誓子「なるかが欲しい」 (75)
誓子「できた!」
誓子「我ながらこれは……いい」ウットリ
誓子「なるぐるみ三号! ……ほんといいわぁ」ニギニギ
誓子「そして、お尻のボタンを押すと、」ポチ
誓子「……あれ?」
誓子「おかしいなぁ」ポチポチ
なるぐるみ三号「チカチャン!」
誓子「接触悪いのかな?」
なるぐるみ三号「キョウハ ジュンチャンサンシキ アガレマシタ!」
誓子「そっかあ。頑張ったね~」ヨシヨシ
なるぐるみ三号「アシタモ ガンバリマス!」
誓子「うんうん」
なるぐるみ三号「ピッ………………」
__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
-=ニニニニ=-
/⌒ヽ _,,-''"
_ ,(^ω^ ) ,-''"; ;,
/ ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;,'
(.゛ー'''", ;,; ' ; ;; ': ,'
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' ┼ヽ -|r‐、. レ |
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' d⌒) ./| _ノ __ノ
誓子「……」
なるぐるみ三号「…………」
誓子「なるかは、麻雀楽しい?」ポチ
なるぐるみ三号「…………」
誓子「……接触わる……」ポチポチ
なるぐるみ三号「チカチャン! キョウハ」ポチ
誓子「ボタン間違えた」ポチポチ
なるぐるみ三号「タノシイデス! マージャン ダイスキデス」
誓子「ほんと? 誘ってよかった」ニコニコ
誓子「……」ポチ
なるぐるみ三号「タノシイデス! マージャ」ポチ
誓子「私の事どう思う?」ポチ
なるぐるみ三号「n ダイスキデス」
誓子「///」ドキドキ
し
誓子「もうちょっと、うーん、音質あげたいな」
誓子「電話からの音源じゃこれが限界だし……──盗聴?」
誓子「いやいやいや……」
誓子「……」
誓子「でも、音質欲しい。あと雑音も抜きたい」
誓子「amazonで盗聴器売ってるんだ。……へー」カチカチ
誓子(なるかの自室は女子寮の最東から隣の隣の部屋。あそこは夏の瓜を植えるためのネットが窓下まで伸びている)
誓子(今は冬だけど、ネットだけはある。そこに絡ませて──、あっ、電源は? 電源、電源なら一番近いところで寮への外廊下にある)
誓子(遠すぎる……じゃなくてっ)
誓子「私なに考えてんだろう……。これじゃまるっきり……」
誓子「私、ちょっとおかしいのかなぁ」
──次の日
爽「おかしいぞ」モグモグ
誓子「やっぱり?」
爽「まずその事実を私に告げられる精神からかなりキテる。胸の内に秘めておくもんだと思う。……ここのカレーうまいね」モグモグ
誓子「でも、本人に気付かれなければ大丈夫だよ」
爽「何が大丈夫なのか」
誓子「ええっと、被害届け出されなかったり、とか」
爽「なるほどなるほど」
誓子「ちゃんと聞いてる?」ムッ
爽「そうだなー……。悪化するようならカウンセリングの先生に『自分はサイコっぽいですどうしましょう』って相談するのがオススメだ」
誓子「最古? サイコロ?」
爽「ゴメン今のナシ」
爽「すまん。大した相談役になれなくて」
誓子「そんなことないよ。やっぱり自分はおかしいんだって自覚できたし」
爽「まぁ愛は人それぞれだから。考えすぎないでその手のプロに聞いたほうがいいと思うぞ」
誓子「うん、……でもちょっと怖いからインターネットの相談サイトで聞いてみるよ」
爽「それがいい。あ、また今度ここ来よう。今度は私が奢るよ」
誓子「いいけど、揺杏ちゃんも誘ったら?」
爽「やつは人がカレーを頼むとウンコの話をしだすからダメだ」
誓子「あはは……。じゃあまたね」
爽「うん。さらば」
さるよけ
クレイジーサイコレズかな?
