御坂「これがレベル5よ」 (58)
グレた御坂の話。
気軽に読んでくれると嬉しいかな
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男A「おっ、ねーちゃん、かわいいじゃん。よかったら遊びに行かなぇ?」
男B「おおー、男A。かわいいのゲットだな」
男A「ヘヘッ、それじゃあ行こうかねーちゃん。名前は?」
御坂「……」
男C「オイオイ、だんまりかぁ?」
男E「大丈夫だよ、怖いことしねぇからよ」
御坂「」ビリッ
男D「……ん?」
御坂「」ビリビリビリッ、ドッガーン
男A~E「グッ、アバババババァ……」
御坂「はぁー……」
御坂「…………もしかして死んじゃった? まぁどうでもいいことね」
「あそ……から電、が……」ヒソヒソ
「あれ……まさ……」ヒソヒソ
「お姉……やっ……見、って……」ヒソヒソ
御坂「あーあ、また目立っちゃったわー。ったくこういうの本当に迷惑なのよねぇ」
御坂「あの風紀委員に見つかる前に帰るとしますか」
学校に通うことに嫌気が差し、クラスメートを避けるようにして過ごす毎日。
そこらの不良無能力者とたいして変わらない日常。
それが今の御坂の生活だ。
御坂「ふ~ん。第17学区の操車場で大規模な爆発かぁ」
御坂はコンビニで買ってきた蕎麦をすすりながら片手間で端末から情報を集めていた。
御坂「第一位が敗北したってのも最近よく見るわね」
御坂「まっ、所詮第一位だろうが第二位だろうが能力なんて持ってたって肝心なことは何も出来ないってことよね」
ピクッ、と御坂の表情が若干変わる。
突如として電磁バリアが人影を捉えたからだ。
まるで、空間を割いて現れたかのような反応は、御坂に容易にその人物を連想させた。
だが、御坂は涼しい顔で人差し指を使い床を軽く叩いた。
白井「お姉様! やっと見つけましたわよ!」
御坂「あっそー。じゃっ、またね~」
ちょうど三回床を叩いたところで、御坂は見向きもしないまま電撃を放った。
白井「いい加減同じ手はくらいませんの」
白井は即座に転移する。
御坂「あら? ついにアンタもこのスピードについてこれるようになったかぁ」
白井「私も、成長というものを知っていますの。お姉様の横に立ちたいと願ったあの日から、ずっと!」
御坂「そっかそっか、ついにアンタもインターバル3秒をクリアかぁ。……そうね、じゃあ次は何秒がいいかしら?」
白井「…………お姉様。もう、学校に戻ってほしいとは言いませんの。もう、寮に帰ってくれとは強要しませんの」
白井「ただ、話を聞かせては貰えないでしょうか? お姉様が、能力開発に興味を無くしていったそのわけを」
御坂「そうねぇ、確か5秒をクリアしたのは1ヶ月前だったかしら? その時は退学届に判を押したのをあげたんだっけ」
白井「……あんなの、届けてるわけがございませんの」
御坂「あっ、そうなの? 酷いわねぇ。先輩からの最後の頼みぐらい聞きなさいよ」
白井「お姉様! ですから……」
御坂「まぁ、いいわ。3秒クリアのご褒美として、退学届の理由欄ぐらい埋めてあげるわよ」
御坂「理由、理由ねぇ。強いて言うなら能力の限界を知ったから、かしら」
白井「…………」
御坂「じゃあねぇ~。ちゃんと届けてくれることをささやかに願ってるわ」
言うが否や御坂は磁力により落ちていた鉄塊を飛ばし、白井の注意を逸らしたところに電撃をうち込む。
白井「グ、アアァァァああ……」
御坂「これだけ痛かったら、さすがに転移は出来ない、か。まあいいわ。外にでも放って置こうかしら」
白井「お、お姉様……。く、ろこ……は信じてますの……ゴホッ……」
御坂「あら、まだ喋れたのかしら? 私の電流に耐性がついちゃったぁ?」
御坂「 ……まあいいわ、ここらだったら誰か見つけてくれるでしょう」
そう言って御坂は白井を投げ捨てると、淡々と歩いていった。
白井「……お姉様はいまだ変わらず優しいお姉様ですわ……。私は、信じております、の」
白井「……不良だって一度も殺したことがありませんし……、私の事も……わざわざ誰かが見つけてくれるところ、まで運んで下さりましたの……」
白井「こんなこと……、偶然や気まぐれで、は出来ませんわ……」
白井「そんなお姉様を、支えてあげたい……と思うのは……黒子の、傲慢、なのでしょうか……」
御坂は歩いていた。
一度白井に見つかった以上、あの廃墟はもう使えない。
今回はなんとなく遠くまで行ってみよー、などと思っている御坂だったが、突然の後ろからの声に気づき、意識をそちらへ向ける。
??「あっ、やっぱりお姉さまだ、ってミサカはミサカはよろこびを隠し切れずに叫んでみる!」
御坂「…………」スタスタ
??「あぁ、待ってよー、ってミサカはミサカはあわてて追い掛けてみる」
御坂(ミサカ、ね……)
御坂(あれ? ミサカって何だったかしら?)
