凛「オフタイム」 (39)


即興。モバやってたら書きたくなったので。
頑張って最後まで行きたいと思います。
では投下していきます。

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朝。時計のアラームが耳元で鳴り響いている。

凛「…うるさい」パシッ

凛「…今日は…オフ、だよね、ふわぁ…」

欠伸をしながら、携帯を開く。皆がスマホに変えていく中、
私はまだガラケーのままで、奈緒にも馬鹿にされた。

変えない理由はもちろんある。
待ち受け画面から特定のキーを長押しすると…

凛「…えへへ///」

切り替わる画面、映る私とプロデューサーの2ショット。
いつだったか、ライブが成功したご褒美に、と無理を言って撮らせてもらったものだ。
…プロデューサーの顔が満更でもなさそうなのは、私の見間違いかな?

「りーんー!起きなさーい!」

どれくらいの間見ていたのか分からないけれど、
痺れを切らしたのか、お母さんが階下から声を掛けてきた。

凛「はーい、今行く」

そういえば今日は両親が出掛けるらしい。
結構有名になった娘に店番をやらせる気かな?…そんな訳

「じゃ、出掛けるから店番よろしく」


凛「はぁ…。まさか店番なんて…」

オフと聞いたときから、今日は宿題をやろう、とか
この間の衣装案を自分なりに考えてみよう、とか

凛「やることはいっぱい考えたのになぁ…」

溜息、今日で…今日の朝だけで…何度目だろう。

凛「プロデューサーにも、会いたかったなぁ」

プロデューサー、プロデューサー。
思い出すと、変な出会い方だったなぁ。

凛「ふふっ…」

あれは友達と遊びに行ったときで…考えてみると、あれもオフタイム、って言えるのかな。
原宿だったっけ?…あぁそうだ、服を買いに、行きつけのお店まで行こうとしてー…。


P「あの!君、アイドルとか興味ない?」
凛「…は?」

道の真ん中で声を掛けられて、私はつい邪険に返してしまった。
でも私に声を掛けて来た人は、そんなのお構いなしのようで。矢継ぎ早に言葉を続けてきた。

P「君なら…君ならなれる!トップアイドルに!…っと、いきなりでごめん。これ、名刺」


渡された名刺を、友達と覗き込む。そこには…。


凛「シンデレラプロダクション、プロデューサー…本当なんだ」

凄い凄い!友達は自分のことのようにはしゃいでいるけれど、
私はどうも信じられなかった。

アイドル。

女の子の夢。

その中からこの…プロデューサーが言う、「トップアイドル」になる人は、
きっと、ほんの僅かなんだろうなと考える。

P「君、大丈b「私に」

凛「私に、なれると思ってんの?トップアイドルに」

なので、素直にぶつけてみた。今まで何かに一生懸命になった事もないし、
それに、なんだか…。なんだか、この人なら、って思えたから。

P「…あぁ!」

だから、この自信満々に頷くプロデューサーを見て、私はー…。

私は、ほんの軽い気持ちでー…アイドルを、トップアイドルを、目指し始めた。


ルキトレ「はい!1、2!1、2!」
凛「…ッ、…ッ!」

正直なところ、最初は後悔していた。
アイドルといえば、明るいステージ、照らされるスポットライト。
テレビにCM、それにCD。

とにかく華やかなイメージだった。

ルキトレ「はい、一回休憩にしましょう」

ので。

凛「まさか基礎の基礎からやるなんて思わなかったよ…」

今日はダンスレッスン。最初の1時間は、まさに基礎だった。腹筋に腕立て、スクワット。
体力が足らないのなんて分かってはいたけれど、まさかここまでとは思わなかった。

ルキトレ「あはは、すいません。でも凄いですね!まだ2回目なのに、大分付いてこれるように」

凛「うん、ありがとう。でも、初めてのオーディション、だからね」




そう、初めてのオーディション。
入って二ヶ月の私に、イキナリ過ぎないか?なんて思ったけれど、

P「凛なら大丈夫だから!」

の一言で押し切られた。事務員のちひろさんと話したのだけれど、
プロデューサーさんには不確かな自信が漲っているって思う。

私がそのオーディションに参加することになったのも、その自信に当てられたのかな?

