月物語 (362)
「問おう。うぬが儂のあるじ様かの?」
阿良々木暦は、文化祭の前々日に、月に招待された
これは、あるはずの無かった物語
Fate /extra と化物語のクロスオーバー
青春は、迷いなくとも、うまくいく
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367219271
「それとも、お前が今まで助けた連中に助けでも求めるかにゃ」
戦場ヶ原ひたぎ 蟹に行き遭った少女
「僕は…誰も助けてなんか…いない…」
神原駿河 猿に願った少女
「だって……人は一人で…勝手に助かるだけだから」
千石撫子 蛇に巻きつかれた少女
「だったら、ご主人を助けないお前はここで死ね」
羽川翼 猫に魅せられ、異形の翼
あぁ、やっぱり悲しむだろうな。戦場ヶ原も神原も千石も羽川も妹逹も。僕が死んだら。
……忍も、きっと。
けど、それでも僕は。
「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」
あぁ。ヤバい。意識が…………
「ぐはっ!」
ブラック羽川は限界までエナジードレインをして、僕を投げ捨てた。もう意識を保っているのが精一杯だった。
「とどめにゃ!!」
「ふむ。そちらではなかなか興味深いことが起こってるようだね」
……声が聞こえた。
「彼がこちら側を改変してからというもの、私のやることといえばそちら側を観察することだけ」
「いくら元NPCとはいえ、いい加減することがなく、暇をもてあましていた所だが………なかなかどうして興味深い」
「だが、これからそちらで起こるのは戦争ではなく蹂躙だ」
無機質なのにどこか温かい声が。
「戦争とは違い、蹂躙からは何も産まれない」
頭の中に、響いてきた。
「それでは困るんだ。だから、君にチャンスをあげよう」
チャンス?何を言っているんだ?だって僕は、もう諦めて………
「諦める?何を言っているんだ。人間は最初から諦めている。全能ではないのだから。それに……」
「今の君の人生の終末は、完成(おわり)に足る、美しい模様(アートグラフ)と言えるのかね?」
………そうだ。これじゃ駄目だ。確かに僕は羽川のために死にたいと思っているけど、これは全然羽川のためにならない。これじゃ僕の勝手な自己満足じゃないか!
僕はもう、正確には人間とは言えないけれど、それでも、それでも諦めた先にチャンスがあるのなら
「僕は、それを掴んでみせる!」
「良い答えだ。では君を、特別にこちら側に招待しよう。君には特別なサーヴァントを用意しておく。思う存分戦うといい」
「安心してくれ。彼がこちらを改変したおかげで、彼が言うところの『無意味な殺し合い』もなくなった。君が戦うのはしょせんデータにすぎない」
殺し合い?戦う?その言葉の意味を考る前に意識が途切れた。
これから語るのは、地獄ようでな春休みでも、悪夢のようなゴールデンウィークでもない、パラレルワールドでの物語
プロローグ(完)
「ここは……」
目が覚めた場所は、見知らぬ保健室のベッドの上だった。見知らぬ保健室って表現もなかなか使わないけど、匂いや雰囲気でここが保健室であることはすぐにわかった。
まだ寝ぼけている頭を起こし、自分がここに来た経緯を思い出していると、
「問おう。うぬが儂のあるじ様かの?」
そこに突然、金髪で8才くらいの幼女が……
「って、忍!?」
「忍?なんじゃ、それは?」
「なんじゃ?って、何言ってんだよ。お前の名前だろ。忍野忍。忘れたのか?」
いくら記憶力のない忍でも、自分の名前を忘れるほどじゃなかったはずだけど。それとも、喋らなかっただけで、忍野につけてもらった名前が本当は気に入らなくて無かったことにしているとか?
「何を言っているのかの、我があるじ様。儂の名はキスsy……いや、儂の今の名はセイバーじゃ」
今の?セイバー?何を言っているのか全然わからない。そもそも何故忍がここにいるんだ?何故急に喋るようになったんだ?つーか、ここどこ?爆発寸前の頭を懸命に動かしても全くわからないことだらけだった。とりあえず、何故ここにいるのかだけでも聞こうとした時、
「良かった。目が覚めたんですね」
こちらを心配していることが伝わってくる声と共に現れたのは、紫色の髪に白衣という格好の少女だった。
「おはようございます。」
「えっと………君は?」
「私はここ、SE.RA.PHにいる全てのマスターの健康管理をするAI、通称間桐桜です。今現在、ここに存在するマスターはあなた1人なので、私の主な役目は、あなたの健康状態を万全に保つことです」
AI ?ゲームのCPU みたいなものかゲームはあんましやらないから、違いはわかんいけど。でも、こんな可愛い娘に健康を管理してもらえると聞いただけで 、テンションが上がりまくっているのだからまったく、単純なものである。
「あなたの情報は、既にムーンセルから伝わってきています。阿良々木暦様」
「情報?僕の?」
「はい。あなたが目を覚ましたら、ここの事を説明する役割を与えられてもいます。」
「じゃあ、桜ちゃん。その説明ってのをしてもらえるかな?正直、なにがなんだかさっぱりだ。」
「わかりました。まず、ここは月の…………」
桜ちゃんから現在状況の説明を一通り受けたあと、ひとまず僕は気持ちを落ち着けるために、忍と共にマイルームに向かった。
「しっかし、聖杯戦争ねぇ。そんなもん、羽川だって知らねぇだろ」
桜ちゃんから聞いた話は、正直理解の範疇を越えていた。
「まぁでも、一応ここって未来だっていう話だし、知らなくて当然か」
あいつだって、何でもは知らないのである。何でもは知らない、知ってることだけ。
しかし、これからどうしたもんか。まったく、とんだチャンスをもらったものである。まぁ、どんなチャンスでも捨てるきはないのだけれど
以下 回想
「ちょっと待ってくれ、殺しあいってどうゆうことなんだ!?」
「どうもこうもあるまい、我があるじ様よ。つまり、ここでは昔、願いを叶える聖杯とやらを手にために、マスター同士の潰し合いが行われていたということであろう」
「はい。その通りです。」
「ちょっと待ってくれ、殺すなんて僕には無理だ。何か他の方法は………」
「何を言っていおるのじゃ、お前様。それは昔の話だと、今言っておったじゃろう」
「昔って……じゃあ今はその聖杯戦争ってやつは行われていないってことなのか?」
いくら自分の願いを叶えるためとはいえ、人を殺すなんて………まったく、ぞっとしない話だ。
「確かに、昔は 本当の殺し合いが行われていしまた。しかし、ある優勝者の願いによって殺し合いという形は失われ、今では特別に招待された人物だけに、願いを叶えるチャンスが与えられます」
「本当にできるのか、願いを叶えるなんて!?」
「はい。聖杯はあらゆる願いを叶えられます。けど、いいんですか?確かに、今の聖杯戦争は殺し『合い』ではなく、招待されたマスターがSE. RA. PH で作られた擬似的なマスターと戦う、といったものですが、あなたが敗れた先に待つのは本当の死なんですよ?」
「構わないさ。元々、あっちではもうほとんど死んだようなものなんだ。もう失うものはないさ」
「ふむ。人を殺さなければならないと聞いたときにはあれほど取り乱していたくせに、自分が死ぬ危険しかないとわかったとたんにその潔さ。まったく、難儀な奴じゃの」
「わるかったな。けど、僕は人を殺す覚悟なんて持ってないし、そもそも、持ちたいとも思わない。自分の願いを叶えるために他人を殺すなんて、そんなの………違うだろ」
それに、背負う命なんて一つで僕にはいっぱいいっぱいだ。
「それでは、これから今回の聖杯戦争のルールを説明させていただきます」
「ああ」
「うむ」
「まず、今回の聖杯戦争は全六試合行われ、一試合ごとにイベントとバトルに分かれます」
「イベントとは、こちらが用意したゲームを相手とアリーナの中で行ってもらいます」
「そして、そのゲームの最中に相手の情報を把握し、バトルに役立ててもらいます。もちろん、相手も阿良々木様やサーヴァントの情報を探ってくるので、ここで重要なのは、いかに相手に情報を与えずに相手の情報を入手するかという点です」
「そして、ゲームに勝てば特別にこちらが用意した相手の情報を差し上げます」
この戦いは情報戦かが命だってさっき説明されたから、気合いをいれていかないとな 。
「次に、バトルの説明です」
「バトルでは、アリーナとは別に用意されたステージで、互いのサーヴァントを文字通り戦わせます」
「そして、このバトルで勝てば勝者と認められ、晴れて次の戦いに進めます」
「ここまでで何か質問はありますか?」
「いや、無いよ。桜ちゃん」
「わかりました。それでは、こちらの準備が整うまではマイルームで待機しててください」
「わかった。じゃあ行こうか」
「うむ」
以上 回想終了
「のう、お前様。これからどうするのかの?」
「まぁ、一回戦の相手が決まるまではとりあえず待機だろ。とりあえず状況確認だ。今の忍の状態も知っておかないとだし」
本来サーヴァントは、生前の全盛期で現れるらしいのだが、いかんせん、パワーバランスの都合上、8才まで幼児化してしまっているらしい。勝つごとに能力値だけは本来のものに近づくらしいのだが。ちなみに忍にとっての全盛期とは、当然僕と出会う前であり、故に僕の記憶はない。
七回戦目ありそうだな。
相手はトワイスかはくのんか?
「じゃから、儂のことはセイバーと呼べと、何度いったら解るのじゃ我があるじ様よ」
「けどさ、真名を隠すんだったらセイバーも忍も変わらなくないか?」
「………そうじゃな。どうやらそちらではその名で呼ばれておったようじゃし。それに何となくその名で呼ばれ慣れておる気もするしの」
そうなのか?まぁ、僕と出会う前の忍がそのまま今いるこいつって訳じゃない、みたいなことさっき桜ちゃんが言ってたしな。
>>まだ決めかねています
>>16
まだ決めかねています
「けど、今のお前って結構、力が抑えられてる状態だよな?」
「うむ。本来の姿はこんなチンチクリンではない。儂に相応しいナイスバディーじゃ。まぁ、じゃからといってこの姿でも儂の魅力は全く衰えておらんがの」
自分でいうのもどうかと思う反面、それが全くの事実であることを僕は既に知っているので、特に言及はしなかった。
「じゃあ、とりあえず今のお前のパラメーターを見せてくれ。最終的戦闘はお前任せになるにしても、知っておいた方が色々便利だろ?」
「うむ。それもそうじゃな。」
クラス セイバー
真名 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
筋力 C
耐久 D
敏捷 B
魔力 C
幸運 A
固有スキル 対魔力:C
技能 千里眼:A / 戦闘続行:B / 物質具現化:B
宝具 心渡り:EX / 怪異の王:D
「やっぱり、セイバーのわりに能力が低いな。」
「それは仕方あるまい。儂の全盛期はオールEX じゃからな!」
「はいはい。けど、ルール上お前の力が抑えられてるってことは、この能力値でも勝てる可能性はあるってことなんじゃないのか?」
「かもの。じゃが、あまり楽観視するものではないぞ我があるじ様」
「わかってるさ。命賭けの戦いで楽観視なんて、できるわけないだろ」
それに、僕の大切な恩人の未来もかかっているんだから。
トーナメントの途中で月の裏側には行きますか?
「なぁ、忍」
一通り自分達の現状が理解できてきたとき、僕は自分の疑問を口にした。
「どうして僕に協力してくれるんだ?」
「かかっ。なんじゃ、今さらそんな質問かの」
忍は相変わらずの人を見下したような態度で答えた。
「別に、お前様に協力してる訳ではない。気がついたらサーヴァントなどという面倒極まりない役割が与えられていたからの。不本意ではあるが、その役割を果たしてるのにすぎん。
なに、所詮は気まぐれ。飽きたら止めるしの」
心渡りEXランクといえるほどか?
エアや王の軍勢がEXランクだぞ。
「いや、それは僕が困るんだけど」
「かかっ。冗談じゃ。儂の二つ名にある熱血の二文字が、そんなことは許さんよ」
「お前の熱血なところなんて、僕は見たことないけどな」
「それより、お前様の方こそどうなんじゃ。聖杯になにを願うつもりなのかの?」
>>23
行きません
>>25
単純に書き間違えました
脳内でBに下げといてください
は?なにを言ってるんだこいつ。さては僕の話を全く聞いてなかったな。僕がここに来た理由はさっき、桜ちゃんから聖杯戦争のことを聞く前に話したっつーのに。
「おいおい忍。僕の話を聞いてなかったなのか?僕はここにチャンスをもらうためにたんだよ」
「じゃから、そのチャンスをもらって具体的にどうするつもりなのじゃといきておる」
「えっ?」
ヤバい。そこら辺のことは全然考えてなかった。チャンスったって具体的にどうすりゃいいんだ?
「全く、お前様の行き当たりばったり感もなかなかのものじゃの。そこまでいけば大したもんじゃ。
じゃがまぁ、そこら辺のことは考えておけ。例えば過去やり直すにせよ、誰かの存在を消すにせよ、の」
そうだな。後者については完全に却下だけど、そこら辺も考えておかないとな。いざ願いを叶えてもらったときに、どうすればいいかわからないなんて笑えない。
「まぁでも、まずは一回戦を勝たないと始まらないよな」
「かかっ。そこは儂に任せるがよい。いくら弱体化していようと儂は怪異の王。生半可な人間のサーヴァントごときに遅れはとるまい」
「そうだな…………なんつーか、ありがとな。忍」
「ふむ、礼などよい。所詮は気まぐれじゃ。じゃが、どうしても感謝したいというのであれば、儂が無事に元の姿に戻った時に胸を揉むがよい」
なぜ、感謝を表すのに胸を揉むんだ?
もしかして、そこまで勝ち進めたら褒美をくれるって遠回しに言ってるのか?たっく、こいつも立派なツンデレだな。
「つーか、褒美をくれるってんなら胸を揉むより眼球を舐めさせてくれたほうがありがたいんだけどな。やれやれ、男子高校生の欲望を全然理解できてないぜ」
「かかっ。思ったことが口にでておるぞ、お前様よ。さて、我があるじ様の特殊な性癖も知れたところで、時間かの」
「特殊じゃない。いたってノーマルだ!」
ピピピピ ?ピピピピ
電子音がなり響いた。どうやら一回戦の相手が決まったらしい。早速掲示板を見に行くとしよう。
「では、行くとするかの。我があるじ様よ」
「そうだな」
よし!とりあえず、なにをするにしても最初が肝心だ。
自分に気合いを入れ、霊体化した忍とともにマイルームを後にした。
今日はここまでです
四回戦以降の相手はまだ決まっていないので、意見があればお伝えください
また、それ以外にも改善した方がいいところがあれば教えてください
吸血鬼的にはヴラド三世出して欲しい。
相手はFateのサヴァでオリサヴァじゃないよね?
>>34
はい
それに、CCCのキャラを出す予定もありません
ヴラド三世については検討します
これは八九寺に出会えなかった世界か
四回戦 赤セイバーと白野
五回戦 アーチャーと白野
六回戦 キャス狐と白野
お前ら自分の意見ばっか言ってないできちんと乙してやれよ
乙
「はっ、お前が僕の相手?なんだ、ずいぶん弱そうだな」
掲示板の前にいたのは、一回戦の相手になる人物、間桐慎二だった。
「ふむ、一回戦目の相手はあのワカメか。随分とまぁチョロそうじゃな」
霊体化しているのをいいことに、忍は言いたい放題だった。いや、あいつなら面と向かってでもそれくらいのことは言うか。
それにしても、自分と同じ声で喋る人が目の前にいるなんて、なんか気分悪いな。
「……何だよ。人の顔ジロジロ見ないでくれない」
「あぁごめん、慎二くん。えっと……まぁよろしく」
「はん、よろしく。一回戦めで僕と戦うことになるなんて、お前、運がいいよ。だって実力に差があれば負けても恥ずかしくなし、無駄な希望をもたなくて…………あぁわかったよ、行けばいいんだろ。少し黙ってろよ」
なんだ?サーヴァントと会話でもしてるのか?
「ふん。じゃあ僕はもう行くから。せいぜい無駄な足掻きでもするんだな、暦」
そういうと慎二くんは足早にアリーナへと向かっていって行った。なんだろう、忍じゃないけどあの子からはどうしようもない小物臭を感じる。
「なにをしておる。お前様、儂らもアリーナに向かうのじゃ」
「あぁ、じゃあ行くか」
『一回戦のイベントはトレジャーハントです。計5つの宝箱を相手と取り合い、より多くの宝箱を入手した方を勝者とします』
『では、スタートまで残り1分。カウントダウンを始めます』
アリーナの中は不思議な空間だった。名前からして、何となく体育館みたいなとこかと思ってたけど………
「何だか迷路みたいとこだな。ここで宝探しって、結構骨がおれそうだな」
「まぁ、条件は同じじゃろう。みたところ、あのワカメは探し物などという地道な作業は苦手そうじゃったし、もしかしたらこちらの方が有利かもしれん」
「だといいんだけどな。一回戦目からイベントで負けるなんて勘弁だし」
「うむ。しかし用心しておけ、我があるじ様よ。みたところスタートの位置は別々のようじゃが、いつあのワカメが襲ってくるやもしれん」
そうだ。アリーナの中なら少しの間の戦闘も認められる。慎二くんは馬鹿っぽいけど、マスターとしての実力はきっと本物だ。いくら忍とはいえ弱体化してる状態では、万が一ということもあるかもしれない。
「まぁ考えてもしょうがないか。もしもの時は頼むぞ、忍」
「かかっ。なに、儂に任せておけ」
『3 2 1 それでは、スタートです』
アリーナは、思ってた以上に広く宝箱を探すのには苦労した。何だか、いつも以上に疲れるのが早い気がする。おそらく、この世界ではマスターには力があまり与えられないから、僕の吸血鬼体質も消されているせいだろう。
「それもあるかもしれんがの、我があるじ様よ」
僕の前方を走る忍が僕を振り返り言った。
「儂が思うに、命を賭けているという状況がお前様に精神的な重圧を与えているのじゃろう。緊張すれば疲労も溜まりやすくなるものじゃ」
忍の言う通りかもしれない。やっぱり死ぬのは怖い。もしも負けたら。そんな不安が頭をよぎる。けどそれでも、疲労困憊になりながらやっとのことで宝箱を2つ入手し、最後の1つを探しに行こうとしたとき………
「へぇー。暦のくせになかなか頑張ってるじゃないか」
そこに現れたのは慎二くんと、そのサーヴァントと思われる長身の女性だった。
「まったく、無駄な努力ごくろうさま」
「なんじゃワカメ。随分と余裕そうじゃの。そういうからには、うぬらはもう宝箱を入手したのかの?」
「誰がワカメだよ!」
「ははっ。面白いね、お嬢ちゃん。けどおあいにく様。うちのマスターはこういう地道な作業が苦手でね。まだ宝箱は1つだよ」
よかった。慎二くんの自信たっぷりな態度をみて、もしかしたらと思ったけど、それも杞憂に終わったようだ。やっぱり、忍の予想は当たってたみたいだし。
「うるさいな!だいたい、僕はこんなみみっちいことしたくないんだよね。それよりも、ここでお前達を倒して、そのあとゆっくり宝箱を回収すればいいんだよ。それが一流のプレイヤーのやり方ってもんだろ」
「へぇ、ずいぶん余裕じゃないかシンジ。倒れてるそいつらの目の前で、財宝を全部取っちまおうって算段かい?
いや、もうどうしようもないねじ曲がりっぷりだ! 小悪党にもほどがある!」
「誰が小悪党だよ!」
なんだろう。サーヴァントとマスターの関係ってあんな感じなのか?まぁ、僕達も人のこと言えないけど。
「ふん。そんな勝負に乗る必要はあるまい。宝箱はこちらの方が多いという情報をあちらからばらしてくれたんじゃ。適当に回避して残りの宝箱を回収した方が、効率がいいじゃろう」
「つれないねぇ、お嬢ちゃん。そんなこと言わないで遊ぼうじゃないか。シンジは楽しむってことを知らなくてね、いい加減退屈してきたところさ」
「おいお前。僕のサーヴァントならサーヴァントらしく大人しくしてろよ!だいたいお前は…………」
慎二くんがサーヴァントに小言を言い始め、緊張が緩んだ隙に忍が話かけてきた。
「どうする?お前様よ」
どうするっつったってな。効率を求めるならさっき忍が言った通りにするべきだろうけど………
「うーん。いや、やっぱりここは戦おう。バトルに向けて相手の情報はできるだけ有った方がいい。それに、サーヴァントの戦いにも慣れておきたいしな」
「それはいいが、我があるじ様よ。忘れてはおらんか?もし戦えば、儂らの情報もあちらに伝わってしまうのじゃぞ?」
「それなんだけどさ。今のお前って、弱体化してるからこそ吸血鬼ってことがばれにくいと思うんだよ。心渡、その対サーヴァント用にカスタマイズした刀だけを使って戦えば、大した情報は漏れないと思うんだ」
「ふむ。弱体化を逆手にとるのか。イベントでの戦闘は長くは続かぬ。それくらいの間であれば心渡だけでも問題無いじゃろう」
「いけるか?忍」
「是非もないの」
「シンジ、どうやら奴さん達もやる気になったようだよ」
「は?へぇ、なんだ逃げ出すかと思ったんだけど。敵わないってわかりきってるのに、やっぱりバカだな暦は」
「はっ!ワカメの分際で偉そうにするでない。儂らが勝ったら、大人しくアリーナから出ていってもらうからの」
「いいよ。そんなことはあり得ないけどね!」
「さぁて、じゃあ早速、おっ始めるかなぇ!」
「頑張ってくれ、忍」
「うむ。任せておけ」
「行け。ライダー!」
うわー。慎二くん、自分からサーヴァントのクラス言っちゃったよ。さっきも結構強引な忍の要求を呑んでたし。やっぱり慎二くんてバカなのかな?
