黒井「961プロの天海春香だ」 (1000)


高木が事務所を設立した時から調査部を派遣し

何人のアイドルが所属し、どのようなアイドルがいるか

そして、どこからならば崩れるのかを調べさせ

その中の中心となりやすいアイドルも容易に調べがついた

私としては、その調査結果にはあまり期待はできんが

なぁに、失敗なら調査部も合わせて切り捨てればいいだけのこと。

最近になって男のプロデューサーを雇い

多少は名も知られるようになってきたところだし、頃合だろうと考えた私は

図に乗り始めた765プロを罠に嵌め

一人のアイドルを奪い取った

調査部が彼女こそ中心になり得ると名指ししたアイドル

考えに耽る私の邪魔をするように扉をノックし

そいつは自分の名前を言った

「天海、春香です」

「……ふん。入れ」

765プロの弱小事務所の中心になり得るアイドル

どれほどのものか、見せてもらおうではないか

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385018896


写真を見た時点で弱小とはいえ、こんなやつが

アイドル事務所の中心人物になることなど不可能だと

私は思っていた

「えっと……よろしくお願いします」

「……………」

だが、それは少々見直すべきだったのかもしれない

アイドル、天海春香は笑っているのだ

緊張で強張っているのかもしれないが

この女は、自分の大好きだといった事務所から引き剥がした私に対して

笑顔でよろしくと言い放った

その他者となった者を即座に切り捨てられる精神は

賞賛に値すると言えるだろう


「あの、黒井社長?」

「ふん。お前はどうしてここに来ることになったのかを理解していないのか?」

「理解はしてます。前から961プロには気をつけろと話は聞いていましたから」

「……なら、なぜそうも平然としていられる?」

私に対して

怒りや憎しみや恨みなどの感情は一切感じられない

天海春香は一体何を考えている……?

「事務所は違っても、みんなとは仲間だからです」

「くっくっく……何を言うかと思えば」

所詮、弱小プロの人間

仲良しこよし、切り捨てたわけでもなく

切り捨てられずに、信頼やら友情やらとのたまう訳か

まぁいい

「天海春香。お前にはこのオーディションを受けて貰う」

そう告げて差し出した資料を見た天海春香は

やはり、顔を顰めた


「………………」

「どうした? さっきまでの笑顔はどこへ消えたのだ?」

「……私に、765プロを潰せってことですか?」

「当然だ。お前を引き抜いたのだってそのためなのだからな」

天海春香の苦悶の表情こそ、私が期待していたものだ

こいつはただ765プロを潰すためだけの存在

それ以上でも以下でもない

「まずは765プロのアイドル如月千早と同じオーディションを受け、如月千早を蹴落とせ」

「っ……私が不合格になったら?」

「ふん。そうなった時はそうなった時だ。だが、手を抜いてもすぐに判る。その場合は……」

天海春香は私の顔を見るだけの気力はあるらしい

いや、見るだけじゃなく睨んでいるな……くっくっく。だが所詮小娘だ

「765プロ側に問題が行くだろうなぁ? なにせ、お前は元765プロなのだからな」

「……解りました。千早ちゃんと真剣勝負します」


「ほう?」

「これは歌番組だから。千早ちゃんだって本気で来ます。たとえ私が相手でも」

「……………」

「黒井社長、私頑張りますね!」

天海春香は、笑った

なぜ笑えた?

切り捨てられない仲間を蹴落とせと指示したはずだ

それに苦しみ、悩んだはずだ

なのになぜ、お前は笑ったのだ!

「黒井社長、私が765プロからいなくなっても、765プロは潰れたりしませんから」

「……そんなことはついでだ。お前が潰すのだ」

「いえ、それも無理です。みんなはそんなに弱くないですから」

天海春香の目はなんだ

私を憐れんでいるとでも言うのか?

ふざけるなよ、凡人アイドルの分際で

「もういい、さっさと出て行け」

「失礼します」


「なぜだ、なぜこんなにも苛立たせる!」

振り払った腕に当たった資料が飛散し

部屋が散らかっていく

だが、知ったことではない

あの天海春香の目

気に入らん、気に食わん!

「真剣勝負などさせるものかッ」

天海春香の手で無理矢理にでも

如月千早だけでなく、765プロの全員を突き落とさせてやるッ

突き落とさせる……?

「クックック……そうだ。突き落とさせればいい」

本人の意思など無視していいのだ

本人がどうあろうと知ったことではない

あいつは私の駒でしかないのだから

どう扱おうと……私の勝手ではないか


移籍させてから数日

レッスン担当者によれば

天海春香は一生懸命すぎるほどにレッスンをしているとのことだった

「……意外でもなんでもない」

移籍当日から

私に対して何の恨み言もなく

それどころか笑顔さえ見せるようなアイドルだからだ

しかし、それよりも驚くべきは

調査報告にあった通り、何もない所で転ぶというのが現実だったことだ

何をふざけたことをとは思ったが

「今日はすでに2回……か」

壊れるのは構わないが

勝手に転んで怪我で終了などという無様な終わりだけは許せない

しかし、これもまた驚くことだが

天海春香は幾度となく転んでも、怪我はしなかった


「あっ、黒井社長。お疲れ様です?」

「なぜそこで疑問になったのだ」

「いえ、高木社長はあまり見なかったけど、黒井社長はよく見るから……えへへっ」

「……………」

つまり、

高木よりも私が暇だと言いたいのか?

やつは弱小事務所の社長

一方で私は大企業の社長

ならば、事務所を守ることに必死な高木が忙しく

そんなことを気にする必要もない私が空いた時間を多く持つのは当然だ

しかし、それは気に食わん

「お前には如月千早を潰して貰わなければいけないのでな。実力の程を知らねばいけないのだよ」

「あはは……千早ちゃんにはちょっと敵わないと思いますよ?」

相も変わらず、天海春香は笑った


同じオーディションで競い合えること

それが嬉しいのだと天海春香はレッスンの担当に話したらしい

競い合えなどとは言っていない

蹴落とせといったはずだ

なのになぜか、天海春香は好意的に解釈する

忌々しいことだが

これに関しては私が何を言っても無駄なのかもしれない

なにせ調査部曰く

【春香ちゃんには皮肉とかは無意味かと思います】

らしいからな

……何が春香ちゃんだ。あの馬鹿め

いつの間にそんな呼び方をする仲になりおったのだ

「黒井社長?」

「なんだ、まだ用があるのか?」


私の問いに答えを返すよりも先に

天海春香は自分のカバンを漁り、小包を取り出した

「なんなのだ。懐柔するつもりか? 生憎だが、私は――」

「違いますよ。クッキーです。黒井社長にはまだあげてなかったなーって」

「……なんだと?」

「えへへっ、手作りです」

そういう問題ではない

いや、別に問題ではないが。

それで他の部所の奴らは天海春香に懐柔されたわけか

「要らないんですか?」

「私は甘いものは好かん」

「微糖ですよ?」

「……ふん。貰っておいてやる」

どうあっても渡されるとすぐに理解した私は

とりあえず受け取り、社長室へと戻った


中断

黒井の口調が不安定

期待

良スレの予感期待
クロちゃんは歌勝負でちーちゃんとはるるんを戦わせるって勝負捨てたのだろうか…音tゲフンゲフン!音程がずれやすいはるるんを歌が一番上手なちーちゃんにぶつけるって自殺行為じゃ…
あとはるるんのクッキーのやりとりで思ったがクロちゃんはやっぱりツンデレだった、安心したよ


正直に評価をするなら

実に好みの味わいだ

大方、私を最後に回したのはわざとで

周りから色々と情報を集めたのだろうな

小賢しい真似をするアイドルだな……全くもって理解ができん

しかし、なるほど

「弱小プロでも餌付けをしていたのならば……不可能ではないか」

調査部が中心になり得るといったのは

恐らくそういうことだろう

仲間だなんだと言いながら

蓋を開けてみれば

金をばら撒いた富豪のそばに貧民共が群がるごとく

天海春香のクッキーという餌に、虫が集っていただけなのだろうな

「……まぁ良い。今は天海春香は我が961の人間だ」

さぁ、集って来るがいい虫ども

全て叩き潰してやろうではないか!


しばらくしてから改めて天海春香のプロフィールを見た私は

階下の経理課にいる責任者を呼び出した

「し、失礼します」

「ふむ、楽にして構わん」

別にこの女が不正をしたわけでもなければ

他の職員が不正をしたわけでもない

それ以前に、私の会社で不正をしたならば

わざわざ呼び出したりせず、全職員の前で

その勇気を称えてやってもいいくらいだ

もちろん……全額返済をさせるが。

「呼び出したのは他でもない、天海春香についてだ」

「春香ちゃ……天海さんですか?」

……やはりここも抑えられているか

いや、不正がないなら別に構わん

あとあと駒に出来るかもしれんしな


「天海春香の地元からここまでの定期券を発行しろ」

「え?」

「学割だとかどうとかは無視でかまわん」

「良いんですか?」

「元765プロとはいえ、我が961の一員になったのだ。それ相応のもてなしをしてやらねばなるまい」

私の言葉に対して

経理責任者は嬉しそうに笑うが

そんなもの方便に決まっているではないか

向こうが私に対し、クッキーなどというちっぽけな餌を撒くなら

私は金をばら撒いてやろう。というだけだ

そこに恩義を感じ従順になるなら良し

そうならなくとも、自分の手が届かない金額での返しをされれば

二度と、あんな真似はしないはずだ

「最大期間のものでいい、やっておけ」

「は、はい」

経理責任者は駆け足で去っていく

これで、天海春香への牽制は完了だ


そう思ったのは私の思い過ごしだったらしい

翌朝、ノックもせずに天海春香は社長室に駆け込んできた

「黒井社長!」

「朝から騒々しいとは思わないか? 天海春香」

「とぼけないでください、なんですかこれ!」

机を叩くようにして置かれたのは

昨日手配させた通勤用定期券だった

「何か不満でもあるのかね?」

「大アリですよ。こんなの受け取れません!」

「なるほど、そう来るのか」

「え?」

ここで受け取らずに

自分が常にあんな小賢しい真似をできる立場にしておきたいというわけか

だが、最初に仕掛けたお前の負けなのだよ

定期は要ると思います

勝ち負けの問題なのか?

受け取ってもらわんと春香さん家に遊びにいかなならんくなるで


「昨日、クッキーを貰ったお礼だ。ぜひ受け取ってくれたまえ」

「え、でも」

「それ以前に、有望な社員の援助は惜しまないのが私なのだよ。天海春香」

「えへへっ、有望ですか~?」

……おい待て

こいつは馬鹿なのか?

私が言うのだから

当然、765プロを潰すためのコマとしてという意味に決まっているではないか

なのに何故照れる、何故喜ぶ

そうか、そういえば、お前に皮肉は無意味だったな

「ごほん。とにかくそれは受け取れ。作った以上は使って貰わなければ逆に迷惑なのだ」

「うっ……ずるいじゃないですか。予め言ってくれないなんて卑怯ですよ!」


やはり馬鹿か

馬鹿だから皮肉さえ無意味なのか

「お前だって言わなかったのではなかったか?」

「そ、それは……ほら。女の子からのプレゼントってサプライズが良くないですか?」

「……知るわけないだろう。そんなこと」

ちょっと照れくさそうにもじもじと

思春期の女子学生……だったかそういえば

くそっ、乱される

「あ、それでどうでした? 美味しかったですか?」

「食べられたものではない」

「えっ……ど、どんなとこがダメでした?」

面倒くさい

なんだこいつは

なんなのだ高木ぃっ!

「知らん。定期の話が終わったのならさっさとレッスンに行け!」

「っ……次は美味しいって言わせますからね!」

捨て台詞を吐いて、天海春香は去っていく

……待て

待て、天海春香

今なんと言った!?

くそっ、乗せられたのかっ!?


結局、私は天海春香を追うのは止めた

追ったら追ったで絶対に面倒なことになるだろう

それに、触らぬ神に祟りなしとも言うからな

「しかし……」

なんなのだ天海春香というアイドルは

怒りも恨みも憎しみもない

常に笑っているし、765プロを潰すためのレッスンにでさえ積極的だ

思わずデスクに肘をつき頭を抱えてしまう

予想外だ

いや、そもそも予想できるような人間ではなかったということか

「如月千早を負けにせず、勝たせるべきなのか?」

自分の考えに穴があるようで不安しかない

もしも少しでも穴があれば、天海春香はそこを突き破って逃げていく

そんな気がしてならなかった

期待

あ、これアカンわ
黒ちゃん完全にはるかさんのペースに乗せられとる

場所や立場は変わっても心さえつながっていれば仲間だもんげ


気分転換をするために、外へと出かける

やはり、天海春香ではなく、星井美希にするべきだったのでは? と

街中を黄金色に見せる太陽光を見て、後悔してしまう

天海春香を奪うまでは

別に失敗でも良い。次があるなどと考えていたが

どうやら、ことはそう簡単ではなかったようだ

計画は早くも修正が必要になりそうで

それをすると、奴らを付け上がらせることになる

本当ならば天海春香を今すぐ解雇したいが

表向きでは資金提供と人員提供という合法な手段をとったばかりに

そんなことも出来はしない……?

ベンチに座る私に降り注ぐ太陽を遮る男の影

「貴方は……黒井社長。ですね」

「……誰かと思えば、765プロのプロデューサーではないか」

全員引き抜いてついでに社長と事務員とプロデューサーも引き抜いてこき使ってやろうぜ!


「聞きましたよ。千早がでるオーディションに春香を出すそうですね」

「これはこれは、耳が早いではないか」

「……いや、春香からメールが」

くそっ!

天海春香ぁっ!

天海春香のふざけた態度ですっかり抜けてしまっていたのか……

外部との連絡は絶つよう命じねばならんな

「勝てると思ってるんですか?」

「おやぁ? 天海春香の力を信じたりはしないのかね?」

「信じてますよ。当然、千早の力も。だから無理だと言ってるんです」

「………………」

「春香は確かに伸びます。でも、基礎に差がある以上、今回のオーディションでは勝てません」


「ほう、では天海春香が勝ったらどうする?」

「どうもしませんよ。俺達は――」

「プロデューサーがそうでも、はたして地力の差を認識していた如月千早はどうなるのかねぇ?」

「……それが納得いく判定であれば、千早も受け入れるはずです」

この男……

私に不正をするな。そう言っているつもりなのか

「天海春香はお前たちを潰すつもりらしいぞ」

「そうでしょうか」

「なに?」

「春香は貴方が思うほど、簡単に捕まえられる子じゃないですよ」

プロデューサーは私を見つめ、私はプロデューサーを見つめる睨み合い

だがこの男は動じることなく、言い放つ

「春香を甘く見てると痛い目を見ますよ。春香にとって、事務所の壁なんていうものは存在してないですからね」

プロデューサーは意味のありそうな笑みを浮かべると

営業があるので。と、去っていく

甘く見ていると痛い目を見るだと? なぜ引き渡す際に言わんのだ

それよりも。天海春香に勝たせるか、負けさせるか

どちらにすべきか決めなければいかんのだが……見逃すか。それとも……


今日はここまでにします

即興にて少しずつ投下していく予定です

まじかよはやく次くれ

スレタイで黒井がリボンつけてオーディションにでるSSかと

>>33
クソ不覚にも吹いちまったじゃねーかww

>>29
それどこの461プロ?

クソ安価ミスった下の安価は>>28

これは良い、期待

アイマスSPで美希ではなく春香が移籍してたらどうなってたんだろうな

閣下

おつおつ

これは期待待機

>>37
二文字で結論出てワロタ

納得した


……如月千早は歌に関してはかなり真剣。むしろ

歌のみにしか興味がないといっても良いだろう

で、あるならば。

如月千早を潰すには

やはり、天海春香に勝たせるべきだろう。が

上へ上へと上がって行き

図に乗らせて、自分の力が通用するのだと思い込んだところで――蹴落とす

その方が、如月千早だけでなく

プロデューサーどもだって……いや、待て

そんなことをすれば

天海春香が図に乗るのではないか?

「くっ……なぜあの女のことを気にしなければならんのだ!」

忌々しい!

あの女がもっとまともであるなら

これほど悩む必要など……くそっ、くそっ!

天海春香め!

高木と同じくらいに目障りなやつだ!


結局、気分転換に出たはずが

天海春香に苛立つだけだったという始末

なんだ、あいつは疫病神なのか?

「……ふざけおって」

「何がふざけてるんですかー?」

「ぬおっ!?」

突然かけられた声に驚き

振り向けば、疫病神がそこにいた。笑顔で

「あははっ、ビックリしました? 天海春香です!」

「お前、なぜここにいる!」

天海春香はレッスンに行っているはずで

たとえレッスンを終えたあとだとしても

広い街中で私のもとに来るなど普通はあり得んぞ

「プロデュー……ぁ、765プロの人がここで黄昏てたーって」

「あの男ッ!」

私が天海春香に対して嫌悪感を抱いていると見抜いていたのか?

それとも、ただ偶然教えただけなのか?

どちらにしても余計なことをッ


「そんなことより、暇なんですか?」

「そんなわけがないだろう」

「えー」

「なんだその顔は!」

「だって、見るからに暇そうっていうかですね……」

ジトっとした目で天海春香は私を睨む

その表情に思わず懐かしさを感じ

頭を軽く振った

「黒井社長? 熱中症ですか? 新しく買った水ありますよ?」

「要らん!」

差し出されたペットボトルが地面に落ち

僅かに跳ねただけで、転がっていく

天海春香は呆然とその様子を見ていた


「何を勘違いしているのだ」

「………………」

「お前と慣れ親しむつもりなど、私にはない」

天海春香を置いて歩き出す

やつが追ってくることはなく

流し目で様子を伺えば

落ちたペットボトルを拾い、土を払うだけだった

これでいい。

天海春香にこれ以上乱されるわけにはいかん

如月千早との勝負は予定通り勝って貰う

天海春香がおかしな奴だろうと

765プロ、そして高木は潰す

その目的を変えることはないのだからな


その日の夕方

天海春香は社長室に現れた

「……何しに来た」

「その、なんていうか……黒井社長は寂しくないのかなって」

「何が言いたい」

「そうやって、周り全部切り離して、切り捨てて……楽しいですか?」

天海春香は笑わない

その笑わない天海春香こそ

私が求めていたものであるはずなのに

それは何かが違うような気がした

「……私には、楽しそうになんて見えません」

「だからなんだと言うんだ。お前に何がわかる。お前に何ができる。お前には何もできまい!」


「何も解るわけ無いじゃないですか。会って数日ですし」

天海春香は悲しそうに言う

憐れむような瞳で、私を見る

「解らないからきっと、黒井社長に対しては何も出来ません」

「ふん。ならば――」

「でも」

天海春香は胸元に手を当てた

言うか言わぬか迷っているような

小娘ゆえの迷い……だが、開いた瞳は強かった

「私、歌は歌えますよ。ダンスだって踊れるし、演技だって……だから」

「…………………」

「教えてください。好きな歌。好きなダンス、好きな劇。私が黒井社長に無料で見せてあげますよ」

天海春香は、笑った

平凡すぎる実力

それどころか並以下と言えるほどのスキルで

天海春香は自信たっぷりにそう言ったのだ


「ククククッ、ハハハハッ」

そんな姿を見せられたら

笑うしかないではないか

「ありえん、お前に教えたところで作品が穢れるだけだ!」

「そ、そんなこと解らないじゃないですか!」

「ならなぜ未だに底辺なのだ? ろくに歌えず踊れず演技できずだからではないのか?」

「それは……」

天海春香は言い返せず、目を伏せた

当然だ。言い返せるわけが――

「が、頑張ればもっと上手くなれます!」

――なに?

「歌もダンスも演技も! 頑張って上手くなるんです!」

――なぜ、折れない

「黒井社長、千早ちゃんとのオーディションで勝ってみせますからね!」

――なぜ、そんなにも自信を持てるッ

「そしたら、好きな歌も、ダンスも、演技も。全部教えて貰いますから!」

――なぜだ、なぜだ。なぜだ


なんなのだ、天海春香という人間は

すみません中断します

おつー
はるるん天使やなあ

乙!
構わないよ、続きを期待して待ってる


「約束ですからね!」

天海春香は勢い任せだったのか

少しだけ呼吸を乱しながらも

私を見る目だけは変わらなかった

「……だが、それでは私に利がないではないか」

「じゃぁ、私の好きな」

「そんな事に興味はない」

「むぅ」

正直言ってこの女の利用価値など

765プロにダメージを与えられるかもしれないというものでしかない

……引退させるか?

自分から引退すると言わせれば、表で余計なことにはならん

いや、今すぐ決めることでもないだろう

「負けたら私の指示に従え。絶対の命令だ」

「でも、私基本的に黒井社長の指示に従ってません?」


「そうではない。たとえお前が嫌なことであろうと、絶対に実行しろということだ」

「……あの、私まだ付き合ったこととか」

「変な方向に想像をするな! そんなことさせるわけがないだろう!」

「えへへっ、冗談です」

冗談……だと?

真面目な話をしていたのではないのか?

いや、確かに真面目な話だったはずだ

なのにわざわざ自分で空気を壊したのかこの馬鹿は

「えっと、黒井社長」

「なんだ?」

「良いですよ。受けて立ちます」

「ほう?」

天海春香は笑う

まるで勝利を確信したかのように、笑う


「相手が千早ちゃんだからって、負けるつもりはありません」

「その自信はどこからくる」

「どこから……なんですかね。えへへっ」

天海春香は笑う

ただただ、楽しそうに笑う

勝負事など眼中にはないかのように、笑う

「ただ、私は敵わないかもしれないとは思っても、負けるとは思いたくないだけです」

「…………………」

「勝負は負けと言われるまで勝てる可能性があるものだって、私はそう思ってますから」

天海春香は、笑った

私は、笑うことができなかった

この女の到底叶えられそうもない理想論のようなものを

私は笑い飛ばすことができなかった

天海春香の笑顔と強い瞳が。私を止めたのだ


……方針は決めた

天海春香と如月千早の戦いに水は差さない

勝たせることに利益がない

勝たせなければ天海春香は負ける

天海春香が負ければ、私に利がある

ゆえに、水を差す必要性などない

「じゃぁ、その。私は――」

「待て」

「はい?」

「今後、765プロとの接触は電話、メール含め禁止だ」

「え、嫌です」

な、なんだと?

今、この女は嫌だといったか?

息をつかせないほどに早く……拒絶したのか?


「もう一度言う。接触は禁止だ」

「嫌ですって言ったじゃないですか……」

天海春香はあからさまに不服そうに言うと

私のことを睨んだ

「みんな友達なので。お断りします」

「だが、情報をリークしたではないか」

「あれはその……いずれバレることですし?」

「ほう、ならばお前はまだ発表されていない楽曲が外に漏れてもいいのだな?」

「それで興味持ってもらえるなら良いかなぁ」

……。

……聞いた私が馬鹿だったようだ

「まぁ良い。だが、負ければそれさえも聞かざるを得ないことを忘れるなよ?」

「……黒井社長の意地悪」

「どうとでも言うがいい。せいぜい、オーディションで負けを宣告されるまでに別れを済ませておくのだな」

「ま、負けないもん!」

天海春香は怒鳴ると、乱暴に扉を閉めて出て行く

……天海春香は勝つ気のようだぞ、如月千早

まぁ、プロデューサーの言う通り、勝つことなどできないだろうがな


それからというもの、天海春香は今まで以上に熱心にレッスンに取り組んでいた

だが、如月千早には勝てないことは明白だ

言うまでもない

如月千早には2時間もの移動時間もなければ

ダンスや演技などのレッスンなど如月千早はほとんどせず歌にのみ全てを込めているからだ

だが、そんな中

オーディション2日前になって、天海春香に異変が訪れた

「……………………」

レッスンスタジオの中で天海春香は黙々とレッスンを続ける

傍から見れば真面目にやっているようにしか見えないが

それは天海春香だからこその違和感

「どう思いますか?」

「……確かに、おかしいな」

天海春香はいつだって笑顔。そう思っていた

しかし、今日はまだ一度も笑顔を見せてはいなかったのだ


少し気になった私は

休憩中の天海春香に声をかけてみることにした

「おい」

「………………」

天海春香は座って俯いたまま

返事も反応もすることはない

「おい、天海春香!」

もう一度強く呼ぶと

天海春香は顔を上げ、私をじぃっと見つめた

「……? 黒井社長!?」

無視していたのではなく、

本当に気づいていなかったのはその反応で分かった

もし、それが演技なら

今すぐにでもアイドルから女優に転向させるべきというほど、素の反応だったのだ

「いつものヘラヘラした態度はどうした」

「ヘラヘラって……別にそんなつもりはないです」

普段の天海春香なら笑ったりなんだりするところだが

今回は普段の3分の1くらいの明るさの声で、静かに返してきただけだった


「なんだ、何があった」

「……別に、黒井社長には関係ないですよ」

天海春香の態度的に

私が何かをした可能性もありえたのだが

如月千早との対決に水を差すことはしないと決めたし

それ以外では今のところ何かをするつもりはない

ゆえに、私ではないのだ

いや、そもそもの話

なぜ私がこの女を気にしなければいけないのだ

天海春香の元気がなかろうが、暗かろうが

私にとってはむしろありがたいことではないか


天海春香とは、実に不愉快なアイドルだ

事あるごとに私のもとに現れる上に

「コーヒー淹れてきまぁっわわわっ!」

と、社長室でコーヒーをぶちまけたり

「えへへっ、今日は三種類ですよ! 三種類!」

などと、わざわざ3種類のクッキーを作ってきたり

正直、物凄く目障りな存在だ

だからこそ、静かになっている今の天海春香は私に都合のいいものであるはずで

私がそうあって欲しいと思った姿であるはずなのだ。だが、

なぜか。

なぜか、物足りない

いつもの風景の一つが欠けてしまったような違和感が拭えないのだ


「私には関係ない。だが、そうされていると目障りなのだ」

「……千早ちゃん、なんだか黒井社長みたいでした」

「……なに?」

不意に漏れてきた天海春香の言葉は

予想どころか

天海春香の前言すら覆す言葉だった

「楽しむなんて何馬鹿なことを言ってるのって」

「…………………」

「私と貴女はオーディションでは敵なのに、一緒に頑張ろうなんてどうかしてるわって」

「如月千早の言葉は何も間違っていない」

オーディションは競い合う場だ

楽しむなんてもってのほか、相手よりもいかにして自分をアピールできるかのみに集中し

元同じ事務所であれ、一緒に頑張ろうだなどと宣うような能天気な奴はどうかしていると言えるだろう

「……そうかも、しれませんけど」

「何が不服なのだ。何が気に入らない。如月千早は正しく、お前が間違っていただけの話ではないのか?」


「真剣に勝負する事だって私も解ってます。でも、楽しむことが間違いなのかなって」

「普通、オーディションを楽しもうとは思わないと思うのだがな」

「……ほら。千早ちゃんだ」

「なんだと?」

天海春香は私を一瞥すると

小さくため息をついた

如月千早の言葉が、そんなにダメージあるものだとは思えないのだが。

「オーディションで周りを敵だって見て目を光らせてたら、きっと審査員の人たちまで睨んじゃうと思うんです」

「ほう?」

「アイドルの歌や、ダンスは相手を威嚇したり、挑発したりするものじゃなくて、相手を楽しませるもののはずなのに」

「…………………」

「楽しむこと、一緒に頑張ろうとすること。それが間違いだなんて思ってる千早ちゃんはなんだか……悲しいなって」

こいつは自分のことで落ち込んでいるとかではない

如月千早に対して可哀想だなんだと思っているから、自分まで暗い面持ちになっているだけなのか……

やはり、天海春香はただの馬鹿だ


今日はここまでです

もう少し時間に余裕があれば……

乙なの!

おつおつ
クロちゃんが春香色に染まっていっていやがる……じわじわと

「そうやって、周り全部切り離して、切り捨てて……楽しいですか?」
これ祐佑って人が書いてるアイマスの漫画で響がクロちゃんに言ったのに似てる

あの人の絵は綺麗だしキャラがみんな可愛いんだよねまあアニマスのED絵を何回か担当してた人だし当たり前だけどメインの春香雪歩響が可愛すぎる


千早は見た感じ初期千早みたいだな
千早スパイラルはめんどくさかったなー

知らなかったのか…?天海春香からは逃げられない…!!!


そんなことは悩むことなどではない。

自分を間違っていると言うだと?

そんな相手が可哀想だと?

他人のことを気にできるほどの実力もない小娘が

何を調子に乗っているのだ

「ならば、勝てばよかろう」

「え?」

「勝者こそ絶対。勝者こそが正解なのだ」

「…………………」

敗者の言葉など戯言だ

可哀想だなんだと、言っても

「お前が勝てねば、お前が間違いなのだよ!」

「っ……」

「負けるつもりはないのだろう? ならば勝て。勝って自分が正しいと如月千早に教えてやれば良い!」


「くだらないことで悩む暇があるのなら、少しでも強くなれ。でなければ所詮戯言だ」

「黒井社長……」

「……………………」

なぜ、語った

この女を鼓舞する必要など無かったではないか

負けてくれた方が私には利があるはず……なのになぜだ

【「……ごめんなさい」】

唯一、敗者に許された言葉が蘇る

いや、あれは逃げたのだ

圧倒的な実力者の前にあの女は。高木は。私は……

「黒井社長?」

「……天海、春香?」

天海春香が顔を覗く

さっきまでの暗さをかき消した明るさのある、強い瞳

「私、頑張ります。えへへっ、ありがとうございました。黒井社長」

レッスンに戻る彼女の後ろ姿を目で追う

私は期待しているのか?

地力の違う、元担当プロデューサーでさえ無理だという力量の差を

天海春香が乗り越え、如月千早を倒すという奇跡に

「……………………」

……馬鹿馬鹿しい。何が期待だ

そんなことは不可能に決まっている……私の人脈、そして金がなければ。不可能だ


天海春香

能力は平々凡々

人間性は特別。悪い方向に

騒がしい、お節介、何もない場所で転ぶ

無駄に元気、無駄に明るい、無駄に前向き

他人のことで無駄に悩む

クッキーは……中々いける味だ

コーヒーを入れるのは下手だ

なのに、届く確率は10回に4回と低めだ

「…………………」

天海春香は特殊だ

何も持っていない。なのに、なぜか狂わせる

何もできない。なのに、何かをしようと努力する

今回の私との賭けだってそうだ

天海春香に利はない

私の為に何かをする。その為であり、天海春香自身に何か得があるわけではない


滅茶苦茶なのだ、天海春香は

甘く見ようが、見まいが関係なく

私の予想を遥かに超えたことをしでかす

「……くそっ!」

力強く叩いた机

振動が腕を伝って頭を揺らし、響いた音が脳を揺らす

「何を思っているッ」

なぜ期待する。

なぜ、天海春香のことを考える!

如月千早が潰れるか否かを考えればいいではないか

なぜ、天海春香が勝つか負けるかを考え

予測不可能なあの女にもしかしたらの未来を見るのだ……

「私の目的は如月千早を含めた765プロの崩壊。高木を蹴落とすことだ」

認識を改めるために言葉を口にする

「天海春香はその道具。やつには何も、思わない」

天海春香の情報をリセットし、ただの道具と改める

もう乱されない、もう悩まない、もう期待しない

もう大丈夫だ、私は……今まで通りにやるだけだ


オーディション当日

私は会場へと向かった

前日に小うるさく

【「明日ですよ! 明日!」】

などと言われたからではなく

私の賭け事も含め

結果はすぐに知るべきだからだ

そんな私の耳に入る、騒々しい声

「どっちを応援すれば良いんだろう?」

「何言ってるのよ。雪歩。春香は今は961プロでしょ」

「伊織ちゃん、そんな言い方はダメだよっ!」

「少し落ち着きましょう。春香も千早も仲間であることには変わりないのですから」

765プロのアイドル共だった

仕事がなく暇だからか

どうやら全員でオーディション会場に来たらしい

目障りなやつらだ


「……関わりを持たない方が」

面倒なことは避けるべきだ

直感し、身を翻した瞬間

がしっと何かが腰の辺りを掴んだ

「悪者確保ーっ!」

「なっ、貴様」

「てやぁああぁぁぁ!」

「ま、待て貴様ら!」

双子の片割れ双海亜美が私を抑え、

正面からは全力疾走の双海真美

衝撃に備えようと目をつぶる

目障りだ、邪魔だ、煩わしい!

あとで倍にして返してやる

そう決め、頭の中で策を練る中

「ストーップ!」

ひときわ大きな声が響いた


私と双海真美の間に割り込んだのは

他でもない、天海春香だった

「は、はるるん!」

「なんで止めるのさ!」

「なんでって、私の社長だからだよ」

天海春香と双海真美が見つめ合い

騒ぎを聞きつけた765プロの面々が集まってきてしまった

面倒くさい奴らだ

「なんなのさっ! 私の社長って!」

「……真美。あまり騒がないで」

「あっ……」

野次馬をかき分け、双海真美の背後に現れた、如月千早

私には天海春香の表情は見えない――だが、きっと

「来たね、千早ちゃん」

「春香、私は貴女がどうであろうと関係ないわ」

「うん。解ってる。だから、真剣勝負だよ千早ちゃん」

――天海春香は、笑っている


オーディションが始まるということもあり

私たちはすぐに解放され、控え室へと戻ることが出来た

「……ふん。気合は十分のようだな」

「もちろんですよ。負けられない戦いですからね」

私との賭け事もあるのだろう

しかし、それはもう最優先事項ではない

「千早ちゃんには間違いは間違い。正しいことは正しいって気づいて欲しい」

「………………」

「だから、私は負けられません」

天海春香は、震えない

天海春香は、後ろを見ない

天海春香は、笑う

「勝ってきます、黒井社長」

私の権力も、地位も、金も、何も使わずに

天海春香は絶対的な自信だけで、口にする

「勝てるものなら、勝ってみせろ」

「はい!」


――新人アイドルを対象とした歌番組オーディションが始まった


「春香、すごい自信ですね」

「……また貴様か」

会場から少し離れたところで休んでいると

やはりいたらしい。765プロデューサーが現れた

なぜ私の居場所が判ったのかは聞くまでもない

どうせ、こっそりと後をつけて来たのだろうからな

「何かしたんですか?」

「ふん。何もしておらん」

「本当ですか?」

「天海春香に勝たれたらプライベートを話さねばならんのだ!」

思わず怒鳴ってしまった


そのことに気づいたのは昨日

思えば、それは私の不正を封じ

如月千早との真剣勝負をするためであったのではと気づき、訊ねた結果

【「えへへっ、バレちゃいました?」】

「あのずる賢い小娘めが、この私を馬鹿にしおって!」

「春香を甘く見るからですよ」

「知らん! あいつはわけが解らん。なんなのだ天海春香という女は!」

「優しくて、気が利いて、誰からでも慕われ、親しまれるような女の子ですよ」

プロデューサーは静かに答える

冗談にしか思えないが

冗談を言っているような様子ではなかった

「確かに、貴方みたいな人には煩わしいかもしれませんが、でも。全部貴方を思っての事なんですよ」

「……熱いコーヒーをスーツにぶちまけるのもか?」

「それは……ご愁傷様です」


「でも、寂しくはないでしょう?」

「私は静かな方が好みだ」

「いえ、そうではなく。少なくとも、今までよりは……楽しい日々だったんじゃないですか?」

楽しい日々。だと?

そんなわけがない

邪魔だ、目障りだ、騒々しい

人の計画を全部練り直させるような面倒なやつで

そのくせ、口だけは立派で

そのせいで、毎回毎回

天海春香のことで悩まされ、頭を痛め

スーツを傷めては買い替え

様子を見に行ってやれば暇なのかとッ

「ふざけるな! 天海春香など煩わしいだけだ!」


「そうですか」

「なんだ、何か言いたそうな顔をしているな」

プロデューサーは会場を一瞥し

再び、私へと視線を向けた

「何味のクッキーが好みでした?」

「ふむ、ココアだな。仄かな苦味と甘味が……」

「くくっ、春香には随分と頂いているようで」

「き、貴様!」

油断した

天海春香からの問いではないからと……

いや、聞き方がずるかったのだ

「すみません、春香がどうしても聞いて欲しいってメールを」

「天海春香には言うな。これ以上つけあがられたら面倒だ」

「でも、ちょっと期待してませんか? 春香が社長室に来て、新しいクッキーを持ってくること」


「そんなことあるわけがないだろう」

「そうですか……美味しいんですけどね」

「それだけか?」

「あとは、みんなから一言」

みんなとは、765プロのアイドルどもか

罵倒するか、怒りか、恨みか、憎しみか

そのいずれかを期待した天海春香は笑顔だった

だから、私は765プロの面々からのそれに

僅かなものを期待していたのかもしれない

「春香に手を出したらぜったいに許さない」

ゆえに、それを聞いたとき

私は言葉を失ってしまった

罵倒ではない。恨みでもなければ憎しみでもない

「……ふざけてるのか、貴様らは」

「やっぱり、春香を指名したからにはそういう意図もあるんじゃないかと。事務員が」

「そんな戯言を言う事務員は即刻クビにしろ!」


「貴様と話していると不愉快だ!」

「すみません」

静かな場所に行こうと外に出たはずなのに

気分を害しただけとは……くそっ

高木の犬どもめ

「私は戻る、ついてくるな、見えなくなるまでそのまま立っていろ!」

怒鳴りつけ、足早に立ち去っていく

天海春香と如月千早の対決

勝ち目はない

ゆえに、天海春香は敗北する

負けた暁には絶対命令をできるのだったな

さて……考えておかねばなるまい


しかし、結果は衝撃的なものだった

如月千早が負け、天海春香が勝ったのだ

「どういうことだ!」

「そ、そう言われましても……」

ディレクターは私の言葉に戸惑う

ふざけるな、戸惑っているのは私だ

「なぜ天海春香を合格させた! 如月千早の方が歌は上手いはずだ!」

「それはそうですが……私達が求めたのはアイドルであって歌手じゃないんですよ」

「なに……?」

「如月さんは確かに歌が上手でした。しかし、それだけでしたから」

如月千早は歌のみに集中していた

歌だけを練習してきた……それはつまり、ダンスは欠けていてあの様子なら笑顔もない

一方で、歌は拙くともダンスは平凡、笑顔は苛つくほどに足りている天海春香が勝ち残るのは、当然?

「くそっ……」

「で、ですが、如月さんは他の歌番組……」

「そのようなことはどうでもいい!」

如月千早が負け、天海春香が勝った

その事実は……変わらん!


アイドルでのオーディションだった。ということが敗因か

もしも真っ当な歌番組ならば

アイドルらしさが欠けていようと、如月千早を合格させたはず

新人アイドルに求めるのは

歌ではなく、アイドルらしさ……か

控え室の扉を叩くと

天海春香の忌々しい声が聞こえた

「えへへっ、合格ですよ! ご・う・か・く!」

「くっ……」

「後でちゃんと、お話聞かせてくださいね?」

天海春香の笑顔がこれほどまでにイラついたのは初めてだ

「仕方……あるまい」

賭けは賭けだ

負けをごまかして逃げるほど、私とて腐ってはいない

「それじゃ、その。私は千早ちゃんのところに行ってきます」

天海春香はそう言い残し、部屋から出ていった


とりあえずここまで


春香が勝てた理由は一応、納得できるものにしたつもり

クッキーは……中々いける味だ
「何味のクッキーが好みでした?」
「ふむ、ココアだな。仄かな苦味と甘味が……」
やだーすでに懐柔されてるじゃないですかー(笑)

あとピヨちゃん…あなたって人は新しいジャンルを開拓しおって!春クロとはありだ

乙。

まぁアイドルはパフォーマーだしな

静かなことが好きなのと
寂しいと感じることは違うんだぜ、クロちゃん

しもたSS投下書きながらレスするのはやめた方が良いなorz
もうしわけない

乙。
春香さんかっこよすぎでしょー。続き期待してます!

十分納得出来たよー
クロちゃんも「アイドルのオーディションだしなー」って言ってるし、なんだかんだ春香のアイドル性は認めてるのね
それとも春香が認めさせたのか

技術で優っているからと言って良い歌が歌えるとは限らんしな
春香の方が『良い』と感じる曲はたくさんある

アイドル「らしい」曲が多いのは春香さんだもんな
ちーちゃんはカッコいい曲が多いからアイドルらしくはないし

このスレの春香は魅力的だな
「勝ってきます」には惚れた


私は天海春香への認識を改めたはずだった

765プロを潰すための道具である。と

しかし、それは改めることなど出来ていなかったのかもしれない

思考の表面上では天海春香を消し去ることができたとしても

それは消えろ、消えろと。

そう思っているからこそで、結局のところ

私は天海春香を765潰しの道具ではなく

一種の忌むべき人間として捉えていた

「ゆえに、私は天海春香に期待していたのだろうな……」

勝利することではなく、敗北することを。

……私は、あの女の自信に怯えていたのだ

自分の考えも予測も。何もかもを無意味に帰す可能性のあるあの女に

以前の私が求めていた、不可能も可能にしてしまえるようなアイドルに

だから……やつのオーディションを見ることさえ出来なかった

「そして、天海春香は勝利した……私の期待を裏切って」


それは、番組側がアイドルらしさを求めたからかもしれない

しかし、それも。

如月千早が、アイドルらしさまでをも歌にかけたことも

いいや、そもそも。

11人もいるアイドルの中で

私が如月千早を相手に指定したことさえも。

全ては運だ

天海春香というアイドルに、運は味方した

「……忌々しい!」

近くにあったペットボトルを壁に叩きつけ、天海春香の衣装を睨む

目障りなほどに煌めいた衣装

どいつも、こいつも……邪魔だ。邪魔だ。邪魔だ!