──その夜
誓子「yaFooooo↑知恵袋でいいかな」
同性愛について:投稿者 本内誓子さん
誓子「本内誓子って語呂いいよね……」フフ
誓子「『ち』が重なっててちょっと発音しづらいけど、『もとうちちかこ』……うん、いい」
誓子「桧森成香も悪くはないんだよね。結婚したら……無理だけど」
誓子「……本文考えなくちゃ」
同性愛について。
今、幼なじみの同姓の子に恋愛感情を抱いています。
でも、その子は恐らく異性愛者(という表現でいいのでしょうか)なので、私の恋が実るとは思えません。
なので最近は彼女似のぬいぐるみを作り、中に再生機を入れて彼女の声を流しています。
一時期はぬいぐるみを作り続けることで自分を抑えていましたが、最近は欲求が抑えきれなくなっています(性的にではありません)。
何か自分を変えられる方法はないでしょうか。
彼女との付き合いを変えてしまわず、自分の悩みを解決する方法を探しています。
よろしければご教授してくださいませ。
誓子「こんなものかな」カチ
誓子「……十二時だ。そろそろ寝なくちゃ。よっと」ポチ
なるぐるみ三号「タノシイデス! マージャン ダイスキデス」
誓子「おやすみなるか」
さるよけ
──二日後
誓子「あ、回答きてる」
回答者:のど
同性愛は病気ではありません。あなたは間違っています。
社会に合わせて自らを矯正するのではなく、あなたが必要とする社会にするべきです。
解決策として、その彼女さん(Aさんとします)を同性愛者にするというのはどうでしょう。
Aさんに同性愛について理解を深めさせていけば、いつしかその素晴らしさに気付くでしょう。
人間は誰しも潜在的に同性を愛することが出来ます。日本の邪悪な異性愛主義がそれを、マイノリティだと刷り込んでいるのです。
共に戦いましょう。私はあなたの味方です。
誓子(なんか……、本格的だ……)
誓子「……」
誓子「うーん」カチカチ
誓子(あ、メールアドレス教えてくれてる。いい人……なのかな)
誓子(確かに、なるかが理解を示してくれるならそれがいい。欲を言えば、好きになって欲しい)
誓子「でもそんなの、」
誓子「……絶対無理だよ」
コンコン
「ちかちゃん」
誓子「わわっ、なるか?」
成香「今日は私達二人が寮の裏庭のお掃除当番ですよ。入っていいですか?」
誓子「ま、待って!」カチカチカチカチ
誓子「、いいよ」
成香「パソコン? ……あ、物理のレポートですか? 途中ならちかちゃんの当番分も私が──」
誓子「ううん、私も行くよ」
成香「いつもお世話になってるので、こういうときぐらい頼ってもらえたら、なんて」
なるちかいいね
誓子「私もなるかに助けてもらってるよ。いろいろと」
成香「そ、そうですか? そういってもらえるとうれしいです!」
誓子「うん」ニコニコ
誓子(なんてかわいいんだろう、なるか)
成香「そうそう、昨日の帰りに三毛猫の家族を見かけたんです。すっごいかわいかったんですよ」
誓子(どうすれば、この子を手に入れられるかな)
成香「お母さんに手を差し出したら引っ掻かれてしまいました」
誓子(好きって言ったら、やっぱりひいちゃうかな──)
誓子「え?」ピタ
成香「あう」ポフン
誓子「なるか、怪我したの?」
成香「引っ掻かれて……猫さんに、です」
誓子「……悪い猫」ボソ
さるよけ
成香「あの、でもあれは手を出した私が悪くて、お母さん猫は子供達を守るために引っ掻いたんだと思います……」
誓子「……」
成香「ちかちゃん?」
誓子「その猫は、成香に謝った?」
成香「猫さんの言葉はわからないので……」
誓子「そう」
成香「……」
誓子「あ、今日の掃除って裏庭だっけ? じゃあ軍手持ってこなくちゃ。なるかは先に行ってて」タッタッタ
成香「……あっ」
──その日の夜
誓子(なんとか我慢できた)
誓子(でももう、つらい。絶対私はおかしい)
誓子(なるかが怪我をするのはしょうがない。親猫が引っ掻いた理由だってわかる、だけど、)
誓子「──……一瞬、同じ目に合わせてやろうと思って、」
誓子「狂ってるよ、ほんと」
誓子「明日、病院行こう」
チカチャン チカチャン
誓子「あれ?」
なるぐるみ三号「ジュンチャンサンシキ アガレマシタ」
誓子「……」
なるぐるみ三号「チカチャン」
誓子「欲しい」
誓子「なるかが欲しい」
from のど さん
メールありがとうございます。
では早速本題です。不特定多数の人に見られる質問サイトではないのでずばり聞きますが、
Aさんを思い通りにできたら、したいですか?