慎二くんのミスを気にする様子もなく、ライダーは二丁の拳銃を構えた。どうやらそれが彼女の武器らしい。
待てよ、拳銃が武器ってことは慎二くんがわざと嘘をついて実はアーチャーって可能性も…………いや、それはないな。慎二くんにそんな器用なことはできそうにないし、そもそも、そんなすぐばれる嘘つく意味がない。
対する忍は、心渡を両手に一本ずつ握った状態で立っていた。背丈に似合わず長すぎる刀を持ちながらも、いつでも動き出せる姿勢だ。
「そらよ!」
先手をとったのはライダーだった。
牽制として忍の脚に二発の弾丸が飛来する。
忍はその弾丸を避けつつスタートをきり、右手の心渡でライダーに斬りかかる。
だが、ライダーは二丁の拳銃で器用に刀を受け止めた。
「ふん。なかなかやるではないか」
「はっ!まだまだ、こんなもんじゃないさ」
ライダーは刀を受け止めたままの体制から銃口を忍に向けた
今度は三発の弾丸が忍の頭に向かって放たれた。
「くっ!?」
忍は寸前のところで拳銃を弾いて弾丸を回避し、大きく跳躍して一度距離をとった。
「大丈夫か忍!」
見れば忍の肩からは血が流れていた
鮮血、吸血鬼の血が。
「かすっただけじゃ。いちいち狼狽えるなお前様」
内心動揺し、混乱しまくってる僕とは対照的に、忍はいたって冷静だった。
「それに、重要なのはこれからじゃ。見ろお前様」
「えっ?」
忍に促されて、慌ててライダーに視線を向けると、ライダーの後ろに所々金色に装飾された四つの大砲が出現していた。
「大砲って…………そんなのありかよ!」
「狼狽えるなと言っておるじゃろう」
そんなこと言ったって大砲を向けられてびびらない奴なんていないって!
「砲撃用ー意! 藻屑と消えな!」
ドン ドン ドンドン
「忍!」
立て続けに四つの弾が忍めがけて容赦なく飛んできた。
かろうじて僕に見えたのは、忍が一発目をギリギリのところで回避するところまでで、その後は爆煙で見えなくなった。
「ははっ。ほら見ろ。やっぱり僕の勝ちだ!」
勝ち誇った顔で笑う慎二くん。
「大丈夫か、忍!」
忍がこんなことで倒されるとも思えないが、それでもやっぱり心配だった。
「じゃあな、暦。せいぜいそこでじっとしてるんだな」
高笑いとともに、ここを立ち去ろうとした慎二くんを呼び止めようとしたその時………
「!?まだだよ、シンジ!」
ライダーが声を上げた瞬間、爆煙の中から一つの人影否、一人の羽根を生やした吸血鬼が飛び出してきた。
よかった。衣服はボロボロになっているけど、大した傷は負ってないみたいだ。
「ライダー!」
飛び出してきた忍に不意をつかれ、固まっているライダーをめがけて忍は今度は両手同時に刀を振った。
「くっ!」
ガキン
鋭い金属音とともに、ライダーの左手の拳銃は忍の右の刀に弾かれ宙をまった。
「カカッ。油断大敵、じゃ」
残された左の刀がライダーの腹を貫こうとした、その時………
『警告 警告 イベント中の許容戦闘時間を過ぎました。直ちに戦闘を終了してください』
アリーナ中に放送が響き渡った。どうやら、イベント中の戦闘は、ここまでのののようだ
「カカッ。命拾いしたの」
そういうと忍は、いつもの冷たい笑みを浮かべて僕のところに戻ってきた。
「おい!大丈夫なのか、忍」
「うむ。当たり前じゃ。儂を誰だと思っておる」
「けどお前、爆煙の中からなかなか出てこなかったじゃないか!」
まったく。こっちは大砲が当たったんじゃないかと思っていたのに。心配させた罰を後で与えなければ。
「その話は後じゃ、我があるじ様よ。それより………」
戦ってない自分をたなにあげて、下らないことを考えていた僕に声をかけ、忍は視線を前に向けた。
そこでは、またぞろ慎二くんとライダーが口論を行っていた。
「おいライダー。なに負けそうになってんだよ!まさか……………お前、手加減なんかしてないだろうな?」
「あん、手抜きだぁ? そんなのしたに決まってるじゃないか」
「はっ?なに言ってんだよ、お前」
「いやあ、アタシは本気でも、こればっかりは仕方ないっつーか。
あくまでアタシは副官だからねぇ。命令以上の事はできねぇっつーか。金を出すのは主人の役目だし?」
「だいたい、このアタシを本気にさせるのに宝箱数個って湿気てるにもほどがある。海賊を使うには、金がかかるんだよ。覚えときな、シンジ」
「おまえ……ほんとに金にしか興味がないんだな。って、お前何自分が海賊だってことばらしてるんだよ!」
海賊。なるほど、そう考えれば先ほどの大砲やライダーのクラスにも納得がいく。
「そう騒ぐなよシンジ。どっちにしたってこの勝負、アタシ達の負けさ。どうせそれぐらいの情報なんてあっちに伝わっちまう」
「それに、自分だってさっきからアタシのことをライダーライダー呼びまくってたじゃないかい」
「くっ………もういいからお前黙ってろよ!」
正体が八歳児だとわかってると微笑ましい。
「あの。お取り込み中悪いだけど、勝負は僕達の勝ちだから。約束通り、アリーナから出てもらえるかい?」
自分勝手な慎二くんと姉御肌のライダーのやり取りは、見ていてなかなか面白いけど、いつまでもこうしてる訳にもいかない。僕達にはまだやることがあるのだ。
「ちっ、わかったよ。今回は勝ちを譲ってやる。まぁ、どうせまぐれだし。実力で僕に勝ったなんて愉快な勘違いはしない方が身のためだぜ。次はこうはいかないからな!」
そういうと慎二くんはライダーを引き連れてアリーナの出口に向かっていった。
「ふぅぅ」
何だかどっと疲れた。戦っていたのは忍のはずなのに、まるで自分が戦っていたような疲労感だ。
「いや、見ているだけでもあるまい。マスターは常にサーヴァントに魔力を供給しておる。それに、今回は予定に反して吸血鬼の力も使ってしまったしの」
そうだったのか。それでこの疲れか。確かに、さっき忍は大砲の弾をかわすために羽根を生やしていたし、今だって傷やら服やらを元通りにするために僕の魔力を使っているはずだ。
「そうだ。忍、羽根なんか生やしちまって大丈夫なのか?」
まさか羽根を生やしただけで吸血鬼扱いされるとも思えないが、それでも、人ならざるものだという手掛かりは与えてしまうだろう。
「うむ。そのことは後で話す。それより、今は残りの宝箱を回収するほうが先じゃろう」
「わかった。お前がそういうならそれでいいんだろ。もう走る必要もなくなったし、ゆっくり探すか」
その後、無事残りの宝箱を回収し、へとへとになりながらもアリーナを後にした。
今日はここまでです
サーヴァントの希望と一緒に、イベントのアイデアももらえるとありがたいです
これ、見てくれてる人いるのかな?
乙
CCCのキャラ駄目って
全員の事、それともアルターエゴだけ?
カルナ、アンデルセン、赤ランサー見たい。
乙
カルナさんはApocryphaだからセーフなんじゃね?
「フランシス・ドレイク?」
マイルームに戻った後、トレジャーハントの勝利報酬として送られてきた情報に目を通している最中、忍が唐突にその名を言った。
「そうじゃ。この能力にこのスキル、それにライダーのクラスやあの大砲などを総合して考えた結果、まず間違えないじゃろう」
クラス ライダー
真名 ???
筋力 D
耐久 D
敏捷 B
魔力 E
固有能力 対魔力:D
技能 嵐の航海者:A+ / 星の開拓者:EX
宝具 ???
「フランシス・ドレイクっていやー、確か初めて船長として生きたまま世界一周を成し遂げたっつうイギリスの冒険家だろ?」
歴史は苦手だからあまりよく知らないけど、それでも名前くらい覚えてる。それくらい有名な人物だ。
「けど、その人って確か男性のはずじゃないのか?」
うろ覚えだけれど、確かに教科書にはフランシス・ドレイクは男性として記載されていたはずだ。
「いや。それはおそらく誤解されたまま現代に伝わったのじゃろう。あやつは確かに女性じゃったよ。現に儂はこの目で見ているしの」
「はっ?お前、歴史上の人物と会っちゃったりしてるの?」
確かに、五百年も生きていればそういうこともあるだろうけど、それでも驚きは隠せなかった。
「うむ。なにやら太陽を落とした人間がいるという噂を聞いての。興味がわいたから遠目からみてみたのじゃ。まぁ、太陽を落としたというのは比喩じゃったがの」
当たり前だ。人間が太陽を落とせる訳がない。まったく、そんな噂で行動するなんて、やっぱりスケールがでかいのか小さいのかよくわかんね。
「まぁ、儂が見たときはもうちっと歳をとっていたからの。さっきは確信は持てなかったのじゃが、今なら確信できるわい」
そういえば、さっき羽根を生やしたのには理由があるみたいな態度だったな。
「なぁ忍、さっきのことなんだけど、もしかしたらそれと関係あるのか?」
「まぁの。なに、簡単なことじゃ。まず最初に、奴の武器が拳銃だとわかった時、儂がなにを警戒していたのかわかるか?お前様よ」
警戒?いや、拳銃を向けられれば誰だって警戒するだろうけれど。でも、忍が言ってるのはそういう事じゃないよな。
「いや、さっぱりだ。なんだ、もったいつけずに教えてくれよ」
「はぁー。お前様、聞くところによると一時とはいえ儂の眷属だったのじゃろう?じゃったら、吸血鬼の弱点くらい覚えておかんか」
「銃にまつわる吸血鬼の弱点。それは………」
「銀の弾丸じゃ」
そうか、吸血鬼には銀の弾丸が効果的だったっけ。全盛期の忍なら、もちろんそんなものすら効かないはずだが、今の忍はあいにく弱体化してる状態だ。用心するに越した事はない。
「まぁ、その警戒も杞憂に終わったがの」
「杞憂って、まだ相手がそれを隠してるって可能性もあるんじゃないのか?」
「いや、それはないじゃろう。あやつは所詮海賊、化物は専門外じゃろう。そんな輩がわざわざ銀の弾丸などというものを持っているとは思えん」
それもそうか。海で出会う化物なんて、せいぜい海坊主とか、そんなところだろう。
「とにかく、あやつが銀の弾丸を持っているという可能性は、最初に弾がかすった段階で半分となり、海賊とわかった時点で零となった」
そういう事か。相手がこちらの弱点をついてこれない以上、こっちが吸血鬼だってばれても問題が無いってことか。
「そういう事じゃ。じゃから明日のバトルでは今出せる吸血鬼の力を最大限に発揮しても問題はないじゃろう」
「そうか。じゃあ、心配事も消えたことだし、明日に向けて今日のところは休むとするか」
「そうじゃの」
「それじゃ、明日も頼むぜ、忍」
「うむ。儂に全て任せておけ」
「あぁ、それじゃあお休み」
少ないですが、今日はここまでです
100%ノリで書いているので、伏線とかごっちゃごちゃの無視しまくりになるかもしれません
どうしても許せない矛盾点などがあったら言ってください
レスがないのは改善点がないのだと前向きに考えたいと思います!
今日中にライダー戦を終了させる予定です
期待してる
『おはようございます。阿良々木様。これより、一回戦のバトルを始めます。準備ができしだい、地下のステージへお越しください』
「よし、それじゃあ行くか!」
「そうするかの」
桜ちゃんの声を聞いて目をさました僕は、忍を連れて地下に向かった
しかし、いつも妹達に乱暴に起こされている身分としては、可愛い女の子の声て起こされるのはとても気分のいいものだった。
「何をにやけておるのじゃお前様」
「いや別に。これからしばらくの間、毎日桜ちゃんの可愛い声で起こされるなんて最高だな。とか別に思ってないよ」
「カカッ。まぁ緊張しているよりはいいがの。じゃが、気を引き締めろ我があるじ様よ。ほれ、もうそろそろステージとやらに着くぞ」
「わかったよ」
さて、そろそろ覚悟を決めないとな。戦うのは忍だけれど、僕はこいつのマスターとしてサーヴァントが存分に戦えるようにしなければならないのだから。
ここからはシリアスパートである。
文字通り、生死わける戦いが始まるのだから。
ステージはアリーナのようにいりくんではなく、だだっ広い空間だった。その中央付近には二人の人影、慎二くんとライダー、フランシス・ドレイクの姿があった。
「なんだ、逃げずにちゃんと来たんだ。でも、悪いけどお前じゃ僕には勝てないよ。無駄な足掻きなんかせずにとっとあっちで、殺されちまえばよかったのに」
あっち?なんだ、慎二くんは自分がデータってことや僕の事をを知っているのか?
「だいたい、お前、僕にここで負けたらあっちと合わせて二回死ぬ事になるんだぜ?いい加減自分の身の程をわきまえた方がいいんじゃないの?」
確かに、僕に出来ることなんて限られてる。身の程を知らないと言われても仕方のない事だ。
けど!
いくら慎二くんがデータだとしても、これだけは言っておかなければ。
「無駄かもしれないからって、やらないわけにはいかない。無駄な事はしないってんなら、僕はなにも出来なくなっちまう」
僕はなにも出来ない弱い人間なんだから。
「それでも、大切なのは何かをしたいと思う気持ち、意識なんだ。僕は、羽川の力になる。そのためなら、いくらでも無駄な事をしてやるさ」
だってあいつは、僕の恩人なんだから。
「カカッ。よく言ったの、我があるじ様よ」
「忍……」
「そいうことじゃ、ワカメ。わかったのならさっさと始めるぞ」
そう言って、忍は昨日と同じように心渡を両手に構えた。昨日と違うところと言えば、その背中に、吸血鬼の羽根を生やしているところだけだ。
「へぇ。やっぱり見間違えってわけじゃなかったんだね。その羽根」
「それじゃ、やるとするかねシンジ。悪党らしく、汚い花火を打ち上げようじゃないか」
「誰か悪党だ!お前と一緒にするよな!
ちっ。もういい、行け、エルドラゴ。情けなんか必要ない。圧倒的力の差ってやつを見せてやれ!」
慎二くんがそう言うと、ライダーは二丁の拳銃を構え、忍と向かい合った。
「はん、情けなんざ持ち合わせてないっての。アタシにあるのは愉しみだけさね。
出し惜しむのは幸運だけだ。命も弾も、ありったけ使うから愉しいのさ! ましてやこいつは大詰め、正念場って奴だ。
さあ破産する覚悟はいいかい? 一切合財、派手に散らそうじゃないか!」
一時中断
続きは夕方頃です
>>75
ありがとうございます
期待に添えるよう努力します
先に動いたのは忍だった。
羽根を使って低く滑空し、ライダーの懐に飛び込んで行った。
ライダーはそれを弾丸で牽制しながらも、迎撃の態勢をとる。
ガキン ガン ガン
刀を振るう忍に合わせ、拳銃をまるでトンファーのように振るう。
かと思うと、ライダーはとたんに距離をとって連続で発砲した。
忍はそれをかわし、時には器用に刀で弾丸を打ち落としながらもまた、ライダーに接近して行く。
しばらく戦況は動かなかった。ライダーが距離をとって発砲し、忍は接近して刀を振るう。互いにかすり傷こそできているものの。決め手となる一撃は今だでていなかった。
「チッ。エルドラゴ!カルバリン砲だ!あいつをボロボロにしてやれ!」
膠着状態に痺れを切らしたのか、慎二くんはライダーにスキルの使用を命じた。
「了解だよ。シンジ。藻屑と消えな!」
そう言うとライダーは、またぞろ四つの砲台を出現させた。
「忍っ!」
「案ずるなお前様」
こちらの心配もどこ吹く風。忍はいたって冷静に羽根を大きく広げ上空へと飛んだ。
ドン ドン ドカン
「今度こそやったかね?」
「くっ!上だ、ライダー!」
様子を見ていたライダーのもとに、上空から重力を利用して忍は一気に下降していった。
「甘いわ!」
一閃
忍はライダーをめがけて、いつの間にか一本になっていた心渡を両手で力一杯振るった。
「くっ!」
斬撃はライダーの体をとらえていた。
しかし、慎二くんの声に一瞬で反応したお陰か、致命傷には至らなかったようだ。
「クッハハハ……モロバレじゃないかぁシンジィ?」
「おまえぇっ…空気読めよなァッ!!」
忍の一撃をくらいながらも、なお軽口を叩くライダー。
しかし、その軽口とは裏腹にきちんとダメージは受けているようで、
「はぁ。シンジ、このままじゃ不味いよ。だいたい、銃の弾丸を見切れて刀使うやつとまともやったって勝てるわけないじゃないか」
ライダーのいう通り、忍は先ほど攻防の時にも遠距離からの攻撃は全て見切っていた。
「くっ。本当に使えないサーヴァントだなお前は!」
「そう言うなよ、シンジ。けど、このままじゃ不味いってのは本当だからね。そろそろ決着を着けてもいいかい?」
「ああ、見せてやれよ、エル・ドラゴ。僕の力の程ってやつをさ!」
来る!ライダーは宝具で一気に勝負を着けるつもりだ。
それに気づいたのか、忍も一層警戒している雰囲気だった。
「野郎共、時間だよ! 嵐の王、亡霊の群れ、ワイルドハントの始まりだ!」
「アタシの名前を覚えて逝きな! テメロッソ・エル・ドラゴ! 太陽を落とした女ってな!」
「ふん。バカを言え。太陽を落とすのはこの儂じゃ!うぬでは役不足、おとなしく眠っておれ!」
いや、だからそんなところで対抗意識を燃やされても困るんだけど……
ライダーの号令によってそこに現れたの、先ほどの大砲が可愛く思えるほどの巨大な、そして無数の船だった。
「海賊船!?それに、あんなに沢山。くそっ、そんなのありかよ!」
いくら忍でも、今の回復能力も覚束ない状態であんなのに攻撃されたら………
「ふん。何かと思えばただの船か。あの程度にやられる儂ではない。案ずるなお前様」
…………そうだ、戦っている忍よりも先に、見ている僕が先に諦める訳にはいかない!
「頼む、忍。耐えてくれ!」
「うむ!」
「撃てぇぇぇぇ!」
ライダーの合図とともに、無数の海賊船から無限とも思える弾丸、砲丸の嵐が忍めがけて向かってきた。
「はぁぁぁぁっ!」
対する忍は羽根を最大限に活かして嵐の間を掻い潜る。
しかし、爆煙によってすぐに僕の目には忍が見えなくなった。
無限とも思える弾丸の嵐が終わり、爆煙の中が晴れてきたなかそこには、ボロボロになり、左腕がもげながらも立っている吸血鬼の姿があった。
「おい、大丈夫か忍!」
「はっ。勝負あったようだな!やっぱり、お前なんかが僕に勝てるわけないのさ!」
そんな、こんところで終わりなのか?やっぱり、僕にはなにもできないのかよ!
「まだじゃ」
「忍!?」
「へぇ、まだやるっていうのかい?いいね、そうこなくちゃ楽しくないよ!」
「ライダーさっさと止めさしてやれ!」
「わかってるさシンジ。さぁ、これでしまいにしようじゃないか」
「行くぞ!」
そう言うと、忍は再びライダーに突撃していった。
無茶だ!左腕だって治癒できていないのに。まだ何か策があるっていうのか!?
「ふん!」
「はっ!」
ガキン
右手で振るった忍の心渡はライダーの左の拳銃で止められてしまった。
「残念だったね、お嬢ちゃん」
そう言うと、刀を止められた反動で今だ動けずにいる忍の頭に、ライダーは空いている方の拳銃の銃口を向けた
「これで終わりさ!」
「止めてくれぇぇぇぇぇぇーーーー」
「ぐはっっ!?」
「はっ?」
間抜けな声を出したのは、ライダーの勝利を完全に確信していた慎二くんだった。
それもそのはず、僕でさえ目を疑った。
何故なら、腹から血を流して倒れていたのは誰でもない、慎二くんのサーヴァントだったのだから。
「だから言っておるじゃろ。油断大敵じゃ」
そう言った忍の両足は、何と、日本刀と化していた。
そうか、春休みにドラマツルギーがやっていたように、忍は自分の脚を刀に変えていたんだ!
「こりゃ……いいの貰っちまったみたいだね……」
そう言ってライダーは力なく立ち上がった。
どうやら、もう戦う意志はないようだ。
「この勝負、あんた達の勝ちだよ」
「なっなんでだよ!?なんで僕のサーヴァントが負けるんだ!?」
「僕の方が圧倒的に優れてるのに!」
「くそ、こんなのおかしいだろ!………そうだ、これはバグだ。一流のデータであるこの僕が負ける訳がない!」
「くそ、くそ、くそ!」
「…………聞くに耐えんの。我があるじ様よ、マイルームに戻るとしよう」
「あぁ、そうだな」
これ以上ここにいたらダメだ。弱い自分はきっと慎二くんに同情してしまう。ここにいるのはただのデータなんだ。そう割り切らないと、これからやっていけない。
「おいっ、ちょっとま………うわ、なんだよこれ!?僕の体が消えてく?くそっ、僕のデータは完璧なはずなのに!おい、ライダー!何とかしろよ!こんなやつらに消されるなんて、悔しくないのか!?」
「うん? 悔しいかって? そりゃ反吐が出るほど悔しいさ。
だがねぇ、前にも言っただろう、坊や。
"覚悟しとけよ? 勝とうが負けようが、悪党の最期ってのは笑っちまうほどみじめなもんだ"ってねぇ!」
「まぁ、私達は結局、一度も勝ったことなんてないんだけどね」
「うるさいんだよっ!この、ヘッポコサーヴァント!