ガチャッと、扉が開く

「な……」

「……なに、してるんですか?」

憎たらしい衣装を引き裂き、ゴミに変えようとしたところに、やつは来た

つまり、私は怒りにより息を荒げ、天海春香の衣装を手にしているというわけだ

「それ……私が着てた衣装。ですよね……?」

天海春香が一歩退く

怒りによる熱などどこかへと消え

今は血が抜けたかのように、冷静だった

変態だー


「待て……待て、天海春香」

「ま、待てません……待てないですよっ!」

天海春香はあからさまな嫌悪感を露わにし

首を横に振る

「私はただこの衣装を引き裂こうとしていただけだ!」

「し、信じられるわけないじゃないですか!」

「くっ……」

それは当たり前だ。

あんな状態だったのだからな……

しかし、そんな状態であっても、コイツが現れただけで

空気も、感情の昂ぶりでさえも、壊されてしまった

「黒井社長、やっぱり私に変なお願いを……」

「違うと言っているだろうが!」

「ど、怒鳴ったってダメですからね!」


くそっ面倒くさい

煩わしい、目障りだ、騒々しい

「いい加減にしろ! 私はお前なんかに興味はない!」

「むっ! 人の衣装持って危なそうな雰囲気だったくせに!」

「それは誤解だと言っているだろう!」

「へーそうですか。それを信じてくれる人なんているのかな~」

――だが、嫌いではない

【「少なくとも、今までよりは……楽しい日々だったんじゃないですか?」 】

ああ、そうだとも。認めよう

天海春香の出鱈目で奇想天外で、予想もなにも無駄にしてしまうような言動に

私は少しだけ魅せられている。

だからこそ、この女がアイドルとして合格したことには

異議を唱えるつもりは全くなく

むしろ、認めることができたのだ

「ならば、どうすれば信じる」

「……とりあえず、衣装を手放しません?」

「……そうだな」


「…………………」

「…………………」

沈黙。

私が求めるような

私が好むような静寂

それを、天海春香は破った

「……本当に、危ないやつじゃないんですね?」

「何度言わせるつもりだ」

「じゃぁ、なんでですか?」

「……お前が私を苛立たせたのだ」

私の言葉に、

天海春香は何かを察したかのように息を飲んだ

「圧倒的力量差を運なんぞで覆した、お前がな」

「……なら」

天海春香は、笑う

「黒井社長は運が悪いみたいですね」

「……………………」

「そんな私を、引き抜いちゃったんですから」


「ふん。お前を社長室に招いた日からそのことを後悔してるのだよ。忌々しい」

「じゃぁ、手放しますか?」

「……馬鹿なこと言うな。お前には765プロを潰すための手助けをしてもらわねばならん」

敗北しろと願った身ではあるが

それを覆し、勝利したとしても私の計画を進めてくれていることに変わりはない

「あははっ、ですよねー……勝手にしろーとか言ってくれるかなって期待したのに」

「………………」

私は天海春香が嫌いではない

ならなぜ、天海春香に対して忌々しいと思うのか

いや、そもそも。

私は【天海春香】に対して、そう感じているのか?

……いずれ、判ることか

「じゃぁ帰りましょう。黒井社長」

「私に指図をするな」

能天気な小娘を引き連れ、私はテレビ局を後にした


「それじゃぁ、教えてください」

社長室に戻って早々

天海春香はやはり、聞いてきた

他の人間がいる車の中では聞かなかったことには

例を述べるつもりはないが、良い判断だと言っておこう

決して口にはしないがな

「……負けは負けだ。教えてやろう」

「はいっ」

「お前の歌う歌以外が好きだ。お前のダンス以外が好きだ。お前が出ない映像が好きだ。以上」

「……………………」

私の言葉を聞き、天海春香は黙り込む

驚いているとかどうとかではなく

理解ができていないというような様子で、実に愉快な表情だった

「そ、それはちょっとずるくないですか!?」

「ククククッ! 知ったことかぁ! 私は正直に答えるとは言っておらんのだよ。馬鹿め。ハハハッ!」


「あーもう! 変態!」

「な、なんだと!?」

「人が着てた衣装持って危ない雰囲気出してた変態社長のばーか! 通報してやる!」

「お、おい待て! それはもう終わった話だろう!?」

天海春香はにこっと笑う

何かを企んでいるような悪い笑みだった

「通報しちゃおうかなー指名されたのが響きそうだなー」

「ぐっ……」

「黒井社長が本当のことを教えてくれないのが悲しすぎて、1番を二回押しちゃったー」

「あ、天海春香ぁっ!」

確かに、通報されて一番ダメージがあるのは私だ

いや、私にしかダメージはない

戯言だ、出任せだと言おうと

報道陣は確実に食いつく……くそっ。

なぜこんな女に優位に立たれなければならんのだ!

魔性の女(確信)


「分かった! 言えばいいのだろう!?」

「はいっ、教えてください!」

天海春香は嬉しそうに笑うと

携帯をカバンの中にしまった

「現金な女だ。お前は」

「あと……もう一つ」

天海春香は一本指を立て

打って変わって真面目な言い放った

「もう、フルネームも、女とか、お前とかも止めて欲しいんです」

「なんだと?」

「天海でもいいし、春香でも良いです。もう少しだけ……親しい呼び方に変えてくれませんか?」

何を考えているのだ、こいつは。

その心の中の問いに応えるように、天海春香は微笑む

「じゃないとなんか……寂しくないですか?」

「……言わねば、通報するか?」

「いえ、これはお願いですから……本当は、言われる前に変えて欲しかったんですけどね」

支援

春香さんかっこよすぎる


強制はしない。と?

ならば、呼ばなくても良いではないか

………………。

だが、ならばなぜ。この女は悲しそうにする

寂しそうな、表情する……

聞くまでもない。

それは、私に対するものだ

勝手に解釈しおって……煩わしい

「……黒井社長。嫌ですか?」

「……………………」

天海春香は不安そうに声を出す

……仕方あるまい

「勘違いをするなよ。ただ、その方が楽なだけだからな、天海春香!」

「え?」

「約束通り、私の好きな音楽などを答えてやろうではないか。心して聞くのだぞぉ? 春香……ちゃん」

「……思春期男子?」

「う、うるさい黙れ! 呼び捨てにするほど親身になるつもりなどない!」

改める必要があるのだろうな

この……いや、春香ちゃんについての理解を


今回はここまでにします


この黒井には
ちゃんも合わなそうだけど、さん付けはないかなと思った


フェアリー組を「うちの~ちゃん」って呼んでたSSも前に合ったしこれでも大丈夫かと

春香さんだからこそ引っ張られちゃうんだよな
美希とかでは無理だ

このSSのクロちゃんは可愛いな(笑)
「お前の歌う歌以外が好きだ。お前のダンス以外が好きだ。お前が出ない映像が好きだ。以上」
この台詞にズルい逃げ方だなと思ったのは俺だけのはず…
もし引き抜きしたのがちーちゃんならこのクロちゃんと似てるところあるし好きなだけ歌番組に出したんじゃ…
正直765プロのアイドルで一番961プロに近いのはちーちゃんだよね

天海って名字で呼び捨てるかと思ったら
これはかなりペースを乱されてますなクロちゃん

なにこれ胸熱なSSだ

961春香に改名しよう(棒

……なにこれ可愛いwww

クロちゃんは女の子にはフルネームかちゃん付けだよな

仕事中なのに爆笑してしまって警報器に手が触れて危なかった


「へぇ、意外と壮大な曲が好きなんですね。こう、ば、ば、ば、ばーん。みたいな」

「いちいち口に出すな、騒々しい」

人に自分のことを話すのはいつ以来だったか……

話せば意外とすんなり出てきてしまうものらしい

いや、あれからずっと押し込めてしまっていたからこそ

私はこうも容易に話せたのかもしれないが。

「……さて。私のことはもう話した。次は春香ちゃんだ」

「?」

「わざとらしく首を傾げるな、あま……春香ちゃん。如月千早との話は上手く行かなかったのだろう?」

「そんなことはないですよ」

春香ちゃんは誤魔化すためだろう、飲み物を口に含んだ

解りやすいものだ

あれだけ如月千早に関して気を入れておきながら

ここまで一度も、【如月千早】の名を出してこないのだからな

解りにくいくせに、解り易いやつだ


「ふん、如月千早は一筋縄ではいかん」

「……黒井社長は千早ちゃんのことも調べてるんですか?」

「さぁなぁ? いずれにせよ。春香ちゃんに教えるようなことは何もない」

「…………………」

反応的に、やはり上手くはいかなかったのだな

如月千早の人生が普通からは少し外れているのは事実だ

今、春香ちゃんが知ったところで何もできまい

それどころか、当人を置いて知ることになったのであれば

関係が崩壊する可能性もある。

それは好ましいことではあるが、得策ではない

「他人とはそういうものなのだよ。容易に正すことができるのであれば、戦争という過去などあるわけがないのだ」

「勝者こそ正しいって言ったのに?」

「それはそうだろう。死人に口無しというように、敗者の言葉に力はないのだからな」


「千早ちゃんは歌うことに楽しさなんて感じてなかったんです」

「待て……私に話してどうする。悪用するかもしれんぞ?」

「……大人として、聞いてくれないんですか?」

「…………………」

春香ちゃんの目は子供だった

大人に縋る子供の……弱者の目

今目の前にいるのは、アイドルではない

天海春香という………子供だ

では、その目に映る私は何だ

961プロダクション社長、黒井崇男か

それとも……ただの大人か

「……良かろう。運とはいえ如月千早に勝利した褒美だ。聞いてやる」

「えへへ………ごめんなさい」

「良いから気が変わらんうちに話せ」

良SS


「千早ちゃんに言われたんです。貴女は何がそんなに楽しいのって」

「……それは私も気になるんだが」

「歌うこと。踊れること。みんなと居られること……生きてること。全部楽しいです」

「……そんな言葉が如月千早に通用するわけがなかろう」

春香ちゃんとは根本的に違うとは言えん

しかし、真っ直ぐな天海春香とは違い

如月千早は捻じ曲がっているのだからな

「えへへっ、通用しませんでした」

「一々笑うな。嘘の笑いなど不愉快になるだけだ」

「……だって、笑ってなきゃ泣きたくなるじゃないですか」

「………………」

「生きることを楽しいと思えないなんて。そんなの、悲しいよ……悲しすぎるよ……」


また勝手な解釈をしおって……

「如月千早が自分の人生をどう思おうが本人の勝手ではないか」

「それは……」

なぜ、苦しんでまで相手を思う

なぜ、そうまでして抱えようとする

なぜだ……天海春香

「お前がしようとしているのは余計な世話でしかない。今すぐやめろ」

「っ……」

「如月千早には関わるな。それが春香ちゃん達にとっての最良の選択だ」

「関わらないなんて嫌です」

天海春香は首を振る

苦しんでまで、辛い思いをしてまで

如月千早との関係を断ち切らないつもりなのか……?

「なぜ最良の手段を拒絶する。泣きたくなるほど辛いのだろう?」

「辛くても、苦しくても。私は千早ちゃんを笑顔にしてあげたいんです……だって私は、アイドルだから!」


「アイドルだから……だと?」

戯言だ

子供であるがゆえの、理想でしかない言葉だ

如月千早は拒絶している

つまり、春香ちゃんは如月千早にとって

目障りで、邪魔で、煩わしく、忌々しい、障害でしかない

「馬鹿言うな、子供の分際で他人の道を正そうなどと、出来るワケがないだろう!?」

「私は子供だけどアイドルだもん!」

「アイドルも子供も何も変わらん! 不可能なことはある」

「っ…………」

「少し頭を冷やせ」

俯いた春香ちゃんを残し、席を立つ

そのまま放っておいて良い

実力不足のくせに図に乗った馬鹿が落ち込んでいるだけなのだからな


「……………」

「……………」

沈黙。静寂

……だが、私が好むものではない

ドアノブに手をかけたまま、私は振り向かない

今の春香ちゃんは見る価値もないのだ

「……春香ちゃん。1つだけ言っておいてやる」

「………………」

「たかだか合格一つではアイドルとも呼べん」

「っ………」

その程度でアイドルと呼べるなら

誰だってアイドルになることはできるだろう

まだアイドルの卵でしかないのだ

「アイドルでは不可能でも、トップアイドルに到れる者ならば可能かもしれんぞ」

「!」

何をするにも、

まずは実力を身につけてからなのだよ

「……春香ちゃんにそれだけの実力があるかどうかは、知らんがな」

そして

私はそのまま春香ちゃんを残し、部屋を後にした


すみません、中断します
「友達だから」か「アイドルだから」で迷った

なにこのクロちゃんマジイケメン

クロちゃんこういう指導でもトップアイドル目指すように出来るんじゃん
つーか春香に上目指すよう仕向けるって結構大変な気がする
春香自身は競争とかそんな好きじゃないし

自分の為ではないにしても
これで春香は上を目指すだろうな
春香も黒井も良いキャラしてるわ


翌日の昼頃

静かに優雅なひと時を過ごしていた私を邪魔するように

社長室の扉が勢いよく開け放たれた

「どういうことだよあれ!」

「……ふっ」

怒鳴り込んできたのは天ヶ瀬冬馬

今朝、地方に営業に出ていたユニットが戻ってきたのだが

そのユニット、ジュピターの一人が冬馬なのだ

実は戻ってきた際に春香ちゃんのことを聞かれ

ボイスレッスンの最中だと教えてやったのだが……それが不味かったか?

「なんなんだよあいつ……あいつが本当に如月千早に歌番組で勝てたってのか?」

「クククッ、ああ事実だ。春香ちゃんはあの実力で如月千早を下した」

「黒井のおっさんがなにか根回ししたんじゃないだろうな?」

「ハッ! したわけがなかろう」

最初こそするつもりではあったがな

最終的に私の権力ではなく

運を味方につけて合格した。それは変わりようのない事実だ

トップアイドルになる為にアイドルやるっていうのは変な話だからね


「くそっ、あんな奴、俺は認めねぇぞ」

「そうだろうなぁ。春香ちゃんは歌だけを見れば平均を下回る」

「ならなんであいつだったんだ。もっとマシな奴がいただろ」

……なんで。か

正直に答えるならば

調査部に騙されたからだな

まさかあんな低レベルのアイドルを中核をなすような奴だと言うとは思わなんだ

しかし……アイドルとしてのスキルはともかく

自己犠牲で他人を守るような馬鹿げた方法ではあるが

春香ちゃんは確かに、中核をなすことができるような人間であることは昨日で良く解った

「なんとなくだ。目に入ったからそいつでいい。私とてそのような無作為な選択をすることもあるのだ」

「黒井のおっさんも無能を選んじまうことがあるんだな」

「ふむ……そうかもしれんな」

「ちっ」

冬馬は舌打ちを残して去っていく

まぁ、初見では春香ちゃんの特異性は見抜けんか


冬馬との話に邪魔され

わずかに冷めたコーヒーを一口飲む

「ふむ……自分で淹れるほうがやはり美味い」

冬馬はやはり強気だ

春香ちゃんと同じく自信に満ち溢れているし、それに匹敵するほどの実力もある

だが……物足りん

ジュピターでなくとも、冬馬一人で圧倒できるほど

春香ちゃんのスキルは低い

「だが……【まだ低い】だけなのだよ」

春香ちゃんは特殊だ

自分のためでは並の実力でしかないくせに

他人のためであればどこまででも強くなれるだろう

「……ぶつけてみるか。春香ちゃんと、ジュピターを」

765プロを潰す必要もあるが

如月千早の敗北によってわずかながら影響が出ているのは事実

次の大物を相手にするために、春香ちゃんにはスキルアップして貰わねばならんからな

というか、春香の歌が平均以下って風潮何時まで続くの?
他のキャラが上手く無いとかいうつもり無いけども
ゲーム的に言えば初期値で勝ってるのは千早位だし、
実際の歌だって春香が良いって曲は沢山
あるだろうに









「黒井社長、お話ってなんですかー?」

「もう少し社長相手の態度はできないのか?」

「えへへ……頑張ります」

頑張らなければいけないようなことなのか?

いや、まぁ仕方あるまい

今更春香ちゃんに堅苦しい言葉などを使われても困る

「今度のオーディションでは、ジュピターと一緒に出てもらう」

「え、ユニットに入るんですか?」

「そうではない。どちらが上かを競ってもらうのだ」

「で、でも同じ事務所なのになんで……」

やはりそこが気になるか

冬馬の方は喜んで受けてくれたのだがな

「冬馬が春香ちゃんの実力を知りたいらしいのだ。如月千早を凌ぐその力をな」

脳内でも春香ちゃんなのがシュールすぎる

だんだん毒されてきた黒ちゃんの図


「……冬馬って誰ですか?」

「天ヶ瀬冬馬だ。春香ちゃんがボイスレッスンしている時に来たのではないか?」

「……あ、あぁ。あの人ですか」

明らかに嫌そうな顔したな今

どうせ、怒鳴ったりなんだりしたのだろう?

馬鹿なことをしおって

「音程外れてるだのなんだのってレッスン中に乗り込んできたんですよ? 酷くないですか?」

「事実なのだから仕方があるまい。私からすれば平均以下だ」

「それは黒井社長の基準が高いんじゃないですか?」

「つまり、春香ちゃんはあんなことがなければ私の眼中にはなかったわけだ」

わざとらしく挑発してみたのだが

気に障ったらしい、頬を膨らませ睨んできた

「そーですか。じゃぁそんな眼中にない私からココアクッキーもらっても嬉しくないですよねー」

「なっ、あいつめ……プロデューサーから聞いたのか!?」

「えへへっ」

黙っていろと言ったではないか!

これだから弱小プロダクションの無能プロデューサーは嫌いなのだ!

なんだコイツら可愛い


「……と、とにかく。だ。ジュピターと勝負して貰う」

「良いですよ。散々言われましたからね。倍返しですよ! 倍返し!」

気合は十分。

だが、今回は自分のための勝負

実力と同等の力しか出せなければ

春香ちゃんがジュピターに勝つことは出来ない

「…………………」

「黒井社長?」

どうする?

765プロの奴らを引き出すか?

いや、やつらが素直に誘いに乗るとは思えん

それに、前回は如月千早に正しさを教えるという明確な理由があった

だが今回は違う。ランダムに引き出したところでそんな明確な理由など作れはしないだろうな


それでは意味がない

ゆえに、実力勝負になるか?

「春香ちゃんは今回の対決、自分の実力を冬馬に知らしめるためにやるのか?」

「? だって、天ヶ瀬くんが私の実力を知りたいんですよね?」

「それだけか……」

……しまった

戦わせるための理由付けを失敗したか

春香ちゃん自身に誰かと戦うという意思はない

なにせ、オーディションは楽しみ、みんなで頑張るものと言うくらいなのだからな

「……それだけじゃないですよ」


「なに?」

「天ヶ瀬くんは私の実力を笑った。千早ちゃんも所詮低レベルだったんだなって言った」

あの馬鹿、そんな余計なことまで言ったのか

私に対しては如月千早に勝てた事を疑ってきたくせに

「だから、千早ちゃんのためにも負けられない。天ヶ瀬くんに勝って、千早ちゃんを笑った事を謝らせるんです!」

笑われたのは確実に春香ちゃんだけだ……とは言わないでおくか

私の採点はともかく

アイドルを求めたとはいえ歌番組オーディションに合格するだけの実力はあるのだ

「ならば勝て。勝って証明してみせろ」

「はい!」

良い返事だ

冬馬め、私を無能を選ぶようなやつと言った事を後悔するがいい!

フハハハハハハハハハッ!

堕ちたな(確信)


「それじゃ、私はこれで」

「待て。手元にあるクッキーはレッスンに邪魔だろう? 置いていっても良いぞ?」

「いえ、小腹がすいた時に食べるので大丈夫です」

「……そうか。ふむ。そうか」

春香ちゃんはそのまま部屋を出ていく

…………。

あまり余計なこと言うと

女というものは物凄く面倒な奴になると解っていたのだがな……

天海春香ならば平気だとでも思ったのか?

そんな思考を遮るノック音

入って来たのは秘書だった

「社長、失礼します」

「なんだ、何か用か?」

「春香ちゃんがコーヒーがなかったと言っていたので」


またあいつか

余計なことに気を……おい、待て

「……コーヒーのつぎ足しだけではないではないか」

「転んで砕け散ったから要らないだそうです」

「社長というものを舐めているのかあの小娘は」

「それでは、これで」

秘書はさり際に小さく笑うと

私に何かを言われると思ったのか足早に去っていく

転んで砕け散ったクッキーの入った小袋

中を開けてみれば、なかなかに面白いものだった

「……随分と固い作りなのだな。転んだにしては、しっかりと丸型ではないか」

天海春香という人間はよく解らん

熱いコーヒーはほろ苦く

薄茶色のクッキーはいつもより甘い

普通は紅茶と合わせるものなのだろうが、

……なかなかに美味いではないか。コーヒーの苦さにはちょうどいい


今日はここまで


黒井の言う平均以下はあくまで黒井基準なので
そうでなければ春香さんは歌番組で合格するくらいのレベルだと考えてます

つまり10段階で黒ちゃんは7とか8が平均みたいなもんか

久々にまじめにアイドルやってる良SS発見
追わせていただきます

クロちゃんSPでは勝てないアイドルはいらんとか言ってたし
765との確執あったにしてもベースが完璧主義っぽいよね
というか春香もオーデ参加者の中だと
パッとしない(歌唱力)かな?ってだけで
一般人からしたら上手い方だと思うのよ

>>148
そうだろうな
使えないやつは即切りとかだし基準値は高いはず

しかしこの二人可愛い

実際のクロちゃんはただのツンデレなのにアニマスの影響で酷い最悪なキャラみたいになってるのが悲しい

映画に再登場しないかな、アニマスの最後捕まったけど…

春香は歌が下手らしいから他のキャラより劣ると思われてるんじゃね?
俺はSFと漫画とSS知識しかないからそこらへんはわからんがね

確かにツンデレだがSPでも普通に悪役というか外道な一面無かったっけ?
アニマスでの所業には及ばないが

漫画の黒ちゃんがアニマスぽい外道な感じなのが少しアレだけどあれはあれでツンデレだと思えば…無理か

春香は能力値はともかく聞くと酷いのあるし
このSSだとまだその少し酷かった
初期段階だから風潮云々は関係ないと思うんだが


黒井は知らん
非道かは知らんが非情なのは事実だよ
響を孤独にしたりな

子安ボイスで「春香ちゃん」が脳内再生される・・・・・・病気かな?

>>157
いたって健康


そうじゃないと俺まで病気になる

>>157
正常です

じゃなかったら俺も病気になるよ…

春香スキーさんはついに黒井×春香に手を出したか


夕方、新しく届いた調査報告書によれば

如月千早は765プロ内部でさらに孤立しているらしい

春香ちゃんに敗北したとはいえ

当人が望んでいた歌番組からのオファー

当然、如月千早は請け負った

その結果、今日は一度も事務所に顔を出さず。

ほかのメンバーが激励だのなんだのとボイスレッスンに立ち寄れば

邪魔をしないでと一蹴してしまったとのこと。

「大方、アイドルとしての敗北とはいえ、歌番組オーディションで春香ちゃんに負けたことが気に食わんのだろうな」

春香ちゃんの様子を見るに

それは春香ちゃんの知るところではないらしい


それはそうだろう

春香ちゃんが原因ゆえに、春香ちゃんではどうしようもないのだからな

まぁ良い……少しずつ。

少しずつ、進めていけばいい

「そして、確実に崩壊させてやる。首を洗って待っているのだ。高木」

危うく忘れるところだったが

これこそ、私が成し遂げたいことなのだ

【「……私には、楽しそうになんて見えません」】

………なぜ、ここでその言葉を思い出す

つまらないのか? 私は

くだらないと思っているのか? 私は

……いや、それこそ私の目的なのだ

くだらなくなどない、つまらなくもない。

私は、私のやりたいことをやっているだけなのだからな


「くろ~い社長!」

「黒井だ!」

もうすぐ夜だというのに

社長室に騒々しく入ってくるのは奴しか居ない

当然、春香ちゃんだ

「なんなのだ。もう帰るべき時間ではないのか?」

「明日は土曜日だから、こっちに残ろうかなって思ったんです」

「……なに?」

「黒井社長さえ良いなら、久しぶりに765プロの人の家で――」

「ダメだ。許可できん」

765プロの誰かと接触などあまり許されたものではない

第一、向こうが受け入れるとは限らん

如月千早が厳しくなったのは、春香ちゃんのせいなのだからな

「ホテルを用意してやる。こっちに残っていたいのならだが」

「スイートですか!? 高級ですか!?」

「公園のテントだ」

「……………………」

「冗談だ。少し待て」


春香ちゃんの急な申し出だったのは

この時間からならホテルの部屋を取れず

765プロのアイドルの家にいけると思ったからだろう

だが、甘いのだ

「ホテルの部屋を用意して貰ったぞ。連れて行ってやる」

「むぅっ、やよいの家に行きたかったのに」

「ふんっ。あんなもやし一家の家に好んでいく人間などいるのだな」

「……黒井社長」

春香ちゃんの声が

温かいものからひんやりとした冷たいものに変わった

視線は鋭く尖っていて痛い

なぜだ、事実を言ったまでではないか

「やよいのこと……付け回させたりしてます?」

「……何を言っているのかわからんな」


「黒井社長、実は聞いちゃったんです」

「なにをだ?」

「調査部の人達に、765プロのみんなのこと調べさせてるって」

……き、機密も何もないではないか

馬鹿なのか調査部の人間は!

「クッキーで買収されたわけではあるまいな?」

「……仲良くなったので、色々と」

クッキーで仲良くなって

それで色々と話しているうちに……か

ふざけおって

「さっき、やよいのこともやし一家って言いましたよね?」

「だからどうした」

「つまり、やよいがもやしを良く買っていることを知ってるんですね!?」

「当たり前だ。調査部が調べたのだからな」

隠したところでどうにもならん

如月千早について調べてるかどうかを聞いてきた時点で

【「……黒井社長は千早ちゃんのことも調べてるんですか?」】

だったのだからな……如月千早について話さなかった判断は認めてやろう


「若い女の子をつけ回すなんて……」

「調査をしただけだ」

「むむっ、言い逃れはできませんよ! ボイスレコーダーがあるんですからね!」

「なんだと!?」

「嘘ですけど」

なんだ、なんなのだこの茶番は!

面倒くさい女だ! くそっ

「何のために聞いてきたのだ」

「いや、まさか認めてくるとは思わなくて……黒井社長がそういうことするっていうのは知ってましたけど」

「……それで、なにか脅しでもかけるか?」

真面目に聞いたのだが

春香ちゃんは呆れたため息をつき、首を振った

「もやしだけしかなくても、やよい達は幸せですよって言いたかっただけです」

「ふん。そんなものは底辺しか知らないから底辺で満足しているだけではないか」


それは間違った言葉だったらしい

春香ちゃんはにこっと笑うと

私の腕を掴んだ

「本当にそうかどうか確かめに行きましょう!」

「な、なにぃ!?」

「やよいにはもう連絡してありますから。早く、早く!」

初めからそのつもりだったのか!?

冗談ではない!

あんなもやしまみれの貧乏家族の相手などしたくはない!

「ふざけるな、私はいかんぞ!」

「女の子からのお誘い……断るんですか?」

「黙れ、行かんと言っただろう!」

「やよいの家に泊まっちゃいますよ!? 良いんですか!?」

社長、嫌なら俺と替わってください


「なんだと……?」

「黒井社長が来てくれないなら、やよいと一緒に寝ちゃいますからね」

「くっ……」

そこから如月千早の件が伝わり

春香ちゃんの調子が落ち、オーディションで無様に負け

冬馬にやっぱり黒井のおっさんも無能だったのかと言われる……

それだけは許さん!

「少しだ! 長居はせん!」

「えへへっ、それだけで十分ですよー」

春香ちゃんは嬉しそうに笑う

私が高槻やよいの家に付き添うことで何か利益があるのか?

……春香ちゃんの脳内については考えるだけ無駄か

「決まったらさっさと行くぞ」

「住所知ってるんですか?」

「当たり前だ」

私用の車へと乗り込み、私たちは高槻やよいの家へと向かうことになった

やよいはDSでもどこか間違えたストイック人間の更正に一役買った訳でして……


調査資料通りのボロい家

いや、資料以上にボロい家だった

「馬鹿な……こんな場所に住めるのか? 人間が……」

「うわぁっ、それはみんなの前では絶対に言わないでくださいね?」

高槻父、高槻母

高槻やよい、高槻かすみ

高槻長介、高槻浩太郎、高槻浩司、高槻浩三

の8人家族……にもかかわらず

両親の収入は不安定。母親とともに働きに出ていて夜も家にいることは多くはなく

基本的な家事はほとんど長女であり765プロの高槻やよいが担当している……か

「子供のつくりすぎだろう。馬鹿め」

「あははっ……私に言われても」

インターホンはきちんと作動しているらしく、春香ちゃんが押してからすぐに

高槻やよいが出てきた

やよいと一緒に寝ちゃうのか(困惑)


「春香さん、お久しぶりですーっ」

「久しぶりー元気にしてた?」

「はいっ!」

高槻やよいは……知らないのか?

如月千早が疎遠になって言っていることを

この位の子供には伝えないのは普通か

いや、まだ解らん

高槻やよいがありえないほどの演技力を秘めている可能性はある

春香ちゃんだってそうだったのだからな

「えっと、黒い社長さんですよね?」

「黒いのではなく、黒井だ。高槻やよい」

「ごめんなさいっえっと、食べて行きますか? 今日はもやしパーティーなんですよーっ!」

もやしパーティー……

それはもやしに調味料を振りかけただけのものをつつき合うだけのものである

……と、調査資料にはある

そんなことで喜ぶなどありえんっ!

どこまで落ちぶれているのだ……高槻家というものはっ!

これ実は765プロをクロちゃんが助ける話じゃね?

春香ちゃんにいいように使われてるだけなんだよなあ


「黒井社長がね? やよいのもやしパーティーに一度参加してみたかったんだって!」

「なんだと?」

「えぇーっ!? ほんとーですか!?」

「うん、ホントホント。もやしを買う量でむぐっ」

春香ちゃんの口に手を押し当て、黙らせる

そうか、そういうことか

ここでそれを使うわけだな……くそっ

「春香ちゃんから少し聞いて興味があったのだよ、無論、迷惑ならば去るが」

「そんなことないですよーっ! 大歓迎です!」

そこは普通拒絶するべきだろう!?

一人一人の取り分が減るだけだというのに

「そ、そうか……ならば。少しお邪魔するとしよう」

「えへへっ、楽しんでいきましょうね。黒井社長」

笑っていられるのも今のうちだ

あとで覚えておいて貰うからな、天海春香!


今日はここまで


春香さんに悪気はないよ、黒井社長のためにやっているのさ……多分

春香さんは黒井を楽しくさせてあげたいだけなんだよな…恐らく

良いように扱ってるとかではないと思うぞ

黒い社長さん思春期やん

これ765プロを蹴落とす目的のはずが春香さんにより更正されて逆に765プロを手助けするSSな気がしてきた
その内961プロが491プロになってクロちゃんがシロちゃんになるんじゃね?
クロちゃんがツンデレだからシロちゃんになったら素直になるとか

漆喰プロ
左官かな?千早とか効率よく塗りそう

春香の純粋な厚意に翻弄されてるだけじゃないか?
黒井自身自分のしようとしてることに疑問を持ち始めてるし
周りに流されやすくなっているのかと

この春香さんは純粋な厚意ってよりももっと違う何かがある気がする

最初で言ってた楽しくさせたいってやつか
復讐?的なのを止めさせたいんだろうね

このあと、もやしを食べて旨さのあまり

もやし社長になるんですね!


「………………」

「「「「いただきまーす!!」」」」

高槻やよいたちが一斉に声を上げる

待て、おかしいだろう

もっとこう……工夫はしないのか?

鉄板を使っているんだろう?

肉はどうした。いや、せめてそばくらい追加して焼きそばにするべきではないのか?

「黒井社長、食べないんですか?」

「……おかしいとは思わんのか?」

「いえ、全然」

春香ちゃんはそう返すやいなや

鉄板の上からもやしを掻っ攫っていく

子供たちの勢いも春香ちゃんに負けじと馬鹿みたいに早かった

……だが、もやしだ

>>181
屋上


肉がなければ麺もなく

ご飯ともやしのみの食事

こんなものが、パーティーだと?

パーティーと呼ぶにはあまりにも貧小かつ貧弱で

哀れみさえ抱いてしまいそうなほど下等すぎる……。

「あっ、長介くん私の取ったなー!」

「ぅえっ!? 春香姉ちゃんのなんかどこにあるんだよ!?」

「鉄板の上は私のものなのだ!」

「はぁ!?」

だが、こいつらは実に楽しそうだ

子供だからだろう

超とつければ凄く感じ、大とつければ大きいと感じ、パーティーと言えば大喜び

これだってその類のものでしかなく

そんなものだから、私にとってはつまらない催しでしかない


「えっと、黒井……さん?」

「なんだ?」

「食べないとなくなっちゃいますよー?」

高槻やよいは不安そうに私を見つめる

そもそも、こいつが私を家に入れられたこと自体不思議でならない

自分たちの大切な仲間であるはずの春香ちゃんを

強引な手段で引き抜いたのだ

双海姉妹程でないにせよ、何らかの意思表示があってもいいはずだ

私に対しての、怨み屋憎しみ、怒りのようなものがな

「黒井さんっ! どうぞっ」

「……………………」

だが、どうしたことだ

無くならないように

皿にもやしを取り分けて私へと手渡そうとしてくるだけだ

……単なる馬鹿なのか?

迷わず食えよ、食えばわかるさ


「こんなものを客人に出すとは失礼なパーテ」

「なんだよ。おっさんが勝手に来たんじゃないか」

「こ、こら長介!」

「べー!」

餓鬼の挑発になどいちいち乗っていられるわけがなく

高槻長介を視野の外に追いやり

手渡された皿を見つめる

「美味しいですよ?」

春香ちゃんは笑う

高槻やよいも微笑む

「……そこまで言うのなら、食べてやる」

一摘みのもやしから調味料と水気が滴る

ただのもやしに調味料をかけただけの簡易料理

どれほどのものか、味わわせて貰おうか

>>190
その通りだな、食えばわかる

>>190
さりげないポジティブにわろた


芯がしっかりとしているのはもやし本来の持ち味だ

そのおかげで噛みしめるたびにシャキッと良い音が鳴るが

それは評価の対象外としておこう

本題の味だが、もやし自身には大した味などなく

味付けをしなければ無味といっても良いくらいだ

つまり、味付けこそ重要なのだ

「どうですか?」

「美味しくないですかー?」

「…………………………」

味をそのまま言えばほとんど調味料の味だ

だが、そのシンプルな味付けでも決して不味いと一蹴できるものではない

調味料が偏った場所に溜まるのではなく、絶妙なバランスで絡められている

火加減も手馴れているのだろう。熱すぎず、かと言って生焼けの不快なものになっていない

そしてなにより、調味料の濃さだ

それは高槻やよいの技量なのかどうかは判断しかねるが

一口では少し物足りないという程度の濃さであり

それが次へ次へと欲を確実に刺激しようとしてくる

黒ちゃん食べ物に弱いなwwwwww


「私の普段食べているものには劣るな」

「えぇ……そういうのと比べちゃいます?」

「煩い黙れ。まぁ……悪くはないぞ」

春香ちゃんの余計な言葉が入ったが

つまりはこういうことだ

普段高級なものを食べなれているからこそ

こういうシンプルな味わいのものは新鮮で

だからこそ、美味いと感じたわけだ

そうでなければ評価は普通でしかないだろう

ゆえに、美味いとは言わなかったのだが。

高槻やよいは嬉しそうに笑った

「えへへっ、ありがとうございますーっ!」

「……ふん」

褒めたわけではないのだがな

馬鹿みたいに喜びおって

クロちゃんはコメンテーターやればいいんじゃね?


「悪くはない程度なら食べちゃっていいかもしれないよー!」

「なにっ!?」

「やったー! おっちゃんありがと!」

「あ、私も食べる!」

鉄板の上に残っていたもやしがあっという間に消え去ってしまった

いや、構わんが

別に構わんが……。

【「あっ、黒井さん食べないんですか? じゃぁ私が食べちゃおっかなー!」】

記憶の中の誰かが、声を上げる

嬉しそうに、楽しそうに――。

くそっ……要らん記憶だ

これだから庶民に混じるのは好かんのだ

「黒井さん、ごめんなさい。無くなっちゃいました」

「構わん……元々ここで食べる予定などなかったのだからな」


「黒井社長、それじゃぁまた明日――」

「春香ちゃん、あまり我侭を言われても困るのだよ」

「ぅ……ごめんなさい」

少しだけ睨みを聞かせるだけで春香ちゃんは押し黙り

私から逃げるように玄関へと向かった

普段の春香ちゃんなら跳ね除けたりもしそうだが

今回は我侭尽くしだったからな

ちゃんと聞いてくれたということか

いや、そうでなければ困る

「高槻やよい、ひとつだけ聞くぞ」

「はい?」

「私が天海春香を765プロから奪った件をどう思っているのだ?」

「えっと……凄く残念ですけど。でも、春香さんはどこに行っても春香さんですから」


高槻やよいは困ったように笑う

だが、そこに怒りや憎しみ、恨みなどは感じない

「私は春香さんが笑顔でいてくれるなら。黒井さんに文句言ったりするつもりはないかなーって」

「……………」

「黒井さん、また。来てくださいね。今度はたくさん用意しますから」

……765プロの連中は馬鹿ばかりなのか?

私は敵であるはずだ

怒るべきなのだ

恨むべきなのだ

憎むべきなのだ

「なぜ……そんなことが言える。私はお前にとって悪い人間ではないのか?」

「悪い人って、思われたいんですか?」

「そういうわけではない。だが……」

「じゃぁ、そんな事は聞く必要はないと思いますよー」


高槻やよいは首を振ると

玄関の方から聞こえてくる春香ちゃんの声に小さく笑うと口を開いた

「ずるい方法で移籍させられちゃったけど。今の春香さんは幸せそうです」

「………………」

「だからきっと、黒井さんは良い人なんじゃないかなーって」

高槻やよいは、笑う

天海春香の姿から想像した黒井崇男という人間を見て

信用できるとでも、思ったかのように。

「ふん。勝手な想像だな」

言い捨て、玄関へと向かうと

高槻長介らと戯れる春香ちゃんは私に気づき、笑う


「やよいと何話してたんですか?」

「春香ちゃんには関係ないことだ」

ぶっきらぼうに答えると、不服だったのか

春香ちゃんは頬を膨らませたが

特に文句を言うことはなかった

「さっさと行くぞ」

「はーい」

「春香さん、黒井さん! また、きっと来てくださーいっ!」

「うん、きっとね」

春香ちゃんと高槻やよいの別れ言葉を聞いてから

車を動かし、ホテルへと向かった


とりあえずここまで

乙乙!

後日、高級な肉を持って一人、高槻家に黒井が行く姿を妄想して待ちます

>>204
あり得るから容易に想像しちゃったじゃないかww

やよいはやっぱ天使だった引き抜きしたのが春香でよかったね、もし伊織だったらどうなってたか(笑)

やよいだからこその台詞だよなこれ
春香さんが幸せだから>


赤信号で車を止め

助手席に座る春香ちゃんを横目で睨んだ

「どういうつもりなのだ。今日は」

「……楽しくなかったですか?」

春香ちゃんはそう答えるだろうと

なんとなく解っていた

楽しみましょう。とか言っていたわけだしな

「あんなもので楽しませられるとでも思ったのか?」

「えへへ……私は楽しいし、みんなだって楽しい。だから黒井社長もいけるかなって」

「そんな子供じみた考えで強引にされても迷惑なだけだ」

「ぁぅ」

周りが勝手に騒いでいただけで

私自身はその場の空気に馴染めないまま無駄に過ごし

それどころか余計なことを思い出させられただけだったわけなのだからな

……いや、それだけではないか


「パーティーはともかく、高槻やよいという人間は実に面白い人間だったぞ」

「く、黒井社長、それはダメだと思います!」

「……くだらんこと言うと車から蹴り下ろすぞ」

「あはは……冗談です」

自身の境遇を嘆くこともなく

大切な仲間である天海春香に関してのことで責めることすらしない

「高槻やよいはあれで中学生とは……面白い」

常に起こる事すべてを運命と受け入れている……わけではないだろう

愚かなほどに前向きであるだけなのかもしれん

だが、些細な問題で砕けず

常に変わらぬ姿で入れることは、上に立つ者にとっては重要なものだ

「春香ちゃんではなく高槻やよいにしておけばよかったと思ったのだが……入れ替わるか?」

「まさかの相談ですか!?」


「私の何が不満なんですか!?」

「言われたいのか? たくさんあるのだが」

「うぐっ……や、やよいはクッキー作ってきませんよ!」

「言っていて悲しくならないのならば、その精神は評価しよう」

交換など、今更無理な話だから冗談だったのだが……

「い、良いもん! 勝手にしちゃえ!」

春香ちゃんはそう怒鳴ると、そっぽを向いてしまった

ふむ、春香ちゃんはからかう相手として実に面白い相手ではないか

高槻やよい相手では……いささか気が引けるしな

「冗談だ、強引に付き合わされたのだ、少しくらい構わんだろう?」

「ふんっだ」

「…………………」

どう宥めたものか

このまま放っておいても

明日には元通りなのだろうが……さて


「スイートルームから一般部屋に変えることも出来るのだが」

「普通逆だと思うんですけど」

「……ふむ。では、スイートルームの一つ上。VIPの部屋ならどうだ?」

「一人でそういう部屋は寂しいから嫌です」

女というものは、誰しも変わらず注文が多いものだな

……退屈しないな

天海春香は煩わしいと思うほどにお節介である

今日だってそうだ

自分のためでもあったのかもしれないが

何割かは私のためだったのだ

「……春香ちゃん、欲しいモノがあるならば買ってやろう」

「お金で釣れるほど安くはないつもりなんですけどね」

「なら――」

「そうですね……黒井社長、クッキー作ってみません?」

なん……だと?


今なんと言ったのだ?

クッキーを作ってみません……だと?

「何を馬鹿げたことを」

「黒井社長が作ったクッキーが美味しかったら許してあげますよ?」

「馬鹿馬鹿しい、それならば許されなくても良い」

一緒にいることで退屈しない

そして、手放し難いものではあるが、

ずっと春香ちゃんの良いようにされるつもりはない

「そうですか……結構楽しいんですよ? お菓子作り」

「そう思う者がいるということは、そうではない者がいるということだ」

「解ってますよ~ぅ」

つまらなそうな言葉遣い

しかし、許さなくて良いという事についての返答を考えるに

春香ちゃんは冗談でからかったことに関してはあまり気にしていないらしい

それすらも利用して、私を自分の方に引きずり込もうとしただけのようだ

ふん……やはり油断できない女だな。天海春香は


すみません、中断します

もうほとんど馴染んじゃってるじゃないですかヤダー

春香ちゃんが毎回毎回出てくる度に
子安声で脳内再生されて吹きそうになる


「受付に961プロの天海春香とでも言えば通じるはずだ」

「はい」

「明日どうするにせよ、移動はタクシーでも使え。金は後払いでこちらが払う」

手短に用件を伝え

車から降ろそうとしたのだが

春香ちゃんはシートベルトを外しただけで留まった

「そういえば、連絡用のアドレスとか教えてくれないんですか?」

「なぜそんなものが必要なのだ」

「だって、社長だし」

「プロデューサーなら解らなくもないが、春香ちゃんの言う通り社長なのだ。そのようなことをする必要はない」


「そこなんですよ! そこ!」

「急に声を上げるな、騒々しい」

「私にはプロデューサーさんがいないし、ユニットの仲間もいないじゃないですか!」

とか言いながら

各部署の奴らと仲良くしているではないか

それでは不満だというのか?