本人の意志を越えて、あなたが望むAさんにしたいですか?
よい返答を期待しています。
誓子「これって、つまり、洗脳?」
誓子「しかも『よい返答』って……これ以外ないってことじゃ……」
誓子「本人が幸せならそれでいいって、誰かが言ってた」
誓子「じゃあ、洗脳されてもおんなじことが言えるよね」
誓子「そうだよね。私間違ってないよね」
誓子「よし」
iPS堕ちしちゃったか
さるよけ
──三日後
成香「ちかちゃん」
誓子「ん?」
成香「今日は、その、なんで、」
誓子「……」
成香「私、の部屋に?」ケホケホ
誓子「なるか、眠くない? 大丈夫? 体調悪かったら言って」
成香「……お水が、飲みたいです」
誓子「うん、わかった」ニコ
サッー!
誓子「おまたせ」
成香「すぅ……」
誓子「あ、寝ちゃってる。かわいい」ナデナデ
誓子(このトカゲエキス、すごい効き目)ジー
誓子(夕飯に混ぜたとき緊張したけど、無味無臭だからぜんぜんわからないみたいだね)
誓子「さて、と」
成香「すぅ、すぅ」
ゴソゴソ
誓子「なるかなるか」
成香「…………ん」
誓子「起きて、なるか」
成香「……」ボー
誓子「16足す27は?」
成香「…………?? …………30、違っ──よんじゅ、よ、よんじゅうさん」
誓子(覚醒が遅い。成功してる)
ちょーこわいよー
さるよけ
後輩レイプ!野獣と化した先輩
誓子(効果が続く限り『寝ぼけた』状態である、らしい。その間に刷り込みをする)
誓子「今日は何日?」
成香「……6月17日」ボー
誓子(もう10月だよなるか)
誓子「なるかは何かアレルギーを持ってる?」
成香「、ないです」
誓子「今は体調はいい?」
成香「──はい」
誓子「食事のあと、めまいがしなかった?」
成香「あった、です」
誓子「気分が悪くなったとき動悸が早くなったりとかは?」
成香「あの、」
誓子「そのときの血中酸素濃度とBPMの数値は?」
成香「…………えっと?」
咲か
誓子「幻覚や幻聴は?
自分の手の指が七本あるように思えたり、誰かがあなたの臓器を抜き取る相談をしている声がきこえたりはしなかった?
成香「…………やめて」
誓子「放送終了後のホワイトノイズがなるかに何かを語りかけたことは?
1から30までのあいだに素数はいくつある?
MKウルトラ計画には全部で何種類のエイリアンが関与していたと思う?」
成香「……ちかちゃん、もう」
誓子「大きな街が丸ごと停電する夢を見た経験は?
『アルミホイルに包まれた心臓は六角電波の影響を受けない』、このフレーズ昔聞いたことはない?
この女子寮で過去50年間の内に自殺者が出たことあるっけ? ……
──なるか、聞いてる? なるか!」ガシ
成香「うん」グラ
誓子「なるか、これ飲んで」
成香「うん」
ゴクゴク
成香「…………おいしいです」
また懐かしいものを
誓子「私は誰?」
成香「ちかちゃん」
誓子「違う、私は『獅子原爽』」
成香「はい」
誓子「私は誰?」
成香「爽先輩です」
誓子「な……」
誓子「……」ギュ
誓子「なるかは……誓子をどう思ってる?」
成香「おねえちゃんです」
誓子「血はつながってないのに?」
成香「はい。いつでも近くにいてくれるおねえちゃんです」
今日成香ちゃんの誕生日か
誓子「誓子のことは、──好き?」
成香「はい」
誓子「それは……その、どういう、意味で?」
成香「どういう意味とは?」
誓子「家族愛とか、恋愛とか……」
成香「大好きなおねえちゃんです」
誓子「…………そっか」
誓子(もしかしたら、億分の一にでもチャンスがあると思ったけど……それはそうだよね)
誓子「なるかは誓子と今の関係を続けたい?」
成香「はい」
誓子「もしも誓子に好きだと言われたら? 恋愛の対象として成香が好きと告げられたらどうする?」
成香「……」
成香「わからないです」
誓子「嫌ではない?」
まあそうだよね
ほ
成香「嫌というより、怖いです」
誓子「怖い?」
成香「もう、近くにいられない気がして──」グラ
誓子「なるか?」
成香「大丈夫です」
誓子(近くにいられない?)
