完二「なんスか、それ」

千枝「聞いたことないし。てか稲羽にプロレス団体なんかあったっけ？」

陽介「いや?その、何て言えばいいかな?、ハハハ……」

りせ「なあに、花村先輩？ はっきり言ってよ」

雪子「はっ！ まさか、花村くんがプロレスラーになるとか？ 覆面の代わりに、は、鼻メガネつけて……ぷぷっ」

陽介「いや着けねーよ！ どんなレスラーだよ！ ……ってまあ、丸っきり違うってわけじゃないか」

直斗「どういうことですか？」

クマ「んもー、ヨースケはヘタレクマねー。ホラ、さっさと話すクマよ」

陽介「あーもう！ 分かったよ！ ……ったく」

＞そう言うと陽介は深く深呼吸をした

＞……と思いきや物凄い早さで地面にダイブした！

陽介「お前ら頼む！ この通りだ！」ｶﾞﾊﾞｯ

全員「！！！」

完二「ちょ、どうしたんスか！？ 男が簡単に土下座なんかするもんじゃねえっスよ！」

千枝「い、いきなり何やってんのよ。ほら、とりあえず立ちなってば」

＞陽介に手を貸した

陽介「わ、悪い」

直斗「それで、一体何があったんです？ ゆっくりでいいですから、落ち着いて話してください」

陽介「ああ。それがさ……」

クマ「まーたジュネスのイベントがポシャっちゃったのよねー」

陽介「ってお前が言うなよ！ 今喋ろうとしてだだろーが！」

雪子「イベントがポシャった？」

りせ「それってもしかして、去年のライブの時みたいな？」

陽介「みたいなっていうか、まんまそうっていうか……」

直斗「それでプロレスということは、つまり」

陽介「ああ、お察しの通りだよ。明日のイベントでプロレスの試合する予定だったんだけど、急にダメになっちゃってさ」

完二「マジっすか」

陽介「フードコートにリング作って生で試合したら盛り上がると思ってさ。はあ……結構金かけて東京からレスラー呼んできたんだけどなー」

＞どうしてまたそんなことに？

陽介「それがよく分かんねー話でさ。昨日稲羽に着いたところまでは問題なかったんだけど、なんか急に集団食中毒とかで全員倒れちゃったらしくて」

直斗「集団食中毒？」

りせ「うわあ……ていうか、それ地味に大事件じゃない？」

雪子「もしかして、ジュネスの売り物で？」

千枝「うわ最悪！ てかあたしもたまにフードコートで肉串食べてるんだけど！ 何かあったらどうしよう……」

陽介「ちげーよ！ うちでは誰も飲食してないっつの！ ってかなにが『たまに』だよ、毎日食ってんだろ！ 」

千枝「ま、毎日じゃないし！」

雪子「ぷっ、ぷぷ」

千枝「雪子！」

クマ「あーはいはい、話が逸れてるクマよー。さっさとヨースケのセキニン問題に話を戻すクマ」

陽介「そんな話はしてねー！」

ペルソナ来た！

直斗「しかし、本当にとんだ災難でしたね」

完二「去年といい、ジュネスのイベント何回ポシャるんスか」

陽介「言うなよ……」

＞陽介はひどく落ち込んでいる

＞それで、どうするんだ？

陽介「そ、そうだ。それで皆に頼みたいんだけど、その」

りせ「なんかヤな予感」

千枝「あんたまさか、あたしたちにプロレスやれなんて言わないでしょうね？」

陽介「…………やっぱりダメ？」

千枝「ダメに決まってんでしょ！ いきなりそんなこと言われてはいそーですかなんて誰が」

雪子「わたし、やりたい」

千枝「ゆ、雪子？」

雪子「プロレスってあれでしょ、どっちが時間内にたくさんチョップできるか競うんだよね。わたし、やってみたい」ﾜｸﾜｸ

陽介「いや、それはちょっと違うような……」

直斗「小橋・健介戦じゃないんですから」

クマ「コバシ？ ケンスケ？」

りせ「直斗くん？」

直斗「あっ、いえ、なんでもありません」

陽介「てかさすがに女性陣にリングで戦えとは言えねーよ。その、準備や進行とかで手伝ってもらえれば有り難いなーなんて」

雪子「……チョップしたいのに」

千枝「やめなさい！」

陽介「せっかく夏休みでこっち帰ってきてんのにホント悪いけどさ……頼めねーかな、相棒」

＞陽介は真剣な顔で見つめている

＞……わかった

陽介「マジか！ 相棒！」

完二「うっし！ 鳴上先輩がやるなら俺もやるぜ！ 要はリングの上でひと暴れすりゃいいんだろ？ 去年よか性に合ってるぜ！」

陽介「か、完二！」

クマ「クマはー、か弱いからー、そゆーことはちょっとー」

陽介「いやお前は最初から確定な」