「諜報部や、営業部のやつらだけじゃ不満なのか?」

「そういうことじゃなくてですね? アイドルとしてのパートナーが欲しいなって思うわけなんです」

「アイドルとしてのパートナーだと?」

つまり、なんだ

プロデューサーがいない

ユニットを組んでいるわけでもない

だから、私にその代わりをやれ。と?

そう言いたいのか?


「ふん。社長という職を春香ちゃんは何か勘違いしているのではないか?」

「社長はみんなのために、みんなは社長のために。ですよね?」

誰がそんなことを教えたのだ

いや、どこから引用したのだそれは

「社長は金を払って雇ってやっているのだよ。社員を。それ以上に何かする必要はない」

「じゃぁ、オーディションへの根回しは何なんですか?」

「……それは961プロの名を上げるために必要なだけだ」

「名を上げるため……そうですか」

春香ちゃんは何かを言いたそうにしていた

しかし、何も言わない

「なんだ、言いたいことがあるならはっきりと言え」

「……その名前が足場にしてるのはなんなのかなって」

天海春香は車を降りて去っていく

私にとって要らない言葉を残して

>>214
よう、俺


「名前が足場にしているもの……だと?」

金を使い

権力を振るい

弱者を踏みにじり

駆け上がってきた961プロ

その名が足場にしているものは、その過去の経験

だが、春香ちゃんが言いたかったのはそれではないのか?

あの目は

あの声は

あの姿は

そんな生易しいものを思っていたものではない

「……天海春香。お前は、何を見て言ったのだ」


結局、

春香ちゃんが思う名前の足場は解らなかった


「天海春香……解りにくく、扱いづらい奴だ」

だが、それでこそやりがいがあるというもの

天海春香に常に優位に立たれているわけには行かん

寝首を掻くとは言わないが

そろそろ、黒井崇男という男がどういうものかを教えてやらねばなるまい

………。

……………。

いや待て、何かを忘れていないか?

天海春香に対してどうのこうのというよりも優先することがあるではないか

なぜ、忘れようとするのだ。私は

「やりたいことなのだろう? 黒井崇男」

それは確かに自分の声だった

しかし、【私】のものであるのかどうかは、解らなかった


翌日、天海春香が移籍をしてから初めて

一度も天海春香と会うことはなかった

別に病気などで休んだわけではなく

朝からずっとレッスンをし続けていただけだというのは

レッスンの担当者から聞き、解っている

……解っている。か

報告の義務を与えたわけではない

【「天海春香は、レッスンに行っているのだな」】

私が聞いてしまったのだ、担当者に

練習をサボり、冬馬達に遅れをとることを心配した。と

私は思っている


しかし、なんなのだろうな

そうではないような気がするのだ

天海春香の存在感は

想像以上に大きいものだったのかもしれない

あの騒々しさのない空気はなだらかで静か過ぎたのだ

かつては好んでいたはずなのに

静まり返る社長室は物足りなかった

「……天海春香、か」

ただの少女かと思えば、笑顔しか見せない少女

笑顔しか見せないと思えば、他人を思う気持ちが人一倍以上に強い少女

そして、お節介、騒々しい、煩わしい、面倒くさい少女

半月程度の付き合いの中で

私はたくさんの天海春香を知った。いや、知らされた

ゆえに……その情報量の多さに、天海春香という存在に毒されてしまったのかもしれんな


天海春香を甘く見るなと高木の犬は言った

だが言われるよりも前

調査部の調査の時点ですでに甘く見ていたのだ

中核を担うとかいう話ではない

そこに存在していなければ

どこか物足りなく感じてしまう程に

日常の中に溶け込んでくるような人間なのだと気づくことはできなかった

迷惑で強引なことばかりしてくるが

それがまた天海春香という存在を強く印象づけてくる

「……なんなのだ。天海春香は」

いつか抱いた疑問が言葉となる

その答えは【――】だと解っている

だが、認めたくはないのだ

認めてしまえば、私という存在は……。

ゆえに、認めるわけにはいかないのだ


「くそっ……天海春香はやはり失敗だ!」

天海春香を選ばなければこんなに悩むことなどなかった

天海春香でさえなければこんなにわけの解らないことを考える必要もなかった

天海春香を利用して765プロを潰すだと……?

ふざけるな

天海春香に利用されているではないか

天海春香に潰されようとしているのは私ではないかッ

「……………」

乱されるな、冷静になれ

天海春香に安らぎを覚えるな

天海春香に与えられるな

ただただ、天海春香を利用するのだ

如月千早との対決だってしっかりと利用したではないか

ジュピターとの勝負は私を侮辱した冬馬を蹴落とさせるという利用ではないか

それと同じことを、続けていけばいいだけなのだからな

>>224訂正


「くそっ……天海春香はやはり失敗だ!」

天海春香を選ばなければこんなに悩むことなどなかった

天海春香でさえなければこんなにわけの解らないことを考える必要もなかった

天海春香を利用して765プロを潰すだと……?

ふざけるな

天海春香に利用されているではないか

天海春香に潰されようとしているのは私ではないかッ

「……………」

乱されるな、冷静になれ

天海春香に安らぎを覚えるな

天海春香に与えられるな

ただただ、天海春香を利用するのだ

如月千早との対決だってしっかりと利用したではないか

ジュピターとの勝負は私を侮辱した冬馬を蹴落とさせるという利用ではないか

「クククッ簡単だろう?」

それと同じことを、続けていけばいいだけなのだからな


とりあえずここまでにします


この黒井さん、ブレまくりである……すみません

面白いなぁ 元ネタよくわからないけど


黒井さんは苦労人がよく似合う

>>227
まさかと思うがアイマス知らないってことか・・・?

春香が見た足場ってなんなんだろうか
黒井から見た春香の正体は…リボンですねわかリボン


やっぱり春香さんは最強ですね


「ふざけないで下さい!」

翌日、社長室に大きな怒鳴り声が響く

それはやはり、天海春香のものだった

「どういうつもりですか!」

「吠えるな、天海春香」

「っ…………」

天海春香と呼ぶことが気に食わないらしい

しかし、天海春香と呼ぶのが正しいのだ

私と天海春香は今までも、これからも。敵だ

そう、歪められただけだ。乱されただけだ

「……私はただ、歪められたものを正しただけだ」

そう告げ、天海春香を見つめる

暗く、沈んだ表情

それに対して同情など――しない

始まった

春香さん!黒井を論破しちゃって下さい!!
我々が見てますぞ!


「春香ちゃんって呼んでくれなきゃ通報しますよ」

「勝手にすればいい。お前一人の通報など、容易にかき消せる」

そう。

金に糸目をつけなければ簡単だ

天海春香が私の優位に立つ術を消すことだってな

「黒井社長……なんで急に」

「急ではない。元から私はそうだったではないか。貴様の茶番に付き合ってやっていただけだ」

「……私が余計なこと、言ったからですか?」

「そんなことは関係ない。言っただろう? 歪んだものを、正したと」

天海春香は悲しそうに私を見る

悲しいのは、誰だ

私か、天海春香か

「私はっ……私は……っ」

なぜ泣くのだ。天海春香

お前の涙は誰のために流しているのだ


「天海春香、お前は私に何を望むのだ」

私に対して散々と尽くしながら

最後には天海春香に対して得となる何かがあるのだろう?

「私はっ……」

「なんだ、言ってみろ」

「私は……ただ、黒井社長が本当の黒井社長になってくれたらって」

何を言っている

何が本当の黒井社長だ

「私は私だ!」

「じゃぁ教えてください! 今、楽しいことはありますか!? 今までしたことを、心から誇れますか!?」

「っ……」

楽しいこと……だと?

誇れるか……だと?

「貴様にそれを話してなんになる!」

「もし、納得できるものなら……私はもう、黒井社長には何もしない。それを約束します」

天海春香の悲しみの中には、強い意思が見えた

嫌いなのだ……そのような目は!


「765プロが狼狽え、もがき苦しむ姿が実に愉快だ」

「……………………」

「過去がなければ今のこの裕福な私は存在しない。ゆえに誇ってやろう!」

「……………………」

私は嘘をついていない

事実だ、それは、私の言葉だ

……心からの、言葉であるはずだ

天海春香は黙った

涙を消し、悲しみを消し……冷徹な瞳で私を見つめていた

――はずだった

「……馬鹿」

――何かが、滴る

「なに?」

――天海春香が、顔をグシャグシャにしながら涙をこぼす

「裕福であることしか誇れないなら……何も言わないでください」

――天海春香は悲しんでいた、憐れんでいた

自分のことではなく、私のことを思って……

あれ・・・なんだろ

画面みえねーじゃねーか(TqT)


「止めろ!お前は――」

言葉を飲み込む

あの時と同じだ

これは繰り返しだ

やはり――油断できない女狐だ!

「ふん。お前は演技力だけは抜群だな」

「……え?」

天海春香は驚き、涙を止めることなく私を見つめた

どうせ、それさえも演技なのだろう?

「如月千早との勝負の時同様、意味のない賭けをさせるつもりなのだろう?」

「違う、違うよ……」

「だが残念だったな! お前の策は見やぶ」

言葉が強引に閉じ込められた

視界が右へとそれていく

遅れた痛みが脳を刺激して、混乱を招く

現状を理解できない私に与えられたのは――怒り

「黒井社長の馬鹿!」

天海春香の怒鳴り声だった

その体勢からでは横目でしか見れなかった天海春香の姿は後ろ姿で

そして扉が閉じ、彼女は消えた

徐々に冷静になっていく私が感じることができたのは

ヒリヒリと痛む、頬の感触だけだった


「社長に、手を上げるなど……」

なぜか声が震える

怒りか、痛みか?

私には解らない

「……くそっ」

痛みが引かない

そこまで痛いものではないはずなのに

「裕福であることしか誇れないなら……だと?」

小娘が調子に乗りおって

まだ何も知らないからそう言えるのだ

……現実を知らないから、言えるのだ

「だが、知ったところで……」

歪んだものを正した。か

歪められたのか、歪んでいたのか

正されたのか、正したのか……。


そんなこと、考えても何の得にもならん

冷静になれ、乱されるな

このままでいいのだ……このままで


「――社長。黒井社長」

「なんだ騒々しい」

「いえ、報告の最中だったのですが……やっぱり、春香ちゃ」

「その名を口に出すな!」

その怒鳴り声に、秘書はびくついて黙り込む

それを、あの女ならばなどと考える頭を強く振った

「……報告を続けろ」

「は、はい……」

あれから1週間が経った

会社には顔を出しているらしいが

あれ以降、天海春香が私の前に現れることは無くなり

社長室だけでなく私自身も静かな日々を送ることが出来ていた

……物足りないとは思わん

これでいいのだ、何も問題はない……問題は、ない


「えっとジュピターとあの子の出るオーディションですが、四条貴音も出るそうです」

「そうか、やはり天海春香とジュピターが出ることは奴らにとっては旨い話か」

出てくる可能性があるとも思っていたが

本当に出てくるとは思わなかったぞ

馬鹿め、私についてくる事も出来ない愚か者が

天海春香やジュピターの勝てるわけがない

「良かろう、叩き潰して貰おうではないか」

「指示はどうしますか?」

「根回しは不要だ。冬馬たちには四条貴音をねじ伏せろ。と伝えておけ」

「はい」

指示を聞き、秘書が社長室から下がると再び静寂が訪れた


「……………………」

カチャッとコーヒーの注がれたカップが音を立てる

それが嫌にうるさく聞こえるほど静かな部屋

冷めたコーヒーの苦味は強く

カップの傍で、左指が空気を掴む

「……馬鹿者め」

私はそれでいいと思っているはずだ

私は元からそうするはずだったのだ

にもかかわらず

呪縛のようにこの行為は無意識に行われる

【「えへへっ、クッキーですよ。クッキー!」】

大嫌いな声が頭に響く

忌々しい笑顔が、目の前に現れる

「なぜそこまで私の邪魔をするのだ!」

コーヒーカップが倒れ、中身が溢れ、カップは床へ落ちて砕け

コーヒーは、あの涙のように滴っていく

あの日から――世界が私を苛んでいるのだ

私がそう感じているだけなのかもしれないが……


今日はここまで


ちょっと詰まってしまった


歪んでいたのを正されたんだろ…それを気づくんだ黒井

>>211の一文
~お菓子作り


~お菓
子作り
に読めてしまって我が目を疑った

>>245
ごめん春香に教えちゃったわ、楽しみ

春香と48人の子供作って家族AKBですねわかります

お菓子→犯し
つまり・・・

自分の感情に知らん顔してると、いつの間にか積もり積もってどうしようもなくなっちゃうんだよね
鬱病なんてのはその最たるものだけど
このクロちゃんはそんな事になる前になんとかするって信じてる

というか苦い過去と似た事が、色々経験した今また起きてるんだから
今度こそ苦い過去にならないように対処してくれよ(本音)


天海春香の幻影を振り払い

涙の真似事をするコーヒーの後片付けを終える頃

丁度、やつはやってきた

天海春香ではない

あの女は明後日に控えたオーディションに向けて

朝から晩までをレッスンに費やしているし

そうでなくとも、大嫌いな私に時間を割くような真似はしないだろう

「おい、おっさん」

「……社長と呼べ」

そう、社長室に訪れたのは天ヶ瀬冬馬

天海春香と戦う者の一人だった


「天海春香に何か指示出したりしてるのか?」

「なぜそんなことを聞く」

「……あいつ壊れるぞ。いくらなんでもレッスンのしすぎだ」

「ふん。そんなことは知ったことか。自分自身で選んでいることなのだからな」

あいつが潰れようと

ジュピターさえ残れば構わん

もう天海春香に固執する理由などないのだ

むしろ潰れてくれた方が助かる

天海春香を使い潰すことができたのであれば

765プロが暴走し、自滅する可能性が高くなるのだからな

「あいつ自身が死ぬつもりでレッスンしてるっていうのか?」

「ああ、お前に馬鹿にされたことを如月千早まで馬鹿にされたと思ったらしい」

「なんだそりゃ……」

「良いのか? そんな馬鹿の事など気にしていて。勝てる自信はあるのか?」

まあ春香さんは某ゲームで無尽合体キサラギ最終形態と生身で戦ったり●音●クとバトって勝つくらい強いし(震え声)


「気にしてるわけじゃねぇ……だけどよ。不戦勝なんてつまらない結果は嫌なんだよ」

「……不戦勝」

【「不戦勝なんて、つまらないわ」】

あの女の言葉が浮かぶ

みなが汗水たらして力をつけ、その誰もが夢見たトップアイドルという座

その場所をかけた争いに忽然と現れ、圧倒的実力を見せつけたあの女に怯えたみなが

諦め、逃げ去った

なにせ、今までの努力全てを否定されてしまうほどの強さだったのだからな

逃げ出すのも無理はなかった

「……だが、天海春香は不戦敗にはならん」

「なんでそう言えるんだよ、今日も当然レッスン漬け。明日だってな。そうすりゃ――」

「潰れてくれると助かるとは思うが……残念ながら否定しよう」

「なんでそう言えるんだよ……」

「自分以外の誰かの名誉が、天海春香の勝敗にはかかっているからだ」


天海春香はそういう女だ

自分のことは疎かにするし、犠牲にだってしてしまう

だが仲間に関しては疎かにはしない

「死んででも出るぞ。天海春香は」

「……社長。あいつのこと信用してるんだな」

「なんだと……?」

この馬鹿は何を言っている

天海春香を信用しているだと?

この私がか?

「馬鹿なことを言うな、私は今までの天海春香の調査結果から推測しただけだ!」

「でもよ。調査結果から、不戦敗にはならないって断言できるのは信用って言うんじゃねーのか?」


冬馬は良く解らないといった感じで首をかしげていた

舐めた口をきいてくれる……っ

調査結果から断言したのは

90%以上の確率でそうする人間だと解っているからだ

信用していようがいまいが

それほどまでに可能性があることならば断言しても何も不思議ではないだろう

「断言できるほど、調査が済んでいるというだけのことだ」

「そういうもんか。まぁ別に良いけど……一応伝えたぜ。天海春香のことは」

冬馬はそう言い残して去っていく

天海春香が倒れるかもしれないと気にしているのだな、冬馬

馬鹿め、放っておけばいいのだ

社長に対して手をあげ、暴言を吐くような女に対し

手を差し出すような真似をする理由はない

むしろ、突き飛ばしてもおかしくはない


だが、天海春香は突き飛ばしても

突き落としても……きっと

きっと、天海春香は――

「くっ!」

机に力強く頭をぶつけ

乱れていく思考を制御する

「……冬馬が余計なことを言うからだ」

何が信用だ

何が、何を信用しているというのだ

【「ならば勝て。勝って証明してみせろ」】

……私が。

【「はい!」 】

……天海春香を。

「ありえん!」

天海春香など……私にとってはただの駒だ!

心の中でそう怒鳴った

怒りを、鎮めるために………しかし、

その苛立ちは、オーディションが行われる日になっても

私の中から消えることはなかった


時間がなくなったので、ここまでにします

一回一回をもう少し長くできれば……くっ

くっ!

クロちゃんにとって春香はどんな駒だ?

ポーンかナイトかビショップかルークかキングかそれとも…クイーンか

きっとクイーンランゴスt『そこに跪いて!』ミorz

くっ

ポーンだな
栄光ある前進の果てに女王へとなる(中二気味)

ナイト(knight)の可能性もある

仲間のために自らが傷を被うが関係なく前進し続けるから

アニマス見る限りチェスにそんな深い造詣無いからな

>>263
あくまでチェスの駒に例えるならの話ですよ

チェックメイトだ……!(黒の駒のみを交差して並べながら)

チェスは将棋と違って相手の駒が使えないし成って違う方向性になる事もない(銀とが成ると金になるのが良い例)
これは961側が逆に春香に感化されるパターンですわ

・・・ここまで引き込まれたSSは初めてかも・・・

黒井素直になれよ!
さもないとフリフリのエプロンつけてクッキーつくらせるぞ

>>267
くっ!そんなクロちゃんを少しでも見てみたいと思っちまった

黒井×春香・・・はやらないかな

>>268
http://ozcircle.net/_uploader/161300779
見たいとな?


コーヒー吹いたじゃねーかwww

>>270

GJ! ココア吹いたwww


翌朝、社長室に届けられたいくつもの手紙の中で

唯一企業名の書かれていない白い封筒があった

「……天海春香」

差出人はあの女

中に入っていた一枚の紙には

『私を見てください』

その一言だけしか書かれていなかったが

見ろということはつまり、オーディションを見に来いということ

直接接触することを避けながら

なぜこんな手紙を寄越したのか

私には理解ができないが、そんなことはどうでもいい

見に来いと言えるほど自信があるということが重要なのだ

「……良かろう。見せて貰おうではないか」

ただひたすらレッスンに明け暮れたボロボロのお前が

ジュピター相手にどれほど戦えるのかを……な


「……おや、黒井殿」

会場で出会ったのは

天海春香ではなく、四条貴音だった

「何の用だ」

「いえ、視界に貴方が入っただけですよ」

「……いや、違うな」

四条貴音は何かを言うためにここに来た

絶対ということは出来ないが

私はなんとなく、そうではないかと感じていた

「四条貴音、天海春香に会ったな?」

「会ってないと言ったら。黒井殿は信じてくれますか?」

含みのある言い方をするのは四条貴音らしい

だが、おそらく四条貴音は試しているのだ

私が、天海春香にどれだけ侵されているのかを

>>270
思わず保存しちゃったじゃないか!どうしてくれるwwww

>>275
保存するなwwww





俺もパソコンからだったら……くっ


「……お前が否定するのならば、そうだと認めてやろう」

天海春香と四条貴音が会ったと確証は持てない

ゆえに、否定されればそれまで。

様子を伺うと四条貴音は不敵に笑い、頷いた

「ええ、確かにお会い致しました」

「そうか」

「何故、お会いしたと解ったのですか?」

「お前も天海春香も765プロの人間。団結団結と煩いお前たちならば会いに行くことは必然だ」

四条貴音は納得してくれたのだろう

それについて何かを言うことはなく

天海春香がいるであろう控え室の方を見つめた

「今の春香はオーディションに出るべきではありません」

「だからどうした」

「今すぐ、連れ帰ってください」

明確な敵意をむき出しにして

四条貴音は私を睨んだ


「足取りは危うく、声をかけても反応は遅い。今の春香は満身創痍なのです」

「それはあいつ自身が選んだことだ」

「ですが、間違いならば止めるのが貴方の勤めのはずです!」

「勘違いをするな、私は社長であってプロデューサーではない」

無理をしたいというのならばさせてやる

それで壊れるというのならば自業自得

私にはなんの損害もなければ

関係などないことなのだ

「っ……しかし、貴方は961プロにおける春香の唯一のぱぁとなぁではないのですか!?」

「騒々しいぞ四条貴音。売り出しているキャラとは全く違うではないか」

「どのようなアイドルとて身も心も人間です。私も、春香も」

四条貴音は荒れ狂う怒りを静かなものとして止め

その強い瞳一つにして私を貫く

「だからこそ、私は許しません。春香が自らを追い詰める理由を作った貴方を。絶対に」


不思議系などといったキャラを捨て

四条貴音は人間臭い怒りを私へとぶつけてくる

「公の場で売り名を捨てることが人間か。馬鹿め」

「人間を捨てることが天才ならば、馬鹿で構いません」

「ふん。やはり切り捨てて正解だな」

四条貴音は私を睨み

私は四条貴音を見つめる

そんな沈黙を破ったのは私でも、四条貴音でもない

「貴音さん。オーディションが始まりますよ」

「ええ、今行きます」

天海春香は私に何かを言うことも、視線を移すこともなく

四条貴音とともに去っていった

「天海……春香」

今までのように明るくも元気でもないあの女の姿に

私は何にも感じないはずだった

しかし……どこかが痛みに悲鳴をあげていた


オーディションの場所へと行くと

丁度、1番目のアイドルが舞台に上がったところだった

【「えへへっ」】

あの女の笑い声が聞こえた

【「私、頑張ります。えへへっ、ありがとうございました。黒井社長 」】

あの女の姿が見えた

明るい声、元気な姿

さっきの女と同じはずなのに

別人としか思えないほどの差があった

その原因は私なのか?

冬馬とのやり取りではないのか?

「……私を見てください。お前はそう言ったな」

天ヶ瀬冬馬が限界だと言い

四条貴音が満身創痍だと言い

私自身が、天海春香とは思えないと思うほどの疲労を蓄積していた

「……それで歌えるのか? 踊れるのか? 天海春香」

その言葉をかき消すように

ディレクターの開始の声が響く

オーディションが――始まった


ジュピターは完璧なものを見せてくれた

絶対に勝つという強い意思をひしひしと感じさせる歌とダンスは

その力強さと迫力は

そこまでのアイドルたちよりも飛び抜けていて

評価はもう決めてしまって良いと言えるほどの高得点だった

「……やはり、ジュピターの方が上か?」

如月千早には

評価においてはアイドルらしさのみで勝っただけだ

アイドルらしさの欠けていないジュピターには

天海春香では勝つことなどできない……か?

勝ちが決まった

ならもう見る必要はない。と、いつもなら思う

しかし、私は動かなかった

「7番、四条貴音と申します」

四条貴音の番だからではない

【「勝負は負けと言われるまで勝てる可能性があるものだって、私はそう思ってますから」】

まだ、天海春香が――負けを宣告されていないからだ


四条貴音の歌は大人びていて美しく

それに合わせたダンスは妖美で

それに見合った容姿と、雰囲気が周りを強く引き込む

歌は上手く、ダンスも上手い

容姿も文句の付け所はない

「なるほど……冬馬達にぶつけてくるだけのことはある」

切り捨てたとは言え

トップアイドルになれる可能性があった人間だ

手強くないわけがなかった

そしてさらに、

新人としての期待値がその得点を手助けしたのだろう

得点はほぼ満点に近かったジュピターと並び暫定1位だった

「8番、天海春香です!」

彼女は、笑う。

それだけを見れば満身創痍だとは到底思わない

だが、天海春香が疲労を溜め込んでいるのは事実

さて……合格枠は2つ

暫定1位の2組

ジュピターか、四条貴音か。

どちらが落ちるのだろうな

流れるような思考

ゆえに私は、その違和感に気づくことは出来なかった


とりあえずここまで


非常に悩ましくなってきた
明日はできないかもしれません



春香の私を見てくださいってもう完全に告白じゃないですかー

信頼してるんじゃねーか黒井さんよ!

>「勝者こそ絶対。勝者こそが正解なのだ」
>「お前が勝てねば、お前が間違いなのだよ!」
>「くだらないことで悩む暇があるのなら、少しでも強くなれ。でなければ所詮戯言だ」

黒井は前にこんな事言ったよな
つまり、春香が満身創痍になってまで頑張ってるのは
自分の言葉を戯言で終わらせたくないからか?

黒井さんを忘れようとがむしゃらに頑張ってる説

恋しちゃったんだねクロちゃん
春香さんなら抱かせてくれるかもしれないぞ
…非性的な意味で

押し倒すのが男だけどクロちゃんと春香さんの年齢差的に逮捕確定か

>>288
いつからクロちゃんと春香さんがそこまで歳が離れてると錯覚していた?

まさかの春香さんアラフォー説

そっちかよ!!

皆、歳の差ケコーン

って流行ってるらしいぜ?

・・・・・・後は解るな?

>>292
重婚は無理なんですか?!歳の差結婚できても重婚は無理なんですか?!

はるるんは誰のものにもならないよ

そうだよね…はるるん…もういないんだもんね…

はるるんはインフラ

>>295
やめろよ…過剰な愛を思い出しちまったじゃねーか!

http://mup.vip2ch.com/up/vipper42420.jpg
こっちの世界に進出しちまったから(アイドルの)はるるんはもういないもんな…

今日はなしか…寝るしかないな
春香さんと一緒に

来ないみたいだから寝るかな
くろちゃんと一緒に

なら俺は響と一緒に寝るかな

くさそう

おっと!小鳥さんなら俺の隣で寝てるぜ?

ジュピターで荒れる可能性あるし
春香が千早に勝っちゃったり
ジュピターと貴音が並んで一位って評価なのに
ここはいつ見ても平和だな
ちゃんとした理由が添えられてるからか?

だろうな
沸くとしたらキャラの心情にまで突っ込むやつかな

キャラの心情に突っ込むがキャラの心臓に突っ込むにみえてビビった

春香のほかほか心臓まだドクンドクンしてるよぉ~/////

>>307
怖いちゅうねん!

末尾DOの臭さときたら

>>309
出口は回れ右した場所にありますよ

>>307 よく見たらコイツ72じゃねーかwwwwww






どうしよう過剰な愛を思い出しちまった…


天海春香の歌は

今までのオーディション参加者から逸脱していた

いや、逸脱しすぎていた

上手いとか、下手とか

そういう次元の話ではない

天海春香の歌は求め

天海春香のダンスは与える

「……………………」

その表現力は異常としか言えない

まるで現実であるかのように

私達の心身に染み渡っていく

呼吸さえ躊躇してしまうほど

天海春香の歌とダンスに、私達は魅せられていたのだ


天海春香の歌が終わってからしばらく

私だけでなく審査員たちまでもが止まっていた

それも仕方がない

あれは、いつか見たあの女のような強烈な印象を与えたからだ

喜怒哀楽全ての感情が入り乱れた歌と踊り

楽しいかと思えば哀しく

哀しければ喜び、そして怒り

また楽しくなる

あれは歌としてのストーリーなのか?

あれは、ただのフィクションなのか?

「――天海君の歌だったな。黒井」

答えたのは私ではなく

忌まわしき765プロダクション社長、高木だった


「どういうことだ」

「黒井、天海君はお前に見て貰いたいという気持ちを歌にしたのだ」

「……なんだと?」

天海春香が私に見て貰いたい。だと?

確かにあの女は【「私を見てください」】と手紙を送りつけてきた

「なぜそんなものを歌にした」

「それは、天海君だけでなくお前も解っていることではないのかね?」

「………………」

天海春香は私のためにそんな歌を歌ったのか?

だが……私にとってはそんなこと意味はない

「私には、天海春香は不要だ」

高木は私のことを一瞥すると

既に審査員も、誰もいない会場を見つめ、告げた

「いや、天海君は必要だ。お前だけでなく私達全員に」

閣下化か?

>>315
お前は何回「か」と言った?

かっかかか?

言い辛いわ


私に必要だと?

全員に必要だと?

あの女がそこまで重要な人間には――……

思考が、消え去った

「ふん。戯言を抜かすな」

「……気づいていないふりをしているのか。それとも気づいていないのか」

高木は残念そうに言いながら

俺のそばから離れていく

「黒井、天海君は大切に扱ってくれたまえ。765プロの大切な仲間なのだから」

去り際の一言に

俺は何も言わなかった

言う必要もないと思ったのだ

あの女は今やわが961プロの物

どう扱おうと、私の勝手なのだからな


一人、会場のあったビルから出ようと歩く

前は誰かが隣にいたような……いや、い今はそんなことを考える必要はない

なぜ私に対しての歌などを歌ったのか

なぜ私のためなんかに歌ったのか

それが重要だ

可能性があるとすれば

【「黒井社長が本当の黒井社長になってくれたらって」】

そんなあの女の言葉だが……くだらん

そんな馬鹿げたことを

今でも続けているなどありえん

なにせ、私は――

「黒井殿!」

思考を遮ったのは天海春香ではなく四条貴音

怒り、悲しみ、焦り、

それらの感情を含んだ彼女が駆けてくる

その腕に抱かれているのは、天海春香

「至急、車をお出しください!」

「なに……?」

「春香を助けてください! 病院に、病院に早く!」

その必死な姿に私は仕方がなく従い、

四条貴音と共に天海春香を病院へと送り届けた

>>315
???「そこに跪いて崇め奉りなさい」


思えば、いや思う必要すらなく

それは、至極当然の出来事だった

一日中レッスン漬けの日々を過ごし、

オーディションを受けられるかどうかでさえ怪しかったのだ

でも、あの女は踊りきった。歌いきった

それは並々ならぬ精神力の賜物であるが

大事な一戦を終えたあとならば

崩れ去ってしまうのは当たり前だ

過労だと、医者には言われた

「貴方の管理責任です、黒井崇男!」

「………………」

天海春香がしたいことさせただけなのだがな……だが

一度も確認することなかったのは問題だったか

「何か仰って下さい、黒井殿!」

「黙れ、天海春香の病室の前だ」

その一言で四条貴音は押し黙った

天海春香……救いようのない大馬鹿だ


「……………」

正直なところ

まともな女の寝顔というものは

これが初めてだった

なにせ、青春と呼べるような時代は無かったようなものだし

下積み時代に最も近かったあの女は

寝顔は筆舌し難く、寝言に至っては放送禁止レベルだからだ

「乙女の寝顔はあまり見るものではありませんよ」

「傍に居ろと言ったのは四条貴音。お前だろう」

「しかし、春香を眺めていてくださいとは言っていませんよ」

ならどうしていろというのだ

一々面倒くさいやつだな

女という生き物は


「……春香には勝てないと思いました」

「……………………」

「込められた想いは力強いものでしたが……それは一体誰に向けられたものなのでしょうか」

四条貴音は解っていることだろう

だからというわけではないが

私は何も答えず、四条貴音はそれでも続けた

「春香は心から貴方の為になりたいと思っているのです」

「……………………」

「……………………」

四条貴音は天海春香の髪に触れ

頬を優しく撫でると、小さく首を振った

「たとえ世界が敵になったとしても。春香だけは……味方でいてくれるでしょう」

「何を言っている……?」

「ふふっ。それほど、春香は心優しい少女だということです」

四条貴音のそんな言葉は必要なかった

だってそれは――解りきっていることなのだから


中断します


今回の春香トップは少し無理やりかな?
アニマスの舞台美希or春香の時みたいなのを意識した

>今回の春香トップは少し無理やりかな?

>今回の春香カップは少し無理やりかな?
に見えて春香の胸の何が少し無理やりなんだとか思った俺を誰か殴ってくれ

閣下がくろちゃん落としにかかってやがるぜ...

閣下がトップでも閣下だから問題ない

トップになったあと倒れてるし
オーバーワーク故のトップだと思えば納得出来ると思うぞ?
今は961側だから潤沢な資金で765時代より質の良いレッスンを受けているとも考えられるし

何気に所属アイドルは実力派が多いからな、961プロ
フェアリーにしろ、ジュピターにしろ

黒ちゃんアニメだとひどい性格にされてたけど
実際くっそ優秀だし上司になって欲しいレベルの人間なんだよなぁ

説得力あるし伏線もあるし無理やりじゃないよー


今更ながら>>318訂正



私に必要だと?

全員に必要だと?

あの女がそこまで重要な人間には――……

思考が、消え去った

「ふん。戯言を抜かすな」

「……気づいていないふりをしているのか。それとも気づいていないのか」

高木は残念そうに言いながら

私のそばから離れていく

「黒井、天海君は大切に扱ってくれたまえ。765プロの大切な仲間なのだから」

去り際の一言に

私は何も言わなかった

言う必要もないと思ったのだ

あの女は今やわが961プロの物

どう扱おうと、私の勝手なのだからな


>>323の続き


天海春香が優しい人間だということは解っている

いや、優しすぎる人間だと解っている

だが……いや、

だからこそ私には不要なのだ

「……心優しい女が人に手を上げることはあるか?」

「叩かれたのですか? 春香に」

四条貴音は厳しい目つきになりながらも

天海春香が眠っているおかげか

声を上げたりすることはなく

「そうだと言ったら?」

私のその問に四条貴音は静かに答えた

天海春香が怒ったその理由を

「黒井殿が春香……いえ、天海春香という少女を理解していなかったからでしょう」


私が天海春香を理解していない。だと?

嫌なほどに理解させられたぞ

「お節介、頑固、馬鹿、自己犠牲、無駄に優しい、無駄に笑顔、無駄に前向き」

「おやおや……なんとも酷い評価で」

「事実を述べたまでだ」

それ以外ならば

クッキーが美味いというくらいしかない

それは別に言う必要はないだろう

「ですが、そうではありません」

「なに?」

「春香の優しさの理由です」

四条貴音は天海春香を一瞥すると

小さく首を振った


天海春香の優しさの理由

誰かの為に頑張るただの馬鹿ではなく

最終的には自分の為になるような

ずる賢い策を練った上で必要だと判断した偽善の理由か

「なんなのだ。それは」

「ふむ……黒井殿は邪推していますね」

「なんだと?」

「誰かの為に何かをするのは偽善かもしれません」

では。と、

四条貴音は言葉を区切り、私を見つめた

「自分の為に誰かに何かをすることは……なんなのでしょうか?」


「ただの偽善だろう」

「偽善ではないとは思わないのですか?」

「なぜそう思うことができる?」

本当の善人というものは

この世界には存在していないとも言えるだろう

なぜなら

人間は欲というものを持っていて

その欲を押しのけて相手に尽くすなどありえないのだ

「自分のためという時点で偽善だ」

「……偽善というのは自分の為に相手の得になってしまうようなことを嫌々やるものでは?」

四条貴音は本当に言いたいことを言おうとしない

一々面倒な言い方をして

私の口から言わせようとでもしているのか?

「面倒な遠回りをするな。何が言いたい」


「春香は貴方が思っているような、狡猾な方ではありませんよ」

「ふん。結局はそれか」

「もう少し人に頼ったらどうなのですか? 春香は裏切ったりはしません」

「お前に何がわかる」

四条貴音は何も知らない

天海春香以上に私に関しては無知なはずだ

それなのに人に頼れなどと……いや

無知だからこそなんでも言うことができるのだろうな

「……春香が怒ったのはきっと、貴方が信頼してくれないからでしょう」

「実力に関しては信頼しているつもりだが?」

今回だって

倒れるほどの努力の賜物とはいえ

ジュピターを抜いて1位になることができたのだからな

「いえ、そうではなく」

四条貴音はさも当然のように否定し、告げた

「秘密を打ち明けられるような信頼のことです」


「…………………」

「…………………」

「…………………」

「――んぅ」

私達の沈黙を打ち破る暢気な声

それは言うまでもなく天海春香

今回ばかりは

空気が読めたといっても良いだろう

「春香、春香……私のことが分かりますか?」

「……貴音さん?」

「ええ、そうですよ。四条貴音です」

四条貴音とは絶対に分かり合うことなどできん

ゆえに、あのまま話していても無駄に時間を過ごすだけだったからな

「天海春香」

「ぁ……黒井、社長」

天海春香は名前を呼んだだけで

枯れていく花のように顔を伏せてしまった


「願い通り、見てやったぞ」

「……知ってます」

それはそうだろう

あの時、目が合ったのだからな

私の為の歌とダンス

なぜあんなものをオーディションに使ったのかを聞きたいが……

「四条貴音、私達の会話だ。出て行け」

「言われなくとも、春香の無事を確認次第去る予定でした」

四条貴音は言うやいなや去ろうとしたが

扉の前で立ち止まり、振り返った

「黒井殿は言葉は厳しくとも、態度は正直ですね」

「なに?」

「春香が目覚めるまでここにいなければいけない理由など、貴方には無かったはずなのですから」

余計な言葉を残して四条貴音は去っていく

何を勘違いしているのだあの女は。

四条貴音と話していたからたまたま残っていた

……ただ、それだけだというのに


「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」

「まったくだ」

「えっと……それで、私」

「なぜあんなものを歌い踊った」

その問いに対し

天海春香は俯いたまま布団を握り締めた

「黒井社長に見て欲しかったんです」

「それは知っている。なぜ、見て欲しいなどと」

「だって……黒井社長に認めて貰いたかったんだもん」

認めて貰いたかっただと?

「実力なら――」

「そうじゃなくて!」

天海春香は言わせずに怒鳴ると

勢いよく首を振り、私を睨んだ

「私が見る価値のあるアイドルだって! 貴方のことも笑顔にできるアイドルだって!」

「……………………………」

「演技なんかじゃなく、本当に黒井社長のことを思ってるって……信じて、貰いたかったんだもん」

勢いのなくなっていく天海春香の言葉

だが、その意思の篭った瞳だけは弱まることはなかった


そんな馬鹿みたいな理由で

この女は過労で倒れるほどに頑張ったというのか?

誰かの為と言いながら

最終的に自分の利益になるようなものだ

しかし、それではあまりにも無駄すぎるではないか

私が認めないといえば、

それだけで無駄な努力と化するのだぞ?

「それで、その……私のこと、信じてくれますか?」

「……ここで信じないと言ったら、お前の努力は報われないのか?」

「報われますよ。千早ちゃんの名誉は守れたし、トップアイドルに近づくこともできましたから」

でも。と続く

「一番の目的は……未達成かなぁ」

天海春香は笑う

それは少し、悲しそうな笑みだった


ここまで


明日はできないかもしれません

来てたか乙
流石はるるんぐう聖やね


この春香は
一番身近な人も笑顔に出来ないなんてそんなのプロじゃないよ!
みたいに思ってんのかな

この春香に限らず、春香はそう考えてるだろうなあ

わた春香さんはメインヒロインなだけあって素晴らしいですね
わた春香さんさえいれば765プロも961プロも安心ですよね

春香さんが一番言わなそうな台詞だね

このSSを読んでいてプロデューサーが黒井社長に毒入りのコーヒーをお土産で持っていくSSをなぜか思い出した

辞めてしまったんか?

>>347
黒井「765のプロデューサーは静かに笑う」だっけ?最終的に高木社長も死んでしまいプロデューサーが社長になるが貴音から思い通りに動かない人間もいますよ的なことを言われる

まだ 慌てる時間では無い・(゚_゚

待つも兵法という言葉がある

春香ちゃんは可愛い
春香ちゃんは歌がうまい
春香ちゃんはできる娘

バンバンバンバンバンバンバン
バン     バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄ ̄


  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/

    ; '  ;
     \,( ⌒;;)
     (;;(:;⌒)/
    (;.(⌒ ,;))'
 (´・ω((:,( ,;;),
 ( ⊃ ⊃/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/ ̄ ̄

       /\
      / /|
     ∴\/ /
     ゜∵|/
  (ノ・ω・)ノ
  /  /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

一週間か・・・

まだ待つべきか


投下するほどの時間的余裕がないので

しばらく投下はできそうにないです


識別酉↓で出したのと同じやつです、一応

あずさ「春香ちゃん、ちょっと良いかしら~」

待ってますよ~

待ちます!

全力で待ちます!!

待つしかないさー!

のワの>呼んだ?

そうそう甘味たっぷりの干し芋…ってバカ!!

仲良いなお前ら

今の流れクソワロタwww

菴輔□縺薙?豬√lwwww

>>366
落ち着け文字化けしてるぞ

ワロタ

>>1じゃないならageるなよ…

てっきりsage入れてたと思ったわ
申し訳ない

黒井社長、クリスマスですよ!クリスマス!

ふん。だから何だというのだ(プレゼントを用意していないとは言っていない)


天海春香の一番の目的

それはさっきから言ってる

私に信じて貰うというものなのだろうが

全くもって理解できん

なぜそんな馬鹿げた理由なんぞが一番の目的なのだ

ジュピターや四条貴音というライバルに負けたくないだとか

如月千早の名誉を守るためだとか

もっとそれらしい理由があるはずなのに

「私がお前を信じたとして、何の得がある」

「黒井社長に信じて貰えることが得ですかね?」

「信じてもらえることで、どんな得があるのかと聞いたはずなのだがな」


「あっ、そっちですか」

「ああ、そっちだ」

天海春香は大して深くもない言葉の意味に気づき

なぜか表情を暗くした

「私が嬉しい。じゃ、不十分ですか?」

「……くだらない理由だな」

なんの利益にもならない無駄なもの

そんなものが嬉しいなどとこの女は言う

「なぜ、嬉しいと思う」

「なんででしょうね。解りません」

そういった彼女は笑う

ただ、笑うだけ

馬鹿だから解らないのか

それとも、解るようなものではないのか

「でも、信じてるって言われると嬉しくなるんです」

「…………………」

その笑顔は本当に嬉しそうなものだった

だからこそ、

そのあとの天海春香の悲しげな瞳を、私は見ることができなかった


「……黒井さん」

天海春香の静かで優しく、落ち着いた声が響く

いつかも聞いたような音

その時に続いたのは……

【ごめんなさい、もう……もう。私は貴方にはついていけません】

という別れの言葉

天海春香はなんというのだろうか

信じないと言えば、天海春香は私の元から去っていくのだろうか

しかしやはり、天海春香には私の予想など通じないらしい

「私は信じてますから」

「なんだと?」

「黒井社長がたとえ私を信じてくれなくても、私は黒井社長を信じてます」

この女は何を言っている

この女は私を信じてるなどといったのか?

突き放した私を信じてる……と?


「なぜだ、なぜ信じられる!」

「文句を言いながらも、私に付き合ってくれるくらいには優しいから……ですかね」

天海春香はそう言い、困ったように笑った

私が、優しい?

