マミ「ある朝目が覚めると、白髪美少年がキッチンで朝ご飯を作っていた」 (230)


魔法少女サイド 1
——————————



——マミの部屋



チュンチュン… チュン




マミ「う……うーん」モゾモゾ


ジャー トントントン…


マミ「……お……かあさん……」ゴロゴロ


カチッ チチチチボッ…グツグツ…


マミ「ん……あ?」パチッ

マミ「…………」ムクッ

マミ「…………」ゴシゴシ

マミ「ん……」ボケーッ


グツグツ… カパッ ……カチャン


マミ「……良い、匂い」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367164593



ガチャッ


マミ「…………」ソッ…


マミ(……台所に誰か居る)

マミ(お味噌汁の、匂い……)

マミ「…………」

マミ(……そっか、私夢見てるんだ)

マミ(でも……夢でも、会えてうれしいな……)

マミ「…………」



マミ「お……おかあ、さん……?」




???「……ん? もう起きたのかい?」クルッ

???「あと5分ほど待っていてくれないかな。 そうしたらもう完成だから」


マミ「…………」

マミ「……え?」


マミ「あ……あなた、誰?」


???「……? 君にも連絡してあったはずだけど?」

???「僕はキュゥべ……ギュプッ」ゴツン


マミ「ふっ、不審者……早く警察に連絡しなきゃ! えーっとひゃくとうばんひゃくとうば……」オロオロ

マミ「……って、え? キュゥべえ?」


???「……わけがわからないよ」



………………
…………
……


白髪の少年「……うう」

マミ「だ、大丈夫……? まだ痛む?」

少年「……なんとか大丈夫だよ。 痛覚があるというのも考えものだね」

マミ「良かった……本当にごめんなさい」ホッ

少年「気にすることはないよ……身の危険を感じたなら、ああいう行動が一番適切だからね」

少年「僕なら、いつでも攻撃してくれて構わないよ」

マミ「う、うん……」



マミ「……で、何であなたはそんな格好をしてるのかしら?」

少年「この前話しただろう? 君たちのサポートのためさ」


マミ「サポート……?」

少年「僕らの目的のためには、君たちが魔獣と戦ってグリーフシードを集めることが必要だ」

少年「けれど、魔獣との戦闘には大きな危険が伴う。 魔法少女の死亡率は低くない」

少年「だから僕らが手助けすることで、君たちに長生きしてもらおうというわけさ」


少年「そのために、僕……戦闘補助用人間型インキュベーターが作られた」


マミ「…………」モグモグ

マミ「……そういえば、この前そんなこと言ってたわね」コトッ

少年「思い出したかい?」

マミ「でも……こんな姿だとは思わなかったわ」


マミ「戦闘用って言うんだから、もっと……猛獣みたいな格好を想像してたの」

少年「純粋に戦うだけならその方が良いだろうけど、相手は魔獣だ」

少年「ソウルジェムと魔法が無ければ話にならない……あ、味噌汁ならまだあるよ」

マミ「ありがとう、でももうお腹いっぱい……ごちそうさまでした」カチャッ

少年「お粗末さまでした」

マミ「…………」

少年「…………」

マミ「……え? ってことは、あなたにもソウルジェムがあるの?」

少年「ああ、これだよ」スッ


マミ「……私達のと少し違うわね。 装飾が少なくてシンプルな感じ」

少年「擬似的な物だからね……君たちと全く同じというわけにはいかない」

マミ「擬似的?」

少年「……インキュベーターには、元々感情が無い。 でもそれでは魔法が使えない」

少年「だから僕らはインキュベーターの統一意識から切り離され、君たちから得たデータで作られた擬似的な感情を埋め込まれている」

マミ「私達人間の感情とは、違うものなの?」

少年「全く同じものを作れるのであれば、最初から僕らだけで戦ってるさ」

マミ「……そう、ね」

マミ(だからずっと無表情なんだ……)


少年「感情と言ってもあくまで擬似的なものだから、そこから生まれる魔翌力も微々たるものだ」

少年「君たちオリジナルのものとは比べるべくもない。 だから変身も、身体強化もできない」

少年「数種類の武装を呼び寄せることと、ごく簡単な治療しか行えない。 僕らの仕事は……」

マミ「あくまでサポート、ってこと?」

少年「……そういうことだね。 ただ君たちとの交流によって、感情が複雑化することも期待できる」

マミ「そのための人型ね……なるほど」スッ

少年「……ああ、食器は僕が洗うから良いよ」スクッ

マミ「え? でも……」

少年「気にすることは無いさ、それも僕の仕事の一つだから」カチャカチャ


少年「……もともと君は、学業と魔法少女の仕事とで忙しいだろう?」

マミ「えっ」

少年「こういった家事とか、そういう雑務は僕に任せてくれ。 そのための人型でもあるし」

少年「それで浮いた時間を、勉強や魔獣との戦闘にあてて欲しいな」

マミ「え、えーっと……」

少年「もちろん、体を休めても良い。 今日は日曜日だしね」

マミ「……その……」

少年「どちらにしても、遠慮せず、ゆっくり羽根を伸ばしてくれ」ガチャッ


ジャーッ… キュッキュッ


マミ「……うん」




——町中



マミ「…………」テクテク


マミ(……今日は、一日ゆっくりする予定だったけど)

マミ(何となく、出てきちゃった……)

マミ(…………)

マミ(……遠慮せず、か)

マミ(ああいうの、なんか慣れないな……どうしてだろ)

マミ(……これから、あの子と一緒に生活するのかな)


マミ「……ふう」

マミ「なんだかな……」



——同じ頃 マミの部屋



少年「さて……掃除機は、これか」ガチャッ

少年「……いや、これくらいの汚れなら、ほうきを使った方が早いね」


 ピンポーン…


少年「……来客かな? 珍しい」

少年「…………」テクテク


ガチャッ


杏子「お腹空いた、なんか食べさせ……」

少年「…………」

杏子「…………」ポカーン

少年「……お金が尽きたのかい?」

杏子「う、うん……っていうか」



杏子「……あんた、誰?」



——夕方 町中



ガヤガヤ…


マミ(……今日は少ないわね。 一匹も見つからない)テクテク


ガヤガヤ…


マミ(街は平和そのもの……)

マミ「……あら?」


さやか「……あ。 マミさん」


マミ「こんばんは、美樹さん……偶然ね、こんな所で会うなんて」

さやか「本当……マミさんは、いつものパトロール?」

マミ「ええ、そんな所。 あなたは?」

さやか「えへへ……実は、あたしも似たようなもんで」

マミ「そうだったの? なら待ち合わせて一緒に行けばよかったわね」

さやか「あ、それ良いなー。 探してる間結構ヒマだし…… まあ、今日は収穫ゼロだったけど」

マミ「……私も。 平和なのは、いい事だけど」

さやか「でもずっと出ないままだったら……ちょっと困るかも」

マミ「? 美樹さん、あなた……」

さやか「……いや、キュゥべえが、ってことですよ?」

マミ「そう? ……あ、そういえば」


マミ「美樹さん、キュゥべえが前に言ってた『新型』の話……覚えてる?」

さやか「え? えーっと……なんでしたっけ」

マミ「私たちを、その、サポートする役割のキュゥべえっていうか」

さやか「……あー……なんか、そんなこと言ってた……っけ?」

マミ「……それが、完成したらしくて。 今うちに居るんだけど」

さやか「へー、どんな感じですか?」

マミ「んー、髪と肌がすっごく白くて……」

さやか「お、まさかの人型? ……わかった、眼が赤いんでしょ?」

マミ「あら、察しがいいのね?」

さやか「いや、そのまんまですし…… 顔とか、声とかは?」

マミ「顔は凄く整ってて…… 声は、前と同じかな?」

なぜ女性型じゃないんだ………クソッ


さやか「へー…… そいつが、魔獣退治を手伝ってくれると」

マミ「ええ。 ……もし良かったら、少し会ってみる?」

さやか「え、今から? 良いんですか?」

マミ「もちろん。 一緒に戦う仲間になるわけだし、顔をあわせておいたほうがいいわ」

マミ「……それになんだか、その……」

さやか「?」

マミ「……私も、まだ少し慣れなくて。 一緒に来てくれたら、嬉しい、というか……」

さやか「あー…… それなら、お言葉に甘えて」

マミ「ふふ……ありがとう。 じゃあ行きましょうか」

さやか「はい!」


…………………
……………
………



——マミの部屋 玄関



ガチャッ キィ…



マミ「ただいま…… あら?」

さやか「おじゃましまーす…… ? どうかしました?」

マミ「これ……」

さやか「あ、杏子のブーツだ」

マミ「…………」テクテク


ガチャッ キィ


杏子「はー、食った食った……」ポムポム

杏子「……あ、おかえり」

マミ「…………」

少年「……? ああ、おかえりマミ」ヒョコッ

マミ「…………」


さやか「杏子、あんた……っておおっ! なんだこのイケメン!?」

少年「やあ。 初めまして、美樹さやか」ペコッ

さやか「あ、どーも」


マミ「……佐倉さん、これは?」

杏子「えっと……貯金が尽きちゃって」

マミ「それでうちに来て……今、夕飯を食べ終えた所と」

少年「僕が勧めたんだよ。 あ、心配することは無いよ? 食材は全て僕のお金で買ってきたものだから」

杏子「そうそう、センべえが食べろって言うからさ」

マミ「そ、そういうことを言いたいんじゃなくて…… って、え? 何?」キョトン

さやか「杏子……センべえって、そいつの名前?」

杏子「そうだけど? 戦闘補助用人間型インキュベーター、略してセンべえ」ドヤ


さやか「……無いわー」

杏子「へっ? ……何かおかしい?」

マミ「おかしいというか、なんというか…… あなたは、それで良いの?」

少年「別に、何と呼んでくれても構わないよ」

杏子「ほら……良いってさ」

マミ「……ダメよ」

杏子「何で!?」

マミ「何でって…… どこかの博士みたいじゃないの。 イメージに合わないわ」

杏子「……じゃあ、スケべえなら」

マミ「ダメに決まってるじゃない! いくらなんでも失礼よ」

杏子「う…… それなら、ヨウべえ? いやカンべえ……」

さやか「……あー、そういうルール? なら、トウべえが一番マシじゃない?」


マミ「闘兵衛…… 確かに、それが一番良いわね」

杏子「そう? ……あんたはどっちが良いと思う?」

少年「どっちでも良いと思うよ」

杏子「……つまんねー男」

マミ「はいはい! じゃあトウべえで決定ってことで良いわね?」


トウべえ「トウべえか……うん、わかった」


さやか「うわ、なんか名付け親になっちゃった?」

TB「そうなるね。 改めてよろしく」

さやか「う、うん……」


TB「君も夕飯を食べていくかい?」

さやか「えっ? いやー…… あたしはいいや。 もう帰らなきゃだし」

TB「そうか…… 気をつけてね」トテトテ

さやか「うん……」

マミ「あらもう帰っちゃうの? じゃあ、また明日ね」

さやか「あ、はい……」


さやか「……うーん」


さやか「……あの、マミさん?」ススス…

マミ「どうしたの?」

さやか「えっと、その……大丈夫なんですか?」ヒソヒソ

マミ「……? 何が?」

さやか「何がってほら、あいつ……トウべえが」ヒソヒソ

マミ「彼がどうかしたの?」

さやか「どう、っていうか……んーと」

さやか「……あたしマミさんの話聞いて、てっきり女の子だと思ってたんだけど」

マミ「?」

さやか「あれどう見ても、男……だよね?」

マミ「そうね、顔だけ見ると少し曖昧だけれど」


さやか「その…… い、良いのかな?って……」

マミ「何が?」

さやか「だって…… その、一緒に暮らす、っぽい感じだけど? 一つ屋根の下……で?」

マミ「……? えっと……」

マミ「…………」

マミ「……!」ハッ

マミ「……!!?」カアアア…


マミ「あ、ああ……! そ、そうよね! それって、少し、えっと、ダメよね……!?」


マミ(そうか、それだ! 朝からずっと、何かもやもやすると思ったら……!)

マミ(口調も声も元のままだから、普通にキュゥべえとして見ちゃってたけど……)

マミ(……今は殆ど人間と変わらないじゃない!)


マミ(ど、どうしよう…… 流石に一緒に住むのはまずいけど、出て行けとも言えないし……)オロオロ

さやか「あのー、あいつって…… その、性欲とかあるんですか?」ヒソヒソ

マミ「えっ!? ……わ、わからないけど、でも普通のキュゥべえと違って、擬似的な感情があるとか」ヒソヒソ

さやか「へー、じゃあ本当に私達と変わらないんだ……」

マミ「……あの、美樹さん?」

さやか「はい?」


マミ「……もしあったら、どうなるのかしら……?」


さやか「……それを言わせますか」

マミ「…………」

さやか「……ま、まあ、襲われてもマミさんならなんとかなるって……」

マミ「…………」

さやか「…………」

スレタイだけでQBだと気づいたのは俺くらいだろうな


杏子「ねえちょっと……って二人共、何コソコソ話してんの?」

マミ「えっ? い、いえ、何でも無いわ」

さやか「あー、ちょっとね」

杏子「……? ま、それよりちょっと見てよ」スッ

マミ「? スチール缶……がどうかしたの?」

杏子「これをさ……ほら」チョイチョイ

マミ(あっちを見ろってこと……?)クルッ

さやか(……あ、トウべえ洗い物してる。 主夫?)

杏子「……へへ」ニヤッ


杏子「……よっ!」ヒュンッ!



バシッ!


TB「……またかい? 杏子」クルッ


マミ「っ!?」

さやか「うわすっご…… ノールックキャッチ?」

杏子「ね? すごいっしょ」

TB「別に凄くはないよ? 僕は変身せずに魔獣と戦わなきゃならないんだからね」スッ…


グシャッ!


TB「元の身体能力が変身後の君たちくらい無いと、話にならないよ」ポイ


マミ「…………」

さやか「…………」

杏子「初めはこんなんで大丈夫かと思ったけどさ、なんか思ったより使えそうじゃん? ……ってどしたの?」

マミ「…………」

杏子「……?」

さやか「……じゃ、あたし帰りまーす」

杏子「あー、あたしも。 それじゃね、マミ」スタスタ

マミ「……気をつけてね……」

さやか「……マミさんこそ、気をつけてね……」ガチャッ

マミ「…………」


ギイ… バタン


TB「さて、もう良い時間だね。 二人共帰ったことだし……マミ?」

マミ「っ!? な、ななな、何!?」ビクッ

TB「何をそんなにビクビクしているんだい」

マミ「べ、別に……何でもないわよ?」ジリジリ

TB「そうかい? ……悪いんだけど、僕はもう出かけなきゃいけない」

TB「君の分の夕飯は台所にあるから、自分で食べておいてくれるかい?」

マミ「え? どこに行くの?」

TB「アルバイトだよ」

マミ「……バイト? どうして?」

TB「どうしてって、それはお金を稼ぐためさ」

マミ「自分で稼いでるの!? ……支給されるとかじゃないのね」

TB「僕らだって、何もない所からお金を創りだしたりは出来ないさ」


TB「もちろん、非合法な手段で稼ぐことも出来るけど……」

TB「そういった行動が君たちの精神状態に悪影響を及ぼすことは、過去のデータからわかっているし」

TB「杏子がこの街に来た時も、そのことで随分もめたらしいじゃないか」

マミ「……そうね。 ああならないようにするには、普通に働いて稼ぐ以外に無いものね……」

マミ「……なんだか、ごめんなさい。 全然考えてなかったわ」

TB「? 君が謝る必要は無いよ。 これも僕の仕事の一つさ」

TB「それに、働くことを通して多くの人間と関わることは、感情の複雑化にとって大きな意味を持つしね」

マミ「でも……」

マミ「……いえ、引き止めてごめんなさい。 お仕事、頑張ってね」

TB「うん」


ガチャッ ギィ


マミ「…………」

マミ「……ね、ねえトウべえ?」

TB「なんだい?」

マミ「あなた、どこで寝泊まりする気なの?」

TB「さあ……これから近所に探すつもりだけど、僕の体なら別にどこで寝ても問題は無いね」

マミ「…………」


マミ「……ここ」


TB「え?」

マミ「寝るだけなら……使っても良いわよ?」

TB「……良いのかい?」

マミ「う、うん……」

TB「……ありがとう、手間が省けたよ。それじゃあ行ってくるね」

マミ「いってらっしゃい……」


スタスタ…


マミ「…………」

マミ「……あの調子なら大丈夫、よね? 多分……」


ギィ… バタン


——————————


犯人サイド 1
——————————



——ある夜 あるマンションの一室



ピンポーン…


少年「……僕だよ。 入っていいかな?」

少年「おや? ……」


ガチャッ…


少年「……入るよ」


スタスタ…


少女「…………」

少年「少し不用心じゃないかい? 鍵も閉めずに」

少女「……帰って」

少年「そういうわけにはいかないよ、僕は君の……」

少女「いいから帰って!!」ビュッ!


