澪田「ありがとうっす!」 (30)
「澪田、お前今日確か誕生日だよな?」
朝、ホテルミライのレストラン。
創ちゃんがふとそんな事を言い出したっす。
おっ、創ちゃん覚えててくれたんすね。
くぅ~喜びました!これにて感涙です!
※スーパーダンガンロンパのネタバレあります
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ふむ?
「あー、日向おにぃが淫靡なセリフで澪田おねぇをたぶらかしてるー!サイテー!」
「日寄子ちゃん、それは言い過ぎだと思うよ」
階段を上がって来たのは、日寄子ちゃんと真昼ちゃんっす。
唯吹、耳はいいんで、そっち見なくても誰かくらいは分かるっすよ?
ふははは、私の才能(チカラ)をなめないでいただきたい!
「な事より、オメー誕生日なのか?澪田」
そこに話しかけてくるのは和一ちゃん。
知らなかったんすね?!
そうなんっすよ。
実は唯吹………今日!誕生日なんっす!
きゃー!言っちゃったー!!
「それなら特別大きなケーキを作らないとね!ああ、もちろん食べ終わったらそのあとはぼくのロウソクにも火を灯して」
輝々ちゃん!言わせねぇっす!
でも輝々ちゃんにケーキ作ってもらえるのは嬉しいかも。
しかも唯吹のための特別な!
特別な!
特別なケーキ!
大事な事なので繰り返させてもらったっす。
「ならば誕生日パーティでもしようではないか。勿論俺が仕切ろう」
白夜ちゃんが嬉しそうに言ってくれるっす。
ん?
パーティ?
パーティ………?
ひ ら め い た っ す
………場所は変わって、ライブハウス。
「ふ、ふゆう…飾り付けはこれでいいですかぁ……?」
蜜柑ちゃんが体を伸ばして、ライブハウスの壁に飾り付けをしてるっす。
随分きらびやかな事になっちまいました。
唯吹はその、いいっすよ?って言ったんすよ。
あ、いいって、その、
パーティやるっす!ヒーハー!
って方の。
ただ唯吹、別にここまで飾り付けをして欲しいとかは言ってないんすけどね?
一日だけだし?
それに今日は唯吹の誕生日記念ライブを開催するって話なんっす!
創ちゃんが「何が欲しい?」って聞いてきたから、唯吹は真剣に「歌いたいっす!オールナイトっす!うっひょー!」なんて言ったんっすよ。
そしたら唯吹に好きなだけ歌わせてくれるって。
しかもみんな付き合ってくれるって!
いいんすか?
やっちゃってもいいんすか?
澪田視点か…期待
「だいたいよぉ、テメェの誕生日にテメェが歌いたいってどう言う了見してんだ?澪田」
冬彦ちゃんが訝しげに聞いてくるっす。
えへへ、しょうがないっすよ。
唯吹は歌う事が生きる事なんっす。
そう。
私にとっての幸せは歌だけだから。
……だから、自分が歌いたい歌だけを歌って、聞いてくれる人に聞いて欲しかった。
ほんと、あんなリア充どもが喜ぶような曲は唯吹の良さが全然活かせてねーんす!