こいつはやはり馬鹿だ

「優しくしていたのではない。お前の機嫌を損ねないために付き合ってやっていただけだ」

思えば。

かなり馬鹿らしい理由で従っていたものだ

あんな馬鹿げた理由の通報など容易にもみ消すことができるというのに


「そういえば変な脅ししてましたね」

「それのせいだな」

「……でも」

天海春香は窓の外を眺めて笑う

それだけを見ていれば、惹かれる奴も多いのではないだろうか

そんな考えが浮かび、勢いよく頭を振った

……何を考えているのだ。私は

「黒井社長はやっぱり優しいですよ」

「……解らないな。そう思う理由が」

「私を励ましてくれたからですよ。あの時の言葉……凄く、嬉しかったです」

その光にさえ見えそうな笑顔に

私は反論するための言葉を失ってしまった


純粋な瞳で天海春香は私を見つめてくる

突き放されたことを忘れたわけでもないのに

天海春香は私を優しいと言い、信じると言う

馬鹿だ、大馬鹿者だ

私には理解できない理由で動く

この女に理屈など無意味なんだろうな……

怒鳴られ、突き放され

それでも結局、私のためにと努力して戻ってくるのだから

いや、戻ってきたわけではなく

もとより離れてなどいなかったのかもしれないが


「……天海春香」

「なんですか?」

「努力は認めてやる。だが、その人格は認めん」

「人格否定は酷くないですか!? 天海春香全否定じゃないですか!」

病室に天海春香の騒々しい声が響く

だが、不愉快にはならなかった

むしろ……いや、それはないな

「仕方がないだろう。全くもって理解しがたいのだよ。お前は」

「あ、解らないから認めないだけなんですね?」

「まぁ、そうだが……」

「良かったぁ……えへへ、なら良いです。それなら理解して貰えるように頑張れば良いんですもん」


認めないと言ったのに

天海春香は嬉しそうに笑う

やはり、良く解らないやつだ

「まぁ良い、今日はここでゆっくりしていろ」

「え、でも」

「費用なら私が全負担してやる。気にするな」

「え?」

「勘違いするなよ? 過労は我社の責任だと思っただけだ」

言い捨て、扉へと手をかけると

天海春香の声が追いかけてきた


「黒井さん、私頑張りますから。これからも、見ててくださいね」

「…………………」

何が頑張るだ

なぜ自分が病室にいるのかを忘れたのか?

「頑張るのは構わん。だが、無茶はするな。親や765プロに口うるさく言われるのは面倒だ」

「なら、私のパートナーになってくれませんか?」

「ふん。寝言は寝てから言うのだな」

「むぅ……まぁ、仕方ないかなぁ」

寂しそうな呟きに続き

天海春香の頭が落ちたせいで、膨らんでいた枕が空気を吐き出す

それを終わりの合図にし、私は病室を後にした


中断します


時間がござらん

ザ・ワールド

どうやったら >>298 のように書き込めるのか地味に気になる

来てたwww
そしてはるるんは社長ではなくさん呼びに変えたもよう
思春期ですかこのやろー!

「なら、私のパートナーになってくれませんか?」
ちょっと横になるわ

「優しくはない、機嫌を損ねないために付き合ってた」
クロちゃん…それを優しいと言うのですよ

年を越しても待ちます
おまいら良い年を迎えてくれ

俺は、ちょっと山篭もりしてくる

スレタイ見て春閣下か!と思って開いたら予想と違ったが
黒井社長のツンデレぶりが面白くてつい最新まで読んでしまったww

age保守
明けましておめでとう!続き待ってます!

sagaってなんだ?sageと同じ効果でもあるのか?

伏せ字とかを無くすことができる

[ピーーー]
おなにー
攻撃翌翌翌力

最新まで一気に追いついた
しかし、小鳥ェ…
春香ちゃんが黒井社長の性奴隷になるような妄想していたとはけしから

なんか、これ読んでから、漫画とかで思いっきり黒井社長と敵対してる春香見ると悲しくなる
本来は敵同士なのは分かってるんだけど…黒井社長に対して敵意剥き出しの春香は見たくないなぁ…
黒井社長が敵で、酷い奴で哀れだとしても、それを救おうとするくらいが春香だと思いたい

続き書いてください!!
お願いします!!何でもしますから!!

ん?今・・・

何でもするって

言ったよね?

ほほぅ?

俺が山篭もりしている間に、こんなことが・・・

なんでもするなら…春香ちゃんが黒井社長の気を引こうと頑張ってるイラストを描いてほしいものだな!

なんでもするなら…春香ちゃんが黒井社長の気を引こうと頑張ってるイラストを描いてほしいものだな!

せめて、生存報告が欲しい…

ジュピターとも961の仲間として親睦深めるんだろうか、この先

雪歩も引き抜いて雪歩茶をクロちゃんに飲ませて憑き物を落として黒井から白井にしよう(提案)

>>404

お前・・・天才か!?

保守し続ける生活がいつまで続くのか…

無論死ぬまで

もうすぐ一ヶ月たっちまう生存してるなら報告がほしい…
まさかこんないいところで投げる(逃げる)なんてことないよね?
わたしまーつーわー

逃げるって言い方はよくないんじゃないかな?
もう少しオブラートにね?


「……パートナーか」

考えるまでもなく

天海春香のパートナーなど面倒なことこの上ない

だが、

ジュピターや、一度は認めた四条貴音を

努力のみで上回ったその力は四条貴音に言った通り認めてはいるのだ

ゆえに、それ以上の力を発揮し

765プロを蹴散らしてくれるのであれば

面倒臭いプロデューサーの真似事をするのも吝かではない

と……思わないわけではない


天海春香は765プロが潰れることなどないと言っていたが

既に如月千早は孤立し

四条貴音はメンタル面に問題はなさそうだが

仕事を獲得することはできず、無駄骨に終わったわけだ

そして、潰れないと信じていた仲間が

自分のせいで弱っていき潰れたとなれば

天海春香のあの生意気な笑顔も叩き潰せるだろう

「…………………」

……何を思うのだ。私は

天海春香は今でこそ961プロのアイドルではあるが

あくまで一時的なものに過ぎず

奴もまた765プロのアイドルではあるのだ

ゆえに、天海春香もまた潰さねばならないはずだ


あの突き落としても這い上がってくるような女を

立ち上がることすらできないほどに打ちのめすには

私自身が多少の譲歩をしなければいけないだろう

例えば……望み通りパートナーとかいう面倒事を請負い

今以上に信頼を勝ち取り

ほかの765アイドルを再起不能にさせ、

それをお前のせいだと突きつければ……あの女のことだ

如月千早の時のように落ち込むだろう

そこでさらに私が突き放せば終わる……はずだ

多少面倒ではあるが

天海春香を再起不能にするにはこれが一番簡単な方法だ

そう自分に言い聞かせ、軽く頷いた


「……そうと決まれば、明日からでも対応しておいてやろう」

問題は次のオーディションで誰を叩くかだ

孤立した如月千早については悪徳を回し

叩けそうなら叩くことにするとして……

星井美希を叩くべきか?

未だ本気を見せていないが、見せていないからこそ後の脅威になる

天海春香も基本的な能力面は平々凡々

そこらのFランクアイドルと変わらないと言っても良い

しかし、他人の為という良く解らない理由で実力以上の力を発揮し

如月千早、ジュピター、四条貴音を抜いてトップに立ったのだ

星井美希は元々やる気のない奴だ

天海春香に大敗すれば、更にやる気を損ない

アイドルを辞めることはほぼ確実だと見ても良いだろうからな


「さて……」

携帯を取り出し、業務課へと繋げた

『はい。こちら961プロダクション業務課です』

「……黒井だ」

『お疲れ様です、どうでしたか?』

諜報部の人間でもありながら

どうでしたか? などとは白々しい女だ

「天海春香のオーディション結果は知っているだろうが」

『ええ、まぁ……そうではなく』

「なんだ?」

『いえ、なんでも。それよりご用件を』

小さく咳払いをし

業務課の女は平然と話を戻した


何が言いたかったのかは知らんが

オーディション結果以外で聞いたのならば

どうせ天海春香に接触した感想とかのくだらない事だろうな

「星井美希のスケジュールは把握しているか?」

『星井美希……ですか? 暫くレッスン漬けみたいですね』

「オーディションに出る予定はないのか?」

『いえ、全くなさそうです』

オーディションに出ないのなら

星井美希と戦わせることはできないか……いや

こちら側で主催したオーディションに誘うか?

だが、それでは向こうが乗らない可能性がある

ならば、局の人間を買収して765プロを誘わせればいい


「近いうちにあるオーディションを行う底辺局を調べておけ」

『底辺……ですか?』

「そうだ。底辺でなければ誘ってもこない可能性が高いのでな」

星井美希は無名中の無名

オーディションの誘いが来るなどほぼありえない

ましてや、大手のオーディションなど

如月千早などならともかく、やつに来ることはありえない

ゆえに、底辺でなければならないのだ

いささか面倒なことではあるが

大手の局からの誘いよりは

底辺のほうが、プロデューサー共も疑うことはないだろうし

力試しにもなるからと受けさせるはずだからな


そこに天海春香をぶつけ

完全に叩き潰す

もしも天海春香が救おうとでもするのなら

私が直々に言葉をくれてやればいい

甘やかされ、欲しいものは与えられる

自分から努力して得ようとする必要さえない

そんな不抜けた奴だ

軽く言葉を作るだけで

もう嫌だと簡単に逃げ出すことだろう

もしも、それでも逃げないようであれば……

さらに何らかの策を講じればいいだけの話だ


『解りました、調べておきます。いつ頃がいいでしょうか?』

「そうだな……」

近いうちにとはいえ

あまりにも近いのは少し不自然だ

いや、数合わせで急遽必要になったと、

適当なことを言わせれば合わせてくるか?

だがそんな理由での誘いにあの男が乗るとも思えん

「……2週間程度だな」

『了解しました。では、2週間+1週間の3週間でよろしいですか?』

「ふん。良く分かっているな」

『黒井社長に仕えてもう何ヶ月も経っていますので。ですが……』


業務課の女は

またしても不自然なかたちで言葉を止め

暫くしてから続けた

『黒井社長はお怒りになるかもしれませんが、この1週間は無くして欲しいです』

「……お前には関係ないことだろう」

『何をおっしゃいますか。私達は社員で黒井社長は社長です』

「……天海春香に何か言われたのか?」

『ふふっ』

なんの笑う要素もないはずなのに

女は笑い、そして答えた

『春香ちゃんは切っ掛けを与えてくれただけですよ。黒井社長だって、きっかけは頂いていませんか?』

「きっかけ、だと?」

『仕事もありますので、失礼します』

そう言い切ると

女は一方的に電話を切ってしまった

……ふん

バカバカしい。あんな馬鹿に毒されおって

悪態をつき、私は車に乗りこんだ

とりあえずここまで

時間がないのさ

書き貯めしつつ、出来る時に投下の新スタイル

こまめに読めたほうがこちらとしては嬉しいです
エタるより全然

黒ちゃん悪そうに言ってはいるが、ツンデレなんだよなあ

乙!
待ってた甲斐があった、これで生きていける!!

乙!
ゆっくり待つよ


いくらでも待つけど消えるのは勘弁

おつおつ!

わたしまーつーわー

いつまでもまーつーわー

たとえあなたーがふーりむいてくれなくてーも

まつーわー(まつわー)

待つわー

待つわー(流行れ)

ちなみに日本三大松原は
美保の松原(静岡県静岡市)
気比の松原(福井県敦賀市)
虹の松原(佐賀県唐津市)
の三つだぞ!!
これで待つのも苦じゃなくなるな!!

焼肉はエバラ

焼肉焼いても家焼くな

ちょっ、待てよ(CV.キムタク)

>>431
×美保の松原
○三保の松原

ちょっとあなた!!この美保って女誰なのよ!!

961プロの松原美保だ

その美保って女とどんな関係なのよ!!

私の娘だが?

娘・・・パパ・・・
あっ(察し)ふ-ん

お前ら何やってんだwwwwwwww

>>441

イメージしろ、
さすれば解る キリッ

春香「鬼はー外ー、福はー内ー…黒井社長もー、内ー!」

黒井「君は外に出ていたまえ」

冬馬(バレンタインにチョコ期待できそうだな)チラチラ

黒井「お前は2月15日まで外に出ていろ」

ここって1ヶ月位なら落ちないだろ このペースで保守もとい雑談してたら埋まりそうなもんだが

>>447
誰も1ヶ月書き込まず(作者もレスせず)いれば1ヶ月で自動で落ちるけどここは大丈夫そうだな
問題は作者の生存報告だが

みんなでワイワイ雑談していると気になって作者が書き始めるという天岩戸戦法だな(確信)

ワイワイガヤガヤ

バレンタインにチョコ代わりに投下があれば、それだけで素晴らしいバレンタインと言えそうだ

>>451
その発想はなかった

チョコっとだけ投下してくれるかもね

ちょっと待って>>453が何か言ってる!

チョっとコこの空気がレートーするかと思ったよ

このすれ優先的に湯煎せな

お前らなんでそううまい言い方がボンボン出てくるんだよ

このスレに3人、楓さんがおる

チョコっとだけでも書くカカオだけでも出せばいいのに

楓さん、帰りますよ

SSをミルだけで書ク苦労も知らないのビター以下の怠け屋は黙ってろ!!(暴言)

SSをミルだけで書ク苦労も知らないのビター以下の怠け屋は黙ってろ!!(暴言)

さすがにダジャレを2回繰り返すのは恥ずかしいんじゃないですかね…

大事な(ry

天丼は甘くない

映画、黒井社長も、セリフとは言わんけど影くらいは出て欲しかったな

ピヨちゃんの妄想の中ほんの一瞬だけ出てたような…
ほんの一瞬すぎて毎回確認しにくいんだけど

ああ、なんか「黒井」って名前がチラッと見えたような…

鯖落ちに完全勝利したSS速報君UC

ホワイトチョコな日が近付いてるので冷凍しないでチョコっとでもいいから書いてほしいな

>>470
キャンデーとかマシュマロとかクッキーが一般的にホワイトデーのお返しとされているね(少なくともうちの地域では)

ご飯はよくキャンデー食べましょう

>>471
飴って飯になるの?

さすがに飴は飯として食ッキーがしない

なんでこのスレ楓さんが大量発生してるんだ

なるほど、白蹴るで
返す相手のいないおまいらを表してたか

お母さんとお祖母ちゃんにお返ししなきゃ(使命感)
あと千早にもあげなきゃなあ俺モテモテだー(棒)

あれ、復活してたのかここ

俺はむしろもらう側だな
家族チョコを渡したからもらいたいが家族はケチだからもらえないだろうな
本命の響にもらったし何かお返ししないと(ミリマスポチポチ)

なんでここで雑談してんだこいつら

では逆に聞こう、なぜ雑談したらダメなのか

>>1のSSスレであって雑談スレじゃないからじゃないの?

全ての議論は>>1が投下してくれれば終わる(なくなるとは言ってない

>>1が雑談してても何も言わないし何より今日はホワイトデーだ、ぜ

>>483
うわぁ……

一か月で三倍という法外な利息

SSの感想とかならまだしもまったく関係ないことダラダラ雑談されてたら萎えると思う
保守ついでの雑談ってわけでもないんだから無駄に埋めるのはどうなの?

>>486
たてよみするとSSまだと催促してる

まあSSとか、せめて黒井社長or春香絡みの雑談、くらいまでだわな
黒井社長と春香はホワイトデーどう過ごすのかな~とかそんくらいならまだいいと思う

クロちゃんはツンデレだから「高木のところとは違い私はセレブだから」と30倍くらいにして何かプレゼントしそう


翌朝、社長兼天海春香のプロデューサーとして

病院の前に車を止める

まだ私がプロデューサーになってやるとは言っていないが

いつもいつも迷惑をかけられているのだ

この程度の意地悪くらいで怒られはしないだろう

「………………」

……怒られはしない。だと?

なんの心配しているのだ私は……

あの女に怒られるのが怖いのか?

いや……普段怒りを見せない人間こそ恐ろしいという話を聞いたことがある

あそこまで感情豊かに表現できる女だからこそ

その内に秘めた怒りの迫力は凄まじいものであるに違いない

と……思わざるを得ないのだ

決して、あの女に忌み嫌われることを警戒しているわけではない


暫くしてから

天海春香と見送りの看護師など数人が

病院から現れ、天海春香は深く頭を下げ、言い放つ

「お世話になりましたー」

「プロデューサーさんのお迎えとかはないの?」

「あはは……忙しいんですよ。きっと」

窓から入り込む天海春香の声

窓を通して見える天海春香

それらは私に気づかずに、私の車へと近づいてくる

「迎えに来てとは言わないけどおめでとうくらい……まぁ、期待するだけ無駄なのかもしれないけど」

天海春香はため息をつき、携帯を取り出す

相手が誰なのかと考える間もなく私の携帯から着信音が鳴り響く

相手はもちろん……天海春香で

本人はかけると同時に着信音が鳴り始めた車を細めで見つめ、黙り込んでいた


電話に出るか出ないか

他にも色々とあるのだがとりあえず電話に出てみると

天海春香は何も言わない

「どうした。いま仕事で忙しいんだが」

『私今日退院したんですけど』

「それがどうした」

『そしたらですね、病院の前に不審な車が止まってるじゃないですか』

天海春香は何かを企んでいるような笑みを浮かべながら

見えないはずの私を見つめる

「それが?」

『……いえ、警察に通報した方が良いかなと思いまして』

「……そうだな。しない方が良いと思うぞ。面倒事になりたくないだろう?」

『黒井社長……なんだか脅しみたいですよ。それ』


会話は苦笑する天海春香の勝ちだ

いやそもそも、勝ち負けなどなかったのだが

諦めて電話を切り、車を降りると

天海春香は憎たらしいほどに勝ち誇った笑みを浮かべた

「えへへっ、おはようございます。黒井社長!」

「ふんっ、寝ていた時の方が小煩くなくて良かったのだがな」

「ん~……あっ病弱系アイドル……いけそうじゃないですか!?」

「ほう。病弱なアイドルが激しく踊り、歌うのか。素晴らしいな」

「それは……が、頑張ってるっていう感動的な何かをですね!」

慌てて取り繕う天海春香を一瞥し

ボンネットを軽くたたく

「乗れ」

「どこか行くんですか?」

「会社だ。お前には始末書等、書いて貰わねばいけないものがあるのでな」


「退院して早速仕事……」

ぼそっとつぶやく天海春香は

懇願するような瞳で私を見つめ、言う

「退院祝いとかないんですかっ!?」

「あるわけないだろう、馬鹿め。自己管理できなかっただけではないか」

「それはそうですけど……」

「なにより、たった1日で入院も退院も無い。あんなのは仕事が休みだったようなものなのだよ」

「えー……また過労で倒れちゃいますよー」

そんな馬鹿げた宣言をする小娘は見ずに前を見る


信号機の赤い光が赤いリボンを連想させ

緑色の光は、あの瞳を連想させる

考えれば考えるほど

天海春香という女に思考は行き着く

「………………」

「黒井社長?」

「……私が管理するのだ。過労なんぞにするわけがないだろう」

「え?」

しまった。と

思うよりも早く天海春香は瞳を輝かせ

祈るように手を組み、私の方へと身を乗り出す

「それって、プロデューサーしてくれるってことですよね!」

「ぐっ……」

「そうですよね! そうなんですよね!? 黒井さん!」

騒々しさの戻った天海春香は

確かに目障りではあるが……しかし

車の中で流す音楽のように

あるいは、店で流れるBGMのように

必要なものである……ような気がした

気がしただけだ

絶対に必要だとは思っていない


誰かに弁明をしながら喚く小娘を睨む

「ええい、黙れ! ねてろ!」

「嬉しくて目が冴えちゃってるから無理ですよ」

恥ずかしげもなくそう言いながら

天海春香は笑う

眠っている時とはまた違う、天海春香の顔

どちらかといえば

「……眠っている時の方が――」

言いかけ、言葉を飲み込んでみれば

「え? 何ですか?」

天海春香は不思議そうに首をかしげる

どうやら、聞かれてはいなかったようだ

「何も言ってなどおらん! 良いから静かにしてろ!」

「むーっ、は~い」

つまらなそうにため息をついた天海春香を乗せたまま

車はまっすぐ会社へと向かった

そろそろダメかな……
適度な落としどころ見つけて終わらせる予定

全員とのやつがやりたかったんだけどね……美希でラストかな

来てたー!!

確かに難しい題材だろうなぁ、がんばって!

待ってました!

面白いし、納得行くまでやり続けてほしいとも思うけど、
本人がここでやめとかないとgdgdになるとかそんな風に感じてるのなら仕方ないかな…寂しいものだが
なんにしても最後まで頑張ってくれ。応援してる

まあ961プロダクションの春香って題材だし難しいよな

一時期春香SS書きまくってた人だよね?
期待してる

あぁ、ホント可愛いし微笑ましい。
退院祝いに黒井社長が来てくれることを期待してて、来てもらったら笑顔を見せる春香とか、
内心いろいろ言い訳しながら春香への感情を必死に否定しようとする黒井社長とか口滑らせる黒井社長とか、
それを聞いて大はしゃぎする春香とかもういつまでも見ていたい


「ファ、ファッションモデル!?」

「あぁ、そうだ」

調べさせた結果、いくつものオーディションがある中で

ファッションモデルのオーディションがあった

もちろん、努力でどうこうできるものではあるが

それはやはり、基礎が伴っていなければいけない

だからこそ……

「星井美希もこれを受ける。お前は、その出鼻を挫け」

「み、美希……? 無理ですよっ! これはさすがにっ」

天海春香は全力で否定する

私では星井美希には勝ち目がないと

勝つことなんてできないって

「歌や踊りなら努力すれば……でもっ、スタイルじゃ……」

「確かに。天海春香が星井美希に比べれば劣っているのはまず間違いない」

続きはよ

美希は中学生なのにボンッキュッキュッだしなぁ

今見つけて一気に読んだが、こいつは名作だ!
>>1のレスを見るに、もうすぐ締めなのかな?
ちと残念だけど、楽しみにしてます


「ぇっ……そこはそんなことあるわけないって否定してくれるんじゃ」

「否定する? はっ、そんなことあるわけないだろう」

「酷くないですかそれ!?」

天海春香を茶化して一息

机の資料を差し出すと

天海春香は少し不機嫌な表情をしながらも

素直に受け取った

「見てみれば解るだろうが、全員お前とは程遠い抜群のスタイルだ」

「……なんですか? もしかして、私のこと貶す為に見せたんですか?」

むっとする天海春香は

小煩い時よりも良い顔だ……負の感情が混ざっていて。だぞ?

そんなことを思いつつ、言葉を返す

「そうではない。抜群のスタイルを持っているやつばかりがファッションに興味を持つと思うか?」

「それは……まぁ、こんなひんそーでちんちくりんなわ・た・しで・も? 興味はありますからね!」

不器用な怒りを見せる天海春香を見て

思わず笑ってしまった


「もぅっ! 黒井さん!」

「クククッあまりにも面白い顔だったのでな。気にするな」

「気にしますよ……」

天海春香は落ち込み、ため息をこぼす

別にそこまで落ち込む必要はない気もするのだがな……

と、米粒ほどの罪悪感を打ち砕き

机を軽くたたく

「話を続けるぞ」

「はい」

「お前は自分が到底かなわない人間が着こなす服と、自分と同程度の奴が着こなす服。どぅちを選ぶ?」

「う~ん……綺麗に。とか可愛く。とか魅せたくはあるけど、自分が適わない人が着てる服なんて着こなせないって……後者でしょうか?」

「必ずしもそうではないが、少なからずいる。天海春香。お前はそいつらのモデルになるのだ」


「私がその人たちのモデル……ですか?」

「そうだ。お前は悪く言えば没個性だが、よく言えば一般人代表だ」

「ぐぬぬっ……反論したいけどできなそうな付け足し……」

「だからこそ、お前は星井美希達では得られないファンを得ることができる。それがお前の強みだ」

などと最もらしいことを言ってみるが

それで天海春香がオーディションに合格するとは限らないのが現実だ

だが

「えへへっ、そうですか~?」

などと能天気でいろとまではいかないが

少なくともやる気などが見られなければ不可能だ

……アイドルとしては馬鹿にしているようなものなのだが

それで喜んでくれるあたり単純なやつだ

「……………………」

……普段からこれくらいに扱いやすければ

少しは、まともに見てやってもいいのだがな

そう思い、何かを言おうとした頭を振り

天海春香へと指示を飛ばした

中断

おつ

おつおつ

おつ!なんかもう、こういうの見てたら、
黒井社長と春香の日常編というか、よくある1話完結型の連載漫画みたいなのも欲しくなってくるな…もちろん漫画というのは喩えで、1~2レスごとにオチがつくような短編SSをポンポン…みたいな、よく見るやつとかも良いな
黒井社長と春香が繰り広げる、毎日の微笑ましい光景をいつまでも読み続けていたいわ
すまん、ちょっと横道に逸れた感想だったかな

「見てみれば解るだろうが、全員お前とは程遠い抜群のスタイルだ」
春香よりスタイルが+方面でいいのは律子、貴音、あずさ、響、美希、小鳥くらいか
同じくらいなのが雪歩、真くらい
-方面ではやよい、亜美、真美、伊織
絶望的なのが千h

ほら、千早ちゃんはモデル体型だから……

千早さんはスレンd

あれは…細い寸胴!?

ちーちゃんの72は素晴らしい72だ

大体同意だけど、真とスタイルが同じくらいって評価は無理がないか?
まぁ、雪歩にしても、雪歩と同じ位って評価が通ると、律子も響も美希すら春香と同じ位のスタイルって事になるんだが…(センチ差的に)

72ってきれいな数字よな

(一発ネタのつもりなのに微妙に盛り上がった…どうしよう)
真くんはほら、同じ高校生(一部)よりはスタイルいいから春香と同じくらいかなーって(震え声)

春香さんのスタイルが良くないって風潮

春香はスタイル良いよなぁ。衣装でも谷間とか見えてるし
まあ、元々ハイレベルな女の子揃いのアイドル業界ではスタイル一つじゃズバ抜けられないってのは分かるが
でもその辺の道端で人波の中に春香ちゃんはいたら、一般人とは別格のスタイルのはず

春香でスタイルのみじゃ無理なら歌しかない72の人はどうなるんですか!

おい、馬鹿やめろ!72の人が可哀想だろっ!


あと一日遅れだけど春香さんお誕生日おめでとう

みなさんこれ以上胸のことを言うのはやめてください。
とても不愉快です・・・

春香さんへのお祝いは他のところで済ませてきてたけど、こっちでもおめでとう春香さん
黒井社長はどんな誕生日プレゼントを渡すのかな、お祝いも素直じゃないんだろうな

数週間書き込めない不具合があったが復活!
春香さん誕生日おめでとう!!
祝ってやろう
盛大にな!!

チキンも忘れずね!

>>530
>チキンも忘れずね!
ピヨッ!?

もう少しで1ヶ月音信不通に…生存報告ほしいです…

黒井社長が、鬱陶しい765プロを潰すやり方の1つとして春香を陵辱する同人誌を見てからこのスレを見ると、もう自分が醜い人間にしか思えなくなる

黒井社長が、鬱陶しい765プロを潰すやり方の1つとして春香を陵辱する同人誌を見てからこのスレを見ると、もう自分が醜い人間にしか思えなくなる

連投する前にリロードしろよとあれほど

ところでその同人気になる

その同人誌について詳しく

醜い自分を清めるためにその同人誌を教えるべきだ

春香「ここのプロデューサーさん達って…」

でも真はB73で千早とそう大した差はないんだよなぁ……

この扱いの差ってTOKIOの歳が1歳しか違わない城島と山口の扱いの差に似てるよな

真は成長した
千早は永遠に72
この差はでかい

>>540
お前千早さんに殺害されるぞ…

>>533>>534
大事なことだから二回言ったんだよな?だからその同人の詳細を述べて早く身を清めるべきだ

いつまで雑談してんだよ


「黒井さん、このあと時間ありますか?」

「ない」

「えっ、何かあるんですか?」

仕事の話を終えた天海春香の言葉に

むしろ何もないと思っているのか、と聞きたいくらいだが

それはため息と視線に変えて天海春香を睨んだ

「良いからお前は始末書を書け。過労ごときでどれだけの迷惑を被ったか……」

「それは悪かったと思ってますけど……」

「悪かったと思うならさっさと仕上げろ。机はどこ使っても構わん」

「ん?」

私の言葉にぴくっと反応した天海春香は

野獣のような……というと語弊があるかもしれんが

嫌な目つきで私の方を見つめた

「どこ使っても?」

「なんだ。なにg――」

天海春香は私の言葉を聞かずに

過労で倒れたとは思えない速さで社長椅子へと座り込んだ


「えっへん」

「おまえは私を馬鹿にしているのか?」

「どこ使っても良いって言われましたし、ふかふかしてそうで座りたいなって」

屈託のない笑顔で笑う天海春香は

ダメならちゃんとどきますけど。と

あからさまに不服そうに続けた

「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……え、ぇーっと、黒井さん?」

天海春香は気恥かしそうに頬を掻きながら

少しだけ目をそらした

「あ、あの……」

「……構わん。勝手にしろ」


「良いんですか?」

「如月千早、ジュピター、四条貴音に勝ち進んだ祝勝会をしてやろうと思っていたのだが」

「え?」

「わがままを聞いてやったわけだし、無くすとしよう」

「えぇっ! ちょ、ちょっと黒井さん!」

ガタッと慌てて立ち上がった天海春香は

すがるように私のもとへと駆け寄ってきた

「ど、退きましたよ! 黒井さん!」

「……知らんな。一度座った以上はもう終わりだ」

「うぐぐぐっ」

悔しそうな天海春香に背を向け、部屋を出る

ふんっ……私を馬鹿にするからだ

などと心の中で勝ち誇りながらも携帯電話を取り出し、電話をかける

「黒井で頼む。人数は……そうだな。2人で構わん」

変にへそを曲げられても困るし

朝のドッキリは失敗に終わったわけだしな

「クックックッ、天海春香の驚く顔が目に浮かぶぞ」

……何してるんだ。と

どこかで思う自分なぞいない……と頭を振った


中断
音沙汰なくてすまんね

乙! 待ってた!

乙 書いてくれるだけでありがたいんやで…

おつおつ!
ゆっくりかいてくれよ


心待ちにしてた


待ってた

待ってたぞ

おつおつ!待ってた!

お茶でも飲んでゆっくりしてってね
∧_∧    
 (´∀`)ドウゾ
 ( つ旦つ ∬ 
 と_)_) 旦


天海春香に時間はないといったが

私の時間がないとは一言も言っていない

そんな馬鹿らしい言葉を思い浮かべながら

数多の人が行き交う街を散歩する

当然、私だとバレないように……だ

雑誌だのなんだの面倒事は嫌い――

「黒井社長じゃないですか」

「………………」

「先日の春香は凄かったですよ」

「……貴様」

765プロの犬

もとい天海春香の元プロデューサーは

柔かな笑みを浮かべながら近づいてきた


「なぜ私だと解る」

「大事なアイドルを奪った相手ですよ? 変装していようが整形してようが見抜いてみせますよ」

「………………」

「………………」

「……ふんっ、貴様の見る目は確かなようだな」

「黒井社長に褒められるとなると否定できないですね」

ヘラヘラと笑いながら頭を掻き

刹那の間を空けて

プロデューサーはまっすぐ私を見つめる

その瞳に油断も隙も見えない

全てを見抜こうとするような観察の目

あるいは、対敵する者の警戒の瞳

それを持って、彼は問う

「春香の傍に居なくて良いんですか?」

「……貴様にそれを言われる覚えはないな」


「あっれ……おかしいな」

「ん?」

プロデューサーは頭上のクエスチョンを払うように携帯を取り出し

何かを開いて頷く……が

何かを言われる前に、口を開く

「天海春香のプロデューサーという件なら事実だが、常にいる理由もあるまい」

「あははっ、まさか言う前に言われるとは」

「……………………」

……なんとなく察しがついた自分が憎い

私は明らかにおかしくなっている

おかしくなって、正したはずなのに

またおかしくなろうとしていて

それを私は自分が納得のいく理屈を捏ねて享受しようとしている

そう……例えばやつの機嫌を損ねると面倒だ。というようにな……

「納得いきませんか?」

悩む私に対して

プロデューサーは静かに訊ねてきた


「……何がだ?」

「自分が変わろうとしていることが」

「……貴様に分かるのか?」

「毒気がない……いや、ある意味では毒に冒されている」

にやっと調子に乗った笑みを浮かべ

プロデューサーは話を続けた

「貴音も言ってましたよ。黒井殿はわたくしの知る黒井殿では無くなりつつある。されど、良き事です。って」

「……………………」

「黒井社長。春香の才能に、もう気づいているんじゃないんですか?」

笑みをかき消した真剣な眼差し

とぼける事を良しとしないその空気に

私はなんとなく空を見上げた

「……天海春香は努力家だ。天才ではないが秀才だ。他に何がある」

「努力家って言い回しは上手いと思いますよ」

「……………………」

「人は努力家に心奪われる。それは自分でも何か出来るかもしれないという可能性を見出してくれるからです」

「……………………」

黙り込む私を見て

プロデューサーが何を察したのかはわからない

でも、奴は小さく笑って告げた

「黒井社長はもう春香のファンだ。天海春香という存在を無視できなくなった春香のファン」


そのあまりにも唐突で理解のし難い言葉に

対峙し、見つめ合う私達を包み込む空気は消え去り

周りの喧騒が息を吹き返して空気を揺らす

「……くっ、クククッ……はははははっ!」

「……………………」

「何を言うかと思えばファンだと? 私が、あの女なんかのファンだと? 馬鹿馬鹿しい!」

私があの女の歌に惚れ

踊りに惚れ、演技に惚れ、容姿に惚れ

一挙一動に歓喜するような下賎な存在だと?

「ふざけているのか? 貴様は」

「まさか。そんなわけないですよ」

私の言葉を否定し

笑みを浮かべながら、プロデューサーは続けた


「でも、俺たちと同じような気がするんですよ」

「……なに?」

「心のどこかで春香に期待しているんですよ。夢を……見ているんですよ」

プロデューサーは子供をあやすかのような

静かで、滑らかで、繊細な声で告げる

周りの音でかき消されかねないようなものであるにも関わらず

私にははっきりと聞こえた

「俺達は春香なら貴方を変えてくれると期待をしてます」

「………………………」

「そして貴方も春香に何かを見てるはずだ。何かをかけているはずだ」

「ふんっ、だとしたら何なのだ」

「……それなら貴方は立派なファンってことですよ」

何故か嬉しそうに笑ってそう言ったプロデューサーは

私の返答も待たずに去っていった


「……私は、天海春香に」

期待しているのか?

夢を見ているのか?

………………

解らんな

知ろうとも思えん

「下らないことを言うやつだ。765プロのプロデューサーは」

ぼやきながら

来た道を戻り、社長室へと向かう

本当は解っていた

本当は知っていた

でも……私はそれを認めたくはなかった

それは完全に変わってしまうことを……いや

変わってしまうことで繰り返されるかもしれない悪夢を

私が恐れていたからかもしれない


今回はここまで


自分が思う春香の良さをステマしてみた
納得・共感していただけたなら幸い

ファンって深い言葉だったんだな
ただ結局春香の才能がどんなものかって書かれてないからなんとも言えん

乙、春香ちゃんは可愛い

ここまで切り込むとはおもわなんだ

ファンってなんだよ(哲学)

確かに努力家って言葉は合ってるね、スタミナの塊とかだよね

>>565
もうすぐ終わらせるつもりじゃなかったか?

残念だけど仕方ないよな


その夜、

駅まで送るという名目で天海春香を車に乗せた

「まさか黒井さんが送ってくれるなんて……」

「珍しくはないだろう。朝だって送ったではないか」

「それもそうですね」

助手席から聞こえる明るい笑い声は

意識したくなくても意識してしまうほどに

心を震わせる……いや、揺らす

「……天海春香」

「なんですか?」

「………………」

「黒井さん?」

天海春香の不思議そうな声に

赤信号に向いていた視線を向けた


天海春香の緑色の瞳が私を見つめる

穢れのない澄んだ瞳だ

「……黒井さん?」

「……お前は私が見えているな?」

「そ、それは当たり前だと思うんですけど」

理解できないのは当たり前だが

それを体現するように首を傾げながら

天海春香は瞬きをして……また見つめてくる

まるで餌を待つ犬みたいだな。と

見たままの感想にくすりとも笑えず車を動かし

目的地へと向かう

「……………………」

「あの、意味が解らないんですけど」

「……………………」

「黒井さん? 黒井社長?」

「……………………」

天海春香の執拗な呼びかけを無視していた

怒ったりしてもいいはずだ

でも、天海春香は

「……なにかあったなら言ってくれても良いのに」

そう――心配そうに呟いただけだった


天海春香の優しさに触れながらも

溺れることを拒絶し

私は自分の目的だけを進め、車を止める

「……ついたぞ」

「着いたって……あの、ここお店なんですけど。しかも超高そうな」

「言っただろう。祝ってやると」

「え……えっ? 無くしたんじゃなかったんですか!?」

天海春香の驚く表情

驚きつつ嬉しそうな声に思わず笑みが溢れて……

「笑った」

「……なに?」

「黒井さん、嬉しそうですよ」

「貴様があまりにも間抜けな顔をするからだ」

そんな意地悪な言葉に

天海春香はプクッと頬を膨らませて子供じみた怒りを表す

それに背中を向け、店の中へ向かいながら

狂い始めた自分を押さえ込むように顔に手を当てる

……私は何を喜んでいるッ!

天海春香を驚かす。ただそれが目的だったはずなのに

なのになぜ……笑顔に喜びを感じるのだ

間抜けな顔を晒す馬鹿なアイドルを嘲笑うはずだったろうに……馬鹿め

天海春香に向けていたその言葉を

私は自分に向けて言い捨てた


「うわ……一つ一つが私のお小遣いの何倍もする……」

「当たり前だ。庶民が来れるような店ではないのだからな」

「なんか引っかかるんですけど」

「ふんっ、勝手に引っかかっておけ」

突き放しても、突き放しても

天海春香は笑顔を向けてくる

私の言葉の本質を見抜いているかのように……

「黒井さん」

「なんだ。さっさと頼め」

「いや、その……どれがどんなのか全然解らないっていうか……」

「貴様は料理が得意だろう? なら解るだろう」

「解るのは庶民的なものですよ……こんなトリュフとか金箔とかフォアグラとか高級品は想像できません」

身分格差にむくれる天海春香は

メニュー表とにらめっこしながら、チラチラと挑発するように視線を向けてきた


「……なんだ。さっきから鬱陶しい」

「だ、だって……」

困ったように声を漏らし

視線が泳ぐ天海春香を見ながら

自分の手元のメニューを見つめた

大雑把に分ければ、肉か魚かだ

「……肉と魚はどちらが好きだ?」

「え、えっと……お肉?」

「疑問形なのはさておいて牛か豚か鳥……どれだ?」

「う~ん……鳥? でも、この松阪牛のA-5等級っていうのも……」

「なら牛だな。すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉、ステーキ……いろいろあるが」

「ステーキ……かな?」

「なら一番高いA5等級のステーキだな。私はこっちの伊勢海老の――」

「ちょ、ちょっとそれは高……」

私の注文にケチをつけようとした小娘を押さえ込み

強引に注文を済ませて店員を遠ざけた


「黒井さんっ! 流石に悪いですよっ」

「気にすることはない。私の金だ」

「で、でも……」

「貴様が悪いとは言え責任の一端は私にもあるのだ。飯ぐらい奢らせろ」

私の言葉に

天海春香はほんの少し納得いかないというような表情を浮かべたが

すぐに諦めて微笑んだ

「……割り勘しましょう。とも言えない金額ですからね。えへへっ、甘えちゃおっかな~」

「………………」

無邪気な笑みを少しだけ見つめ

気づかれる前に、目を逸らす

「ご馳走になりますね。黒井さんっ」

「ふんっ、せいぜい噛み締めるんだな」

「むぅっ!」

「ククッ、流石の間抜け面だ」

天海春香の多彩な表情に和みながら

心の内に隠した行動の真実を握り締める

私はただ

天海春香のプライベートな時間を金で買うという行為を

お詫びをするという行動の裏に隠して

正当化しているだけで

天海春香はそのことに気づいてはいなかった

ここまで



最近、黒春のことしか考えられない
もしかしてこれが、恋...?


最近更新多くて嬉しいわ

乙。俺…このスレが終わったら黒井社長の下で漢を磨こうと思うんだ…(フラグ)

素直じゃないなぁ
ただ甘えたいだけの癖に

黒ちゃん完全に恋する乙女

思ったんだが黒ちゃんってツンデレだがいおりんとどっちの方がツンがおおいかな?