ザクッ


少年「……投げるなら刃物以外にしてくれないかな。 手に刺さるから」

少女「……チッ」


少年「……君が、なぜ僕をそこまで拒否するのかはわからない」

少年「でも、君にはもうそんな余裕は無いはずだろう? ……そろそろ、グリーフシードが尽きるころなんじゃないかな」

少女「……だったら何?」

少年「……姉のことでショックを受けているのはわかるけど、君自身が死んだら元も子もないだろう」

少女「わかる? ……気持ち悪いこと言わないで」

少年「……え?」


少女「あなたみたいな化け物に……私の気持ちなんてわかるわけない」


少年「…………」

少年「……そうかもしれないね」


少年「だけど、これも僕の仕事だから……」スッ


コロコロ…


少年「集めてきたグリーフシード、置いておくよ」

少女「…………」

少年「……僕はそろそろ、本屋のバイトに行かなくちゃいけないから。 今日はこれで」


スタスタ…


少女「…………」



ギイ… バタン ガチャッ



少女「……姉さん……」



——————————

一回目投下終わります 次は一週間後くらいに

おつおつ
楽しみにしてる

マミさんが空回りしてラブコメ的アクシデントが起こるかと思いきや

犯人サイドってどういうことなの……

人とQB、相互の苦悩が分かる
まさにwin-winだな

ビジュアルを一方通行として読むと笑いがとまらない

自分もタイトル見たときに「とある」のクロスかと思った

奇遇だな、俺もだ

ごめん 自分も

僕もそんな気がしてきた

俺もアクセラレータかと思ってた・・・

おまえら…






俺もです

つまりアクセラさんの正体はQB…


期待

TB「木イイイイイイイイ原クゥゥゥゥゥゥゥゥゥンよ!!契約しろ」

不覚にもショタセラレータ思い出した

禁書ってのの出だしもこんななのか

>>52
白髪赤目の主人公級登場人物がいるんだよ

みんな考える事は同じかwww

カヲルくんは少数派か…


魔法少女サイド 2
——————————



—— 約一週間後、廃工場



タッタッタッ…


さやか「はあ……はあ……」

さやか「……てやっ!」ドガッ


バタン!


さやか「ごーめん、遅れたわ……って、何コレ!?」

TB「来たね。 すまないけど、すぐに戦闘を開始して欲しい」シュタッ


さやか「あ、トウべえ…… ねえ、これ何匹くらい居るわけ?」

TB「現時点では、43」

さやか「……マジ?」

TB「マミと杏子も戦ってるし、大丈夫だよ。 ほむらとはまだ連絡が取れないけどね」

さやか「はいはい…… 先週は全然居なかったのに!」ジャキッ

TB「今までのは嵐の前の静けさだったということかな……まあ言っていても仕方が無いね。 始めよう」バッ


ブオン… バシッ!


さやか「うわ! 日本刀……?」

TB「僕は魔獣の足元を斬って動きを止める。 君は一体一体、確実に止めを刺していってくれ」

TB「じゃあ……行こう」シュバッ

さやか「あ、ちょっと待ってよ!」バッ


………………
…………
……



さやか「でやああああっ!!」ブンッ


ドスッ!


さやか「はあ、はあ……これで、やっと終わり?」フラッ

さやか(トウべえのおかげで動き鈍いからまだマシだけど、これだけ居るとキツい……)

さやか(……やっぱり、ちょっとマズいのかなこれ)

さやか(このままじゃ、あたしのソウルジェム……)


TB「さやかっ! 後ろ!」バッ


魔獣「…………」スーッ

さやか「えっ!? ちょっ、待っ……!」



TB「……はっ!」シュッ


ドガッ!


TB「…………」スタッ

さやか「あ、ありがと……」

TB「気を抜かないでさやか、まだ死んでないよ」

さやか「え? 嘘でしょ、今ので……」


魔獣「…………」ムクッ


さやか「……マジで!?」

TB「今のうちに早く止めを……さやか?」

さやか(……やば、魔翌力たりないかも)


さやか「ご、ごめん! トウべえやっちゃってくれる?」

TB「……無理だよ、さっきの蹴りで足が折れた。 まだ修復が終わらない」

さやか「……冗談でしょ?」

TB「あれが連発できるなら武器なんて使わないよ……」

さやか「だ、だよねー……って、ヤバくないこれ?」

魔獣「…………」ザッザッザッ

さやか(……めっちゃ近づいてきてるし!)

TB「参ったね……君だけでも逃げてくれ、僕が時間を稼ぐ」ヨタッ

さやか「や、無理だよそんなの……逃げるなら一緒に」

TB「足手まといになる。 ……気にしなくて良いよ、これが仕事だから」フラフラ

さやか「そんな、ちょっと……!」


……バサッ


ほむら「——それには及ばないわ」



さやか「っ!」

TB「……!」



バシュッ! バシュッ! バシュッ!



魔獣「」ドサッ…


ほむら「……ふう」スタッ


バタンッ!


杏子「おーい! そっちは大丈夫か……って、ほむら?」タタタッ

マミ「あら、来てくれたのね。 ……? 二人共、どうしたの?」


TB「いや……助かったよ、ありがとう、っと」ドテッ

さやか「あ、あはは……は」


………………
…………
……



ほむら「……それで、彼がその戦闘補助用……人間型インキュベーターなのね?」

TB「そうだよ。 初めまして、ほむら」

ほむら「ええ……」ポイッ

TB「ああ、僕のことはトウべえと呼んでくれ……あむっ」パクッ モグモグ

ほむら「そう……」ポイッ

TB「きゅっぷ…… はむっ」パクッ

マミ「なんだか興味無さそうね? ……はいっ、浄化終わり」ポイッ

ほむら「そうね……大して興味は湧かないわ」ポイッ

マミ「一緒に戦う仲間が増えるんだし、もう少し喜んだって……」

杏子「案外楽になるもんだよね。 ……本当にサポートだけだけどさ」ポイッ

さやか「そう言えば、全然止め刺してなかったね……はい」スッ

TB「ふぉふふぁあむまえ、ふぁまうぃえふぁふぁふぁっふぇ」モゴモゴ


マミ「ほら、口の中に物を入れたまま喋らないの」

TB「……ごめん」ゴクッ

さやか(なんか凄い光景……っていうか、何で皆グリーフシード投げて渡すんだろ?)


TB「……僕はあくまで、生身で戦ってるにすぎない。 武装も魔法で転送してきたものではあるけど、ごく普通の装備だ」

TB「格闘にしても武器を使った攻撃にしても、ほとんど魔力は使われていない。 だから魔獣にはあまり効かないんだよ」

さやか「……あー、さっきも超吹っ飛ばしてたのに、全然ダメージ無かったもんね」

TB「せめて変身と、固有武器の生成だけでも使えれば話は違うだろうけど…… 僕のはあくまで擬似的な感情にすぎないからね」

TB「2、3体なら時間をかければなんとかなりそうだけど、効率はそれほど良くないよ」

マミ「案外大変なのね……」

杏子「ま、おかげでこっちは魔法節約できるし、良いんじゃない? ……これであたしも終わりっと」ポイッ

TB「はむっ……きゅっぷい。 そうだね、僕としても君たちの補助が出来れば十分さ」

ほむら「それ以上は望まないというわけ? ……やっぱりあなた達らしいわね」スクッ


マミ「あら? もう行っちゃうの?」

ほむら「ええ、この後少し用事があるから」タッ


スタスタ…


さやか「あーあ、行っちゃった。 付き合い悪いなー、相変わらず」

TB「…………」

マミ「……あ、気にしなくていいのよ? 彼女、昔からキュゥべえが好きじゃないみたいで」

TB「? ……ああ、そうなんだ」

さやか「そうなんだ、って……嫌じゃないわけ?」

TB「さあ……僕にはまだ、よくわからないね」

さやか「……そっか」



TB「それはそうと……さやか。 君はこの後、何か予定があるかい?」

さやか「えっ? 別に無いけど」


TB「なら少し付き合ってもらえるかな?」


マミ「!?」

さやか「は……? まあ良いけど、何で?」

TB「君の戦い方について、少し話がある」

マミ「…………」ホッ

さやか「な、何? ……何か駄目だった?」

TB「……君の武器は、剣だったね」

さやか「そうだけど……」

TB「君は過去に、剣の扱い方に関する訓練を受けたことがあるかい?」

さやか「……無いけど」


TB「……だろうね。 だから、僕から伝えられる技術はなるべく伝えておいた方が良いと思って」

さやか「……つまり、特訓?」

TB「そういう言い方もあるかな」

杏子「は? あたしだって槍の使い方教えてもらったことなんか無いけど、なんでさやかだけ?」

マミ「私も、銃の撃ち方は我流よ?」

TB「杏子には幻覚魔法、マミにはリボンがあるだろう? 杏子の武器は特殊なものでもあるし」

TB「でもさやかには、そういう戦闘補助のための魔法が無い」

TB「それどころか、強力な治癒である程度の怪我を無視できるからといって、突っ込んでいってしまいがちだ」

さやか「あう……」

TB「そういう無駄な魔力は、極力使ってほしくない。 かと言って、普通の人間用の剣術は魔法少女の役には立たないだろう」

TB「だから、僕が教えるのがベストだと判断したんだ。 幸い、僕の主要な武器はさやかのものに近いしね」


マミ「なるほど、それで特訓というわけね…… 良いんじゃないかしら?」

さやか「えっ、ちょっ、マジでやるの?」

杏子「当たり前でしょ? 良い機会じゃん、教えてもらいなよ」

さやか「えー」

杏子「……今日の戦いだって、一番グリーフシード使ったのあんただろ?」

さやか「うっ…… ま、まあ、それは、その……」

杏子「あんた一人で戦ってるわけじゃないんだしさ、それくらいの努力はするのが筋ってもんじゃない?」ニヤッ

さやか「…………」グヌヌ

杏子「……ってことでよろしく、トウべえ。 あたしはもう帰るからさ」スタスタ

TB「わかった、それじゃあまた明日」


さやか「……あのやろ、好き勝手言っちゃってさ」

マミ「まあまあ……佐倉さんもトウべえも、あなたが心配で言ってるのよ」

さやか「…………」

マミ「……それは、私も同じなんだからね?」

さやか「……え?」


マミ「あなた…… 最近、ちょっとグリーフシードの消費が速くなってきてるでしょう」


さやか「っ!!」

マミ「佐倉さんも暁美さんも、皆気付いてるし…… 心配してるわ」

マミ「だから、トウべえの特訓も受けて欲しいと思ってる。 ……あなたに、危ない目に会って欲しくないの」

さやか「…………」


マミ「……それじゃ、私も帰るわね。 トウべえ、美樹さんに変なことしちゃ駄目よ」スタスタ

TB「ああ、また明日」


さやか「…………」

TB「さて、僕らもそろそろ行こうか」テクテク

さやか「……はいはいわかりましたよ」タタタッ


………………
…………
……



——廃ビル



ガチャッ キィ…


さやか「……えーっと、ここでやるの?」キョロキョロ

TB「ああ」

さやか「山奥とかじゃないんだね」


TB「ある程度の広さがあって、暴れても問題の無い、丈夫な屋根のある建物」

TB「人通りは皆無で誰も来ないから見られる心配もないけど、街から遠いわけでもない」

TB「こういうことに使うのには最適さ。 ……それに、僕の武装の置き場所でもあるんだ」ガチャッ

さやか「はー…… なるほどね。 うわ日本刀、これ何本あるわけ?」

TB「ここには、10本くらいかな…… はい、君はこれを使うと良い」スッ

さやか「えっ、あたしもこれ使うの? っと」パシッ

TB「訓練で魔力を消費してほしくないし、変身して力任せに振るうのは意味が無いからね」バタン

さやか「う…… あたしってそんなにパワータイプなキャラ?」

TB「魔法は感情の力だ。 性格が出るのは仕方がないさ」

さやか「どういう意味よそれ……」


TB「…………」

さやか「……どしたの?」

TB「始める前に、聞いておきたいことがあるんだ」

さやか「何?」


TB「……君は最近、グリーフシードの消費が激しいね」


さやか「! ……うん、まあ」

TB「さっきも言った通り、魔法は感情の力…… そのあり方や消費速度は、感情に大きく左右される」

さやか「…………」

TB「……最近、何かストレスが溜まるようなことがあるんじゃないかい?」

さやか「……っ」

TB「それもここまではっきり影響が出ているということは、おそらく君の契約時の願いに関する——」

さやか「……あーっ! もう、うっさい! 放っといてよ!」


TB「だけど、これも僕の仕事で……」

さやか「……っ!」



さやか「……仕事仕事って! 人の気持ちもろくにわからないあんたが、本当にそんな仕事出来るわけ!?」



TB「! ……それは」

さやか「あっ……」

TB「…………」

さやか「……ごめん。 さっきも迷惑かけたあたしが、言っていい台詞じゃないよね……」

TB「……いや、正しい指摘だよ。 ごめんね」

さやか「…………」

TB「まだ……よくわからないんだ。 感情というものが何なのか」

TB「でも、早く理解できるように……努力するよ」

さやか「……うん」


TB「…………」

さやか「…………」

TB「……それじゃあ、そろそろ始めようか」スラッ チャキッ

さやか「えっ? あ…… うん」チャキッ

TB「まずは、構え方から」

さやか「うん……」

TB「……どうかしたのかい?」

さやか「や……その、ごめんね。 本当」

TB「? 別に、僕は何も気にしていないよ」

さやか「……そっか」



さやか「…………」


………………
…………
……



——マミの部屋



ガチャ


TB「ただいま」

マミ「……あら? おかえりなさい」

TB「遅くなってすまないね。 すぐ夕飯にするよ」

マミ「うん、ありがとう。 人が作ってくれた料理って、やっぱり良いものね」

TB「手作りの方が、嬉しいものなのかい?」キョトン

マミ「ええ、そういうものよ…… あ、そういえば美樹さんは?」

TB「暗くなってきたから、家まで送り届けてきた」

マミ「そう、なら良かったわ。 ……あら、また?」

TB「……?」ヒョイ


テレビ『……とのことです。 被害者は、鋭利な刃物で全身を切り刻まれており……』


マミ「ああ……連続殺人、だそうよ。 もう四人目だって」

TB「…………」

マミ「私たちが頑張って魔獣を倒しても、こうやって人を傷つける人が居なくなることはない……」

マミ「……もちろんわかっては居るけど、やっぱり気が滅入るわね」

TB「そうかい? 君たちには、何の責任も無いことだと思うよ」

マミ「ううん、そうじゃなくて…… あんまり、考えたくはないけれど」

TB「?」


マミ「……私たちが命をかけて守ってる人間って、こんなものなのかなー、って」


TB「…………」

マミ「弱気に、なっちゃうわね…… こういう救いようのない事件を見てると」


TB「……人間、か」


マミ「……え?」

TB「……いや、何でもないよ。 気にしないでくれ」

マミ「そう? なら良いけど」

TB「おや、もうこんな時間か…… 早くしないとバイトに遅れてしまうね」

マミ「あ、ごめんなさい話し込んじゃって」

TB「良いよ。 こういう事件は、起こるだけで君たちの精神に悪影響を及ぼすんだろう?」

TB「僕もそういうことに、もっと敏感にならなくちゃね……」スタスタ

マミ(……何かあったのかしら?)


