ドア<ガチャ
肇「戻りました」
P「噂をすれば、って奴だな」
P「お~い、肇ー」
肇「あ、プロデューサー、お疲れ様です」
P「おう。それでな、肇…」
肇「わかっています。ちゃんとお弁当作ってきました」
P「ありがとうな。お、可愛らしい包みだな!」
肇「開けてみてください」
P「どれどれ… うわ、うまそうだな!」
P「唐揚げにウィンナーに、ご飯にふりかけもかかってる!」
肇「お弁当の定番ばかりですけれど… それにしても、プロデューサー」
P「手作りってだけで、なんか温かみがあるよな! しっかし、うまそうだな~」
肇「…なんだか、子供みたいにはしゃいで可愛いです。普段とは違う一面が見られて、それだけで作った甲斐があったと思います」
P「うるせえやい。どうせ俺は子供ですよーだ」
肇「ふふっ。昨日は自分の事をおっさんだなんて言ってました」
P「昨日は昨日、今日は今日、だからな」
P「それより、昼休憩が待ち遠しいよ。今食べようかな…?」
肇「早弁、ですか? なんだか、本当に子供みたいです」
肇「ですけど、もっとお腹を減らした状態で食べたら、さらにおいしく感じられるかも知れませんよ?」
P「…それもそうだな。というか、昨日の晩から何も食べてないから、かなりやばいけど」
肇「そういえば、朝は食べないと言ってましたね。食欲がわかないのですか?」
P「いやぁ、夜もカップ麺かコンビニ弁当だからな。正直、かなり厳しい」
肇「それでしたら、どうして…」
P「体力を温存するために、ぎりぎりまで起きられないんだ」
肇「そんなに切羽詰まってるんですか…」
P「朝に食べるものが無いって言うのも理由だけどな。その日に食べるものしか買わないから、朝の分が無いんだ」
肇「そんなに適当な生活を送っていたら、いつか病気になってしまいます」
肇「それに、毎食インスタント食品だなんて、絶対によくありませんし…」
P「…まぁ、でもさ。今は違うからさ」
肇「えっ?」
P「だって、肇が弁当作ってくれるじゃないか」
肇「それは… 確かにそうですね」
肇「それでも、夕食は変わりませんよ?」
P「そうなんだよな~…」
P「いっそのこと、昼の弁当だけじゃなく、朝も夜も全部肇が作ってくれたらいいのに…」
肇「ぷ、プロデューサー… それって…」
P「おっと、悪い! セクハラ紛いだった。気を悪くしたなら謝るよ」
肇「い、いえ、そういう事ではないんですけど…」
P「でもさ… いっつもバカな事ばっかり言ってる俺だけど、これは本音だから」
P「って、またセクハラっぽい事言ってしまったな」
肇「…いえ、気にしないでください」
P「いやいや、せっかくお情けで弁当作ってもらってるのに、嫌な思いをさせてもさ」
肇「………私も」
肇「私も、そうなれたら素敵だなって、思ってますから」
肇「それに、お情けでではないです。私が、プロデューサーに作りたくて…」
P「肇………」
肇「…っ! い、今のは聞かなかった事にしてください!///」
P「………」
肇「プロデューサー…?」
P「…そうだな。聞かなかったことにしておくよ」
肇「ありがとう、ございます…」
肇(………それはそれで、少し残念です)
P「…ちょっと、独り言言うから」
P「聞き流してくれて構わない」
肇「はい…?」
P「肇が、アイドルとしてトップに立った後… いや、トップに立てなかったとしても」
肇「プロデューサー…?」
P「もう、アイドルはいいかなって思って、この業界から退くときに… 俺からもう一度言うから」
P「その時までは、アイドルの藤原肇として、悔いのない生活を送って欲しい」
期待
肇「………」
P「その時に、俺なんかよりいい奴を見つけたらそっちに行っても俺は恨まない」
P「これは、俺が勝手に肇を待ってるだけだから…」
肇「プロデューサーより、良い人なんていません…」
P「弁当も無理に作らなくたっていい」
P「でも、肇が俺に弁当作ってくれてるうちは、ずっと肇のこと待ってる」
肇「…ずっと、これからもずっと、お弁当作りますから」
P「…こら、肇。これは独り言なのに、返事しちゃ駄目だろ」