くそ、くそーーーー!」
負けた悔しさを大声で叫びながら、ライダーのマスター、間桐慎二は消えていった。
「ははっ、それじゃあアタシも行くとするかね。
そこのお兄ちゃん、そんな顔するもんじゃないよ。あんた達は正義とは言えなくても、悪党ってわけでもないんだから。
そして、容赦なく笑ってくれ。ピエロってのは笑ってもらえないと、そりゃ哀れなもんだからな。
前の奴は、こちらを憐れみこそすれ、笑ってなんてくれなかったからね」
「カカッ。言われずとも笑ってやろう、人間。儂がいつか太陽を落とすのを、せいぜいここで見ておるがよい」
「あははっ。まったく、面白いお嬢ちゃんだね。
まぁ、そうさせてもらうさ。せいぜい頑張るんだね、お兄ちゃん」
そう言い残し、ライダーも消えていった。
ステージに残されたのは、一人のマスターと一体のサーヴァントだけ。
「…………戻るか、忍」
「うむ。そうするかの」
すでにほとんどの傷を回復していた忍を連れて、重い気分のまま、僕はステージを後にした。
一章(完)
以上です
見てくれてる人いるかな?
見てる見てる、スゲー見てるよ、穴が開くほど見てる
慎二きゅん八歳暴露はみたかったなあ。
>>94
そういう要望は終わる前に言ってくれれば実現する可能性大です
後、一つだけ投下します
夢を見た
そこは、どこにでもある田舎町だった
けど、なにかがおかしい
妙な違和感がある
…………そうか、人だ
その町には、人影がただのひとつも無かったのだ
人がいない町
しかし、ゴーストタウンというほどに寂れているわけでもない
けど、違和感の正体はそれだけじゃない気がする
…………ダメだ。意識が、覚醒していく
これ以上この夢を見てはいられないようだ…………
期待してる
あー、だいたい分かった。
>>95
了解した。
じゃあ、要望として桜に浮かれ上がっている暦に、AIとしての事務的な関係ですと叩き落として欲しい。
CCC見たいにAIの役割を超えた感情は暦には抱かないだろう。
>>99
すぐには無理ですが善処します
今日は忙しいので、明日から二回戦を始めたいと思います
了解
『おはようございます、阿良々木様。本日は、二回戦のイベントを行います。こちらの準備が整うまでしばらくマイルームで待機していてください』
柔らかい桜ちゃんの声で目が覚めた。しかし、昨日とは違っていっこうに気分が優れず、むしろ、気分はおよそ最悪といっていいものだった。
「なんじゃお前様。ずいぶんと湿気た顔をしておるの。無事に一回戦を勝ち進んだのじゃ。当然のこととはいえもう少し嬉しそうにしても良いのではないか?」
確かに、そうかもしれない。しかし、やはり素直には喜ぶ気分にはなれない 。
「そうは言ってもさ。目の前で人があんな消えかたをしたらさ、やっぱり気分のいいものじゃないよ」
「カカッ。そんなことでこの先どうするのじゃ。この先には、まだ五人のマスターがいるのじゃぞ」
「わかってるさ。そこら辺はうまく割り切らなくちゃな」
マスターといっても所詮はデータだ。それに、僕にはやらなくちゃならないことがあるのだから。
こんな所で躓いている暇はないのである。
「まぁでも、僕の気分が悪いのはそれだけじゃないんだよ、忍。なんか、よく覚えて無いんだけどさ。変な夢を見たんだ」
「夢じゃと?それはおかしいの。ここは電脳世界じゃ。夢など見るはずがないのじゃが」
そうなのか?けど確かに、あれは夢だった………よな?
ダメだ、ただでさえ夢のことは曖昧なのに、忍にそんな事を言われてはますます自信が無くなってしまう。
「まぁよい。そこまで気にすることはないじゃろう。それより、一回戦に勝利したお陰で儂の枷が外れているはずじゃ。儂のパラメーターを見てみるがよい」
「そうだったな。それじゃあ…………」
筋力 C
耐久 C
敏捷 B
魔力 C
幸運 A
固有スキル 対魔力:C
技能 千里眼:A / 戦闘続行:B / 物質具現化:B
宝具 心渡り:B / 怪異の王:C
「なんか、予想はしてたけど、やっぱり一回勝ったくらいじゃそこまで大きく変化しないんだな」
ランク上がっていたのは耐久と、怪異の王の宝具だけだった。
「それはそうじゃろう。しかし、お前様よ。怪異の王のランクが上がったのは行幸じゃぞ」
「怪異の王の宝具は、儂の回復能力やその他諸々の吸血鬼の能力の源じゃからの。ランクが一つ上がるだけで、随分と戦法に幅ができるはずじゃ」
「そうか、そりゃ良かった。確かに、回復能力が上がればそれだけ戦闘が有利になるからな」
「その通りじゃ。まぁ、さすがに全盛期の儂のように傷がついたそばから即回復、というわけにはいかんがの。」
そりゃそうだろうな。こいつの全盛期をサーヴァントにするなんて、それこそチート以外のなにものでもないだろう。
「それよりお前様。願いは決まったのかの?」
願い。どうすることが最善の選択なのか。こないだ忍に言われてから自分なりに考えてみたがあまりいい考えは浮かばなかった。
「いや、まだだよ。全然だ。いい考えなんて浮かびやしない。一応、過去に戻ってやり直そうかとは思ってるんだけどな」
それでも、どこまで過去に戻ればいいのか、何をやり直せばいいのかはさっぱりだった。
「儂が思うに、ただ単純に誰かに助けを求めればいいだけじゃと思うがの」
「それは出来ないよ。だって人は、一人で勝手に助かるだけなんだから」
「そうは言ってもの。それはお前様の意見ではないのではないか?」
「それはただの言葉であって、お前様の気持ちではないと思うがの」
「実際、今だってお前様はその怪異に魅せられた娘を助けようとしているではないか」
「それは…………」
確かに、忍の言う通りかもしれない。僕は羽川の力になりたいと思ってるけど、それが実際できたとしたら、羽川は僕に助けられたと感じるかもしれない。
忍が僕に力を貸してくれていることで、僕がどうしようもなく忍に助けられていると感じているように。
「まぁそれは、次にこの話をするときまでに考えておけばよい。それにそろそろ…………」
ピピピピ ピピピピ
「時間じゃ」
「ふむ。君が私の相手か」
掲示板の前に立っていたのは白髪に白い髭を生やした老人。ダン・ブラックモアだった。
「これは、一回戦のワカメとは大違いじゃな」
忍の言う通りだった。その老人には年齢に反して老いや衰えを感じさせない力強さがあった。
「若いな。実戦経験もないに等しい。しかし、いつぞやの若者と違い、最初から強い意志を持っているようだな」
「そうかい?ダンナ。俺にはただの甘ちゃんにしか見えないがね」
「なっ!?」
恐らくはブラックモアさんのサーヴァントの声だろう。しかし、出会い頭どころかまだあちらの姿も確認できていないうちからそんな事を言われるなんて、日々戦場ヶ原の暴言に鍛えられていなければ、軽くショックを受けていただろう。
「それはこれから分かる事だろう」
「では、わし達は先にアリーナに向かうとしよう」
そう言うと、ブラックモアさんは僕達を置いてアリーナへと向かって行った。
『二回戦のイベントはポイズンラビリンスです。毒のダメージの中、制限時間内にゴールにたどり着ければ阿良々木様の勝ち。たどり着けなければブラックモア卿の勝ちとさせていただきます』
ブラックモアさんを追いかけるようにしてアリーナに入って直ぐに桜ちゃんから今回のイベントのルールか知らされた。
『では、スタートまで残り1分。カウントダウンを始めます』
「なんか、一回戦の時とはタイプが違うみたいだな」
一回戦の時のイベントでは、自分と相手は対等なプレイヤー同士だった。しかし今回は、こちらが一方的なチャレンジャーになるようだ
「そうじゃの。しかし、よりにもよって毒とはの。まったく忌々しい」
「そうだな。吸血鬼にも毒は効いちまうんだったな」
「うむ。まぁ、言っても所詮はまだイベントじゃ。まさか、致死量の毒とゆうわけでもあるまい」
だといいんだけどな。ただでさえ忍は弱体化して負担がかかっているのに、これ以上の負担をかけるのはできるだけ避けたいところだ。
『3 2 1 それでは、スタートです』
「ぐあっ!?」
桜ちゃんのカウントダウンが終了した直後、体全体を鈍い痛みが駆け巡った。恐らくは毒のダメージだろう。
「大丈夫かの?我があるじ様よ」
「あぁ、このくらいだったらまだ大丈夫だ」
なるほど。忍の言う通り、ゲームが成立する程度に毒は抑えられているらしい。
それにしても、毒はきちんと忍にもまわっているはずなのにうめき声一つ上げないなんて、さすがは怪異の王といったところか。
「けど、長い時間このままっまてのはさすがにきついな。制限時間もあることだし、さっさとゴールを探すとしようぜ」
「そうじゃの。では、行くとするか」
「これはどういうことだ?アーチャー」
忍と共にラビリンスの半分ほど進んだ場所で、話し声が聞こえてきた。この声は、まず間違えなくブラックモアさんとそのサーヴァントのものだろう。
「どうする?我があるじ様よ。毒がきつくならない内にこちらから仕掛けて相手の情報を探るのも、一つの手だと思うがの」
「いや、ここはこのまま聞き耳を立てていよう」
相手が折角こちらの存在に気づかずに会話をしているんだ。隠れて聞いていれば、何か相手の情報が得られるかもしれない。
「どういうことだ?って、ちょ、そんな怖い顔しないでくださいよ旦那」
「いや、今回のは仕方ないっしょ。だって今回のイベント、ポイズンラビリンスって名前なんすよ?心配しなくても、イチイの毒の量はきちんと調節してますって」
イチイの毒?今、確かにあのサーヴァントは『毒を調節した』って言ったよな?
「ちっ、これは厄介じゃの。この毒がイベントのために用意されたものではなく、あのサーヴァントの力じゃとはな」
忍は心底嫌そうな顔をした。当然だろう、状況はどんどんと悪い方に傾いていく。
「わかった今回はおおめにみよう」
「しかし、あの若者がゴールに近づいたら毒をとき、わしら自らが足止めをする」
「もちろん、それまでは奇襲も罠も禁止だ」
「わかってますよ、だまし討ちは禁止なんでしょ。
……まったく、手足もがれてるようなもんだぜ。人間には適材適所ってもんがあるんだって何度言ったらわかるんだか」
「そちらこそ弱音は禁止だと何度も言っているだろう。 わしのサーヴァントである以上、一人の騎士として振る舞ってもらいたい。むろん、それは今回の戦いでも同じだ」
「いやぁ、相変わらずロックだねぇ! OK、ご期待に応えるぜマスター。
所詮はエセ騎士だが、生憎今の俺は槍の差し合いも悪くはないなんて、思っちまってるところだしな。まったく、森の狩人失格だぜ」
「それでいいのだ、アーチャー。では、あの若者達がゴールに近づく前に、先回りするとしよう」
「へいへい、了解っと」
どうやら話はすんだようだ。ブラックモアさん達の声は聞こえなくなってしまった。
「ふむ。あちらのマスターはお前様に負けず劣らず甘いようじゃな」
「そうか?………まぁいいや。とりあえず、相手のクラスがわかったのはラッキーだったな」
相手がアーチャーのクラスだというのは不幸中の幸いかもしれない。敏捷の高い忍なら飛び道具はなかなか当たらないだろうし、いくら相手が毒を使おうと当たらなければ意味がないのだ。
「そうじゃの。では、そろそろゴールに向かうとしようかの」
「ああ。じゃあ行くか」
とりあえずは、毒が消えるというゴール付近を目指すとしよう。
AIと人と怪異の差ってなんだろうね。
ダン卿、本編のその後にしか見えんし。
キャス狐(CV.戦場ヶ原ひたぎ)
>>115
そこら辺はわりと適当です
四回戦の相手が本格的に決まらないので、緊急的に安価を行います。
四回戦の相手は物語にそれほど影響はありません。
明日>>1が見るまでに一番多かった者を四回戦の相手とします。
1 凜とランサー
2 ランルー君とヴラド三世
3 レオとガヴェイン
>>118
3 で
3ですか
2 吸血鬼対決
ランルーくん何気に愛の人だしね
2
同票数なので安価>>124
1 ランルー君
2 レオ
2
>>124
了解しました
本編は夜から開始します
待ってます
「イチイの毒。別名アララギ。お前様の家名と同じじゃの」
どうやらゴール付近に近づいたようで、毒が消えていくらか楽になったころ、ゴールを探してうろちょろしている最中に忍が口を開いた。
「ケルトや北欧では聖なる樹木の一種とされておる。イチイの弓を作るという行為は、『森と一体である』という儀式を意味する。また、イチイは冥界に通じる樹ともされておる」
「へぇー。けど忍、お前よくそんなこと知ってるな」
なんでだろ?やっぱり自分の弱点となる毒の事は、一通り知っているのだろうか?
「いや、そうではない。毒を使う奴なんぞ、使われる前に殺せば良いだけの話じゃったからの」
「そもそも、普段の儂には大抵の毒なんぞ効かんかったしの」
………さすがは怪異の王。吸血鬼の弱点すら弱点にはならないといったところか。
けど、じゃあなんで忍はそんなこと知っているんだ?
「あぁ、そういえば言っておらんかったの」
「儂がこの聖杯戦争にサーヴァントととして召喚されたときに、そういう神話などについての一通りの知識はインプットされておる」
「そうでなければ、いくら相手の情報を手にしようが決定打にはならんからの」
「そうだったのか。つーか、そういう事は先に言えよ!」
「いや、前回の戦いではインプットされたものではなく、地上で儂が得た知識を使ったからの、言いそびれたのじゃ」
そういう事か。じゃあやっぱり、あの女海賊と会ったってのは本当だったのか。
けど、何だかそれってかなりご都合主義じゃないのか?
「そうでもあるまい。方や無知な高校生。方や人外の化物。それくらいのハンデは有って当然じゃと思うがの」
「ほっとけ!」
まぁでも忍の言う通りか。英霊になりそうな奴なんて、僕、ヘラクレスくらしいかわかんないし。
「それもどうかと思うがの。むっ、どうやらおしゃべりはここまでのようじゃ、我があるじ様」
忍がそう言ったその時、目の前にはゴールと思われる扉とその前に立つ二人の男の姿があった。
「おっ、もうご到着か。結構早かったな。旦那、こりゃ足止めしても間に合っちまうじゃないか?」
そう言ったのは、おそらくブラックモアさんのサーヴァントであろう全身を緑色の衣に身を包んだ、いかにも軽そうな男性。アーチャーだった。
「そうだな。では、今回は相手の情報を得ることに専念しよう」
「そうだな。……じゃないですよ。たっく、顔のない王で扉を隠しちまえばいいものを、こんな七面倒なことするなんて、ほんと、なに考えてんだか」
「その割には顔が笑っているぞ、アーチャー」
「はっ!んじゃ、ぼちぼち始めますか」
そういって、アーチャーは腕に装着された小型のボウガンのようなものを構えた。
「気をつけろ忍!」
「わかっておるわ」
そういって忍も心渡を構えた。前回の時とは違い、一本の刀を両手で握っていた。多分、ライダーの時とは違い相手の武器が一つのときはそちらの方が戦い易いのだろう。
「はっ!嬢ちゃん、どうだった?オレの自慢の毒の味は」
「カカッ。どうもこうもない、気分が悪いことこの上ないわ」
「このようなつまらん小細工をするような輩は、さぞひねくれた顔の奴なのじゃろうと思っておったが、なるほど予想以上につまらん顔じゃの」
「いやいや、何言っちゃっての。奇襲を封じられたオレの唯一の武器はこの甘いハンサム顔だけだっつー!」
そういうと同時にアーチャーは忍に一発の矢を放った。
「ふんっ」
忍はそれを苦もなく打ち落とし、羽根を生やして滑空しながらアーチャーに接近した。
おいおい、相手は吸血鬼の鬼門である毒を使うってのに、そんな最初から羽根なんか生やして正体ばれたらどうすんだよ!
僕の心配をよそに、怪異の王のランクが上がったお陰か、心なし大きくなったように見える羽根を使い、心渡を振りかざした。
「見えてるって!」
しかし、アーチャーは忍の攻撃をマントで防御し…,……
「そらよっと!」
ばく宙をしながら忍の顔をめがけて蹴りを入れた。
「くっ!」
忍はすんでんのところでそれをかわし、なおも心渡で攻撃を続ける。どうやら、アーチャーと戦うに当たって飛び道具を有効に使わせないためらしい。
「はっ!返すぜ!」
しかし、アーチャーといえど肉弾戦が苦手というわけでもないらしく、次々と繰り出される忍の攻撃を時にかわし、時にマントで防いで隙あらばボウガンで反撃していた。
「ちっ!このままじゃ埒があかねぇ。サーの旦那!」
「ここか、やれ!アーチャー」
「ほい来た、死にな」
ブラックモアさんの合図とともに、アーチャーはボウガンを地面に突き刺した。
すると、忍の足下から無数の棘が次々と向かってきた。
「ふっ!」
対して忍は自分の両足を刀に変えて、向かってきた棘を全てたたっ切っていった。
「この程度か。つまらんの」
「そいつぁーどうかな?」
「なに?………………ぐっ!?」
「へっ?忍っ!?」
嘘だろ、なんで忍の体に矢が刺さってってるんだよ?アーチャーの方から矢が飛んでくるのなんて僕は見てないし。たとえ僕が見えなかっただけにしても、忍が気づかないはずがないのに…………
「ちっ。小癪な真似を、青二才が」
自身に刺さった矢を抜きながらそう忍は毒づいた。
いや、そのセリフ言う奴って結構な確率で悪役なんだけど………
しかし、冗談はおいといて、矢を抜いた忍の顔はやや歪んでいた。どうやら矢には毒、イチイの毒が塗られていたようだ。
「はっ!甘かったな嬢ちゃん。それじゃ、じっくり詰めていくぜ」
まずい、今の忍じゃ毒が引くのには時間がかかっちまう。くそっ、どうする?どうすれば…………
『警告 警告 イベント中の許容戦闘時間を過ぎました。直ちに戦闘を終了してください』
助かった。正にゴングに助けられたって感じだ。このまま戦っていれば、忍が力尽きるのも時間の問題だっただろう。
「ここまでか。よくやった、アーチャー」
「そりゃどうも。まっ、あちらさんにこっちの宝具がばれてなかったからこその結果ってところだな」
「けど、次はこうはいかないぜ、旦那。あのサーヴァント、なかなかどうしてやるもんだ。おそらく、こっちの仕掛けにも気づいちまってるだろうぜ」
「えっ?そうなのか、忍」
仕掛けって、さっきのいつの間にか刺さってた矢のことか?だとすれば、まだこちらにも勝希があるかもしれない。
「まぁの。じゃが、その話は後じゃ。時間もあまり残っていないようじゃしの」
「そういえば、制限時間なんてルールがあるんだったっけな」
「と、いうわけじゃ。ここは大人しく通してもらうぞ、小わっぱ」
「けっ。それが劣勢だった奴の態度かよ。けど、いいぜ。内のマスターの今回の目的は、あくまで情報収集だからな。今回はオレらもこのまま帰るとするぜ」
「あぁそれと、嬢ちゃんの毒はオレから離れれば自然に消えるから、心配しなくても問題ないさ」
それだけ言い残すと、アーチャーはブラックモアさんと共にアリーナを去っていった。
「んじゃ、僕達もそろそら戻らないと。時間のこともあるし、それに、アーチャーの対策も練らないと」
「うむ。それでは行くかの」
アーチャーに劣勢に追い込まれたのが気にくわないのか、少し不機嫌そうな忍と共にアリーナを後にした。
忍の天敵はカルナさんかな?
太陽的な意味で。
「ロビンフット?それって、ロービンフットにトムソーヤ、みーんな僕らの仲間だよーって歌に出てくるあれか?」
「そうじゃ、ロビンフット。森の狩人というやつじゃ」
クラス アーチャー
真名 ???