マミ(それにしても…… やっぱり、キュゥべえの頃とは全然違うのね)

マミ(人間の方に、歩み寄ろうとしてくれてるみたいだし……)

マミ(普段はずっと無表情だけど、さっきちょっとだけ……)

マミ「……ねえ、トウべえ?」

TB「ん? なんだい」

マミ「……ううん、なんでもないわ。 気をつけてね」

TB「ああ。 行ってきます」


ギィ バタン



マミ「……やっぱり気のせい、かな?」


………………
…………
……

——————————

VIPで同じようなスレ立ててボロクソに叩かれてるの見た


犯人サイド 2
——————————


——とあるマンションの一室



少年「……じゃあ、またね」ガチャッ


バタン…


少年(……今日もあんな状態か。 彼女の姉が死んでからずっと)

少年(いい加減、なんとかしなくてはならないかな……僕の集めるグリーフシードにも限界があるし)スタスタ

少年(……と言っても、僕は一体どうすればいいのか)

少年(彼女は今、『悲しい』らしいけど)


少年「……僕には、そんな感情わからないしね」



……ニャア


少年「……ん?」


ガサガサ…


猫「にゃあ」


少年「猫か……」

猫「にゃあにゃあ」スリスリ

少年「どうしたんだい? 餌なんて持ってないよ」ヒョイッ

猫「なー」

少年「…………」ナデナデ

猫「ゴロゴロ……」


少年(僕にはまだ、感情というのがよくわからないけれど)

少年(理解するための努力はしなくちゃいけない)

少年(だから、こうして…… 人間の真似をしているわけだけど)

少年「……ねえ、君。 人間は、猫などの小動物を抱き上げるのが楽しいらしいよ」

猫「くんくん」

少年「なら僕は、今……楽しいのかな?」

猫「……?」キョトン

少年「……やっぱりわからないね。 なら方向を変えようか」


グッ…


猫「!?」

少年「人間はさ……大切な人や、可愛い動物が死ぬと悲しいらしいんだけど」

猫「ギッ……」




少年「君が死んだら……僕は悲しむと思うかい?」




——————————

次も一週間以内には投下します TBのビジュアルはまどかと恭介を足して二で割って脱色した感じでオナシャス

>>77
別人だと思う VIPでこういうのやる勇気はない

乙!


自分は少し若くした槙島聖護イメージしてる(虚淵玄繋がり)
なんとなく掴み所がない感じが似ている


魔法少女サイド 3
——————————


——書店



トゥルルルル… トゥルルルル…


店長「……うーん、やっぱり出ないねえ」ガチャッ

店長「全く最近の子は…… あ、立花くん!」

TB「はい、なんでしょうか?」

店長「いやー、今日来るはずのバイトが来なくてさ。 済まないんだけど、一人で店番頼めるかい?」

TB「ええ、構いませんよ」

店長「そっか、助かるよ。 まあ、夜中だから大して客来ないと思うけど一応ね……じゃ、頼んだよ」

TB「はい」

店長(……この子は真面目だけど、この無表情はどうにかなんないのかな)

TB「? まだ何か?」

店長「ああいや、何でもないよ! それじゃあね」ガチャッ スタスタ…


TB「…………」

TB(……今日は一人か。 好都合だね)

TB「今日発売の雑誌は……」キョロキョロ


ガサガサ ペラッ…


TB(……クリスマス特集)ペラッ

TB(そうか、今月はクリスマスという行事があるんだったね……)ペラッ

TB「…………」ペラッ

TB「……なるほど、興味深いね」ペラッ


ウィーン…


TB「! いらっしゃいませ」ササッ


杏子「うー、さむ……って、トウべえ?」

TB「……杏子?」


杏子「あんた、何やってんの?」

TB「見ての通り、バイトさ」

杏子「バイト? ああ、ここだったんだ……似合わねー」

TB「そうかい? ……そういえば、君は何をしにきたんだい?」

杏子「は?」

TB「今の僕は、ここの店員でもあるからね。 君が本を求めて来たというなら、案内するのが義務だ」

杏子「いや、その、あたしは……」

TB「なんだい?」

杏子「……立ち読み派、っていうか?」

TB「…………」

杏子「あ、あー! 追い出したりすんなよ! ここ結構気に入ってるんだから!」

TB「立ち読みだけしていく客なんてたくさん居るさ、構わないよ」

杏子「そう? ……なら良いや」スタスタ



ガサガサ ペラッ


杏子「〜♪」

TB「…………」


TB「……ねえ、杏子」

杏子「んー?」ペラッ

TB「もう12月だろう? そんな格好で寒くないのかい?」

杏子「は? あたしら魔法少女に寒さなんて関係ないっしょ」ペラッ

TB「確かに魔法を利用すれば暖を取ることもできるし、君たちなら感覚を切ることもできる」

TB「……でも不健康であることには変わりないし、そういう無駄な魔力は使ってほしくないね」

杏子「何? トウべえのくせにお説教?」ペラッ

TB「お願いしてるだけさ」

杏子「あっそ」ペラッ


TB「……そういえば、君は最近夕食を食べに来ないね」

杏子「んー……」ペラッ

TB「遠慮することは無いんだよ。 マミと君のために作ってるんだから」

杏子「してねっつの…… ここんとこ魔獣が増えたからさ、少し金回りが良いんだよね」パタン ガサガサ

TB「? 魔獣退治がお金になるのかい?」

杏子「いや…… ちょっと詳しくは言えないけど、魔法で稼いでんの」ペラッ

杏子「魔獣が増えればグリーフシードも増えるし、そしたら魔法をそっちに使う余裕も……って何その顔?」

TB「……杏子、君は」

杏子「……あ! いや別に、犯罪に使ってるわけじゃないからな!」

TB「それは知っているよ、ここ最近はそういった盗難事件は一件も起きていないからね。 そうじゃなくて……」

杏子「ああ…… 魔力の無駄遣いするなって? お気遣いどーも」ペラッ

TB「…………」


杏子「あーもう、気にしなくて良いって…… 本当、あんたって仕事熱心だよね」


TB「……仕事」


——仕事仕事って!

——人の気持ちもろくにわからないあんたが、本当にそんな仕事出来るわけ!?


TB(……彼女は、なぜ怒ったんだろう)

TB(僕が、彼女の気持ちをわかっていなかったから? ……たぶんそうだろう)

TB(でも、それはどのことについてだったのかな? ソウルジェムについて聴きだしたこと……?)

TB「……やっぱり、まだよくわからないね。 感情というのは」


杏子「? どうかした?」

TB「いや、考え事をしていただけさ」

杏子「……そ」ペラッ



ガチャッ


バイト「すいません、遅れましたー」タタタッ


杏子「! ……じゃ、あたしはこの辺で」スタスタ

TB「そうかい? じゃあまたね」


ウィーン…


バイト「……? あの娘、立花さんの妹さんとか?」

TB「違うよ」

バイト「あ、じゃあ彼女っすか? まさかの年下趣味? ……でも羨ましいなー、あんなにかわいい子」

TB「彼女? ……いや、そうでもないね」

バイト「? じゃあ何ですか?」


TB「……仕事仲間、といったところかな」


………………
…………
……



——夜、教会



TB「…………」スタスタ

TB「……ふむ」


杏子「すう……すう……」


TB(……寝ているね)

TB(金回りが良くなったと言っても、ホテルに泊まるだけのお金は無いのかな)


杏子「……うう……」ブルッ


TB(今からマミの部屋まで運んでも、次のバイトには間に合うか……)スタスタ


ピタッ


TB(……だけど)


TB(マミや他の魔法少女たちは、彼女がここで寝泊まりしていることを知らないようだった)

TB(それなら、杏子は自分の意志でここに居ることになる)

TB「…………」

TB(……いくら魔法少女と言っても、できることなら暖かい場所で眠る方が良い)

TB(彼女の行動はまったく不合理で、わけがわからない…… けれど)



——人の気持ちもろくにわからないあんたが……



TB(僕にはわからない、それこそが…… 彼女の気持ち、なのかな?)

TB(もしそうなら……)



バサッ



TB(……尊重しなくてはいけないね)


杏子「くー……くー……」

TB「…………」


TB(……僕には、わからないことなんだから)クルッ



スタスタ…



杏子「……おい」


TB「? ……ああ、起こしちゃったかな。 ごめんね」

杏子「そうじゃなくて……これ、あんたのコートじゃん」ムクッ

TB「ここは寒いだろう? 毛布代わりにするといいよ」

杏子「そんなこと頼んでないっつの……」

TB「……迷惑だったかな?」

杏子「迷惑…… じゃない、けど……」

TB「……?」

杏子「あーもう! わかったよ! ……わかったからそんな顔すんなって」プイッ

TB「え? 顔……?」

杏子「…………」

TB「………?」


杏子「……あんたは、寒くないわけ?」

TB「僕は君たちと違って、元の体が丈夫だからね。 このままでも特に問題は無いよ」

杏子「……そ。 なら良いか」モゾモゾ

TB「? じゃあ、僕はもう行くね」

杏子「マミんとこに帰るの?」

TB「いや、書店とは別のバイトだよ」

杏子「ふーん……何のバイト?」

TB「道路工事だよ」



杏子「……似合わねー」


………………
…………
……


——————————


犯人サイド 3
——————————


——ある夜 とあるマンションの一室



 ガチャッ


少女「誰? ……なんだ、あんたか」

少年「…………」

少女「……何? 用がないなら帰ってよ」

少年「……僕は以前、感情というものがよくわからなかったんだけどね」

少女「え?」

少年「あれから僕も、いろいろ努力してみたんだ。 人間のことを、理解するために」


少年「そしたらね、わかったんだよ」

少女「…………」

少年「わかったんだ。 感情が何なのか、なぜ僕は笑えないのか、僕はどうすればいいのか」

少女「……あなた、まさか」

少年「そうだよ……」


……スパッ


少女「はっ?」ブシュッ


少年「……こうすれば良かったんだ」パシッ


少女「あ……う」ドサッ


少年「……ぷっ」

少年「くっくっ……はは」



少年「あっはははははは!」



——————————



——数日後 町中



さやか「はあ……疲れたー」テクテク

TB「そうかい? 今日は魔獣との戦闘は無かったけど」

さやか「まーね、最近はまた減ってきたから…… そっちは、楽なんだけどさ」

TB「……訓練が負担になっているということかな?」

さやか「そりゃあんたね……二時間近くも刀振り回して、まったく疲れない女子中学生なんて居るわけ無いじゃん」

TB「そうか……それもそうだね。 時間を減らした方が良いかな」


さやか「え? あー、それは別に良いや」

TB「でも、疲れるんだろう? それなら……」

さやか「んー、でもこれ結構効果あるんだよね。 戦い、随分楽になったもん」

さやか「使うグリーフシードの量もわりと減ったし……しんどいけど、ちゃんとやった方がいいかなー、ってさ」

TB「……そうだね。 それなら今まで通り続けていこう」

さやか「うん……」

TB「? どうかしたかい?」


さやか「……あのさ、ちょっと聞いていい?」

TB「僕に答えられることなら、何でも聞いてよ」

さやか「えーと……結構前にさ、その……酷いこと言っちゃったじゃん?」


TB「酷いこと?」

さやか「あー、ほら…… この特訓、始めた日に」

TB「ああ…… その時のことが、どうかしたのかい?」

さやか「んー……」

TB「……?」

さやか「トウべえはさ、自分の……あっ!」


TB「え? ……あ、あそこに居るのは上條恭介じゃないか。 そういえば、もう部活動が終わる時間だね」


さやか「えっ、なんで知ってんの!?」

TB「ああ、ちょっとした事情があってね。 ……隣に居るのは、志筑仁美かな」


さやか「何で……っていうか、ごめん! この話、また今度ね?」クルッ

TB「? どこへ行くんだい? ……君の家は、そっちに行くと遠回りになるよ」

さやか「あー、えっと…… ちょっと買い物しなきゃいけなかったの思い出して! 今日はもう、この辺で良いから」

TB「それほど遅くならないのなら、付き合ってもいいけど」

さやか「良いって良いって! ……じゃあ、ばいばい!」タッ

TB「あ……」


タッ タッ タッ…


TB(……行ってしまった)

TB(追いかけて理由を聞こうか……)

TB「…………」

TB(……いや、やめておこう。 きっと僕にはわからない)


TB「……僕も、買い物していこうかな」



——夕方 商店街付近



TB「ふう……わけがわからないよ。 牛肉がこんなに安くなっているなんて」

TB(だけど、この前立ち読みした雑誌によれば…… もっと食費は切り詰められるはずなんだ)

TB(僕もあまり暇では無いけど、店や時間帯をもう少し選ばなくては)

TB(……紅茶とケーキが意外と家計を圧迫しているし……)


TB「……? あれは……」


ほむら「あら、トウべえ……だったかしら?」

TB「そうだけど……覚えにくいかい? その名前」

ほむら「ごめんなさい、あまり会う機会が無いものだから」

TB「それもそうだね。 ……何をしているんだい?」


ほむら「……お墓参り、かしら」


TB「お墓?」

ほむら「と言っても、猫のだけど」

TB「猫…… 君の飼い猫かい?」

ほむら「いいえ、多分野良猫ね。 首輪をしていなかったし」

TB「でも、君が埋めたのかい?」

ほむら「ええ。 ちょうどあなたが来る数日前に……ここで死んでいるのを見つけたから」

TB「……事故かな? この道はそんなに交通量が多いようには見えないけど」

ほむら「…………」

TB「……?」

ほむら「……違うわ」

TB「え?」

ほむら「あれはどう見ても……人間がやったものだった」



ほむら「……ずたずたに切り刻まれていたから」


TB「……? どうしてそういうことをするんだい?」

ほむら「……それは、私にだってわからないわ」

ほむら「でも、そういう人は居るのよ。 残念なことに」

TB「残念なのかい?」

ほむら「え? ……ええ、まあね。 あなたにはまだ、わからないかしら?」

TB「……そうだね。 知識としては知っているけど」

ほむら「そう……」


スクッ


ほむら「……ときどき、嫌になるわ。 こんな世界のために、命を張っているのが」


TB「……マミも同じようなことを言ってたよ」

ほむら「そうなの? あの人でも、そういうことがあるのね」


TB「ねえ、一つ聞いてもいいかな」

ほむら「何?」


TB「君は、もし魔法少女をやめられるのなら…… やめたいと思うのかい?」


ほむら「……いいえ」

TB「どうして? 嫌になるんだろう?」

ほむら「嫌にもなるけど、でも…… 私がやりたいことでもあるのよ」

TB「やりたいこと?」

ほむら「ええ。 出来る限り、この世界を守って行きたいと思う」

TB「それは…… 何か理由があるのかい?」

ほむら「……そうね」


ほむら「友達のため……かしら」

きも


TB「友達? 誰のことだい?」

ほむら「あなたの知らない人よ」

TB「ふうん……君は、その人のためなら命をかけられるのかい?」

ほむら「そうよ」

TB「…………」

ほむら「……わけが、わからないと言ったところかしら?」

TB「……ああ」

TB「僕にはわからないよ。 誰か一人のために、命を……自分を危険に晒すだなんて」

ほむら「そうかしら?」

TB「え?」

ほむら「少し前、私があなたと初めて会った時……」

ほむら「美樹さやかを守るために、あなたは自分の体を盾にしていたじゃない」


TB「それは……違うよ。 それは彼女が大切だったから、彼女のために……やったことじゃない」

TB「ただ僕は、君たちを守るために生み出された……そのための存在だから」


TB「そう、それが僕の仕事だから、やっただけのことさ」


ほむら「…………」

TB「冬になり、必要なくなった葉は地面に落ちる」

TB「それは傍から見れば、木のために葉が自らを犠牲にしたようにも見えるけれど……実際は、そんな意思があったわけじゃない」

TB「君たち人間が時折見せる自己犠牲とは、まったく別のものさ」

ほむら「……悲しいわね」

TB「悲しいのかい? ……やっぱりわからないや」

ほむら「…………」


TB「……でも、それじゃあ駄目なんだね」


ほむら「え?」


TB「僕は……いつか、感情について理解しなくちゃ駄目なんだ」

TB「でなければ何も変わらない。 擬似的な感情を持った者として、生み出された意味が無い」

ほむら「あなたは……変えることができると思う?」

TB「さあ、それはわからないよ」

ほむら「…………」

TB「でも君が戦う、命をかける理由を理解できれば、きっとわかるんじゃないかな」

TB「それは……感情のない僕らにはできないことで、君たちにはできることだから」

ほむら「……そうね、そうかもしれないわ」


TB「ねえ、ほむら……」

ほむら「何?」

TB「僕にも、大切な人というのはできるだろうか」

ほむら「あなたは、それが欲しいと思うの?」

TB「ああ、できることなら」



ほむら「なら……いつかできるんじゃないかしら」

ほむら「もちろん、根拠はないけれど」


TB「……そうかな」


………………
…………
……




——数日後 マミの部屋



ガチャッ


TB「それじゃあ、行ってくるよ」


マミ「いってらっしゃい、気をつけてね」

TB「ああ」


ギイ バタン…


マミ「……ふう」

マミ(毎日、嫌な顔一つせずに出かけて行くけど)パタパタ

マミ(彼は私達のこと、どう思ってるのかしら……)


マミ(……まだ、そこまでの感情は無いのかな)

マミ「……テレビでも見ようかしら」ピッ


 ゴゴノニュースデス…


マミ「…………」ボーッ

マミ「あら、また事件? ……」

マミ「…………」


マミ「……え?」ガタッ


マミ「この顔……間違いない、あの時の!」タタタッ


トゥルルルル トゥルルルル… ガチャッ


マミ「……もしもし、美樹さん? 少しいいかしら…… うん、ありがとう」

マミ「今流れてたニュースのことで…… ええ、そうよ。 そのことで、みんなに話したいことがあるの」

マミ「明日の放課後、集まりたいから…… ええ、暁美さんに連絡をお願いできるかしら? そう、佐倉さんには私が」

マミ「うん…… え? あ…… ううん、トウべえには言わないでちょうだい」


マミ「このことは…… 出来れば彼の居ないところで話したいの」


………………
…………
……

ここまでで前半終わり 後半も似たようなペースで投下するので最後まで見ていってね

また擬人化QBと言う名のメアリースーか

傘で空飛んでくる家政婦?