御坂(そうそう、私の名字じゃない)
当然、無視はしているが、御坂は電磁バリア越しに後ろでアホ毛の生えた幼女が自分を追いかけていることに気づいていた。
どうやら御坂のことを呼んでいるらしいが、生憎と自分のことを「おねえさま」と呼ぶ人はあの風紀委員以外知らない。
というか、幼女に知り合いなんていない。
まぁ、顔でも見ればどこかで挨拶を交わしたことぐらい思い出せるかもしれないが、残念なことに御坂の電磁バリアは顔の細かい部分までは読み取れない。
しかし、これ以上叫びながら追いかけてられては目立ってしまう。
ただでさえレベル5である御坂はこれ以上目立ちたくなかったので、とりあえず立ち止まってやることにした。
??「おー、やっと立ち止まってくれたよー、ってミサカはミサカは誇らしげにお姉さまの前で胸を張ってみる!」
御坂「…………誰よアンタ」
顔を見てもやっぱり知らない人だった。
アホ毛と元アホ毛の邂逅か
~inファミレス~
打ち止め「モグモグ、ゴキュゴキュ、モグモグ、ブハァー。……お腹一杯! ってミサカはミサカは感謝の気持ちを述べてみる」
あんまり長く立ち話をしても目立ちそうなので、とりあえずファミレスに入った御坂たちだったのだか……。
御坂「勝手に頼んで人に奢らせるなんて、どうかしてるわ」
打ち止め「それは悪かったと思っているけど、あの時はお腹空いてたし……どうせお姉さまはお金持ちなんでしょ、ってミサカはミサカは開き直ってみたり」
御坂「ったく、もう少し機嫌が悪かったら黒焦げにしていたわよ」
打ち止め「でもそうしないのがお姉さまなんだよね、ってミサカはミサカの安全を確信してみたり」
御坂「……はぁ?」
打ち止め「だって、ミサカたちから見たお姉さまはいつでも強くて優しい、そんな憧れのお姉さまなんだもの、ってミサカはミサカは全ミサカのお姉さまへの思いを代弁してみる」
御坂「…………アンタは」
御坂「……いいえ、何でもないわ」
打ち止め「どうかしたの? ってミサカはミサカは尋ねてみる」
御坂「……アンタは私に用があって来たんだったわよね?」
打ち止め「うん、ってミサカはミサカは首を縦に振ってみる」
自分と異様に顔が似ているこの少女は、恐らく自分と何らかの関係があるのだろう。
御坂も噂ぐらいでなら聞いたことがある。
??量産型能力者計画
レベル5の巨大な力に心奪われた研究者たち。
手っ取り早くレベル5の力を手に入れたい。
それのために彼らとった手段とは非常に簡単なことだった。
もともとレベル5である御坂の真似をすればいいのだ。
そうして生まれた超電磁砲のクローン。
通称、「妹達」。
目の前にいる少女はきっとその類なのだろう。
御坂は暫く迷った後、言葉を発した。
御坂「……教えなさいな。クソッタレな計画のことを」
打ち止め「そうそう! まずはね、ミサカの名前は打ち止めって言うの、ってミサカはミサカは自己紹介をしてみたり」
打ち止め「ミサカについて理解してもらうには、絶対能力進化計画について言わないとだね、ってミサカはミサカは張り切って説明をはじめてみたり」
あらま
量産型能力者計画の前が大変なことに
御坂は打ち止めから様々なことを聞いた。
量産型能力者のスペックが予想以上に低かったことで、量産型能力者計画は凍結したこと。
しかしその代わりに新たなる計画、絶対能力進化計画が進められたこと。
その内容とは学園都市第一位である一方通行に御坂のクローンを20001通りの方法で殺害させることで、一方通行をレベル6に進化させようというものだということ。
しかし、その計画すら、一方通行がレベル0の少年に撃破されたことによって、不備があったとされ、中断していること。
そんな中、まだ培養液の中に入っていた検体番号20001号、打ち止めは、突然研究所から追い出されてしまったこと。
そして、まだ培養液に入っていなければならなかった打ち止めはいまだ不調であること。
御坂「なんて言うか、アンタも可哀想な子ね。まぁ、第一位もそれはそれで不憫だけど」
御坂(……レベル6だろうが何だろうが何も出来やしないのにねぇ)
御坂(それをわざわざそんな面倒なことをしてまで手に入れようとして、途中まできて不備が見つかりましたって? 笑えるわ)
打ち止め「それで、お姉さまに研究者とコンタクトを取ってほしいかな、ってミサカはミサカがここに来た理由を暴露してみたり」