筋力 C
耐久 C
敏捷 B
魔力 B
幸運 B
固有能力 対魔力:D / 単独行動:A
技能 破壊工作:A
ロビンフッド。イギリスはノッティンガムの近く、シャーウッドの森に潜んだと言われる盗賊・義賊であり、圧政者であったジョン失地王に抵抗した反逆者。
モデルとなった人物は存在するが、それは複数おり、それらが混合された結果生まれた英雄だという。
「それにしても、久しぶりにこの歌思い出したんだけどさ、今思えば、多分この歌を歌ってる子供の半分もロビンフットとかトムソーヤのことを知らないと思うんだけどな」
僕は子供のころは、そりゃあ今と比べれば大変なお利口さんだったから、もちろんロビンフットやトムソーヤがどんな人かを知っていたけれど、それでも、やっぱり大半の子供はそれが誰なのかもわからずに歌っていると思う。
「そうかもしれんがの。じゃが、それとアーチャーの対策と、なにか関係があるのかの、我があるじ様よ」
「いや、ただの雑談だよ。ほら、たまには息抜きもしないと」
ずっとはりつめた緊張モードでは疲れてしまう。時には休憩も必要なのだ。
「カカッ。呑気なものじゃの。じゃが、あえてその雑談に乗るとすれば、お前様、昔からあるその歌にケチをつけるからには、何かよほどの意見でもあるのか?と、たずねるとするかの」
いや、別にケチをつけたわけでもなし、大層な意見があるわけでも無いんだけどな。所詮は雑談、思いつきで喋っているにすぎないんだから。
「うーん。やっぱ、今の子供に分かり安くってのが大切だからな。あっ、ドラえもんにアンパンマンなんてのはどうだ」
「文字数はちょうどなのにも関わらず、ここまでかというほどに言いづらいの」
………確かに、ドーラえもーんにアーンパンマーンって、歌の音程に合わせようとすると、アンパンマンの方はまだしもドラえもんの方は言いづらい。しかも、文字だけ見たらただのび太君とカバオ君が二人を読んでいるようにしか見えない。
「それに、ドラえもんやアンパンマンをお前様達の仲間だというと、まるでその二人が人間であるかのような印象を持ってしまうしの」
「そうかー。意外に難しいな。じゃあ、ごーにん合わせてプーリキュアってのはどうだ?」
「いや、どうだ?と、そんな自信満々の顔で言われてもの。言いづらさは先程の案とあまり変わらん気がするがの」
「おいおい、プリキュアにケチつけるってのか?プリキュアに文句があるんだったら、僕が聞くぜ」
「お前様に文句があるからお前様が聞け」
「だいたい、プリキュアでは女子はよくとも男子はあまり知らんじゃろう」
「おい、忍。いつからお前はそんな偏見で物事見るようになっちまったんだ?プリキュアは男子高校生が見ても十分楽しめるんだぜ」
まったく嘆かわし。忍がそんなことを言い出すなんて。
てか、こいつなんでドラえもんとかプリキュアとか知ってんだ?やっぱり、地上の情報もある程度インプットしてるのだろうか?
…………こんな娯楽文学の情報をインプットする意味がわかんないけど。
「プリキュアを見て楽しんでいる男子高校生など、きょうび、お前様くらいのもんじゃと思うがの」
「そんなことはない!日本のどこかにはプリキュア好きの男子高校生がいるはずだ!」
いや、でもマジで面白いんだって、プリキュア。
「では、こういうのはどうかの?野口に樋口に諭吉さんーみーんな僕らの仲間だよー」
「予想以上に言いやすいけども!」
だってこの歌を歌うのって幼稚園児とかだろ?まだ百円だまを貰えるのが嬉しくてしかたない年の子供達だろ?
「いや、幼い頃から人生に必要なものは何かを教えるのは必要じゃろ?お金は常に人間を助けてくれる。そう考えると、仲間という言葉もぴったりじゃ!」
「含蓄がありそうな話だけどさー」
夢がないよ夢が。
何が悲しくてそんな小さな子供にお金の事を教えないといけないんだよ!
どんな英才教育だよ、って話である。
つーか、忍も言うことが俗物的すぎるだろ。
お前はどんな情報をインプットされたんだよ!
今日はここまでです。
四回戦の相手はレオに決まりましたが、いかんせん、>>1には良いアイデアがないので、イベントや忍がどうやってガヴェインと戦うのかなどの、意見を貰えるとありがたいです。
余談ですが、桜のくだりは実現します。
レオとガウェインをCCCみたく弾けた性格にしたら。
イベントは金関係でレオの圧倒的財力に格差を味わうとか。
どうです?ハーウェイ マネー イズ パワー システムは気に入っていただけましたか?
みたいな?
どういう競技で争うかの意見も欲しいです。
この忍がガヴェインに勝つイメージがわかないのは俺だけ?
今日は忙しいので投下できません
以上、閑話休題
あまり雑談ばかりしていても仕方がない。
アーチャーの対策を考えないとな。
「とは言うものの、実際儂らが対策出来ることなんて無いに等しいがの。せいぜい、儂の物質具現化のスキルで毒に耐性がつく装飾具を作るくらいかの」
「へー。お前のスキルってそんな事も出来るんだ」
「まぁ、耐性と言っても効果は微々たるもの、毒の効果を薄める程度に過ぎん」
「けど、それでもやらないよりはましなんだろ?対策が全く無いよりはいいだろ」
毒のダメージが和らぐだけで随分違うだろう。幸い、アーチャーの攻撃のほとんどに、忍はきちんと反応出来ているんだから。
「まぁの。それに、あやつは毒を最初から、全ての攻撃に織り混ぜておる。あやつが放つ矢は全て毒矢なのじゃ」
「じゃから儂も、吸血鬼とばれようがばれなかろうが毒を使ってくるのなら、吸血鬼とばれても構わんのではないかと思い、最初から吸血鬼の力を使ったのじゃ」
そうだったのか。やっぱり、忍にはちゃんと考えがあったようだ。
「そうじゃの。おそらく、あの毒はあやつの得意な武器なのじゃろう。まったくもって忌々しい。イチ………アララギは本当に不愉快じゃ」
「おい!そこでアララギと言い直す必要性がどこにある!?」
なんで僕がそんな、たった今思いついたようなやり方で罵倒されなきゃならないんだ!
「それに、あの見えない矢。あれもあやつの宝具と考えてよいじゃろう」
僕の突っ込みを軽く無視して、忍は話を続けた。
「あぁ、お前が唯一まともにくらった攻撃だったな」
忍はアーチャーの攻撃をほとんど全て避けていたが、最後の一撃、あの見えない矢だけはくらっていた。
「あれは、放った矢を見えなくするの能力のようじゃ。しかし、あのような攻撃があると初めからわかってさえおれば、ボウガンで矢を放つ動作に気をつければ対処できよう」
「そうか。まぁ、そこんとこはどうしたってお前任せになっちまうけどな」
「気にする必要はない、我があるじ様よ。儂に任せて、お前様は後ろでドンと構えておればよいのじゃ」
「では、他にやることもないようじゃし、明日に備えて今日のところは休むとするかの」
「そうだな」
明日は二回戦だ。相手は一回戦の時よりも手強い。戦わないとは言え、せめて忍が万全に戦えるように魔力供給するために、僕も休むとしよう。
『おはようございます。阿良々木様。これより、二回戦のバトルを始めます。準備ができしだい、地下のステージへお越しください』
桜ちゃんの声で目覚めた僕は、軽く準備をし、アーチャーの対策について少し話してから、マイルームを後にした。
準備の事について特に語る事はないけど、強いて言うなら忍が僕のイメージを基にして毒耐性のネックレスを作ろうとしたときに、僕が誤って十字架の形をイメージしてしまったため、そこでひと悶着あったくらいだ。
お前様は戦いで役に立たないばかりか、儂の足まで引っ張るつもりか!一体儂が誰の為に戦っていると思ってるのじゃ!
とか、まぁそんな感じだ。
いや、ただの暇潰しじゃなかったのかよ。たった一回のミスでそんなに怒るなんて、心の狭い吸血鬼だ。なんて、自分の事を棚に上げながらもそんな事を考えていると………
「着いたぞ、我があるじ様」
忍の声で気持ちを切り替え、前方を見るとそこには既に、ブラックモアさんとアーチャーの姿があった。
そして、もちろん、忍の首には十字架ではなく、えらく可愛らしいネックレスがかかっていた。
「……………………………………」
「どうやら、交わす言の葉はないようじゃな」
ブラックモアさんは既に臨戦態勢といった風であり、一言も言葉を発しなかった。
「おいおい、そんな事言うなよ嬢ちゃん。内のマスターは無駄が無さすぎるんだよ。けど、それじゃあオレが退屈なんでな。折角データとして、一時とは言え自由の身になったんだ。決闘の前に軽くお喋りくらいなら許されるだろ?」
「オレはおたくと話しがしたいんだよ」
そういってアーチャーは視線を僕の方に向けた。
「僕と?」
何だろう、ロビンフットが僕に話したいことがあるなんて。僕にはまるで検討もつかないけど。
「そう固くなんなって。今からオレが喋んのは、ただのバカなガキの昔話だよ」
「あるところに一人のガキがいた。幼くして父を亡くした孤児だった。
「そいつは、父譲りの森でのサバイバル知識に長け、妖精の姿を見ることも出来た。だが、妖精付きとして村からは迫害を受け、厄介者として扱われていた。
「村人もガキ自身も互いに歩み寄ることはなかったが、それでも父の最期を看取ってもらった義理は感じていたらしい。
……そいつは、村人たちを愛してはいなかったが、捨て去るほど嫌ってもいなかったんだ。
「そんな村が、領主の圧政に苦しめられるのを見捨てられず、ガキは若さゆえの青臭さも手伝って弓を手に取った。
「一度目は偶然の助けで領主軍の撃退に成功。二度目からは、村人たちの願いと希望を背負っての奮戦となった。
「多少の知識はあっても、所詮はただのガキにすぎなかったそいつは、偶然の助けを望めない状況においては、何もかもを欺かねばなんなかった。
「だから、村人にすら顔と姿を隠し、個を捨てた。正義を成すためには、人間であっちゃーならなかった。
生涯に渡って緑の衣装で素顔を隠し続けたんだ。
「……………………」
「だが、村人たちは、王に逆らいながらも、弁明する。
『ロビンフッドは村の人間ではない』
『我々とは無関係に、森を通る人間を襲うのです』
『全ての責任は、あの狩人にある』
??ってな。
「村人にすら正体を隠すことで、村と領主の両方の敵となり、村に罪を被せない。それがそのガキの在り方だった。
「姿を、正体を隠し、徹底して奇襲・奇策に走った戦い方をする。武器を隠し、誇りを隠す。卑しい戦いを徹底し、自身の誇りより村の平和をとり続ける。
「待ち伏せの罠、食事に毒など日常茶飯事。殺した兵の『せめて戦場で死にたい』という願いすら踏みにじる。そうでなければ、一人対軍隊の戦いなど勝てるわけがない。英雄として戦い続けることなどできないからな。
「……けど結局、そんな無理が長く続くはずもなく、二年足らずでガキは敵の凶弾に倒れた。末期には祈りの弓を手に取り、『自分をこの矢が落ちた場所に埋葬して欲しい』と言って矢を放つ。果たして矢はイチイの樹の根元に刺さり、ガキは親愛なるパートナーだった大樹の元に埋葬された。
「己の顔を隠し続けた一人のガキ。村人たちを愛することはなかったが、村人たちの穏やかな生活は愛したもの。無銘のまま報われることなく森の土に還ったガキは、その死を持って英霊化した。
「ただの一度も、ガキが望むような真の英雄として戦うことはなく??
「っとまぁ、長々とつまらねぇ話をして悪かったな」
それはおそらく、目の前に立っているこの男。アーチャーの人生だったのだろう。
村人達の暮らしの平和を守りたいと願う気持ちは正しいだろう。まさしく正義の味方だ。僕の妹達のごっこ遊びとは違う、正真正銘の。
けど、そのためにとった戦法はお世辞にも正しいとは、正義の味方とは言えないやり方だった。もちろん、アーチャーだって正々堂々と戦えるのならそうしていただろう。だが、その時彼はただの一般人だった。正義の第一条件である、強さを持ち合わせてはいなかったのである。
おそらく、僕の親愛なる彼女達なら、生前の彼をこう言い表すだろう。
『正しくはあるが、美しくはない』と………
「惑わされるな!お前様!」
今までずっと押し黙っていた忍が唐突に口を開いた。
「忍………」
「今そんな事を考えても仕方あるまい。難しい事を考えるのは、全てが終わった後でも遅くはあるまい」
そうだ。僕の覚悟はこの程度で揺らいじゃ駄目なんだ。僕の願いは何だ!羽川や、戦場ヶ原達と一緒に生きる事だろう!
「僕はもう迷わないよ、アーチャー。たとえ、羽川に拒絶されても構わない。僕は羽川を助けたいんだ!」
そうだ。僕は忍野じゃないのだから、いつまでもあいつのセリフを真似していても仕方ない。僕は心の底から、羽川を助けたいと思っているのだから。
「ははっ。いや、悪かったな。惑わせるつもりなんて無かったさ。オレも少し喋りすぎちまった。」
そういってニヒルに笑うと、アーチャーはボウガンを構えた。
「話はすんだのか、アーチャー」
「あぁ、待たせて悪かったな、サーの旦那」
「ふん。それでは、始めるとするかの」
対する忍は二本の心渡を構えた。どうやら、前回の戦いから、ボウガン程度の威力なら片手の力で打ち落とせると践んだのだろう。
「行けっ忍!」
今日はここまでです
四回戦で、ガヴェインと戦う為の固有結界を使わせたいのですが、カッコいい名前が思いついたら教えてください
乙
乙
固有結界は忍のフルネームに格好いい当て字だな。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(太陽すら覆い隠す怪異の王)
とか?
>>158
最高
まるパクリになるかもしれませんがよろしい?
洋館のダンスホールを呼び出す
固有結界内では100%形態&初代相棒召喚
名前は「永久の二人(ノット・ロンリー・ナイト)」
暦の記憶がないなら、初代相棒への想いは強いのかなーと思いまして
>>160
元々二人はそこまで深い関係じゃない、というか仲良くなかったっぽくね?
忍って火力無いしなー
もういっそのこと物質具現化でエクスカリバー作ってブッパさせちゃえば………
あれって一応月の恩恵受けてるし
>>161
そうだったっけ?
記憶が薄れてるな・・・
僕の声と共に、忍は羽根を生やしてアーチャーに接近して行った。
「はっ!」
アーチャーはボウガンで忍の動きを牽制しつつ、回避の態勢をとる。
「いつまでかわせるかの?」
忍はアーチャーに二本の刀で切りかかる。時折、脚を刀して蹴りかかり、徐々に手数でアーチャーを圧倒していく。
「ちっ、こいつはきついな」
「立て直しだ、アーチャー」
そういうと、アーチャーは一度忍から距離をとった。その体には、既にいくつかの切り傷が刻まれていた。
対する忍はアーチャーを追撃はしなかった。多分、見えない矢を警戒しているんだろう。
「アーチャー!」
「あいよ、無貌の王……参る」
そういうとアーチャーはボウガンを構えた。
………あれ、どうしたんだ?いつまで経っても矢が放たれな…………
カン カカン
アーチャーの行動を不思議に思った瞬間、忍の方から矢を打ち落とす音が聞こえた。
まさか…………
「ふん。二度も同じ手をくらうわけがあるまい」
「うぇ。こいつぁ丸見えだったぜ、旦那ぁ」
やっぱりそうか。どうやらアーチャーは例の見えない矢を放ち、忍がそれを打ち落とすのに成功したようだ。
「さすがだぜ、忍!」
「当然じゃ。それでは、このまま勝負をつけるとしようかの!」
そう意気込んで、アーチャーに再度接近してしていく忍。だが、明らかに不利な状況にも関わらずアーチャーは笑っていた。
「そう急ぐなよ。 生き物ってのは、これだけで死ぬもんだ」
アーチャーのボウガンから放たれたのは、一発の紫色の矢だった。
「効かんわ」
その矢を打ち落とす動作に移った忍を見て、アーチャーは直も笑っていた。
「そいつはどうだかな!」
「なに?………………くっ!?」
「忍っ!」
なんと、アーチャーの放った紫色の矢は、あろうことか忍の刀を独りでによけて、忍の腹に刺さったのである。
「おい、大丈夫か!?」
腹に刺さった直後に消滅してしまったその矢の毒々しい色から、あれが毒矢であることは用意に想像できる。
「ちっ、問題ないわ。どうやら、ネックレスの効果が効いているようじゃ。まったく、不愉快なアララギじゃ」
なるほど、僕への暴言を吐けることからも毒が大して効いていなことがよくわかった。
…………嫌な分かり方だった。
「あん!?毒耐性の装飾具なんてもってんのかよ!」
「落ち着け。 次で仕留めるがいい、魔弾の射手よ」
「あいよ!」
「カカッ。今度は何をするつもりかの?」
毒をくらいながらも、忍は余裕たっぷりの態度だった。
おいおい、そんな余裕かましてて本当に大丈夫なのか?
「森の恵みよ……圧政者への毒となれ」
「我が墓地はこの矢の先に……」
アーチャーの詠唱ととも右手からは無数の木の枝が伸びていった。
「くっ!」
忍は伸びていった枝を斬ろうとするも、枝の物量は凄まじく、次第に忍の体に絡まっていった。
「ちっ」
忍の体に絡まっていった枝は次第に収縮していき最後には一本の大木となった。
………と思えば、その瞬間大木は弾け、まるで毒に侵されたような枯れ木となり、次の瞬間には枯れ木は消えていた。
「えっ?」
そこに、残された忍には、体のどこにも傷一つ無かった。しかし、忍は先ほどとは比べ物にらないほどに顔を歪め、方膝を地面についていた。
「どうしたんだ、忍!?」
「どうだい、オレの祈りの弓の味は?」
「………これは、どういう事じゃ?」
忍にしては珍しく、状況がわからず困惑しているようだった。
「そんなに特別なことはしてないぜ。ただ、オレの祈りの弓には、標的が腹に溜め込んでいる不浄を瞬間的に増幅・流出させる力を持ち、対象が毒を帯びていると、その毒を火薬のように爆発させる効果があるってだけの話さ」
くそっ。そういうことか。忍がくらった毒の効果を増幅させて、その威力がネックレスじゃ間に合わないほどになっちまったんだ。
「それじゃあ、止めといかせてもらうかな」
アーチャーはボウガンを忍の頭を狙うように構えた。
「死にな!」
アーチャーのボウガンから一発の矢が放たれた。
「今だ、忍!僕の事は気にするな!」
「うむ。了解した」
そういうと、忍の体は矢が当たる寸前のところで霧と化した。当然、霧に矢が当たるはずもなく、矢は忍の体をすり抜けて遥か後方に飛んでいった。
「なに!?」
そして、アーチャーが呆けている隙に忍は霧のまま接近し、そして…………
「がうっ」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」
アーチャーの首もとに噛みついた。
以下 回想
桜ちゃんの声で目が覚めて、毒耐性のネックレスを作り終わり、じゃあそろそろ行くかとなった段階で、
「待つのじゃお前様。昨日言い忘れていた事が、二つほどあるのじゃ」
「言い忘れてた事?」
「うむ。まず一つ目は、おそらくあの青二才。アーチャーにはエナジードレインが可能じゃということ」
「あやつは生前、森の妖精と意志の疎通ができていたという」
「おそらく、自分でも知らない内に妖精と一体化、人ならざるものになっておったのじゃろう」
「こちらは、大した問題では無い。素直に朗報と受け取ってくれればよい」
「ああ」
何だろう?まるで二つ目の方は悪い知らせみたいな言い方だな。
「そして二つ目は、儂の怪異の王のランクが上がったお陰で、少しの間じゃが体を霧に出来るようになったことじゃ」
「何だよ、それだって朗報じゃないか」
正直、エピソードの事を思い出してしまうので、吸血鬼のその能力にはあまりいい気分は抱けないが、それでも、そんなのは僕個人の問題のはずだ。
「まぁ、そうなのじゃがの。それでも、エナジードレインとは違い、こちらはお前様の魔力を大幅に消費することになる。お前様にかかる負担は今までの比ではない」
「何だよ。そんなことなら、別に構わないさ。そろそろ、お前一人に負担をかけるのが耐え難く思えてきたところなんだ。僕の事は気にしなくていいから、ヤバそうになったら迷わず使ってくれ」
「カカッ。お前様ならそう言うと思ったわ。うむ。つまらん時間を取らせたの」
「気にすんなって。お前だって僕の心配をしてくれたんだろ?」
忍のその心遣いは、素直にありがたかった。
「じゃあ、時間も時間だし、そろそろ行こうぜ」
以上 回想終了
てなわけで、現在絶賛立ちくらみ中の僕は、忍のエナジードレインが終わるのをボーッと眺めていた。
「すまねぇな……旦那……」
そう言って、アーチャーはその場に倒れ込んだ。
「ふぅ、なかなかにしぶとかったの。大丈夫か?お前様よ」
そう言って、エナジードレインによって毒も回復したんだろう。今や戦ってない僕よりも元気そうな様子でこちらに戻ってきた。
「あぁ、なんとかな」
対して僕は、気にするな等と大口を叩いたわりに、今にも倒れそうだった。
「悪いな旦那。あんたのサーヴァントでありながら、まさか二度も負けちまうなんて。こりゃ、本格的にオレには正攻法は向いてないな」
「はははっ。そう言うな、次にワシのサーヴァントととして戦う時にも、同じように戦ってもらうからな」
「げっ!ったく勘弁してくださいよ」
言葉とは裏腹に、アーチャーの顔は晴れやかだった。
「それでは、ワシは一足先に消えるとしよう。未来ある若者よ、キミの願いがキミの望む形で叶うことを祈っているよ」
そう言い残し、アーチャーのマスター。誇り高きダン・ブラックモア卿は姿を消した。
「んじゃ、オレも消えるとするかね」
「最後に一つだけ、せいぜい、自己満足に甘んじる覚悟ってやつを決めておくことだ」
「自己満足…………」
「そいじゃあな、出来る範囲で、納得のいく仕事をしてくれよ」
そう言うとマスターの後を追いかけるようにして、アーチャーも姿を消した。
「それでは、戻るとするかの…………って、何をぶっ倒れておるのじゃお前様」
「悪い、忍。マイルームまで運んでくれ………」
「やれやれ、世話のかかるマスターじゃの」
何はともあれ、二回戦突破である。
二章(完)
夢を見た
そこは、前回見た町と同じだった
高校がある
ミスタードーナツがある
寂れた神社がある
どこにでもある田舎町
………あぁ、そうか
やっと違和感の正体がわかった
そこは、どこにでもある田舎町
僕が住んでる町だった
…………ダメだ。意識が、覚醒していく
これ以上この夢を見てはいられないようだ…………
今日はここまでです
引き続き、アイディア募集中
Fate世界というか型月せかいだと
人々は怪物にやられ、怪物は英雄に倒され、英雄は人々に殺される。
そういう三竦みだけど忍は力を取り戻すたび怪物にたち戻るよね。
傷物語では半人半魔の英雄の暦に退治されたわけだし。
ガウェイン天敵じゃね?