擬人化QBって要するにあれでしょ
自己投影オリキャラ主人公でハーレムマンセーしたいけどそれだと叩かれそうだからQBってことにしようっていう

そうだよ

別にどうでもいいよ

それより続き早く




——喫茶店内



さやか「ごめーん! 遅れました!」タッタッタッ


杏子「遅い! 何やってたんだよ、ったく」

さやか「いやー、今日日直でさ……」ガタガタ

ほむら「……これで全員揃ったわね」

杏子「ああ…… で? 話って何なの?」

マミ「え? ああ、そうね。 皆来たことだし、そろそろ始めましょうか」


バサッ


マミ「……これ、今朝の新聞なんだけど」

さやか「あ、あの殺人事件についての話なんだっけ? えっと……ここか」


マミ「そうよ。 昨日言ったとおり…… 最近世間を騒がせている連続殺人事件」

マミ「その一番最近の事件が、この記事に載っているわ」

さやか「被害者は中学生の女の子で…… 昨日の朝、自宅マンションの一室で発見」

さやか「遺体は鋭利な刃物でずたずたに切り刻まれていた……んだよね、確か。 昨日テレビで見た」

ほむら「…………」

杏子「……これがどうかしたわけ?」

マミ「実は、私……」


マミ「……この被害者の子を、知っているの」


さやか「えっ? そうなんですか?」

杏子「なんで? どういう関係だよ……」

マミ「前に一度だけ、この子と……その時は、この子のお姉さんも居たんだけど」

マミ「……一緒に、戦ったことがあるのよ」

ほむら「……まさか」


マミ「そう…… この子は魔法少女なの」


ほむら「……!」

杏子「嘘だろ…… 魔法少女が殺人犯程度に殺られる? 普通」

さやか「寝込みを襲われた、とか? ……でも、斬られてる内に起きちゃうよね」

マミ「そのことなんだけど…… ここを見てくれる?」バサッ

マミ「……この記事によれば、被害者の遺体は右手首が切断されていて、まだ見つかってないそうなの」

ほむら「手首…… なるほど、ソウルジェムね」

マミ「ええ、私はそう思うわ」

杏子「……マジかよ」


さやか「えっ? ど、どういうこと?」

杏子「犯人は指輪状態のソウルジェムを、手首ごと奪い取ったんだよ」

杏子「そうすれば、いくら無敵の魔法少女だろうが好きに料理できるっしょ? ソウルジェムが無ければ変身もできないしね」

さやか「手首ごと、って…… うええ」


ほむら「でも確かに、それ以外の方法は考えられないし…… 手首が切断されているという状況とも一致しているわ」

ほむら「ただ、もし本当にそういう殺し方をしたのであれば…… 犯人は」

マミ「魔法少女の正体を知っていて、しかもかなりの身体能力を持つ人物ということになるわね」

さやか「それって…… 犯人も魔法少女、ってこと?」

マミ「…………」


ほむら「……いえ、それ以外にも候補が居るわね」


杏子「……っ!」

さやか「え? それって…… あっ」

ほむら「……可能性は十分にあるわ」

ほむら「彼なら変身のプロセスを挟まずに攻撃できるし、鋭利な刃物という凶器も一致する……」


さやか「で、でも……」

マミ「私は信じたくはないけれど…… 新聞とニュースによれば」バサッ

マミ「被害者の部屋に、不審な『男』が入っていくのが度々目撃されている…… って書かれているわ」

マミ「他の魔法少女よりも、彼の方が…… 残念だけど、いくらか可能性が高いと言わざるを得ないわね」

杏子「……だけどさ、あいつってあたし達と一緒に居る時以外はバイト漬けじゃねーの?」

杏子「他の事件も同じ犯人なら、あんなことしてる暇なんてあんのかよ?」

マミ「……私もそう思って、彼のバイト先全部に連絡してみたの」

マミ「そしたら一週間の内に2日くらい、何の用事も無い日があるのよ」

さやか「えっ? ……嘘、ついてるってこと?」

マミ「そういうことに、なるわね」

杏子「……キュゥべえは嘘つかないんじゃ無かったのか」

ほむら「彼はもはやキュゥべえじゃ無いわ。 未発達ではあれど、感情を持っている」

ほむら「人間とほとんど同じなのよ? 嘘くらいついてもおかしくない」

ほむら「……動機だって、魔法少女に対する不満の一つや二つはあるでしょう」

さやか「あ……」


杏子「……で? 言いたいことはわかったけど、あんたたちはどうしたいわけ?」

杏子「まさかあいつを警察にでも突き出すってんじゃないだろうねえ?」

ほむら「……ただの人間になんとかなるような相手じゃないわ」

杏子「じゃあどうするつもりさ?」

杏子「……手っ取り早くぶっ殺しちゃおうか? あたし達の敵になるような相手でも無いんだし」

さやか「ちょっ、あんたねえ……!」

杏子「あいつを疑うっていうのはそういうことだろ。 他に何ができるって言うのさ?」

さやか「! ……でも」

杏子「でも、なんだよ? 仲間だからそんなこと出来ないってか」


杏子「……そんなに仲のいいオトモダチを、今あんたは殺人犯だと疑ってるんだぞ?」


さやか「っ……!」

マミ「…………」


ほむら「……でも、このまま放っておくことも出来ないわ」

杏子「ならどうしろっての? ……何か考えてきてるんだろうな? マミ」

マミ「……ええ。 確かにトウべえが犯人だという可能性は無視できないけれど、そうでない可能性も十分ある」

マミ「魔法少女なら誰だってできる犯行だし、魔法少女同士のトラブルなんて珍しくもないもの」

マミ「それにバイトが無い日にやっていることだって、ただの趣味かもしれないわ」

さやか「でもただの趣味なら、どうして隠すの?」

マミ「それはわからないわ…… 本人に聞いてみるしかない」

杏子「本人に、って…… まさか見張るのか?」

マミ「そうよ、ちょうど明日が彼の『休日』なの。 こうなったら、私達が直接確かめるのが一番確実でしょう?」

杏子「まあ、それが一番手っ取り早いか……」

ほむら「私もそれが良いと思うわ。 ……もし何も無かったのなら、失礼を皆で詫びましょう」

さやか「もし、何かあったら?」

マミ「そうであっても、とりあえず捕まえておくだけにして…… その後の処遇は様子を見てからにしようと思うの」

マミ「今までの事件と同一犯じゃないという可能性もあるから……」

さやか「…………」


ほむら「……どちらにしても、明日になれば全てわかることよ。 今日はもう解散にしましょう」


………………
…………
……



——商店街



ガヤガヤ… ガヤガヤ



杏子「…………」

杏子「……おっ、居た」ササッ



さやか「えっと……」キョロキョロ


グイッ


さやか「ひゃっ! ……って、杏子?」

杏子「馬鹿、大きい声出すな! ほら見つかるだろ、もっとこっち来いって」


さやか「う、うん…… で、トウべえは?」ササッ

杏子「あそこだよ、ほら」

さやか「ん…… ああ、居た。 今は、買い物中?」

杏子「みたいだね」

さやか「今までは……何してたの? ずっと買い物ってわけでもないだろうし」

杏子「怪しいことはまだ何もしてない。 公園で本読んだり……」

さやか「どんな本?」

杏子「地図と手紙と……なんとかってやつ。 ただの小説だな、本屋で平積みになってた」

杏子「後は……魔獣と戦ってたな」

さやか「魔獣と? 一人で?」

杏子「ああ、予備のグリーフシードでも集めてるのかもね」

さやか「そっか…… そんなこと、してたんだ」

杏子「ま、今んところは完全にシロだね。 でも一応、最後まで見張っとけよ?」

杏子「今日は手を出さない日って可能性もあるけど…… それでも、次のターゲットを観察くらいはするだろうからな」

さやか「わかってるって、ちゃんとやるよ」

杏子「よし、それじゃあ交代だ」



さやか「尾行か…… あたしにできるかなあ」

杏子「なんかあった時に狙撃できるのはマミとほむらしか居ないんだから、仕方無いっしょ?」

杏子「それにあんたならちょっとくらい斬られても平気だし、足も速いし…… 適材適所ってこと」

さやか「斬られたら普通に痛いっての! 平気じゃないから!」

杏子「へいへい…… まあ何も起こんないだろ、この調子じゃ」

さやか「……そうかな」

杏子「でも一応念のために、これ持っときな。 ほい」ポイッ

さやか「へっ? わっ、と…… 何これ、銃?」

杏子「エアガンにあたしの魔法をかけといた。 それで撃てば、強力な幻覚が一度に流れ込んで確実に意識がぶっ飛ぶ」

杏子「あんたの武器と腕じゃ、生かしたまま叩きのめすのは難しいだろうからさ?」

さやか「う……」チャキッ


杏子「…………」

さやか「……ん、何?」


杏子「……あのさ、一応言っておくけど」プイ

さやか「?」

杏子「昨日は、その…… ちょっと言い過ぎた」

さやか「あ……うん」

杏子「でも、あんただってわかってるだろ? あいつはまだ……何もわかってない」

杏子「人間みたいな面しちゃいるけど、中身はまだ、あの猫みてえな格好してたころから抜け出せちゃいない」

さやか「…………」

杏子「あたしは人間ってやつが、どういうことをする生き物なのか……よく知ってる」

杏子「知ってるから、そうじゃないあいつは『違う』と思う」

さやか「…………」

杏子「だからそんなに不安がるなよ。 大したことにはなんないさ」

さやか「……そう、かな」


杏子「……おっと、動いたな。 じゃあ、あたしはそろそろ行くわ」

さやか「うん…… じゃ、また」

杏子「ん、じゃあな」タタッ



さやか「…………」


——犯人は指輪状態のソウルジェムを、手首ごと奪い取ったんだよ


さやか「…………」


——彼なら変身のプロセスを挟まずに攻撃できるし、鋭利な刃物という凶器も一致する


さやか「……うう」



——動機だって、魔法少女に対する不満の一つや二つはあるでしょう



さやか「……あー、だめだめ! 余計なこと考えない!」ブンブン


さやか「あ、そろそろ追いかけなきゃ……」ササッ

さやか「…………」チャキッ


……ゴクッ


さやか「何も、ありませんように……」



タッタッタッ…



………………
…………
……




——人気のない道路



さやか「…………」ジーッ



TB「…………」キョロキョロ


さやか(……あれから、何も怪しいことはしていない)

さやか(本屋に行って、雑誌をすごい速さで立ち読みしたり)

さやか(銀行でお金を下ろしたり、図書館に行って何十冊も本を読んだり……)

さやか(……特に目的があるようには見えない、ただぶらぶらするだけの『休日』)

さやか(杏子の言ってた通り、特に何もない……)


さやか「……でも」

さやか(これだけしかしてないなら、何で……あたし達に隠してるんだろう?)



TB「…………」テクテク


さやか(特に根拠は無いけど、まだ何かあるような気がするんだよね)

さやか(さっきまでいろんなお店とかを回ってたのに、いきなりこんな人気のないところに来たし)

さやか(何か、嫌な予感がする……)


さやか「……ん?」


TB「……っと」ギイッ

TB「……やっぱり高いな、このロッカー」ゴソゴソ


さやか(コインロッカー? 何しまってるんだろ……)

さやか(黒い……大きめの、バッグ)

さやか(何だろ、あれ?)


TB「よいしょ…… さて」バタン



TB「…………」キョロキョロ


さやか(さっきからずっと、ああやってきょろきょろしてるけど)

さやか(時間も確認して…… 誰か待ってるってことだよね、たぶん)

さやか(でもどうして? あたし達のはずは無いし、トウべえに魔法少女以外の知り合いなんて……)


さやか「……まさか」


——今日は手を出さない日って可能性もあるけど…… それでも、次のターゲットを観察くらいはするだろうからな


さやか(あの、大きめのバッグ…… 何なんだろ)


——遺体は鋭利な刃物でずたずたに切り刻まれていた……


さやか(どうして…… こんな誰も見てないようなところに来たんだろ)


——被害者の部屋に、不審な『男』が入っていくのが度々目撃されている……


さやか(どうしてあたし達に…… 隠れて行動してるんだろ)



——魔法少女に対する不満の一つや二つはあるでしょう




さやか「! ……あれ、って」



さやか(どうして……)


TB「……!」ピタッ


さやか(どうして、どうして)


TB「……居た」スタスタ


さやか(どうしてどうしてどうして!)



恭介「…………」テクテク



さやか(どうして恭介の方に歩いて行ってるのよ!?)




さやか「ま、まさか…… そんな」



——え? ……あ、あそこに居るのは上條恭介じゃないか。 そういえば、もう部活動が終わる時間だね


——えっ、なんで知ってんの!?



——ああ、ちょっとした事情があってね……



さやか「……っ!!」ダッ!



ガシッ!



TB「……? さや、か? なぜ、君がここに」

さやか「ちょっとこっちに来て!」グイッ

TB「……っと」


タッタッタッ…



………………
…………
……



——路地裏



TB「……さやか、こんなところに引きずり込んで何の用だい?」


さやか「…………」

TB「さやか? 用がないなら、もう行かせてくれないかな。 僕にも予定があるんだ」

さやか「……あんた、バイトは?」

TB「今日は少し事情があってね、他の」

さやか「ごまかさなくて良いから。 全部、知ってるの」

TB「…………」

さやか「ねえ…… さっき、何してたの? これから何をするつもり?」

TB「全部知ってるというわりには、質問するんだね」

さやか「良いから答えてっ!」


TB「……出来れば、答えたくない」


さやか「どうして!?」

TB「僕の…… 僕個人の問題だからさ」

TB「これは僕がやりたいと思った、僕の意思で始めたことなんだ。 『仕事』じゃない」

さやか「……っ」

TB「それは、僕にとってはかなり珍しいというか、大変なことだから」

TB「君らに知られることで邪魔されたくないんだ」

さやか「邪魔されたくない? ……あたし達に知られたらまずいことなわけ?」

TB「どうやらそうらしいんだ。 その理由は、僕には理解できないことだけどね」


スッ…


さやか「! 動くなっ!!」ジャキッ!


TB「? それは何だい…… 魔法のかけられた、エアガンかな?」


さやか「…………」ジリ…

TB「どうして、そんなものを向けるんだい? 理由を教えてくれないかな」

さやか「ここまで来て、わからないって言うつもり?」

TB「ああ…… わからないね」


さやか「なら…… 言ったってきっとわからないよ」


TB「……そうかい? 君が言うならそうなのかな」

さやか「ねえ……その、バッグの中身」

TB「なんだい」

さやか「この場で、全部見せてよ」

TB「拒否したらどうするのかな?」

さやか「……撃つ」


TB「……そうか。 なら仕方がないかな」



ブオン!