凛「それにしても…疲れた」
P「お疲れ様、凛」
凛「あ、プロデューサー」

良い出来だったぞ。あと一ヶ月に少し。頑張って行こうな!

プロデューサーがそう言いながら、私の頭を撫でてくる。

くすぐったいよ。

凛「レッスン直後なんだけど…汗、かいてるよ」
P「あはは、気にしないよ」

顔が赤くなっていくのがわかる。
くすぐったい。心が、くすぐったい。
ルキトレさんに助けを求めようとして、視線が泳ぐ。…いない。

いままで一回もこんなことなかったから、私はどうしたらいいかわからなくて、つい。

凛「…っ!やめてっ、てば」

P「あ…すまん」

突き放して、しまった。


風邪引かないうちに、着替えておけよ。
プロデューサーはそう言って、そそくさと出て行ってしまった。

凛「ばか…。私の、ばか…」

最悪だ。最悪だ。私の事を信じて、トップアイドルにって、言ってくれたのに。
もしかしたらこのオーディションが、その第一歩なのかもしれないのに。

凛「…はぁ…」

なんだかどっと疲れてしまった。
プロデューサーと話をしていたあの瞬間は、疲れも感じなかったのに。

凛「…もういっかい、会いたいな」

P「誰にだ?」

プロデューサーに決まって…る…?

凛「プロデューサー?何で…」
P「何で、って…」

もう遅いのに、電気ついてたからさ。その…心配で。

たったその一言で、私の体はまた疲れを感じなくなった。
我ながら都合の良い体だなぁ…ふふ。

凛「ありがと。…ね、プロデューサー」
P「どうした?」

凛「私、頑張るよ」


「私、頑張るよ」


「合格はー…」


「凛!」


「プロデューサー…!私!」


「あぁ!おめでとう、凛!」


オーディションには、無事受かった。結構有名なアーティストのPVへの出演。
たった一枠の為に、数千というアイドルが努力したんだろう。
私がその一枠を手に入れたと思うと、改めて嬉しかった。

なにより。

P「やったな!俺の目に狂いはなかった!ここからトップアイドル一直線だ!」

凛「もう、はしゃぎすぎだよ、プロデューサー」

誰より。

P「そうは言ってもな…まるで自分のことのように嬉しいんだ」

凛「…私も」

プロデューサーが喜んでくれるのが、嬉しかった。


P「さ、凛。頑張ろうな」
凛「ん、うん…」

そして数日後、PVの撮影が始まったのだが、私は不安だった。
見渡せばカメラ、カメラ、スタッフさん、プロデューサー、スタッフさん…。
周りが皆敵に見えた。味方は…プロデューサーだけ。

しかも。

「君が僕の相手?…ま、中々可愛いじゃん」

凛「は、はぁ…」

今回のPV、年上の男性に恋をする女の子をモチーフにしているため、相手役がいる。
そしてその相手役は、顔だけ良いと有名な男だった。
悪い噂は凛が芸能界に入る前から聞いている。

