アイドルマスター・シンデレラガールズより白菊ほたるちゃんのSSです。
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不幸体質──幼い頃からの少女のそれは、自身ではなく周りに振り撒かれるものだった。
友達が病気に見舞われる、唐突に怪我を負う。両親の勤め先が経営不振になる、転職に追いやられる…。
いつしかその体質を自覚した少女は、それを払拭すべく皆を幸せにできる存在……アイドルを夢見て上京した。
娘の体質を気にしつつもそれを克服してほしいと願う両親は、その夢を応援しようとした。
自分ではどうしようもない『不幸』を振り撒いてしまう少女は、
それでもその境遇に諦観することだけはせず笑顔を忘れないように努める。
…決して経営の不安定なプロダクションではなかった。
けれど、少女がスカウトされた先々は突如仕事の依頼が減り、結果倒産に追い込まれていく。
迷信染みた体質はひた隠し、その罪悪感に苛まれながらもアイドルを目指し続ける。
『…済まない…このプロダクションも今日までだ』
そうして何度目かのその言葉。
ファンを笑顔にするハズだった少女…白菊ほたるは、
いつしか自分すら笑顔になれなくなっていた。
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「………………」
午前に寮へ挨拶に向かい、キャリーバッグに纏まるだけの私物を手にプロダクションを後にする。少女を見初め最後までサポートしてくれたプロデューサーは、別れの際で少女の行く先の成功を願ってくれた。
−……また…最後まで言えなかった…
郊外の公園。ベンチに腰掛け、ほの暗い曇り空を見上げる。
今後のことを考えなければいけないが、何もまとまりそうにない。
今まで所属してきた会社は全て無くなった。そんな『疫病神』の過去を口にすれば、スカウトすらしてもらえない…
その葛藤を何度もし、その度にアイドルを目指して逆境に抗おうとした。結果が、この有り様だった。
−…やっぱり…無理だったのかな…。ここに来て…また私に関わった人を不幸にしただけ……
同年代では飛び抜けたもので、その都度スカウトされた事からも少女の容姿は確かな愛らしさ。
けれど今その顔は、13とは思えないほど暗いものになっている。鈍色の空がよく似合っていた。
−……帰ろう…。きっと私はもう、誰とも関わらない方がいいんだ…──
『にょわー』ヒョコッ
「っ!?」
曇天の中、視界の端から入り込んできた…女の子。驚くほたるの顔をしげしげと見下ろしている。
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