太陽の騎士で正しすぎる英雄でマスターは輝く王だし。
その辺やってほしい。
本当だ
型月世界だと西尾キャラって弱体化するな
>>180
ますます忍の勝つイメージが湧かないのですが
そこを今の所あまり役に立ってない暦がキーポイントになれば……
>>183
暦が役にたつのってコードキャストくらかな?
何か白野(EX主人公)伝説を暦が聞いて(AI等)
暦が白野を何か変な風に想像するとか。
『おはようございます、阿良々木様。本日は、三回戦のイベントを行います。こちらの準備が整うまでしばらくマイルームで待機していてください』
………あれ、もう朝か。つーか僕、昨日いつ寝たんだったっけ?
「やっと目が覚めたか」
目の前には、不機嫌そうに忍が立っていた。
「ふん。昨日、お前様は儂に担がれてマイルームに戻る途中でもう寝ておったからの」
そうか。どうやら、昨日の戦いで忍への魔力供給にへばってしまい、そのまま寝落ちしてしまった。
「そうか。でかい口叩いといて、結局は耐えられなかったって訳か」
「そうでもあるまい。お前様は、きちんと青二才が消えるまで立っていたからの。普通であれば、儂のエナジードレインの途中で倒れても何らおかしくないわ」
「では、早速儂のパラメーターを見てみるとするかの」
「あぁ、そうだな」
筋力 B
耐久 C
敏捷 B
魔力 B
固有スキル 対魔力:C
技能 千里眼:A / 戦闘続行:B / 物質具現化:A
宝具 心渡り:B / 怪異の王:C
「ふん。まぁこんなもんかの」
「そうだな。物質具現化の能力は前回役に立ったし、多分これからも使えるんじゃないか?」
「そうじゃな。物質具現化の能力は、ランクが上がればそれだけ作れるものの精度も上がるしの」
「それに、魔力のランクが上がったのは運がいいの」
「そうなのか?」
忍、ていうか吸血鬼に魔力を使う技なんてあったかな?
「まぁの。儂自身の魔力が上がれば、それだけお前様の魔力供給の負担が減るからの。おそらく、これからは儂が霧と化してもそうそうお前様が倒れる事はあるまい」
「そうか、そりゃ素直に喜ばしいな」
実際、忍がああやって攻撃を避ける度に僕の方がぶっ倒れてたんじゃ、足手まといもいいところだからな。
「さて、それではイベントが始まるまでの間、前回の続きを始めるとするかの」
そう言って、忍は改めて僕に向き直った。
「どうじゃお前様。前回のアーチャーとの会話は、色々と身に積まされるものじゃったのではないか?」
「………そうだな」
自己満足に甘んじる覚悟。アーチャーの最後の言葉が僕の頭の中をぐるぐる回っていた。
「とりあえず、人は一人で勝手に助かるだけ、なんて意地を張るのは止めにするよ」
僕は忍野じゃないんだから、素直に人を助けようと思い、人に助けられる事を良しとしよう。
「うむ、それがいいじゃろう。結局、一人で勝手に助かれる人間など、それこそ限られた強者だけじゃと儂は思うしの」
「だから、あっちに戻ったら誰かに助けを求めるよ。ブラック羽川にも、そう促されたしな」
「後、自己満足に甘んじる覚悟。その覚悟も決めることにするよ」
「それが儂にはいまいち分からんところなのじゃが。つまり、その自己満足に甘んじる覚悟、というのはどういう事なのじゃ?」
「それは………」
ピピピピ ピピピピ
「む、時間じゃの。まぁ良い、続きは次回にでも聞かせてもらうとするかの」
「わかった。それまでにはお前が納得出来るような答を考えておくよ」
「あたしの名前はアリス。今度はお兄ちゃんがあたし達と遊んでくれるの?」
そこにいたのは、真っ白いゴスロリ衣装に身を包んだ人形のような女の子だった。
信じられない。こんな子供まで殺し会いに参加していたのかよ!
「どうしたの?お兄ちゃん。お顔が恐いよ?」
「もしかして、あたしと遊ぶの嫌?」
「いや、嫌っていうか………」
どうしよう、この年になってから、こんな十歳前後の少女となんて話したことないから、どうやって会話すればいいのか全然わかんねぇぞ。
「大丈夫よ、あたし。このお兄ちゃんは、嫌でもあたし達と遊ぶしかないんだから」
間違えました
こっちが本当です
「あたしの名前はありす。今度はお兄ちゃんがあたし達と遊んでくれるの?」
そこにいたのは、真っ白いゴスロリ衣装に身を包んだ人形のような女の子だった。
信じられない。こんな子供まで殺し会いに参加していたのかよ!
「どうしたの?お兄ちゃん。お顔が恐いよ?」
「もしかして、あたしと遊ぶの嫌?」
「いや、嫌っていうか………」
どうしよう、この年になってから、こんな十歳前後の少女となんて話したことないから、どうやって会話すればいいのか全然わかんねぇぞ。
「大丈夫よ、あたし。このお兄ちゃんは、嫌でもあたし達と遊ぶしかないんだから」
「えっ!?」
そこに現れたのはありすと全く同じ顔、同じ体型で、ありすと違い、黒のゴスロリ衣裳に身を包んだ女の子だった。
「そうだよね。さすがあたし、あったまいいー」
「じゃあね、お兄ちゃん。あたし達先にアリーナに行って待ってるから。早く遊びに来てね」
そういうと二人の少女のは、アリーナの方へと走っていった。
「なあ、忍。あれっていったいどういう事なんだ?」
「儂に聞かれてもの」
なんにしても、あんないたいけな少女と戦うなんて、気が重い。さっきまでの決意がいきなり揺らいでしまいそうだ。
「わかっていると思うが、同情などするだけ無駄じゃぞ。あやつらも、所詮データだということを忘れずにの」
「………わかってるさ」
揺らぎかけていた決意を新たにし、ありすの後を追ってアリーナへと向かった。
今日はここまでです
乙
>>1です
無事に四回戦が出来上がったので、五回戦の安価を取りたいと思います。
なお、すみませんが、私はextra もccc も男の主人公しか使ってないので、白野の性別は男で固定です
ネロ・・・1
正義のヒーロー・・・2
玉藻・・・3
期限は明日の8時まで、一人二票までとします
選んだサーヴァントとのイベントの内容も出来れば考えてください
ちなみに、私は最初からずっと主人公の名前をアララギ コヨミしています
1
2
3に二票
1
2と2に
3に我が御霊
>>203が何票だかわかりませんが、多分二票でしょう
ということで、五回戦は白野
白野とキャスターコンビに決まりました
けど、皆さんイベントのアイディアは?
このままだと五回戦だけ特別ルールでいきなりバトルとかになっちゃいますよ?
じゃあイベントはベストカップル対決。
キャス狐が主体のイベントで。
CCC見る限りキャス狐ムーンセル好き勝手弄れる力あるし。
>>206
それ良い
もうちょい詳しくお願い
お料理対決とか相手へののろけとかでAI審査員が勝ち負け判定。
ポイント多くとった方が対決で有利になるとか?
>>208
アイディアありがとうございます
イベントの構想はだいたいできました
ただ、相手がキャスターだとエナジードレインができてしまうので、バトルで簡単に勝負がついてしまいませんか?
それは怪異の王と九尾の狐どっちが格上かって話だよな。
タマモは元々は太陽神なわけだし深層部に眠ってるやばいものをエナジードレインで呼び覚ましてしまうとかは?
『三回戦のイベントは、鬼ごっこです。制限時間ないに、ありすにタッチすることが出来れば阿良々木様の勝ち、逆にタッチできなければありすの勝ちとさせていただきます。ただし、タッチできるのはマスターである阿良々木様だけとします』
『では、スタートまで残り1分。カウントダウンを始めます』
「鬼ごっこって、今回は随分と子供っぽいイベントだな」
イベント名も横文字じゃなくなったし。
つーか僕らが鬼ごっこなんてやったら………
「ふん。こちらが鬼とは、皮肉なものじゃ」
ごっこじゃなくなっちゃうじゃん。
「まぁでも、今回のイベントはシンプルだな、気をつけなきゃならないのは、僕が直接タッチしなきゃならないってところだけか」
「そうじゃの。じゃから、今回相手のサーヴァントが襲ってきた時は、儂が足止めをしてその隙にお前様があの白いのにタッチするという作戦で行くのが妥当かの」
「わかった。じゃあ、とりあえずはありすを探すところから始めようぜ」
『3 2 1 それでは、スタートです』
「うふふ。お兄ちゃん、ここから先は一人でしか進めないよー」
アリーナを少し進んだ辺りで、目の前にありすとそっくりな黒いサーヴァントがあらわれた。
「ここから先は、あたしの世界。鏡の世界には、鏡に映らない人は入れませーん」
鏡に映らない?あぁ、そうか。吸血鬼は確かに鏡に映らない。ということは、ここからは僕一人で進まないとダメなのか?
「ふむ、固有結界か。じゃがなに、問題あるまい。こやつをここで足止めすれば、当初の作戦通りじゃろう」
「そうだな。わかった、こっちは僕に任せておけ。そっちは任せたぞ忍」
「カカッ、任された。儂もこちらがすみ次第追いかけよう。なに、こやつを少々痛めつければ固有結界は壊せんでも、儂が中に入れるくらいにはなるじゃろう」
一人で進むのは心細いが、あいにくそうも言ってられない。時間も惜しいし、ここからは一人で進むとしよう。
「ここでは鳥は、ただの鳥」
「ここでは人は、ただの人」
「お兄ちゃん。ようこそ、あたしの遊び場に」
「ここではみんな平等なの。あなたとかわたしとかおまえとかみーんな同じ」
「さいしよに、自分の名前を忘れちゃって、さいごは、お兄ちゃん自身がなくなっちゃう」
「おもしろいでしょー」
サーヴァントを忍に任せて、鏡の世界を少し進んでみると、目の前突然にありすがあらわれてそう言った。
「ちょっとまてよ!名前を忘れるって、いったいどういう………」
「ほらほら、早くあたしをつかまえてー」
そう言ってありすは、僕を置いて走り去ってしまった。
くそっ、考えるのは後だ、僕の名前はあららぎこよみ。
とりあえず、気分を切り替えて、ありすを袋小路に追い込もう。
「待て、ありす!」
「うふふふふ」
「よし!追い詰めたぞ、ありす!」
ありすとおいかけっこを開始してものの数十秒で、僕はありすを追いつめた。
ありすと自分とじゃ歩幅が違いすぎる。つかまえるのは容易い。
「すごーい。お兄ちゃん早いねー」
「まぁな!さぁ、おとなしくタッチされるんだな」
「でも、お兄ちゃん。そろそろ自分の名前、忘れちゃったんじゃない?」
!?へっ、嘘だろ?ちょっとまてよ、落ち着け落ち着くんだ。僕の、僕の名前は。
「僕の名前は______」
くそっ、駄目だ。頭にもやがかかったように自分の名前を思い出せない。
つーか、僕にもともと名前なんてあったっけ?
「うふふ、お兄ちゃんかわいそー。早くあたしをつかまえないと、今度は体がきえちゃうよー」
「あっ!?」
自分の名前を思い出せず、茫然としている僕の脇を通ってありすは、逃げ出した。
落ち着け、僕!とにかく、ありすをつかまえれば僕の記憶も元通りになるはずだ。名前のことはひとまず置いといて、早くありすをつかまえよう。
「おーにさんこちら、てーのなーるほーえ」
「待ちやがれ!」
僕の名前は_____
僕の願いは、はねかわをたすけること
僕の彼女は、戦場ヶ原ひたぎ
僕のパートナーは、忍野忍
「うふふふふ」
「こっちか!」
僕の名前は_____
僕の願いは、_____
僕の彼女は、せんじょうがはらひたぎ
僕のパートナーは、忍野忍
「はやくはやくー」
「くそっ、もうちょいなのに……………」
僕の名前は_____
僕の願いは、_____
僕の彼女は、_____
僕のパートナーは、おしのしのぶ
「あーあ、行き止まりだー」
「でも、お兄ちゃんの体きえそうだねー」
僕の名前は_____
僕の願いは、_____
僕の彼女は、_____
僕のパートナーは………………
「なにをしておる!お前様の名前は、阿良々木暦!そして儂の今の名は忍野忍じゃ!しかと覚えておけ!」
「っ!!サンキュー、忍!」
僕の名前は、阿良々木暦!
僕の願いは、羽川を助けること!
僕の彼女は、戦場ヶ原ひたぎ!
僕のパートナーは、忍野忍だ!
「タッチ!」
つかまえた!よし、これで僕らの勝ちだ!
「あーあ、つかまっちやった」
さして残念そうな風もなく、ありすは負けを宣言した。
「残念だったね、あたし。けど、おもしろかったでしょ?」
「うん。とってもおもしろかったよ」
そして、いつの間にかありすの隣には、彼女のサーヴァントが立っていた。
「じゃあね、お兄ちゃん。また明日も遊ぼうね!」
そういうと二人の少女は手を繋いで走り去っていった。
「カカッ。まさに間一髪じゃったの」
「そうだな、さすがに今回は危なかったぜ」
もし、忍があと少し遅れていたら。おそらく僕という存在は消えていただろう。
「改めてありがとな、忍。それで、そっちはどうだったんだ?」
忍が間に合ったってことは、おそらくあの黒いサーヴァントとの戦いには勝利したんだろうけど。
「うむ。その話はマイルームに戻ってからでよいじゃろう、我があるじ様よ」
「あぁ、じゃあ戻るか」
今日はここまでです
引き続き、要望や指摘などお願いします
特に、忍の技のアイディアが欲しいです
乙
「んじゃ、早速お前の方はどうだったのか聞かせてくれよ、忍」
マイルームに戻った後、僕と忍はアリーナで別れた後の情報交換、というか僕が一方的に教えてもらうことになりそうだけど、とにかくそんなことをしていた。
「そうじゃな、ではまずはあのサーヴァントのステータスの情報を見よ、お前様」
真名 ???
クラス ???
筋力 E
耐久 E
敏捷 E
魔力 E
幸運 E
固有能力 陣地作成:A
技能 自己改造:A / 変身:A
「これって…………」
「うむ。まず、これを見てさしものお前様でも気づいたと思うが、やつのクラスはキャスターじゃ」
キャスター。聖杯戦争では最弱のサーヴァントとされている、魔術師のクラスだ。確かに、この能力を見れば最弱と呼ばれるのも頷ける。けど、これは………
「忍、こんなに魔力の低いキャスターなんているのか?」
キャスターは魔術師のクラスだ。それなのに、魔力も最低ランクだなんて、そんなことあり得るのか?
「さあの。じゃが、実際にいるのじゃからしょうがあるまい」
「そうだけどさ…………じゃあ忍、実際に戦ってみての感想っていうか、手応えみたいなのはどうだったんだ?」
僕がありすと鬼ごっこをしている間、忍はキャスターと戦闘を行っていたはずだ。
「はっきり言って、楽勝じゃな。このままバトルで戦えば、まず問題なく儂が勝つじゃろう」
「じゃが、油断はできん。先ほど、お前様は身をもって体験しているからわかるじゃろうが、あやつの能力でやっかいなのは戦闘能力ではない」
「………そうか」
さっきアリーナでの出来事。忍が間に合わなければ、間違いなく僕の存在は消えていただろう。戦わずして負けるなんて、本当にぞっとしない話である。
「それに、あやつの宝具にも用心しておいた方がよいの」
「あぁ、わかった」
結局、予想通り忍に一方的に情報を与えられるだけだった。まったく、これじゃあなんのためのマスターだよ!
「さすがだな、忍。ちょっと戦っただけでそれだけ相手の事がわかっちまうなんて、さすが僕のサーヴァントだぜ!」
とりあえず誉めてみた。やっぱり、サーヴァントの機嫌をとるのもマスターの仕事だろう。むろん、その為のマスターってわけじゃ絶対ないのだけれど。
「当然じゃ。むしろお前様の方こそ、自分のサーヴァントに自信満々に任せておけ、とかほざいておったくせに、結局は我を忘れて少女と鬼ごっこに興じるとは、さすが儂のマスターじゃの!」
「悪かったよ……………」
くそ、誉め言葉に対して皮肉で返された。しかも、本当に我を忘れながらの鬼ごっこだったので反論のしようがない。
「じゃあ忍。ここらでそろそろキャスターの正体を教えてくれないか?」
あのサーヴァントの正体がわかれば、やっかいな宝具ってやつも少しは検討がつくかもしれない。考えることぐらいは、僕にでも出来るだろう。
「うむ、そうじゃな。とは言ったものの、儂にも正確な正体はつかめておらんが」
「そうなのか?」
今までは、いとも簡単に相手の正体を見破っていただけあって、それは僕にとって意外な返答だった。
なんだろう。それだけ今回のサーヴァントは特殊だってことなのだろうか?
「そんなところじゃ。まず、お前様はナーサリーライムというもの知っておるか?」
「いや、まったく」
なんだ?それが今回のサーヴァントの真名なのだろうか?
「いや、そうではない。ナーサリーライムとは、日本では童歌と言ったかの。これは、 実在の人物を英霊としたものではなく、絵本の一つのジャンルのことじゃ 」
「絵本のジャンル?そんなものが英霊になんてなれるものなのか?」
というか、正直意味がわからなかった。物語の登場人物が、というのならまだしも物語のジャンルって、いったいどういうことなんだ?
「つまり、子供たちに深く愛され、多くの子供たちの夢を受け止めていったこのジャンルは、一つの概念として成立し、『子供たちの英雄』としてサーヴァントとなったということじゃ」
「いや、つまりって言われても…………子供たちの夢が偶像となって、それ自体が英霊になった、ってことでいいのか?」
「まぁ、おおよその解釈はそれでも構わん。今回重要なのは、あのありすとか言う少女がいったいどんな話を愛し、どんな夢を持ったのかという事じゃ」
どんな物語に夢を持ったかっていうのは、僕たちにはわかりそうもないな。そんなの、本人しかわからない事だ。
「けど、どんな物語をありすが愛したかってのは、もうそのまま『鏡の国のアリス』なんじゃないのか?」
ありすはアリーナの中で、鏡の世界がどうたらこうたら言ってたし、つーか名前がそのままありすだし。
「うむ。おそらくそうじゃろうな」
「じゃあ、今回のサーヴァントは、『鏡の国のアリス』に出てくるアリスってことでいいのか?」
「まぁ正確には、マスターがそう望んだから、ナーサリーライムがその姿になっている、と言ったところじゃがな」
「けど、まいったな。僕、鏡の国のアリスなんて話の内容ぜんぜん覚えてないや」
宝具を考えることはできるといったものの、それについての知識が、ほとんどないのである。
そういえば、内の妹達ってぜんぜん絵本とか読んでなかったな。でっかい方が読書なんてしないのは言うまでもないが、小さい方も絵本なん読んでるの見たことがない。
「無理やり考えるとすれば、キャスターのクラスから考えて、絵本に出てくる登場人物を召喚するとかそんな感じかの?」
「登場人物って、トランプの兵士とか?」
なんだか、あまり強そうじゃないけれど。
「まぁ、そんなことはいくら考えてもしかたないじゃろう。ただでさえ、今回の戦闘は楽勝ムードが漂っておるのじゃ。それくらいの不安要素があった方が、適度緊張できてちょうどよいじゃろう」
「それもそうだな」
僕の密かな目標だった、なんでもいいから役に立つというのは果せなかったけれど、それはもうしょうがないだろう。
つーか僕、ここに来てから足引っ張ってばっかじゃね!?
「それでは、儂ももう休む。お前様も明日に備えておけ」
「………ああ」
短いですが今日はここまでです
見てる人いるかな?
見てるよ阿良々木君
じーっ
「今日も遊べるね、お兄ちゃん」
「今日は何して遊ぶ?かくれんぼ?それともおままごと?」
いつも通り桜ちゃんの声に起こされた僕は、早速ステージへと向かった。
そこにいたのは、双子の姉妹かと思ってしまうほどに瓜二つな少女達。ありすとそのサーヴァントだった。
「えっと、僕は遊びに来たわけじゃな…………」
「あたしはかくれんぼがいいな。あたしがかくれたら、だれにもみつけられないの」
「お兄ちゃんにも?」
「お兄ちゃんにも!」
「えっと……………」
やりにくいな。こっちは命懸けでやっているというのに、ありすときたら本気で遊びたいようにしか見えない。本当に、彼女達と戦わなければならないのだろうか。
「無駄じゃよ、お前様。あやつらは二人で世界が完結しておる。二人の世界には誰も立ち入れんし、誰の声も届かん」
そいうものなのか?けど、それって凄く寂しいことなんじゃないか?