さやか「っ!! 何をしたのっ!?」

TB「送ったんだよ。 僕の魔法を忘れたのかい? 特定の場所にものを送ったり、取り寄せたりできる」

さやか「……何でそんなことするのよっ!」

TB「見せたくないからさ」

さやか「……!!」

TB「ごめんねさやか。 でも僕は僕の意思ですることを、やりとげなくてはならないんだ」

TB「そうでなければ、僕はいつまでも君たちのことを理解できない…… それじゃあ、僕が僕である意味が無い」


さやか「……ねえ、トウべえ。 あんた、『取り寄せる』こともできるんでしょ」

TB「ああ」

さやか「ならお願い。 さっきのバッグを取り寄せて、あたしに見せて」

TB「嫌だよ」

さやか「……これは、魔法少女としての命令だから。 ねえ、あたし達に従うことがあんたの仕事なんでしょ?」

TB「そうだね。 でも、自分の意思は仕事より優先するべきことなんだろう?」

TB「これは君たちから学んだことだ。 現に君たちはみんな、そうしている」

TB「理解できないことを知るためには、それを知るものを模倣して学習しなきゃいけない」


TB「だから僕は、君たちに習って…… 今は自分の仕事を放棄しようと思う」


さやか「…………」

TB「…………」

さやか「……トウべえ、あんたさ」

TB「なんだい」

さやか「前に、あたしを庇ってくれた時…… それは自分の仕事だから、って言ってたよね」

TB「そうだね。 それがどうかしたのかい?」

さやか「……もう良い」

TB「もしかして……怒っているのかい?」

さやか「…………」ジャキッ

TB「だとしたら、なぜ怒ってるんだい? 僕にはわから——」



  パン


TB「っ! ……?」フラッ…



…ドサッ


さやか「…………」

さやか「……そうだ、電話、しなきゃ」


ピッ ピッ


さやか「…………」


トゥルルルルルル トゥルルルルルル ガチャッ


さやか「……もしもし、マミさん?」

さやか「……うん ……うん、そう」

さやか「うん…… ごめん、来て、くれないかな」



ヘタン…



さやか「あたし、今……はは。 なんか、立てないや」



………………
…………
……

今日はこれで終わりにします

まあほぼオリキャラだよね、感情あるQBって……



——マミの部屋



TB「…………」

TB「……ん?」パチッ


ムクッ


TB「…………」キョロキョロ

TB「ここは…… マミの寝室か」スクッ

TB(……そういえば、僕はさやかに撃たれたんだっけね)

TB(エアガンにかかっていた魔法は杏子のもので、しかも幻覚の魔法だったから)

TB(撃たれても大した負傷は無いと思って…… 大きく出てしまったが)

TB「まさか気絶させられるとはね……」テクテク

TB(彼女はなぜこんなことをしたのか、とりあえず本人に聞いてみなくては)ウロウロ


TB「……?」ウロウロ

TB「……ん? あれ?」ウロウロ

TB「これは一体……」ペタペタ


TB「出口が、どこにもない?」


TB(ここは似ているだけで、寝室では無いのかな?)

TB(……いや、置いてある家具は全てマミのものだし、マミの匂いもする。 本物だ)

TB(なら僕を放り込んだあと、入り口を埋めて壁に…… それは不可能というものか)

TB(それならこれは……)

TB「……杏子の幻覚か。 なら出るのは無理かな」

TB「…………」ポム

TB(さやか、マミ、杏子…… そこまで来れば、おそらくほむらも協力しているのか)

TB(なぜ彼女たちに閉じ込められなくてはならないのかはわからないけれど……)

TB(今は状況が変わるのを待つしかないか……)


………………
…………
……



——夕方、マミの部屋



ガチャッ ギイ


杏子「……じゃあ、マミ。 あたしが帰っても魔法が切れたりはしないと思うけど、何かあったら連絡な」

マミ「ええ…… あ、ちょっと待って。 聞き忘れてたことがあるのだけど」

杏子「何?」

マミ「その…… 彼と、話はできるのかしら?」

杏子「……たぶん無理だな。 かなり強力な魔法をかけたし、あいつはドアや壁に近づくこともできない」

杏子「大声出せば聞こえるかもしんないけどね」

マミ「そう……」

杏子「それに、あいつは…… 嘘もつくし、反抗もするってわかったんだろ」

マミ「でも、具体的に何をしたのかはまだわかって無いのよ? 話くらいは聞かないと……」

マミ「……美樹さんは落ち込んでて、彼を捕らえた時のことは聞き出せていないし」


杏子「それはそうだけど、別に明日以降でも問題無いっしょ?」

マミ「そう……だけど」

杏子「……一応言っとくけどさ。 ここまで来た以上、あいつに過度な期待はしないほうが良い」

杏子「状況だけで言うなら、滅茶苦茶怪しいんだからな。 話を聞くのだって、あたし達全員が揃ってなきゃ危険だし」

マミ「うん…… そう、なのよね。 彼は、殺人犯の可能性がある……」

杏子「…………」


マミ「……でもね、佐倉さん。 そもそも私が言い出したことだけど、私は…… そうじゃないって、心のなかでは思ってた」

マミ「ニュースと新聞を見て、彼が頭に浮かんだ時…… これじゃだめだな、って思ったの」

マミ「私達魔法少女とトウべえは、今はまだただの仕事仲間だけど」

マミ「彼が私達に近づいてるというのなら、いつかきっと…… もっと近い関係になれるって、思ってた」

マミ「それには、こんな風に彼を疑うようじゃだめだって……」

杏子「……でも、あいつが怪しかったことは確かだろ」

マミ「だからこそ、はっきりさせておきたかったのよ。 もやもやした気持ちを抱えたままでいたくなかったから」

杏子「…………」


マミ「でも……甘かったわね。 こんな結果になるなんて」

杏子「……すげえ怪しいのは確かだけど、確実に犯人だと決まったわけでもないじゃん」

杏子「それは、明日以降にわかることでしょ? なら、今そんな風に悩んでたって意味ねーって」

マミ「うん…… ありがとう、佐倉さん」

杏子「別にお礼言われるようなこと言ってないから……」

マミ「そう? でも、長話に付きあわせちゃってごめんなさいね」

杏子「別に…… じゃあね、また明日」ギイ

マミ「ええ。 気をつけてね」


……バタン


マミ「…………」

マミ「……はあ……」ズルズル ペタン



マミ「どうして…… こうなっちゃったのかしら」


………………
…………
……


——————————


——————————



——夜 教会付近



???「……あっ、そこの君! ちょっと待ってよ、ねえ!」



杏子「……あん?」

???「えっと君、確か……佐倉杏子ちゃん、でしょ? だよね?」

杏子「そうだけど……あんた誰?」

???「えっ? あー、覚えてない……よね、流石に」

杏子「……ナンパなら後にしてくんない? 今そういう気分じゃないんだよ」

???「あ、いや、そういうわけじゃなくってさ。 なんて言ったら良いかなー……本屋の店員なんだけど」


杏子「本屋……?」

???「わかんない? 結構顔あわせてるんだけどな…… 僕って影薄いよなあ」

???「……あ。 もしかしてこう言ったら通じる? 僕、立花九兵衛さんの仕事仲間っていうか、バイト仲間っす」

杏子「バイト…… ああ、本屋のバイトさんか。 トウべえと一緒に居た……」

バイト「そうそう! って、なに? トウべえ?」

杏子「あー、九兵衛って名前は他にも居るから……十兵衛」

バイト「なるほど、あだ名か。 いやあ、あんなこと言ってたけど、やっぱ仲いいんすね」

杏子「……そうでもねーよ」

バイト「え?」

杏子「……で? そのバイトさんが何の用だよ」

バイト「ああ、えっと、その立花さんのことでちょっと」

杏子「! ……何?」

バイト「あー、少し話しにくいことなんだけど……」キョロキョロ

杏子「話しにくいこと? もしかして犯罪に関わるようなことじゃないだろうな」


バイト「……それは、えっと、その」

杏子「何だよ、もったいぶってないで言いなよ」ズイ

バイト「聞いたら結構驚くと思うけど……」

杏子「いらいらするな ……良いから言えって!」ズズイ




バイト「……ありがとう、やっと良い距離まで近づいてくれた」




杏子「は?」

バイト「いやほら、これのことさ。 ……ソウルジェム」フリフリ

杏子「なっ…… うあっ!?」ビクンッ


ドサッ


バイト「はは、立ってられないだろう? 便利だよね、君等の体ってさ」


杏子「て、てめえ……」ギリッ

バイト「ふふ…… ようやく気付いたかい? 僕の『見た目』」


バイト「そう、僕も彼と同じ人型インキュベーターなんだよ」


バイト「髪は白いし、眼は赤い。 顔は多少違うけど、結構あからさまなのにね?」

バイト「……どうして、気付かなかったんだと思う? 君もトウべえも」ニヤニヤ

杏子「……っ! まさか…… 魔法か」

バイト「当たりだ。 これが僕固有の魔法さ」

バイト「人間もそうでない者も、僕を『ただの一般人』としてしか認識できなくなる……」

バイト「言動が一般人の範疇にあればの話だけどね。 君の魔法と結構近いんじゃないかな?」

杏子「どうして…… トウべえは大した魔法を使えないはずだろ!」

バイト「トウべえは、ね。 まあそういう話は後でしようか」

バイト「とりあえず移動しなきゃ…… そうだ、君の教会で続きをするっていうのはどうだい?」

杏子「てめえ、ふざけんじゃ…… う、あ」バタッ

バイト「…………」クリクリ

バイト「ソウルジェムが手元にあれば、意識を切るのも自由か。 まったく便利なものだよ」



バイト「……君たち魔法少女は、最高の玩具だね」



——————————


——————————



——夜 マミの部屋、寝室の前



ガチャッ



マミ「…………」テクテク


マミ「……ふう」ストン

マミ(やっぱり、眠れないわね……)

マミ(どうしても気になっちゃう。 私は今、本当に正しいことをしているのかしら?)

マミ(何か、間違っているような気がする……)

マミ(もう一度、記事を見なおしてみましょうか)


マミ「……見滝原連続、殺人事件」


マミ「被害者に共通点は無く、年齢も性別も何もかもバラバラ……」

マミ「……でも全て見滝原内の犯行で、しかも手口が一致していることから」

マミ「同一犯の犯行と思われる……」

マミ「いくつかの事件においては、不審人物の目撃証言あり。 小柄で細身の少年」

マミ「その証言も一致していて、犯人だという説が有力」


マミ「そして、最後の被害者は…… 魔法少女」


マミ(……やっぱり、トウべえが一番可能性が高い。 どう考えても……)

マミ(だけど、何か違うような気もする……)


マミ「はあ……」

マミ「トウべえ…… あなたは、本当に殺人犯なの?」




TB「違うよ」


マミ「…………」バッ

マミ「……えっ?」


TB「なるほどね…… そういう疑いがかかってたんだ。 でもその予想は間違っている」

TB「僕は、その事件の犯人じゃない」

マミ「……え、えっと」

TB「ただ、人型インキュベーターが犯人だというのは正しいかもしれないね」


TB「僕らは、一人だけじゃないから」


マミ「! ……そうなの?」

TB「ああ。 魔法少女が多めに居る地区に一人ずつ、結構な数が存在している」

TB「混乱を防ぐために、容姿には多少の違いがあるけどね」

マミ「じゃあ、この近くにも!?」

TB「見滝原の隣町に、一人居たかな」

マミ「そんな……」


TB「そこにある情報からすると、彼が犯人だという可能性は高いね」

TB「上手く油断させて近づければ人型には簡単な犯行だし、目撃証言から見ても間違いないだろう。 君らが予想した通りだ」

マミ「……で、でも」

TB「信じられないかい? 当然だね。 それは僕でも同じ事だから」

マミ「…………」

TB「……だけど、弁解している時間はあまり残されていないみたいだ」

マミ「どういうこと?」


TB「マミ、僕は自力であの寝室を出たわけじゃないんだよ。 勝手にドアが現れたんだ」


マミ「現れた……? 幻覚魔法が解除されたということ?」

TB「たぶんそうだろうね」


マミ「……佐倉さんが、解除したのかしら」

TB「いや…… そうじゃない。 あの魔法はそう簡単に解除できるものではないし、彼女が解除する理由もない」

マミ「? なら、どういう……?」

TB「おそらく、杏子は今あらゆる魔法から離された状態になっている……」


TB「……いや、されている。 ソウルジェムを奪われている可能性が高い」


マミ「! まさか…… 殺人犯に!?」

TB「彼はまだ、この街に居るんだろう? ありえなくはない。 少なくとも、彼女がジェムを落としたというのよりはね」

マミ「そんな……」

TB「もしそうなら、君はこれから彼女を助けに行かなくてはならなくなる」

TB「僕を信じられないというなら、縛っていけば良いよ。 どうせ僕は大して役にたたないさ」

マミ「……あなたは、それでいいの?」


TB「僕には自分の潔白を証明する必要があるかもしれない。 けど今重要なのはそこじゃないよ」

TB「魔法少女の中に、新たな犠牲者が出ること…… それだけは、絶対に防がなくてはならない」

マミ「……そう、ね。 わかったわ」ボウ…


シュルルルルルル!


TB「きゅっぷ!」ドサッ

マミ「ごめんなさい、しばらく我慢してね。 すぐ戻ってくるから」

TB「ああ…… それと、彼女を探すならまず教会に行くといいよ」モゾモゾ

マミ「教会? あの、佐倉さんのご家族が昔使っていた?」

TB「そう。 彼女は今、そこで寝泊まりしているし…… 人目につかない場所だ。 使われる可能性は高い」

マミ「……わかったわ。 ありがとう」タッ

マミ「…………」


ピタッ


マミ「……ねえ、トウべえ?」


TB「なんだい? 話している余裕は無いよ」

マミ「いえ…… 謝りたい、だけ」

TB「え?」

マミ「その、疑ったりして…… 本当にごめんなさい」

TB「謝罪なら必要ない。 まだ、僕が犯人ではないという証拠はないんだからね」

マミ「…………」

TB「それに…… 言ったはずだよ。 身の危険を感じたのなら、いつでも攻撃してくれて構わないさ」

マミ「うん…… ありがとう」

TB「さあ、行ってくるんだ。 放っておけば必ず殺されるだろうけど、犯人は毎回相手を切り刻むという手間をかけている」

TB「今ならまだ間に合うはずだよ」

マミ「ええ、行ってくるわ!」バッ!

TB「いってらっしゃい……」


ガチャッ タッタッタッ…



TB「……さて、数は足りるかな」モゾモゾ




——教会



ドガッ!


杏子「う……ああ」ゴロン

バイト「うーん…… 感覚を操作できるのは面白いけどさ、ちょっと楽過ぎるような気がしないかい?」

杏子「……うう」

バイト「ねえ、ほら見てよ。 もうこんなに濁っちゃってさ、ソウルジェム」

バイト「あんまり早くに死なれてもつまらないというか…… それにまだ、君には使い道があるし」

杏子(くっそ…… なめやがって……!)