クマ「な！ なぜにクマ！」

陽介「従業員なんだから当たり前だろ。それとも何か？ もう金輪際ホームランバーはいらないと？」

クマ「お、横暴クマ！ ろーどーナントカ違反クマよ！ よよよ」

陽介「あとは……」ﾁﾗｯ

千枝「？ なんであたしを見んのよ」

陽介「いや、里中さんのお力も借りたいなーなんて」

千枝「はあ！？ さっき女性陣はいいとかなんとか言ってたじゃん！」

陽介「そりゃだって、普通の女性に肉弾戦はさせらんないだろ」

千枝「あたしならいいと？」

陽介「…………」

千枝「…………」

陽介「…………」

千枝「……[ﾋﾟｰｰｰ]っ！」ｹﾞｼｯ

陽介「おごっ！」

＞鋭い蹴りが陽介の下腹部に入った

＞物凄く痛そうだ……

千枝「フン！」

陽介「あ、相棒。頼む、何とか里中を説得してくれ……」

＞千枝の説得を頼まれてしまった

＞千枝はかなり機嫌を損ねているが、今の伝達力なら何とか説得できそうだ……

＞…………

千枝「ん？ 鳴上くん？」

＞ｶﾞｼｯ

千枝「えっ、ちょっと」

＞いいか、プロレスとは……

千枝「え？ え？」

＞千枝にプロレスの何たるかを力説した

＞力道山、BI砲、巌流島、革命軍、四天王、U系、インディブーム……

＞溢れる知識でプロレスの歴史を説き伏せた

千枝「わ、わかった、出ます！ 出るからもう許して！」

＞やったな、陽介

陽介「サンキュー、相棒！ てかお前プロレス詳しかったのな。全然知らなかったぜ」

りせ「いがーい。でもそんな先輩もカッコいいかも」

直斗「さすがです、先輩。ただ欲をいえばもう少し歴代のガイジンレスラーたちの功績を絡めてくれれば完璧でした」

完二「な、直斗？」

雪子「直斗くんもプロレス好きなの？」

直斗「あ、いえ、その……少しだけ」

完二「(少しっていうレベルか……？)」

りせ「ますます意外。直斗くんとプロレスなんて全然結びつかないし」

直斗「そ、その。子どもの頃はヒーローものが好きだったので、その延長で」

りせ「ふーん、なるほどね……じゃあ、実況解説はりせちーと直斗コンビで頑張っちゃおうか！」

陽介「い、いいのか？」

直斗「まあ、それくらいでしたら……」

陽介「やったぜ！ 光が見えてきた！」

直斗「あ、ですが里中先輩を入れると5人です。このままでは一人余るのでは？ それともまさかリーグ戦を？」

陽介「それなら大丈夫だ。ちょっとアテがあるから、一人くらいなんとかなるだろ」

＞じゃあ決まりだな

完二「うおっしゃあ！ 燃えてきたぜ！」

りせ「完二ってば、直斗くんがプロレス好きだって聞いてやる気出ちゃった？」

完二「バっ！ バカ野郎！ そそそそんなんじゃねえよ！」

直斗「(プロレスの解説か……。帰ったら小鉄先生のビデオ見よう)」

千枝「うわっ、なんか緊張してきた。てかプロレスってどうすりゃいいの？ 全然わかんないんだけど」

＞いつも通りでいい

千枝「ホント？ 鳴上くんが言うならそれでいっか。アチョーってね」

雪子「千枝。わたし、セコンドにつくから」

陽介「お、それいいね。絵になりそうだ」

雪子「だからチョップ……」

直斗「天城先輩。セコンド乱入は反則ですよ」

クマ「むおー！ こうなったら野生の本能見せたるクマ！ イキリタツ！」

＞みんな張り切っているようだ

＞試合は明日、ジュネスフードコートの特設リングだ……

使えない言葉とか記号とか結構あるんですね…
まさかピー音入るとは…

メール欄にsagaっていれたら良いよ

>>10
メール欄にsagaって入れなさい
sageじゃないですよ

>>11
>>12
ありがとうございますら

すいません、まちがえました
なんだ、らって…

このスレのお陰でP4U2が明日稼働する事を思い出したわ

＞翌日、ジュネス八十稲羽店

＞フードコートは既に客で賑わっている

＞店内を見回すとすぐに、圧倒的な存在感を放つリングを見つけた

＞かなり本格的だ……

＞……！！

＞よく見るとマットやコーナーポストに協賛企業の名前が入っている！

＞「四目内書店」

＞「中華料理店 愛家」

＞「惣菜大学」

＞「占いの館 THE長鼻」

＞見慣れた店名に紛れて、とんでもない名前を
見つけてしまった！

＞……そっとしておこう

陽介「お、相棒！ もう来てたのか？」

クマ「センセーイ、やっほークマ！」