御坂「お断りね。ていうか研究者なんて知らないわよ」
打ち止め「で、でもお姉さま以外に頼れる人がいないの、ってミサカはミサカはうるうると瞳を潤わせてみたり」
御坂「いいからさっさとどっか行きなさいよ」
打ち止め「でも……その…………あ、れ……?」バタッ
御坂「うわっ、どうしたのよ。……何よこの展開、面倒臭過ぎるわよ」
打ち止め「」
御坂「……とりあえず、寝かせておきましょう」
御坂「…………私がこんな顔だった頃はもっと世界が楽しく見えてたかしら?」
御坂は元々、努力家だ。
また、その努力で得たレベル5、という地位を持ちながらも、決して他人を卑下する事のない、善良な子だ。
そんな御坂の希望に満ち溢れた未来を曲げたのは、ただただレベル0との出会いだった。
幻想殺しと呼ばれる右手を持つレベル0の少年には、何度向かって行っても傷一つつけられない。
どれほど打ち負かそうと努力しても、あの少年には届かない。
そうして御坂は気が付いた。
自分がどんなに能力を高めてもあの少年には勝てないということに。
自分の唯一の取り柄であり、誰にも負けないと信じていた能力は所詮その程度だということに。
ーーそして何より
どんなに歳月をかけても、どんなに苦しみながら努力をしても、たった一つの才能には、生まれながらの力には、敵わないということに。
御坂が抱いていたささやかな幻想はきっともう粉々に砕かれてしまったのだろう。
幻想に対して現実を突きつける。
それこそが幻想殺しなのだから。
打ち止め「……う、ん?」
御坂「気がついたかしら?」
打ち止め「うん! ……なんだか最近寝ても寝ても疲れが取れないの、ってミサカはミサカは目をゴシゴシとこすってみる」
御坂(疲れだけでああなるのかしら?)
御坂「まあいいわ。私はもう行くわよ」
打ち止め「分かった……、ってミサカはミサカは頷いてみる」
御坂「あら? 私以外に頼れる人がいないんじゃなかったかしら?」
打ち止め「でもお姉さまに迷惑をかけるわけにもいかないし、ってミサカはミサカはトボトボと歩き出してみる」
御坂「………………そう」
御坂が返事を返した頃には、既に打ち止めはファミレスから出ていた。
期待させてもらうからねと
御坂「うん、思い切って大移動ってのもいいことね。あそこなんて良さそうじゃない」
御坂「……」
フラフラになりながらも御坂に迷惑をかけないために出て行った少女。
先ほどからチラチラと脳裏に浮かんで止まない。
そこで御坂は気づいた。
視界の端にとある研究所が映っているのに。
御坂「思えば人の脳内マップを勝手に使ってコソコソと変なことされるっていうのもムカつくことよねぇ」
御坂「暇潰し程度にちょーっとヤッとこっか」
直後、一つのビルが跡形もなく崩れ去った。
御坂「おっと、中にいる研究員まで潰したら意味ないわね」
御坂は電磁波で瓦礫を持ち上げて中に入る。
中は御坂の予想とは違い、たった一人の研究員しかいなかった。
芳川「あら、オリジナル?」
御坂「あらあら、レベル6への進化っていうご大層な計画はたった一人でやるものなのかしら?」
芳川「どうやら計画について知ってしまったようね。でも生憎と計画はもう頓挫しているのよ。だからみんな即座に出て行ったってわけ」
御坂「それならあのチビガキに聞いたわ。ならアンタは何してるってわけ?」
芳川「チビガキ? ちょっと待って。その子、自分のことをなんて名乗っていた?」
御坂「んー? 打ち止めだったかしら」
芳川「打ち止め? これはチャンスね。ねぇ、ちょっと信じられないかもしれないけれど、これから話すことを聞いてくれるかしら。とても大事なことよ」
御坂「はぁ、アンタ何様? アンタは私に泣いて謝る立場でしょう? それがなによ、話を聞けって。随分と頭が高いのね」
芳川「確かにあの計画は私もイカれていたとは思ったわ。それを止めることなくただただ推し進めていた私もイカれている。もうその点については返す言葉もないわ。そして許しを請うつもりもない」
芳川「だけどね、これから話すことは貴方にも関係することよ。いいや、この世界にいるすべての人に関係する」
御坂「……まあいいわ、取り敢えず最後の足掻きとして話してみれば?」
御坂は走る。
とある少女の為に。
ーー本来作る必要のなかった20001番目の個体。ミサカネットワークを統括する為に作られた『打ち止め』にはウイルスコードが打たれている。