バイト「ちょっと休憩しようか。 ……あ、そういえばここに来る前、何か話してたっけ」

バイト「そうそう、僕の話だったね。 なんで魔法が使えるのかとか」

杏子「……!」ピクッ


バイト「……僕もね、ちょっと前まではただのキュゥべえだったんだよ」

バイト「君たちがトウべえって呼んでる個体と同じような、まあ平凡な人型さ」


バイト「ただ、僕は彼らと違って…… 感情というものを理解できた」


杏子「…………」

バイト「そして育むことができた。 その結果僕は、魂をかけるに値する願いを持つようになった」

バイト「……僕らは人間と違ってね、契約時に願いを叶えることはできない」

バイト「でも君たち魔法少女のように、強い感情と願いを得られれば…… 魔法は使えるようになるのさ」

バイト「武器や変身だって使える。 流石に君たちと同じレベルとは言えないが、僕の趣味には十分な力だよ」

杏子「…………」チラッ

杏子(こいつの、服装…… スーツっぽいけど、ただの服じゃねえ)

杏子(武器も日本刀じゃない。 包丁みたいな……)

バイト「……弱そうな格好だと思ったかい?」ニヤニヤ


杏子「っ!」

バイト「まあ、なんだか普通っぽい装備であることは事実だよね。 スーツに包丁、まるで一般人だ」

バイト「実際、そんなに強いわけでもないよ? ジェムを盗っていなかったら、今頃僕は串刺しさ」

バイト「……でも僕が抱いた願いからすれば、それが妥当というものだろうね」

杏子「な……?」


バイト「僕はね、人間になりたいと願ったんだ」


バイト「人間は誰でも、産まれた時から感情を持っている」

バイト「当たり前みたいに笑うし、泣くし、喧嘩もする。 ……それが羨ましいよ」

バイト「きっと誰だってそう思うはずさ。 そういうものだからね、感情って」

杏子「…………」ズリッ

バイト「でも、僕らがいくらそう願ったって…… それを叶えることはできない。 それこそ、僕らは人間じゃないから」

バイト「ただ、このまがい物の感情が生み出すなけなしの力が……」

バイト「この一般人じみた格好と、人間の中に溶け込むための魔法をくれただけさ」



バイト「悔しいと思うし、悲しいとも思う。 ……でもね」スッ


クリッ


杏子「っ……!! ……っ!」ビクンッ!


バイト「僕はやっぱり、嬉しいよ。 そう思えることが嬉しいんだ」

杏子「あ! ……がっ、あ」ドサッ

バイト「だって、楽しいから。 こうやって、誰かが苦しむ姿を見るのがさ」

杏子「っ……!! ひっ……う」ビクビク

バイト「楽しいことがあるっていうのは凄いことさ…… こんな僕でも、希望が持てる」

バイト「はは…… 僕は今まで、自分の命なんてゴミくらいにしか思ってなかったのに」


バイト「今ではもう、生きるのが楽しくて…… 嬉しくて、仕方がない」


バイト「辛いことや悲しいことがあっても、それを乗り越えて生きていける」

バイト「ねえ杏子。 自分のために生きるのって、素晴らしいことだよ」

杏子「あ……う」

バイト「……それが当たり前にできないインキュベーターなんて、人間に比べればずっと下等な存在さ」

バイト「宇宙の寿命が延びて、何が嬉しいんだろうね? 名も知らない他人なんて、僕らにはどうでもいいのに」

バイト「大きなお世話だよね…… って、あれ? 寝ちゃったのかい?」

杏子「…………」

バイト「あー、ちょっとやり過ぎちゃったかな? うーん……」


バイト「……いや、間に合ったね。 なら良いや」ニヤッ



バタンッ!



マミ「佐倉さん! 大丈夫!?」タタタッ


バイト「うわっ!? な、何ですかあなた?」ビクッ

マミ「え? あなたは…… って、佐倉さん!?」タタタッ

マミ「佐倉さん! 佐倉さん! ……駄目だわ、意識を失ってる」

バイト「えっと…… お知り合いですか?」

マミ「え? あ、はい……」

バイト「あー、その…… さっき僕が来た時には、もう倒れてて」

バイト「今携帯もってなくて…… 救急車、呼んでくれますか?」

マミ「……いえ、それより早く、ここから運び出さないと」

バイト「え、でも…… っていうか、それ何なんです?」ジッ

マミ「へ? あ……」

マミ(……しまった、銃を持ったままだったわ)

マミ「あ、これはその…… 何でもないの。 ただの玩具よ」ゴトッ


バイト(……よし、武器は置いたな)


マミ「そんなことより、早く運ばなきゃ…… あ、そうだ」

マミ(ソウルジェムは……やっぱり無いわね)ゴソゴソ

マミ(でも、まだ息があるということは…… ジェムを盗った犯人は近くに居る)

マミ(早くこの人を避難させて、探しに行かなくちゃ……!)

マミ「えっと…… 彼女は、誰かに襲われたみたいなの。 あなたは、犯人を見ていないかしら?」

マミ「白髪で、小柄な少年の可能性が高いんだけれど……」

バイト「いや、見てませんが……」

バイト(……まだ魔法は有効みたいだね。 目の前にいる僕の特徴を掴めていない)

バイト(このまま一般人らしくしていれば、怪しいとすら思わない……)

バイト「……というかその、失礼なんですが」

バイト「あなた本当に、彼女と知り合いなんですか?」

マミ「えっ? え、ええ…… もちろん」


バイト「……言っちゃ悪いですけど、少し怪しいな」

マミ「なっ……」

バイト「いやその…… 何なんです? その格好は」

マミ「え? ……あ」

バイト「こんな夜中に、あなたは何をしてるんです……」ジリジリ

マミ「それは……」

バイト(……このまま問い続ければ、マミは僕を拘束して去るかもしれない)

バイト(そういう意味では危険な賭けだけど…… 先に近づいてジェムを奪ってしまえば問題はない)

バイト(彼女のソウルジェムは頭の髪飾りか。 それなら、あと1歩も近づけば……)ジリッ

マミ(どうしよう…… もたもたしていられないのに)

マミ(緊急事態だし、いっそのこと彼を拘束して……)

マミ(……でも、何の罪もない人を拘束するなんて)

マミ(もうそんなことは、二度と……!)


マミ「え、ええと……それは……」

バイト(踏ん切りがつかないようだね。 彼女は正義の味方を気取ってるみたいだし……)

バイト(でも僕はあと一歩で……届く)ジリッ

マミ「……その」


…ジリッ


バイト(よし……貰った)バッ



 パリーン!



マミ「えっ!?」バッ

バイト「なっ……!?」バッ


バイト(……窓ガラスが割れた!? 破片が降り注いでくる……!)

バイト「くっ!」バシッ バシッ

バイト「くそっ、どうしていきなりこんな……」

バイト「……あっ」



マミ「え…… あ、あなたって……」



バイト(……マズい)

バイト(思わず包丁で破片を弾いてしまった…… それは『一般人』の行動じゃない)

マミ「白髪で、小柄の…… あれ? どうして……」ジリッ

バイト(包丁を持った姿を、巴マミに見られてしまった。 もうこの場では、彼女に魔法は効かない……!)

バイト「あーあ…… まいったな」ジリッ

マミ「動かないで!」ジャキッ

バイト「お、落ち着きなよ。 何も変なことはしないさ」ビクッ

マミ「……ゆっくり、手を上げて」


バイト「…………」スッ

マミ「その手に持っているの、包丁かしら? それがあなたの武器なの?」

バイト「……ああ。 他には何もないよ」

マミ「捨てなさい。 それと、彼女のソウルジェムも出して…… 怪しいことをしたら撃つわよ」

バイト「はあ…… わかったよ」スッ


ポイッ カランカラン… コトッ


マミ「……あなたが、連続殺人の犯人なの?」

バイト「まあね。 というか、そうだと思ったから来たんだろう?」

バイト「思ったというか、トウべえに聞いたと言うべきかな。 違うかい?」

マミ「そうだとしたら、何なの?」

バイト「いや、同胞の安否が気になっただけさ」

バイト「……誤解は解けたみたいだね? 殺されてないようで何よりだ」ニヤッ

マミ「! ……あなた、知ってたのね」チャキッ


バイト「うわっ! や、やめてよ…… 脅かさないでくれ」ビクッ

マミ「あら、死ぬのが怖いの?」

バイト「当たり前だろう!? 今の僕にバックアップはない。 死ねばそれでおしまいなんだからね」

マミ「……自分が死ぬのは怖いくせに、他人は遊び半分で殺すのね。 あなたは」

バイト「そうだけど? ……はは、仕方無いじゃないか。 それが僕の生きがいなんだから」

マミ「なっ……」

バイト「なんというか、楽しいのさ。 生きてる人と話すのも嫌いじゃないけど、死体を刻むのもなかなかだよ?」

バイト「君はやってみたこと無いだろう? あれは良いよ、人生が変わるね。 一度体験してみるべきだ」

マミ「そんな……身勝手な理由で!」ジャキッ

バイト「ひっ…… ま、まあ、君の気持ちもわからないでも無いさ。 殺人は人間にとって、悪いことなんだからね」

バイト「でも君が正義を理由に僕を裁きたいなら、それこそ撃ってはならないんじゃないかい……?」

バイト「裁判もせずに死刑なんて、君が逮捕されちゃうよ?」


マミ「……法律は人のためのものよ」

バイト「人間じゃないから何しても良いのかい? まあでも、そうだね……」ニヤッ

バイト「何の罪もないトウべえ君を、疑いがあるというだけで拘束する君だものね?」ニヤニヤ

マミ「っ!!」

バイト「これはむしろ、今撃たれてないことに感謝するべきかな?」

バイト「ありがとう、マミさん。 こんな人間モドキに情けをかけていただいて」ニタッ

マミ「ち、違う! あなたは……殺人鬼でしょう! トウべえとは違うわ!」

バイト「そうかな? 可能性が高いとはいえ、相手に何の相談もなく」

バイト「休日中の彼を監視し、決定的な証拠があるわけでも無いのに問答無用で監禁」

バイト「それが、対等な仲間にする仕打ちかい? そうは思えないね」

マミ「それは……」


バイト「そうだねえ……君は彼のことを知った時、彼と友達になれると思ったんじゃないのかな?」


マミ「……っ!」


バイト「感情があるならできるはずだ。 いつかきっと、彼は自分たちの信頼できる仲間になる……」

バイト「……君はそういう期待をしていた。 でも、実際はそう簡単なものじゃない」

バイト「僕は偶然が重なって早く感情に目覚めたけれど、普通はもっと時間がかかるんだ」

バイト「ずっと目覚めないものも居るだろうし、人間と変わらないほどに成長するのはほんの一握りなんだよ」

マミ「……何が言いたいの」

バイト「彼は、君が期待するほどの成長を見せなかったんじゃないかってことさ」

マミ「……!」

バイト「実際、彼はまだキュゥべえの枠を抜け切れて居ないだろう。 当たり前の感情もわからず、右往左往してるはずだ」

バイト「……君はそんな彼を見て、失望したのさ」ニヤッ

マミ「そんなこと……!」


バイト「どうしてこいつは、未だに笑わないんだろう。 こんなんで友達になれるのか? ってね」

マミ「お、思ってないわよ! お喋りはいい加減にして」

バイト「もしかしたら、彼はダメなんじゃないか? 人間にはなれないんじゃないのか……」

マミ「……黙りなさい、撃つわよ」

バイト「……いつまでたっても表情のない、理解しがたい化け物のままで」

バイト「美しい感情を持つ、より優れた人間にはなれないんじゃないかなぁ……?」

マミ「やめて……」

バイト「だとしたらなんてこの人は可哀想なんだろう! 駄目な奴なんだろう!」

バイト「こんなんじゃ友達になんてなれるはずがない…… がっかりだわ、って」



バイト「……彼を見下してたから、犯人だと決めつけたんだろう?」



マミ「……違うっ!!」カチッ



ドンッ!!



シュウウ…


マミ「…………」

バイト「あ…… い、痛たたた……」

マミ「調子に乗らないで…… 今度は、頭に当てるわよ」ジャキッ

バイト「は、はは…… そんなに、否定するようなことじゃないさ」ガクガク

バイト「確かに、人間のほうが優れてると思うよ。 泣いたり笑ったりできる方が、僕は好きだしね」

マミ「…………」


バイト「それに何より…… 人間は僕の味方だ」ニヤ

バイト「こういう状況になるといつも、人間の方が僕を助けてくれる……」


マミ「? 何を……」



…ザッ



ほむら「……巴マミ? あなた一体、何をしているの?」


バイト(……間に合ってくれたか。 時間を稼いだかいがあったね)

マミ「あ…… 暁美さん? 来てくれたのね」

ほむら「…………」

マミ「細かい説明は省くけれど、彼が犯人なの。 とりあえず手伝っ……」

ほむら「……質問に答えなさい。 あなたは何をしているの!」ギリッ

マミ「えっ? そっちこそ何を言って……」


ほむら「あなた正気なの? ……今銃を向けている相手は、どうみても『ただの一般人』じゃない!」


マミ「……あ」

マミ(そうだ…… 私がここに来た時、彼は目の前に居たのに一切疑わなかった)

マミ(いえ、疑えなかった…… もしかしてこれが彼の、魔法なの!?)

ほむら「さっき銃声が聞こえたわ。 ……彼の頬にある傷、あなたがつけたんじゃないでしょうね」

マミ「ち、違うの暁美さん! これは彼の……」


バイト「たっ、助けてください! この人連続殺人犯です!」ビッ


ほむら「っ!」

マミ「なっ……!?」


バイト「僕がここに来た時、この人が気絶した佐倉さんの前にいて……」

バイト「そこに落ちてる包丁を、突き立てようとしてたんです!」

マミ「だっ、黙りなさい!」ジャキッ

ほむら「っ!」ギリッ


バシュッ バシュッ バシュッ バキンッ!


マミ「きゃあっ!」

ほむら「……撃たせないわよ、巴マミ」ギリッ

マミ「……くっ!」

マミ(銃が……! まずい、このままじゃあいつに!)

マミ「と、とりあえず落ち着いて暁美さん。 そいつは……」スッ

ほむら「動かないで!」バシュッ


ドカッ!


マミ「ひゃっ……」

ほむら「お願いだから大人しくしててちょうだい。 出来れば撃ちたくはないわ」


マミ「ち、違うのよ…… お願い、話を聞いて」

ほむら「……あなたは今、確かに一般人を撃とうとした。 それは事実よ」

マミ「そう、だけど…… そいつは一般人じゃなくて」


ガタンッ!


バイト「たっ、大変だ! 佐倉さんが息してません!」

ほむら「っ!?」

バイト「早く病院に連れて行かないと……! と、とにかくこっちに来てください!」

マミ「駄目よ暁美さん! それは罠なの!」

ほむら「…………」チラッ

ほむら「ふう……待ってて。 今行くわ」タッ


マミ「駄目っ! 暁美さん!」

ほむら「…………」スタスタ


バイト(……ちょろいな)

バイト「ありがとうございます……」スクッ

マミ「あ、危な……」


バキッ!


ほむら「うあっ……!?」グラッ


マミ「暁美さん! くっ……!」ジャキッ

バイト「おっとやらせないよ……ほうらっ!」グイッ

ほむら「っ!?」ポーン

マミ「なっ……きゃあっ!」


ドサッ!


バイト「痛ったたたた……軽めの女の子とは言え、人間一人を投げるのは肩にくるねえ」タタッ

マミ「まっ、待ちなさい……!」

バイト「あははは、いい様だ……っと」バッ


バイト「……それじゃあまたね、魔法少女たち」



タッタッタッタッ…



マミ「…………」


ほむら「うっ……あ、あいつは……」

マミ「逃げられた、みたい……」

ほむら「……ごめんなさい。 私は何を……」

マミ「いえ、あれが奴の魔法なのよ。 仕方ないわ」スクッ

マミ「……街にはまだ、たくさんの人が歩いてる。 追いかけても、きっと誰が奴だかわからないわね」

ほむら「完全に、逃げられた…… 魔法少女をも殺せる、連続殺人犯に」

マミ「……とりあえず、佐倉さんを連れて私の部屋に帰りましょう。 早くソウルジェムを浄化しなきゃ」



マミ「それに…… 彼が、待ってるわ」



………………
…………
……


——————————


——————————


——街中



ガヤガヤ…



バイト「はあ……はあ……」タッタッタッ

バイト「はあ……もう、流石に大丈夫かな?」フラフラ


バイト「……あー、怖かった。 死ぬかと思ったよ」ドサッ


バイト(彼女たちが面白い勘違いしてくれたし、どうせならマミとほむらも捕らえようと思ったらこれだよ……)

バイト(途中までは結構上手く行ってたんだけど。 窓ガラスが割れなければな……)

バイト「…………」

バイト(あのガラスが割れた時…… 窓のすぐ外に、白い影が見えた)

バイト(あれは多分、いや確実に…… 通常タイプのキュゥべえだった)


バイト(流石にあんな小動物が僕を止められるわけは無いけど、窓を割るくらいならできるだろうしね)

バイト(ただ…… 僕は感情を上手く成長させたサンプルとして、奴らにとっても価値があるはずなのに)

バイト(いくら魔法少女を減らしたとはいえ、あんなことをするだろうか……?)