P「俺の事、負担に思って欲しくないんだよ」
肇「…私も、独り言言います」
P「肇…?」
肇「さっきも言いましたけど、プロデューサー以外に、そんな風に見れる方何ていませんから」
肇「私がアイドル生活に満足するまでなんて、いつの事になるか分かりません」
肇「プロデューサーこそ、私に興味がなくなったら、いつでも言ってください」
肇「それまで私は、毎日お弁当、作ってきますから… いらなくなったら、気にせず言って欲しいです」
P「…肇の弁当がいらなくなる日なんて、絶対にないさ」
肇「駄目ですよ、プロデューサー。これは独り言なんですから…」
P「そうだったな………」
肇「プロデューサーが私のお弁当を受け取ってくれる限り、私は大丈夫ですから」
肇「寧ろ、受け取ってくれなくなっても、私はずっと…」
P「…なんだ。じゃあ、なにも問題ないんな」
肇「………?」
P「俺は毎日肇の弁当を待ってる。肇は毎日俺に弁当を作ってくれる」
P「俺と肇の点と点だった誓いが、繋がって線になってるんだ」
P「…なんて、少しかっこつけすぎたかな?」
肇「そんなこと、ありません… 詩的でとても素敵だと思います」
肇「でも、プロデューサー。独り言だと言ったのに…」
P「はは、悪かったって。だから、この話はここで終わりだ」
P「さっきも言ったけど、俺は肇が弁当を作ってきてくれる間はずっとお前の事待ってる」
肇「私は、プロデューサーが受け取ってくれる限り、ずっとお渡しします」
P「それが、俺たちの合言葉ってところかな?」
肇「…そうですね。言葉は無くても、お弁当にしっかり愛情を込めてきますから」
肇「だから、いつまでも受け取ってください」
P「肇も、ずっと俺に作ってきてほしい」
肇「…長くは待たせません。それでも、少しだけ、今までと同じように私を見ていてくれると嬉しいです」
___
ちひろ「あら、プロデューサーさん。今日も愛妻弁当ですか?」
P「今日もまた、同じ突っ込みですか… 芸がないですね」
ちひろ「肇ちゃん、ですよね? 毎日毎日健気なものですね」
P「そんなんじゃないですって。俺の食生活が酷いからって、お情けで作ってくれてるんです」
ちひろ「そうなんですか~。それだけじゃないと思いますよ」ニヤニヤ
P「いやらしい顔でニヤつかないでくださいよ…」
ちひろ「だって、そうじゃないですか? もう、随分前からそのお弁当見てますよ」
P「正確には、三年ですかね。肇も忙しいのによくやってくれます」
ちひろ「本当にその通りですね。ほら、テレビ見てください」
P「ですね………」
TV<~~♪ ~♪
ちひろ「いまや、CMにラジオに引っ張りだこのトップアイドルですもんね」
ちひろ「少し背が伸びましたよね。顔も大人っぽくなって、より一層綺麗になりました。これなら、トップアイドルだって、異国の人に言っても十分信用してくれますね」
P「本当にそう思います。肇は俺を信じてよくやってくれました」
ちひろ「もちろん肇ちゃんの実力もですが、プロデューサーさんのプロデュース力の賜物ですね」
ちひろ「だから、肇ちゃんもプロデューサーを信じてここまでの地位を築いたんだと思います」
P「そうですね。それに…」
ちひろ「それに?」
P「…いえ、肇が俺の事信じて付いてきてくれた成果だと思います」
P「それに、俺も肇の事、ずっと信頼してますから」
ちひろ「ん~? なんだか意味深な言葉ですね」
P「俺は肇と約束してましたからね!」
ちひろ「約束、ですか?」
P「…じゃあ、俺は肇を迎えに行ってきますから、この書類お願いします!」
ちひろ「この量を!? それに約束ってなんですかー!」
P「それはですね…」
P「俺が肇の事ずっと待ってたってことですよ!」ダッシュ
ちひろ「ちょ、ちょっと待ってください! 迎えに行くんでしたら待ってるのは肇ちゃんでしょうがー!」
___
__
_
雲一つない澄み切った青空が広がっている。
寒くもなく熱くもない、初春らしい穏やかな陽気が俺達を包んでいた。
絶好の花見日和だ。視界いっぱいに広がる鮮やかな桜色を見ながらそう思う。