「カカッ、さあの。じゃが、そんなことは問題ではないのではないか?やつらは所詮ただのデータじゃ」
「わかってるよ。ゴメン、忍」
余計なことは考えるな。忍が僕のために頑張ってくれているのに、僕が迷ってどうするだよ!
「ありがとね、お兄ちゃん。あたしと遊んでくれて。でもお兄ちゃんはもういいの。あたしはあたしとだけで遊ぶって、ずっとまえに決めたから」
「お兄ちゃんと遊ぶのは、今まででにばんめに楽しかったよ」
「でも、なごりおしいけど、もうさよならよ」
「そうね、あたし。こういうときに言う言葉ちゃんとおぼえたんだよ」
「"あわれで可愛いトミーサム、いろいろここまでご苦労さま、でも、ぼうけんはおしまいよ"
"だってもうじき夢の中。夜のとばりは落ちきった。アナタの首も、ポトンと落ちる"
"さあ?? 嘘みたいに殺してあげる。ページを閉じて、さよならね!"」
「ふん。落とせるものなら落としてみよ。じゃが、儂の首は落としたそばからすぐに生えるぞ」
「こぇぇよ」
どんな童歌だ。ホラーすぎるだろう。
「それでは、そろそろ始めるか。さしものお前様も、ここでためらうほどのロリコンではあるまい」
「おい忍。僕がロリコンという前提でのセリフは認めないぞ!」
「夢はいつかは終わるもの。現実逃避など幼子がすることではないわ」
「いいえ、ずっと続くわ。この悪夢はずっと。あたし達が飽きるまでずっと!」
そう言うと同時に、キャスターは両手をつきだした状態で構えた。
「追いかけたくなっちゃうよね、兎とか」
瞬間。忍の足元から氷柱が出現した。
「ふん。さすがはキャスターのクラスといったところじゃの」
忍は危なげなくそれを避け、キャスターに肉薄した。
「はっ!」
忍は二本の心渡でキャスターを切りつけ、キャスターはそれに手刀で応戦した。
二人の実力差は歴然だった。まず、武器からして片や刀、片や手刀なのだ。接近戦では圧倒的に忍が有利だった。
かといって、魔術を使えばキャスターが優勢というわけでもなく、
「豚になった方が幸せって子もいると思うの」
キャスターの詠唱とともに、忍のいる位置に小規模の竜巻が巻き起こった。
「ふん!」
しかし、それも忍に大した効果はなく、ダメージこそ受けているものの、それは微々たるものだった。
その後も、しばらく戦いは続いたが戦況は忍の優勢が崩れることはなかった。
何度めかの撃ち合いが終わり、忍は一度大きく距離ををとった。
その時には、キャスターには無数の傷が刻まれていた。
「そろそろ終わりするかの、お前様よ」
「ああ、わかっ…………いやまて、一度防御だ忍!」
見ると、キャスターが詠唱を始めていた。おそらくは宝具を使うつもりだろう。いくら実力差があっても、宝具をまともにくらうのは避けたい。
「やっちゃえ、あたし!」
「やっちゃうよ、あたし!」
「越えて越えて虹色草原、白黒マス目の王様ゲーム。
??走って走って鏡の迷宮、みじめなウサギはサヨナラね♪」
そう言うと、キャスターから大量の魔力が放出された。
「さあ、ようこそ、アリスのお茶会へ!!」
「嘘だろ?」
「うふふ。楽しいねあたし」
宝具が発動された後、キャスターの傷はみるみる回復していった 。
「ふん。傷が治ったからどうだというのじゃ。うぬの宝具でさえ儂には大して効いておらん。ただの時間稼ぎに過ぎんは」
忍の言う通りだった。傷が治ったといっても、根本的な力の差が解消されたわけじゃない。
「忍!またキャスターの宝具が発動されたら面倒だ。一機にかたをつけてくれ」
「わかっておるわ」
そう言って忍は、二本の心渡を改めてキャスターに向けた。
「なんだかもう飽きちゃったわ」
「じゃあもう遊びは終わりなの?」
「ううん。別の子にお兄ちゃんと遊んでもらいましょ」
別の子?どういうことなんだ?
「でも、あの子は呼んじゃダメだって、この前お姉ちゃんに言われたよ?」
「構わないわよ、あたし。だってあたし達が楽しければそれで良いじゃない。ここは、あたし達の世界なんだから」
「そうだね。じゃあ、あの子を呼んじゃおー」
「おいで、ジャバウォック!」
「ジャバウォック?」
なんだそいつ?呼ぶっつーことは、やっぱり昨日忍が言った通り『鏡の国のアリス』の登場人物からなんだろうけど、ジャバウォックなんてやつ僕は知らないぞ。
「無知なお前様が知らんのも無理はないの。ジャバウォックとは、ルイスキャロルの小説『鏡の国のアリス』の『ジャバウォックの詩』に登場する、正体不明の怪物じゃ。
詩の中でジャバウォックは、名も無き一人の勇者によって倒される怪物として……………くっ!」
「なんだよ、あれ……………」
「__________」
ステージ全体が震えていた。いや、震えているのは僕自身もしれない。とにかく、全身の神経が、感覚が、細胞が、あの化け物と戦うのをおそれていた。
「ちっ、こいつは厄介じゃな」
今までででの戦いにおいて、一度も弱音を吐かなかった忍だけれど、今回ばかりは苦悩の表情を浮かべていた。
「さあ、ジャバウォック。今度のあそびあいては、あのお兄ちゃん達だよ」
っ!?冗談じゃない!あんなのと遊んでいたら、こっちの体がいくつあったって足りないぞ!
「__________!」
一瞬だった。ジャバウォックはなんの前触れもなく、その巨体にはあまりに似つかわしないスピードで忍に殴りかかってきた。
「くっ!?避けろ、忍!」
「ちっ」
ジャバウォックの一撃必殺とも言えるほどの威力とスピードの拳を、忍は間一髪で霧となり避けた。
……大丈夫だ。立ち眩みはない。今ここで倒れるわけにはいかないのだ。
「やっちゃえ、ジャバウォック!」
キャスターの言葉とともに、再びジャバウォックが、忍めがけて襲いかかってきた。忍はまたもそれをギリギリのところで霧になって避け、一旦距離をとるために僕のところまで移動してきた。
「さて、どうしたもんかの?」
「わかんねぇよ。忍、あいつに弱点とかないのか?」
忍はジャバウォックの事を知っているようだった。なら、あの化け物の弱点も知っているかもしれない。
「残念ながらわからんの。それでもあえて挙げるとするのならば、あやつには理性がないことくらいじゃ。本来の儂ならばその弱点を突くこともできないでもないがの。いかんせん、今の状態では基本的なスペックが違いすぎるわい」
くそっ!打つ手なしかよ!いや、まだだ。考えろ、阿良々木暦!なにかないのか、なにか、あいつを倒す方法が!
ピピピピ ピピピピ
『聞こえますか?阿良々木様。現在、三回戦のデータであるありす、およびそのサーヴァントからパワーバランスを著しく崩す禁止行為を感知しました』
『これにより、その禁止行為に対する手段として、これより一時的にセイバーのステータスを本来の状態に戻します。これなら、ジャバウォックにも対抗できるはずです』
『それでは、ご検討を祈ります』
そう一方的に話すと、さくらちゃんからの通信は切れてしまった。しかし、僕にはその声が天使の声に聞こえた。
「カカッ。なるほど、これは気分が良い。ようやく一時的とは言え、全力で戦える。それでは早速あの化け物と一戦交えるとするかの」
「大丈夫なのか?忍」
「カカッ。我があるじ様よ。儂を誰だと思っておるのじゃ?」
「…………そうだな。愚問だったよ」
この状態の忍に心配するなんて、おこがましいにもほどがあるってもんだ。
それは壮絶な戦いだった。
おそらくカンストしているであろう攻撃力で、お互いがお互いを殴りあう。ただひたすら、どちらかが朽ち果てるまで。
防御力で劣っている忍は怪異の王の回復力で、防御力で勝っているジャバウォックはその鋼の皮膚で、互いの攻撃に耐えていた。
僕は春休み、本当にこんな奴と殺し合いを演じていたのか?こんなの、本物の化け物じゃないか!
おそらく、もう五分以上殴りあっていただろう。その間、まったく口を開かなかった忍がようやく言葉を発した。
「カカッ。そろそろ殺し合いにも飽きてきたの。では、あまり気の進むやり方ではないが、宣言通り弱点を突かせてもらうとするかの」
そう言って忍はジャバウォックから一度距離をとり、
「概念武装、ヴォパールの剣!」
忍がそう叫ぶと同時に、忍の手のなかに紅に輝く剣が顕れた。
「__________!?」
ジャバウォックはその剣をみたとたんに苦しみ始めた。どうやら、あの剣そのものが忍の言うジャバウォック弱点のようだ。
「これでしまいじゃ」
忍は高く跳躍し、ジャバウォックを真っ二つに切り裂いた。
「…………さすがだな、忍。とりあえず、お疲れ様」
「うむ、じゃがお前様よ。あやつらがまだ残っておることを忘れるな」
忍が指差したその先には、ありすとそのサーヴァントが互いの手を取り合って立っていた。
「あーあ、負けちゃった」
「負けちゃったね」
二人の少女は、ジャバウォックが倒されたのにもかかわらず、あいかわらず笑っていた。
まるで、あの化け物など使い捨ての玩具に過ぎないとでも言うように。
「さて、それでは幕を引くとしようかの」
一閃。
ステータスが元に戻っている忍にとって、もはやキャスターなど相手ではなくたったの一撃でキャスターを倒してしまった。
「なくなっちゃうの……?」
「今度のあそびはこれでおしまい。またあそんでねお兄ちゃん」
「次にあそぶときは、何をする?かくれんぼ、おままごと、それとも…………………」
言い終わらないうちに、ありすの体は消えてしまった。結局、最後の最後まで彼女はこの戦いを遊びと称していた。
「ふふ、今度の悪い夢はこれでおしまいみたい。また、あたしと遊んであげてね、お兄ちゃん。今から何して遊ぶ?あたし」
そう言って、キャスターは自身のマスターの後を追うようにして、消えていった。
「さて、ちょうど不愉快にも儂のステータスがまた下がってしまたことじゃし、そろそろ帰るとするかの」
「そうだな、帰ろう忍」
少女達との戦いは、精神的に辛いものがあったが、そうも言ってはいられない。
なんにせよ、これでようやく折り返し地点だ。気合いをいれて、残りの三試合も頑張るとしよう。
夢を見た
そこは、どこにでもある田舎町
僕が住んでる町だった
時刻は今までとは違い夜だった
昼だろうが、夜だろうが、そこに人の姿は一つもなかった
ただ、人ならざるものがそこにはいた
どろどろに融け、どろどろに爛れ
着ているボロボロの服と、身体のどろどろの肉が半ば交じり合っているかのような
そんな死体、ゾンビ達がそこにはいた
…………ダメだ。意識が、覚醒していく
これ以上この夢を見てはいられないようだ…………
今日はここまでです
明日は休みます
乙
あのルートの忍は守護者に殺されそうだな。
太陽系の英霊、複数には勝てないだろ。
乙ー
>>256
どゆこと?
守護者って人類滅亡クラスの災厄を抹[ピーーー]るためにあらわれる。
だからあのルートはもうそこまでいっちゃっうんじゃない?
>>259
サンクス
「そう落ち込むな。我があるじ様よ」
今現在僕達は、三回戦を勝ち抜き、四回戦のイベントの準備ができるまでマイルームで待機しているところだった。
「だから言ったであろう。あやつらは所詮データじゃ。あやつらにどんな感情を持とうと、無駄なのじゃよ」
マイルームの中で一人落ち込む高校生と、それをたしなめるサーヴァント。一体どうしてこのような状況になったかというと、それを説明するのには、正直気が進まないけど、それでも話さないわけにはいかないだろう。
以下 回想
それは、今日の朝のことだった。
『おはようございます、阿良々木様。本日は、四回戦のイベントを行います。こちらの準備が整うまでしばらくマイルームで待機していてください』
いつものようにさくらちゃんの声で目が覚めた僕は、いつもと違ってマイルームで待機するのではなく、忍を連れだって保健室へと向かった。
「何をするつもりなのじゃ?お前様よ」
「いや、ちょっと桜ちゃんに用があってさ」
「ほう。つまり、お前様はあの娘の声で起こされるのでは飽きたらず、明日からは直接起こしにきてくれと懇願するつもりなのじゃな」
「いや、そんなことはしねぇよ!」
何を全て悟ったみたいな顔をして言っているのだろう、この吸血鬼は。
「そうじゃなくてさ、昨日のお礼をしに行こうかなって思っただけだよ」
昨日の戦い、もし、桜ちゃんが忍の枷を外してくれなかったら、冗談ではなく僕達は倒されていただろう。
「お礼の。じゃが、それも必要のないことじゃと思うがの。あの娘にとって、あれはただ自身の役割を果たしただけなのじゃからな」
「そう言うなって、結局は僕の気分の問題なんだよ」
「まぁ、別に構いわせんがの」
忍と話しながら廊下を歩いていると、直ぐに保健室の前にたどり着いた。
「では、儂はここでまっている。せいぜい、変な感情移入をしないようにの。傷つくだけじゃぞ」
「わかってるって。それじゃ行ってくる」
「あれ、どうしたんですか?阿良々木様」
保健室の中には当然だけど桜ちゃん一人だけだった。直接会ったのは僕がここに来た初日だけだったけれど、毎日声を聞いているせいか不思議とそんな感じはしなかった。
「いや、大したことじゃないんだけどさ。昨日のお礼をしたくてね」
「お礼?」
「ああ、昨日の戦いでさ、忍の枷を外してくれただろ」
「あぁ、その事でしたらお礼なんて必要ありません。私はただ、自分の役割を果たしただけですので」
「そうなんだろうけどさ。でも、それで僕が助かったのにはかわりないし。ありがとう、桜ちゃん」
「いえ、どうかお気になさらずに」
そう言って桜ちゃんは微笑んだ。
かわいーなぁ。思えば、僕の周りってみんな個性が強すぎて、桜ちゃんみたいに普通に優しい子っていないよな。
「あぁ、それとさ」
「はい、何でしょ?阿良々木様」
「そう、それだよ。その阿良々木様って呼び方、どうにかならないのか?」
「呼び方、ですか?」
「うん。僕は様付け呼ばれる程偉くないし。それに、せっかくなんだからさ、もっと砕けた呼び方でもいいんじゃないかな?」
せっかくここでの数少ない敵じゃない人物なんだ、仲良くしたいとも思う。
「わかりました。呼び方の方は善処します」
「ですが、阿良々木様と仲良くするというのはちょっと……………」
「えっ?」
「私はあくまでもAIです。マスターと仲良くする、というルーチンは私の役割ではありません」
「いや、役割とかじゃ………………」
仲良くすることをルーチンとか言われた!
「それでは、他に用がないのでしたら、まだイベントの準備が終了していませんので。」
そう言って、さくらちゃんは身を翻して保健室の奥へといってしまった。
僕を傷つけている自覚はないのだろう、全ての台詞を変わらない笑顔で言うのだから余計に傷ついた。
「それじゃあ、おじゃましましたー」
その場に一人残された僕は、沈んだ気分で保健室を後にした。
以上 回想終了
「傷ついた。傷つくだけだけだった」
というわけで、マイルームに戻ってからも僕の気分は沈んだままだった。
「いい加減めんどうじゃな。ちゅーかお前様には彼女がおるじゃろうに、他の娘に冷たくされても気にすることはないじやろう」
「彼女に冷たくされているからこそ、他の女の子には優しくされたいんだよ」
てか、僕はこいつに彼女の事を言ったっけか?
「まあ、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないか。じゃあ、パワーアップしたお前のステータスを見せてくれるか?」
「うむ、見るがよい」
筋力 B
耐久 C
敏捷 A
魔力 B
固有スキル 対魔力:C
技能 千里眼:A / 戦闘続行:B / 物質具現化:A
宝具 心渡り:B / 怪異の王:B
「おっ、ついに敏捷がAランクか」
「そうじゃな。最初の頃のステータスに比べれば、大分成長したの」
この戦いもいよいよ後半戦だ。なんだか、感慨深いものがある。
「じゃが、油断は禁物じゃぞ我があるじ様。まだ、半分も残っておるのじゃから」
「大丈夫。分かってるよ」
「それでは、儂が納得できる答とやらを聞かせてもらおうかの」
「ああ、正直あまり気が進まないんだけどな」
誰だって、自分の失敗談なんて他人に語りたくないものである。
「まず、僕はさ、地上にいるときに色々な厄介事に首を突っ込んでいたんだ。
「誰かが困っていて、それを知ってしまったら、僕にはそれを放置するなんてできないから。
「そんな僕を見て、周りの人達は僕の事を『薄くて弱い』とか、『美しくはあるが正しくはない』とか称するんだ。
「周りの人達にそう言われたときは、僕はそんなんじゃない、なんて反発したけれど、結局はそいつらが正しかった。
「その時の僕は、誰かが困っているから助けるって感じで、そこに僕の意思はほとんど無かった。
助ける理由を他人に求めていたんだ。
「これは、自己満足なんじゃなくて自己犠牲だ。羽川のために死ぬ。僕はこれをただの自己満足だって思ってたけど、それは自己犠牲の方だったんだ。
「けど、アーチャーに言われて気がついた。僕は、羽川が困っているからとかそんなんじゃなくて、自分が助けたいと思うから助けるんだ。
「それは、ぜんぜん羽川が望まない、僕の自己満足にすぎない行動かもしれない。
「けど、 それをあくまで自己満足にすぎない行動だと認めた上で、それでも誰かをを助けたいというのであれば、それだけの覚悟と信念を持って行動するのであれば
、それで僕は成長できるんじゃないかって、そう思ったんだよ。
羽川翼でも、忍野メメでもない、阿良々木暦という一人の人間として。
「だから、羽川にウザがられても、迷惑がられても構わない。僕が、僕自身が助けたいから助ける!
それが、僕の自己満足に甘んじる覚悟だよ。
「ふん。なるほど、ようわかったわい。そこまで覚悟が決まっておるのなら、儂からは何も言うまい。ただ、全力でお前様の力となろう」
「………ああ、頼りにしてるぜ」
「時にお前様よ。前に言っておった変な夢というのはまだ見ておるのか?」
忍は急に話題を変えてきた。いや、僕の話は終わったからいいんだけどさ。
「ああ、まだ見てるよ。しかも、だんだんと鮮明になってきて、その度に不思議になるんだ」
「その話、詳しく聞かせてもらおうかの」
なんだ?何かあるのか?いつになく真剣な顔をしている忍に気圧されて、僕は夢で見たことを話した。
僕の町に人が一人もいなくなっていて、変わりにそこには大量のゾンビが蠢いていたことを。
「そうか……………」
「なんだよ、なにか気がついたなら言ってくれないか、しの……………」
ピピピピ ピピピピ
「お前様の夢の話は次回話す。今は掲示板に向かうぞ」
「わかった。じゃあ、行くか!」
「おや、貴方がミスター阿良々木ですか」
掲示板の前には、慎二くんよりも随分と幼い子供と、おそらく彼のサーヴァントであろう、いかにも礼儀正そうな青年が立っていた。
「失礼、申し遅れました。僕は前回…………事実上最後の聖杯戦争の準優勝者のデータ。名を、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイと言います」
おいおい、四回戦でもう聖杯戦争の準優勝者だって!?
くそ、今回は、今までよりもさらに厳しい戦いになりそうだな。
「そして、彼は僕のサーヴァントです。クラスはセイバー。真名をガヴェインと言います」
レオくんがそう言うと、サーヴァント………ガヴェインは軽くこちらに頭を下げた。
「従者のガウェインと申します。以後、お見知りおきを。どうか、我が主の良き好敵手であらん事を」
!?意味がわからない。なぜ自分からサーヴァントの情報をこちらに与えるんだ?こちらを嵌めるための嘘なのか?それとも…………
「えっと、レオくん。こっちとしては有り難いんだけど、自分のサーヴァントの情報をそんなに簡単にばらしちゃっても良いの?」
相手は前回の準優勝者だ。まさか、聖杯戦争のルールを知らないわけでもあるまい。
「ええ、良いんです。僕は自分と自分のサーヴァントに、絶対の自信を持っていますから」
笑顔のままでレオくんはそう答えた。
はったりじゃない。彼は今までの対戦相手とは格が違う。
気をぬけば、一瞬で飲み込まれてしまう。
「では、僕達は先にアリーナに向かわせていただきます。それでは、またのちほど」
そう言って、レオくんとガヴェインは去っていった。
「舐められておるぞ、お前様」
「わかってるよ。僕達もアリーナに向かおう、忍」
今日はここまでです
阿良々木さんは、言うだけ言って全然役に立っていませんので今後に期待ですね
乙
桜はそこではくのんとのノロケ話で暦を絶望させてほしかった。
>>276
暦もそこまで桜に好意持ってなくね?