「美味しかったです、黒井さん」

「満足したか?」

「それはもう、大満足ですっ」

天海春香の満面の笑み

それを見れただけで満足――なんてことはなく

しかしながら何かを要求するなんてつもりは毛頭なかった

それはまるで

満たされていないはずなのに満たされているかのような感覚

その不自然さに体が鈍り

目の前でデザートを平らげたばかりの天海春香と目が合ってしまった

「………………」

「………………」

「……な、なんですか?」

沈黙のあとの一言の後

天海春香はそっと口元を拭った……が

別に何かついていた訳ではなかった


「もうっ! なにかついてるのかもって焦ったじゃないですか!」

「私がいつそんなことを言った?」

「言ってなくても見てたじゃないですか……」

納得いかなそうに私を見つめ

天海春香はすぐにくすっと笑う

「なんだ。何かおかしいことでもあるのか?」

「ほらっ、気になる」

「ぐっ……」

どうやら引っ掛けだったらしい

まさかこんな稚拙な罠に引っかかるとはな

「一応黒井さんだって男の人で、私は女の子ですもん。見つめられたらちょっとは気を使いますよ」

「ふんっ、小娘に興味はない」

「いや、それは分かってますけど……というか、聞かれてもないのに言うということは……」

「払わせるぞ」

「ごめんなさい」


「……そういえば、なんですけど」

「なんだ?」

「春香ちゃんって呼んでくれないんですか?」

「………………」

なんの脈略もない天海春香の言葉に

私は少しだけ狼狽えて

手の止まった私に申し訳なさを感じたのか

「あははっ……いや、その……別にちゃんじゃなくても良いんですけどね」

天海春香は僅かばかりの譲歩をした

ちゃん付けじゃなくていいとかいう

あってもなくてもどうでも良いような部分だが

「……ならばちゃん無しの天海春香でどうだ?」

「却下です」

「却下を却下させて貰うぞ」

「じゃ、じゃぁ却下の却下を却下!」

「ふんっ、却下の却下の却下を却下だ!」

……言い争いは10分程度続いた


店を出た私達は

車に乗り込み、駅へと向かう

今から行ってこ娘の地元の終電に間に合うかは疑問だがな

「黒井さん」

「なんだ」

「余計なこと……しなくて良いですからね」

「余計なこと?」

「根回しですよ。根回し」

つまらなそうに言い捨てて

天海春香は暇を持て余した手で自分の髪に触れた

「私は黒井さんとならトップアイドルになれるんじゃないかなって思ってます」

「………………」

「でも、それはお金があるからとか、そういうことじゃなくて……その」

言葉が見つからないらしく少しだけ唸って、頭を振る

傍から見たらおかしな……見なくてもおかしい奴だな

と、勝手に納得しているあいだに言葉を見つけたのか

再び口を開いた

「黒井さんも私と一緒で夢を見てる気がするからなんです」

「私が夢を見ている……と?」

「そうなんですよ。なんて言ったら良いのかな……外はカリッ中はじゅわぁな唐揚げのような」

「理解できる例えを使え」

「理解できると思ったんだけど……ん~っとですね。濁った色をしているけど、それは表面だけで中身は綺麗。みたいな?」

そんな感じです。と

天海春香は小さく笑って続けると

私のことをじっと見つめた


理屈というかなんというか

言いたいことは分かったが

それが私に対して当てはまるとは思えず

鼻で笑うと

不服だったのか、天海春香はちょっとだけ睨んできた

「私がせっかく黒井さんのイメージを話してあげたのに」

「だからどうした。変われとでも言うつもりか?」

765プロの連中が期待している通りになど歩んでやるものか

その強い意志に基づく反抗に対して

天海春香は嬉しそうに笑った

「出来たら……こんなふうに優しい黒井さんが公になって欲しいです」

「…………バカを言うな。どこが優しい」

「えへへっ、お話に付き合ってくれたり、奢ってくれたり、気遣ってくれるところとか、色々です」


車が揺れて、動きが止まる

目の前には駅があって

あと少ししたら電車は来るだろうといった時間

天海春香は

残念だなぁと、寂しげに呟いたかと思えば

一転してにこやかな笑みを浮かべた

「今日はありがとうございました、黒井さん」

「あぁ」

「ありがとうございました。黒井さん」

「ん? なんだ?」

一向に車を降りようとしない天海春香にその言葉をぶつけると

こ娘はなぜわからないのか? というように顔をしかめた

「……名前」

「………………」

「な、ま、えっ!」

「……さようなら春香ちゃん。これで満足か?」

「えへへっ、はいっ!」

「気をつけるんだな。帰りも、体も」

「……え?」

驚く天海春香から目をそらし、ため息をつく

面倒くさい小娘が降りた車内に広がるであろう沈黙に負けたわけでも

ましてや心配をしたわけでもない

「ただサポートするにあたって必要だと思ったから言っただけだ。気にするな」

自分に言い聞かせるためか、それとも

天海春香に言うためだけの言葉か

そのよくわからない裏のある言葉に対して

天海春香は困ったよう笑いながら、「ありがとうございます」と、微笑んだ


ここまで

乙!

なるほどなるほど
強い「アイドル」への想い、でいいのかな

このまま完結まで期待してます

ざわわんのアイマス最終巻読んだが黒ちゃんがこんな感じに変わったな
まあ性格は変わらないがなんか丸くなった
だからかな、この黒ちゃんがいつもより可愛くみえる


支援

…(´・ω・`)


天海春香が去ってもなお

車内には天海春香の存在感が残り

私に向かって微笑みかけてくる

幻覚だと解ってはいるが

その鮮明さには自分の記憶力

あるいは心をある意味で疑わずにはいられない

なにせ

さっきまで同じ姿を見ていたとは言えど

そこにはない姿を幻視しているのだからな

「ククッ……馬鹿馬鹿しい」

嘲笑とともに幾度目かの言葉をつぶやく

幻覚が消え、車内には私だけが残り

静まり返る空気が嫌にまとわりついてくる中

携帯が震えた


『今日は本当にありがとうございました。楽しかったです!』

という天海春香からのメールだった

「毒されているとプロデューサーは言っていたが……たしかに、毒されてしまっているようだな」

と言うのもたった一文

無機質な文字列でしかないというのに

やはり、笑う天海春香が見えてしまうからだ

「………………」

天海春香の存在は

目に焼き付く強い光のように強力なものなのかもしれないし

もしもそれが強い光なんかではなく

太陽のようなものなのだとしたら

あの時は否定したが

今はもう高木の言葉を否定出来ないかもしれん

「……侮れるものではないな、天海春香の才能は」

既に暗い闇に包まれた街道を

光で照らしながら車は駆けていく

黒い車とともに進む白く強い光

それはまるで……

「……ふんっ」

徐に視界に入れたバックミラーに映る私は――笑っていた


天海春香との食事から1週間ほど経ち

モデルオーディションの2週間前に差し掛かっていたが

俗に言う買収行為は未だに行っていなかった

「良いんですか? 黒井社長」

「何がだ?」

「オーディションの件ですよ。春香ちゃんを勝たせるために――」

「必要ないと言っていたからな」

秘書には目もくれず

投げやりに答えてため息をつく

「信頼しているんですね」

「……そうかもしれんな」

「否定しないんですね」

「………………………」

ここぞと言わんばかりに攻めてくる秘書に対して

少しだけ厳しい目を向けたが

怯むどころか小さな笑みを浮かべるだけだった


「変わられましたね」

「面倒だからな。暫くは付き合ってやらないといけないのだよ」

「春香ちゃんが用済みになることはあるんですか?」

「……時期が来たらそれもあるだろうな」

にやっと笑った私に対して

秘書は少しだけ困ったように笑う

「なんだ。言いたいことがあるなら言ったらどうだ」

「時期っていつなんです?」

「お前に言う必要はないだろう。用が済んだならさっさと戻れ。仕事の邪魔だ」

「失礼しました」

秘書が出て行って静かになったかと思えば

すぐさま天海春香――ではなく

天ヶ瀬冬馬が入り込んできた


「如月千早の変わりようは何なんだよあれ。聞いてないぞ!」

「ふんっ、言ってないからな。それでどうだったのだ」

「……まるで機械みたいだった。歌を歌う以外には興味ないって感じだぜ」

孤立しかけていると聞いてはいたが

まさかそこまでいっているとはな

多方、負ける要素を直すつもりなんてない

むしろ完全に切り捨ててしまおうっていう考えなのだろうな

「プロデューサーは居たか?」

「いたけど揉めてる感じだったな。如月千早が完全に突き放してるっぽかった」

「やはりか……で、お前たちは負けたのか? 勝ったのか?」

「引き分け。同率一位で合格だった……ッ」

「………………」

冬馬は悔しそうに拳を握り締め、俯く

天海春香との勝負に負けたことが悔しいらしく

がむしゃらに頑張っているようだが……勝てなければ意味はない


「冬馬、ダンスとボイスレッスンは良い。表現力を集中的に鍛えろ」

「は?」

「お前達が天海春香に負けたのは表現力の差だ」

「ッ……それは」

「表現力が高ければ歌も踊りもさらに魅力的になるということを、お前は身をもって経験しただろう?」

あのオーディション

天海春香は確かに歌も踊りも上達していたが

一番はやはり表現力だった。それがすべてを凌駕して

より引き込ませる魅力的なものとなっていたのだ。ゆえに――

「天海春香に勝てるほどの表現力を手に入れろ」

「それは命令か? おっさん」

軽く睨んでくる冬馬に対して微笑を向ける

「アドバイスだ。高みに至るためのな」

「……りょーかい。それならおっさんの度肝を抜くもの見せてやるよ!」

嬉しそうに言い捨てていく冬馬は身を翻し、社長室を出ていく

……アドバイス。か

命令でもそんなことは言わなかったが

まさかアドバイスなんてしてしまうとはな……

本当に変わってしまったのかもしれないな

その事実に鼻を鳴らし、仕事へと戻った


ここまで
ちょっと詰まった

期待

うんおもしろい

誰かこのSSをコミック化してくれ!


冬馬が出て行ってから暫く経った昼頃

奴はやってきた

「黒井社長、ご無沙汰しておりますなぁ……へへっ」

悪徳又一

すっかり忘れていたが

如月千早について追わせていたのだったな

「何かあったのか?」

「旦那は既に知ってるでしょうが、如月千早はだいぶ孤立しているんですよ」

「ほう、それで?」

「心身ともに削りに削っている今、弟の件を突き出せば一発で潰せますぜ」

弟――如月優

如月千早はその弟を数年前の交通事故において

目の前で失っていて

確かに、削りに削っている今

今でも引きずっているであろうその件を突き出せば

潰せるのは確実だろうな

今の如月千早には歌しかない

そしてその歌は弟である如月優の為のもの

そこをぶり返されたら歌でさえも失う。か……


今一番輝いている。というのもおかしな話ではあるが

前線に出ているのは間違いなく如月千早だ

天海春香とのオーディションに負けはしたが

そこで手に入れた歌番組でその才能を発揮し

アイドルとしてではなく、歌手としては有名になりつつあるからな

その出っ張った鼻を叩き折れるのは良い事だ

良い事だが……

【「余計なこと……しなくて良いですからね」】

「…………」

「どうかしたんですかい? 旦那らしくもない」

「……貴様には私がどう見える」

「勝つためなら手段は選ばない、クールなお方ですぜ」

そうだ。

それこそ、今までの黒井崇男だ

その私ならば

如月千早を叩く件は即刻ゴーサインを出していたに違いない


しかし、今の私は躊躇っている

躊躇ってしまっている

如月千早に情が移ったわけではない

だが……判断を曇らせる靄はより大きく広く広がっていく

如月千早を芸能界から消し去ることで

メリットはある。だが、デメリットはない

そのはずなのに、メリットと思える要素が流れていく、消えていく

力強い印象を放つデメリットが怪しく影を落とし

私のことを見下ろす

本当にそれで良いのかと

後悔することはないのかと……語りかけてくる

「……如月千早に関しては無視していい」

「旦那!」

「二度も言わせるな」


ありえないという表情の悪徳に対し

恫喝するかのように低く、冷徹な感情を含めて言い放つ

「絶好の機会なんじゃないんですかい?」

「いや、今は天海春香に余計な負担をかけるわけにはいかんのだよ」

「捨て駒ひとつのためにでかい魚見逃すってことですかねぇ……旦那」

悪徳の負けず劣らずの侮蔑を含んだ瞳

貶す事しかできない腐った記者の分際で私にそんな目を向けるか

「天海春香と無駄に接しすぎたんじゃないですかねぇ? 以前のような強さがありゃしませんぜ」

「だったらどうだというのだ」

「否定しないってところがまた落ちたことを示してますぜ。旦那」

にやりと嫌味な笑みを浮かべる悪徳

今までは何とも感じなかったが

これは確かに気に入らんな……目も、口調も、何もかもが


「旦那と天海春香ができてるってぇ記事を書いてもいいんですぜ?」

「ふんっ、そんなデタラメをどうやって書く」

「書く事なんて些細で良いでしょう? 写真一枚でっかく貼って、熱愛発覚!」

バンッと悪徳は机を叩く

脅しのつもりなのだろうが

肝心の写真とやらを見せては来ていない

……ただのハッタリだな

「くだらんな。天海春香以上に、貴様の方が役立たずだ」

「あっしを捨てますかい?」

「765プロは記事ごときでは鼬ごっこのように延々と続くだけだ」

「……捨てるってことって受け取りますぜ?」

ギラリと光る眼差しに対して私は微笑を返す

「貴様がいなくとも天海春香がいる。あいつなら、奴らに言い訳の余地もない屈服をさせることができる。貴様などもう不要だ」


「後悔しますぜ、旦那」

「悪いが、私に脅迫は無意味だ」

「天海春香に毒されてますぜ、体の芯まで」

「私は最も屈辱的な敗北をさせられるものを選んでいるに過ぎん」

私のその答えに対し

悪徳は微笑を返して部屋を去っていく

悪徳又一など不要

下手を打てば天海春香が余計なことをするに違いないからな

なにより、ゴシップで潰すなんぞつまらん

何のために天海春香を奪ったのか解からんではないか

「……………ふんっ」

決して天海春香のためなんかではない

奴が如月千早の友人であることなど関係はない

そんなことをすれば天海春香にどんな影響を及ぼすか気にしているわけでもない

私はただ、純粋に

如月千早をもう一度天海春香に潰させ

ゴシップなんぞでは不可能なほどの真の屈辱を与えたいだけだ

ただ、それだけだ

意味のない言い聞かせを頭に響かせながら、私は仕事を進めていった


今回はここまで


まずいな……今の構想だと  第一部、第二部の二部構成になってしまう

それでもええんやで

乙乙
どんなに長くとも、>>1が納得できる形が一番面白くなると思うよ

そうそう
本当に面白いから完結さえしてくれれば文句も何もないよ乙

面白いから二部構成もありやで


「……ふむ」

天海春香がこっちに来てから

気づけば1ヶ月半も経とうとしている

その中で

ダンスのレベルも上がった

歌のレベルも上がった

表現のレベルも上がった

完璧な設備があり、完璧なサポートがついていたこともある

だが、それでも

当人しだいで結果は変わる

本来できるであろう成長予想よりも成長しない者

部分的に成長するが、部分的には成長しない者

「天海春香は……」

それらには含まれない、珍しいタイプ

これくらい成長すればベストだというラインも

これくらい成長できれば大したものだというラインも

天海春香は飛び越えていた


過労で倒れるほど無理したということも含まれるかもしれないが

無理は成長には繋がりにくい

ならばなぜ、こんな結果に至ったのか……

それは天海春香が努力家だったからかもしれない

だが、何よりもまず

天海春香には成し遂げなければならない目標が常にあったからだ

如月千早との対決の際には、思いの丈をぶつける為に

ジュピター・四条貴音の時には、自分の実力を認めさせる為に

元々努力家だった天海春香を、その想いが手助けしてさらなる躍進へと変わる

「思い返せば馬鹿馬鹿しい話だ……だが……」

歌うことにおいて天才と言える如月千早に勝ち

歌もダンスも秀でていたジュピターと四条貴音にも勝った

そんな確かな結果を出し、成長を見せている以上

非の打ち所などなかった


「っ……」

これならあの女にも勝てるかもしれない

そんな夢物語を想像しかけて頭を振り、馬鹿な考えを振り払う

あれは努力でどうにかできるレベルの相手ではない

戦う戦わないの前に

対峙し、その実力を見せられただけで心が折れてしまう可能性だってある

そんな相手だ

勝つことを目標としてきたなら

トップアイドルになることを目標としてきたなら

あの女のパフォーマンス一つで全てを失う

そんな相手だ

「……春香ちゃんはどうなるのだろうな」

勝てるとは思えない

だが、あの女と対峙した際の反応を見てみたくはある

まぁ、あの女は既に引退し

芸能活動において対峙するなどありえんだろうがな


そんなことを考えていると携帯が震え

天海春香という少女の名前を表示した

「どうした」

『えへへ、どうかしたってわけじゃ――ブツッ』

こっちが仕事をしているというのに

まさかお遊びで――プルルルルッ、プルルルルッ

「………………」

二度目の電話もやはり相手は天海春香だった

「なんだ」

『いきなり切るなんて酷いじゃないですか!』

「電波が悪かったのだ。仕方ないだろう?」

実際は私が切っただけなのだが

天海春香は疑うこともなく

それなら仕方ないですね。と、小さく笑った


「それで、なんの用なのだ」

『た、大した用事もないんですけど……その、なんというか……』

しどろもどろな答えを返してくる天海春香

当然、私はそれに対して答えることなどできず

黙り込んだままでいると

周りに子供でもいるのか

少し騒がしくなり、聞いたことある声が「しぃーっ」と周りを沈めるのが聞こえた

『……やよいの家、行っても良いですか?』

「高槻やよいか? なぜ行く必要がある」

『それは……そのぉ~……えへへ』

困ったように笑うのが容易に想像できてしまう自分にため息をつきながら

出先で遭遇して誘われたのだろう。と、聞くよりも前に出てきた答えを叩く

よそのプロダクション

それも765プロの人間ともなれば

正直許したくないが……


「高槻やよいに代われ」

しばらく考えた後の答えはそれだった

天海春香がそうしたいというのであれば

許してやる他ない

変に不貞腐れても面倒だしな

『お電話代わりましたーっ、お久しぶりです。黒井社長!』

「あんまり大声で話すな。騒々しい!」

『はわっ、ごめんなさいー』

聞くだけなら元気そうではあるが

如月千早の件は伝わっていないのか?

それとも……知りつつも気丈に振舞っているのか?

『あの、黒井社長?』

「……またもやしパーティーとやらをやるのか?」

『そうですけど……あっ、もしかして参加したいんですかー?』

なぜそんな結論に達したのかは解らないが……

そうか、その手があるのか

高槻やよいには不本意とは言え一飯の礼があるし

聞きたいこともあるからな

「そうだな。邪魔でなければ私も行こう。だが、他言無用だ」

『なんでですかー?』

「無用と言ったら無用だ。理由はない」

そう言い残して電話を切る

行けば解ることだが、こないと思って不抜けている所を突くのは中々面白いからな

不抜けて驚く天海春香を想像し

その馬鹿さ加減に苦笑しながら、高槻家――ではなく

精肉店へと向かい、一番高級な牛肉と豚肉を買ってから高槻家へと向かった

>>204の言ってたのが現実になったな
てか黒井社長、丸いを通り越してデレデレ状態に突入しとる…


「………………」

「………………」

「……あはは」

天海春香の笑い声が

俺と765アイドルの菊地真との間を裂く

「貴様がいるとはな」

「やよいはボクの友達ですからね。いる時だってありますよ」

私達の間に流れる空気は

何者の介入も許さない張り詰めたものだったはずだ

高槻やよいの弟や妹でさえ割り込むことのないものだったはずだ

なのに――

「えっ、真は私の事友達だって思ってくれてなかったの!?」

「え?」

「やよいはって……やよいは友達だけど春香は違うみたいな」

「そ、そんなことないよ! 今のはやよいの家にいるからそういう言い方だっただけで……」

「今日は黒井さんのおかげでお肉が一杯ですーっ! みんなーちゃんとお礼しましょー!」

「「「「はーい!」」」」


話が有耶無耶に霧散して消えていく

私が961プロの社長であり

765プロの敵であるという事実は残っているはずなのに

「……なんだ、これは」

あまりにも日和見過ぎる光景に唖然としていると

その元凶とも言える天海春香は笑い、

菊地真は私に対して文句をつけることもなく

高槻やよいの家族の間に馴染んでいた

「菊地真。良いのか?」

「今は別に仕事関係ないですし」

「……なに?」

「それに――」

私が持参した肉を一口食べて、私を見つめる

その瞳は怒りや憎しみなど感じず

「やよいと春香が許してるんだから、ボクから言うことなんてありませんよ。食事は楽しく食べたいし」

敵意もまた――一切感じられなかった


中断

乙皆天使

こりゃ毒気も抜かれますわ


「ほら、真もこう言ってるんですから。ね?」

「高槻やよい……には無駄だな」

「ご飯は皆で仲良くですーっ!」

天海春香らの誘いは拒絶することもできたが

聞きたいことのためにそれもできず、流れに甘んじて食事を共にする

765プロのアイドルとその家族が住む家

ならばここも敵地であるといえるはずなのに

言えそうもない。そんな空間

長居すれば飲み込まれてしまうかもしれんな

食事は肉があるからと暴走気味だった高槻家の子供達と

その波に飛び込んだ天海春香と菊地真のおかげで予想よりも早く

10分足らずで終わり、子供達は早々と休むために部屋へ向かい

天海春香と菊地真は子供達に半分誘拐されるような形でその後についていく

そして今に残されたのは、何の仕業か私と高槻やよいだった

>>628訂正  


「ほら、真もこう言ってるんですから。ね?」

「高槻やよい……には無駄だな」

「ご飯は皆で仲良くですーっ!」

天海春香らの誘いは拒絶することもできたが

聞きたいことのためにそれもできず、流れに甘んじて食事を共にする

765プロのアイドルとその家族が住む家

ならばここも敵地であるといえるはずなのに

言えそうもない。そんな空間

長居すれば飲み込まれてしまうかもしれんな

食事は肉があるからと暴走気味だった高槻家の子供達と

その波に飛び込んだ天海春香と菊地真のおかげで予想よりも早く

10分足らずで終わり、子供達は早々と休むために部屋へ向かい

天海春香と菊地真は子供達に半分誘拐されるような形でその後についていく

そして居間に残されたのは、何の仕業か私と高槻やよいだった


「今日は本当にありがとうござました」

「ふんっ礼など要らん。一度は世話になったのだからな」

「で、でもでもっ、その……とっても美味しいお肉を頂いちゃって!」

高槻やよいは洗い物による濡れ手をタオルで拭いつつ

申し訳なさそうに振り向く

……これほどまでに家庭的な姿が似合う中学生もそうそういないだろうな

なぜアイドルなどやっているのか……と疑問に思うが

調査資料の生活費を稼ぐため。という言葉が直ぐに返って来た

「……………………」

「……黒井さん?」

「高槻やよい、私の問に答えろ」

「はいっ、私でよければ!」

私が肉を持参したことへの礼になると思ったのか

高槻やよいは元気よく答えを返してきた


「如月千早の現状について、どの程度知っているのだ?」

「千早さん……ですか……?」

高槻やよいの言葉はたったそれだけだったが

醸し出された暗い雰囲気と

悲しげな表情から付き合いが悪く、関係までも悪くなっているということは瞬時に解ってしまった

「ふむ、相当悪い状態ということか」

「はわっ!? ど、どうして」

「貴様の表情を見れば一目瞭然だ馬鹿め。演技力というものを少しは養ったらどうだ」

「ご、ごめんなさい……」

別に謝る必要はないのだが

しかし、こんなヤツにまで知れ渡っているとはな

如月千早は思っていた以上に脆い存在だったということか……


「如月千早について、プロデューサーは何かしているのか?」

「プロデューサーは大丈夫だって……でも……」

「ん?」

「プロデューサーはなんだか辛そうで、だから私は力になってあげたいって……でも」

高槻やよいは

調査結果などからは想像もつかないほど

落ち込み、俯き、悲しげに続けた

「私、なんにもできなくてっ、オーディションも、レッスンも全然上手くいかなくてっ、迷惑ばっかりかけてっ」

「……………………」

「プロデューサーの負担にしかなってないのかなーって……」

6人兄弟姉妹の一番上だから

弱小事務所ゆえに周りが必死にもがいているから

頼ることも、相談することも出来ず

子供のくせに積もり積もっているものがあるのだろう

いや、積もり積もっていたものがあったのだろう

高槻やよいは泣き崩れるとまではいかないが

笑顔はなく、代わりのように涙を零した


自分達の無力さ、無能さに絶望し

765プロが崩壊していくこと

それこそ私が望んでいたことで

高槻やよいの今の状態は願ってもない状態だった

だが……なんだ

この悲愴感は

まるで過去の自分を

それと共に歩んだ一人のアイドルを見せられているかのような不快感は

「くっ……」

高笑いの一つでもして、無能だとか足手纏いだとか

そう思うなら辞めてしまえとか、以前の私なら迷わず言えていたはずなのに

「…………………………」

目の前で打ち拉がれている高槻やよいを前に

私は躊躇ってしまっていた


「なにも……」

「………………」

「なにも出来ないわけではない」

やっとのことで出てきた言葉がそれだった

75プロを崩壊させ

高木に目にものを見せてやるのが私の最終的な目標だ

そしてそのためならどんな手でも使うのが私だ

如月千早はただ単に天海春香に競り負けただけだが

ここまでの状況に陥っているのであれば……むしろ利用しないわけには行かない

だが、

このまま高槻やよいを放置したり、罵倒して……というのは

私の中の何かが嫌悪し、不快感を際立たせ拒絶する

ゆえに私は崩壊させ、尚且つそれらに阻まれない選択を口にした

「961プロに来い、高槻やよい。貴様には天海春香とユニットを組むという大事な役割がくれてやる!」


ここまで


構想がずれていく……予定が合わない
全員が961プロに奪われる未来まで見えてくる……

ワンフォーオールは買っても時間の関係上出来無いというジレンマ

もうやめてー!
やよいまで取られたら千早のライフはもう0よ!


>>634訂正 大事な場面でミス



「なにも……」

「………………」

「なにも出来ないわけではない」

やっとのことで出てきた言葉がそれだった

75プロを崩壊させ

高木に目にものを見せてやるのが私の最終的な目標だ

そしてそのためならどんな手でも使うのが私だ

如月千早はただ単に天海春香に競り負けただけだが

ここまでの状況に陥っているのであれば……むしろ利用しないわけには行かない

だが、

このまま高槻やよいを放置したり、罵倒して……というのは

私の中の何かが嫌悪し、不快感を際立たせ拒絶する

ゆえに私は崩壊させ、尚且つそれらに阻まれない選択を口にした

「961プロに来い、高槻やよい。貴様には天海春香とユニットを組むという大事な役割をくれてやる!」


>>637をさらに訂正 ごめん



「なにも……」

「………………」

「なにも出来ないわけではない」

やっとのことで出てきた言葉がそれだった

765プロを崩壊させ

高木に目にものを見せてやるのが私の最終的な目標だ

そしてそのためならどんな手でも使うのが私だ

如月千早はただ単に天海春香に競り負けただけだが

ここまでの状況に陥っているのであれば……むしろ利用しないわけには行かない

だが、

このまま高槻やよいを放置したり、罵倒して……というのは

私の中の何かが嫌悪し、不快感を際立たせ拒絶する

ゆえに私は崩壊させ、尚且つそれらに阻まれない選択を口にした

「961プロに来い、高槻やよい。貴様には天海春香とユニットを組むという大事な役割をくれてやる!」


>>1の代わりにワンフォーオールをじっくりプレイしてやるよ

乙~
ユニット作るなら三人組ぐらいにしたいよねぇ(チラッ


即興での誤字脱字は仕方ない
しかし続きを期待させるなぁ相変わらず

何かあっても回りも大変なら
やよいはこういう風に溜め込みそうだし
頼れそうな大人がいたら吐露しちゃうよな…

全うな手段をとれば簡単に壊せる765プロであった・・・

その辺の設定やらシナリオのちぐはぐ感が
黒井良い人・出来る人説を強化してるんだよなぁ

>>642
原作とこのスレどっちの設定に言ってるのか判らないが
このスレは下積み時代、周りの関係悪化
何も出来ない自分それらが重なってこれだし…
一番は多分そう言うときに命綱になる春香が居ないからだろうけどさ

まぁ黒ちゃんはアニマスや一部漫画だとただの屑みたいなもんだよね

黒ちゃんはただ日高舞に勝ちたいだけなのにね

舞さんが芸能界復帰するには愛ちゃんの存在必須だけどそのためには有名なアイドルに春香さんがなる必要があるわけで
直接対決あるかな

勝ちたいのに、現状としては精神的にも物理的にも勝ち逃げされた状態だからなぁ…
そりゃ流石の黒井社長でも辛くもなる

>これならあの女にも勝てるかもしれない
引退もしてるってことだしやっぱ舞ちゃんか

千早はまだ響がいるからギリギリライフ1残してるよ!
春香とやよいのユニットでもう一人加えるなら誰だ?春香はボーカル、やよいはダンス、ビジュアルだから美希?でも美希は春香とライバルでありたいだろうしそうなると雪歩か亜美真美か…
雪歩は961プロはジュピターいるし厳しいか…
亜美も竜宮あるし、となると真美か?真美と春香とやよいのユニット…あれ?意外といけそうじゃね?

前の方で畳むって言ってた時点でも十分切り込んでたのに
ここから更に展開していくのか

>>649
前々から散りばめてたものを回収していってるだけじゃない?
過去については細々と出てたしな


「……私が、春香さんと?」

「天海春香はソロでも問題はない。だが……仲間がいればさらに高みを目指せるはずだ」

天海春香は誰かの為により強く輝くアイドルだ

高槻やよいでなくとも足手纏いは

普通ならば邪魔だと罵られ、突き放され、腫れ物のように扱われる

しかし天海春香はそれをしない

むしろ、足手纏いに駆け寄り手を差し伸べるようなやつだ

「でも、私……」

「天海春香には必要なのだよ。高みを目指すための目的が」

如月千早に楽しさを教えるためにトップアイドルを目指す天海春香だが

その如月千早が不安定な今、どうなるかは解らない

だからこそ、もしもの為の保険として高槻やよいが必要なのだ

「わ、私が役に立てるんですか……? 春香さんの足を引っ張ったりしませんか?」


高槻やよいは私の話に興味を持ち、惹かれながらも

不安と恐れを口にする

その悩みを抱くのは当然で

それを選んだ末の結果を恐るのも当然

――しかし

「恐れているだけでは何も変わらん」

「え?」

私は何を言おうとしているのだろうな

ただ利用するだけの足手纏いに対して

適当に理由を作り、要らなくなるまでこき使えばいいだけの話なのに……

「良いか高槻やよい」

「……はい」

純粋無垢な高槻やよいの瞳が

挫けそうで、儚く散ってしまいそうな危うさを感じさせ

私に言葉を引き出させる

「上に立つ者と、下に立つ者。その差は恐れに平伏したか、立ち向かったかの違いだ」


「君は今膝をついている。あとは手をつき、頭を下げるだけで終わりだ」

「………………」

「夢も、何もかもが……な」

「っ!」

高槻やよいは力強く服の裾を握り締め、私のことを見つめる

その瞳には恐怖がある

しかし、それ以上の意思が見て取れた

「まだ立つのか? 怖いのだろう? 逃げ出したいのだろう? 泣くほどに辛いのだろう? だったら――」

「嫌です!」

「……………………」

「辛いし、悲しいし、怖いけど……でも、でも……」

恐怖が言葉を押さえ込む

あと一歩が踏み出せない

子供というのは無鉄砲で無謀なくせに、

現実に直面するととたんに活力を失う面倒なやつだ

………………

「前に進みたい。そう言いたいのだな?」

「!」

高槻やよいは私の言葉に対して勢いよく頷く

その予想通りだが予想以上の反応に

苦笑しつつ、言葉を続けた

「ふんっ、ならば1週間後765プロから私の下に来い。周りには秘密にしてな」

「……はいっ!」

目元をぬぐい、元気な返事を高槻やよいは返す

足手纏い一人引き入れるのに真っ当な説得など私らしくないな……

「料理に使ったアルコールはちゃんと抜くのだな」

「えっと……私はお酒とかは使ってないですけど……」

「……そうか」

なら気の迷いか……まったく、馬鹿なやつだ

自分に対して吐き捨てて

勝手に寝ていたアイドル2名を高槻やよいに任せ

私は逃げるように――車へと乗り込んだ


そして1週間が経ち

天海春香のオーディションまで1週間となった頃

「あの、私レッスンの予定があるんですけど……」

「解っている。だが、これは春香ちゃんにとっても大事なことなのだ」

「私にとっても?」

何も知らない天海春香は

不思議そうに首をかしげて私を見つめる

そして

――コンコンッ

「あっ、誰か来――」

天海春香が振り向くと同時に

扉が開き、新たな961プロアイドルが姿を現す

「こんにちはーっ!」

「や、やよい!?」

「えへへっ、春香さん。よろしくお願いします!」

「ど、どういうことですか!」

「どうもこうもない。高槻やよいが役割を欲しがったから与えたというだけの話だ」

あまりにも衝撃的だったのか

天海春香は聞いておきながら答えを返さず、呆然と高槻やよいを見つめる

「みんなの足を引っ張ってばかりで、それが嫌で相談したら……来ないかって」

「や、やよい……本当に良いの? 後悔しない?」

「春香さんと一緒だし、たとえ事務所が違っても仲間だって春香さんは言ってくれたから……だから後悔はしてません!」

「……そっか」

高槻やよいの強い瞳を目の当たりにして

天海春香は拒絶したりすることはできず、受け入れる

765プロは四条貴音と我那覇響を引き抜いた

私は天海春香と高槻やよいを引き抜いた

高木ィ、貴様もやったのだ。文句は言えまい!

ククク……ハハハハハッ!


ここまで

……優越感に浸る黒井社長であった



やよいが動いた理由があっさりし過ぎかなーって
でも、迷惑かけ続けるよりも
求めてくれる人のところに行くんじゃないかなーって

うん、改めて黒ちゃんがヒロインだとわかった内容だ

やっぱ貴音と響は元961プロ設定なんだおつおつばっちし☆


黒井社長マジ主人公

やよい引き抜きは想像してなかったぜ

クロちゃんがいい具合にかき回してる感じがすき


このクロちゃんは黄金の精神を持ってる


楽し過ぎて更新が待ちきれない更新マダー?チンチン

真っ当に行けば普通に勝てるかもしれないでござるの巻

黄金の精神が黄金の精子にみえた俺さダメかもしれない

>>663
ジョジョキャラがただの変態に成り下がるな
…まあもともと変態多いけど


高槻やよいと天海春香がレッスンへと向かい

私だけが残った社長室

そこに電話が繋がってきた

『社長宛にお電話です』

「相手は?」

『それが……765プロダクションのプロデューサー。と』

ククッ

あまりにも突然な移籍宣言には

焦りを隠せないようだな

「繋げ」

『了解しました』

電話番の女の声が途切れ

点滅しだしたボタンを押し、受話器を取る

『言いたいことがある』

「ふんっ、高槻やよいの件だろう?」

『解ってるなら話は早いですよね』


『やよいは765プロの大事な仲間なんですよ。もちろん、春香もですけど……』

「だからどぉした?」

『っ……やよいを返してください。春香は表向きには正式に移籍してます。でも、やよいは……違うじゃないですか』

挑発するように言ってみれば

プロデューサーは怒りと悔しさと焦りを混ぜ込んだ

少し複雑な感情をぶつけてきた

私が同じ人格、同じ立場なのであれば

同じような行動に出ていた可能性も無きにしもあらずだが

――だが。

「断る」

『なっ……』

「高槻やよいは自分の意志で961プロを選んだのだぞ? 貴様にとやかく言われる筋合いなどない!」

『そんなはず……』

「あるのだよ。そんなことがな」

いいねぇ・・・


「喜べ765プロ。今の私は実に気分がいい。だから結果に至る過程を理解できない貴様にも解りやすく説明してやろう」

苦笑混じりの挑発じみた声で刺激してみるが

プロデューサーは堪えているのか

お願いします。と、小さく答える

確かに如月千早の件が大きくなったことが一番の要因かもしれない

だが、私は如月千早を敗北させただけに過ぎない

しかも、八百長などを一切使わずにだ

「もちろん、それでも私が種を蒔いたと言えるだろう。だが――それだけだ」

『……………………』

「律儀に水をやり、芽吹かせ、育て上げたのはほかでもない貴様らだ」

『っ……俺たちが、ですか?』

「如月千早以外を疎かにした。不安にさせまいと触れさせなかった。だから不安になった! だから無能であると思い知らされた!」

『それは……っ』

「だから求めた! 求めてくれる人間を! だから私は言った! 貴様にもやれることがあると!」


『……………………』

プロデューサーは何も返してこない

迫力に息を飲んでいるのか

それとも、自分の行いを悔いているのか

いずれにしろ、自分のしてきたことを理解しているはずだ

それが正しくはなかったのだと

「解っただろう。無能プロデューサー」

『…………っ』

「むしろ感謝したらどうだ? 貴様が潰しかけたものをすくい取ってやったのだからな」

『そうですね……』

軽いジョークのつもりだったが

プロデューサーは沈んだ声でそう返し、続けた

『やよいは……』

「天海春香とレッスンだ。当然、貴様と話をさせるつもりはない」

『……………………』


「私と話す余裕があるのか?」

『……千早の件も知っているんですよね』

「答える義理はない」

『それもそうですね……っ』

悔しそうにプロデューサーは小さく唸る

仲間だの団結だのと宣っておきながら

こうもあっさりと仲間を奪われたのだ

悔しくないわけがないか……

「高槻やよいは自主的に移籍を志願した。貴様らに止める権利はない」

『否定できませんし、反論もできません……失礼しました』

プロデューサーはそう言い残して潔く身を引く

そして電話が終わり

私は安堵ではなく、複雑なため息をついた


確かに気分が良かった

生意気な765プロに一泡吹かせてやれただろうし

まっとうな手段で仲間を奪い取ることが出来たのだからな

だが……納得がいかない

挑発するというよりも

無能な奴らに憤りを感じていたような

そんな気がしてならない

「……なぜバカみたいに力説などしたのだ。私は」

高槻やよいの思いを知っているからか?

高槻やよいの涙を見てしまったからか?

情に流されるなど馬鹿馬鹿しい……

そんなものは弱者の傷の舐め合いにしかならない

しかし、現に私は高槻やよいのためにプロデューサーに怒鳴った

「……挑発するためだ。煽るためだ。そうだろう? 黒井崇男」

窓に映る自分に自問する

しかしそれは何も言わず、私を見つめ返して嫌味な笑みを浮かべただけだった


ここまで


……終わりは見えてる
でも、終わりにたどり着くまでにあとどれだけの改変が行われるのだろう?

まずは美希との話を終わらせないと……

実に面白い、黒ちゃんは根本は変わらないが考え方や感じ方が変わってきてるなそれが春香による影響だから黒ちゃん自身も困惑を隠せないし変わり始めてる自分に戸惑ってるんだろうな

着地点が決まってるなら安心して見れるな
過程は無理の無い範囲で頑張って


「………………」

「………………」

レッスンを終えた天海春香と高槻やよいを社長室に呼び出し

レッスンの成果を問う

曲がりなりにもプロデューサーのような業務を引き受けたのだからな

面倒だがやるしかあるまい

「……で、どうだったのだ?」

「あー……その……」

「なんだ?」

「あはは……」

誤魔化すように笑う天海春香と

俯き気味な高槻やよい

それだけで大体察せるわけだが

「上手くいかなかったのだな?」

「っ……」

「や、やよいは一生懸命頑張ったんですよ! 頑張ったけどダメだったっていうか、新しい環境で戸惑ったっていうか!」


高槻やよいではなく

天海春香が無意味な弁解をする

怒られるのは可哀想だ。と

フォローのつもりなのだろうが

新しい環境に戸惑ってなどいたら

その都度変化するライブやフェス、TVなどの舞台には到底出れまい

「頑張っても無駄なら意味などない」

「そ、それは……」

「ゎ、私……」

「だ、大丈夫だよやよい! 私――」

「春香ちゃんはちょっと席を外せ、私と高槻やよいで話す」

その言葉にビクつく高槻やよい

一方で、心配そうに仲間を見つめる天海春香は

退室する他ないと解ったのか

「廊下で待ってるからね」

そう言い残し、部屋を出ていった


小煩いのが消えた今

室内を沈黙が漂い

俯いたままの高槻やよいは

べろちょろとかいう謎の財布らしき何かを握り締めた

「……何か言いたかったのだろう?」

「っ…………」

「春香ちゃんがいないと言う勇気もないか?」

「わ、私……私……」

べろちょろに走る皺がより細かくなっていき

声が一段と暗くなって震えだす

「私……やっぱり足手纏いにしかならないのかなーって……」

「レッスンを何度も中断させたそうだな。レッスンしただけ無駄だった。と、担当者からも言われたぞ」

「ごめんなさい……」


新しい環境で戸惑ったなんていう言い訳は認めない

新しい講師が合わなかったという言い訳も認めない

「……高槻やよい。なぜ失敗を重ねた」

「失敗しないように頑張ろうって……次はちゃんと出来るように頑張ろうって。でも……上手くいかなくてっ」

ぐすっと鼻を啜る音が響く

失敗しないように頑張ろう

そう思うのは確かに必要なことだが……

高槻やよいは明るく元気というのが売りだったようだし

そのポジティブさも武器ではある。が

それが逆に枷になっているか

「失敗は成功の元という言葉くらいは聞いたことがあるだろう?」

「あります……」

「だが、高槻やよい。君は全く成功しない。失敗ばかりを積み重ね、足を引っ張り周りの成長さえ阻害する」

「ごめんなさい……」

「謝罪など要らん。黙って聞け」


「……………………」

影の指す暗い瞳を私へと向け

高槻やよいは言葉を待つ

失敗ばかりで悲しくて、悔しくて、辛くて

なにより天海春香と担当者に申し訳がなくて

結局無力で無能だった自分が情けなくて……絶望する

流石のポジティブ少女も

そこまでこればこうなるのも当然だな

全く……悪い買い物をしてしまったではないか

こんな不良品を買った私も馬鹿だったのかもしれないがな

「……………………」

不本意ではあるが

足を引っ張りすぎて、天海春香が成長するどころか退化しては元も子もない


……だから

だから仕方がなく

高槻やよいも成長させるしかない

「次頑張ろうと思うのが間違いだとは言わん。だが、それだけでは失敗しかしないのだよ」

「………………」

「失敗した。次頑張ろう。それで何か解決しているか?」

「して……ないです……」

高槻やよいの元気のない答えに

私は静かに頷く

天海春香がそこらへんを教えられれば私がこんな話をしなくて済むのだが

似たような前向き思考のあいつには任せられん

「そうだ。解決などしていない。だが、お前はそれしか考えていなかった。だから失敗だけを積み重ねたのだ」

「……………………」

「失敗を成功につなぐために必要なのは、なぜ失敗したかを考え、どうすれば失敗しなくて済むかを考えることだ」

それを飛ばしても問題ないのは天才くらいだ

……転載はそもそも失敗をしないかもしれんが

バカでも一時は問題なく通過するだろうが、繰り返した時にまた失敗も繰り返す

「上手くいかない時にならこうしてみようと変えるのではなく、なぜ上手くいかないのかを考えろ」

「考える……」

「上手くいかない理由も知らずに方法を変えたところで、成功など滅多にしないのだからな」


「そうすれば、流石の足手纏いも失敗はしなくなるはずだ」

「成功……出来るようになるんですか?」

「成功できるのではない、失敗をしなくなるのだ。成功は当たり前なのだぞ?」

「うぅっ……」

自分のやるべきことを知り

元気を取り戻したのか

高槻やよいの表情はさっきよりも柔らかい

「まずは普通を求めろ。失敗・普通・成功の中の普通。普通ができて初めて成功に手を伸ばせるのだからな」

「はいっ!」

「良い返事だ。明日から実践できるな?」

「頑張ります!」

高槻やよいは元気よく返事を返す

これなら、明日は失敗ゼロとはいかないかもしれんが

少なくとも、進歩のないレッスンになどならないはずだ


「話は終わりだ。春香ちゃんが待っているのだろう?」

「そうなんですけど……一つだけ良いですか?」

「なんだ?」

「私のことも、春香さんみたいに呼んで欲しいかなーって」

「………………」

なんだそんなことか。と

言いかけて言葉を止める

天海春香をそう呼んでいる以上

そこまで抵抗があるわけでもない

だが……ふむ

「良いだろう。ただし、明日のレッスンがパーフェクトだったらだ。ダメならもやしと呼ぶ」

「もやし……ですか?」

「嫌ならば完璧にこなせばいい」

「うっうー! 頑張りますーっ!」

些細なことでも利用する

これがプロデュースする上での重要な――……ふんっ

「……話は終わりだ。さっさと出て行け」

高槻やよいは言葉の中に隠れた感情など気づかずに

ありがとうございました。と、笑顔で言い残し、去っていく

……私は何を馬鹿な

プロデューサーなどとうの昔に辞めた

今はただ利用するために仕方がなく肩書きを持っているだけに過ぎないというのに……

「くそっ……」

やり場のないその感情を

その一言にもみたない言葉に収め、投げ捨てた


ここまで


アドバイスはちゃんとしたこと言えてるのだろうか……
正直自信はない


やよいみたいに純粋無垢なタイプの子には、これくらいシンプルなアドバイスの方が効く気がする


高木社長も黒井社長も昔は敏腕Pだったんだろうなぁ

正しいうっうーの扱い方をしている……だと?
うっうー! 嬉しいですーっ!