「このあたりにしようか」
俺はそう言いながら、小脇に抱えていたシートを広げる。
まだまだ年若い女性が花見に行きたいなんて、なんだか萎びた趣味だと思うが、それくらいののんびりした空気が俺達には似合っていると思った。
「仕事の打ち上げで、花見に来たことがあったよな」
「そうですね。あのときは、薫ちゃんや早苗さん何かと大騒ぎして、後始末が大変でした」
もう何年前になるんだろうな。お前がアイドルやってて、俺が担当プロデューサーだった。
「あのときはプロデューサー… Pさんも大騒ぎして、あの頃から少しだけ、子供っぽいところが可愛いなって思ってたんです」
「プロデューサー、か。懐かしいな」
「今でも間違えて、偶に言ってしまいますから…」
以前のお前は俺の事をプロデューサーって呼んでた。俺の役職でもあったし、俺のそのものだった。
依然俺はプロデューサーをやっているが、もうお前を見る事は無い。
…いや、一生をお前達だけを見守る専属プロデューサーなんて、そんな風に考えられるのかも。
「どうして笑っているんですか…?」
「…ああ、なんでもないさ」
シートに腰を下ろすと、桜の魅力が一層増したように思った。
多分、視点が低くなってそう感じているだけなんだろうけど。
だけど、お前には敵わない、敵う者なんてない。
誰の目をも唸らせる風光明媚な春の彩でさえも、お前の美しさを引き立たせる一種の手段に成り下がってしまう。
「お弁当、作ってきましたから、食べましょうか」
「それを楽しみにしていたんだ」
蓋を開けると、いつも俺が食べている弁当のおかず達が行儀よく並んでいた。
唐揚げやウィンナー、串に纏められたプチトマトや鶉の卵なんかも小洒落ている。
様々なおかず達が彩る空間は、一面の桜達にも劣らない魅力を感じさせた。
「それに、おにぎりもあるんですよ?」
「へぇ~、どれどれ…」
もう一段蓋を開けると、綺麗な三角形に模られた几帳面なおにぎりが現れる。
こういう所にも、お前の性格がよく出ていると思った。
「これは…?」
定規や分度器でも使ったんじゃないかってくらい均等に作られたおにぎりの中に、やけに不恰好な楕円形のモノが三つ。
「…この子が、パパと一緒に食べるんだって。早起きして一緒に作ったんです」
「そうか…」
俺の横に座る、緊張した面持ちでおにぎりを睨んでいる愛娘の頭を、そっと撫でる。
「よくできてるな。ありがとう」
少し照れた顔をして、くすぐったそうに首を窄める。
そんな小さな一挙一動でさえも、たまらなく愛おしい。
「それじゃあ、食べようか」
ほら、手を合わせてって、娘に言いながら、家族三人仲良くいただきます。
大きさの揃っていない、不細工なおにぎりを手に取る。
「うん、美味しい」
春の陽気に中てられてか、俺の気持ちからか、 …俺達三人の気持ちからか。
いつの日かと同じ、温かさを感じた。
終わり。
展開の速さは許せ(土下座)
お弁当、いいですね。
皆さんも嫁で書くべきだと思います。
乙
嫁ならたった今お前さんが書いてくれたさ(キリッ
>>31 じゃあ代わりに俺の本妻歌鈴を頼んだぞ…
妄想から広がるお弁当の輪
ハッピーエンドでいいね
乙
お前だろうなと思ったけどよかった
おまえだと思って開いたら歌鈴が出てこないから違うのかと思ったらお前だった
なら俺のゴーストリックデッキとデュエルだ!
誰か俺のふみふみを書いて
なんか憑き物が落ちたみたいになってわろた
>>41
ならアロマダムルグや
>唐翌揚げやウィンナー、串に纏められたプチトマトや鶉の卵なんかも小洒落ている。
いつも食べてるものに無いものがあったり最後に肇って一回も呼んでなかったり歌鈴の他にも響子も前回出てきたせいでハッピーに見えなくなってしまった
>>43
さりげなーくしたつもりだったけど、気付く人はやっぱり気付くんだなあ…
普通に読んでたら肇ちゃんだけどね。
肇ちゃんで完璧なハッピーってのもあれだったんで仕込んでみました。
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