誓子「……わかった」
誓子「なるかは猫が好きだったよね。……目を閉じて、今から話す私の言葉を想像していって」
成香「はい」
誓子「ある日、捨て猫を拾いました。石のような雹が降る夜で、優しいなるかは我慢できずに連れ帰ってしまいました」
成香「でもそれだと……」
誓子「そう、うちはペット厳禁。寮母さんに見つかれば、間違いなく保健所に送られてしまう」
成香「……」
誓子「でもなるかは見捨てることができません。なので隠して飼うことにしました。ベッド下でみーみー泣く子猫に購買の牛乳を薄めて飲ませ、夜は寂しくないように一緒に寝てあげます」
誓子「なるかの頑張りが報われ、子猫は次第に元気を取り戻します。しかしある日、子猫は寮母さんに見つかってしまいました」
成香「あ……」
誓子「保健所へ連れて行くという寮母さんに、なるかの説得は跳ね除けられてしまいます。なるか、そしたらどうする?」
成香「……ちかちゃんに、相談します」
誓子「そう、正解。そして誓子はなるかの手をにぎりながら私がいるからと安心させて、寮母さんのところへ行きます」
誓子「そのとき、なるかはどうしてる?」
成香「……ちかちゃんについて行きます」
誓子「誓子に手を握られながら半歩後ろについていく。誓子の手は暖かった。なるかはどう思う?」
成香「心強いです」
誓子「誓子は寮母さんを説得できた?」
成香「できます。ちかちゃんなら」
誓子「特別に許可が下り、なるかは猫を飼うことが許されました」
成香「……良かった」
支援せざるを得んな
誓子「その光景を強く想像して」
成香「……」
誓子「そんな平和が続いたある日、なるかは猫の世話をしている間、指を噛まれ出血してしまいました。すると、」スッ
成香「爽先輩?」
誓子「……私は誰?」
成香「爽先輩です」
誓子「私は桧森誓子」
成香「ちかちゃん……?」
誓子「なるかは猫の世話をしている間、指を噛まれ出血してしまいました。すると、こうして指を私が舐めました」ペロ
成香「ぁっ!」
誓子「緊張してる? 心臓ドキドキいってるよ。……時間は23時45分。消灯まであと45分。なるかは私に、」ドサ
成香「きゃ」
誓子「ベッドの上で腕を押さえつけられてしまう。部屋に邪魔な者は存在しない。これからなるかはどうなる?」
しえしえ
☆◯
成香「あ……、その、──エッチなことですか」
誓子「………………そう。嫌?」
成香「あの、それは、」
誓子「抵抗しないね」
成香「怖いです」
成香「ちかちゃん、怖いです」フルフル
誓子「!っ、」
誓子「……るか」
誓子(なるかが私を拒否してる)
誓子(っ、……ここまでやって怖気づくのか私)
誓子(こうなることは予想できた。むしろ上手くいっていたはずなのに!)
誓子(いや、ここから踏み込めば、なるかは私を受け入れる……。受け入れるはず)
誓子「ねぇ、なるか、」スッ
成香「──っ」ギュ
誓子「……」
誓子(私はこの子を…………傷つけたくはない)
さるよけ
誓子「……」スッ
成香「……? ちかちゃん?」
誓子「目を閉じて。ゆっくり。……今から10秒数えるから、そしたら『どこまでも続く暗い穴へ落ちていく想像』をして」
成香「──はい」
誓子「いち、に、さん、し、ご、ろく、……しち、……はち、……きゅう、…………じゅう」
成香「……………………、」
誓子「力を抜いて。全身が豆腐になったように脱力。そしたら息を吸ってー、吐いてー」
誓子「もう一度……」
誓子「おやすみ、なるか」トン
誓子「さようなら」
────────
────
──
──三日後 女子寮
ガヤガヤ
「三年の桧森さんだっけ? 元麻雀部の。まだ見つからないんだってー」
「事件だったらやだなあ。誘拐とか……」
「それだとほらこの前の子みたいに地下で殺されちゃったり」
「やだー。絶対連続でやるよそういう犯人! あっ……」
成香「……っ」フルフル
成香「ちかちゃんは生きてます! 勝手に殺さないでっっ!!」
「ご、ごめんなさい」
成香「フー、フーッ!」