御坂「さっきのファミレスは……あの角を右ね」
ーー今日、日付が変わる瞬間、そのウイルスは発動し、世界中に散らばった妹達には一斉に周りの人間を襲うよう命令が下る。
御坂「まだそんなに遠くには行けない筈なんだけど……」
ーーもちろん、たかが一万人の欠陥電気だけではたいした被害は出ないはずだ。
しかし、その反乱は外の者にこう思わせる。
学園都市は危険だと。
御坂「こうなったら、当てずっぽうで行くしかないわね」
ーーそうなったら、戦争の始まりだ。
御坂「もう8時か……」
ーー学園都市は確かに技術の発達により、脅威的な戦闘力を繰り出せるだろう。
しかし、外が束になって挑めばどうなのか。
御坂「全く、人がここまでやってるってのに、周りは呑気なものね……」
ーー拮抗し合う二つの勢力の争いは何を生み出すか。
すなわち、世界の終わり。
そう言ってもいいほどの事態が、起こるだろう。
そうなる前に打ち止めを見つけ、研究所まで連れていく、それが御坂に頼まれたことだった。
そうすれば、あとはこっちでウイルスの削除をする、と芳川は言っていた。
どうせそげぶで改心ハッピーエンドめでたしめでたしみたいな展開になるな
御坂豆腐メンタルっすなあ
それを聞いた時、御坂はしばらく動かなかった。
いいや、動けなかった。
状況が信じられない、とかではない。
ただ、いいのだろうか、と御坂は思ったのだ。
計画について薄々知っていながらも、自らのクローンを見捨てた自分が。
先ほども、打ち止めを少しも引き止めようとしなかった自分が。
能力なんて持っていても、なにも出来やしないだなんて思い、すべてを諦めた自分が。
そんな自分が今更、ヒーローのように登場し、敵を悪人に仕立て上げ、誰かを救おうだなんて。
けれども、御坂は動きだす。
たとえ、動き出すには遅過ぎたとしても。
たとえ、周りから責められたとしても。
自分の今までの行動すべてを、否定してでも。
この手に救う力があるのなら。
そんなことを考えながら、御坂はただ、走った。
ピピピピピ、という電子音が鳴った。御坂の携帯だ。
御坂「何かしら?」
芳川「打ち止めにウイルスを打ち込んだ天井、という元研究員の居場所が分かったわ。恐らくは打ち止めもそこにいるでしょう」
芳川「貴方はそこに行って天井を撃破してほしいわ。私も今、必要な機材を持って行っているところよ」
御坂「……そう、分かったわ」
御坂「やっーと見つけたわ。あれが天井の車ね」
すると、天井もこちらに気がついたのか、発進して来た。
御坂「甘いわね、電気を操るこの私に鉄の塊で挑むなんて、頭が終わってるんじゃないの?」
突然、天井の車は止まる。
タイヤは確かに回っているのに、まるで、見えない力で後ろから引っ張られているかのように。
天井「オ、オリジナル?!」
天井は慌ててドアを開け、打ち止めを置いて逃げようとする。
御坂「そーそー、随分と勝手してくれたみたいねぇ?」
天井「ヒ、ヒィ」
天井の悲鳴が終わる前に、磁力で勢いよくドアを閉め、天井を挟む。どうやら気絶したようだ。
御坂は打ち止め方に目を向ける。
打ち止めは苦しそうに息をしているが、どうにか芳川がくるまでは保ちそうだ。
御坂は芳川に電話をかけた。
御坂「打ち止めを見つけたわよ。天井も戦闘不能。アンタも早く来ることね」
芳川「さすがレベル5、と言ったところかしら? 私も今車で飛ばしてるから、待ってて頂戴」
御坂「随分と上から目線なことね。私の機嫌をこれ以上損ねたくなかったら、五分で来なさい」
告げるだけ告げて通信を切った時、御坂の電磁バリアが人影を捉えた。
芳川は車に乗っていると言っていたが、電磁バリアは人の姿だけを鮮明に捉える。
御坂「……何の用かしら? 生憎と、私は今、機嫌が悪いの。関係者以外は立ち去りなさい」
??「大変申し訳ございませんが……」
??「超速やかに最終信号から離れて下さい」
御坂(この殺意……。これが暗部ってヤツか)
絹旗「あなたが学園都市第三位、超電磁砲であることは重々承知です」
絹旗「……ですが、どうしても引かないとあれば超仕方ありません。全力で排除します!」
言葉と同時に絹旗は駆け寄ってきた。
御坂(ここはいったん距離をとってから様子見ね)
御坂は近くのビルへと磁力を利用して張りつく。
しかし、絹旗はそのビルを掴んで引っこ抜いた。
御坂(なっ!! どんな怪力女よ!)