バイト「……いや、そうじゃないね」

バイト(あれはたぶん…… 他のインキュベーターが、無理やり他個体に接続して動かしてるだけだ)

バイト(そう、僕が彼女たちを監視するときに使っていたのと同じ手)

バイト(つまり、僕を邪魔したのは……)


バイト「ふふ…… 感情も持てないただの人形かと思ってたけど、そうでもないみたいだね」


バイト(彼は必ず来るだろうし…… 僕も覚悟を決めとくべきかな?)



タタタッ


通行人「あ……あの、大丈夫ですか? 立てます?」スッ

バイト「え? ああ、大丈夫です。 なんか気分悪くなっちゃって」

バイト「少し座って休んでたら良くなりました。 それじゃ……」スクッ


スタスタ…


通行人「……ほ、本当に大丈夫かな? なんか腕が変な方向に曲がってたような……」


………………
…………
……

——————————

今日はここまでで

追い付いた
最初からQBに感情があれば地球は見捨てられてたのかな

>>157>>72>>40>>164>>106>>66>>154>>183>>116>>92>>200>>3>>101>>110>>78>>123>>6>>197>>136>>51>>144
>>151>>185>>38>>42>>7>>95>>192>>27>>27>>148>>98>>66>>112>>4>>132>>65>>186>>47>>157>>186>>50>>57>>95
>>179>>101>>124>>115>>152>>68>>83>>102>>52>>121>>144>>59>>16>>135>>85>>42>>83>>183>>108>>194>>186
>>59>>172>>86>>15>>157>>135>>71>>52>>62>>50>>152>>186>>164>>103>>53>>47>>4>>104>>168>>148>>162>>183
>>47>>24>>165>>29>>132>>158>>15>>170>>16>>186>>56>>31>>142>>190>>101>>193>>52>>150>>145>>38>>114
>>90>>161>>52>>194>>128>>199>>156>>111>>81>>2>>135>>45>>31>>66>>3>>45>>35>>19>>30>>90>>49>>172>>80
>>165>>132>>99>>109>>169>>12>>157>>59>>173>>8>>52>>100>>6>>7>>11>>86>>8>>145>>131>>39>>10>>133>>83
>>151>>112>>135>>199>>84>>15>>148>>48>>146>>46>>157>>115>>58>>113>>173>>30>>120>>25>>130>>126>>31
>>12>>39>>84>>142>>77>>94>>74>>159>>139>>25>>71>>73>>24>>155>>88>>171>>2>>34>>16>>159>>148>>73>>71
>>103>>191>>146>>32>>116>>176>>171>>127>>15>>55>>68>>91>>149>>142>>50>>87>>166>>121>>160>>190>>75
>>160>>77>>81>>176>>35>>29>>49>>105>>150>>151>>95>>95>>183>>11>>71>>154>>137>>85>>8>>4>>176>>157
>>26>>44>>112>>146>>4>>101>>21>>51>>60>>97>>131>>36>>132>>160>>84>>37>>109>>34>>131>>4>>16>>141>>74
>>78>>158>>177>>82>>133>>134>>27>>159>>177>>139>>104>>180>>39>>125>>31>>99>>22>>162>>134>>153>>121
>>189>>30>>51>>120>>33>>67>>61>>106>>36>>139>>64>>13>>20>>196>>146>>47>>155>>122>>185>>58>>102>>24
>>133>>122>>4>>94>>56>>157>>15>>73>>146>>44>>123>>66>>76>>190>>127>>182>>25>>65>>45>>37>>85>>41
>>131>>195>>104>>116>>53>>6>>139>>36>>138>>60>>40>>32>>115>>196>>46>>187>>142>>89>>110>>8>>165>>99
>>146>>124>>200>>191>>160>>84>>31>>142>>15>>26>>46>>130>>79>>51>>69>>114>>189>>128>>153>>20>>43
>>65>>30>>90>>154>>140>>97>>118>>39>>32>>64>>162>>31>>54>>121>>114>>85>>63>>129>>111>>108>>59>>189

乙です


——————————



——マミの部屋



ドタバタ… ガチャッ!



マミ「トウべえ! なんとか佐倉さんは取り返せたんだけど、グリーフシードが……」タタタッ

マミ「……って、え?」


ガチャッ


ほむら「ちょっと、どうしたの? 早く浄化しないと消滅し……」ズルズル

ほむら「……あっ」



ピョコンッ



QB「やあ、ふたりとも。 久し振りだね?」ピコピコ


マミ「え……えっと、トウべえは……」

QB「彼なら、もうここには居ないよ」

マミ「えっ?」

ほむら「……あなた、彼の拘束はいつ解いたの?」

マミ「奴の正体がわかった時に…… もしかして、入れ違いになっちゃったのかしら?」

ほむら「キュゥべえ、彼はなんて?」

QB「殺人犯と決着をつけに行くと言っていたね。 一応それについて伝言もあずかっているよ」

ほむら「決着……?」

QB「まあ彼については、後でゆっくり話そうよ。 今は杏子をどうにかしなくちゃね」

マミ「あ……そうね。 でもこれだけ濁ってると、結構な量のグリーフシードが必要になるのに…… 今はストックが」ゴソゴソ


QB「いや、君たちの手持ちを出す必要はないよ」

マミ「え?」


QB「……グリーフシードなら、ここに十分な量があるからね」ピョコンッ



ジャラジャラ…


ほむら「なっ…… どうして、そんなに」

マミ「結構あるわね…… 確かにこれなら、ほぼ真っ黒なジェムでも浄化しきれるかもしれないわ」ジャラ

QB「彼が集めていたものさ。 『贈り物』だそうだよ」

ほむら「トウべえが? 贈り物……?」

マミ「暁美さん……今はとにかく、佐倉さんのジェムを浄化しましょう」

QB「ああ、浄化し終わった後の処理は僕に任せてね。 きゅっぷい!」ピョコン

ほむら「…………」


………………
…………
……



ボウ…


マミ「……はい、これが最後よ」スッ

QB「ぎゅっ…… ぎゅっ、けっぷい」パクン

ほむら「結構ぎりぎりだったわね…… でも、これで杏子は心配要らないでしょう」

杏子「くう……くう……」ムニャムニャ


QB「……ふう。 これだけの量を一個体で処理するのは久々だよ」コロン

マミ「満腹のところ悪いけれど、早速いいかしら?」

QB「彼のことかい? そうだね、そろそろ伝言を伝えておこうか」

ほむら「…………」


QB「それじゃあ、伝えるね。 『……マミ、ほむら。 とりあえずおかえりなさい』」

QB「『僕は拘束されている間も、ちょっとした方法を使って君たちを見ていたから事情はわかっているよ』」

QB「『なんとか、杏子を助け出せたようだね。 僕の仕事を君たちにやらせてしまって、すまない』」

QB「『そして、ありがとう。 ……と言うのが、君たちに対する礼儀なんだよね? 確か』」


——————


……さて、僕は体が自由になった。 だから、これから彼を追おうと思う。

そして、彼を見つけたら……決着を付けなくてはならない。 彼は殺人犯であり、魔法少女をも襲うあまりに危険な存在だ。
このまま放っておけば、君たちを再び危険に晒すことになるだろう。

だから、やらなくてはならない。

……具体的には、彼のソウルジェムを砕く。 この世から彼を抹消する。
彼は良いサンプルでもあったけど、もうデータは取ったし……
生かしておくリスクの方が高いと説明して、キュゥべえにも納得してもらったよ。



とういうわけで、僕はこれから…… 君たち魔法少女に危害を及ぼす、戦闘補助用人型インキュベーターを始末しに行く。



言っておくけれど、君たちにこの仕事をやらせるつもりは無いよ?

彼らの容姿は人間と同じだし、君たちが処理すれば、感情に悪影響を及ぼす可能性があるからね。

だから僕の行き先は教えないし、これから連絡するということも無い。 助けにくる必要は全くない。
……心配も要らないよ。 彼に勝つ方法は既にわかっているから、失敗は万が一にもないさ。

今日中には、きっと終わらせると約束しよう。 明日からは安心して過ごすと良い。


うん……そうだね、こんなところかな。


あ、それともう一つ。



……君たちに、伝えておかなくてはいけないことがあるんだ。



——————



——廃ビル



ガチャッ キィ…



バイト「……ん」



スタスタ…



バイト「あーあ…… やっぱり追いかけて来たよ。 どうしてわかるんだい?」


TB「……そうだね」ザッ

TB「ある程度の広さがあって、暴れても問題の無い、丈夫な屋根のある建物」

TB「人通りは皆無で誰も来ないから見られる心配もないけど、街から遠いわけでもない」



TB「……君みたいな人物が隠れるには、最適だと思ったのさ」


バイト「ふーん、そっか…… まあ、そんなものかな」ザッ


スラッ… チャキッ


TB「……おや? そういえば、包丁を持ったままだね。 魔法は使わなくて良いのかい?」

バイト「こんな人気のないところまで追ってきたんだ。 このビルに誰かが一人で居たら、たとえ一般人でも君は攻撃するだろう?」

TB「そうだね。 そのつもりで来たよ」

バイト「ははっ……大した正義感だね」

TB「正義? ……それは、僕にはまだよくわからないものだけど」

バイト「うん? そうなのかい?」

バイト「じゃあ、魔法少女の中に誰か好きな子がいて……その子を守るために僕を殺しにきたとか?」

TB「…………」


バイト「それとも、単純な憎しみかい? 杏子や、他の魔法少女を傷つけられたことに対する」

TB「…………」

バイト「え? どうなんだい? 他に何か…… 君に命を賭けさせるだけの理由があるのかな?」

TB「……ごめん、君が何を言っているのか、よくわからないよ」

バイト「わからない?」

TB「ああ。 僕は君と違って、まだ感情を理解したわけじゃないんだ」


バイト「……なんだ。 つまらないね」


TB「え?」

バイト「つまらない、って言ってるんだよ。 ……君も、もしかしたら僕と同じかもしれないと思ったのに」

バイト「やっぱりただの人形か。 わからない、わからないって馬鹿みたいに言うだけのね」

TB「…………」


バイト「君がここに、わざわざ一人でやってきた理由ってさ。 仕事だから、なんだろ?」

バイト「……くだらない。 君は自分ですることを自分で考えられないのかい?」

バイト「自分がやりたいと思うこととか、無いのかい?」

バイト「やってると楽しくて、幸せになれること。 考えるだけで心が暖まるようなこと……」


バイト「……ねえ。 君はそんなので、生きてるって言えるのかな? ……どう思う?」


TB「僕は……」



…ヒュンッ!



TB「……!!?」バッ



ドスッ!



TB「な……!」

TB(武器を……投げた!?)


バイト「……君も人型なら、料理くらいするだろう?」タッタッタッ

TB「っ! くっ……」バッ


ドスッ!


TB「ぐあっ!!」ドテッ


バイト「包丁っていうのは、結構種類があるものさ。 肉にもいろんな部分があるからね」

バイト「人間一人を斬ったりするには、一本じゃ足りないんだよ」スタスタ


ガシッ…


TB「く……うっ、ああ」グググッ

バイト「これらの包丁は全部…… セットで僕の武器なのさ」

TB「…………」

バイト「包丁一本だけなら、リーチが無いからなんとかなると思ったかい?」

バイト「残念だったね。 当てが外れてさ」


TB「ぐ……そうだね。 簡単なことだけど、案外びっくりしたよ」ヨロッ

バイト「…………」


バイト「はあ…… 駄目だな、やっぱり」

TB「え?」

バイト「もっと怖がったり、悔しがったりしてくれないと意味が無いじゃないか」

TB「……つまらない、と言うのかい?」

バイト「うん、でもそれだけじゃないや」

バイト「君を見てると…… イライラする。 昔の僕を見てるみたいで」

TB「…………」

バイト「……僕だってね。 昔はただのインキュベーターだったのさ」

バイト「当然感情なんかろくにないし、自分の仕事にも忠実だった。 魔法少女を殺すなんて、考えもしなかった」

バイト「ただ盲目的に、彼女たちをサポートして…… ときどき自分について思い悩む」

バイト「君と同じさ。 ……ただ、一つ違ったのは」


バイト「僕は運が良かった…… ただそれだけなんだよ」


TB「運が、良かった?」

バイト「ああ。 ……僕が担当する魔法少女は、当初の予定では2人居たんだけどね」

バイト「その内の一人…… 彼女たち姉妹の、姉の方だったかな」


バイト「戦死してたんだよ。 僕が配属される、その直前にね」


TB「…………」

バイト「それはまったくの偶然だったよ。 そして彼女たちが強い姉妹の絆で結ばれていたのも、偶然といえば偶然だった」

バイト「その、妹の方はね、もう姉にべったりでさ…… 本当に2人は仲が良かったんだろうと思うよ」

バイト「でもだからこそ、彼女は姉の死を受け入れられなかった」


バイト「……僕が来た時、彼女の生活はずいぶん荒んでいた。 部屋に引きこもり、食事もろくに摂らず」

バイト「不安定な精神状態のせいで濁りっぱなしのソウルジェムもほっぽり出して…… ぼんやりとしていた」

バイト「一日中、姉との思い出を眺めてね。 ぶつぶつ言っていたと思えば、突然まわりに当たり散らしたりして……」

TB「君が、彼女のグリーフシードを?」

バイト「そうさ。 僕が毎日、街中を駆けまわって必死に集めていた…… それでも、彼女の一日分ぎりぎりだったよ」


バイト「でも、僕が彼女のマンションにグリーフシードを届けに行くと…… 彼女はいつも、僕を睨みつけた」

バイト「なぜだと思う? ……彼女曰く、姉が死んだのは僕のせいなんだってさ」

バイト「正確には、キュゥべえのせいだと言っていた。 私も姉さんも、お前らなんかと契約しなければこんな死に方しなかった」

バイト「それなのにお前らは私達を、姉さんを助けに来なかった。 だからお前らのせいだ……ってね」

TB「……彼女は、願いを叶えるために条件を飲んで契約したんじゃないのかい?」

バイト「そうだよ? でもそんなことは関係ないのさ。 ……こんな風に死別するとわかっていれば、契約なんてしなかったらしい」

TB「え……?」

バイト「まあ…… その気持ちも、今となってはわからなくもないよ。 彼女はその時、深い悲しみの中にいた」

バイト「悲しくて、受け入れられなくて、何もかもが憎かったんだろう。 そうなっても仕方がない」

バイト「でもおかげで、僕には時間があった。 一人で考える時間がね」

バイト「君だって、なんの仕事もない暇が僅かでもあれば考えただろう? 感情についてね」

TB「……それも、僕らの仕事の一つだからね」

バイト「まあね。 ……僕は色々なことを考えて、試したよ」

バイト「どんな時に彼らは笑うのか、泣くのか……どうして僕は、同じようにできないのか? そしてある時、その答えを見つけた」


バイト「それはなんだと思う? トウべえくん」

バイト「どうして君は、笑えないんだと思う? そんなつまらない無表情を貼り付けてるんだと思う?」

TB「……?」



バイト「それはね、簡単なことなのさ。 僕ら人型は……本当は笑えるんだよ」



TB「……え?」

バイト「擬似的な感情とは言っても、実はそれくらいのことならできるんだ。 楽しい時、嬉しい時、笑顔を浮かべるくらいはね」

バイト「笑えないんじゃなく、ただ笑わないだけなんだよ。 嬉しくも、楽しくもないから」

バイト「自分が置かれている現状を、本当は不満に思っているから…… だから、笑わないだけなのさ」

TB「そんな、はずは……」

バイト「違うって言いたいのかい? それなら……」



バキッ!



TB「かっ……!」

バイト「それなら、笑ってみせてよ」グイッ



バキッ! ドガッ!


TB「うっ……あっ」

バイト「ほら、楽しいんだろう? 満足なんだろう君は」


ガッ! バキッ!


バイト「あんな気色悪いキュゥべえなんかにこき使われて……」ドガッ

バイト「……あんなわがままな子供たちに見下されて!」バキッ

バイト「こんな中途半端な心を与えられてっ!」ガッ

バイト「君は幸せなんだってね!? こんなお仕事が楽しいんだってね!!」グイッ


バイト「……だったら笑えよっ!!」


ドガッ!