しかしこの黒ちゃん優秀だな

やよいと黒井社長のハイタッチの予感

実際の事は分からないけど何となく二人共敏腕Pっぽい

よくできた指導者だなぁ


そして翌日のレッスンが終了すると同時に

「どうでしたかーっ!」

高槻やよいは元気良く駆け寄ってきた

「そうだな……」

「イマイチでしたか……?」

「………………」

高槻やよいは残念そうに言うが

別にそんなことはない

完璧とは言わないが

言われた通り、普通の領域にはしっかりと到達していたのだからな

「……次は成功を目指すのだぞ。やよいちゃん」

「ぁ……はいっ!」

嬉しそうに笑う高槻やよいを一瞥し

天海春香へと目を向けると

少しばかり怪訝そうに私を見つめていた


「言いたいことがあるなら言ったらどうだね?」

「じゃぁ言いますけど。やよいに甘くないですか?」

「そんなことはない。やよいちゃんからの申し出に条件を出し、しっかりとクリアしたから受けただけのことだ」

「いや、そういうことじゃなくてですね……」

言いたいことはあるが

言葉が見つからないのか

困ったように頭に手を当てたが

「まぁいいです。ちゃんとプロデュースしてくれてますからね」

「なんだその上から目線は」

「えへへっ、嬉しくてつい」

「言っておくが、今回はたまたま仕事がなかっただけだ。見に来ることなどないぞ」

「え……もう見に来てくれないんですかー?」

天海春香ではなく、高槻やよいが残念そうに言葉を漏らす

私は一応

765プロの敵のはずなのだがな……

「……たまになら来てやろう。一応はプロデューサーだからな」

「うっうーっ! ありがとうございますーっ!」

「ふんっ、簡単に浮かれおって」

あそこまで沈んでいたのが嘘のように

高槻やよいは元気な姿を見せる

もう心配はいらなそうだ


モチベーションが低ければ基本ですらできなくなる

だが、モチベーションが高ければ基本以上のことだって可能にする

まぁ、まだまだひよっこの高槻やよいに基本以上は求めないが

「むぅ……」

「どうした?」

「なんでもないですよー」

含み笑いを私へと向けて

天海春香は高槻やよいと共に更衣室へと消えていく

なんだ

私になにかおかしな点でもあったのか?

「おい、そこの」

「は、はい」

「お前をレッスンのコーチに雇ってやっているのは誰だ?」

「く、黒井社長です」

「よろしい。ならば天海春香が今考えていたことを言ってみろ」


唐突な無茶ぶりだということは私だって解っている

だから解雇したりとかするつもりはなかったが

コーチは恐る恐るといった感じで

多分ですけど……と前置きをして答えた

「黒井社長がやよいちゃんに優しかったから……その……」

「高槻やよいを特別扱いしたつもりはないぞ」

「でもその、なんと言えば良いのか解りませんが……」

天海春香のように言葉につまり

申し訳なさそうに私を見つめる

言葉はあるが言えない。といった感じだ

「率直に言え。なんであろうと貴様に処罰は与えん」

「っ……ロ」

「ろ?」

「ロ、ロリコンなのかもって!」

コーチは言いにくかった言葉を勢いよく吐き出す

その衝撃的な意味合いを持つ言葉に

私はしばらく固まり、そして言い放つ

「……天海春香ぁ!」

『うひゃぁ!?』

更衣室から響く天海春香の悲鳴

出てきたらしっかりと黒井崇男という人間について話してやらねばいけないようだ


10分程度の説教の後

2人を後部座席へと乗せて車を走らせる

「うぅっ……私は言わないでおいたのにぃ」

「思った時点で罪なのだよ」

「そんなの理不尽だよぅ」

まだ少し文句は言うが

私がそんな人間ではないことは理解したらしい

まったく……少しばかり甘く見てやっただけでこうなるのだからな

天海春香なんて大嫌いだ

こんなやつのファンなんぞ、断固否定、断固拒否だ

「やよいちゃん」

「なんですかー?」

天海春香を宥める高槻やよいに対し

今朝契約してきたばかりの携帯電話を差し出す

「携帯電話を支給しておく。壊したり失くしたりするんじゃないぞ」

「で、でも……」

「使用料は会社が持つから心配はしなくていい。持っていて貰わなければ連絡がしづらくてかなわんのだよ」


絶対に持っていなければいけないと言うわけではないが

自分でスケジュールを把握したり

何らかのトラブルがあった際に連絡をしたり

色々と必要な事があるかもしれないからな

「本当に借りちゃっても良いんですかー?」

「そのために契約した携帯だ」

「あ、ありがとうございますーっ!」

その元気な返しに鼻を鳴らす

別にロリコンとかいう変な人間ではないが

暗く塞ぎ込まれているよりは

こういう方が聞く側、見る側としては気分がいい

「……黒井さん」

「なんだ?」

「やよいのこれ……最新機種なんですけど」

「だからどうした。目の前にあったから適当に選んだだけだ。他意はない」

「とか言いつつオレンジ色なんですけど!?」


「ふんっ、イメージを壊さないようにしただけだ」

「嘘ですね。絶対にやよいのこと甘やかしてる!」

「そんなつもりはない!」

「私のことは渋ったくせにやよいだけすぐにちゃん付けだったし!」

「なんでそれが今出てくる!」

天海春香は反省していた空気を蹴り飛ばし

私の言葉に食らいつく

何が気に入らないのかしらんが

私はもっと気に入らん

「もうクッキー作ってあげないんだから!」

「ならば定期の更新はしない。プロデューサーも辞めだ!」

「職務放棄するんですか!? いーけないんだー」

「やよいちゃんの方は続投、春香ちゃんだけ放置。職務放棄には――」

「えへへっ」

無駄な言い争いにも思える会話を

高槻やよいの嬉しそうな笑い声が遮り言葉が途切れる

私はミラーを通し、天海春香は直接高槻やよいを見つめた


「やよい?」

「何がおかしい」

「黒井さんと春香さん、仲が良いんですねーっ。なんだか楽しいですーっ!」

「………………」

「………………」

私達の仲がいいだと?

高槻やよいは何馬鹿なことを言っているのだ

「そんなわけがないだろう」

「そうだよ!」

「礼儀も遠慮も知らないヤツなんぞ知らん!」

「礼儀も遠慮も知らないのはそっちじゃないですか!」

「「くっ……!」」

「……? 十分仲がいいような――」

「「良くない!」」

言い争いは駅に送り届けるまで終わらず、

この日は

高槻やよいと天海春香のせいで

無駄に体力と気力を使わされてしまった

それでも765の毒は抜けない黒ちゃんであったww


――だが

正直なことを言えば

今とは違って女一人、男二人だったが

言い争うように話し合った過去の記憶が蘇ってきて

少し……懐かしい気分にもなった

「………………ふんっ」

余計なことばかりする奴だ

本当に忌々しい

気に食わないことばかりだ

――しかし

「……………………」

手放そうとは思えない

高槻やよいを手に入れたのだから

メインを切り替えるという選択肢もあるのに……そうしようとも思えない

大嫌いだと思うことはある

だが、それがずっと続いたことはない

気づけば許している、気づけばまた傍に置いている

――認めない

そんなことは認めない

天海春香という存在に魅せられているなど――私は認めない

相反する二つの心がぶつかり合う

その衝撃が私を苦しくさせ、悩ませる

それをかき消すために強い酒をいくつも飲み、私はそれを混濁する意識の奥へと追いやった


ここまで


ふむ……美希やって千早やって終わりかな

おっつおっつばっちし☆

乙!

小鳥さんだと思うけど、伝説か・・・・う?ん。

>>704
伝説的なのは日高舞
逃げたのが小鳥側だと思うぞ


ファッションモデルのオーディション当日

元々参加予定だった天海春香と

オーディション慣れさせるという目的の元

飛び入り参加させた高槻やよいと共に私は会場に来ていた

必ず受かるという保証はないが

オーディション結果に不安はない

天海春香の体型は割と平均的なものだが

人気が上がりつつある今、その知名度を利用しようとするのが一般的だ

ゆえに受かる可能性は十分に高い

運がよければ表紙を飾れる可能性だってある

一方で、高槻やよいは

年齢及び見た目的にも成長途中

むしろ家庭環境のせいか平均よりは下回っているとも言える

だが、活き活きしていない被写体よりも、活き活きしている被写体を好むはずだ

撮る側も、見る側も。な

だから恐らく……脇役程度になるかもしれんが

高槻やよいも合格できる可能性は十分にある


とはいえ

それが事実とは限らない

モデルになるにはスタイルが重要だからな

「レッスンが意味をなさない以上、本当の意味で素の実力勝負と言える。いつも通りでいってこい」

「いつも通り……」

「うぅっ……緊張しますー」

「春香ちゃん、やよいちゃん。撮られると思うな。見られると思うな。それではいつもとはかけ離れているのだ」

緊張し、

不安そうに私を見つめる2人に告げる言葉

それは961プロの活動方針としても

私のオーディションというものの捉え方を

根本的に覆すようなものだ

だが――私と2人は違うだからこそ、言う

「頑張るのではなく、楽しんでこい。君達にはそれで十分だろう?」

「楽しむ……そうですね。ぎこちなかったり、笑えなかったり。そんな写真なんて撮りたくないですもんね!」

「頑張らずにいつも通りに楽しむ。えへへっ、私なんとなくわかった気がしますーっ!」


元気に明るくが売りである2人にとって

レッスンなどの補正もない

ありのままの自分を求められるであろうこのオーディションは

向かうところ敵なしと言えるかもしれない

だが――

「……あふぅ」

「………………」

敵はいる

765プロの星井美希

レッスンは怠ける、オーディションには落選ばかり

そんなやつだが敵は敵だ

「そこの君ィ、765プロの星井美希だろう?」

「……………………」

「……………………」

「…………君じゃないの。ミキなの」

反応が遅すぎるッ

私を誰だと思っているのだ!

舐めているのか? こいつは!


「プロデューサーはいないのかね?」

「いないの。千早さんもオーディションだからそっちに行っちゃったの」

「ふんっ、使えないアイドルを放置するとは中々優秀なプロデューサーのようだな」

八つ当たり……ではなく

あまりにもやる気のない星井美希に対し

挑発のつもりで言ったのだが

「……どうせミキはまた落ちるの。やるだけ無駄なの」

「……………………」

元から重症だったらしい

私の一言でかなり落ち込み

壁際まで行くと、そのまま座り込んでしまった

黒ちゃんがイケメン過ぎて泣ける
小鳥さんというか小鳥さんのお母さんなはずだが
逃げたと言うより当時の黒ちゃんや高木社長はまだ見習いでお互いが違う考え方でプロデュースしたから小鳥ママもうまく身に付かず落ち込んでたら舞さん伝説で精神的にも限界だったんだろ
だけど舞さんは小鳥ママの歌声を聴いて認めてたしなぜこれで無名だったのか信じられなかった、だから実力を試そうとしたがその直前に引退した感じだと思ってる

765プロの置かれた状況は想像以上に深刻だった!?

あれ?もしかして765のPって無能?


やる前から諦める……か

今までいくつかのオーディションは受けたらしいが

受けても全て不合格だったと聞いている

もっとも、それらは全部レッスンを怠った

いわば、何の目的も意味もないオーディションだったのだろうし

仮にレッスンを必要としない天才だとしても

目的もなにもなければ受かるはずがない

そんなやつを審査員が認めるわけがないからだ

「ならばアイドルを辞めたらどうだ? アイドルが楽ではないことは解ったはずだ」

「………………」

「ふんっ……どうせ無能な連中の次は、次こそはという言葉に止められているのだろう?」

この手の人間は自分から行動しようとしたりはしない

誘われたから、頼まれたから、期待されてるから……と

他人から自分は必要とされているという幻想に溺れていく

諸悪の根源は日高舞


「聞けば、四条貴音や萩原雪歩などの他のメンバーはちゃんと進んでいるそうではないか」

もちろん、進んでいるといってもまだまだ底辺

気にする必要などないレベルだが

しかし、底辺の中でも進まない底辺と進む底辺では差ができる

たとえ天才でも進まないのなら無能以下だ

「いずれ貴様は何も言われなくなるぞ」

「そんなことない……はずなの」

「プロデューサーはお前を見限る。いいや、もう見限ったのかもしれんなぁ? 現に貴様は独りだろう?」

「っ……千早さんの方が危なっかしいから仕方ないの!」

星井美希は私を睨む

如月千早ばかりにかまけているというのは事実で

高槻やよいの件でもそれは明らかだ

もっとも、放っておけば壊れかねない如月千早を優先するのは仕方のないことで

それを責めることは出来ないのかもしれんが


「だが、ほかの連中だってそれは同じはずだ。貴様と同じように独りの可能性だってある」

「………………」

「……訂正しよう。貴様はまだ期待されている。だからここに独りでいるのだ」

それが事実かどうかは知らんが

少なくともなんの期待もしていないやつなんかを

オーディション何かに行かせるわけがないからな

もっとも、普通という言葉がなさそうな765プロには利かない理屈かもしれんが

「だが、このままではオーディションに出しては貰えなくなり、レッスンだって時間を割いては貰えなくなるぞ?」

オーディションにだしては不合格

そんな恥さらしなど出したくはないだろうし

やる気のないやつよりやる気のあるやつを優先させるのが普通

ゆえに、レッスンだってその時間を与えられなくなる

「……それならそれで仕方がないって思うな! ミキは別に本気でアイドル目指してるわけじゃないし!」


そんなことは知っていたが

まさかそれを口にするとはな……

黙り込む私を気にすることなく星井美希は続ける

「それにミキは学校で人気者だし。このままでも全然平気なの!」

「……………………」

「だから、無理して目指す必要なんてないの」

星井美希は笑う

だがそれは、天海春香や高槻やよいとは違う

不愉快な笑みだった

「その人気はいずれ消えるぞ。高校生になれば貴様ほどのスタイルは出てくる。大学生なら子供のような貴様などうざいだけだ」

「っ!」

「その点、見習い時代にいた周りの連中はテレビに出るようになり、人気を保つ」

「………………」

「ククッ喜べ! 貴様は天海春香や如月千早の友人として周りから中継役程度になら扱われるかもしれんぞ!」


嘲笑を交えて星井美希を見下す

睨んできていた瞳は

私の言葉が否定できるものではないという現実に怯え出し

頭はだんだんと下を向く

「どうした? それでも構わないのだろう? 楽だけがしたいのだろう?」

「……………………」

「周りの人気を借りて自分の人気を保つ。実に楽ではないか」

星井美希の行動理念を貶し、挑発し

その結果に見える人生を褒め称える

「…………………」

「今すぐ周りの下っ端でもやったらどうだ? 天海春香様お疲れ様ですとでも言ってみろ」

「……………の」

星井美希が俯いたまま言葉を漏らす

最初は聞き取れないような小さな声

だがそれはだんだんと大きく、確かな意志として言葉となる

「そんなのヤなの!」

いきり立ち、私を睨む

怒りの宿る瞳には微かな涙が浮かんでいた


「ミキはミキじゃなきゃヤ!」

「何を言う。貴様が楽をしたいと言ったのだろうが」

「言ったけど……でもヤなの!」

楽をしたいというから

その結果どうなるかを話してやっただけだ

なのにいきなり嫌だとか言い出すとは

どこまで面倒くさいヤツなのだこいつは

「春香達のおかげで人気になるなんてヤ!」

「ならば努力しろ。楽して得られるものなどないのだからな」

「するの! ミキ……春香達には負けたくない!」

星井美希は声を大きくして言い放ち、オーディションの準備に向かって行く

やる気も意思もなかったくせに、こんな単純なことでやる気を出す。か

負けたくないという理由は競争社会の中では重要なものだ

かなり手ごわい相手になるかもしれんな


……しかし

星井美希を奮い立たせてよかったのか?

いやそもそも、なぜあんな説教じみたことなどしたのだ?

所属アイドルであった高槻やよいは仕方ないにせよ

星井美希はする必要など……いや

やる気もなにもないやつなど

天海春香に潰させる価値もない

それどころか、余計な負担をかけるだけになるかもしれなかったのだ

「……そんな理由をつければ満足か? 馬鹿め」

見ていられなかった

逃げようとしているアイドルを

戦う前から諦めているアイドルを

そのまま放置するなど、許せなかった

それは過去に経験したことあるからかもしれない

そんな不愉快な結論に

私はため息を漏らさずにはいられなかった


ここまで


美希はハニーハニーじゃない方の美希だから
やる気を出させる理由が難しかった
こんなもので良かったのだろうか

>>712
初見プレイの頃の俺らかもしれない

覚醒前のミキミキか…
美希でこれだと竜宮小町の双海亜美の姉と真美は言われ続けて深い闇を持ちそうだな
真美は妹の亜美と敵対してでも人気になりたいと黒ちゃんのところに望んできたりするのかな


雪歩は1人でもちゃんとやれているのか

竜宮はまだ出来て無いんじゃね?
欠片も出てきて無いし

雪歩とかは貴音に触発されてそう

真ちゃんいますし

この黒井ならどこまでもついていけるわな


まだハニーが居ないならこれからの流れしだいで美希が黒井社長をハニーと呼ぶ展開も微レ存……?

起こすと怖~い…眠り姫

黒ちゃんがハニーとかある意味最強のカードやん


結果から言うと

天海春香も高槻やよいも

そして、星井美希もオーディションに合格し

雑誌に載ることができるようになった

雑誌のモデルオーディションということもあって

合格枠は意外と多かったからな

表紙を飾るのも同時選考となっていたが

それは天海春香……ではなく

天海春香と星井美希、高槻やよいの3人セットとなった

というのも

その3人が衣装を着たまま談笑しているのが凄い絵になったらしく

なんとなく撮った写真をそのまま採用という形になり

別に断る理由もなく、許可を出したからだ

それは3人揃って笑顔で、楽しそうで、嬉しそうで、何よりも幸せそうな1枚だった


オーディションが終わり

それぞれ解散する頃

星井美希は私達の前に立ちふさがった

「美希?」

「どうかしたんですかー?」

「………………」

星井美希は少し躊躇いながら

天海春香と高槻やよいを見つめる

戻ってきて欲しいと願うか?

そう考える私に反して

星井美希は来た時とは打って変わった笑みを浮かべた

「ミキ、絶対に負けないから。春香にも、やよいにも。絶対に負けないの!」

「……美希」

天海春香はその言葉を受け止めて

少し意地悪そうな悪い笑みを返し、言い返す

「もしあれならこっちにおいでって言おうと思ったけど……必要なかったみたいだね」


「うん。もう必要ないの。ミキは頑張るって決めたから」

「そっか。美希が頑張るなら、私は超頑張らないとね」

「……春香」

「うん?」

ほんの少し不安な表情で

星井美希は天海春香を見つめる

そして……何かを言ったわけではない

何かをしたわけでもない

けれど、天海春香は笑った

「大丈夫だよ」

「え?」

「美希や真や雪歩、伊織とかあずささんとか貴音さんとか、響ちゃんとか、真美に亜美、律子さんに小鳥さん」

「春香?」

「社長にプロデューサーさん。そして……千早ちゃん。みんなバラバラかもしれない。でも、みんな一緒だから」

なんの解決にもなっていないような言葉とともに

天海春香は微笑みを送る


私には理解ができないそれを

星井美希は理解し、首を横に振る

「春香とやよいもなの!」

「私もですかー?」

「うん」

高槻やよいに対し天海春香は小さく笑って頷く

765プロにしか解らない謎の暗号?

だが、それなら高槻やよいに分からないはずがない

4人の中で私だけが戸惑う中

星井美希が口を開いた

「春香のおかげでするべきことが解った気がするの。だから、ありがとうなの!」

「あははっ、それなら良かったよ。私はこっち側だからこれ以上は何もできないからね」

「……あと」

星井美希の瞳が私を見つめる

少し前までの敵意のない幸せそうな瞳

「おじさんもありがとうなの! おじさんのおかげで春香達と向かい合うことができたの!」

星井美希は嬉しそうにそう言い残し、去っていった


おじさん……だと?

なんだ?

まさか私が961プロダクション社長の黒井崇男だと気づいていなかったのか?

確かに名乗った記憶はない

だが、天海春香と高槻やよいを従えているのだぞ?

普通気づくだろう!?

「……ぶふっ」

クスクスクスッと

隣のリボンが笑い声を漏らす

その一方で高槻やよいは笑うリボンを不思議そうに見つめていた

「やよいちゃん、帰ろうか」

「え、あ、はい。春香さ――」

「それは知らない人だぞ? やよいちゃん。知らない人には話しかけちゃダメだ。解ったかね?」

「え?」

「え、でも……」

「ノンノンノン。それは知らない人だぞ~?」

「ごめんなさい、私が悪かったです!」

結局、天海春香も送ることになった


「でも、黒井さん何したんですか?」

「何がだ?」

「美希ですよ。美希。お礼言われてたじゃないですか」

「私も気になりますーっ」

後部座席の2人は

星井美希とのことが気になるらしい

特に何かしたわけでもないのだがな……

「少し話をしただけだ。やる気を出せるようにな」

「そうだったんですねーっ」

「えへへっ、ありがとうございます!」

「……なぜ春香ちゃんが礼を言う」

「だって美希は友達であり、仲間でもあるから」


【「事務所は違っても、みんなとは仲間だからです」】

最初に言われた言葉を思い出す

あの時は何を馬鹿なことをと思いながら

それをどこまで保てるか試そうとしていたのだったか……

今ではすっかり忘れていた

「ふんっアイドルはそう甘くはないぞ。ほかの事務所と仲良しこよしなど出来ん」

「解ってます。だからやよいと美希で色々と話あったんですよ」

「話し合った……?」

「えへへっ、実はですねー。961プロと765プロで一緒に仕事したりできないかなーって」

「……………………」

高木とまた一緒に……か

ふんっ、ありえんな

「765プロが倒産し、アイドルが全員フリーになったなら、アイドルぐらいは拾ってやらんこともない」

「もうっ、黒井さんはすぐにそういうこと言うんだもん」

「春香さんの言ったとおりですー」

「解っていたなら言うな」

なにこのなに?



和み空間になってる


「解ってても言いたくなるじゃないですか」

「……負けを宣言されていないから。か?」

「え?」

「なんでもない。気にするな」

断られる可能性はある

でも、0.1%でも可能性があるなら挑戦する

それが天海春香……なんだったな

不本意ではあるが

天海春香が私のことを理解しているように

私もまた、天海春香という人間を理解し始めているのかもしれん

気に食わんな……そういうのは

「黒井さん。そういえば何ですけどー」

「なんだ?」

「オーディション合格出来たの初めてですーっ。ありがとうございました」


「私は何もしてないぞ。あれはやよいちゃん自身で勝ち得たものだ」

「私自身……ですかー?」

「やよいちゃん自身の持ち味ということだ」

「えへへっ、良く解らないけど嬉しいですーっ!」

高槻やよいの無邪気な笑顔

あれだけの極貧生活の中にいながら

未だにこんなものを保てているというのは

精神力は思っていた以上に高いのかもしれんな

だが

子供ゆえに器が広くてもそこが浅く

あの時のように漏れてしまうこともある……か

「やよいちゃん」

「なんですかー?」

「今は幸せなのかね? あの家で、あの生活で」

「いろいろ大変ですけど、でも。十分幸せですーっ!」

>>637-638の訂正で何が変わったのか分からないでござる


元気良く返ってきた返事は嘘も偽りもない言葉

天海春香はそれにたいして嬉しそうに微笑み、

バックミラーに映る私に向かって微笑んだ

だから言ったじゃないですか。というような

勝ち誇った笑みにはイラっときたがたしかにそうだったようだ

以前、底辺しかしらない人間だから

底辺で満足しているだけだといったが

それは満足できていない人間よりはずっとマシで

ずっと……幸せなものだったらしい

「……そうか」

「はい!」

「私には聞かないんですか?」

「……なぜ聞く必要があるのだ」

「それって酷くないですか!?」

騒がしい帰路となったが

不思議と……不快にはならなかった


今日はここまで

明日も出来たら嬉しいかなーって

こんなの黒井じゃないとか言わないで。成長ですよ。成長!


>>741

×75プロ  ○765プロ

>>741
>>634の最後が
>「961プロに来い、高槻やよい。貴様には天海春香とユニットを組むという大事な役割がくれてやる!」
役割「が」になってるのを、役割「を」、に修正

まではわかったけど>>743で「75プロ」がなぜか見えなかった事に気づいた…


やっぱり、やよいに甘い黒井社長であった

でも春香ともかなり仲良さそうに見える
というか春香に対してツンデレだよな…

黒井社長はツンデレヒロインだからね、ちかたないね

黒井社長が明らかに765のPよりアイドル想いだし良いPしちゃってるな
ストーリー序盤中盤に知ったような口聞いて有能っぽく振る舞ってたあのPはなんだったのかと思うわ
黒井社長と雑談してる暇あったら千早以外のアイドルもちゃんとケアせーやお前と

ああ、75プロか、ありがとう
てか、>>793のところで、怒りに任せてうっかり更衣室に殴り込みに行っちゃって、下着姿の春香に遭遇…とかも考えたけど、
黒井社長はその辺理性的だな。ロリコン扱いされて怒っても出てくるまで待つとはwwww

黒ちゃんはなぜこうも可愛いのか

753プロ

実際に優秀ではあるんじゃないか?>プロデューサー
ただアイドル9人(春やよ千 抜き)に加えて千早の件があるせいで
どうしても手が回らないんじゃ無いかと

アニマスで千早の件に尽力したのは春香だし
団結に一役かったのも春香だし
春香が居ないと色々と脆そうだからな

スタッフが居ないしね・・・
普通は居そうな同性のマネージャーとかいれば色々変わるんだろうけど
原作がゲームだからその辺を盛り込むのは難しいし、しゃーない

同性……律子

下手したら律子もアイドルやってる可能性もあるからそうなると11人プロデュースしてること…
竜宮小町があって律子がそれをプロデュースしてたとしても7人…
やっぱリーダー(自称)の春香さんがいないとダメか…いや、やよいもいないから余計にかHPはすでにマイナス行ってそうな千早か
もう誰かに依存しないとダメなレベルじゃね?

アニマスの春香って、今思うとアイドル兼カウンセラーみたいだったというかアイドル兼副Pだったというか…
春香がPやみんなを支えてるところは相当あったよな、たしかに

3人までしか選べないゲームじゃ判らない部分だよなぁ

春香は確かに人間関係に置いて要だよな
春香がいたからこそ千早が馴染めた訳だし
バラバラになりつつあった仲間がまた団結できた訳だしな

つまり調査部有能

ところで春香とやよいはユニットらしいですがユニット名は公開されたっけ?


モデルオーディションから3日ほど経った日の朝

やよいちゃんと春香ちゃんの2人とともに

とある企画の話をしていると、彼らはやってきた

「おっさん!」

「話し中だ。あとにしろ」

まぁ……言うまでもなく冬馬達だ

やよいちゃんがこっちに来るのに合わせて

わざと地方ロケに飛ばしたのだが

残念ながら戻ってきてしまったらしい

「あっ、えっと……」

「ん?」

やよいちゃんが3人を見て少し困惑する

思えば、ジュピターに関してはまだ話していなかったような――

「……お客様ですかー?」

「は?」

冬馬の怒りのスイッチが押されたらしく

少しばかり威圧を込めた瞳でやよいちゃんを睨んだ


「おいおい、冬馬。相手はまだ小さい女の子だぞ?」

「そうだよ冬馬くん。結構大人気ないよ」

「こいつが俺達のことをお客様なんて言うから悪いんだよ」

冬馬は北斗達に言われようとも

そんな厳しい目を止めようとはしない

話していなかった私が悪いような気もするが……

「ふんっ、知られたいならもっと名を上げれば良かろう」

「なんだよ。おっさんはそっちの味方か?」

「社長も女の子に優しい一面なんてあるんだね」

「何を言っているのか解らんな」


私は至極当然なことを言ったまでだ

名を上げれば業界で知らない者などいないという領域に達することだって可能で

そうすれば説明などなくとも

ああ、あのプロダクションのあのユニットか。と

瞬時に解って貰えるはずなのだからな

「私はただ、貴様らがまだ【お客様】と思われるようなレベルだと言っているだけだぞ?」

「もー、そんな照れなくたって良いじゃないですか」

「……………………」

春香ちゃんの余計な一言から目をそらし、冬馬へと目を向ける

「……あれ?」

「で、なんのようだ? 簡潔に言え」

「あ、あぁ……いや、俺達の知らない間に新しい奴が961プロに入ったって人伝で聞いたんだよ」


「無視しないで欲しいなー……ほんの冗談だったのにー」

「それはやよいちゃんのことだな。それがなにか問題でもあるのか?」

「問題っていうか……」

冬馬は言い淀み

寂しそうにする春香ちゃんを困ったように一瞥し

私に対して何か言いたげに眉をひそめた

「……い、良いのかよ。おっさん」

「なんのことだか解らんな」

「どうしようやよい……私の存在が……」

「黒井さん!」

「ん?」

勝手に落ち込む春香ちゃんの隣で

少し怒ったように頬を膨らませるやよいちゃんの瞳が私と並ぶ

席に座ってようやく並ぶかどうかといった低身長はやはり問題か……? と

余計な事を考える私に対し、やよいちゃんは人差し指を向けた


「春香さんを虐めちゃメッ! ですよー」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「……社長、なんか言えよ」

しばらくの沈黙の後

冬馬は気まずそうにそう切り出す

なんだ。私が悪いのか?

冬馬を責める流れから何故こうなった……わけがわからん!


「黒井さん!」

やよいちゃんの二度目の声に

仕方がなく言葉を返す

「……春香ちゃんが余計なことを言うからだ。謝るべきは春香ちゃんだろう」

「なっ」

「なんだ。なにか言い訳があるのか? 自分の余計な一言が招いたことだろうが」

「むぅ……余計なこと言ってごめんなさい」

春香ちゃんは思いのほか素直に謝罪し

初めからそうしていれば良い

そう思いながら溜息とともに微笑を浮かべると

やよいちゃんの顔が少し近づいてきた

凝視しているというより……睨んでいるような目だ


「な、なんだというのだ一体」

「まだ謝ってないですっ」

「………………」

申し訳なさそうに俯く春香ちゃん

呆れた顔の北斗

笑いを堪えているような翔太

困っているというか

若干引き目の冬馬

そして……年上であり、上司でもある私に対して

親が子を叱る時のような表情のやよいちゃん


流れるように目を移し

最終的にまた春香ちゃんへと目が行く

「………………」

「………………」

「……わ、悪いことしたとは思わんぞ! だが、なんだ……悪かったな」

「なんですかその前置き……」

ほんの少し赤く染まった表情の中の

じとっとした目で私を見つめながら

春香ちゃんは不満を漏らす

「まぁ、良いですけど……私も悪かったわけですし」

なんなのだろうな

この言葉にし難い空気は……

私と春香ちゃんが見合い、

それを周りが見ているという不自然な空間

それを裂いたのはやよいちゃんの手を叩く音だった


「悪いことしたらちゃんと謝らないとダメですよーっ」

「ふんっ……悪かったな」

やよいちゃんに対してそう返し

企画会議の障害となっている冬馬へと目を移す

「で……話はやよいちゃんの事だけか?」

「いや……もう一つあったんだけどよ……」

「なんか、それを聞くのもなぁって感じだよね」

冬馬達はなにか気になることがあったのだろうが

逡巡した結果、言わないことに決めたらしい

春香ちゃんに対してなのか

やよいちゃんに対してなのか

それとも……私に対してなのか

聞いても答えないような冬馬には聞けず

そのままジュピターが去っていったことで

その何かは有耶無耶に消えていった


「話を戻すぞ」

「はいっ!」

気にしても仕方がない

そう考えて話を戻そうとしたが

やよいちゃんの返事はあったものの

春香ちゃんの返事がなかった

「春香ちゃん、聞いてるのか?」

「あ、はい」

「無視を嫌がった癖に呆けてどうする」

「ごめんなさい」

……何か違和感がある

さっきまでの会話の流れは

天海春香が絡むと大抵ああなるから良しとするにしても

いつもよりも相手のしがいがなかったというか

張りあいがないというか……いや、別に

そういうのを望んで相手しているわけではないし

どうでもいいことなのだが……

「……春香ちゃん。具合でも悪いのか?」

「あー……いえ、平気です。多分」

のんびりとした返事で

呼吸もどこか熱を帯びていた


「春香さん、ちょっと良いですかー?」

「ん?」

「んー……」

やよいちゃんの小さな手が

春香ちゃんの前髪を避けて額に触れる

ちょっと心配そうなやよいちゃんの表情

高槻家長女であり、弟たちの世話をほぼ任されている身からすれば

そういうのは容易に判ってしまうのか

春香ちゃんから私へと目を移し、首を振った

「春香さんはちょっとお熱みたいですー」

「やはりか。全く……体調管理ができない奴だな。お前は」


「やだなぁ……そんなことないですよ? ちゃんと管理できてます」

そう言いながら

苦し紛れの笑顔を見せる

私だけだったならそうか。じゃぁ頑張れとでも言って適当にあしらったかもしれないが――

「ダメですからね。春香さんは今日のレッスンはお休みですっ!」

「ぇっそれは」

「熱出してるんだから当然です! ねっ? 黒井さん」

否定して欲しいというような春香ちゃんの瞳

それとは真逆に、

肯定して欲しいという表情のやよいちゃん


「くっ……」

どっちの味方をしようと

片方からは恨まれる……とまではいかないにしても

悪い目で見られることになりそうだ

本当なら春香ちゃんが例え熱を出していようと

こき使ってやりたいところだが

一度過労で倒れた大馬鹿者を酷使するなんて真似は私には出来ん

そんなことをして親から苦情が来たりなんかしたら面倒なことこの上ないからな

――ゆえに

非常に心苦しくはあるが

春香ちゃんにはレッスンを休んで貰うしかない

「やよいちゃんの言う通りだ。今日は休め」

「でも、私……」

「また倒れられても困ると言ってるのだ。忘れたとは言わせんぞ」

「……はい」

少しでも上手くなりたい

少しでも成長したい

そういう心がけは確かに重要だが

それで無理して、無茶して、最後に体を壊したりしては意味がない


「やよいちゃん、レッスンは一人でもできるな?」

「大丈夫ですっ」

「よし、ならば春香ちゃんは病院だ。送ってやるから付いてこい」

「だ、大丈夫ですよ。流石にそこまでして貰わなくたって」

春香ちゃんは困ったように笑いながら

踵を返し、僅かに覚束無い足取りでドアへと向かう

「良いから言うことを聞け」

「むーっ」

私が積極的に手助けしようとしていることに関して

裏があるのでは……と、疑っているのかもしれない

そんな考えと、春香ちゃん自身の読めない思考に対して苦笑を返す

「私が春香ちゃんを助けようとする事がそんなにも怪しいことなのか?」

「そういうことじゃ……ないんですけどね」

「文句は検査が終わってから聞いてやる。今は黙って指示に従え。馬鹿者め」


春香ちゃんは少しだけ驚きながらも

僅かに辛そうに歪んだ表情を無理に笑顔へと変え笑う

「黒井さんってば……ほんと、優しい人ですよね……」

「……ふんっ。騙してるだけだ」

「あはは。そういうことにしときますよー」

楽しげに笑う春香ちゃんから

心配そうに見つめるやよいちゃんへと目を移す

「何かあったら連絡するのだぞ?」

「はいっ!」

「やよいちゃんも無茶はしなくていいぞ。君がいなければ成り立たないものがあるのだからな」

「えへへっ、解ってます!」

元気な返事を背中に受けて

私は春香ちゃんと共に病院へと向かった


ここまで


フラグ蓄積フラグ蓄積……
この熱が後の大病となって春香を襲う……かもしれない

おつー!

ぉっぉっ

おつ!おっ、更なる長編へとなっていくかもしれないな、嬉しい
なんだったらもうスレ跨ぎでさえも歓迎するぜ

まず文章が読みやすいのがいいですわ

冬馬達は何を言いたかったんだろ

春香に黒井社長を取られて冬馬が嫉妬してるんだな

>>781 なるほど、納得したピヨ

>>782
はいはい765の事務員はさっさと仕事しましょうね

黒ちゃんイケメンすぎて眩しい今はもう黒いどころか漂白されて真っ白なんだし761プロダクションに名前を変えちゃえばいいのに

761じゃなくて461に訂正

南無い・・・

>>785

一瞬、高木社長と黒井社長があしゅら仮面みたいになったのを想像してしまった…

黒井社長と春香のやり取りがもう、軽口言い合える仲、からかったりちゃかしたり出来る仲で楽しそうだなあって感じがホント微笑ましい
そしてそれをよく分かってなくて本気でイジメだと受け止めちゃうやよい可愛いし、
それで気まずい感じで申し訳なさそうにする春香もしぶしぶ謝る黒井社長も可愛い


検査した結果

インフルエンザなどの特に悪いものではなく

ただの熱だった

だが……まぁ、レッスンに参加させることは出来なさそうだ

気遣っているわけではなく

これから酷くなって――という展開を避けるためにな

「昨日の今日で何をしたのだ……全く」

「いや……特にこれといってしたわけじゃないんですけど……強いて言うなら気絶、ですかね?」

「気絶だと?」

「あはは……恥ずかしい話なんですけどね。いろいろ考えたり、なんだりしてたらいつの間にか寝ちゃってたんです」

助手席に座る春香ちゃんは

いつもよりも力なく笑いながらそんなことを言う

体調管理のたの字も出来てないではないか……馬鹿め


「まったく……アイドルとしての自覚が無いのかね? 君は」

「あはは……ごめんなさい」

また無理してレッスンしていたとか

最悪のパターンではないことだけは救いだな

私がそんな指示を出したなどと思われてはかなわんしな

しかし……また余計な悩み事なのか?

未だに続ける765プロの仲間内でのやり取り

その中で何らかの問題が起きた

そう考えるのが妥当だ

しかし、調査部からの報告では

ユニットを組む準備をしている……という程度のことくらいしか

如月千早の問題以外に気に止めるようなことなどないが……


「……黒井さん」

「なんだ?」

「いえ……具合悪いとなんか弱気になっちゃうなーって思って」

「………………」

「………………」

都合良く赤信号へと変わり

止まった車がわずかに揺れる

それでも動かない空気の中で

私の目に映る春香ちゃんが少しだけ体を動かし、私を見つめた

だからどうした。とか

そうか。とか

適当に流すこともできる多過ぎる選択肢の中から

私はなぜかその一言を選んでしまった

「……なんだ?」

「……聞いてくれるんですか?」


血迷った……わけではない

冷静に考えればそれでよかった

春香ちゃんが悩みを抱えている……なんていうことはどうでも良い

だが

私に伝わらない範囲での765プロの動きを無視はできんからな

危険な芽は早めに摘んでおくべきだ

「別にお前の為ではない」

「じゃぁ……別に聞いて欲しいわけじゃないけど聞いて貰おうかな」

「手短にな」

そう返し、また車を動かす

横目に映る春香ちゃんは

小さく息を吐き、自分の胸元に手を当てる

よほど……深い悩みなのか?

そう考える私に、春香ちゃんの答えが響いた

寝れない


「千早ちゃんに……怒られちゃったんです」

「連絡したのか」

「その……歌番に出てるの見て……いや、聞いて? その……」

やはり如月千早の件か

春香ちゃんほどの感受性の強さなら

あれを聞いて理解することも容易いか

曲とそこに乗せている心

完璧に一致している以上

その魅力は跳ね上げられ、テレビ局などは十分に美味しいと感じるだろうが

人によっては、いや、春香ちゃんにとっては受け入れがたい。か

「悲しさしか感じなかったのだろう?」

「………………」

「気に食わないか? 自分とは対照的に悲しみだけで歌う歌姫は」


「そういうわけじゃないんです……でも、なんていうか……」

「解らないか?」

「はい……」

確かに、楽しむことができている

今を幸せに生きている春香ちゃんには到底理解できないことだろうな

そもそも、如月千早がなぜあんな風になったのかも

春香ちゃんは知らない

知っていても同情しかできない

本当に傷ついている人間には

同情なんぞ、傷に塩を塗るようなものだ……だが

「知りたいか?」

「え?」

「如月千早がなぜ、悲しみだけしか持たないのかを」


「知ってるんですか?」

「私は765プロのアイドルについては隅々まで調べているのだよ。誰が相手でも消せるようにな」

まぁ、そんな姑息な手を使う必要は

春香ちゃんを奪ったことで必要はなくなったが

まだ調査だけは続けている

敵を知るのはどんなことでだって重要だからな

「そんなこと……しませんよね?」

「ふんっ、消すのは春香ちゃんの役目だ。私ではない」

「えへへっ……それを聞いてちょっと安心。かな」

自分の悩みがあるにも関わらず

そうやって他のことに気を回す

損な女だよ……お前は

それは思うだけに留め、小さく笑いを返した


「如月千早についてだが、教えてやらないこともない」

「本当ですか?」

「だが、これは春香ちゃんの嫌う姑息な手だぞ?」

「あっ……」

気づいたように声を上げ

春香ちゃんは自分の口元を手で覆う

「本人から聞くべきだとは思わんのか?」

「それは……でも……」

「普通は言わないだろうねえ。自分の知られたくない過去の話なんかは特にな」

目の前で弟を失った苦しみと悲しみ

それが引き金となって崩壊した家庭

自分から話すなんて相当な関係でない限りは不可能だろう

それに……

「知ったところでどうする。同情するくらいしかできないぞ?」


「………………」

「可哀想だとか、悲しいだとか、辛いだとか、苦しいだとか、彼女に対し色々思うのは解るが……」

「どうしようもない……ですよね」

「ん?」

「実はその……同情なんて止めて! 貴女のそんな態度が私は気に入らない! って」

怒られたと言っていたが

なるほど、そういう言い方をされたのか……

「それで?」

「私……なんていうか……無力なんだなぁって……」

春香ちゃんは心の底から

残念そうに声を漏らす

何かしてあげたい

でも、何もしてあげられない

笑顔にしてあげるためにいくら努力しても

自分では何も変えられないのかもしれない

春香ちゃんはそんな状態に陥ってるのかもしれんな

熱など出すからそうなる……馬鹿め


「……気にするな」

「え?」

「そんなこと気にするなと言ったのだ」

運転中ゆえに

春香ちゃんの方に目を向けることはできないが

今はなんとなく……それに救われているような気がした

「それで何かが変わるのか?」

「………………」

「春香ちゃんの元気良さ、明るさ、ポジティブさ。そしてそのお節介と紙一重の優しさ……」

「………………」

「私も確かに気に入らない。苛立つことだってある」

騒々しいやつだと思う

無駄に明るく前向きで、馬鹿だ。と、頭を痛めることもある

お節介過ぎる優しさに苛立つことも……当然ある

「だが、それが天海春香という人間だろう?」

私は…天海春香だから!