御坂は慌てて別のビルへと飛び移る。
御坂(恐らくはレベル4、といったところね。そして肝心の能力名は……肉体強化とかその辺かしら?)
御坂(なら、遠くから撃ち抜くだけ!)
御坂は電撃を絹旗に向けて撃つ。
どんなに体を鍛えようと、雷の速さに勝てるわけがない。
予想通り、電撃は直撃した。
しかし、絹旗は御坂にこう言い放つ。
絹旗「全然効きませんね」
絹旗「超楽勝ですよ。……レベル5!!」
御坂(能力を駆使して電撃を防いだか)
御坂(……恐らくはアイツの能力は単なる肉体強化じゃない。私の予想が正しければ大気操作系。それも射程範囲が狭いもの)
御坂「暗闇の五月計画」
絹旗「!!」
御坂「結構前にネットに出てたわよ」
絹旗「……そうですか。ですが、だからと言って何か?」
御坂「いいえ。ただ、アンタも能力にとらわれた者たちからの被害者なんだ、ってね」
絹旗「超同情でもしているつもりですか?」
御坂「そんなわけないじゃない。でも、そんなヤツがどうして憎しみの対象の手助けをしてるの?」
絹旗「……そうするしか生きる手立てがないんです。貴方には分からないことでしょうよ」
御坂「ふーん。なら、手加減はしないわ」
絹旗「超望むところです」
御坂(電撃を撃っただけじゃ窒素の壁が電気を通さず、アイツには傷を付けられない)
御坂は電撃を使うのを止め、磁力で瓦礫を当てる作戦にした。
周りの瓦礫が一斉に絹旗を襲う。
絹旗「そんなものでは私の窒素装甲は超破れません!」
絹旗も負けじと御坂が操っていた瓦礫を御坂に投げつける。
御坂「はんっ、そんなんじゃ私には届かないわ」
当然、投げつけられた瓦礫は再び磁力によって御坂の制御下に入る。
御坂(あの子は所詮レベル4。多分私の方が長期戦には有利だと思うわ。だけど、芳川が来るまでに終わらせとかないといけないわね)
御坂(だとすると……)
御坂は磁力操作を解いた。
絹旗「? なんのつもりです?」
御坂(高圧電流の発熱で焼け死になさい!!)