あんなの書きたくなかったんっす。
でも、売れた。
それで、分からなくなった。
そして、逃げた。
ああ、もう、こんなの考えるのは唯吹のキャラに反するっす。
やめやめ。
「ひゃあああ!?」
「何してんだよゲロブタ!」
「大丈夫ですか、罪木さん?ああ、コードが首にかかっていますわ」
唯吹はこの飾り付けに参加出来なかったっす。
なんか、創ちゃんが
「主役のお前がそんな事しなくていいだろ?」
って言ってくれて。
なんか手伝おうとすると
「何じゃあ澪田、体を動かしたくなってしもうたか?!」
「うっし、そんならオレとバトろうぜ?ガンガンやってりゃ時間も過ぎんだろ!」
とかって猫丸ちゃんと赤音ちゃんに止められるし。
…あと唯吹、多分赤音ちゃんには勝てねーっす。
「ふ、ふゆぅ、助けてくださぁい」
「あーあー、もう…動かないでね?蜜柑ちゃん」
真昼ちゃんが蜜柑ちゃんに絡まったコードをほどいてあげようとしてるっす。
それを見て日寄子ちゃんがぷーっと頬を膨らましてるっすよ。
「ぶー、そんなゲロブタどーでもいいじゃん!絡まってるんならずっと絡まってろよ!」
「日寄子ちゃん、そう言う事言わないの!」
「ふぇ…わ、私はいいんですよ?小泉さぁん」
「あーあーあー、ゲロブタのせいでやる気なくなったぁー」
「ではわたくしがシャカリキにお飾りいたしますわ!お手伝いお願い致します、」
「はいっ!ソニアさ」
「田中さん!」
「…いつから気付いていた?俺様は問題無く人間に見えなくなる結界を張っていたはずなのだが」
「………ソニアさーん!」
いつもの光景っす。
明るいいつもの光景。
でも、何でっすかね。
蜜柑ちゃんを見てると、何か、その………
首が締まるような、そんな気がして仕方がなくって。
気のせい、っすよね?
こんなの唯吹の夢物語っすよね?
なんでそんな事、思ったんだろう。
………でも、唯吹は嬉しいっすよ。
みんなとこうやって遊べるの。
たとえ、夢でも。
だからお願い、覚めないで。
「あはは、ごめんね澪田さん」
…あれからしばらくして。
すっかり飾り付けが終わったステージには、でかでかタイトルが
「澪田唯吹ライブツアーInジャバウォック~こっからここまで俺の陣地~」
と書いてあって。
誰が考えたんすか、この名前!?
こ、これは…
サイコーっす!シュージンっす!シュピーンって感じで唯吹のピックが轟き叫ぶっすよ!!
「実はおこがましくもこんな底辺のボクが書かせてもらったよ、あのタイトル」
と笑顔で卑屈なセリフを言うのが凪斗ちゃんっす。
相変わらず毎回、いい笑顔で怖い事を…。
それに唯吹、凪斗ちゃんは底辺だなんてこれっぽっちも思わないっす。
みんな違ってみんないい。
あ!これなんだっけ、確かその、みすづ的な名前だったはずっす…むぐぐ、ここまで名前が来てるのに思い出せない!
「気に入ってくれた?あはは、ボクなんかで澪田さんが喜んでくれるなら本望だよ」
またまたご冗談を。
唯吹はもっと凪斗ちゃんと話し合いしたいっす!
「あはは、そんないいんだよ。ボクはただみんなの希望が見たいんだ」
凪斗ちゃんはまだ、笑ってるっす。
それを見て唯吹も笑うっす。
「さぁ、出来たよ!ぼくがかんがえたさいきょうのけーき!」
猫丸ちゃんと共に、輝々ちゃんがおっきなケーキを運んできたっす!
島をまたいで持って来たんすか?
って聞いたら、どうやら近くにコテージがあるらしくって、そこにも厨房(輝々ちゃん曰くすごく簡易的なものらしいっすけど)があったみたいっす。
ためになったね!ためになったよ!
「応、もう飾りはいいんかのう」
「はい、何とか出来ましたぁ……えへへ」
「みんな、ありがとう」
なぜか創ちゃんがそんな事を言うんす。
それ唯吹のセリフですから!
残念!
「そもそも俺がパーティをやろう、って言い出したんだしな」
「そんなの気にしないでよ!」
「ええ、澪田さんのお誕生日ですから…わたくし達で盛大にお祝いしたいのですよ」
「そのくせ、この女……召喚され、盟約を交わしながらも俺達に代償を求めず、むしろ自ら供物を捧げると言い出す始末だ」
「だ、だからつまり」
「皆、澪田の誕生日を祝いたいと思っていたと言う事だ。お前だけではなくな、日向」
「あ、や、その………」
「俺がこう言い出さなければ日向、お前…ひとりで祝うつもりだっただろう?」
「うぐっ」
つまりどう言う事だべ?っすか?