凛「…こんなんと撮るの?」
P「相手も一応はベテランだしな…我慢してくれ」

そう言われたら我慢するしかないのに。

私の文句はプロデューサーに届かないまま、撮影は進んでいった。
そして私の一番懸念していたシーンに入る。

「はい次、キスシーンです」



眠気が限界なのでここで区切ります。また明日。
落ちませんよ…ね?どうしたら落ちるのかよくわかっていないので


P「…」
凛「…」

キスシーン。PVのサビ部分に当たる大事なシーンらしい。
だからこそこのシーンはリアルに撮りたいそうだ。

撮影でわかった監督の性格はまさに頑固。
納得のいかないものは作りたくない!…なんて感じだった。

でも、だからといってー…。

凛「本当にするなんて、無理だよ…」

P「だよなぁ…俺もそう思う」

凛P「「どうしよう…」」

監督へ講義すれば良いのだろうが、私は駆け出し、
プロデューサーもこの世界じゃまだまだみたいで、そんなこと出来ないみたい。

凛「私のファーストキスが配信されるなんて…」
P「え、はじめてなのか?」

凛「皆そう言うけど、私男と付き合ったことないし。キスなんてしたことないよ」
P「…」

ここまで話すと、プロデューサーは最初意外そうにしていた顔を俯かせて、
何か考え込み始めた。

P「ちょっと…ちょっと、監督のところに行ってくる」

そして、こう言った。何を言ったってあの顔だけとのキスは免れないんだろうな、って
私は走って行くプロデューサーを見つめていた。

凛「…プロデューサー…」


「そんなにプロデューサーがいいのか?」

凛「へ?」

声を掛けてきたのはあの顔だけだった。
ここで私が素直に答えたらどうなるかなんて予測は出来るけれど、
嘘をつくのは良くないと思う。

凛「全く知らない人よりは、いいです」
「全くって…俺の名前も?」
凛「知りません」

ここは素直に答えておいた。
この話をプロデューサーにしたときは思い切り怒られたけれど。

P「おーい、凛!…あ、どうも」
「あぁ、どうも。…俺、体調が悪いんで帰ります。監督には俺が言っておくので。んじゃ」

凛P「「…え?」」
「帰ります。俺、この子無理なんで」

「あ、そうそう」

「キスシーンの相手は、身近な年上の男性」

「頑張れ」

P「頑張れ…って」
凛「さ、さぁ…何のことだろうね///」

「渋谷さん、渋谷さんのプロデューサーさん、集まってください」

P「…なんだ?とにかく行くぞ、凛」
凛「う、うん」


P「キャストの変更、ですか」

私とプロデューサーは監督と話をしていた。きっとさっきの事が理由だろう。

監督「あぁ…うちの若いのが逃げ出してね。すまないが、今回のPV撮影は…延期…いや」
そこまで言って監督さんは思いついたようにプロデューサーに言った。

監督「君、相手役をやってみないか」

P「…はい?」


「一旦休憩でーす」

P「はぁ…疲れた」
凛「お疲れさま、プロデューサー」

結局あの後、監督さんに押し切られ、プロデューサーの緊急出演が決定した。
プロデューサー曰く、

「小学校の学芸会以来だよ、演技なんて」

だそうだ。でも、私からすればプロデューサーは、お父さん以外の男性な訳で。
知らない男とキスするくらいなら、プロデューサーとの方が嬉しい。

と言うと。

P「な、なんだか嬉しいような恥ずかしいような…」

って、顔を赤くしながら言っている。
私だって顔から火が出そうだよ。

凛「えっと…次、キスシーンだけど…どうす、る?」
P「そりゃ…ふりをする、さ」

意気地なし。言いかけて、やめておく。

凛「アイドルとプロデューサーの恋愛はご法度、かぁ」
P「…ん?どうした」

凛「なんでもないよ。…それよりさっき、監督のところに何しに行ったの?」
P「あぁ、いや…なんとかキスシーンだけ外せないか、相談に」

凛「なんだ、そんなこと?」
P「そんなことって、凛…」

凛「私は」
P「…凛?」

凛「…ううん、なんでもない」

どうやら私も意気地なしみたいだから。

「キスシーンtake2、準備お願いします」


カメラが動きだす。PVは私がメインで映っていくので、プロデューサーの顔は出ないらしいが
キスシーンはさすがに映りこんでしまう。
プロデューサーが出てしまったらさすがに不味いので、アングルを変更することになった。

P「俺が自分の頭で凛を隠すように…それでいてキスしているように、か」
凛「なんだか本当にキスするみたいだね」

ばか、冗談はよせよ。本気にするぞ?
プロデューサーは悪い顔しながらこっちを見てる。本気じゃないことなんてわかってる。

凛「いいもん、私からしちゃうから」
P「おいおい…冗談だよな?」

凛「なんで?」
凛「なんで、冗談だと思うの?」

P「だって俺は、お前のプロデューサーで…」

凛「…ばか」



「よーい、スタート!」



事務所の一角で、私とプロデューサーは向かい合っている。
お互いの距離は半歩とないくらい近い。私はプロデューサーの胸元、顎の下に頭を入れて
プロデューサーを見上げている。