御坂はありったけの電撃を放つ。
直撃こそしないが、絹旗には襲いかかる電撃を避ける術はない。
絹旗「グゥッ、アアアァァァァあああ!!」
御坂「……悪いわね。一発で決めないとこっちの身が保たないんで、全力で行かせて貰ったわ」
御坂「いい? これがレベル5よ!」
御坂「……よく覚えておきなさい」
芳川「これであの子は無事よ。今まで本当にありがとう」
御坂「……そう」
芳川「ねぇ? 一つ聞きたいんだけど。貴方、またあの生活に戻るの?」
御坂「……全部見てたってわけ? 本当にイラつくわね」
芳川「オリジナルの生活をクローンに真似させるために、どうしても必要だったのよ」
御坂「ふーん……」
御坂「…………私は」
御坂は何かを言いかけたが、突然、ピクッと顔をあげる。
芳川「どうかしたの?」
??「ハッ、やっぱ絹旗じゃ、ちと荷が重かったか」
芳川「……誰?」
御坂「ネットに出ていた時があったわ」
御坂は声の方を見つめ、答える。
御坂「……絹旗最愛が所属するアイテム」
声の女は意外そうな顔で御坂を見つめ返す。
御坂「そのリーダー、麦野沈利」
麦野「なぁーんだ、そんなとこまで知ってるのかぁ。暗部も終わりだなぁ?」
御坂「安心しなさい。私のハッキングスキルがなければこんなところまでバレることはないわ」
麦野「そんなこと、とぉでもいいんだっつぅーの!!」
麦野「私は正々堂々とお前を潰せるっていうだけで満足なんだからなぁ!!」
御坂「やれやれ、アンタも数字のコンプレックスか……」
麦野「あぁん?」
御坂「前にもいたのよね、第三位だとか第五位だとかで言ってきたヤツが」
麦野「常盤台の女王か。まぁいい、ここで潰されろ、超電磁砲!!」
麦野は原子崩しを放つ。
御坂は磁力で飛び上がって避け、能力を解析する。
御坂(根っこは私と同じで、電子を操ってんのね。ただし、破壊力では負けたわ)
御坂はついさっきまで打ち止めが乗っていた車が一瞬で塵になったのを見届け、芳川の方に目を向ける。
芳川はそそくさと打ち止めを連れ、物陰に隠れている。
御坂(まぁ、周りを気にして戦うなんてガラじゃなからね)
続いて二撃目を放った麦野に御坂も負けじと電撃を振るう。
だが、驚いたことに、電撃が御坂の意思とは関係なく湾曲した。
御坂(電撃が逸らされた?! アイツ、そんなことも出来るのか……)
麦野「どうしたどうしたぁ? ちょこまかと逃げるだけかよ第三位!!」
御坂(こっちもこっちで試したいことができたわね)
麦野がまたもや三撃目を放った時、御坂は原子崩しに干渉してみた。
原子崩しは御坂の予想通り、曲っていく。
麦野(チッ、やっぱりコイツも出来たか……。やり辛ぇなぁ!!)
御坂(はっ、負ける気がしないわ、って言えれば格好がつくんだろうけど……。生憎と絹旗っていう子に大分消耗させられたわね)
御坂と麦野は思考し、同時に答えへと辿り着いた。
御坂、麦野((次でケリをつけてやる!!))
やはり、同じような能力を持つ者にして同程度の力量。
二人は様々なところで類似しているのだろう。
しかし、勝敗は別れてしまう。完膚無きまでに。
御坂が三位で麦野は四位。
そこにある格差は、順位付けなんて所詮誰かの独断によるもの、などという言い訳では到底埋めることが出来ない。
そしてその差は、今日、さらなる広がりを見せた。
自らのクローンを必死に助けようとする者と、汚れ仕事のためとはいい、ずっと一緒に戦ってきた部下を見殺しにした者。
その差は、見る者が見れば人格による差だ、などと言うのかも知れない。
しかし、考えてもみてほしい。
能力の限界を知り、表の世界から目を背けた御坂を振り向かせたのは誰であったか。
その少女は、なぜ御坂のところに現れたのか。
量産型能力者計画の素体として御坂美琴が選ばれた理由は、麦野沈利でなく、他ならぬ御坂である必要はどこにあったか。
ーー御坂は麦野より才能があったから。
ただ、それだけで誰かに仕組まれた運命は傾く。
そして、改めて確認してほしい。
御坂の希望を打ち砕いたものは、一体何であったか。
結局のところ、御坂はある意味この世の道理のすべてを理解していたのかもしれない。
勝負は決した。
御坂は立ち、麦野は倒れている。
芳川「お、終わったの?」
御坂「……ええ」
芳川「感謝するわ。……本当にね」
御坂「そんなモノを期待してやっているわけじゃないのよ」
ーーただ、やりたかったから。
その言葉を口に出すのがなんとなく躊躇われて、御坂は口を噤んだ。
だが、そんな思いもすぐさま終わりを告げる。
視界の端で、なにかがモゾりと動くのが見えた。
麦野「ナ……、めるんじゃ……。舐めるんじゃねぇぇぇえええ!!」
その場にいる全員が驚いた。
なぜなら麦野は……麦野は右腕、左足首、さらには脇腹までもが抉り取られていたのだから。
すべて、麦野の放つ原子崩しを御坂が乗っとり、麦野にぶつけた結果だ。
芳川「なっ、あれは……」
誰もが、麦野の驚異的な執着心を前に戸惑っている中で、麦野はある物を左手で取り出し、口に入れた。
麦野「なぁ……ゴフッ、超電磁砲? 体晶って……ゲホッゲホッ、知ってるか?」
御坂「た、体晶?! そんな、まさか!!」
御坂の言葉を待つことなく、麦野は薬品の入ったケースを噛み砕く。
事態はまさしく一瞬だった。
文字通り、麦野の周りすべてが塵と化した。
上条さんはよぉぉぉぉぉお!