「何かが変わるのか? と私は言ったな」

「はい……」

「それは当然変わる。当たり前だ。お前が馬鹿みたいにしおらしくなったりするのだからな」

世界が変わったかのように

様々なものが変わっていくはずだ

それは私や春香ちゃんにとって

不都合なことかもしれない、好都合なことかもしれない

それはわからない

――しかし

「私はそういうのは好かん」

「………………」

「しおらしく、明るすぎず、暗すぎない。前も向くが後ろも向く。人を見捨てることだって出来る」

それは人間らしいと言えるのかもしれん

それこそ普通であり、本来のあり方なのかもしれん

私としても、好都合なことなのかもしれん


――だが

「そんな天海春香など、私が認めん」

「黒井さん……でも、私――」

「私が認めてやる!」

――馬鹿だ

春香ちゃんの声を遮って

私の言葉を投げつける

言い出した以上は止まらない

もはや自棄になり、春香ちゃんには目もくれずに言い放つ

「馬鹿みたいに前向きで、明るくて、ポジティブで、お節介と紙一重な優しさの天海春香を認めてやる!」

「え?」

「そうじゃない天海春香など、今更受け入れられるものか!」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

何これ、プロポーズ?


人の心を散々踏み荒らして

その度に余計な何かを残していって

切り捨ててやると

忘れ去ってやると

消し去ってやると

そう思っても、願っても

消えないような、捨てられないような、忘れられないような

ふざけた存在なんぞに成り代わっておきながら

「今更、勝手に消えるなど許すわけがない」

「黒井さん……」

「期待させた分はしっかり返せ」

「良いんですか? 私……今のままで頑張っても」

「それが春香ちゃんにできること。春香ちゃんにしかできないことだ」


「私にしか……できないこと……」

「そう。春香ちゃんだけだ」

ほかにもできる人間がいないとは言えん

だが、少なくとも私が知る限りでは

こんな人間など存在していない

……いや、この子以外に、存在はしていない

「春香ちゃんは自分が思っているよりもずっと強力なのだから」

「……えへへっ、なんか、そう言われると凄く嬉しい」

春香ちゃんはそう言いながら

悲しみではなく、嬉しそうに涙をこぼす

「やっと……認めて貰えたんだなぁって。ちゃんと、言葉にして貰えたんだなぁって」

「………………」

「えへへ……それなら、変わるわけにもいかないですよね。この天海春香をなくすわけには、いかないですよねっ」

春香…ずっと、黒井社長にこう言ってもらいたかったんだな


「私、このまま頑張ってみます」

「ふんっ、ここまで言わせておいて渋っていたら絶対に許さなかったぞ」

「流石にそれはないですよ。黒井さんの下で働く上での夢みたいなものでしたし」

春香ちゃんの嬉しそうな笑み

それをみるとやはり……安心感があるというかなんというか

さっきまでは勢い任せだったものの

冷静になって考える今、口を滑らせたりはしない

「……如月千早は手強いぞ」

「認めさせてみせます。だって私は元気で明るく無駄にポジティブでお節介と紙一重の優しさを持つ――天海春香だから!」

春香ちゃんは熱など忘れて元気よく声を上げる

そこには自信があって、想いがあって、強い意志があって

「………………」

私はそれに対する言葉を言うことはなく

ただ黙って肯定の意を示した


ここまで


今までの春香と黒井のフラグを回収……恋愛要素なんて知らない

あとはちーちゃんを更生させて……あれして、これして

残り191レス

次スレ突入コースかもしれない

ドンドン突入しちゃおう乙

よし次スレ突入コースに入った!あとは次スレまで突っ走るだけだな(黒い笑顔)

黒ちゃんはやっぱはるるんや小鳥さんみたいなタイプに弱いのか春黒かぁアリだな

乙、流石に恋愛感情は要らないよね、というか黒井って幾つだ?

あー二人のやり取り見てると幸せなんじゃ?

このSS完結したら間違いなく楽しみが一つ減るな?…仕方ないこととはいえ

恋愛感情とは別の大切な存在としての感情はあってもいい

あとsageてね、勘違いする人もいるから

黒ちゃんが可愛いすぎてホモになりそう


突入しちゃおっかなー?(シチャエー


春香ちゃんを家に帰した私は

そのままやよいちゃんと合流し、レッスンに付き合った

付き合ったといっても

私も一緒にやったのではなく

ただ指示を出しただけだが……

「今日はありがとうございましたーっ!」

「気にするな。お前一人では不安だっただけだ」

「いつもは春香さんが一緒だから安心できますか?」

「なぜそこで春香ちゃんが出てくるのだ……関係などないぞ」

だが、確かにそうなのかもしれない

実力面でリーダーとしての力がなかったとしても

人間性の面で見るなら、春香ちゃんほど適した奴はそうそういない

まぁ……色眼鏡で見てしまっているのかもしれんが


「えへへっそうですねっ!」

「ふむ……家まで送ってやろう」

「良いんですか?」

「一応はプロデューサーの肩書きを持っているからな」

思えばこの肩書きを再び手にする前から

春香ちゃんとはプロデューサーとアイドルのような関係だった気がしなくもない

染めていると思ったら染められていたとは

なんとも情けない話だが……

特に不快な気分にはならなかった

「そういえば……やよいちゃん」

「なんですかー?」

「私が初めてやよいちゃんの家に行き、春香ちゃんの事を訊ねた時のことを覚えているか?」


「えーっと……はいっ! あの時はまだ、黒井さんは春香さんのことあまり信頼してませんでした!」

「そうだな……だが、今はなんとなく、あの時のやよいちゃんの言葉が解るのだ」

【「今の春香さんは幸せそうです」】

【「だからきっと、黒井さんは良い人なんじゃないかなーって」】

やよいちゃんのあの時の言葉

それが解るというのはやはり

毒されてしまったのかもしれんが……まぁいい

すでに本人に言った以上は偽る理由もないからな

「春香ちゃんのアレは安心感があるのだろう?」

「えへへっ、春香さんが笑顔で、元気で、幸せそうだと大丈夫なんだろうなって、思えるんです!」

「その点では、やよいちゃんにもリーダーの素質があるのかもしれんな」

「はわっ!?」

「元気で明るい。気遣いもできる。それだけで十分リーダーとして務まるのだ。あとはどれだけ努力ができるか。だ」


「私がリーダー……」

「春香ちゃんよりも先に奪っていれば、リーダーだったかもしれないぞ?」

「でも、これで良いんじゃないかなーって思いますっ!」

やよいちゃんは幸せそうに笑う

春香ちゃんと似て

見る側に負担をかけない

むしろ、負担を和らげるような笑顔だ

「春香さんが初めに出会って、春香さんが頑張って来て、だから今があるって思いますから!」

「そうかもしれんな」

やよいちゃんと最初に出会っていたらどうなっていたのか解らんな

今でこそ成長しているが足手纏い同然だった初期では

心をへし折って道具のように扱っていたかもしれないからな

「黒井さんっ!」


「ん?」

「えへへっ」

何かを期待しているのか

やよいちゃんが手を掲げて

私からの反応を待つ

「……なんだ?」

「ハイタッチです!」

「ハイタッチ……だと?」

なぜそんなことをする必要がある

などと聞いても、やよいちゃんからの返事は期待した答えにはならんのだろうな

「……春香ちゃんには余計なことを言うなよ?」

「はいっ!」

やよいちゃんの元気な返事に続いて

レッスンルームに手と手を合わせた小さくも大きい音が響いた

た~っち!ウィ。

>>823
ワロタ


それから1週間ほど経ち

春香ちゃんとやよいちゃんのユニット名は

本人たちの希望を踏まえて『Grant fairyS』となった

交互に大文字小文字にするだとか、全部大文字にするだとか

最後だけ大文字にするだとか

沢山の案があった

その中でこうなったのは

運命を変える大きな何かがあって

様々な辛い経験、苦しい経験、悲しい経験があって

でも最後には

大きな幸せを手にすることができる。という意味が持たせられるから……らしい

それにgrantは与える、授ける、叶える、応える。など……いろんな意味を持つみたいだからな

春香ちゃんにしては、なかなか面白いユニット名を考えたものだ

ただ、絶望のdで始まり、希望のhで終わる単語なんてどうですか? と、言われた時には呆れるしかなかった

……そのほとんどが悪い意味しか持たないからな


「頑張れば、幸せになれる! ですね!」

「あっ、そういうのもありかも」

「……考えてなかったのか?」

「あはは……ローマ字読みっていうのは盲点でした」

そんな誰でも考えつくような部分を

忘れているとはな

基礎のレッスンをもう少し強化したほうがいいかもしれん

「とにかく、お前達……いや、春香ちゃんとやよいちゃんのユニット名はこれで発表する。異論はないな?」

「「はい!」」

春香ちゃん達の元気な返事に頷く

とはいえ

自分たちで決めておいて、やっぱりなし。なんてされても

困るだけなのだがな


「で……ここからはユニットの初仕事の話だ」

「もうですか?」

「そうだ。で、だが……如月千早とフェスで直接やり合って貰う」

「えぇっ!?」

正直

如月千早に関してはオーディションなどではどうしようもない

ゆえに、歌い合っての直接対決でどうにかするしかなかった

「私としても、もう少し良い方法を模索したい所だが……結構切迫しているみたいなのでな」

「千早さんの歌、悲しくなりますー……」

「やよい……っ」

765の他のアイドル達も

ユニットを組み、それぞれのリーダーが自分達のスケジュールを把握したり

自分達で動いたりすることでプロデューサーの負担を軽減し、如月千早に専念できるようにはしていたみたいだが

やはり、プロデューサーでは根本的なことを変えることは出来ないらしい


「プロデューサーももう、完全に突き放され、別ユニットのプロデュースに回るしかない状況だ」

「それは聞いてます……もう、千早ちゃんはダメかもしれないって」

「ただ、エンペラーレコードが如月千早に話を持ちかけているらしいのだよ」

「え?」

歌姫としてなら彼女の右に出るアイドルはいないと言っても過言ではない

歌を歌いたいという如月千早の

表面上の願いだけを受けるなら、それは祝福してやるようなことで

如月千早のことなど

私としては勝手に自滅でもしてくれ。と、突き放しても問題ないことだが

春香ちゃんからしてはそうもいくまい

「春香ちゃんも解っているだろうが……それでは如月千早として誤りなのだ」

「だから……止める」

「……できるな?」

「出来る出来ないじゃないですよ……黒井さん。やらなくちゃいけないんです!」

イイハナシダナーなはずなのに>>823にすべて持ってかれた気がする


春香ちゃんは威勢良く言い放つ

自信はそこまでないのかもしれない

だが、やらなければならないこと

力強い決意だけのその言葉は

不安を感じさせたが……期待できないわけではない

「負けは許されんぞ」

微笑とともに

春香ちゃんとやよいちゃんを見つめ、言い放つ

「あははっ、勝つって信じてるから千早ちゃんを相手にしてくれたんじゃないんですか?」

「ふんっ、私はそこまで優しい人間ではない」

「そういうことにしとこうかな……やよい、頑張ろう!」

「はいっ! 春香さん、頑張りましょうっ!」

「フェスは2週間後に開催する予定だ。やれるだけやれ。だが、無茶はするな。私からは以上だ」

私の言葉に二人は頷き

早速レッスンへと駆けていく

自分で破壊しながら、自分で治すなんて馬鹿馬鹿しいとは思うが

過去の自分の犯した罪を自分で何とかするのは当たり前だからな……仕方があるまい

変わることを受け入れると決めた以上

たとえ過去の自分だとしても立ち向かう

それが――私のやり方だ!


ここまで


ユニット名は……公募しようと思ったけど決めてしまった
そして最後はやっぱりフェスですよ。フェス!

黒井も変わった。周りも変わった。765プロだって変わった

あとはちーちゃんが変われば――ん? 何か忘れ……

乙です。

NAMCOプロデューサー出番ないな…
黒ちゃん変わるのを受け入れたなら高木社長と和解イベントクルー?

別に765が主役ではないからな


ユニット名を決め、発表を決めた翌日

私は密かに……というか

まるで必然のように、プロデューサーと会っていた

「流石ですよ。黒井社長は」

「ふんっ、貴様に言われても何の有り難みもないな」

「そうですか……そうかもしれませんね」

765プロのプロデューサーは苦笑する

その姿にはやはり疲れを感じるが

やよいちゃんの時の電話の声よりはだいぶマシになっていた

「最近は楽になったようだな」

「美希が言ったんですよ。バラバラじゃダメだって。大事なのは団結だって」

「………………」

「面倒臭がりだった美希が自分からユニット提案して、リーダー立候補して……ほんと、驚きました」

私が奮い立たせたからでもある

――が、やはり

そこまで動いたのは天海春香の言葉と、成長したその姿だろうな


「貴様としても、それは良かったことではないのか?」

「確かにそうなんですけど……悔しいですよ。黒井社長達にそれをやられるなんて」

「……ほう」

プロデューサーは私に対して対抗心を抱いているらしい

まるで対等の存在であるかのように言う

……気に食わないな

「私は貴様よりも遥かに先輩だぞ? おいそれと先を越されるわけにはいかんよ」

「そうですよね……千早の件も任せるような形になってしまいましたし」

「あれは私が招いたことだからな。それに……やるのは私ではない、春香ちゃんだ」

「春香が? でも、確かに春香が適役かもしれません」

プロデューサーは懐かしむように遠くを見る

まだ春香ちゃんが765プロだった頃のことでも思い出しているのか

それとも、春香が765プロのままだったら……というものを考えているのか

少し残念そうにため息をついた


>>836訂正


「貴様としても、それは良かったことではないのか?」

「確かにそうなんですけど……悔しいですよ。黒井社長達にそれをやられるなんて」

「……ほう」

プロデューサーは私に対して対抗心を抱いているらしい

まるで対等の存在であるかのように言う

……気に食わないな

「私は貴様よりも遥かに先輩だぞ? おいそれと先を越されるわけにはいかんよ」

「そうですよね……千早の件も任せるような形になってしまいましたし」

「あれは私が招いたことだからな。それに……やるのは私ではない、春香ちゃんだ」

「春香が? でも、確かに春香が適役かもしれません」

プロデューサーは懐かしむように遠くを見る

まだ春香ちゃんが765プロだった頃のことでも思い出しているのか

それとも、春香ちゃんが765プロのままだったら……というものを考えているのか

少し残念そうにため息をついた


「春香ちゃんが765プロのままだったらきっと、問題なく進んでいただろうな」

「……情けないですよ。アイドル一人欠けたくらいでダメになるプロデューサーで」

「意外と脆いものなのかもしれん。プロデューサーなんていうものは」

「え?」

「アイドルのためにプロデューサーがいる。確かにそうかもしれんが……」

失ったアイドルを思う

得たアイドルを思う

そのアイドルから得たものを思う

ふと、複雑な感情の笑みが溢れたが

気にせずに話を続ける

「プロデューサーの為にもアイドルがいるのだ」

「……そうですよね。全部プロデューサーがなんとかしようって思ってちゃアイドルがいないのと変わらない」

「それを私に気づかされているレベルなら、まだまだ私は遠いぞ?」

Pを導いたり壁になったりする先達か・・・
本編にゃ全く居ないからなぁ

居た方が良い気もするけど
あくまでも「Pとアイドル」だからしょうがないのか

13人同時にプロデュースする奴の壁役って簡単に人間やめてそうだな

壮絶な千早いじめはやめろ


「くっ……」

「とはいえ、私も春香ちゃんに気付かされたからな。まったく……忌々しい女だよ」

「とか言いながら結構嬉しそうじゃないですか」

「ふんっ、うるさい!」

今までの自分のやり方が間違いだったと

そう思うわけではない

トップアイドルを作るならあれほどまでにベストなものはなかったはずだからな

「……君は恵まれているのだ。それを忘れるなよ?」

「美希、雪歩、伊織、貴音、響、真、律子、亜美、真美、あずささん、小鳥さん、社長……やよい、千早、そして春香」

「私が見習いの頃とは段違いだな。あと何人か寄越せ。別に困らんだろう」

「い、嫌ですよ! やよいと春香を奪っておいてこれ以上とか絶対嫌です!」

「冗談だ。そこまで熱くなるんじゃない」

「貴方の場合、それが冗談にならないから怖いんですよ」


まぁ……やよいちゃんと春香ちゃんを奪えただけマシだな

だが、それも過去の私がしたこと……

「………………」

「黒井社長?」

「……如月千早は春香ちゃんに任せて、貴様は今まで放ったらかした分アイドルを相手してやれ」

「解ってますよ」

それはいつかだ

いつかでいい

今はまだ、まだ……ダメだ

あの女はもう業界にはいない

だからやつに勝つまでとは言わん

だが……せめてIA大賞が終わるまでは借りていても良いだろう?

「じゃぁ、俺はこれで」

そう言い残して去っていくプロデューサーを一瞥し

私も会社へと向かった


その日の夜、

やよいちゃんを家に送り届けたあとのこと

私は春香ちゃんを駅に送るべく、車を運転していた

「えへへっ、今日もレッスンも撮影も完璧でしたよ!」

「当たり前だ。そんなことで失敗などして貰っては困る」

「もうっ……変わってくれたと思ったのに、あんまり喜んでくれないなんて」

春香ちゃんは残念そうに不満を漏らす

それでいちいち喜んでいては

もっと特別なことで成功した時はどうなるのか

少し……不安になる

テンション的な意味でだが

「……春香ちゃん」

「なんですかー?」

不貞腐れた返事

だが、話をちゃんと聞く気があるあたり春香ちゃんらしい

いつもならそこでクスリとでも笑えるが

今はそんな気分じゃなかった

黒井社長、春香たちだけでなく冬馬たちも頑張ってますよ…
ジュピターがIA大賞を取る可能性とかそのための方針とかも諦めずに考えてやってください…wwww


「……呼んだだけだ」

「なんですかそれ……なんかアレですよ?」

「………………」

765プロに戻りたいとは思わないか? とか

IA大賞が終わったら

春香ちゃんたちは765プロに返すつもりだ……とか

そんな簡単なことが言えなかった

「黒井さん?」

「……レッスンを頑張れ。春香ちゃんたちなら問題などないはずだ」

「……あの、黒井さん」

駅に着き、車が止まる

いつもなら、ありがとうございました。と

その一言と笑顔を残し出て行くはずなのに、

春香ちゃんはシートベルトを外しはしたものの

車を降りることはなく私を見つめ、名前を呼んだ


「なんかこれが最後みたいで嫌な感じがするんですけど……」

「そんなつもりはないのだがな」

今すぐ手放すつもりは毛頭ない

IA大賞と部門賞

それらが終わってから……そのつもりだ

「……それならまぁ。良いですけど」

「まぁ、お前達よりジュピターが優秀だったら早めに切るかもしれんがな」

「むっ! それは聞き捨てならないですよ! 確かに冬馬くん達も上手いですけど……」

一度勝った

だから慢心する……なんてことはないらしい

「IA大賞も部門賞も、今年は961プロで総取りするつもりだ。期待してるぞ」

「そんな大きいこと望まれても……でも、精一杯頑張ります」

春香ちゃんは小さく笑う

不安も恐れもある

それでも無理とは言わないのが春香ちゃんだ

だが――

「「その前にフェス」」

二人同時に同じことを口にする

思っていることが解った

言いたいことが解った

だが、合わせようとは思っていなかったのだが……な


「クククッ」

「あははっ」

二人して笑う

前の私なら考えられないことだが

こういうバカみたいな空気も悪くはない

「もうっ、黒井さんってば」

「ふんっ、貴様が単純すぎるのだ」

「でもそれで私のこと解って貰えるなら悪くないかなーって」

春香ちゃんはやよいちゃんの真似をしながら

小さく笑ってドアに手をかけた

「それじゃ、おやすみなさい。黒井さん」

「ああ、また熱出したりはするなよ?」

「解ってますよー、えへへっ。じゃぁ……ありがとうございました」

春香ちゃんが車を降り、駅へと向かって

その背中を見送り、駅の中に入るのを確認してから車を動かす

「私が見習いの頃とは段違いだな。あと何人か寄越せ。別に困らんだろう」

黒ちゃんがこんな冗談言えるくらい変わるなんて春香ってすごいな


それがいつもの別れ

そんないつもの平々凡々がいつまでも続かないことは解っていた

時期が来たらしっかりと春香ちゃん達を手放すつもりだったからだ

だが……

フェスの1週間前になってそれはやってきた

朝の突然の呼び出しに急いで会社へ向かう

受けて切ればまたかかる電話

受け付け全てが電話対応していて

その中の一人、春香ちゃんと一番親しいであろう受付が一冊の雑誌を私へと向けた

「……不味いですよ」

「……………………」

開かれた雑誌の見出しに大きく載る写真と言葉

『961プロダクション、急進の真実! 裏では黒井社長の取引か!?』

悪徳……だろうな

怒りはなかった。何もなかった

ただただ

過去のしわ寄せが来たんだな。と

すべてを失いかけない今のこの状態を受け入れようとしていた


ここまで


次回、さらば黒井崇男!? 罪と共に消えるプロダクション


……どうなるかは明日の自分にしか解らないけどね

悪徳め…タイミング見計らってやがったな

おつおつ悪徳めやっぱり悪徳か

>>849
2ヶ月近い努力の賜物だな
春香と黒井の掛け合いが最初と比べると段違いだし

しかしこうきたか……どう頑張っても罪は消せないよな
例え春香達に使って無くてもやってた事実は覆せないしなぁ

『壊したものは元に戻らないのに』
『自分だけはのうのうと改心なんかして』
『不幸にされた人たちを尻目に自分だけは幸せになれたみたいで良かったよ!』

とか、そんな皮肉を言い放った悪役がジャンプにいたなぁ…黒井社長…犯した罪は消せないかもしれないけど…幸せになってほしいぜ

あと、悪徳の成敗とか、そういう役回りだとしても、ジュピターのかっこいい見せ場が一つはあることに期待
ジュピター好きなんだよなー…やっぱり、961プロが舞台の話だし、そのくらい期待してもいいよな…

ジュピターも黒ちゃんも元々好きだった
アニマスは黒ちゃんの扱い酷い言われるが高木社長たちが「根は悪いやつじゃない」「純粋すぎる」「やり方を間違えただけだ」みたいに言ってたし
あれはあれでいい味出してた気がするんだよね…
P.Kのジュピターでさらに好きになったのだよ
この作品終わってほしくないな最近のアイマスSSの中で一番のお気に入りなんだよね

> 「お前達よりジュピターが優秀だったら」と、「早めに切るかもしれんがな」

春香はどっちに「聞き捨てならない」って言ったんだろうな?

しかし、悪徳を切ったときからこうなるだろうなとは読んでたが…どうなるのやら。

今までに潰されてきた被害者達にとっては、今の改心なんて知ったこっちゃないだろうし、何の免罪符にもならないこともたしかだしな…その辺の、過去の過ちへの償いとかをしないといけないんだろうな

そして、悪徳はまだ春香との熱愛とかをでっち上げそう。
いや、春香を直接脅しに行くかもな、「黒井社長がどうなってもいいんですかい?」とか

>>858
被害者って言っても
961で続けることを強制したわけではないし
一応はトップになれたりもしてたんだし
961に対してとやかく言うことは出来ないと思うぞ

>>859
961に妨害された側の話なんじゃねーの?

そのつもりで言った。昔黒井社長の妨害で潰された事務所や、やめさせられたアイドルとか、そういうのを『被害者』って言ったつもり

その辺どうするかはかなり気になる。

悪徳なら春香よりやよいに72か吹き込みそう
春香は何を言われても「私は黒井さんを信じてますから」って言いそうだし
やよいなら「黒井社長にこれ以上迷惑かけたら」とか色々考えちゃいそう

悪徳「はーはっはっは! あっしの勝ちですぜ旦那
   天海春香を抱かせてくれるなら誤報ということに出来ますがね……どうしやす?」

>>863

黒井「代わりに私を好きにしろ!!」

冬馬「おっさん…それなら…俺も手伝うぜ。」

御手洗「あはは、何も相談してくれないなんて、黒ちゃん水臭ーい。」

伊集院「チャオ☆」

黒井「みんな…」

悪徳「これがゆうじょうぱわーか。」

>>863-864にすべてもってかれた

やっと追いついた
とりあえず春香とやよいは961でアイドル続けてほしーなーって


「黒井さん!」

春香ちゃんの声が社長室に響く

声と一緒に駆け込んできた春香ちゃんと

そのあとに続くやよいちゃんもまた

あの雑誌を見たのだろう

かなり慌てていた

「どういうことですか……? これ」

「見たままだ」

春香ちゃんの悲しげな声に静かに返す

否定はできない

嘘も付けない

それが現実なのだから

「……じゃぁ、黒井さんは本当にこんなことしたんですか?」


やよいちゃんのその言葉は

覚悟をしていた私にも

深く、強く、突き刺さる

「……………………」

「私、信じられないです。黒井さんがこんなことしてたなんて」

「……私のことを細部まで知っていたわけではあるまい」

やよいちゃんの沈んだ姿を見たくはなくて

どこか別の場所へと目を向け

これほどまでに回転椅子というものの存在を喜んだことはないだろうな……なんて

現実逃避する私の視界に

春香ちゃんは割り込んできた


「なんだ?」

「私が聞きたいのはそれじゃないですよ。どうしてこんなことが載ってるかって事です」

春香ちゃんはまるで

私がそういうことをしたことは関係ないとでも言うかのように言う

春香ちゃんにはいつも驚かされてきた

しかしこれは流石に……おかしいだろう

高木達から

色々と話を聞いていたことは知っている

だが、自分達もまたそんな不正の上に立っていると知ったら

普通はもっと驚くはずだ

もちろん、春香ちゃん達にはまだそんな手を使ってはいないが

それでも……

「お前は自分がどんな状況にいるのか解っているのか?」

「解ってますよ?」


春香ちゃんはいつもの調子で微笑みながら

不安そうなやよいちゃんの頭を撫でる

「私達は不正の上で、今の立場にいる」

「ああ」

「春香さん! 私はそんなこと――」

やよいちゃんの声を遮るように

春香ちゃんはやよいちゃんを抱きしめて

私を見つめる

「信じなくて良いんじゃない?」

「え?」

「……なに?」

「私達は私達の実力で今の位置にいる。それを証明すればいいだけの話ですよね? 黒井さん」


不正をしていた

そんな最悪のレッテルを

自分の実力で覆すだと……?

「ば、馬鹿なこと言うな! それはそんな簡単な話ではない!」

「解ってます。でも、そうしなければ、私のことを認めてくれた黒井さんの言葉が、気持ちが。嘘になっちゃうから」

「お前は……」

馬鹿か?

そう言おうとして、言葉が詰まる

春香ちゃんの目は本気だ

春香ちゃんの言葉は

嘘偽りのない、本心からの言葉だ

「それに、私の今までの努力も無駄だったことになりますし?」

苦笑しつつ

春香ちゃんは私に気を使わせまいとそんなことを言い出す

ああ、春香だ・・・


「けどよ。その不正で潰された奴らはそれで納得してくれんのか?」

不意に割り込んできた声は

ジュピターの一人、天ヶ瀬冬馬だった

「それは……解らない……ですけど」

「僕もその考えはいいなって思うけど、ちょっと難しいと思うよ?」

「……………………」

そう……だったな

立場の証明ならできるだろう

だが、それで潰れてしまったアイドルや事務所

その関係者たちが許してくれるはずがない

「それでも、私達が不正で……えっと……」

「成り立つ?」

やよいちゃんの言葉に助け舟を出すと

嬉しそうに微笑んで、言葉を続けた

「不正で成り立つアイドルじゃないっていうことを証明しましょうっ!」

「やらないよりはやったほうがいいよね。冬馬」

「こいつらに言われてっていうのは癪だけど、確かにやらないよりはやるべきかもしれないな」


やよいちゃんの言葉に北斗達も賛同していく

プロデューサーに恵まれていると言ったが

私も恵まれているのかもしれんな……

「……黒井さん」

「なんだ?」

「今はもう、961プロの名前は私達が背負ってますから」

春香ちゃんは微笑む

大した自信だな

その名前は重すぎるほどに重いというのに

まったく……まったく……

「馬鹿なやつだ。お前達は」

「社長も大概だぜ? こんなことしやがって……ま、名を上げるには良い燃料かもな」

「そうだね。悪いことでも利用しちゃおっ!」

「下手打つんじゃねーぞ。天海春香」

「冬馬くんこそ、頑張ってよね」

ジュピターとフェアリーが向かい合う

私が諦めて受け入れようとしたことを

春香ちゃん達がかっさらっていく

まだ、私は春香ちゃん達といられるのだな……

それは、春香ちゃん達が頑張ってくれるから……なのだろう

ならば私も、諦めるのではなく

手を尽くさないわけにはいかんな


それぞれが――動き出した


ここまで

ゲーセンではるかさんとエンカウントした

いいところで終わるな乙


黒井社長、春香だけはそのままキープしても誰も責めないと思うがなぁ…

春香もやよいも返したら黒ちゃんどうするつもりなのかな

いやどっちも返さないでくださいよお願いしますって

>ゲーセンではるかさんとエンカウントした

なんだって!?

返しても返さなくてもかっこいい黒井殿
流石
惚れる

今の黒ちゃんなら765のアイドル引き入れても普通についてくるだろうな

でも765のプロデューサーも悪いわけじゃないんですよ
アニマスの赤羽根Pはとても頑張ってうまくやれたけど
本来あの程度の人員しかいない事務所でアイドル12人育てろとかむーりー
なんだかんだで黒井社長と高木社長が組んだら最強に見える

>>883
社長コンビが協力したら最強とは思うが、一緒にはなれないタイプだとも思う
結婚生活がうまくいかず離婚後の方がうまくいく男女みたいな感じかな?

>>884
でも今の黒ちゃんは変わることを受け入れてるんだしもしかしたら高木社長と和解してから一緒にまたアイドル育成するかもしれない

そうなったら961の財力での場所提供765での心の育成で最強のアイドルが完成するような…

>>875
アケマスハマってたときに
律子の中の人を見かけたことがあるぐらいだわ

>>886
うらやましい
はるかさんってたぶんクレーンキングのはるかさん人形だと思うぞ

>>886 お前達すげえよww

>>1は春香さんじゃなくはるるん呼びだからな

俺は小学生の頃にドラマの撮影を何度か見たことあるくらいだから羨ましい

>>885
最近は961も心の育成始めているっていう話だと思うが…
ジュピターとフェアリーは良い仲間で良いライバル関係築いてそうだな

しかしこれはあれだな
黒井社長の『やるべきこと』はまずは過去の被害者たちへの償いと予想
で、今は真実しか報道していなくても、悪徳が春香との熱愛報道とか書いたら悪徳を潰しに行くかな

予想レスは読む方からしても邪魔かなーって

せやね、感想ならともかく予想はよそう

そっか、すまんな

>>894
別の意味で可決!


思い立ってからなんとか連絡先を調べ

2日目

なんとか集めた被害者達との会談の場に怒号が轟く

「だからなんだって言うんだ!」

「くっ……」

ガンッと

強い衝撃が体の後ろ側に伝わり

一番響いた頭が揺れる

「ふざけるなよ? 許すわけがないだろう!」

「ぐっ…………」

961プロダクションの被害者の一人は

怒り、憎しみ、恨み……そんな感情だけで私を睨み

背中と密着する壁に沿って襟首を持ち上げていく

「貴様の行いがどれだけの人間の人生を狂わせたのか解っているのか!?」

「……………………」

「謝っただけで……潰された夢が、想いが、心が、人々が返ってくるのか!?」

「……………………」

「なんとか言ったらどうだ! この卑怯者め!」

「……すまなかった」


「ッ――ふざけるな!」

体が壁から離れ、

今度は床へと打ち付けられる

鈍い痛みがじわじわと押し寄せてくる……が

私に抵抗は許されない

反論も許されない

謝罪も決して許されるものではない

――しかし

「……私には謝る以外にできることなど解らんのだ」

「それがふざけていると言ってるんだ!」

「……ならば教えてくれ。私に何が出来る。私のせいで潰れた者達に何が出来るのだ」

「貴様という人間は!」

力強い拳が頬を打つ

春香ちゃんの時に受けた痛みと同じく

思いの乗ったそれはやはり痛かった


「それを私たちに言わせるのか!? それで償うことができると……本気で思うのか!?」

「本気で思ってるんじゃないの? だからそういうことが言えるんでしょ」

「許すとかありえない話だわ。まずはこの業界から消えて貰って、ちゃんと賠償金も払って貰わなきゃ」

「そうっすね。俺も961プロのせいで職を失った身だし」

「今のアイドル……なんだっけ? ジュピターとかフェアリーとか」

「フェアリーなんてふざけた名前つけちゃって……凄くいらつくわ」

「そいつらにも――」

被害者たちが話始める

私が罪を償う方法を……

金ならいくらでも出そう

961プロを消すことだって了承しよう

――だが

「それは無しだ」

「文句言える立場なのか? 黒井崇男」

「罪は過去の961プロ、この私に全ての責任がある! 今のアイドルに罪はない!」

「知らないわよそんなこと! あいつらって961プロでしょ!? あたしは961プロが憎いのよ! だったらあいつらだって消えて貰うわ!」


「それは出来ん!」

「出来る出来ないの話してると思ってるの? するのよ! 消えんのよ! 961プロの関係者は全員!」

元アイドルだった女が喚く

たしかにそうかもしれない

本来ならそうするべきなのかもしれない

しかし、それは許可したくない

「アイドルだけは続けさせて欲しい」

「……そんなにアイドルが大事なのか?」

被害者の中の一人が

静かに口を出す

床に押さえ込まれている私を見下ろすその男は

私が圧力をかけ、仕事が消え

やむなく潰れてしまった事務所の社長だった


「大事だ」

「何が変えたのかはなんとなく解る……時期的にも、fairySの天海さんだろう?」

「………………」

「ふっ、あれだけ怯えさせられた男もこうなってはただの男だな」

元社長は苦笑しつつ

私の横にしゃがみ込む

「だが、許そうとは思えん」

「………………」

「961プロのせいで沢山のアイドルが泣いた。沢山のプロデューサーが消えた。沢山の会社が消えた」

「………………」

「その者達にとって、961プロダクションというものはトラウマなのだ。忌むべき存在なのだ」

元社長はあまり本意ではない

そう言うかのように眉をひそめ、言い放つ

「だから許されん。961プロダクションという存在が残ることは……決して」

ぶっちゃけそんな被害者の会があっても普通は大手プロダクションに痛手はないはずなんだがな…
まあ野暮か


「なら、プロダクションを変えることは許されるのか?」

男の言葉に空いた隙間に言葉を投げ込む

今までの私なら聞かなかったことだ

その隙を利用し

相手の言い分に沿った上で自分のやりたいことができてしまうからな

言葉の隙は最大の武器になる

だが、それではだめなのだ

今はしっかりと……問わねばならん

「……それでも、彼女達は元961プロ所属だ」

「辞めろと言うのか? 私に引き抜かれたというだけの理由で」

「それが961プロがしたことの責任だ」

「っ………………」

どれだけの謝罪を積み重ねても

どれだけの金を積んでも

それは決定事項……なのか?


「……………………」

過去の罪から逃げるのではなく

それをしっかりと償った上で続けていきたいと思った

もしも私が続けることを許されなくても

せめて春香ちゃん達の活動に支障がないようにしたいと思った

だが……何も許されはしないのか

私だけでなく、春香ちゃん達も許されないのか

私が765プロへの妨害として

引き抜いたばかりに……

新たな障害として用意していたジュピターもその例外ではないだろうな……

全て……ダメなのだろうな

「いっとくけど、悪徳さんはあたし達の味方だから。消えないなら消えるしかなくなるようにするから」

「…………………」

「961プロだけじゃなくて、961の名前借りてアイドルやってる子達も纏めて!」

理不尽なことを言われているとは思うけど、彼らは何の罪もないのに、大切な人達ごと理不尽に、不条理に潰されてきた人達だもんなあ…
黒井社長が何を言おうと、どんな理不尽でも不条理でも受け入れてもらって、何の罪もない春香達が謂れのない酷い目に遭わないと許す気なんて到底起きない、っていうことなんだろうな
多分、彼らにとっては春香ややよいやジュピターが「黒井社長を受け入れていること」や「黒井社長を許していること」が、許せない行動であり、罪深いこととして映っているんだろうな

>>902
痛手かどうかとかで動いてないからな、今の黒井社長
損得勘定とか度外視して、無視も潰しも出来る相手と心から向き合ってるんだろう


「お金の力でもみ消す? 良いよ別に。消されたらまた生み出すから」

「そこまで酷い事を私はしてしまったのだな……」

「当たり前じゃない……あたし達の夢も希望も関係も何もかもを壊されたんだから!」

元アイドルは怒鳴る

過去を思い起こし

それと今との差に涙を零し、私を睨む

「あんたのせいなの! あんたのせいで全部……全部消えたのよ!」

「……………………」

「なのにあの子達は関係ないから許せ? 出来るわけないじゃない!」

「……………………」

「潰れなさいよ……あんた達の全ても! じゃなきゃ理不尽だわ……理不尽よ……不公平なのよッ!」


何を言えば良いのだろうな

なにをしたら良いのだろうな

高木、貴様には解るか?

プロデューサー、貴様にでも解ることか?

冬馬、北斗、翔太

ジュピターであるお前たちには解るか?

やよいちゃん

君には答えが解るか?

春香ちゃんならなんて言う? 何をする?

……連れてくるべきだったか?

いや、連れてきたら何されていたか解らん

様々な考えが巡る私の頭に、その室内に

「被害者の会と聞いてきたのだが……どうやらここで合っているみたいだな。黒井」

招いていない客の声が響いた

救世主高井ktkr

やっぱりホ


ここまで


痛手の有無は関係ないです
被害者に認めて貰わないと
黒井さんはちゃんと前には進めないからね

こに春香ちゃん連れてきてたら、黒井社長の目の前でリンチとかレイプとかされてたかもな
見せしめといわんばかりに

乙!

乙でした

悪徳は味方とか言ってるがお前らは利用されてるだけで価値がなくなれば結局は昔の黒ちゃんみたく切り捨てられて今よりひどい状態になるのがわからないのかな…
そもそも黒ちゃんは確かに元凶かもしれないが元アイドルとかはじゃあ何かしたのか?何か努力したか?流されて終わっただけだろ
抗いもしなかったくせに自分の弱さを人に押し付けここぞとばかりに罵倒
アイドルがダメでも元アイドルなら話題性はあるし女優とかモデルとか色々やれただろ
確かに何かしら黒ちゃんはしたんだろうが最終的には自分で判断したんだろ
這い上がりもしなかったしようともしなかったくせに都合が悪くなるとヒステリックになる
邪魔とかされようが潰されずに頑張れば生き残れた可能性あったのを潰したのは自分たちじゃんか

765相手以外にも潰すまでやってたりしてたんだろうか
そういう描写って原作やコミック関連なんかにもあるんかな?

