勇者「魔王討伐に出かけるぞ!」 (14)

勇者「む、魔物に襲われている人がいる!助けないと!」

魔物(勇者だ、手筈通りに頼むぞ)

村人(し、しかし魔物さん!)

魔物(世界を救うにはこれしか無いのだ!やれ!)

村人(でも!)

魔物(時間が無い、早く!後生だから!)

村人(うぅ、わかりました……)

村人「た、助けてー!」

勇者「どりゃぁぁぁぁぁ!」

魔物「ぐぁぁぁぁぁぁぁああああ!」

勇者は魔物を倒した 経験値とお金を入手した

勇者はレベルが上がった

勇者「お怪我はありませんか?」

村人「は、はい。お蔭さまで」

村人「御礼に村までご案内致します」

勇者「それは助かります」

村人「こちらです。どうぞ」

村人(魔物さん……)

村人「魔物さん、精が出ますねぇ」

魔物「ああ、もうすぐ収穫だからな。冬の食糧をしっかり作らないとな」

村人B「おーい、魔物さん。こっちも頼む!」

魔物「おう、今いくから待っててくれ」


村人「いやぁ、魔物さん力持ちだし助かるよ」

村人B「ほんとほんと。こりゃぁ今年は期待出来そうだ」

魔物「なぁに、こんな世の中だからな。皆で助け合わないと」

村人C「おーい!勇者が、勇者が近くまで来ているそうだぞ!」

村人「なんだって!?」

村人B「くそ、なんだって俺達の村へ……」

魔物「ついに勇者が来たか」

村人「魔物さん……」

魔物「短い間だったが、皆、世話になった。こんな俺によくしてくれて感謝するよ」

村人B「ほ、本当にやるのかい?」

魔物「ああ。人間と魔物が戦争をしてるんだ。そんな時代に俺みたいな魔物が村にいちゃ、どんな風評が立つかわかるだろう」

魔物「最悪、王国から軍が出張ってくる事だってありえる」

魔物「だから俺は決めていたんだ。勇者が来たら、戦って、そして殺される」

村人C「そんな!な、ならここから逃げれば」

魔物「ダメだ。周辺の魔物には俺がこの村を支配していると伝えてある。だから平和に暮らせた」

魔物「俺がいなくなれば、すぐに獰猛な奴らが来るだろう」

魔物「しかし、俺が人間に倒されたとなれば、ここを襲おうなんて奴はいないはずだ」

魔物「なぁに、俺だって簡単にやられるつもりは無いさ」

魔物「勇者が弱ければ、そのまま追い返して、もうしばらくはここに居るつもりだ」

村人「で、でも」

魔物「そんな顔をしないでくれ。俺には十分過ぎる死に場所なんだ」

魔物「俺との戦いの経験は勇者を強くするだろう。そしてそれが魔王を倒す事に繋がれば……」

魔物「自分なりに貯めた金もある。これで勇者も装備を整えられるだろう」

魔物「遠回りだろうと平和の礎になれるなら……悔いは無い」

村人B「あんた……馬鹿だよ……」

魔物「すまないな。嫁さん、大事にしてやれよ」

魔物「勇者を決して恨まないでくれ。平和の為に戦うなんて、結局俺には出来なかった」

勇者「さっきの村で装備も新調出来たぞ」

勇者「次は何処に行こうか。あ、そういえばさっきの村で」

村人(ここから南に凶悪な魔物が支配する街があります)

村人(圧政で人々はとても苦しんでいるそうです。どうか御救いくださ)

勇者「よし、南へ行こう」

南の街

魔物「収穫の具合はどうだ」

側近「は!やはり魔物様の予想通り今年は不作のようです」

側近「それも近年稀に見る大不作……恐らく冬を越す必要分の1/3にも満たないかと」

魔物「ふむ。3年前から兆候は見えていたからな。備蓄の方はどうだ」

側近「重税を敷いていたお蔭で食糧の備蓄は十分かと」

魔物「冬に入ったらすぐに民に配給できるよう手筈を整えておけ」

魔物「恐らく来年以降も不作は続くだろう。それも計算し最低限で済むようにな」

側近「魔物さまの慧眼には恐れ入ります。これで民から餓死者が出る事は無いでしょう」

魔物「しかし民には辛い思いをさせてしまったな」

側近「なればこそ、理由をお話されてはいかがですか?」

魔物「ならん。魔物の領主など、憎まれている程度でなければならんのだ」

こういうの嫌い

心にくるね

側近「ですが……」

魔物「このような統治、長く続く物では無い。いずれ人間の中から我ら魔物を倒す者が必ず現れる」

魔物「その時に魔物に靡いていた街では、人の治世ではどう扱われるか」

魔物「私が倒れた時、速やかに統治が移行できるようにしておかねばなるまい」

側近「魔物様、しかしそれでは魔物様が余りにも……」

魔物「お前が知ってくれている。それだけで十分だ」

側近「魔物様……」

部下「失礼します!火急のお知らせが!」

側近「何が起きた」

部下「勇者が現れたとの事です!北の村を支配していた魔物を撃ち倒し、街へ南下しているとの事!」

魔物「遂に来たか……」

側近「如何されますか?」

魔物「ふん、面白い。私が直々に相手をしてやろう」

魔物「勇者が来たならば、直接この館へ通せ。八つ裂きにして喰らってやるわ!」

部下「は、了解いたしました!」

魔物「私以外手を出す事は禁じる!皆に厳命しておけ!」


側近「遂に、勇者が」

魔物「時間が無くなった。先ほどの手筈、急ぎ進めてくれ」

魔物「民は愚かだ。支配する者無くば己が欲求のまま、先を見る事なく浪費してしまう者の何と多き事か」

魔物「しかし、私はそれでも民が愛しい。仮にも私が治めたこの地で一人たりとも餓死者を出さないでくれ」

魔物「私が斃れた後も、この街を良く治めてくれ。それが領主としての最後の命令だ」

側近「……。確かに拝命いたしました。この命に代えても」

はよ!

こういうの良い

はよ

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