って思って読んでたけど、これどうなんだろ?
期待
>>30
でないんじゃないんかな
ここの御坂勝手に戦い挑んで勝手に絶望してるしさ
>>31
だよなぁ
悪条さんは面白いけど御坂悪はあんま見たことないな
鬱以外でおなしゃす
御坂「……ハァ、ハァー」
芳川「だ、大丈夫?!」
御坂「ゲホッ、ゲホッ」
芳川「すっ、すぐに救急車を呼ぶからね」
芳川(……あの時、私たちはみな、辺り一帯に撒き散らされた原子崩しを避けることが出来なかった)
芳川(そんな中、あの子は私に向かってきたものを逸らしてくれた。……完璧にね)
芳川(おかげで私も打ち止めも傷一つないわ)
芳川(だけど……)
芳川(あの子は自分の方にきたものを完璧には逸らさなかった)
芳川(いや、正確には逸らせなかったのね。恐らく、もう力尽きてしまったから)
芳川(今、かつてないぐらい恨むわ。私のこの甘さを)
冥土帰し「気分はどうだい?」
御坂「……」
冥土帰し「やれやれ。……ところで、さっきからずっと部屋の前で待っている女の子がいるんだけど、会ってみないかい?」
御坂「……」
冥土帰し「沈黙は肯定とみなさせて貰うよ」
そう言うと冥土帰しは部屋を出ていき、代わりにアホ毛が目立つ少女が入ってきた。
打ち止め「あのね、お姉さま、ってミサカはミサカは語りかけてみたり……」
御坂「……」
打ち止め「私はね、傷一つなく助かったんだよ? ってミサカはミサカは事後報告をしてみる」
御坂「……」
打ち止め「全部お姉さまのおかげだね、ってミサカはミサカは感謝の気持ちを伝えてみたり」
御坂「……」
打ち止め「ねぇ、お姉さま……」
御坂「ごめんなさいね。私、何も覚えてないの」
打ち止め「……」
御坂「だから、さっさと出ていってくれるとありがたいわ」
先ほどから泣きそうな顔をしていた打ち止めだったが、ついに瞳から涙をこぼす。
打ち止め「ごめんなさい……。ごめんなさい、ってミサカはミサカは謝ってみる……」
打ち止め「あの時、ミサカがお姉さまを巻き込んだから……ってミサカはミサカは後悔の意を表してみる」
御坂「そういうのいいから、さっさと行きなさい」
打ち止め「グスッ、グズッ……」
しばらくの間、打ち止めは泣いていたが、最後には泣き泣き出ていった。
冥土帰し「やれやれ。あれでいいのかい?」
どうやら冥土帰しは外で待っていたようで、打ち止めが出ていくと同時にまた入ってきた。
御坂「いいわよ。……不思議よね、こんな私でも覚えていることがあるわ」
御坂が覚えていること。
それは、自分がレベル5だということと、その能力の使い方。
さらに、かつて自分にはどうしても超えたい壁があって、それでも越えられなかったということ。
あとは、それによってウジウジと悩んでいたことぐらいだ。
そんな自分が誰かを救ったなんて信じられない気分だが、まぁいい。
自分には、誰かに感謝される筋合いなどないのだから。
あの子はきっとあの芳川とかいう人が世話してくれるだろう。
そんなことを思いながら、窓の外を眺める御坂であった。
ー完ー
えええええええ
総合でええやん
うわ~これ続きが読みたいな…
乙です!
ーやっぱ>>33からこっちに分岐でー
御坂「今日で退院したのはいいんだけどね……」
御坂「私に住所がないからって冥土帰しが用意してくれたらしいわ」
御坂「はぁー。ここが私の家かぁ」ガチャ
芳川「あら、超電磁砲? もう来たの。意外と早かったわね」
打ち止め「お姉さま、退院おめでとう! ってミサカはミサカはクラッカーを鳴らしてみたり」
御坂「な、何よこれ……」
芳川「もちろん、貴方の退院祝いよ」
御坂「はぁ? ちょっと待ちなさいよ」
芳川「何か不満でもあるのかしら?」
打ち止め「お姉さまは私たちと一緒に住むんだよ、ってミサカはミサカははしゃいでみたり」
御坂「何で勝手に決まってんのよ!」
芳川「だって貴方、絶対拒否するじゃない」
御坂「当たり前よ! ……もういいわ。適当に廃虚を探すわ」
芳川「待ちなさい。貴方、お金はあるのかしら?」
御坂「お金? そんなもの、キャッシュカードが……」
芳川「って言っても、カードはこちらにあるのよね」
御坂「はぁ? 窃盗じゃないのよ!」
芳川「でも警備員に通報したら学校に連れ戻されちゃうわ」
御坂「……」
芳川「ここに住むわよね、超電磁砲?」
御坂「チッ……分かったわよ」
打ち止め「わーい、ってミサカはミサカは大喜び!」
御坂「何なのよ、全く……」
まぁともあれ、御坂はここに住むことになったのだ。
彼女たちの織りなす物語は止まることを知らない。
ーーでは、またいつか、会える日まで
え、お、乙です…?
