友「すまん、俺達の友情は不滅と言ったけどな。あれ、嘘だ」(24)

友「これからは是非、恋人として付き合ってください!」

女「ふざけんな」ゲシッ

友「おぐほ! ナ、ナイスな蹴りだな……!」

女「おい、真面目にならねえとしまいにはキレるぞ」

友「し、仕方がないだろう……! だって未だに俺も信じられねえもん」

女「その言葉、お前にそっくりそのまま返すぞ。俺だってこんな状況信じたくない」

友「……えーと、朝起きたら女になってて?」

女「ああ」

友「親にも言ったけど信じてもらえなくて、自分が男だった物的証拠もなくて」

女「……ああ」

ほう、TSか?TSだな?期待するぞ?

友「お前が男だったと覚えているのは俺だけだと……」

女「そのとおりだ」

友「…………」

女「なあ、どうしたらいいんだ? 自分でも混乱してて何をどうしたらいいのかまったくわかんねえんだ……」

友「……おいおい、何を言ってるんだ」

女「ッ! 何か名案があるのか!?」

友「お前は最初から女だったぞ?」

女「は……?」

友「もう一度言う。女は最初から女だった」

女「ふ、ふざけんなよテメェ!? お前にも俺が男だった頃の記憶があるんだろうが!」

友「そんなこと言われてもなぁ、物的証拠もなくて記憶があるのは俺達だけだろ? それでお前が男だったと喚いたところで頭がおかしいと思われてそれでおしまいじゃん」

女「それは……そうだけどよ」

友「というわけで男として振る舞うのは止めた方がいいと、俺は思う」

女「けど……」

友「そうした上で、お前が男に戻る方法を考えようぜ?」

女「お前……!」

友「なっ?」

女「あ、ありがとよ!」

友「なに、気にすることはないさ」ワキワキ

女「……なんだその手」

友「俺の優しさに感激して抱きついてくれても構わないんだぜ?」

女「…………」

友「そんな冷たい眼で見られると目覚めそうになるからやめてっ!」

女「……お前に彼女ができない理由がなんとなくわかったよ」

友「今度はそんな慈愛に満ちた眼で!?」

女「うるせえな。俺が男に戻ったらハグでもなんでもしてやるから、どうやったら男に戻れるか考えようぜ?」

友「男に戻ってからじゃ意味がないじゃないですかやだー!」

女「わかってて言ってるんだよ!」

友「くそぅ、女体に触る数少ないチャンスが……!」

女「お前はそこでかわいてゆけ」

友「こいつひでぇ!」

女「で、なんか案はないのかよ」

友「案って言われてもなー。 女になる前に何か予兆とかなかったのか?」

女「予兆ってなんだよ」

友「こう……女になりたいなーと願ってしまったり、何かおまじないをしてしまったりとか」

女「まったくない」

友「まったく?」

女「ああ、まったく。欠片もしてない」

友「…………」

女「…………」

友「というわけでお疲れ様でしたー」

女「ふんっ!」ドスゥ

友「うぐっ、ぼてぃぶろー!? というか今時暴力系ヒロインとか流行らねえぞ!?」

女「誰が! いつ! ヒロインになったんだ!」

友「それよりなんかお前手が早くなってないか? ツッコミ入れるにしてもいつもはもう二、三言遊ぶだろ」

女「こんな姿になって普段通りでいられるわけないだろ。……お願いだから真面目になってくれよ、お前だけが頼りなんだ……」

友「お、おう……」キュン

女「……殴ってごめん」

友「い、いや俺が悪かったからな! あー、でもこの件に対して俺ができることは何もない……」

女「そうなのか……?」

友「こんな摩訶不思議現象、正直俺の手には負えない。なんで女になったのかわからないだろ? 原因がわかんねえのなら治し方も……」

女「そう、か」

友「……何の力にもなれなくてごめんな」

女「……いや、いいよ。お前がいるだけでも助けになってる」

友「そうか?」

女「ああ。だってお前が以外に俺が男であったことを証明するものはないんだからな。お前がいるだけで、俺は俺が男だったんだと信じていられる」

友「そ、そうか……」ホッ

女「……でもさ」

友「でも?」

女「……やっぱりなんでもない。んじゃ、もうそろそろ家に帰るわ」

友「ん……わかった」

寝る

おはよう!
期待

いいねいいね!期待!

いいねいいねェ最ッ高だねェ!!