恐らく映るのはこの部分だけで、プロデューサーの困惑した顔はカメラに映らない。
だからこの…照れたような、焦っているような顔を、私は忘れない。

「好きです」

「ー…」

そっと胸板に手を置いて、言葉にする。異性に送る初めての愛の言葉。
プロデューサーも台本どおりの答えをして、そして、私の頬に手を添える。

やがて意を決したように、プロデューサーの顔が近づく。
でもそれは、途中で止まって、私の耳元へ。そしてー…。

P「ー…凛。まだ、答えられないけれど。いつか、きっとー…」

キス。


「オッケーでーす」


帰り道の車内。プロデューサーが事務所まで送ってくれるのだが、いつもと違って
私はブランケットを頭まですっぽり被って横になっていた。

凛(どどどどうしよう…ほ、ほんとうにしちゃった…)

あの時。私はプロデューサーの言葉を聴いて、何を思ったか、本当にー…。

凛(うぅ…も、もうまともにプロデューサーの顔見れない…)

心臓はまだ落ち着きを見せない。それどころか狭い車内で、聞こえてしまってるんじゃないかと心配になる。

凛(そ、それに、あの時ー…)

P「ー…凛。まだ、答えられないけれど。いつか、きっとー…」

凛(あの時ー…あれは、私の気持ちに、気付いてくれたのかな…?)

いつからこんな感情を抱くようになってしまったのか、わからない。

プロデューサーと話をしているときが一番幸せに思える。

プロデューサーとちひろさんが話していると、胸が痛い。

私だけを見て欲しい。

凛(…嫌な女)

そっと唇に指を滑らせる。

凛(プロデューサー…)

P「…寝たかな」

凛(!)

P「言えないよな、まさか一目惚れしたからスカウトした、なんて。
  トップアイドルになれると本当に思ったからこそでもあるけれどー…」

P「やっぱり、凛は可愛いな」

P「側にいるよ、凛。PVだと2人は辛い別れをしたけれど、俺は凛の側にいる。
  凛が、俺を必要としなくなるまで、な」

凛(…ばか、起きれないよ、もう)


PVの撮影から一週間が経って、公開された。
私とちひろさんは一緒にパソコンの画面を覗き込んでいる。

ちひろ「あ、ここですね、凛ちゃんとプロデューサーさんのキスシーン!」
凛「うん。ほら、プロデューサー耳まで真っ赤だよ」

ちひろ「本当だ…これを使えばスタドリが…」
凛「…?」

と、ちひろさんが何やら悪い顔をしはじめたところで

P「ただいま!凛!聞いて驚け!CDデビューが決まったぞ!」

プロデューサーが帰ってきた。CDデビュー、っていう大きなお土産を抱えて。
私達はその言葉を信じられないまま、ぽかんとしていた。

プロデューサーは静まり返った事務所で、やっぱりぽかんとしていた。

P「…あ、あれ?」



凛「Never say never…これが、私の」
P「あぁ!作曲家さん、素敵な歌を用意してくれたな!」

確かにその通りだった。ずっと強く、まっすぐに、あの場所へー…。
凛々しくて、格好良い、だけどなんだかー…こう…。

P「なんか、いいな、愛や夢に溢れる、なんて言えば良いんだろう」
凛「うん、わかる。なんか、いいよね」

私とプロデューサーはどうやら同意見のようだった。なんか、嬉しい。

P「よぉし!こうなったらボーカルレッスンだ!行くぞ、凛!」
凛「うん!プロデューサー、私、頑張るよ」

と、こうして私のCDデビューが決まった。
私はデビューまでに仕事をいくつかこなし、レッスンにも精をだした。
ここまでトントン拍子で成功していく事を、プロデューサーもちひろさんも喜んでくれた。

そして、何気ないある日のこと。


ベテトレ「どうだ、渋谷。今回のレッスン」

凛「はっ、はっ、はぁっ…」

トレ「どうだろう、姉さん。渋谷のステップアップを考えてみては?」

ベテトレ「うむ。そうだな、次回以降は私の元でレッスンを受けて貰う。いいな、渋谷」

凛「はぁっ、は、はい!」

すこぶる疲れた。姉妹とは考えられない程、レッスンのレベルが違う。
でも、私はそれに追いつかなければならない。
今よりもっと、高みへ。あの場所へ、トップアイドルの座へ。