＞陽介、クマ

陽介「どうだリングは？ 間近で見るとなかなか迫力あんだろ？ ま、レンタルなんだけどな。でも組み立てんのマジで大変だったんだぜ」

クマ「クマもガンバりすぎてお疲れクマよ?」

陽介「お前はほとんど遊んでただろーが！」

クマ「なんのことクマー？」

陽介「ほっほー。お前な、そろそろホントにおやつ抜きの刑に……って、あいつらも来たか」

千枝「おっす！ 皆の衆！」

雪子「おはよう」

りせ「おっはよー、先輩！」

直斗「おはようごさいます……おや、随分本格的なリングですね」

陽介「おう！ スゲーだろ？」

千枝「ていうか思ったよりお客さん来てんじゃん。うわどうしよ、また緊張してきた」

雪子「千枝なら大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」

りせ「あれ？ バ完二のやつ、まだ来てないじゃん。一番下っ端のくせに遅刻なんてどんな生意気よ」

完二「誰が下っ端だ！ コラァ！」

陽介「お、完二も来たか・・ってうお！」

千枝「うわ、完二くんどうしたの？」

完二「い、いや、これはちょっと」

＞照れ臭そうに掻いたその頭は、以前の派手な金髪に戻っている……！

りせ「あー、アンタ髪の色戻したの？ せっかく真面目ぶって黒くしてたのに」

クマ「やれやれ、完二のコーセイも長くは続かなかったクマね」

完二「うるせー！ 今日だけだっつの！」

直斗「というと、まさか今日のために？」

完二「お、おう。なんつーか、家帰ってから俺なりに調べたんだけどよ。なんだ、ヒール役っつーのが必要なんだろ？ プロレスには」

直斗「まあ絶対に必要という訳ではありませんが、確かにベビーフェイスとヒールの対立というのはプロレスにおける王道パターンの一つですね」

陽介「お前、そのためにわざわざ染め直したのかよ」

雪子「おばさん、怒ってなかった？」

完二「まあぶっちゃけスゲー怒ってたっつーか久しぶりにマジビンタもらったスけど……でもやるからには半端なマネしたくねーんで！ 後悔はないっス！」

＞完二は物凄いやる気を見せている！

直斗「……素晴らしいです。巽くん」

完二「えっ？」

直斗「自らを巧みに演出する自己プロデュース能力。一流のレスラーには絶対に不可欠な力です。誰にも教わらずそこまで辿り着くとは……正直、感動すら覚えました」

完二「お、そ、そうか？」

陽介「おいおいベタ褒めじゃねーか」

りせ「完二、顔赤くし過ぎ」

完二「うっ、うるせ！ テメェ！ 赤くなんてしてn」

雪子「そんなことより、昨日言ってたアテってどうなったの？」ｻﾞｯｸﾘ

完二「そ、そんなことって」

千枝「あー、そういえばそんなこと言ってたっけ」

りせ「で、結局誰なの？ まさか花村先輩のお父さんとかってオチ？」

陽介「ちげーよ！ 親子で参加ってどんだけプロレス好きな家族だよ！」

＞まさか、おおたn

陽介「それもちげーよ！ てか呼ばねーよ！ 勝ち目ねーだろ俺ら！」

千枝「じゃあ誰なのさ？」

陽介「いや、もうそろそろ来るはずなんだけど……」

ｱｲｷﾞｽ「お待たせしました」ｻﾞｯ

美鶴「しばらく振りだな、君たち」

全員「！！！」

明彦「ほほう……なかなか良さそうなリングがあるじゃないか」

直斗「き、桐条さん！？ なぜこんなところに……」

千枝「アイギスさんと、それに師匠まで！」

明彦「よう里中。ちゃんと体は鍛えているか？ お前らも久しぶりだな」

りせ「え、えっと……まさか花村先輩の言ってたアテって」

陽介「ま、そういうことさ」

クマ「うっひょ?！ ミッチャンにアイチャン！ ついでにアッキーも、会いたかったクマ?！」

明彦「誰がついでだ」

直斗「花村先輩、すごいことをしましたね……お二人はまだしも桐条さんなんて、おいそれと呼び出せるような人ではないんですよ？」

陽介「うっ」

美鶴「フフ、そんなに持ち上げないでくれ。今回は完全なプライベートで来ているんだ。任務も宗家のことも関係ないとなれば、私とて一介の学生に過ぎないよ」

直斗「は、はあ」

＞……ｶﾞﾔｶﾞﾔ

＞なんだろうか、やけに周囲が騒がしい

＞よく見ると大勢の客がフードコートの手すりから身を乗り出して、駐車場を凝視している……

＞ﾅﾝﾀﾞ ｱﾚ？?
＞ﾘﾑｼﾞﾝ ｼﾞｬﾈｰｶ！?
＞ｽｹﾞｰ ﾊｼﾞﾒﾃ ﾐﾀｾﾞ！