【女の家】

ガチャン

女「ただいまー」

女母「あら、お帰りなさい。慌てて出かけに行ったみたいだけど、どこに行ってたの?」

女「友の家だよ」

女母「ああ、あの子ね。でもあなた、家に行ったりするほど仲が良かったかしら?」

女「えっ?」

女母「なに驚いた顔してるのよ。大きくなってから遊ぶどころかめったに話すらしなくなったじゃないの」

女「そ、そうだったね……うん」

女母「なに? また仲良くするきっかけでもできたの?」

女「ま、まあそんな感じ……」

女母「ふーん……」

女「な、なんだよっ」

女母「別にあんたが誰と仲良くしようと勝手だけどね。なに? 恋人にでもなった?」

女「そっ、そんなんじゃねぇよ! ただの友達だ! 友達!」

女母「あら、そう。つまんないわね」

女「まったく、急に何を言い出すんだよ……」

女母「でもねぇ、あんたはそうでも相手はどうかしらね?」

女「何がだよ」

女母「あれくらいの歳の男の子はねぇ、脳内ピンク色よ? ヤることしか考えてないんだから」

女「……確かに」

女母「ほら、あんたもわかっているのなら隙を見せちゃダメよ? いつ襲われちゃうかわかったもんじゃないから」

女「……」

女母「特にあの友君はスケベそうだしねぇ……」

女「それには同意する」

女母「ま、あんたも女なんだから気をつけなさいってことよ」

女「……なんとなくわかった」

女母「ま、最近は草食系だのなんだの言われてるけど私が思うに男の根本は狼だから」

女「う、うん……」

ガチャン

女父「ふぅー、ただいまー」

女「お帰り」

女母「あら、うちの狼が帰ってきたわ」

女父「狼?」

女母「男はみんな狼だって話よ。どうやらうちの娘もようやく色気づいたみたいだから」

女父「えー……あー……そうなのかい?」

女「違う! ただの友達だって言ってるだろ!?」

女母「あー、怖い怖い」

女父「あんまりいじらないでやってくれよ。思春期なんだから、その、いろいろ複雑だろうし」

女母「あらま、ごめんなさいね」

女「別に……」

女母「あら、怒らせちゃったみたい」

女「別に怒ってねえよ」トタトタトタ…

ガチャン

女母「あら、自分の部屋に行っちゃった」

女父「ふぅー……」

女母「なにホッとしてるのよ」

女父「いや、あれくらいの娘にどう接したらいいのかわかんないから緊張して……」

女母「別に普通に接すればいいと思うけど?」

女父「その普通が難しいんだ」

女母「まあ、男親だしねぇ」

女父「はぁ、もし自分の子が息子だったらもっとうまくやれてたのになぁ」

女母「…………」

女父「なんで黙るんだい?」

女母「さーて、お夕飯の支度しましょ」

【女の部屋】

ガチャン

女「…………ふぅ」ポスッ

女「あー、女になってても親の様子がまったく変わってなくて嬉しいというかなんというか……」

女「女の子扱いされてるだけであとは同じかー……」

女「うーん…………」

女「とりあえずアイツに電話するか」

女「あ、アイツの電話番号入ってねえし。えーとたしかー……」

女「…………」トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル…ガチャ

友「はい、もしもし」

女「おっ、繋がった」

友「えーと、どちら様でしょうか?」

女「俺だよ、俺俺」

友「…………」

女「おーい?」

友「……ああ、お前か! 名前がでてなかったからいったい誰かと悩んでた!」

女「あー、やっぱりか。なんかこっちもお前の番号登録されてなくてさ、うろ覚えだったけどつながってよかった」

友「マジで? よく覚えてたなー、すげー」

女「それほどでもない」ドヤッ

友「それで? 用事はいったいなんなんだ?」

女「あー……まあ、とりあえずだ。親と話してみて現状の確認をしてみたから報告をしようかと」

友「おぉう、なるほど。なんか差違はあったか?」

女「まず、親からの扱いは女扱いされてる以外はいつも通りだった」

寝る

友「そっか」

女「おう。で、母親から聞いた感じだと俺の友人関係が男だった時から変化してるみたいなんだよ」

友「変化……か?」

女「こっちの俺とお前、仲がよくなかったらしいぞ」

友「マジで!?」

女「ああ、母さんがそう言ってた。なんつうか大きくなってからは全然話さなくなったんだと」

友「……現実の異性の幼なじみなんてそんなもんだよなぁ」

女「まあ、お前が相手だから仕方ないだろ」

友「どういう意味なのか非常に問い詰めたいんだが!」

女「言っていいのか? お前の女に引かれるポイントを余すところなく」

友「中身がお前でも女子に言われたらへこむんで勘弁……」

女「自覚しているなら直せよなー」

友「がっついたらいけないのか!? 草食系男子なんかクソくらえだろ!」

女(……こいつに限っては本当に脳内ピンク色なんだろうなぁ)

友「そうなるとあれだなー。あんまり人前で話さない方がいいか?」

女「……なんでだよ?」

友「いやだって大した接点もなかった奴等が急に仲よさげにしてたら怪しまれないか? 理由なんて説明できないしさ」

女「…………」

友「いや、俺の気にし過ぎかもしれないが……」

女「……気にし過ぎだろ。それにいざとなったら適当に口裏合わせればいいさ」

友「お前がそう言うのならそうする」

女「というかこの体の友人関係はアドレスを見てしか確認してないんだよ。」

友「……」ゴクリ

女「なんだその唾を飲み込む音?」

友「も、もしかしてだけどさ……?」

女「あん?」

友「女の子のアドレスが入っているのか!?」

女「そりゃあそうだろ、この体は女なんだから」

友「……お前を親友と見込んで言う、一生のお願いだっ!」

女「教えねえからな」

友「俺にアドレスを教え……って、どうしてだよぉぉ!?」

女「はぁー、お前は本当に期待を裏切らないな……」

友「ど、どうかこの卑しい私めに慈悲を! ご慈悲を!」

女「必死すぎんだろ」

友「うるせえよ! 俺は灰色の青春なんてまっぴらごめんだからな。チャンスは掴もうとしなきゃ掴めないんだ!」

女(無理矢理掴もうとしているせいで何度も失敗していると思う)

友「な!な! いいだろ?」

女「……俺が男に戻れたらな」

友「言ったな? その言葉絶対忘れないからな!?」

女「あー、わかったわかった。それじゃあもうそろそろ夕飯だから切るぞ」

友「あいよ。待ってろよ、男に戻れそうな方法片っ端から探してやるからな!」プツ、ツー…ツー…

女「……よし、やる気を出させることに成功っと。ったく、最初からやる気をあれくらいやる気を出してくれればいいのに」

女「……よしっ、メシ食べるか!」

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