爽「成香、落ち着け。君らもあまりそういう話しないように」
「はい…」シュン
どうなった
爽(誓子が失踪してから三日が経った)
成香「絶対、ちかちゃんは無事ですよね? ちかちゃんは生きていますよね!?」
爽「生きてるよ。絶対」
爽「……ふむ」
爽(そろそろきついなぁ。誓子は成香のおもりも大変だったろうに。……だから、そうかアレなのか)
成香「ちかちゃん、なんで……」
爽「明日もまた警察行くんだろ? 今日はもう部屋に戻ったほうがいい」
爽(誓子が失踪した日に、私は誓子の部屋に忍び込んでPC内のメールから経緯を知った)
爽(次の日、当てずっぽうで待ち伏せして誓子を見つけることに成功したが、放っておいてくれと言われ今に至る)
爽(本人が言うならしょうがない)
爽「でも成香のおもりはなあ」
成香「え?」
さるよけ
さるよけ
爽「そうだ、私の家に代々伝わる願掛けがあるんだ。それやってみる?」
成香「や、やります!」
爽「髪の毛を30本と皮膚組織と血液150ccをうちの神棚にお供えするんだ」
成香「髪の毛と皮膚と……血液ですか」
爽「皮膚は、成香の肌を傷つけるの気が進まないから、足の側部の人に見られない所……えー1センチ四方?結構でかいな……」
成香「っ、」ドキ
爽「大丈夫だよ薄皮だからすぐ再生する。あと採血も私色々経験あるから」
爽「ということで善は急げだ。ちょっと付き合って」
──二日後
爽「──誓子が見つかったって」
揺杏「え!!? マジ!?」
爽「今誓子のお父さんから」
揺杏「どこで? というか五日も何やって──」
コンコン ガチャ
由暉子「お揃いですか?」
爽「成香がいない」
由暉子「本内先輩は今保健室です。一報を聞いて倒れました」
揺杏「……ど、どういうこと?」
爽「……」
爽「意識不明の重体で見つかった。頭を強く打ってて、恐らく暴行されたって──
さるよけ
!?
おい
状況が呑み込めない・・・
──一週間後 とある病室
誓子「……」ボー
爽「おい、まだ夢の中か? それともクスリが抜けてないのかー」ブンブン
誓子「ちょっと考え事をね」
爽「覚醒おめでとう。これ、リンゴとか諸々」バサ
誓子「ありがとう」
爽「剥く? この獅子原さんの包丁技術見ちゃうかー?」
誓子「お願いしていいかな」ニコ
爽「成香と会った?」シャクシャク
誓子「ううん。家族以外面談拒否してる。爽だけ特別」
爽「へぇ、まぁそっか。でも悲しんでたぞ成香」
誓子「……しょうがないじゃん」
支援よー
爽「そんなに成香から離れたいなら、クスリ使って洗脳しようとしたことを一から説明してやればいいのに」
誓子「……」
爽「ドン引いてあっちから触れてこなくなる」シャクシャク
誓子「私が援助交際した末に暴行されたという事実で、成香が近づかないと思った。ダメだったかな」
爽「なにそれ? 成香に対する贖罪?」
誓子「うん」
爽「ダメもクソもただの暴走じゃん。自傷自罰をやらかしてさ。今更だけど援交って?」
誓子「うん、適当に声かけられて、した。それで頃合い見計らって通報して補導されて、強制退学にでもなればって」
爽「で、予想以上に相手がDV野郎だったと……。ああ、これオフレコだけど自主退学を薦めてくるって話だよ」
誓子「そう」
爽「一応ニュースじゃ拉致監禁だけど、犯人捕まってるし、そのうち援交してたって事実もバレる。うちの学校は厳しいからね」
誓子「まさかあんなに殴られると思わなかったなぁ。あとアソコも……あはは」
爽「あ、誓子処女だったの?」
誓子「うん、すっごい痛かった。最悪だよ」
爽「へー、怖っ」シャクシャク
誓子「なるかは……、なるかはどう思ってるかな」
爽「ん? んー……、成香がどう思ってるかわからないけど、誓子は甘かったと思う」
爽「結局被害者面して心配かけさせてるし、成香を突き放す気だったら堂々とレイプでもしてやればよかったんだ」
誓子「ほんとキツイこと言うね……」
爽「なんで途中で洗脳やめたの?」
誓子「……なるかが子供だったから」