＞……ｶﾞﾔｶﾞﾔ

全員「…………」

美鶴「…………」

ｱｲｷﾞｽ「美鶴さん」

美鶴「何も言うな、アイギス」

ｱｲｷﾞｽ「了解しました」

美鶴「ゴホン、いや失礼。プライベートというのは決して嘘ではないんだ。どうか信じてほしい」

千枝「は、はあ」

完二「それにしたって、よくわざわざこんなトコまで来たっスね」

美鶴「何日前だったか、そこの花村君から連絡があって泣きつかれてしまってな。ちょうど良くと言うべきか、奇跡的に我々のスケジュールが空いていたので、参加させてもらうことにしたんだ」

明彦「例の件ではお前らにも世話になったしな。その礼ってところだ」

ｱｲｷﾞｽ「で、あります」

雪子「そうだったんですか……」

陽介「いや?、ホント助かりました！ この通りっす！」ﾍﾟｺﾍﾟｺ

美鶴「本当はラビリスも連れて来たかったのだが……運悪く大事なメンテナンスの日でな。本人も残念がっていたよ」

＞そうですか……

クマ「ラビチャン……」ｼｭﾝ

明彦「なあに、こんなことの一度や二度でどうにかなるような絆じゃないんだろ、お前らは？」

クマ「当然クマ！ クマたちとラビチャンは、ズッ友クマ！」

完二「おうよ！」

雪子「おうよー！」

千枝「さすが師匠！ いいこと言う！」

美鶴「フフフ、ラビリスもいい仲間に恵まれたようだな(……ズッ友？ 初めて聞く言葉だ)」

ｱｲｷﾞｽ「美鶴さん。ズッ友とは『ずっと友達だよ』の略であります。発音としては『ズッ友だょぉぉ！』がよりベターであります」

美鶴「……ありがとう、アイギス」

明彦「まあとにかくそういう訳なんで、遠慮は無用だ。今日は互いの鍛え上げた肉体で存分に語り合おうじゃないか」

りせ「真田さん……その言い方ちょっと完二っぽい」

完二「テメッ！ どーいう意味だコラァ！」

千枝「師匠も参加するなんて、ますます負けらんないね！ うわ?なんか燃えてきた！」

明彦「ふふふ、どこからでもかかってこい！ ……とその前に、腹ごしらえが必要だな。肉がベストなんだが」

千枝「あ、あたしも！ じゃあ愛家の出前とろう！ 師匠も肉丼でいいですか？」

明彦「肉丼？ なんて甘美な響きだ。よし、それを3人前だ」

ｱｲｷﾞｽ「真田さん。食後のプロテインは持参しているのですか？」

明彦「！！！」

陽介「さ、真田さん？」

明彦「お、俺としたことがなんという失態だ！ クソッ！ おい花村！」

陽介「は、はい！」

明彦「このスーパーにプロテインは置いているか？」

陽介「は、はあ。そりゃありますけど。確か健康食品コーナーに」

明彦「よし、押さえろ！」

陽介「えっ？」

明彦「急げ！ 今しかないぞ、俺たちがやるのは！」

陽介「いや、なに言ってんのかちょっと……」

美鶴「まったく明彦のやつは……すまない、花村君。この男はプロテインが絡むと時々こうなるんだ。悪いが買いに行ってやってくれないか」

陽介「は、はあ。そりゃ別にいいっすけど」

＞陽介は食品売り場に走っていった

＞ちょうど入れ違いで、愛家のあいかが岡持ちを持ってやって来た

あいか「おまちどー」

千枝「よっ、あいかちゃん。待ってました！」

あいか「肉丼、3人前が二つ。丼、置いといてー」

千枝「ありがとー！」

りせ「って千枝先輩も3人前なの？」

千枝「だって負けてらんないんだもん。ほら師匠、これが稲羽名物の肉丼ですよ」

明彦「おおっ！ これは……見ているだけでタンパク質を摂取できそうだ！ よし」ﾊﾟｸｯ ﾓｸﾞﾓｸﾞ

明彦「う、うまい！ これは、うみうしに勝るとも劣らない！」

美鶴「まったく。お前という男は」

雪子「千枝も、あんまり食べすぎると動けなくなっちゃうよ？」

千枝「平気だってー」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

＞二人は猛烈な勢いで食べ続けている

あいか「なーるかーみさん」

＞？

＞ 気づけばあいかが隣に立っていた

＞どうした？

あいか「今日、ジュネスでなにか、やるの？」

＞あいかに事情を説明した……

あいか「そーう」

＞興味あるのか？?そういえば愛家もスポンサーのようだが……

あいか「お父さんがプロレス好き。わたしは、べつに」

＞そうか

あいか「それより、食中毒」

＞……？

＞何か知っているのか？

あいか「……ウワサ」

＞噂？?