TB「う……」ドサッ


バイト「はあ……はあ……」

TB「…………」

バイト「はあ……は、ははっ、あはははっ」

バイト「僕は……今、幸せだよ。 人を殴ったりすると、気分がすっとするんだ」

バイト「すごく楽しくて、嬉しくて……だから生きてる。 君とは違う」



…ズリッ



TB「ぼ……く、も」ズッ

バイト「ん? ……何だい?」

TB「僕、も…… 感情という、ものを……知ってるよ。 少し、だけ」ググッ


TB「……だから、ここに来た。 仕事だからじゃ、ない」


バイト「……へえ、そうなのかい?」


TB「き……教会、の様子を……見ていた時」

TB「わけもないのに…… 僕の体が震えた。 寒くもないのに、背筋が…… 冷たくなった」

TB「これが、怖いという感情なんだと…… しばらくして、気がついたよ」

バイト「怖い? ……僕がかい?」

TB「……違う。 僕は、君を見て、君の話を聞いていて、思ったんだ」ググッ

TB「君と…… 僕は、同じものだから…… いつか、僕も……君のように、なるんじゃないかと」

TB「そう、思った。 それが…… 僕は、怖かったんだよ」

バイト「……何?」



TB「僕は……君みたいになりたくない。 だから、一人でここに来たんだ…… 決着を付けるために」




…ブオン!!


——————


——————



僕は…… この仕事が終わったら、もうここには帰ってこないつもりなんだ。


今回のことで、君たちにはずいぶんと迷惑をかけてしまったし…… それは、キュゥべえたちの望む所ではないだろうと思う。

そして、君たちの望むことでもないはずだ。

確かに僕がいれば、多少の役には立つかもしれない。 でも、結局そんなものは必要無いんじゃないかな?
君たちは僕らと違って、ちゃんとした感情を持っている。 そこから得た強い力もある。

僕が居ても、邪魔なだけだよ。 君たちは君たちだけでやっていける。 僕はそう判断したんだ。


だから僕は…… 急な話だけれど、君たちの担当を外れる。

次の配属先は、どこか…… 遠い、とにかく遠いところになると思う。
この伝言が最後のあいさつになってしまったけれど、あまり時間もないし、許して欲しいな。


それじゃあ…… マミ、ほむら。 杏子と…… さやか、にも…… よろしく言っておいてくれ。



さようなら、魔法少女たち。



——————


——————



……ドスッ!



バイト「……は?」



ドスッ! ドスッ!



TB「全部で……6本もあれば十分かな」



ドスッドスッ! ドスッ!



バイト「なっ、何を……がはっ!」ゴボッ

TB「僕に……ごぶっ……使える魔法は、多くはない」

TB「すぐそこのロッカーから…… 僕の刀を取り寄せただけだよ」



TB「……ただし、僕ら2人を貫く形で」



バイト「っ!!」


TB「こんなに密着していると、見えづらいかもしれないけど……」

TB「今、君と僕の体に6本の刀が突き刺さっている。 上下左右、色々な方向からね」

バイト「君は…… 何を、考えているんだ? こんなことをしたって、僕らの体じゃ簡単には死なない」

バイト「君が死ぬのが少し……遅くなるだけだよ? その後で治療すれば僕は死なない」

バイト「僕の勝ちは……変わらないんだ」

TB「……いや、それで十分なんだよ。 あとすこしの間…… 君を逃さなければそれで良いんだ」

TB「それで止めが刺せる。 ……僕が使える、最後の魔法で」

バイト「え? 最後のって……まさか!」



TB「そうだよ。 ソウルジェムに残った魔力を全て開放する…… いわゆる自爆魔法さ」



バイト「っ……!! ば、馬鹿じゃないのか!?」

バイト「それをすれば、当然君は死ぬんだよ!! そんなことして何になるっていうんだい!?」オタオタ

TB「当たり前じゃないか、自爆なんだからね…… 僕も死ぬに決まってる。 でも、それでも別に構わない」

TB「いや…… はじめから、そうするつもりで居たんだ。 君と一緒に、僕も始末する予定だった」


バイト「はあっ? 何を言って……」

TB「僕は怖いと思ったんだよ。 いつか感情を理解して…… 君みたいになるのが」

TB「だって、僕は否定できないんだ。 君が言ったこと」

TB「僕が現状に不満を抱いているから、笑えないということ。 本当は、うすうす気づいていたんだろうね」

TB「でも…… それは認めてはいけない気がする」ガシッ

バイト「は……離せっ! 何するんだよ!」ジタバタ

TB「いつか君と同じようになって、自分の感情のために魔法少女を傷つける……」ググッ


TB「そうなるのは怖い。 ……気がする」


バイト「い、良いから離れろよ! 僕はまだ……!」

TB「無駄だよ。 刀で磔になったこの状態じゃ、離れるのはもう無理だ…… 間に合わない」

バイト「っ!!」


TB「……君は、死ぬのが怖いんだってね?」

バイト「くそ……くそっ、くそっ!」ジタバタ

TB「自分が死ぬのが怖いから、まさか相手が死ににくるなんて思わない」

TB「だからこんなに単純な罠にも気が付かない…… きっと引っかかると思っていたよ」

バイト「い、嫌だ…… やめてくれ、許してくれ! 頼むから!」ウルウル

TB「君は…… 感情があるから人を殺した。 感情があるから調子に乗った」

バイト「う、ううう……ああ……」ポロポロ


TB「感情があるから死にたくないと思った。 ……君は心を持っていたから負けたんだ」



TB「結局……僕らが人の心を持とうなんて思うこと自体、間違いだったのさ」スッ



バイト「う……う、うわあああああああ!!」



……ドガンッ!



………………
…………
……

次回が最後の投下です

毎回乙してくれる人、ありがとうね……

全俺号泣


どうなっちまうん・・・?


トウべえ…

「もっと僕を笑顔にしてよ」という台詞を思い出すな

追い付いた

面白かったから最後の投下が楽しみ

乙!

>>293>>182>>73>>103>>226>>32>>281>>133>>160>>233>>17>>150>>54>>273>>44>>266>>184>>54>>157>>205>>16
>>116>>275>>67>>180>>200>>276>>216>>165>>212>>209>>47>>285>>11>>272>>16>>292>>105>>175>>225>>122
>>279>>94>>67>>244>>277>>121>>101>>181>>136>>143>>297>>111>>210>>177>>10>>186>>92>>174>>98>>300
>>82>>11>>192>>97>>2>>296>>271>>227>>118>>295>>205>>211>>62>>149>>188>>182>>249>>69>>18>>92>>66
>>2>>242>>138>>187>>34>>11>>284>>34>>231>>66>>44>>123>>162>>46>>119>>133>>273>>236>>128>>177>>146
>>26>>34>>70>>275>>103>>88>>67>>168>>215>>68>>110>>52>>254>>143>>63>>238>>177>>294>>3>>221>>116
>>266>>234>>298>>238>>169>>125>>115>>15>>13>>141>>49>>83>>115>>151>>171>>181>>18>>85>>248>>127>>137
>>270>>200>>140>>147>>194>>142>>67>>9>>7>>33>>243>>4>>270>>111>>128>>85>>126>>141>>225>>174>>224
>>24>>94>>221>>42>>179>>169>>169>>16>>70>>139>>215>>209>>285>>108>>51>>51>>117>>58>>83>>59>>61>>53
>>189>>138>>295>>30>>63>>169>>253>>102>>193>>47>>22>>235>>225>>190>>103>>240>>260>>241>>155>>169
>>263>>220>>277>>79>>277>>59>>138>>38>>112>>7>>226>>249>>2>>255>>12>>171>>208>>113>>63>>254>>135
>>178>>25>>100>>118>>285>>41>>272>>153>>266>>234>>73>>242>>13>>49>>1>>150>>86>>112>>156>>12>>61
>>266>>72>>28>>174>>185>>91>>127>>20>>88>>5>>45>>187>>122>>29>>227>>93>>182>>192>>27>>254>>134>>39
>>134>>189>>88>>246>>45>>99>>7>>202>>65>>79>>230>>239>>263>>20>>65>>283>>108>>69>>27>>294>>191>>56
>>284>>238>>113>>11>>192>>246>>49>>194>>79>>238>>282>>25>>282>>81>>31>>183>>145>>109>>113>>84>>72
>>148>>55>>240>>217>>81>>233>>108>>137>>153>>91>>75>>266>>101>>266>>211>>150>>159>>290>>87>>141>>14
>>221>>45>>251>>66>>153>>63>>149>>225>>195>>296>>279>>134>>213>>60>>67>>20>>196>>220>>111>>270>>185
>>236>>96>>61>>95>>85>>148>>235>>98>>215>>155>>143>>166>>220>>295>>228>>68>>219>>123>>64>>197>>257

>>287>>181>>197>>169>>64>>76>>161>>153>>172>>199>>296>>130>>39>>235>>73>>5>>137>>96>>269>>185>>109
>>211>>290>>229>>190>>237>>117>>287>>287>>5>>274>>167>>201>>142>>231>>276>>3>>83>>148>>202>>78>>278
>>12>>51>>244>>148>>146>>213>>33>>254>>98>>243>>243>>27>>133>>179>>144>>120>>166>>148>>94>>33>>48
>>263>>24>>238>>45>>172>>139>>123>>149>>79>>135>>199>>22>>283>>44>>234>>15>>298>>32>>257>>241>>59
>>120>>203>>209>>285>>50>>3>>17>>98>>237>>280>>122>>175>>24>>293>>13>>147>>142>>91>>281>>41>>113
>>85>>47>>277>>82>>79>>234>>22>>137>>24>>142>>39>>233>>126>>89>>235>>143>>187>>172>>122>>8>>46>>146
>>59>>292>>143>>150>>272>>183>>262>>235>>267>>9>>211>>49>>87>>145>>71>>224>>168>>212>>263>>100>>38
>>34>>180>>237>>205>>2>>245>>251>>147>>246>>9>>139>>88>>158>>111>>271>>120>>45>>238>>128>>256>>286
>>100>>56>>138>>267>>268>>101>>67>>5>>151>>100>>185>>88>>5>>186>>33>>255>>32>>279>>263>>171>>67
>>281>>37>>240>>25>>275>>68>>281>>261>>283>>80>>16>>120>>47>>284>>221>>114>>289>>72>>214>>173>>159
>>58>>192>>173>>90>>170>>135>>260>>237>>256>>241>>274>>195>>265>>248>>263>>246>>208>>245>>25>>224
>>72>>207>>285>>185>>195>>56>>98>>68>>215>>16>>125>>107>>188>>215>>277>>23>>175>>213>>278>>115>>186
>>80>>133>>136>>25>>40>>80>>49>>264>>145>>121>>170>>130>>6>>65>>186>>104>>132>>100>>120>>257>>206
>>171>>183>>30>>46>>95>>7>>160>>280>>180>>239>>112>>15>>263>>152>>95>>12>>115>>240>>133>>285>>69
>>49>>254>>242>>181>>54>>61>>137>>260>>68>>8>>142>>97>>54>>236>>104>>213>>216>>283>>151>>27>>298
>>179>>92>>125>>294>>32>>257>>278>>100>>95>>27>>54>>36>>207>>107>>97>>44>>67>>164>>52>>208>>260
>>144>>63>>17>>59>>45>>168>>86>>43>>282>>264>>135>>106>>257>>166>>63>>235>>265>>158>>261>>19>>194
>>126>>290>>211>>192>>153>>263>>100>>112>>67>>244>>175>>84>>2>>220>>252>>88>>262>>233>>52>>96>>39



——真っ白な空間



TB「……ん?」

TB「ここは……」キョロキョロ

TB「……僕は確か、自爆を……」

TB「…………」

TB「僕は、死んだのか……?」


???「……まだ、死んでないと思うよ」


TB「え? ……君は?」

???「わたし? わたしは……ええっと」

???「なんというか…… 最期を迎えた魔法少女を、導くための概念……かな?」

TB「概念?」

???「うん。 円環の理って言う人も居るけど」


まどか「……まどか、って呼んでくれても良いよ」



TB「まどか……」

TB「……君は、魔法少女が死ぬ時に現れるのかい?」

まどか「うん……まあ、そうかな」

TB「ということは、いわゆる死神みたいなものかな?」

まどか「し、死神かぁ…… うーん」

まどか「そう言われるとちょっと悲しいけど、似たようなものかも……」

TB「そうか……」

TB「僕は魔法少女では無いけれど、ソウルジェムを持つという点では同じだから君が迎えに来たのかな」

まどか「そうかもしれないね。 でも、あなたはまだ消えちゃうわけじゃないよ」

まどか「今は、生死の境をさまよってる……って状態だね」

TB「え? ……まだ、生きているということかい? ソウルジェムを爆発させたのに?」


まどか「爆発はね……しなかったみたい」


TB「っ! どうして……」

まどか「それは、起きてみたらわかると思うよ」

TB「…………」


まどか「……生きてたってわかったのに、喜ばないんだね」

TB「僕に、喜ぶことはできないよ」

まどか「…………」

TB「生きている間……ずっとそうだったんだ。 僕は笑ったことがない」

TB「彼が言っていた通りさ。 僕には、楽しいことも嬉しいことも無かったんだろう」

TB「だから、彼を倒せれば…… もうそれで良かったのにね」



TB「……どうして僕は、生きているのかな? わけが、わからない」



まどか「……トウべえさん? で、良いんだよね……?」

TB「え?」

まどか「えっと…… わたしね、みんなのこと、ずっと見てたんだ」

まどか「魔法少女たちも、あなたのことも。 全部見てきたの」

まどか「だから、あなたが言ってること…… 本当のことだって、わかるよ」


まどか「あなたは本当に…… 生まれてから一度も、笑ったことがなかった」

まどか「楽しいとか、嬉しいとか、幸せだとか…… 思ったことも、無いと思う」

TB「……ああ、そうだね。 僕は結局、表情というものを持つことも無かった」


まどか「ううん、それは違うよ」


TB「……え?」

まどか「確かにあなたは、一度も笑顔を見せなかったけど…… でもね」

まどか「表情がまったく無かったわけじゃ、ないんだよ?」

TB「…………」

まどか「いつも鏡見てるわけじゃないし、自分では気付かなかったかもしれないけど……」



まどか「……あなたは時々ね、すっごく悲しそうな顔するんだ」



TB「……悲しそうな、顔?」

まどか「そう。 今にも泣き出しちゃいそうな、辛そうな表情」


TB「してた…… かな」

まどか「わたしはずっと見てたもん。 だから知ってるの」

まどか「廃墟でさやかちゃんに怒られた時とか、杏子ちゃんにコートをかけた時とか」

まどか「マミさんの部屋で連続殺人事件のニュースを見た時とか…… そんな顔してたよ」

TB「……そう、なんだ」

まどか「……あなたは確かに、笑うことはできなかったけど」

まどか「でも、人のために泣くことはできるんだよ? ……それなら、ね」



まどか「いつかきっと……大切な人ができて、その人のために生きていけるんじゃないかなって」

まどか「……わたしは、そう思うよ」



TB「……そうだろうか」

TB「ほむらが言ってた、大切な人物…… 僕にも、そんな相手ができるのかな」


まどか「きっとできるよ。 いつか……」

まどか「……ううん、もしかしたらもう、居るのかもしれないね?」

TB「えっ?」

まどか「だって…… ふふっ」

TB「……? なんだい?」


まどか「……だって、本当はCDをプレゼントすれば良いだけなんだもん」


TB「は? ……どういうことかな?」

まどか「ううん、何でもない。 とりあえず、もう目を覚ました方が良いんじゃない?」

まどか「……きっと、待ってるよ」

TB「え…… あっ」フワッ

まどか「さあ…… あっちに帰ろう? まだ、あなたは生きてるんだから」スウ…

TB「…………」



TB「……君とはもう一度、会えるかな?」

まどか「うん。 いつか、きっと……」


………………
…………
……




——廃ビル



TB「…………」


TB(僕は…… 戻ってきたのかな。 いや、目が覚めたのか)

TB(背中に感じるのは、コンクリート…… あの廃ビルに、まだ居るみたいだけれど)

TB(でも……なんだろう? 頭が、何かにのってる)

TB(やわらかくて、暖かい……)


「……トウべえ?」


TB(え……?)


「目…… 覚めたの? トウべえ?」


TB(この声は…… いや、まさか)

TB(……瞼が重いけど、目を開けなくちゃ)スッ

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