「ぷー、この会話、澪田おねぇにも聞かれてるよ?日向おにぃカッコ悪ー!」
くすくす、と日寄子ちゃんが笑うっす。
それを聞いて唯吹も笑うっす。
「う、うるさいな!俺は単に澪田の誕生日を祝いたかっただけで…」
「それが抜け駆けだっつーんだよ!何オメーだけリア充になろうとしてんだバカバカ!爆発させてやる!」
「ま、待て左右田!お前が言うとシャレにならない!」
みんなが笑うっす。
唯吹も笑うっす。
「と、とにかく!」
その空気を振りほどくように、創ちゃんが声を上げたっす。
みんながそっちを見る。
唯吹も見る。
なぜか創ちゃんがステージにいて、
唯吹はそれをよく見える場所から見上げてたっす。
逆じゃね?ってのはとにかく、今は忘れて。
創ちゃんは笑顔で言ったっす。
「…おめでとう、澪田」
だから唯吹は嬉しそうに、
そっちの方へ跳ねるように、
飛ぶように、
足を急かしてステージへと向かうっす。
唯吹は、
そのステージの明かりに笑顔で、笑顔で近づいて、
ステージの横側の階段をたんたんと上がって行くんす。
だって唯吹は、ステージで歌いたい。
歌いたい。
笑いたい。
まだずっと一緒にいたい。
ずっと側にいて欲しい。
創ちゃんに。
みんなに。
これはわがままなんだって、
………分かってるっす。
だって。
唯吹に近付く人はみんな………唯吹の歌だけが欲しかったんだから。
でも、これは今は、この人たちは、
この人達だけは違うって!
なんとなく、そんな風に思うんすよ!
唯吹の歌だけじゃない。
唯吹を欲しいって、唯吹にいてていいよって言ってくれてるような、
そんな気がしてるんすよ!
「…お前は私とは違う」
ペコちゃんがそんな事を言い出すっす。
へ?って聞き返すっす。
「お前は、自分の気持ちを素直に表現するべきだと思うが、私はな」
凛々しい顔がかっこよくって。
唯吹がオトコノコだったらペコちゃんに惚れてるっすよ?
ほんとこんなのほっとくって、冬彦ちゃんは何考えてんっすか?
にやっと笑みを浮かべて、私はステージに立つっす。
「おめでとう」
和一ちゃんが言うっす。
「おめでとうございますぅ」
蜜柑ちゃんが言うっす。
まるで示し合わせたみたいに。
「…おめでとう」
ペコちゃんが言うっす。
誕生日だからいいっすよね?
たまにはいいっすよね?
「おめでとう」
「応!おめでとう!」
「おめでとう」
「めでてぇな!」
「おめでと!」
「おめでとー」
「おめでとう」
ステージの上には、いつの間にか
唯吹と創ちゃんのふたりきり。
なんか、なんつか、時間が止まったようなっつーか、ほんとに止まってそうなっつーか…
創ちゃんと目が合って。
とくん、と胸が弾むんす。
なんか言いたくって、でも、声が出なくて、なんかどうしようもなくって、
うるっと目がうるんで、
「おめでとう、澪田」
「そ、その、今日位は名前で呼ばせてあげてもいいかなって思うっすよ!」
「あはは、何だそれ?」
「う、あ、うう!」
泣きそうな顔なんか見せるの、
唯吹らしくないっていうか。
「お前、泣きそうになってるんだろ」
…うう、図星。
「だったら何だって言うんすか?!」
だってだって。
唯吹は、唯吹そのものをこんなに喜ばれた事なかったから!
唯吹は、唯吹の作る曲だけ必要なんだと思ってたから。
唯吹は、唯吹の気持ちなんかどうだってよかったんだから。
唯吹は…!
「俺達には」
でも、そんな世界を覆してくれるのが、
「お前が必要だ」
綺麗な未来を見せてくれるのが、
「歌ってくれよ、…その、唯吹」
…創ちゃん、あなたなんっすよ。
「そ、そんなに言うんなら行くっすよ!」
ステージの片隅には唯吹の愛用のギター。
それを肩にかけると、創ちゃんはこくりと頷いてからステージを降りるっす。
光が差していて、そのライトは唯吹をまんべんなく綺麗に照らしているっすよ。
「みんな!準備いいっすか!?」
わあああああ!!