あいか「入院した人たち、みんな言ってたって」

＞なんて？

あいか「あれは、バイオテロだって」

＞！！！

あいか「それじゃ」

＞あいかは物騒な言葉を置いて去っていった

＞これは、本当になにかの事件なのだろうか……

クマ「ところで、ミッチャンとアイチャンも試合に出るクマか？」

美鶴「いや、私たちは見物だ。明彦がやる気になっているしな。ゆっくり楽しませてもらうよ」

ｱｲｷﾞｽ「待機モードであります」

明彦「任せろ……ﾑｼｬﾑｼｬ……プロレスだろうとボクシングだろうと……ﾑｼｬﾑｼｬ……リングの上で己の肉体を武器に戦うのは……ﾑｼｬﾑｼｬ……変わらんからな」ｷﾘｯ

直斗「あ、あの」

美鶴「 すまない白鐘君。こら明彦、さすがに行儀が悪すぎるぞ」

直斗「いえ、そうではなくて。その……言いにくいんですが、プロレスのルールではナックルパート、所謂グーパンチは反則なんですが……」

明彦「…………」ﾋﾟﾀｯ

完二「そうなのか？」

直斗「ええ、割と常識だと思っていたのですが……」

千枝「け、蹴りは？」

直斗「蹴りは基本的にアリです。むしろ豊富なバリエーションがありますし、得意技にしているレスラーも多いですよ」

千枝「そっか、よかった?！」

雪子「ち、千枝」

千枝「あ……」

明彦「…………」ﾌﾙﾌﾙ

完二「お、おい。震えてんぞ」

直斗「だ、大丈夫ですよ。軌道はそのままにインパクトの瞬間掌底に変えればいいんですから」

ｱｲｷﾞｽ「なるほど。掌の付け根の最も固い部分をフックの要領で相手の顔面に叩き込む。限りなくグレーな白、むしろ心証的には黒に近いグレーでありますね」

りせ「あ、アイギスさん！」

明彦「…………」

陽介「お待たせしましたー！ ジュネス印のきびだんご、なんつってー！ プロテイン買って来ました！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

＞微妙な空気の中、やけに陽気な陽介がジュネスの買い物袋を提げて戻ってきた

陽介「えっと、なんか色々種類があってわかんなかったんすけど、ホエイ？ とかっていうのでよかったですか？ あ、いや、これは俺のオゴリってことで！ わざわざ遠くから来てもらってるんすから、これくらいさせてくださいよー」