乙
『四回戦のイベントは、レースです。各マスターは、別々のスタート地点から同一のゴール地点まで向かってもらい、先にゴールにたどり着いたマスターを勝者とさせていただきます。なお、中間地点にはエネミーを配置しましたので、それを撃破して進んでください』
『では、スタートまで残り1分。カウントダウンを始めます』
「レオくん達とは別々のコースを行くってことか。それじゃあ、ゴールにたどり着くまでに一戦交えるってことはなさそうだな」
「そうじゃな。しかし、油断は禁物じゃぞ、我があるじ様。今までの経験から言って、あやつらがなんらかの形で妨害をしてくることは明白じゃろう」
毒。固有結界。それと同じようなものが今回も用意されている、ということだろう。
「わかってるさ、忍。今回の敵はいつも以上に強敵だ。油断なんてできるわけがない」
『3 2 1 それでは、スタートです』
レースが始まり、少ししたところで僕と忍は走りながら、今回の対戦相手について話し合っていた。
「なあ忍。ガヴェインっていうあのサーヴァントって、いったいどういう奴なんだ?」
「うむ。あやつは『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士の一人であり、アーサー王の甥にあたる人物じゃ。そして、もう一人の聖剣の担い手であり、王の影武者とも言われとったようじゃの」
「ああ、アーサー王なら僕も知ってるぞ。それに、その聖剣ってやつも。たしか、エクスカリバーだっけか?」
「そうじゃな。そして、ガヴェインが持つもう一つの聖剣の名はガラティーン。エクスカリバーの姉妹剣にあたるもので、エクスカリバーが『約束された勝利の剣』と呼ばれてるのに対し、ガラティーンは『転輪する勝利の剣』と呼ばれておる」
「へぇー。…………それにしても、忍。なんでそんなに不機嫌そうなんだ?」
なぜだか分からないけど、忍はガヴェインのことを話し始めてから、微妙に機嫌が悪そうだった。
「ふん、なんのこはない。あやつが『太陽の騎士』と呼ばれていることや、あやつの能力の多くが太陽から恩恵を受けるものじゃからな。それが気にくわないだけじゃ」
「そっか。そういや太陽はお前の敵なんだっけか?」
「うむ。いつか必ず倒す!」
「いや、それは流石に勘弁んしてくれ」
なんて話しをしていると、目の前に桜ちゃんの言ってたエネミーらしきものと、その隣に奇妙な機械が置いてあった。
「ん?あれはなんじゃ?我があるじ様」
「さあ?えっとなになに、『ハーウェイ マネー イズ パワー システム』?」
ネーミングセンスの欠片もないな。金は力って、なんだ?この機械。
ハーウェイの名前から、おそらくレオくんの仕業なんだとは思うけれど、いったいどんな効果があるんだ?
「ふむ。どうやらこの機械に決められた金銭を入れれば、エネミーのレベルがダウンするもののようじゃな」
「おいおい、僕は金なんて持ってないぞ」
「なんじゃ、使えんの。む?お前様よ、あそこに宝箱があるぞ」
「おっラッキー。じゃあ早速…………………って空じゃねぇかよ!!」
「カカッ。随分と簡単な罠に引っ掛かったの」
「くっ。お前、気づいてたのかよ!」
なんて吸血鬼だ。僕のさっきの喜びを返せよ!
「ちゅーかそんなもん、気づかん方が悪いじゃろ。」
「しょうがないだろ。リアルでこのサイズの宝箱を開ける経験なんてめったにないんだし」
つーかそんなもん、ゲームの中でしかないだろう。
「で、お前様よ。どうするのじゃ?」
「いや、どうするって言われてもな」
金なんて持ってないし、このままエネミーを倒すしかないんじゃないか?
「いや、もう少し辺りを探せば当りの宝箱があるかもしれんぞ」
「うーん。エネミーの強さがわかんねーからなんとも言えないけど………………とりあえず、もう少し辺りを探してみよう」
「うむ、了解した」
「くっそー!僕の夢と希望を返せ!」
結局、あの後直ぐに二つの宝箱を見つけたけれど、両方とも空だった。
「じゃから、あの二つで止めておけと言ったじゃろうに」
その後、当初の目的も半ば忘れ、血眼になって宝箱を探したが結局当りの宝箱は無く、弱体化無しでエネミーは倒せたものの大幅にタイムロスをしてしまった。
「だって、あれじゃあまるで、僕のリアルラックが低いみたいじゃないか!」
「いや、低いどころか全くのゼロじゃと思うがの」
「ちくしょー!とにかく急ぐぞ!」
「おや、遅かったですね、ミスター阿良々木」
ゴール地点には、レオくんとガヴェインが立っていた。
「ああ、誰かさんの粋な計らいのおかげでね」
「ふふ、そうですか」
僕の皮肉もどこ吹く風。顔にはあいかわらずの笑顔を浮かべていた。
「それでは、どうしますか?僕としては、このまま帰っても良いのですが」
おそらくは戦って情報の探り合いしようと言っているのだろう。いや、彼からすれば僕にチャンスをくれているのかもしれない。
「いけるか?忍」
「うむ。このまま何の情報も無しにバトルに向かうのは些か危険じゃしの」
「そうですか。では、頼みますよ、ガヴェイン」
「御意に」
場に緊張が走る。
ガヴェインは『転輪する勝利の剣』ガラティーンを忍に向かって構えた。
「カカッ。思えば、ここに来てからまともな接近戦をするのは初めてじゃの」
対する忍は二本の心渡を構えた。
「行くぞ!」
「騎士ガヴェイン、参る!」
「はっ!」
「てい!」
「ふん」
「受けていただく!」
剣と刀のぶつかり合い。
実力はほぼご確認と言ってよかった。
一撃に力を込めるガヴェイン。
手数を活かして攻める忍。
両者一歩も引かない攻防が繰り広げられていた。
ガキン
激しい金属音と共に一度距離をとる忍。その体にはいくつかの傷が出来ていた。
「ちっ、不味いの」
「どうしてだ?僕には互角に戦ってるように見えるけど」
実際、忍は前回の準優勝者相手に一歩も引かない戦いを演じていた。
「ふん。よく見てみろお前様。あやつの体には傷一つついておらんじゃろう」
「えっ!?」
忍の言った通りだった。ガヴェインは、その体はおろか、防具にすら傷一つつけていなかった。
「おい、これどういう事だよ!お前の攻撃だって、何回かはヒットしてただろ!」
「そのはずなのじゃがな。おそらくはあやつの能力じゃろう。これは、ここで戦っておいて正解じゃの!」
そう言うと同時に、忍はガヴェインに向かって行った。
今度は足をも刀に変えて猛攻をかける。
「はぁ!」
しかし、やはり忍の攻撃がヒットしてもガヴェインには傷をつけることが出来ない。
「それでは、こちらからもいかせてもらいます!」
そう言うと、ガヴェインの持つガラティーンに炎、太陽が宿った。
「全て我が王のために!」
「くっ!」
とっさに宙に飛んで足を合わせて四本の刀で攻撃を受ける忍。なんとか吹き飛ばされながらも攻撃を受けきったようだ。
しかし、その体の所々は、おそらくあの攻撃が太陽の炎を宿していたせいだろう、焼きただれていた。
「ちっ、忌々しい太陽めが!」
「闇に生きる者よ。私の太陽の力で滅ぶがいい」
『警告 警告 イベント中の許容戦闘時間を過ぎました。直ちに戦闘を終了してください』
「ここまでですか」
「ふう、大丈夫か?忍」
「うむ。問題無い」
確かに、最後の攻撃以外の傷は既に回復しているようだ。
「では、ミスター阿良々木。僕達はもう帰ります。明日はお互い悔いの残らないよう、全力で戦いましょう」
そう言って、レオくんはガヴェインと共に去っていった。
「儂らも帰るぞ、お前様よ。あやつの対策を早急に練らねばいかん」
「そうだな」
こっちの攻撃が効かないことには、勝つなんて夢のまた夢だ。マイルームで忍と相談するとしよう。
「それで、対策を練るのは良いんだけどさ、まず、ガヴェインの能力ってどんなもんなんだ?」
アリーナから戻ってきた僕達は、早速今回の対戦相手について話し合っていた。
「うむ。まず、あやつが『太陽の騎士』と呼ばれておる由縁から話すとしよう」
「あやつは生前、太陽の出ている間は三倍の力を発揮するという特殊体質を持っていたと伝えられておる」
「太陽の出てる間ずっとか!?」
太陽の力でパワーアップするなんてどんな人間だよ。
「まぁ、正確には午前9時から正午までの3時間と、午後3時から日没までの3時間じゃったらしいがの。
ともかく、その時間帯に日輪の元であれば、何者にも傷つけられず、その桁外れの防御力によって無類の強さを誇っていたようじゃ 」
「おそらく、それが先の戦いで儂があやつを傷つけられなかった理由じゃ」
そうだったのか。そんなとんでもない能力が備わっていたなんて、流石は準優勝者のサーヴァントと言ったところか。
「じゃあ、それを破る方法は無いのか?」
相手の能力に感心している場合じゃない。今回はただでさえ、イベントに勝利できなくて相手の情報が少ないんだ。ここまで来て、相手に傷一つつけられずに負けるなんて笑えない。
「うむ。要は、明かりを無くして一撃でもあやつにみまえば良いんじゃ。あれほどの強力な能力なら、一度破られればもう使えまい」
「けど、それが難しいんじゃないか。だって、僕達がいつも戦うのは、この世界での日中なんだから」
「カカッ。じゃったら、儂自らが場を整えればよい」
「場所を整えるって、もしかして、固有結界でも使うのか?」
「うむ。儂の得意な丑三つ時にでもなれば、あやつの能力を封じる事もでき、儂もいつもよりパワーアップができるからの」
「固有結界って、そんなことも出来るのか?」
つーか、さっきは適当に言ったけど、固有結界ってそもそもどんなものなのか、僕知らないんだよな。
「 うむ。そもそも固有結界というのは、術者の心象風景で現実世界を塗りつぶし、内部の世界そのものを変えてしまう結界のことじゃ。心象風景ゆえ、儂が自由に世界を作れるわけではないが、それでも、儂の天敵である太陽などそこには存在しないじゃろう」
「へぇ、まあ細かいことは良くわかんねぇけど、つまるところ、その固有結果でこっちはどれくらい有利になるんだ?」
「まず、あやつに攻撃が効くようになると同時に、あやつの太陽の力を借りた攻撃の威力が落ちるの。そして、対称的に儂の能力が上がり、少しじゃが本来の儂に近づけるじゃろう」
「すげぇじゃん!けど、それって結構魔力を使うんじゃないのか?」
自身の体を霧にするだけであれだけの魔力を使うんだ。一つの世界を上書きするとなれば、一体どれほどの魔力を使うんだ?
「うむ。今の儂の魔力なら、精々二回、数分維持するだけで精一杯じゃな」
「そうか、それじゃあ実質使えるのは一回だな。霧化する魔力も温存しとかないとだし」
ガヴェインの攻撃は強力だ。宝具を使われた時の為にも回避の分の魔力も残しておかなければならない。
「いや、今回の戦いで儂は霧化を使うつもりはない」
「えっ!?」
どうしたんだ?もしかして、相手が太陽の騎士だからつて意地でも張ってるのか?
「考えてもみろ、お前様よ。霧というのは液体じゃ。あやつの炎を纏った攻撃の前で霧化などすれば、あっという間に蒸発してしまうわ」
「ああ、そっか。けど忍、霧化なしでガヴェインの宝具に耐えれるのかよ?」
忍自身、太陽の炎を纏った攻撃には弱い。忍の耐久値でガヴェインの宝具を受けきれるだろうか?
「そこは、こちらの固有結果の使い所じゃな。霧化の魔力は考えないとして、使えるの二回じゃ」
「だったら、まずはガヴェインに攻撃を通す為に初っぱなで一回だな」
「うむ。そこで、出来る限りあやつの体力を削り、あやつが宝具を使う瞬間に二回目じゃな」
「そうだな、それがベストか」
「じゃがまあ、そう簡単にはいかんじゃろうな」
「うーん。そうだ、お前の魔力が上がってるってことは、僕の魔力供給の負担も減るんだよな?だったら僕にもなにか出来る事は無いのか?」
今回の相手はただでさえ忍と相性が悪い。だから、その分僕は忍の力になりたい。結局、前回の戦いだって僕は一つも役に立ってないのだから。
「そうじゃの。今のお前様ならば、一度くらいならコードキャストを使うことも出来るかもしれんの」
「コードキャスト…………」
確かコードキャストって魔術みたいなものだったかな?
だったら、あれだったら忍の助けになるかもしれない。
「まあ、あまり無理されてもの。またこの前のようにぶっ倒れられても困るしの」
「では、明日に備えて今日はもう休むとするかの」
「おう。明日もよろしく頼むぜ、忍」
「うむ。任せておけ。太陽との戦いの前哨戦じゃ。太陽の騎士なんぞに負けるわけにはいかんからの」
……………………まあ、理由はあれだけど、やる気が出るのは有り難いな。
今日はここまでです
明日はいよいよ阿良々木さんの見せ場?があります
乙
どうみても忍の天敵だよなガウェイン。
ところで今の忍の外見年齢どんなもん?
ガウェインは年下ロリ巨乳が好みだっけ。
>>300
年齢は8歳
ガヴェインはロリコンじゃない!
ちょっと年下の女性が好きなだけだ!
「おや、おはようございます、ミスター阿良々木」
「ああ、おはよう、レオくん」
いつも通り、桜ちゃんの声で目覚めた僕は、早々に忍を連れてステージへと向かった。
いや、いつも通りというのは少し語弊がある。なぜなら、桜ちゃんの僕の呼び方が、阿良々木様から阿良々木さんに変わっていたからだ。
…………なんか、素直に喜べないな。
複雑な気分のままステージを向かうとそこには既にレオくんとガヴェインが立っていた。
「ミスター阿良々木。貴方のサーヴァントの情報には目を通させていただきました。見れば見るほど、貴方のサーヴァントはガヴェインと相性が悪いようだ」
そうか、今回イベントで僕は負けてしまったんだ。レオくんには当然忍の情報が伝わっているはずだ。
レオくんは前回の準優勝者、昨日の戦いで得た情報を基にして、忍が吸血鬼だということもバレてしまったのだろう。
「見たところ、貴方のサーヴァント、『怪異』と言うのでしたっけ?おそらく、反英霊としての側面が強いのでしょう」
確かに、忍は昔、人間だけではなく怪異を食していた。怪異を食べる事で、忍にそのつもりは無いにせよ、それで救われたと感じた人もいたかもしれない。
「しかし、所詮は化物です。ガヴェインと貴方のサーヴァントは、太陽と吸血鬼という所以外にも相容れないでしょう」
「それってどういう意味なんだ?」
「古より、人間は化物に襲われ、化物は英雄に倒され、英雄は人間に殺される。貴方のサーヴァントは僕のサーヴァントに倒され運命なのです」
おそらく、これが彼の本性なのだろう。 誰に対しても柔らかな物腰を崩さない礼儀正しい少年。しかし、その裏に隠された太陽のような苛烈かつ攻撃的な絶対的自信。
「カカッ。言わせておけば勝手な事ばかり言おって。儂は怪異の王。ただの化物と一緒にするではないわ!」
そう言って、忍は心渡を両手に構えた。
「貴方に特別な恨みはありませんが、化物退治も騎士の勤め。切り伏せて差し上げましょう」
対するガヴェインは前回同様ガラティーンを構えた。
「はっ!」
先に動いたのは忍だった。
とは言っても、ガヴェインに向かって行ったわけではなく、背中に大きな羽根を生やして高く飛び上がった。
「なにを!?」
突然の忍の行動に戸惑うガヴェインをよそに、忍は宙で停止し、目を閉じて、
「混沌を支配する赤き闇よ!己が表す心象世界をいざ招かん!巡りに巡る終末の灯火をただ繰り返し、溢れ出す雷で空を満たせ!黒を歩む者、灰を泳ぐ者!罪深きその
忌み名をもって自らを王とせよ!」
「呪文を詠唱し始めただと!?」
えっ、なに、あいつってあんなこともできちゃうの!?
「開け、全てを覆う怪異の王(キスショット アセロラオリオン ハートアンダーブレード)!!」
固有結果を展開し終わった忍は、急降下しつつガヴェインを攻撃した。
「くっ!」
「はぁっ!」
おそらく、固有結果によって上昇した忍の力をはかり違えたのだろう。ガヴェインは忍の一方の刀を受けるのに精一杯で、もう一方の刀は避けきれずまともに食らった。
「カカッ。これでうぬにも儂の攻撃が通るようになったぞ」
よし、防具のせいでダメージはあまり与えられなかったけれど、ガヴェインに攻撃が効くようになっただけでも収穫だ!
すいません
直前の投下の前にこれが入ります
忍の詠唱が終わると共に、いつのまにか辺りが暗くなっていた。
そこは、造りこそ僕には見覚えの無い西洋のものだったが、それでも、そこに人が住んでいると想像するには十分なほどに、生活感漂う街だった。そして、空には、予想通りの満月が煌々と輝いていた。
でも、なんか………………
「吸血鬼にしては、随分と人間らしい固有結果ですね」
ガヴェインは、僕の思っていることと同じことを口にした。
「別に、不思議な事ではないじゃろう。我ら怪異は人間がいないところでは生きていけんからの」
そう言った忍は、固有結果の効果なのか分からないけど、高校生くらいにまで体が成長していた。
「では、行くぞ!」
「まだまだ!」
そう言って、忍はガヴェインを追撃する。
「一旦下がりなさい、ガヴェイン」
「はっ」
ガキン キン ガキン
忍の連撃を、防御に徹して受けるガヴェイン。しかし、じょじょに忍の手数に圧倒されつつあった。
「カカッ。そんなものか?」
「くっ、主よ!」
「わかりました。貴方に任せます」
「来るぞ、忍!」
「分かっておるわ」
「全て我が王のために!」
そう言うとガヴェインは、イベントの戦いで見せた、太陽の炎を纏った攻撃を繰り出してきた。
「忍!?」
対する忍は、あろうことか自分の左手を差し出し、肉を切らせて骨を断つ戦術で、ガヴェインの斬撃を左手で受けているうちに、右手の刀で力一杯ガヴェインの腹を切りつけた。
「くっ!」
ガヴェインは痛恨の一撃をくらい、たまらず一度距離をとった。
対する忍は、ガヴェインの一撃でもげた左手を固有結果の能力で回復していた。
そして、忍の左手が回復し終わると同時に、忍の固有結果は消え去った。
「みくびっていましたか……」
「立て直しますよ、ガヴェイン」
「はい。午前の光よ、善き営みを守り給え!」
詠唱と共に、ガヴェインの体は淡い光で包まれた。
「ふむ、防御力の強化か」
「今度はこちらから行かせてもらいます!」
同時に、ガヴェインは忍に切りかかってきた。
それを忍は二本の心渡で受けとめ、素早く反撃に転じた。
しばらく、二人の膠着状態は続いた。
防御力強化で、忍の多少の攻撃では致命傷を与えられなくなったガヴェインだったが、おそらく、先程の忍の攻撃が効いているのだろう。戦況はじょじょに、忍に傾きつつあった。
「そらっ!」
「引くがいい!」
「はぁっ!」
「くっ!」
防御力強化が切れたのだろう。忍の容赦ない攻撃に、たまらずガヴェインは距離をとった。
「これが窮地というものですか」
そう呟いたレオくんの顔には、しかし、動揺の色は見られなかった。
「レオ……」
「ええ、あなたの思うままに。ガウェイン」
レオくんの言葉と共に、ガヴェインのガラティーンには、今までとは比べ物にならないほどの力が溜められてた。
「来るぞ、忍!今だ!」
「うむ!」
「この剣は太陽の写し身……もう一振りの星の聖剣!
転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」
「開け、全てを覆う怪異の王(キスショット アセロラオリオン ハートアンダーブレード)!!」
一閃。
凄まじい、まさしく太陽と呼ぶべき炎をガラティーンに乗せた、強力な一撃がガヴェインから放たれた。
「忍!」
「私のガラティーンに……耐えたと!?」
「有り得ない……」
ガラティーンを食らった忍は、全身焼きただれてボロボロになりながらも辛うじて耐えていた。
「大丈夫なのか?忍!」
「カカッ。何をそんなに心配しておるのじゃ、お前様よ」
「だってお前、呪文の詠唱が無かったから、僕はてっきり間に合わなかったんだと………………」
「ふん。あんなもの、その場のノリじゃ」
「そうか、ならいいんだ……………………っておい!」
なんだよ、僕あれにちょっと感心してたのに。
「それでは、一気に蹴りをつけるかの」
「くっ、ガヴェイン!」
忍は一気に勝負をつけにかかった。
二本の心渡と刀の蹴りがガヴェインを次々と襲う。
「っ!その呼吸を乱す」
ガヴェインの体に先程とは違う光が集まってきた。
「ふん。今更幸運上昇など小賢しい」
ガヴェインの宝具に耐えた忍は、完全に流れを掴んでいた。おそらく、ガヴェインに競り勝つのも時間の問題だろう。
「…………………………………」
ガヴェインが押されていくさまを、レオくんは黙ってみつめていた。
その目には諦めの色など微塵もなく、あるのはただ、燃えるような闘志だけだった。
くそ、なんか嫌な予感がする。
レオくんはまだ奥の手を隠しているのか?
「忍、急いで勝負をつけるんだ!」
「言われなくともそうするわ!」
「はぁっ!」
「くっ、まだです!」
その後も忍は順調にガヴェインを押していった。
そして、ついに最後の一撃を与えるところまで追い詰めた。
「カカッ、しぶといやつじゃ。じゃが、これでしまいじゃの」
忍がそう言った瞬間、二回目の固有結果は消えてしまった。しかし、今更問題はない………………
「今です、ガヴェイン!」
「なに!?」
ガヴェインは最後の力を振り絞って忍を突き放し、再度ガラティーンに炎をまとわせ始めた。
「この輝きの前に夜は退け、虚飾を払うは星の聖剣!」
くそ、何故気づかなかったんだ。こっちが固有結果を二度使えるなら、あっちだって宝具を二度使う可能性だってあるんだ。
………………だったら、こっちにだって考えがある!