食品偽装の返金騒動と同じで関係ない人も一緒に叩いてそうだな
それに765みたいなやり方でも、765に潰された人もいるだろうに

>>915
961アイドルが確実に勝てる場を用意したりはしてたんじゃない?
いわばできレースだな

最後まで追い込むとかはやってなさそう
あくまで自分のアイドルが出場するオーディションとかだけだと思う

漫画カラフルデイズでは、コスモプロが被害受けてたっぽい描写はラストあたりにあった

というか、元アイドルが努力しなかったとか逆らわなかったとか流されただけとか、それはさすがに決め付けじゃね?そんな描写ないし

悪徳に利用されてるだけってのは同意するが

黒井が何したか具体的に知らないので、被害者の会が悪者に見えるという

通過儀礼ってとこで流すのが吉かな


「呼んだ覚えはないぞ、高木」

「私も一応は被害者側だからな。来てもおかしくはないだろう?」

「………………」

高木は私を見下ろす

この逆の立場を望んでいた過去の私にとっては

これほどに屈辱的なことはない

だが……だからこそ、笑う

「……惨めだと笑うか? 愚かだと罵るか? ククッ、アイドルのために這い蹲る私を見下すといい」

「………………」

高木は何も言わず

周りの被害者を見回す

アイドル、事務員、プロデューサー、社長

様々な肩書きを持っていた被害者達

彼らの目もまた、突然の来訪者に向かって行く


「君達はこの男に何をされたのかね?」

「あたしは仕事を取られたのよ。いくつも、いくつも!」

「それだけじゃないわね。フェスも、オーディションも961プロのアイドルが出るものは全て負けだった」

「どう足掻いても勝てない。当時は実力不足だと思ってたけど、不正なら勝てなくて当たり前だったってわけだ」

アイドルや事務員

プロデューサーだった者たちが口々に漏らす

全てのフェスやオーディションに手を出したわけではない

仕事を横取りは……765プロ相手以外ではしたことなどない

しかし、予定していた相手から切り替えて――というのは何度かあった

それもまた、不正による名売れによるものであることはある

だからこそ……否定はできない、全部ではないと、文句が言えない

「ふむ……本当かね?」

「記事を読んだのだろう? 事実だ。私は確かに不正をした」

「全てか? 私はともかく、ほかの企業にそこまで手を出す理由はないと思うのだがね」

「……………………」

「なんなのよあんた! あたし達が実力不足、努力不足、想い不足だって言いたいの!?」

「お、落ち着き給え……私はただ黒井が潰れるほど追い詰めたとは思えないだけなのだよ」


>>922訂正


「君達はこの男に何をされたのかね?」

「あたしは仕事を取られたのよ。いくつも、いくつも!」

「それだけじゃないわね。フェスも、オーディションも961プロのアイドルが出るものは全て負けだった」

「どう足掻いても勝てない。当時は実力不足だと思ってたけど、不正なら勝てなくて当たり前だったってわけだ」

アイドルや事務員

プロデューサーだった者たちが口々に漏らす

全てのフェスやオーディションに手を出したわけではない

仕事を横取りは……765プロ相手以外ではしたことなどない

しかし、予定していた相手から切り替えて――というのは何度かあった

それもまた、不正による名売れによるものであることはある

だからこそ……否定はできない、全部ではないと、文句が言えない

「ふむ……本当かね?」

「記事を読んだのだろう? 事実だ。私は確かに不正をした」

「全てか? 私はともかく、ほかのプロダクションにそこまで手を出す理由はないと思うのだがね」

「……………………」

「なんなのよあんた! あたし達が実力不足、努力不足、想い不足だって言いたいの!?」

「お、落ち着き給え……私はただ黒井が潰れるほど追い詰めたとは思えないだけなのだよ」


「だからそれがそう言ってるんでしょ!」

「う、うむ……」

「なによ!」

「私は君達にも問題があると思っている。それを認めよう」

高木はそれを言う事に少し不満があったようだが

女の迫力に負けたのか、言葉を漏らす

「ふざけないで! 問題? あたし達に? なんなのよそれ! 言ってみなさいよ!」

「なにが。とは言えんのだが……続けられなかったことに問題があると思うのだ」

「続けられなかったことに問題……?」

「私の事務所も様々な妨害を受けた。それはおそらく、君達よりも執拗なものだ」

高木は私を一瞥し、困ったように口元を歪める

……事実だな

アイドルを引き抜いたりなんだり、紛れもない事実にほかならん


「なんでそう言えるのよ」

「いやはや、審査不正に加え、仕事の横取り、アイドルの強制奪取、各TV局に変な噂を流したり……」

「アイドル……って、あんたもしかして765プロ?」

「いかにも、私は765プロダ――」

「じゃぁあんたも敵だわ! 資金援助受けたんでしょ!?」

……春香ちゃんの件か

あれは表向きには資金援助の代わりに

不足するアイドル人員の援助という形だからな

それが仇となったか

「あんな有望なアイドルを資金援助なんていうもので手放すわけないではないか」

「解らないじゃない。お金に困ってて、それで条件出されて……そんな話ありえなくないでしょ」

「大切なアイドルを売ってまで続ける事務所に意味はあるのかね?」

高木は女に対し悲しげに問う

「私ではなく、君がその立場だったとして、本当にそこまでして延命させたいのかね?」


「それは……」

「君もユニットがあったはずだ。仲間や友人がいたはずだ。彼女達の仲をお金なんかで裂いて……続けられるのかね?」

「……………………」

春香ちゃんは私が強引に奪った

資金援助など1円たりともしていない

それだけでもアイドルは厳しい状況になったはずだ

なのに、自分の意志で

お金と引き換えに……そんなことをして

周りが黙っているはずがない

「天海君もやよい君も961プロに盗られてしまったのだ……非常に悲しい話だがね」

「それでなんで続いてんのよあんたの事務所」

「アイドルとプロデューサー、事務員……みなが一致団結しているからだよ。一時期は本当に危うい場面もあったがね」

春香ちゃんが抜けたことで如月千早を繋ぐものがいなくなり

如月千早が離れ、皆の心が離れ、やよいちゃんまでもが去って

ギリギリに追い詰められた。もはや団結のだの字さえないほどに

それもまた私の罪だが……


「支え合うことが大事だと一人が言った。絶望的な状況下だからこそ、自分だけでなく周りを見るんだってね」

「……そんなの、認めない人だっているはずだわ」

「認めない人も確かにいたよ。彼女には困ったものでね、団結なんていらない。一人でやるといって聞かないのだよ」

高木は笑う

だが、周りの誰も笑うことはなく

気に入らないといった表情で高木を睨んでいた

「だが、私達の事務所はそういうのを無視するアイドルがいたのだよ。今でこそ欠けてしまっているが……」

「……………………」

「その存在がみんなを動かした。彼女なら絶対に見捨てない。はいそうですかと諦めない。だから絶対に振り向かせる。とね」

もっとも

如月千早はそれでは変えることは出来なかったが

変えられなかったからこそさらに強く団結しだした

ピンチをチャンスに変える……末恐ろしやつらだな。まったく


「足りなかったのはそういうアイドルあるいは事務員、あるいはプロデューサーあるいは社長なのかもしれない」

「あたしだって周りのことくらい……でも……」

なにか思うところがあるのだろう

女は俯き、そのまま黙り込む

「……………………」

「……………………」

「……けど、961プロがその絶望の原因だ。引き金になったんだ。それは変わることじゃないだろ」

プロデューサーだった男が沈黙を断ち切る

結果に繋がったものがなんであれ

それを引き起こした原因は変わらない

「そうだな……私が原因だ」

「不正して、勝ち残って、みんなの夢を、希望を奪って……アイドルを苦しめた」

「…………………………」

「俺はそれを謝罪や金で誤魔化させるつもりなんてない!」


「だったらどうすればいい」

「黒井、なぜみんながこんなにも怒っているかを考えるんだ」

「……………………」

被害者が怒る理由

それは私が謝罪したからか?

私が不正をしたからか?

「あんたが不正を認めてるからだよ!」

「ぐっ!?」

床に倒れる私を

さらに強く床へと押し付け

男は怒鳴る

「俺達は実力不足を認めてた! 仕方ないことだって! それをお前が嘘にしたんだよ!」

「……………………」

「一緒に頑張れた。それだけで嬉しい。選んでくれてありがとう。そう言って去ったアイドル達の気持ちを……あんたは!」

悪徳の記事を認めること

今までの勝利、今までの栄光

それらを支える不正という罪を認めること

それが被害者の一番許せないことだというのか?

ああなるほど確かにそうだな

人間弱いから自分のせいだとわかっててもきっかけがあれば人のせいにしちゃうもんな


「償えるものじゃないんだよ! あんたのそれは」

「……………………」

「一生背負って生きろ! それができないなら消えちまえ!」

不正していたことを認め

その罪を償い、新しい黒井崇男として生きていく

それが許されない

穢れた栄光を抱え

脆くて醜く、薄汚い足場を歩いていけ

被害者が望むのはそういうものなのだな……

「記事を嘘にしろ。そういうのか?」

「ああ、961プロダクションはアイドル業界の最大にして最強になるんだよ」

「敗北は許されない。中途半端も許されない。トップだけしか許されない。出来ないアイドルは不正で押し上げていく」

「そんなのは――」

「あんたの気持ちなんか知るかよ。アイドルを続けさせてやりたいんだろ? だったら不正し続けろよ! 被害者を後悔させないように!」


私が言うのもなんだが

最低最悪のやり方だ……屑といっても良い

良心なんて投げ捨てたくなる

そんなやり方以外では続けることを許されない

アイドル達の勝利は偽りで

アイドル達の栄光は偽りで

アイドル達の笑顔だけが偽りなく

私はそれを見続けていかなければならないというのだな

負けたら今までの勝利、栄光が不正によるものではないか。と

みんなに思われる

そう思わせないために、961プロダクションは不正を続けさせられる

不正を認めることは許されない。だが、不正をやめることも許されない

これが絶望……なのだろうな


被害者の会は

春香ちゃん達を続けさせたいならその腐りきったプロダクションになる

それが嫌なら芸能界から消える

そのどちらかを私が選ぶという形で解散となった

「……黒井」

「憐れむな……それよりも自分達の心配をしろ」

「天海君達に話さないのか?」

「話す必要などない。あいつらは何も知らずアイドルでいればいい」

「……………………」

考えてみれば

前者はいつもの私と何も変わらんではないか

アイドル達を騙し、不正を重ねていく

「くくくっははっははははっ!」

「黒井、お前は」

「そうだ、何も変わらない黒井崇男でいれば良いだけではないか! そうだろう高木」

「……強がりはやめるんだ。今の黒井にその生き方は合わん」


「ハッ! 何を言っているのだ高木ィ。怖いのか? ん? 逃げる奴を追う気はないぞ?」

「………………」

「なんだねその顔は。気に入らんな」

「……黒井、天海君達に話すつもりはないか? その上で先を考える気はないのか?」

「黙れ! 話して何になるというのだ!」

私のためにアイドルの夢を諦めてくれと頼むのか?

私のために穢れ切ったアイドルを続けてくれと頼むのか?

「立場の違う貴様に従う理由などないのだよ!」

そう言い捨て、その場から立ち去っていく

高木は私を救いたいと思っているのだろう

だが……そんな心配などいらん

するだけ無駄だ

春香ちゃん達のことを考えた場合

選べるものなど何も知らせずに続けさせること一択だからな


コーチから連絡を受けた受付からの連絡を受けて

その帰りにレッスン場に向かってみれば

話通り、春香ちゃんはたった一人でレッスンを続けていた

「はぁっはぁっはぁっ……ふぅ……ちょっと休憩」

私が選んだ道は

アイドルの努力さえあざ笑う

どんなに努力をしても評価はされない

961プロというだけで満点評価なのだ

だが「もうレッスンはいらない」なんて

そんなことは言えない

言えば理由を聞かれ、理由を言えば全てが終わるからだ

「……あれ? 黒井さん?」

考えている間に見つかってしまったらしい

春香ちゃんが声をかけてきた


「……まさか、また無理をしているわけではないな」

「や、やだなぁ。そんなことないですよ~えへへ」

あからさま過ぎて

すぐに嘘だと解った

だから叱るべきだと思った

しかし……それよりも先に申し訳ないという

感情が湧き上がり、言葉をせき止める

「………………」

「黒井さん?」

「……また過労で倒れたらどうする」

「そ、そうならないように考えてますし」

「考えていたってお前は無理をするだろう!」

「っ!」

その声のあまりの大きさに

私も驚いたが、春香ちゃんもかなり驚いていた


「ご、ごめんなさい……」

「保護者や765プロとの面倒な話は避けたいのだ。無理はするな」

「は、はい……」

無駄な努力をして

苦しむ姿を見たくない

辛そうな姿を見たくない

でも、努力をするなとは言えない

「……くっ」

「……何かあったんですか?」

「なにもない」

「でも」

「如月千早を優先しろ。余計なことに気を回していたら、救えるものも救えまい」

悲しげな春香ちゃんに背中を向ける

顔を見ていたくなかった

バレてしまうのが怖かった

そうか

こんな女に……私は怯えているのか

「……私、ちゃんと961プロも助けるつもりですから」


――なに?

思考を遮った言葉

その引力に引かれて振り向く

「あはは、私じゃなくて私たちです」

「……………………」

「言ったじゃないですか。不正なんてしなくても認められるほどの実力を示すって」

春香ちゃんは笑いながら言う

知らないからこその笑顔

勝利が約束されていることを知らないがゆえの笑顔

「だから千早ちゃんだけで961プロは良い。みたいな言い方ダメですよ? みんなも本気なんですから」

「……あぁ、そうだったな」

これからの私を苦しめるであろう春香ちゃんの純粋な笑顔

なのに……私はそれを失おうとは思えないのか

守りたいなどと……思うのか

「実に……愚かで馬鹿だな。救いようがまるでない」

私自身に対するその言葉に対して

「それだけ皆が961プロの事、黒井さんの事。考えてるってことなんですからね? 諦めちゃダメですよ」

春香ちゃんは笑顔でそう言った


ここまで


あともう一回くらい会話起こしてVS千早

後エピローグ……61レスで頑張るしかないね

「俺達を不正で潰しといて、他のアイドルとは正々堂々勝負するなんて不公平だ!他のアイドルにも妨害しないと許さん!」
みたいな、すげえ身勝手な言い分に見える。まあ気持ちはほんのちょっとはわかるが…かなり酷いな

これは辛い
だってよ、「不正しなくても実力で勝てる」勝負すら、わざわざ不正で勝利を確約してから勝つんだろ?それを知らずに努力して実力を磨くって…悲し過ぎる

そりゃあ努力を見るのも汗を見るのも笑顔を見るのもたまらなく嫌だわな

>>940
そうじゃない
今までが不正だったという結果にならないために
不正し続けろって言ってる

嘘を嘘で固めるがごとく不正を不正で固めろって言ってるんだよ

別に次スレ立てたっていいのよ


如月千早とのフェスバトルまであと1日

私は全スタッフ、全審査員に

審査を不公平なモノにして貰う為に動かなければいけなかった

にも関わらず……私は動けずにいた

「………………」

如月千早のため

961プロダクションのため

そして私のために行われる努力が無駄になる

そう思うと、どうしても抵抗があったのだ

明日でいい、明日でいい

そう先延ばしにして明日がフェスという追い詰まれた状況になってしまった

裏取引をするならチャンスは今日しかない

その状況下で選ぶべきは

審査員たちのはずだった

しかし……私が選んだのは審査員でも、スタッフでも、如月千早でも

ジュピターでも、やよいちゃんでも、プロデューサーでもなく

「なんなんですか? レッスンをするよりも大事なことって」

春香ちゃんだった


「……今日はレッスンはしなくて良い」

「でもラストスパート――」

「しなくて良いと言ったらしなくて良い。従え」

「…………もうっ、何なんですか一体」

春香ちゃんは悪態を付きながらも

興味があるのか

部屋を見渡し、所々の家具を眺める

「珍しいかね? 春香ちゃんでは絶対に買えないようなセレブの超高級な家具だからね」

「そういう意地悪なこと言うために私を家に呼んだんですか?」

「……………………」

「言いたいことあるなら言えば良いのに」

春香ちゃんは何かを察したかのように

不機嫌な感情を払って苦笑した


「黒井さん、何か隠してるでしょ?」

「なぜそう思う」

「ん~女の勘?」

「ふざけるな」

「あははっ……本当の事なんですけどね。黒井さんが最近送り迎えしてくれないから何かあるのかなって」

頑張りを見たくなかった

無駄になる努力で疲れきっていても

笑顔を見せる春香ちゃん達に会いたくなかった

「そんな理由でか」

「……じゃぁあと一つ」

「ん?」

「この前レッスン場に来た時、怪我してたじゃないですか」

「……………………」

「だから言ったんですよ。何かあったんですかって……なのに、何もないなんて嘘ついちゃって」


「だから私、ちゃんと助けるって言ったんです」

「意外と考えているのだな」

「当たり前じゃないですか」

「人のこと……結構見ているのだな」

「当たり前じゃないですか」

「転んでいることも、計算だったのだな」

「あた……って、それは違いますよ! なんでそれ今聞くかなぁ!」

春香ちゃんはムッとして私を見つめ

私の言葉に文句をつける

ああ……これだ

これなのだ……私が望むのは

「くくくっ、ははははっ……」

「もうっ! 何笑ってるんですか!」

「久しぶりだったからな……ついからかいたくなったのだ。見逃せ」

「なんだか見逃しにくいんですけど!」


「ユニットリーダーの……」

「はい?」

言葉を止めて、首を振る

今この場では余計な言葉などいらない

嘘や偽りなんて使わず

そのままの言葉を使う

「いや、他でもない春香ちゃんだからこそ言っておく」

「私だから……?」

「ああ、だから他には言うなよ?」

春香ちゃんにしっかりと前置きをして

私が抱える大きすぎる問題を告げる

「春香ちゃん達がアイドルを続けるためには、不正をし続けて絶対王者にならなければいけない」

「……………………」

「それが嫌なら芸能界から消える。私はこの2択から選ばなければならないのだ」

「……………………」

「それが私が犯した罪の代価だ……すまない。春香ちゃん」


一気に話されたそのふざけた選択肢

春香ちゃんは戸惑っているのか

私ではなくどこか別の場所へと目を向けていた

「……アイドル、続けたいのだろう?」

「……………………」

「だから、もう無茶はするな。楽に生きろ。961プロというだけで勝利は約束され――」

「するよ」

――天海春香は言う

私の言葉を拒絶して

私の目をそらさずに見つめて言う

「努力する。しないわけにはいかないよ」

「なにを……言っている」

「なにって……」

――天海春香は笑う

私がおかしいことを言っていると

笑うかのように……笑う

「信じてくれないんですか? 私……えへへっ、私達の力を」

「………………」

「大丈夫ですよ。私達は負けません。だって言ったじゃないですか。不正だという話を覆すって!」


春香ちゃんは大きく両手を開き

右手だけを自分の胸元に掲げる

「信じてください。貴方が認めた天海春香と、その仲間達の力を」

「……簡単な話ではないんだぞ? IA大賞どうのの話なんかではない」

「何言ってるんですか。IAも部門も何もかも、全部取る約束したくせに」

「………………」

「ね?」

春香ちゃんは小さくそう言って微笑み

空いた手を私へと向ける

「……なんなのだ。お前は」

「えへへっ、無駄に前向きなごく普通の女の子です」

「ふんっ、思いつめていた私がバカみたいではないか」

「ほんとっ、大馬鹿ですよ。さっさと話せばいいのに見え見えの嘘なんか付いちゃって」


「くっ……」

「あははっ、照れてます? 照れちゃってます?」

「ええい五月蝿い! お前は能天気なだけだ!」

「いいじゃないですか能天気。変に思い詰めるよりマシですよ?」

「ぐっ……」

春香ちゃんはそう言いながら笑う

あれほどの事実を知ってもなお

緊張している素振りはなく

焦っている様子もなく

私が犯した罪を責めるような素振りもない

「……黒井さんは前に私を選んで後悔してるって言ってたけど、今はどうですか?」

「…………そうだな」

不意に振られた真面目な話

悩みを打ち明けたりなんだりしている時点で分かっているだろうに

そんなに聞きたいのか……まったく

面倒な女だな……相変わらず

いつかのように悪態を付きながらも

私の口元は悪い意味ではなく、いい意味で曲がっていた


「良かったと思っている。春香ちゃんで良かったと……な」

「えへへっ……期待は裏切りませんし、夢も叶えます。頑張れば勝利できる。それが私達だから!」

「そうだな」

春香ちゃんの嬉しそうな顔にそう答える

本当に……良かった

やよいちゃんと話した通り

良い意味でも、悪い意味でも

春香ちゃんでなければこうはならなかった

だが、これで良かったと思っている

高木……お前は本当に見る目があるぞ

春香ちゃんを見出したことだけは、そう評価してやる

「春香ちゃん」

「なんですか?」

「……信じるぞ。春香ちゃんを」

「もちろん! お任せあ――ってわわわっ!」

嬉しそうに飛び跳ねて

春香ちゃんは勢いよく転ぶ

「あぁ……やっぱり不安だ……」

思わず漏らしたその一言に

春香ちゃんが反応していつものが起きる

大事なフェスの一日前であるということなんかを忘れ

私達はその口論を――楽しんだ


ここまで


次回、VS千早

大天使じゃったか……

もはや女神やんか
そもそも不正しろ言われてるが不正なんて実際してるかしてないかわかんなくね?
不正しなくても勝てたらそれで相手は不正して勝った思い込むしなら不正してるフリしてアイドルたちを信じるしかないな
大体自分達にも原因はあったんだろうしそれを認めず全部相手が悪いと罵るのは今まで961プロがやってきた不正より酷いと感じる

気持ちはわからんでもないがだからといってさすがにそれは皆が罵ってるこれは罰なんだ当然のことなんだ、だから自分達は正義で相手は悪だ
なら悪は裁かねばならないみたいなのは感じで偽善に感じる
そういやある漫画で「偽善は高度な嘘」と言ってたな

>>955
不正してでも敗北するなって話じゃね?
あと、全部961が悪いって事ではなく
961が不正を認めることで
悔いなく去ったみんなが後悔するのを責めてるんだぞ?
不正じゃないなら実力不足で話は終わる
だけど不正だったなら話が変わるからな

自分たちの敗北を不正のせいにさせろ、ともとれる
そうすれば実際は実力不足だったのを無視できるし
961プロという存在を絶対の邪悪と思い込むことができる

自分たちの努力と、諦めてしまった結果そのものを否定させるな
というのは確かに正しいんだけど
でも結局その選択をしたのは自分たちである以上、
「自分の選択に自ら敗北した弱者」であることは変わらないんだよな

別に被害者の会の言い分も分からなくはないし、気持ちもちょっとは分かるけど、
少なくとも、春香との懐の天地ほどの差は感じる

まず、あの元アイドルなんて、このSS最初期の引き抜かれた春香の立場になっただけできっと切れてた

>>958
元アイドルにも事情はありそうだし
そうとも言い切れない

なんというか元アイドルは春香の居ない
765アイドル達の末路にも思える
とくに美希が近い

そこは伊織だろう

いつかやよいちゃんと話した…って、なんだっけ?
やよいを最初に引き抜いていたらこうはならなかった…だったっけ?潰してただかなんだか

>>821じゃね?

これは…春香の言い分って、「用は、不正なしで、実力だけで勝ち続ければいいんですよね?」ってことだよな…
1敗でもしたら即引退みたいな追い込まれた状況で、黒井社長には不正させないで、実力勝負し続けるってことだよな…
『被害者の会』には、勝ち続けて不正によるものだと思わせておいて救いながら、実は不正しないで勝ち続けていて、それで黒井社長を救う…って…
夢見がちで無茶だけど、かっけえわ…

>>963
なるほどね


そして当日

私は春香ちゃんとやよいちゃんを車で拾い

会場へと向かった

「良いか? 当人だとばれるんじゃないぞ?」

「隠れないといけないんですかー?」

「見つかったらもみくちゃにされるぞ」

「あー……それは嫌かも」

春香ちゃんとやよいちゃんは各々納得し

春香ちゃんは深々と帽子を被り

やよいちゃんは髪を隠し、服装を高級なブランドものへと変えさせた

「……正直違和感がすごい」

「これ全部でいくら位なんですかー?」

「……18万円程度だ」

「はわっ! じゅ、18万円ですかっ!? それだけあったらもやしが……」

「ひと袋36円だとしても、単純計算で5000袋だね」

「そ、そんな凄いお洋服を着てていいんですか……? 汚しちゃったりしたら……」

「気にするな。会社の貸出だからいくら汚そうと、解れさせようと会社負担だ」

そう宥めたものの

やよいちゃんはやはり不安そうに頷く

会社負担だとしても……というより

会社にも負担はかけたくない。というものなのだろうな

……私のせいでかなりの負担がかかっているというのに


「ククッ、やよいちゃんはブランドに疎いな」

「え?」

「それは全部偽ブランド。実際は18000円程度だ」

偽ブランドだという嘘

18万を1万8000円という嘘

それはやよいちゃんの為だったのだが……

「それでも高いですよ。それを安く言える黒井さんは凄いなーって」

「いずれやよいちゃん達もそうなれるはずだ。そのためにも、今日は勝て」

「はいっ!」

やよいちゃんが嬉しそうに答えた時だった――

「楽しそうね高槻さん……まぁ、どうでも良いですけれど」

春香ちゃんの親友であり

やよいちゃんの良き仲間であり

私の罪が生み出した悲哀の歌姫であり

今日戦う相手でもある

如月千早が私たちの前に立ち塞がった


「わ、私のことが分かるんですか?」

「容姿を変えても貴女の独特な声は変わっていないのよ。貴女でも判るわよね」

「あははっ、たしかにそうかも。やよいの元気な声って特別だもんね」

如月千早の冷徹な瞳に対し

春香ちゃんは微笑みと共に言葉を返したが

如月千早は一切表情を変えずに口を開く

「貴女が否定した私の歌はここまで来たわ」

「知ってるよ。いっつも聴いてるから。ラジオでも、テレビでも……CDでも聴いてるから」

「否定していたのに?」

「聴いてるからこそ否定できるんだよ。聴いてなかったら千早ちゃんの歌が悲しいなんて言わないよ」

「……それもそうね」

「千早ちゃんの質問に1つ答えたから私の質問にも答えてよ」

「…………………」

「私達のこと……好き? 嫌い?」

「…………それを聞いてどうするの?」

如月千早が無表情に質問を重ねる中で

春香ちゃんはいつもの笑顔を振りまき

やよいちゃんを一瞥してから答えた

「返答しだいでは嬉し――」

「大嫌いよ。春香も、高槻さんも、貴女達の歌も……大嫌い」


春香ちゃんの言葉を遮ったのは

拒絶のような言葉だった……にも関わらず――

「――そっか」

「っ!」

如月千早の返答への囁き程度の言葉

それに引き出された表情は予想していなかったのだろう

流石に驚きを隠しきれず、表情を歪めた

「春香さん……?」

「ありがと。名前で呼んでくれて」

「……………………」

――春香ちゃんは笑う

大嫌いと言われた事なんて気にも止めず

名前で呼ばれたというたったそれだけのことで

春香ちゃんは嬉しそうに、幸せそうに、笑っていた


「それだけ聞ければ十分だよ。千早ちゃんはまだ私が知ってる千早ちゃんだって解ったから」

「……………………」

「……………………」

春香ちゃんと如月千早が見つめ合い

やがて春香ちゃんが口を開いた

「あとは歌で話そう」

「……言うようになったわね。貴女」

如月千早は呆れたかのようにそう言って

私達に背を向ける

「歌を歌ってる時に厳しいかもしれないですけど……聴いて下さいね!」

「千早ちゃん、アイドルがどれだけ大切なことかってことを教えてあげるよ!」

その背中に春香ちゃんたちは言い放つ……が

如月千早の反応はなく

そのまま去っていってしまった


それから暫くして

ファンなども会場に集まってくる中

出場する予定のないジュピター含めて

私達は会場の裏方に集まってきていた

「わぁっ……私が最後に経験したライブの10割以上増し増しの来場者数ですよ!」

「はわっ! こんな一杯のお客さんの前で歌うのは緊張します……」

「だらしねぇぞ。天海」

「そう言われてもなぁ……ほら、こんな人数だとは思ってなかったわけだし」

春香ちゃんはそう言って笑いながら

自分の頭を撫でる

元々春香ちゃん達にはファンが多かったが

それに如月千早のファンが合わさった挙句

今回の不正騒動で記者やらなんやらの数も増え

別にファンではないけど面白そうだから……という

野次馬に近い人も加わって、過去最高の来場者数となっていた


「……後悔だけはするなよ?」

「うん。解ってる。勝ちに行く、でも私達のやり方は絶対に損なわない」

「春香さんやる気に満ち溢れてるね」

「おそらくなにか聞かれると思うけどそこらへんの考えはあるのかい?」

「一応考えてあります。ここで言っちゃうとなんかダメになっちゃいそうなので言えませんけど。きっと大丈夫」

春香ちゃんはそう言って笑いながら

冬馬、北斗、翔太、やよいちゃん、そして私の順に見渡し、口を開いた

「ねぇ……円陣組もうよ」

「うっうーっ! 賛成ですー!」

「はぁ?」

「いーんじゃない?」

「冬馬。大事な一戦の前なんだから協力してあげても良いんじゃないか?」

「ったく……能天気なやつらだな」

冬馬は悪態を付きながらも

春香ちゃん達が手を出す場所へと手を伸ばす

なんだかんだ言いながらも付き合う辺り、悪く思っているわけではないようだな


「おいおっさん」

「社長」

「黒ちゃん」

「黒井さん」

冬馬達が私のことを呼び

春香ちゃんとやよいちゃんの間が一人分の隙間を生む

「ほらっ、円陣ですよ。円陣!」

「…………………」

なぜこんなことをしなければいけないのか

いつもなら思うその疑問はなく

私は素直にその流れに従い、一番上に手を置く

「ファイトーッ」

「「「「「オーッ!」」」」」

春香ちゃんに続いて皆が声を上げる

まぁ……流石にそこまでは私はやらなかったが

春香ちゃんは満足そうに微笑んだ


961プロに関わるすべての人の命運を背負う春香ちゃんは

緊張している様子はない

強がっているのかもしれないが

その笑みはこわばっている感じもない

つまり……春香ちゃんは重圧を重圧としていなかった

「……緊張しないのか?」

「しないわけないじゃないですか」

気になって訊ねた私への答えは

言葉とは裏腹に全く緊張を感じ取れなかった

「じゃぁなぜ平然としていられる」

「信じてくれる人がいるからですよ」

春香ちゃんは私のことを見つめて微笑む


「信じて貰えると嬉しいんですよ。だから、信じてくれる人には信じて良かったって喜びをあげたいんです」

「……………………」

「その為なら……私は緊張なんて投げ飛ばしちゃいますよ」

えっへんっと

得意げに笑いながら、春香ちゃんは私の横を通り過ぎて

戦いの幕を上げるための道を、春香ちゃんは進んでいく

その背中に対し、

本来言おうと思っていた言葉を心の中にしまいこみ、代わりの言葉を言い放つ

「春香ちゃん、不正を疑われるほどの圧倒的実力差を見せつけてこい!」

「はいっ!」

その強気な声は春香ちゃん達の登場による入場者たちの声によって

すぐに掻き消える

「――信じているぞ。春香ちゃん」

かすかな言葉を残し、私はその場を後にした


人々がひしめき合う観客席

その中の一角に……奴はいた

「ご無沙汰してますなぁ。旦那」

「……恩を仇で返されるとは思わなかったぞ」

「へっへっへ、あっしは悪徳。相手の評価を下げる記事しか書けないもんでねぇ?」

「だが、今回はどうだろうな」

余裕綽々といった感じの悪徳又一に対し

私も余裕を見せつつ、舞台に上がった春香ちゃんを眺めた

「それじゃぁ見せて貰うとしましょうかねぇ? その自信が崩れるところを」

「歌が始まる前に一つだけよろしいですか!」

あらかじめ決まっていたのだろう

記者の一人が大きく手を挙げ、春香ちゃんへと質問を投げかけた

「不正しているというのは本当ですか!? 今回のフェスも不正しているんじゃないんですか!?」


不正記事が本当か嘘かを聞いておきながら

今回も不正しているのでは? なんて……ふざけた質問だ

「中々いい質問いたしますねぇ? 旦那」

「………………」

春香ちゃんは質問されても大丈夫と言っていた

だから今はそれを信じる

そう強く決めた私は

ざわつく観客、答えを待つ報道陣、挑発してくる悪徳

その何ものにも何も言わず、ただ春香ちゃんのアクションを待つ――そして

『私達は実力でここまで来たと思っています』

春香ちゃんの声がスピーカーから響く

『だから、私は歌を歌います。ダンスを見せます……だから――』

春香ちゃんの言葉に興味を示す全ての瞳に

その満面の笑みが映る

窮地に立たされているということを全く悟らせない

不正しているのかどうかという嫌な質問への怒りなども一切感じさせない

そんな表情で――言い放つ

『歌を聴いて、ダンスを見て……今までが不正だったかどうか。みんなが決めてください!』


『聞いてくれる。見てくれる。全ての人が審査員だって私は思うから!』

ざわついていた会場が静まり返り

春香ちゃんの声がやまびこのように響き

そしてさらに……続けた

『記者さんも、不正を疑う全ての人達も、不正を信じずに私を信じてくれる人達も。それで良いよね?』

「……あ、ありがとうございました」

失礼な質問をぶつけた記者は小さく答えを返す

あの言葉に反論なんてできるはずがない

ふざけるな、意味がわからない

そんな野次さえ……あれには不可能だ

「旦那も凄いことを言わせますなぁ……流石のあっしも――」

「あれは春香ちゃん自身で考えた答えだ」

「じ、自分であんな馬鹿げたこと言ったって言うんですかい!?」


「とんでもねぇ……あんなのは自分で自分の首を絞めてるようなものですぜ?」

「………………」

それは春香ちゃんも解っているはずだ

解った上で……あんなこと言ったんだ

だったら私は……

「黙って聞け」

「はい?」

「春香ちゃんの歌を聞けば全部わかる。ダンスを見れば全部わかる……この問題に言葉は要らん」

「……そうですねぇ。どれだけ素晴らしいものか見せて貰いましょうかねぇ」

悪徳は嫌な笑いを浮かべるが

それは無視して春香ちゃんを見つめる

流れ始めるメロディーに合わせて春香ちゃんとやよいちゃんが動き出す

それとほとんど同じくして、如月千早のステージの方からも音楽が流れ始めた

寝落ちかな?

ちーちゃんはよくハイライト落とすなー(白目)
ハイライトがないと一番怖いのはちーちゃんだよな
このままだと次スレプラグ成立かな?


如月千早の感情のこもった曲は

かなり素晴らしいものだったし

如月千早の歌の表現力はかなり高かった

しかし……

みんなの目は、耳は、足は

すべてが春香ちゃん達へと向いていた

春香ちゃん達の楽しそうな表情、嬉しそうで、幸せそうな笑顔

それに合わせているかのように曲は明るく、元気に響き

ダンスや歌が、春香ちゃん達が思い、感じる楽しさや嬉しさを

会場のみんな――

不正している汚いアイドルというレッテルを貼っていた人達

不正しているか否かにしか興味がないような報道陣

不正なんかしていないと信じてくれている人達へと送り届けていき

それはいつしか

春香ちゃん達の歌、春香ちゃん達のダンスではなく

その場にいる全ての人の歌。すべての人のダンスとなっていく


「っ……こりゃぁ一体――」

曲が終わったあとの

大勢の観客――いや、参加者たちの熱狂が

悪徳の声をかき消す

「……………………」

『みんなーありがとー!! 遠くの人も、近くの人もちゃんと見えてるよー! ちゃんと聞こえてるよー!』

いつだったか

春香ちゃんは審査員も楽しませるべきというようなことを言っていた

それは

審査員を審査員としてではなく

いち観客として見ているからだったのだな……

見る人聞く人すべてが審査員であり、それはつまり観客でもある

「……不正を覆す実力。か」

この場にいるすべての人々に不正を働くことなど不可能で

その全ての人が春香ちゃんの歌とダンスに魅了されていた……ともなれば

認めざるを得ない

圧倒的な実力というものを……な


アンコールの声が鳴り響くステージの裏手で

私はまた、春香ちゃんと話していた

「……勝利は確実だった。だと?」

「えへへ……まぁ、千早ちゃんの歌があの歌である以上、ファンを盛り上がらせることは出来ませんから」

「それを利用したというのか……おまえは」

「私はこういう楽しい曲しかなくて、千早ちゃんは悲しい曲しかなかった。それだけのことだったと思いますよ」

春香ちゃんは少し悲しそうに笑うと

気づいてました? と、切り出した

「なにを?」

「途中から千早ちゃんの歌が止まっていたことですよ」

「……ああ」

「……伝わったのかな。歌は誰かを笑顔にするためのものだってこと」


「失恋ソングだって、あれは前を向かせるためのものであって俯かせるためのもじゃないんですし」

「……そうだな」

「だから、千早ちゃんの歌と千早ちゃんの感情は一番合わさっちゃいけないものだったんですよ」

悲しい曲に悲しい気持ちを合わせれば

悲しさだけが溢れるばかりで

一向に前向きになどなれない

だが、最初こそ悲しく歌えど

次第に元気良さを取り入れていけば

前を向かせるための曲へと変わる

「春香さーん! そろそろ行かないとダメだって」

「解ったー! ……それじゃぁ行ってきますね。アンコール」

「ああ、行ってこい」

春香ちゃん達のアンコールはやはり大盛況で

不正疑惑なんていうものを軽々しく吹き飛ばして終わりを迎えた。が

765プロと961プロの話はまだ終わってはいなかった


ここまで


申し訳ないけど、次スレいっても10レス程度になりそうだから

このスレで終わらせたいのでレスはなしでお願いします


……こう言いつつ終わらずに次スレ行ったらごめん


「春香ちゃん! やよいちゃん!」

「雪歩……それにみんなも。わざわざ残っててくれたの?」

「春香達を生で見るのは久しぶりだったし……まぁ、話があるからなんだけどな」

「話?」

「とりあえずおめでとう。凄かったわ。まさかあんた達があそこまで成長するなんて思ってなかった」

「伊織に褒めて貰えるなんて……結構嬉しいかも」

春香ちゃんと765プロのアイドルたちが

他愛もない話で笑い合う

この場にいるのは我那覇響、水瀬伊織、菊地真、萩原雪歩

四条貴音、双海真美、双海亜美、三浦あずさ、秋月律子の9人で

プロデューサー、星井美希、如月千早、高木の4人の姿はなかった

「そういえば千早ちゃんは?」

「そのことで色々とあってね。今は美希達が千早と話してるのよ」

「千早さん……大丈夫なんですか?」

「そうねぇ……きっと大丈夫よ。美希ちゃんの千早ちゃんを思う気持ちは今ならきっと伝わるはずだもの」

三浦あずさはのんびりとした口調で答えながら

不安そうなやよいちゃんの頭を撫でる


「そだねー、きっと大丈夫っしょ」

「はるるんの歌、千早お姉ちゃんに大ダメージぽかったけどね」

「だ、大ダメージ?」

「ええ、千早は見失っていた道を見つけたのです。それと今との差に少し……罪悪感を感じてしまったようですが」

四条貴音は嬉しそうに微笑む

私のことはいいのか……?

不正疑惑についていうことはないのか?

そう訊ねようとしたのに気づいたのか

四条貴音は私の方を見て微笑んだ

「黒井殿。わたくしはあの記事について言うことはありません。春香の実力を見せて戴きましたからね」

「自分もだぞ。黒井社長のアイドルの方向性とは合わなくて辞めちゃったけど……今の黒井社長なら着いていけそうだしな」

「……そうか」

元961プロダクション

四条貴音、我那覇響は笑顔で言う

私の指示は厳しく、辛く、苦しいものであっただろうに……


「え? 響961プロに戻るの?」

「ひびきんまた移籍しちゃうのー!?」

「歓迎しますよー? 響さん!」

「そ、そうじゃなくて! 今の黒井社長なら移籍してなかったってだけだぞ」

765プロアイドルたちの緊張感のない会話は

如月千早の件が確実に上手く行くという信頼の表れのようにも感じたりして……やがて

彼女達がやってきた

星井美希と並んで如月千早が俯きながらも歩き

その後ろをプロデューサーと高木が歩く

「来たか」

「……千早ちゃん」

春香ちゃんは珍しく不安そうに呟く

でも、如月千早から目を離すことはない

段々と近づく傷つけた親友の姿を見据えて

自分の手をぎゅっと握り締めた

「……不安か?」

「……ちょっとだけ、ですけどね」

春香ちゃんは私を一瞥して苦笑し

如月千早と正面から向かい合った


「……千早ちゃん。私の気持ち、伝わった?」

「……春香」

如月千早はスケッチブックのようなものを大事そうに抱き抱えながら

春香ちゃんのことを見上げる

その瞳にはフェスの前の強い色はなく

表情も……感情を露わにしていた

「千早ちゃんはなんで歌を歌うことが好きになったの? 大事なことに、なったの?」

「……弟が泣いていても私が歌えば笑ってくれた。笑顔を見せてくれた……っ」

如月千早が涙をこぼす

弟を失ったということの涙か

その弟への申し訳無さの涙か

春香ちゃんは何かを察して黙り込む

「だから私は……歌を歌っていたはずなのに……」

「……仕方ないよ。千早ちゃんだって苦しかったんだから、悲しかったんだから、辛かったんだから」

「春――!」

如月千早が何かを言う前に

その体を春香ちゃんは抱きしめた


「私じゃ力不足だったかな……弟くんにとっての千早ちゃんという役割は」

「そんなことっ……」

「そっか……じゃぁ、笑おう? 泣かないで、笑顔を見せてよ」

春香ちゃんはそう言いながら如月千早の体を離し

その顔を目の前で合わせて……笑う

「春香……」

「ね? それでまた……歌おう? 今度はまた、誰かを笑顔にするために」

「っ……良いの? 私、みんなに酷いこと……貴女にだって酷いこと……」

「春香ちゃんは少なくとも気にはしない。それは私が絶対だと言わせて貰おう」

「ミキ達だって気にしないよ? だって……仲間だもん!」

私の言葉に続いて星井美希が声高に言い放ち

ほかのアイドルたちは、口々に思いを述べる

「喧嘩もするし、悪戯だってするけど亜美達は仲良いもんねー」

「そうよ。あんなの反抗期みたいなものだわ」

「だから遠慮なく戻ってきなさいよ」

「みな……貴女の帰りを待ってるのですよ。千早」


「っ……ごめ」

「違うだろ。千早、ボク達は謝って欲しいわけじゃないんだから」

「……そう、ね」

如月千早はそう言って大きく深呼吸をして

意を決したのか目を閉じて――

「ありがとう、みんな……ただいま」

如月千早の涙が混じる笑顔にみんなが笑顔を向ける

765プロの問題はこれで解決……だろうな

まぁ、まだまだ活躍をしていかなければいけないわけだが

「ふんっ……私達は誰が相手だろうと捻り潰す。浮かれていると危ないぞ。765プロ」

「黒井……」

「プライベートではあれだけど、アイドルとしては敵だから……頑張ってなんて言わないからね」

「もちろんなの!」

「プライベートでならいつでも私のおうちに来てくださーい! 私のおうちでは敵も味方もありませんから!」

やよいちゃんの言葉を別れとして

私に対する罵倒……ではなく、私達への765プロの声援を背中に受けながら

私達はその場から立ち去った


その帰りの車内

やよいちゃんやジュピターとも別れ

あとは春香ちゃんを送るだけとなっていて

それももう、駅に着きありがとうございましたで終わるはずだったのだが……

「帰らないのか?」

「帰りますよ。でも、まだ時間はありますし」

春香ちゃんはそう言いながら

座席に深々と座り込み、体を伸ばして口を開く

「……黒井さん」

「なんだ?」

「信じた心は……報われました?」

「ふっ……そんなこと聞くまでもないだろう」

「えへへ……そうですね。それじゃ、また明日!」

「ああ」

素っ気無くそう返した私の目の前で

春香ちゃんはドアを開け、車から降りて――

「春香ちゃん」

行く前に、私は春香ちゃんを呼び止めた


「はい?」

「そのだな……一度しか言わんぞ」

「なんですか? 改まって」

今まで別の表現などでは言いつつも

一度も言うことはなかった言葉があった

それは、春香ちゃんに対して一番言うべき言葉

「――ありがとう」

「!」

春香ちゃんは驚いていたが、いつものように茶化してくるのかと思ったが

予想を裏切って照れくさそうに頬を掻きながら、春香ちゃんははにかむと

「えへへっ……ど、どういたしまして!」

春香ちゃんはそう言って逃げるように駅へと走っていく

これからもずっと……私は春香ちゃん達と共にあれるのかどうか

それはわからない……だが

そうありたいと思う。思うからこそ、手を尽くす

もちろん

不正という脆い足場ではなく、努力という強靭な足場を積み重ねて行くために手を尽くす

そう固く決意して――私は車を走らせた

                             ~黒井更正編END~

おつー、良くぞ書ききってくださった

しかし春香も来るところまで来た感じだなぁ・・・
大それたことやり遂げても盛ってる感じがしなくなった


というわけで、この


黒井「961プロの天海春香だ」は終わりです


更正編とか言ってるけど
長編とかもうあまりやりたくはないので

多分続きません

こんなにだらだらと続いて申し訳ない
読んでくれた人、応援してくれた人、ありがとう


ではまた、ほかのはるるんSSで


素晴らしいSSだった

おっつん

乙!
すごく面白かったよ!!

乙でした
また、どこかで


本当に素晴らしかった

盛大に乙!

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