＞ゴホン！

陽介「ん？ どした、相棒。風邪か？ そんなこと言っても棄権は認めねーよ？ 棄権なんて聞けん、なんつってな！」

千枝「……花村。テンション」

陽介「え、なんだ里中。なんか言ったか？」

千枝「テンション！」

クマ「はぁ、ヨースケはホンマにガッカリ王子だクマね?」

陽介「は？ なんだよクマ吉、藪から棒に」

りせ「今回はクマが正しい」

美鶴「なんというか、そういう駄洒落を聞かされると、王子が別の字に思えてくるな」

陽介「は？ な、なんすか？」

明彦「…………棄権する」

陽介「えっ！！ なんで！？ なんすかソレ！ てか俺がいない間になにがあったんだよ！」

＞陽介に経緯を説明した

陽介「え?、わかったようなわからないような……グーじゃなくてパーじゃダメなんすか？」

明彦「グーとかパーとかの問題じゃないんだよ！」ｸﾜｯ

陽介「すっ、すんません！」

明彦「これは俺のボクサーとしての信念の問題だ！ 掌底ぽくすればいいとか、そういうことじゃないんだ。はっきりと拳が握れない以上、リングに上がることは出来ん！」

雪子「(てことはやっぱりグーじゃないとダメってことでしょ？)」

完二「(グーとかパーの問題っスよね……)」

千枝「(そこっ！ シーッ！)」

陽介「わ、わかりました。信念の問題なら仕方ないっすよね、ははは」

ｱｲｷﾞｽ「ということは、わたしの出番でしょうか？」

美鶴「そうだな。頼めるかアイギス？」

ｱｲｷﾞｽ「了解であります」

りせ「えっ、でもさすがに銃とかは……」

ｱｲｷﾞｽ「もちろん重火器の使用はおろか、一切の反則行為はしないと約束するであります」

美鶴「だ、そうだ。花村君。明彦の代わり、アイギスでは不足か？」

陽介「い、いえ！ 出てくれるなら大歓迎っす！ むしろ野郎ばかりで華が不足してたから渡りに船っつーか……ふごっ！」

千枝「死ね！」

＞千枝のつま先が陽介の股間に食い込んでいる……

雪子「千枝、靴が汚れちゃうよ？」

りせ「やだー」

陽介「ちょ、それはあんまり……」ﾋﾟｸﾋﾟｸ

明彦「すまんな。こんな土壇場でキャンセルするなど、不覚の極みだ。もっとよくルールを確認しておくべきだった」

直斗「あの、もしよろしければ、真田さんにはレフェリーをお願いするのはどうでしょうか？」

明彦「レフェリー？」

直斗「ええ。人手も不足していますし、真田さんの体格ならリングに上がった時の見栄えもいいですし。ルールなら、僕がひと通りお教えしますから」

明彦「ふむ。俺は構わんが、どうする？」

陽介「ぜ、ぜひお願いします」ﾋﾟｸﾋﾟｸ

りせ「じゃあ桐条さんは、あたしと直斗くんと一緒に実況席でいいですか？」

美鶴「ああ。私で役に立つのなら……と言っても、正直プロレスというものは全く知らないんだが」

直斗「感じたままを言って下されば大丈夫ですよ。ゲストコメンテーターということで」

美鶴「わかった。それではよろしく頼もう」

陽介「いてて……しかし、なんやかんやで舞台が整ってきたな。これならなんとかなりそうだぜ」

完二「おっしゃあ！ 巽完二、男見せてやるぜ！」

クマ「時は来た！ それだけクマ！」

ｱｲｷﾞｽ「サーバーにアクセス。過去50年分の試合データをダウンロード。より合理的な戦闘スタイルを検索するであります」

雪子「千枝、絶対チョップさせてね」

千枝「雪子、まだ言ってんの……」

＞皆の協力で、どうにか舞台は整ったようだ

＞試合はもうすぐだ……

一旦切ります
今日もう少しだけ投下するかもしれません

それにしてもちょくちょく入れた覚えのない？が混じるのはなぜだ…

DDTかドラゴンゲートか

りせ「レディース＆ジェントルメン！ 長らくお待たせ致しました、これよりジュネス八十稲羽店プレゼンツ・第一回稲羽プロレス大会を開催致します！」

＞ﾜｰﾜｰ！
＞ｷｬｰ！ ﾘｾﾁｰ！

＞すごい盛り上がりだ……！

りせ「実況はこのわたくし、りせちーこと久慈川りせがお届けします」

＞ﾘｾﾁｰ！ ｶﾞﾝﾊﾞｯﾃｰ！

りせ「ありがとう！ みんな、今日はいっぱい楽しんでね！ さて、続いて解説のご紹介です。なんと名探偵はプロレスにも精通していた、ご存知探偵王子こと白鐘直斗さんです」

直斗「よろしくお願いします」

りせ「そして今日はなんとゲストコメンテーターも来てくれました。ご紹介しましょう、あの超大企業桐条グループのご令嬢であり、ご覧の通りの超絶美人！ うーん、ちょっと隣に座るのはりせちーでも勇気がいるかも……桐条美鶴さんです！」

美鶴「そ、その紹介はちょっと……まあいい。よろしく頼む」

りせ「以上の3名でお送りしていきます。今日はどうぞ最後までお付き合いください！」

＞ﾜｰﾜｰ！

りせ「観客席もヒートアップしてきましたね?。ではここで、この神聖なリングを熱き闘いで彩る選手たちをご紹介しましょう」

りせ「まずはこの人！ 鋼のシスコン番長、なんて言われてるけどホントに好きなタイプはもちろんりせちーよね？ ?我らがヒーロー、鳴上悠選手です！」

直斗「ちょっ、久慈川さん。主観的な情報を混ぜないでください！」

＞微妙に登場し辛い紹介をされてしまった……

＞だが溢れる勇気でリングに上がった！

＞ﾜｰﾜｰ！ ﾊﾞﾝﾁｮｰｸｰﾝ！

綺音「先輩、頑張ってください！」

結美「鳴上くーん、応援してるからねー！」

エビ「ヒ、ヒマだったから見にきただけよ！ ……負けたら許さないからね」

＞客席には見知った顔もいるようだ

りせ「……ちょっと黄色い声援が多いようですが、ここで調子に乗ってはいけませんね、鳴上選手」ｲﾗｯ

直斗「ええ、確かに人気も大事ですがレスラーたる者レスリングの内容で勝負して欲しいですね」ｲﾗｯ

美鶴「ど、どうしたんだ二人とも」

直斗「……いえ、失礼しました。気を取り直して次の選手にいきましょう、久慈川さん」

りせ「はい、では次の選手の入場です！ ジュネスのイベントにこの人が出ない訳にはいかないでしょう。爽やかとガッカリの間を行ったり来たり、キャプテン・ルサンチマン……もといキャプテン・ジュネス、花村陽介選手です！」

陽介「ガッカリは余計だっつーの！」

＞ﾖｰｽｹｸｰﾝ
＞ｶﾞﾝﾊﾞﾙﾉﾖ?