盛り上がる観客。
上がり出す歓声。
よく見たらさいきょうのけーきが赤音ちゃんに食べられてて、それを見て輝々ちゃんが焦ってて、
冬彦ちゃんは何だか神妙な顔して、隣のペコちゃんを意識しないように気をつけてるっぽく見えるっすよ。
みんなみんな、
みんな
幸せそうでーーー
唯吹、このままでも、いいかなぁ。
「それじゃ行くっす!最初の曲はーーー」
ああ、なんて言うか、幸せ。
ばんっ!
急にライトが消えたような、そんな感じ。
「それは違うよ」
………だ、れ?
「いいや、あんたは必要ない」
創ちゃん?
なんでそんな怖い顔してるっすか?
「俺達は、繰り返す」
「俺達は………」
「唯吹………」
唯吹は、唯吹は………
どうなるんすか?
「澪田」
懐かしい声が、唯吹に問いかけるっす。
しゅうっと何かが開いたような音が聞こえて。
唯吹は、その殻から飛び出したっす。
「…どうだ澪田、体に変なところはないか?」
心配そうな顔をしてそう言ってきたのは、創ちゃんだったっす。
「え?う、うーん…唯吹は特に…どうしたんすか、創ちゃん?」
「………よかった………ほ、んとに澪田だ………!」
え?
「澪田、お前は外に出られたんだ」
うん?
創ちゃんが何言ってるかよく分かんないんすけど。
でも、目覚めたそこはジャバウォック島なのかどうかも分かんない場所だったっす。
振り返ったら、みんないたっす。
冬彦ちゃんも、ペコちゃんも、猫丸ちゃんも、赤音ちゃんも、和一ちゃんも、輝々ちゃんも、眼蛇夢ちゃんも、ソニアちゃんも、
白夜ちゃんも、凪斗ちゃんも、真昼ちゃんも、日寄子ちゃんも
創ちゃんも、
蜜柑ちゃんも。
みんな、みんな。
みんな。
いたっす。
「おめでとう。本当の意味で、おめでとう」
その意味は唯吹には分からなかったっすけど、創ちゃんは笑顔で言ってくれたっす。
「苗木?苗木!?霧切ちやん!!何?!」
「っち、こいつらまさか…江ノ島にそそのかされて」
「白夜様ぁぁぁ?!」
「白夜?十神白夜ならここにいるぞ」
「いやあぁ!ち、近づかないでぇぇ!!」
「そんなんありかいな…そんなんって…!」
「な、なんとかならないの?!」
「なんとか?戯言を…お前達が永遠に修学旅行を行えばいい。そう、」
「ジャバウォック島でな!あばよ、おっさん」
「ま、待て、それじゃ苗木っち達は」
「ぷーくすくす、あんた達もバカだよね!こんな脆弱なシステムでわたし達を更生しようとか!」
「でもよォ、ありがてェぜ?理性を保ったまま戻ってこれたんだ」
「そ、んな………!」
「初めまして、そしてさようなら」
「おめでとう」
創ちゃんが笑顔で言うっす。
みんなも笑顔っす。
だから唯吹は笑顔で答えるっす。
「みんな、みんな………」
「ありがとうっす!」
「ありがとう、生まれてくれて、生まれ直してくれて」
「うん、うん!みんな!」
「ありがとうっす!」
澪田ちゃん誕生日おめでとうございます。
何というバッドエンド
乙
首吊ったときの走馬灯かと思ってたわ……
しかし全員生存はある意味グッドエンド
首吊りエンドとどっちか迷った結果がこれだよ
改めて唯吹ちゃん誕生日おめでとうっす
ほんとにごめんっすいろいろと
ぐぎぎぎぎぎぎ…!
ラストの意味がよく分からねーっす…
とりあえず誕生日おめでとうっす!
乙
そして、唯吹ちゃん誕生日おめでとうっす!
あばばばばばばばばばばばば
説明はスーパー野暮かと思ったけどあれだ、あの、ほら、卒業押したんっすよ
だから………はい
卒業押したら江ノ島になるんじゃ? それを回避出来たって感じなのかね。
ゲームのEnd後、日向がみんなを目覚めさせる事に成功したけど更生してなかった、かと思った。
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