「忍!ガヴェインに突っ込め!」
「正気か!?お前様!」
「僕を信じろ!!」
忍は僕の言葉を聞くと、躊躇いなくガヴェインに突っ込んでいった。
まったく、お前は頼れるパートナーだよ。
ここで僕がしくじるわけにはいかない。
集中しろ。タイミングを逃すな。やるんだ、阿良々木暦!
「エクスカリバー・ガラティーン!!」
「koyomi vamp!!」
「なに!?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
瞬間、僕の両腕は植物に形を変えて、ガヴェインのガラティーンを受けとめた。
当然、自分の腕でサーヴァントの宝具を受けているので、滅茶苦茶痛い。
けど、こんなもん、今まで忍が負った傷に比べれば何でもない!
大木のごとく成長した僕の両腕は、ガヴェインの攻撃で粗方消失してしまったけれど、それでも時間を稼ぐのには十分で、
「終わりじゃ!」
ガヴェインの体を忍の心渡が貫いた。
「余力はありません……私の……完敗です……」
「終わったーー」
よし、準優勝者に勝ったぞ!これでゴールにまた一歩近づいた!
「申し訳ありません。主よ」
「貴方が謝ることではありませんよ、ガヴェイン。今回は、あちらの想いが僕たちに勝っていたというだけです」
「…………そうですね。今回は完敗です」
「はい。こういう負けかたも、なかなかに気分が良い」
「では、私はこれで。まだあなたに、王命が残っていることを信じて、いつか、また……………」
そう言って、太陽の騎士、ガヴェインは姿を消した。
「おめでとうございます。これでまた、貴方の願いに近づきましたね」
「ああ、ありがとうレオくん」
「それでは、僕もこれで………」
「あっ、待って」
「はい?」
「化物に襲われるのが人間なら、化物を助けちまうよーなやつは、一体なんなんだろうな?」
僕の質問に笑顔でレオくんは、
「さあ、僕にはわかりかねますが、結局は、その人が何者でありたいかなのではないですか?」
「それでは、今度こそ」
そう言うと直ぐに、レオくんも姿を消した。
「帰ろうーぜ、忍。慣れないことしたから、僕は疲れちまったよ」
「うむ。そうじゃな」
願いが叶うまであと二回戦。このまま突っ切るとしよう!
四章(完)
今日はここまでです
レオやガヴェインの口調がおかしいかもしれませんが、気にしないでください
それ以外の意見や感想等があればお願いします
化け物を助けるのは普通に化け物の仲間じゃね?
後、乙。
>>322
そう単純なもんじゃない
夢を見た
今回は街ではなく、あの廃墟。学習塾跡の夢だった
そこに、いつもならいるばずの忍野メメや忍野忍の姿はなかった
代わりに、屋上には一つの人影があった
そこにいたのは、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼
怪異の王にして怪異殺し
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの姿があった
おかしい、何故忍があの姿に戻っているんだ!?
…………ダメだ。意識が、覚醒していく
これ以上この夢を見てはいられないようだ…………
『おはようございます、阿良々木さん。本日は、五回戦のイベントを行います。こちらの準備が整うまでしばらくマイルームで待機していてください』
「起きてるおるか?我があるじ様よ」
「…………ああ」
「なんじゃ、随分とおかしな顔をしておるの」
「ああ、ちょっとな」
今回の夢には、忍がキスショットの姿で出ていた。あれは一体どういうことなんだ?
「ふむ。どうせまた、夢のことなのじゃろう?」
「そうだよ。あっ、そういえば今回は僕の夢のことを教えてくれるんだよな?」
自分の夢のことを他のやつに聞くなんてどうかと思うが、それでも、この疑問を解決できるのは、多分今のところ忍だけだ。
「うむ。じゃが、その前に儂のステータスを見るとするかの」
「ああ、そうだな」
筋力 A
耐久 C
敏捷 A
魔力 B
固有スキル 対魔力:C
技能 千里眼:A / 戦闘続行:B / 物質具現化:A
宝具 心渡り:B / 怪異の王:A
「筋力と宝具がAになったのか。これって、かなり良い感じなんじゃないのか?」
「うむ、そうじゃな。筋力がAともなれば大抵の攻撃は通るし、怪異の王に至っては、吸血鬼の能力をほぼ全て使えるほどにまでなっておる」
「そっか。そりゃなによりだ」
「さて、では予告通り、お前様の夢のことについて話すとしようかの」
「ああ、よろしく頼むよ」
所詮は夢なのだから、あまり気にしなくても良いんじゃないかとも思ったけれど、それでも場合が場合なだけに、素直に忍の話は聞いておきたかった。
「とは言ったものの、儂にも大まかなことしか分かっておらん」
「まず、お前様がいま見ている夢は、お前様がこちらに来た後の、地上の風景じゃ」
「はっ?おい、ちょっと待ってくれ忍。じゃあ、あの人が誰もいなくて、変わりにゾンビ達が彷徨いてるあの街が、今の僕の街の現状だってことか?」
あり得ないだろ。もし本当に忍の言うことが真実なのだとしたら、一体僕がこっちに来た後に何が起こったっていうんだよ!?
「そうじゃ、そこのところは、間違いがないと言っても過言ではないじゃろう。そうじゃ、お前様よ、今日は一体どんな夢を見たのじゃ?」
「えっと、今日は確か、お前が出てきてた。それも、忍野忍の姿じゃなくて、キスショットの姿でだ」
「ふむ。それでもう少し詳しく特定ができるの」
「なんだよ、教えてくれ」
「うむ。お前様が見ている夢は、正確にはお前様が死んだ後の未来の風景じゃ」
ああ、そっか。だから僕が死んでペアリングが解けた忍は、あの姿に戻っていたのか。
「だったら、僕がいなくなった後に一体何が起こったんだろうな?」
どんなことが起これば、一つの街から人が消えて、そこにゾンビが出現するなんてSF チックな状況になるんだ?
「さあの、そればっかりは儂にも分からん。じゃから、お前様は、お前様が死んでしまえばお前様の身近な人間まで消えてしまう可能性があるということだけを肝に命じておればよいのじゃ」
「っ!そうか、そうなっちまうのか………」
そうだよ、あの街には僕の大切な人達が住んでいるんだ。その街から人が消えるってことは、その大切な人達まで消えてしまうということだ。
…………そんなことは絶対にさせない。理由はどうあれ、僕が失敗したせいで僕の周りの人達が消えてしまうなんて、そんなことはあってはならないのだから。
「分かったよ忍。肝に命じておくよ。そのためにも、残り二試合、なんとしてでも勝たないとな」
「ほう、よく言った」
ピピピピ ピピピピ
「じゃあ行こうぜ、忍」
「うむ」
「ミコーン!おおっと、私の第七感(フォックスセンス)が激しく反応!ご主人様、どうやら今回の挑戦者、一夫多妻去勢拳の最大の天敵のようですよ」
「なに言ってるんだか」
掲示板の前に立っていたのは、一見、平凡そうな顔立ちの高校生くらいの男性と、おそらく彼のサーヴァントであろう、青を基調とした和風の衣装に身を包み、狐の特徴を持った半人半獣の姿で、狐の耳と尻尾が生えている女の子だった。
「えっと……………」
「あっ、俺のサーヴァントの事は気にしないで良いから。君が阿良々木暦だね?」
「はい、そうですけど」
なんだろ、偉く親しみやすい人だな。今までの相手が相手なだけに、正直、あまり手強そうには見えないけど。
「俺の名前は岸波白野。四回戦でレオが出たことから、多分予想はつくと思うけど、一応前回の聖杯戦争の優勝者だよ」
「それじゃあ、あなたなんですか?殺し合いでの聖杯戦争を終わらせたっていうのは」
まぁ、大体予想はついていたけれど、それでもいざそう言われると、どことなく違和感があった。失礼を承知で言えば、とてもそうには見えない。
「うん。でも、そんな大したことじゃないよ。俺が優勝できたのなんて、まぐれも良いところだし。君みたいに、確固とした意志があったわけでもないしね」
「またまたー、ご主人様ったらご謙遜を。それに、確固とした意志ならご主人様にもあったじゃないですか。ほら、私に言ってくださったでしょ。『この戦いが終わったら俺の嫁になってくれ!』って。キャッ、ご主人様ったらイケメーン」
「いや、そんなことは断じて言ってないから」
うわっ、あまりのテンションの違いで最初は気づかなかったけど、よく聞いたら岸波のサーヴァントと戦場ヶ原の声って一緒じゃん。あいつの声で悪口以外の言葉がこうもずらずら出てくるのって、何か新鮮だな。
「もー、ノリが悪いですね。せっかく、久し振りにセイバーさんやアーチャーさんから出番を勝ち取ったのですから、もう少し楽しみましょーよ、ご主人様」
「そんなこと言って、前回の挑戦者が来たときに調子に乗りまくって、トワイスから出場停止くらったんじゃなかったっけ?」
「ふんっ。あんなメガネの話などしたくありません!」
「はいはい、じゃあそろそろ行こうか、キャスター。俺達は先に行くよ、暦」
そう言って、岸波はアリーナへと姿を消した。
「ふん、騒々しい狐じゃな。じゃが、見かけや雰囲気に騙されるなよ、我があるじ様。あの二人、できるぞ」
「わかった。それじゃ、僕達も行こうぜ、忍」
今日はここまでです
漫画を読んでいないので、白野の口調は適当になってしまいますが、勘弁してください
乙
何だかんだで今まで苦戦らしきもの無いから苦戦してほしい。
そもそもムーンセルが見たいのは最強のサーヴァントじゃなくて最強のマスターだしな。
>>335
ガヴェインの時に苦戦してんじゃん
演出の問題じゃね、今までで一番の苦戦とは言えさっくり終わったしさ
地味に一回戦から左腕もげてたしね
そもそも、extraって対サーヴァント戦の時っていくらギリギリで勝とうと、自分のサーヴァントはピンピンしてるしね
忍も暦も勝てないかも知れない、ってまで追い詰められてはないし。
>>339
忍は性格的に絶対諦めないし、暦も、忍が諦めない限り自分も諦めないって最初に誓っている。
すいません
阿良々木君にピンチが訪れないのは、>>の文才が無いからです。
なにぶん、ssは初めてなもんでして
それに、阿良々木君の諦めてるイメージが全然湧いてきません。
良くも悪くも諦め悪すぎますよ、彼
『五回戦のイベントは、相性クイズです。マスターであるお二人には、自分のサーヴァントについての質問が出題されるので、正しい解答をお答えください。一問につき正解するごとに1P。最終的にポイントが多い方を勝者とします。なお、サーヴァントの情報に関する質問もありますので、それらの情報もバトルに役立てて下さい』
そこは、まるでテレビでよく見るクイズ番組の中みたいだった。僕と忍、岸波とキャスターに、それぞれ台とクリップとペンが用意されていた。
「キャスター、もしかしてこれって……………」
「はい!私が桜さんに頼んでイベントの内容を変えてもらいました!」
「またそんな勝手なことを」
「だって、折角の機会だからご主人様がどれくらい私の事を理解して下さってるのか知りたかったし?。…………もし、あまりにも間違えが多い時は、わかってますよね?(ハート)」
「はいはい」
「どうする?忍」
「ん?なにがじゃ、我があるじ様よ」
「いや、今回のイベントって、わざと間違えて相手に情報を与えないっていうか選択もあるんんゃないか?」
もしも、忍の核心をつくような質問がされれば、その質問だけはあえて正解を言わないこともできるのだ。
「いや、必要ないじゃろう。どのみち、負ければ相手に全ての情報が渡ってしまうのじゃ。それでは本末転倒と言うもの。本気で勝ちに行くがよい、お前様よ」
「了解!」
『それでは、質問を行います。ちなみに、サーヴァントが口出しをした場合、次の質問の解答権を失いますので、気をつけてくださいね』
『それでは、第一問。自身のサーヴァントの真名をクリップに書いてお答えください』
「いきなりこれかよ」
最初っから真名って、これじゃあイベントが終わってる頃には、一体どれくらいの情報が渡っていることやら。
つーかこれ、クリップに書く必要あるか?
[キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード]
[玉藻の前]
ピンポーン ピンポーン
『はい、両者正解です。お二人とも1P獲得です』
「玉藻の前?何か、忍野に聞いたことがあるような………」
「やはりそうじゃったか」
なんだ、忍はもう相手の正体が掴めたのか?
「我があるじ様、気になるのは分かるが、今は勝負に集中せい」
「ああ、分かった」
忍の言う通りだな。今はこれに集中しないと。
「キスショット、キスショット。う?ん、どっかで聞いたことがあるような」
「意外だな、見たところ暦のサーヴァントは日本生まれじゃなさそうだけど。タマモが聞いたことあるほどに有名なのかな?」
「あっそうだ、確か刑部姫ちゃんが妖怪ネットでその怪異が噂になってるとかメールで言ってましたよ」
「……………あっそ」
「ですがこの話は後にしましょう、ご主人様。この調子で、バリバリ正解しちゃってくださいね(ハート)」
「それ恐いんだけど」
『それでは、第二問。サーヴァントの好物をお答えください』
おっ、これは楽勝だな。簡単簡単。
[ミスタードーナツ]
[いなり寿司]
ブッブー ピンポーン
『阿良々木さん不正解、岸波さん正解です。岸波さんに1P入ります』
「キャッ、さすがですご主人様」
「お前様よ、ミスタードーナツとはなんじゃ?」
「えっ!?………………………あっ!」
しまった、ウルトラミス!!この頃の忍ってまだミスタードーナツ食べたことないじゃん!
『続いて第三問。サーヴァントの目標をお答えください』
今度は大丈夫だよな。前にも散々言ってたし。
[打倒太陽]
[良妻]
ピンポーン ピンポーン
『お二人とも正解です。これで、阿良々木さんは2P。岸波さんは3Pとなりました』
「当然じゃな」
「良い調子ですよ、ご主人様」
「「そりゃ、あんだけ言われればね」」
『まだまだいきます、第四問。サーヴァントの年齢を答えてください。ただし、阿良々木さんは地上の本体の年齢でお願いします。今回は特別に、50年までの誤差を認めます』
50年って、とんでもないな。まあでも、英霊ともなればそれくらいにはなるのか?
とりあえず、忍は500歳ちょっととか言ってたから、無難にいくか。
「ジーーーーーーーーー」
「だから恐いって」
[550歳]
[22歳]
ピンポーン ブッブー
『阿良々木さん正解、岸波さん不正解です』
「もうっ、ご主人様ったらー。もっと真面目にやってくださいまし♪」
「いや、そんな嬉しそうに言われても……………」
「ちなみに、地上の忍って正確には何歳なんだ?」
「うむ。地上の儂は、正確には598歳じゃ」
「危なっ!」
なんだよ、無難にいったつもりなのに超ギリギリじゃん。
つーか、サバ読み過ぎだろ!
若作りすんな!
ざっくり600歳と言え!
『そろそろ終わりが見えてきました。第六問。サーヴァントの怪異としての分類をお答えください』
「えっ?」
なんだ?忍はともかく、キャスターの怪異としての分類って。あぁ、でも、あの耳や尻尾がなによりキャスターが人間ではない事を表しているのか。
「吸血鬼」
「稲荷明神」
ピンポーン ピンポーン
『お二人とも正解です』
「ああ、吸血鬼。なるほど、合点がいきました」
「よかった。じゃあ後で教えてくれ」
「稲荷明神って……………神様!?」
「別に臆する事はあるまい。怪異など、大半が神と言っても過言ではないぞ。儂も昔、神にスカウトされたことがあるしの」
「そういえば、そんなことも言ってたな」
『最終問題です。サーヴァントのスリーサイズをお答えください』
「「はっ?」」
「えっ!?ちょっとタンマ。桜さん、打ち合わせと違うじゃないですか!」
「……………タマモ、何を企んでいたの?」
「えっ…………………いや、何も企んでなんかいませんよ。ちょこーと言質をとろうとしただけと言うかー。でも、結局失敗しちゃったしー。タマモは何も悪くな…………ちょっと、何してるんですか?ご主人様」
「いや、だからスリーサイズを書こうかと」
「ストーップ!やめてくだしいましー」
「変なことしようとした罰だ」
「そんなー」
「僕、お前のスリーサイズなんて分かんないんだけど」
つーか普通、サーヴァントのスリーサイズなんて分かるやついんのか?
「なんじゃ、儂はてっきりお前様ならば、見ただけで幼女のスリーサイズくらい把握できるもんじゃと思っておったがの」
「そんな変態はこの世に存在しない!」
お前は一体僕を何者だと思ってるんだよ!
「まあ別に間違ってもよいわ。あちらのサーヴァントの正体はあるていど掴めたからの」
「そうなのか?じゃあお言葉に甘えて」
[B50/W48/H51]
[B86/W57/H84]
ブッブー ピンポーン
『阿良々木さん不正解、岸波さん正解です。よって、この勝負は岸波さんの勝ちとします』
「やりましたね、ご主人様♪。どうして私のスリーサイズを正確に把握してるのかは、後でじっくり聞くとして、とりあえずはマイルームに戻るとしましょう」
「うん。……………えっ?」
「まあいいや。じゃあね、暦。明日は良い勝負をしよう」
そう言って、岸波とキャスターはアリーナから去っていった。
「悪いな、忍」
「ふん、別によいわ。それにしても、あのスリーサイズはどうやって考えたんじゃ?」
「んっ?あれか?あれはお前くらいの年の幼女の平均スリーサイズを当てはめただけだけど。やっぱり、そう上手くはいかないな」
「カカッ。どうやら、少女の平均スリーサイズを知っておる変態なら、この世に存在しておるようじゃな。まあよい、儂らもマイルームに戻るとしよう。あのサーヴァント、キャスターだとなめてかかれば痛い目をみるぞ」
「へぇ、お前にそこまで言わせるなんて、よっぽどなんだな。わかった、じゃあさっさとマイルームに戻ろう」
九尾の狐とはわかってもさらにその奥の正体はわからないだろうな。
「玉藻の前。 日本の平安時代末期に、鳥羽上皇に仕えたと言われる絶世の美女であり、白面金毛九尾の狐が化けたものであるとも言われており、日本三大化生の一角じゃ」
日本三大化生って、随分と凄そうなのが出てきたな。
「あれ?けど、さっき岸波は稲荷明神とか言ってなかったか?」
正確にはクリップに書いてたんだけど。じゃああれは、僕達を騙す為の嘘か?いやでも、正解になってたってことは嘘ではないだろうし。
「うむ。今儂が語ったのはあくまでも通説じゃ。おそらく、あのサーヴァントは他の伝承をもとにしたサーヴァントなのじゃろう」
「他の伝承、ね。じゃあ忍、稲荷明神の方の伝承も教えてくれ」
「そうじゃの」
「ある時、人間に興味を持ってしまったアマテラスが、自らの一面を記憶を封印し人間に転生した。それが後に玉藻の前と呼ばれることになる少女じゃ。
少女は宮中に仕え、ただその身が『人間ではない』ことからそこを追われたのじゃ。
そして、最期は破魔の矢を胸に受け、その命を終えた」
「神でありながら人に憧れ、妖物として殺されたことになるの」
神でありながら、人に憧れ、魅せられた。
「まあ別おそらくは、その二つの説がごっちゃになっておるのじゃろう」
「ごっちゃって…………でも、忍。なんにしたって相手は怪異なんだろ?だったら、お前お得意のエナジードレインで一機に勝負がつくんじゃないのか?」
それこそ、今回の相手はアーチャーよりもよっぽど怪異らしいだろう。エナジードレインが使えれば、バトルを有利に運べるだろう。
「いや、それはちとキツいの」
「えっ、そうなのか?」
「うむ。不本意じゃが、今の儂では怪異としての格はあちらの方が上じゃ」
「もちろん、全盛期の儂ならばそれも可能かも知れんがの。そもそも、吸血鬼と九尾の狐では怪異の格はほぼ同等。それが神ともなればなおさらじゃ」
「そうか……………」
さすがは聖杯戦争の優勝者のサーヴァントと言ったところか。吸血鬼と同格って、それかなりトップレベルじゃないのか?
「じゃが、どうやらあのサーヴァントは儂と同じく力を制限されているようじゃな」
「そうなのか?」
「うむ。そもそも、怪異と呼ばれるものを英霊として召喚するという行為にそもそも無理があるしの」
「そうだよな。お前、間違っても英霊なんてがらじゃないよな」
レオくんの反英霊という認識も、おそらく本質を捉えてはいないだろう。
「じゃあさ、なにかキャスターの対策とかはないのか?」
相手が強力だと分かっている以上、対策を練る必要があるだろう。ただでさえ、今回も相手にこちらの情報が渡っているのだから。
「対策と言われてもの。正直、今回は事前に相手と戦っているわけでもないしの、特にこれと言ったものはないわ」
「おいおい、そんなんで大丈夫なのか?」
「まあ、基本的には筋力の高さを活かして力押しじゃな。それに、今回は最初から固有結界を使う必要もないしの。タイミングはお前様に任せる」
「ああ、了解した」
「それと、お前様よ。前回の戦いの感触からして、コードキャストは一度の戦いで何回ほど使えそうじゃ?」
「うーん。正直、二回が限度ってとこかな」
本当はもっとサバを読みたかったけど、それで僕が倒れて迷惑かけてもなんだしな。
「そうか、まあ充分じゃろう。では、今日はここらで休むとしよう。明日は狐狩りじゃ」
「分かった。お休み、忍」
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