陽介「あ、ありがとう。パートのおばちゃんたち(声援の質が違いすぎだろチクショー！)」

＞……ﾎﾟﾝ

陽介「慰めんな！」

りせ「続きまして、女を捨て……てはいませんが、驚異の足技を持つカンフードラゴン！ 料理もそれくらい器用だったらいいのにね、里中千枝選手です！」

千枝「むきー！ りせちゃんには言われたくないっつの！」

りせ「なっ！ 千枝先輩よりはマシだもん！」

美鶴「(そういえば山岸も昔は……)」

直斗「久慈川さん、落ち着いてください」

雪子「千枝も。せっかく最近みんなで料理の練習頑張ってるんだし、仲間割れはよそう？」

＞料理の練習？

雪子「あ、なんでもないの！ 気にしないで」

りせ「ごほん、里中選手のセコンドには、天城屋自慢の次期女将、天城雪子先輩がつきます！」

雪子「わたしに任せて！」ﾊﾞｼｯ

千枝「ゆ、雪子それ……」

＞雪子は竹刀を片手に張り切っている

＞よく見ると見覚えがある……

＞去年の女装コンで使った小道具だ……！

雪子「セコンドって竹刀持ってるものなんでしょ？」

直斗「まあ、そういう人もいますが……」

りせ「さあ、どんどんいきましょう！ お次は……ってなんだ完二か。えっと何だっけ？ ナントカのガチムチ皇帝？ だっけ」

完二「コラァ！ ちゃんと紹介しやがれ！」

直斗「ではこんなのはどうでしょうか……ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ」

りせ「ふんふん……って、ちょっとカッコよ過ぎない？ まあいいけど」

りせ「お次はこの人！ 破壊力は今大会随一との声もあります、まさに男の中の男！ men'sのテイオー！ 巽完二選手です！」

完二「な、直斗。俺のことそこまで……」ﾜﾅﾜﾅ

美鶴「men'sのテイオー、か。何故だかしっくりくるフレーズだな」

直斗「でしょう？ 巽くんにぴったりだと思いますよ」

りせ「さあて、次の選手はこちらです！ ジュネスよりの刺客その2！ 外はウザかわマスコット、中身はただのセクハラ親父！ クマ選手です！」

クマ「セ、セクハラってシドイクマよ、リセチャン……。クマはただ愛情表現がアクティブなだけクマ！」

千枝「それがセクハラだっつの！」

美鶴「というか彼はあの着ぐるみのまま闘うのか？」

直斗「まあ、元々あれが本体ですし……」

りせ「さあ、いよいよ最後の選手となりました！ 飛び入り参加のサプライズ枠はこの人！ 心優しき鋼鉄の天使！ アイギス選手です！」

ｱｲｷﾞｽ「心優しき……そんな風に言われるのは初めてであります」ｷﾞｭｯ

美鶴「……粋な紹介だな。久慈川君、ありがとう」

りせ「えへへ……あ、あとレフェリーはプロテイン真田が務めます」

明彦「誰がプロテイン真田だ！ ……ん？ いや悪くないな」

＞ﾜｰﾜｰ！
＞ｷｬｰｷｬｰ！

りせ「おっと、客席の興奮も最高潮といったところでしょうか。それではこの辺で優勝者に与えられるベルトをお披露目しちゃいましょう！ 桐条さん、お願いします」

美鶴「ああ」

＞美鶴はベルトを高々と掲げた

美鶴「これがこの闘いの勝者に贈られる、栄誉あるベルトだ！ 選手諸君、ブリリアントな闘いを期待している！」

＞ﾜｰﾜｰ！
＞ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

完二「ってなんつーか、結構手作り感があるんスけど」

陽介「仕方ねーだろ？ そこまで予算が回んなかったんだよ」

千枝「ねえ、商品ってなにも出ないの？ あのショボいベルトだけ？」

陽介「あー、言っちゃった！ ショボいってハッキリ言っちゃった！」

クマ「クマが優勝したら、チエチャンとユキチャンとリセチャンとナオチャンとミッチャンとアイチャンとデートクマよ」

雪子「却下」

りせ「おっとー、選手たちがなにか揉めていますね。ナニナニ……優勝商品が出ないのかって？ んー、それもそうね」

直斗「そうねって、どうするんですか？」

りせ「よし、こうしちゃおう！ 優勝者はジュネスのフードコートで一年間食べ放題ってことで」

千枝「マ、マジ！？」

陽介「ちょっ！ ちょっと待てっ！ 無理に決まってんだろ！」

クマ「むおおお、滾ってきたクマー！」

完二「ウルァ！ 優勝はもらったぜ！」

明彦「くっ！ やはり出場すればよかったか！ いや今からでも」

美鶴「明彦……お前は稲羽に引っ越しでもする気か」

ｱｲｷﾞｽ「無用の長物であります」

陽介「どっちにしろ無理だっつーの！ ってもう誰も聞いちゃいねーし……くそっ！ こうなったら俺が優勝して無かったことにするしかねー！」
?