いや、これは第一部が終わりっていう?
なんかいざ書いてみると結構短かったけど、もう書く気がしない
あと、自分でも分かり辛い気がしたから言っとくけど>>33から分岐ってことは、御坂は大怪我したけど記憶は失ってないよ
では、続編にご期待下さーい
もう書く気がしないけど続編に期待って、結局どっちなんだ?
>>43しばらくしたら続編を書くかも
でも断言は出来ない
乙
出来れば長編でがんばれと
励ましてみよう
乙です
待ってるね
乙
生殺しなので続き待ってる
乙
まあ、これで終わった方が綺麗な気もするが
上条さんと一方さんが気になるから続きを待ってみよう
よっこらしょ。
∧_∧ ミ _ ドスッ
( )┌─┴┴─┐
/ つ. 終 了 |
:/o /´ .└─┬┬─┘
(_(_) ;;、`;。;`| |
ありがとうございました
もう書き込まないでください
>>1だけど、しばらく先になるとは思うけど、いつかは投下しようと思うので待っててくれると嬉しいな
いわゆる生存報告でしたー!
頑張れ
復活
続きを激しく期待
>>1だけど……
ごめん、まだ書けそうにない
書けない=書く気がないんだったら無理はしない方がいいと思うよ
自分で書きたいものを書けばいいだけなんだし
ただ期待してる人が多いのも事実だから書けないならしっかりと報告して
依頼を出しといた方がいい
/: : : : : __: :/: : ::/: : ://: : :/l::|: : :i: :l: : :ヽ: : :丶: : 丶ヾ ___
/;,, : : : //::/: : 7l,;:≠-::/: : / .l::|: : :l: :|;,,;!: : :!l: : :i: : : :|: : ::、 / ヽ
/ヽヽ: ://: :!:,X~::|: /;,,;,/: :/ リ!: ::/ノ l`ヽl !: : |: : : :l: :l: リ / そ そ お \
/: : ヽヾ/: : l/::l |/|||llllヾ,、 / |: :/ , -==、 l\:::|: : : :|i: | / う う 前 |
. /: : : //ヾ ; :|!: イ、||ll|||||::|| ノノ イ|||||||ヾ、 |: ::|!: : イ: ::|/ な 思 が
/: : ://: : :ヽソ::ヽl |{ i||ll"ン ´ i| l|||l"l `|: /|: : /'!/l ん う
∠: : : ~: : : : : : : :丶ゝ-―- , ー=z_ソ |/ ハメ;, :: ::|. だ ん
i|::ハ: : : : : : : : : : : 、ヘヘヘヘ 、 ヘヘヘヘヘ /: : : : : \,|. ろ な
|!l |: : : : : : : : :、: ::\ 、-―-, / : : :丶;,,;,:ミヽ う ら
丶: :ハ、lヽ: :ヽ: : ::\__ `~ " /: : ト; lヽ) ゝ
レ `| `、l`、>=ニ´ , _´ : :} ` /
,,、r"^~´"''''"t-`r、 _ -、 ´ヽノ \ノ / お ・
,;'~ _r-- 、__ ~f、_>'、_ | で 前 ・
f~ ,;" ~"t___ ミ、 ^'t | は ん ・
," ,~ ヾ~'-、__ ミ_ξ丶 | な 中 ・
;' ,イ .. ヽ_ ヾ、0ヽ丶 l /
( ;":: |: :: .. .`, ヾ 丶 ! \____/
;;;; :: 入:: :: :: l`ー-、 )l ヾ 丶
"~、ソ:: :い:: : \_ ノ , ヾ 丶
>>56
そうですね。書き上げるにはもっと時間がかかりそうなのでHTML化依頼を出しときました
今度書き上げた時に誰かが見てくれたら嬉しいです
長い間放置させておいてすみませんでした
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