爽「それで良心の呵責を?」
誓子「うん」
爽「相反する二つの感情、なんだっけ」
誓子「アンビバレンス」
爽「壊したいけど壊したくない、かな? その抑圧された感情が浮き上がって誓子は壊れてしまったんだな」
誓子「……ほんと私ってバカだよね。どうしようもないよね」
爽「超バカだよお前」
さるよけ
さるよけ
爽「正面から行って拒絶されりゃあもっとマシだったのにな」
誓子「……うん」
爽「誓子は成香に見放されても友達はいるだろ? 私だって成香より誓子を選ぶ。成香より誓子のほうが親友だから」
誓子「……そうだね」
爽「でもこうなったらもうどうしようもない。ほらこれ」バラ…
誓子「それ、なるかの?」
爽「当たり前だろ。ちゃんと血液も150ccある。好きにしたまえ」
誓子「私がそれで何やろうとしてるか知ってるの?」
爽「〝完全に被験者とDNAが一致する受精卵作り〟だっけ? メールの──あのキチガイ、『のど』が言ってたな」
誓子「あ、そっかメール見られちゃったんだもんね……」
爽「親友のお願いだからやった。で、誰が産むの?」
誓子「私。私が『なるか』を産む」
爽「イかれてんね」
爽ちゃん冷静すぎィ
誓子「爽も相当だよ」
爽「ん、昔からよく言われる」
誓子「……これがなるかの血かぁ」
爽「冷凍技術がなかったから昨日また採血した。一応低温保存して持ってきた。これそのキット。化学準備室からパクってきたやつ」ドスン
誓子「髪の毛があれば大丈夫だって言ってた」
爽「まぁ断片化は避けられないからね。御守として持っておけば? なんなら飲んじゃうとか」
誓子「えーそれはさすがに……」
爽「今の誓子ならやると思ったけど」
誓子「そこまでじゃないよ」
爽(とっくにラインは超えてると思うんだけどなー)
爽「退院したら、この前のカレー屋行こうな」
誓子「うん、あ、でも……」
爽「わかってるよ。ふたりきりでいい」
さるよ
爽(結局その後、誓子と会うことはなかった)
爽(両親に勘当され音信不通。私の推測じゃ本土のほうで、例の受精卵を使った人体実験に参加しているのだろう)
爽(元々本当の姉妹のように仲が良かった成香は、そりゃもう大変だった。部屋から出てこないし、ずっと誓子の名前を呼んでるし)
爽(由暉子と揺杏がいなければ廃人コースだった。今ではようやく精神も安定してきている)
爽(原因の一端には私が成香のDNAを渡したせいもあるだろう)
爽(……)
爽「だからと言って反省するわけじゃないけど」
揺杏「ぶつぶつ言ってないで勉強しなよ受験生~」
さるよけ
さるよけ
爽「あ、そうだ、大学受かったら本土に旅行しよう」
揺杏「なんで~?」
爽「誓子探し」
揺杏「わ、笑えねぇー……」
爽「当たり前だろー? ガチなんだから」
揺杏「一人?」
爽「君と私の二名」
揺杏「旅費全部出してくれんなら」
爽「ま、それでもいいよ」
揺杏「おお~太っ腹」
爽「じゃあ誓子探しのためにいっちょ勉強頑張るか」
揺杏「ファイト~。そうだなあ~、桧森先輩にあったら一発ヤキ入れておかないとな~。成香を泣かせた罪は重い」
爽「だね。わくわくしてきた」
──四年後
誓子「相変わらず何もないなあここ」
「おかあさん、だっこ」
誓子「はいはい」
誓子「見て見て横断幕だよ。『麻雀部全国出場』だって……さすがは由暉子コーチ」
「おかあさんのともだち?」
誓子「うん、一緒にね麻雀部で東京行ったんだよ~」
「すごいすごい」
誓子「なるかにも、もうちょっとしたら教えてあげる」
「うんっ」
誓子「さて、じゃあ謝罪回りと行きますか。まずは……な、る、っいや最後にしよう。後回しにする。うん」
「れっつごー」
誓子「ふふっ。れっつごー」
おしまい
なるかたんいぇい~
保守ありがとうございました
乙なのよー
個人的にはさわちかの方に可能性を見出してしまった
乙乙。どうしてこうなった
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