いわゆる波ダッシュを使うと?で表示されたりするとか
他にも表示できない文字があるかも
機種依存なのかなんなのかよく知らないけど

?
りせ「どうやら選手たちのモチベーションも俄然盛り上がってきたようです」

直斗「ま、まあ経緯はさておき効果は抜群のようですね」

りせ「さてさて、早く試合を見せろという方も多いでしょうがあともう一つだけ、今大会のレギュレーションについての説明です。ここは解説の白鐘さんにお願いしましょう」

直斗「はい。今大会はワンマッチトーナメントとなっています。6人を2つのブロックに分け、かつ各ブロックに1人ずつシード枠を設けるという形です」

美鶴「なるほど。各ブロックの一回戦の勝者がそのブロックのシード選手と闘い、その試合の勝者が晴れて決勝に進めるという訳か」

直斗「ええ。極めてシンプルな形式です。試合のルールも同様にオーソドックスなものにしています。つまり決着は3カウント、ギブアップ、KO、場外KO、レフェリーストップ、反則負けの中のいずれかになります」

りせ「なるほど。禁止行為についてもお願いします」

直斗「はい。禁止行為についても概ね通常のプロレスルールに則ります。ナックルパート、サミング、噛みつき、頭髪を掴む行為、下腹部への攻撃、爪先での蹴り、あとは……そうですね。今大会は準備期間が少なかったですから、今回に限り垂直落下系の技は禁止とさせてください」

美鶴「万全を期す、という訳だな。賢明な判断だ」

直斗「ロープブレイクはあり、場外は20カウントまで。とりあえずこのくらいが妥当でしょうか」

りせ「なるほどなるほど。白鐘さん、わかりやすい説明ありがとうございました！」

美鶴「となると残りはいよいよ組み合わせだけになるな」

りせ「はい、それなんですが……実は事前に出場者にはクジを引いてもらっているんです！ そしてそのクジの結果が今、ここにあります！」ﾄﾞﾝ！

＞ｵｰ！

りせ「さーて、ホントはもうちょっと焦らしたいところなんですが、巻きが入っちゃってるんでさくっと発表しましょう！」

全員「…………」ｺﾞｸｯ

>>33
不慣れなもので、すいません…
色々試行錯誤してみます

りせ「まずは 一回戦の組み合わせから発表します！ Aブロック一回戦は 里中千枝選手 VS クマ選手！ そしてBブロック一回戦は 花村陽介選手 VS 巽完二選手！」

＞ﾜｰﾜｰ！

千枝「うーん、クマくんかあ」

クマ「うぷぷ、チエチャンとプロレスごっこクマー」

千枝「だからそーゆーのがセクハラだっつの！」

陽介「うっわ！ いきなり完二かよ！」

完二「へへっ。先輩、手加減はしねえっスよ？」

＞ということは……

＞どうやらシードに入ったようだ

直斗「なかなか面白い組み合わせになりましたね」

美鶴「ふむ。シードは鳴上選手とアイギス選手か。それもまた興味深いな」

りせ「はい、ではそのシードに回った両選手も発表しましょう！ 鳴上悠選手は……Aブロックです！ Aブロックのシードに入りました！ 同時にアイギス選手のBブロックシードが確定！ これにより今大会の全カードが決定しました！」

＞ﾜｰﾜｰ！
＞ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

千枝「うー……キミと試合するのか。楽しみなような怖いような」

クマ「あ、あれ？ クマもう負けるの確定クマ？」

＞よろしくな

千枝「うん！ 正々堂々、恨みっこなしだかんね！」

雪子「ふふ、負けないよ」

陽介「やれやれ相棒はあっちか。てかどうすんだよ俺！ よしんば完二に勝てても次アイギスさんだろ？ 生身の攻撃なんか効くのかよ……？」

完二「なんも効かねえってこたないっしょ。どうにかやりようが……って、な、なに見てんスか？」

ｱｲｷﾞｽ「スキャンモード実行中。弱点を探しているであります」

陽介「そんなんできんの！？」

ｱｲｷﾞｽ「冗談であります。技の掛け方をシミュレートしていただけであります」

陽介「それでもコエーよ！ や、やべェ……もう俺らどう料理すっかイメージされてる」

＞全ての対戦カードが決まった

＞いよいよ試合が始まる……

＞…………

りせ「さあ、それではお待ちかね！ まずはAブロックの一回戦からです！」

これ完二が突☆入すっぞ！オラアァァァァ！！とか叫びながらリングに上がる姿を想像してしまった

決勝戦で番長がアイギスにウルトラスープレックスホールドかけられるような気が……