ベテトレ「お疲れ様、渋谷。大分レッスンを延長してしまったが、大丈夫か?」
凛「はい、大丈夫、です」

とはいえ疲れた。一旦事務所へ寄って、それから帰ろう。

凛「お疲れ様でしたぁ…」

ー…事務所。

時刻はもう夜8時を廻ろうとしている。
いつもならもうとっくに帰っている時間だから、この時間でも事務所に電気がついていることに
私は驚きを隠せなかった。

凛「まだ、仕事してたんだ…。よ、いしょっと」
私は着替えの入ったバッグを抱えて、事務所への階段を上がり始めた。

事務所は二階にあるが、レッスンの疲れか、着くまでに時間がかかったように思える。

そして、事務所の前。少し開いた扉から声が聞こえてくる。
…プロデューサーの声、だ。

P「疲れたな…昨日からまともに寝ていないし、少し仮眠でも…」

凛「えっ…」

つい声が出てしまった。気付かれていないみたいだけれど、
私の為に…ここまで、頑張ってくれたなんて。

凛「しらな、かった」

情けない。私が成功していくその裏には、いつもプロデューサーがいた。
私の努力だけで何とかなる世界じゃないことは、わかっていたつもりなのに。

気が付くと私は事務所へと足を踏み入れていた。


凛「プロデューサー!」
P「うお!…なんだ凛か。驚いた」
凛「あ、ごめん…じゃなくて。昨日から寝てないって、ホント?」
P「あー…聞かれてたのか」

プロデューサーはばつが悪そうに頭を掻いている。
よく見ると目元には大きく隈が出来ていた。

凛「ばか…働きすぎだよ」
P「…ごめん」

否定しないあたり、本当に疲れているんだろう。

凛「私の、せい?」
P「凛、それは違う」
凛「だって…」

私は自分が嫌になっていた。
ここまで無理させるなんて思わなかった。
熱いものがこみ上げる、って、今この状況を言うのだろう。
視界がぼやける。見られたくなくて。俯いてしまう。

P「凛」

声が聞こえる。プロデューサーの。
収録終わりの疲れた私にかけるような柔らかい声で。

P「俺は、凛が輝くその姿を見ていたいんだ。…凛の、ずっと近いところで」

凛「…うん」

躊躇いがちに、プロデューサーが私の体に腕を回す。
暖かい。

凛(あぁ…やっぱり私はー…)

凛(プロデューサーが、好きなんだー…)


凛「プロデューサー、私、私、上手く出来たかな」
P「あぁ、完璧だ!聞こえるか、アンコール?皆みんな、凛のファンだぞ!」
凛「うん…うん!」

CDの初動売り上げは、私達の予想を大きく上回った。
週間オリコンチャート6位、3.3万枚。いきなりのこの売り上げに、
私とプロデューサーは喜びを隠せなかった。

PVに出た後も、いくつかの仕事をこなし、営業に精をだした結果だ!
プロデューサーはそう言っていたけれど、これは2人の努力の結晶だと思う。

そして、初のライブの話が舞い込んだ。


そこからはレッスン、レッスン、レッスン。
初めてのライブは武道館とかドームとかじゃ無いけれど、
私からすればとても大きな会場だった。

ファンの人数も順調に増えているみたいで、
プロデューサー曰く、今のアイドルランクはDだそうだ。
ファンレターも増えてきているように感じる。

そして、ライブ。
私なりの努力を重ねた日々が今こうして形になっている。
鳴り止まないアンコール。

凛「プロデューサー、行って来る」
P「あぁ、ファンの皆に顔見せて来い!」

もう一度ステージへ駆け出す。

「これなら、もうー…」

凛「みんな!アンコールありがとう!」


それから数ヶ月。ライブの効果もあってか、私宛の仕事も増え始めた。
また、このシンデレラプロダクションへ入りたいという声が大きくなり、
プロデューサーは新しく2人のアイドルが増えることを私に告げた。

島村卯月、本田未央。

初めて会ったときから、お互い年齢の近いこともあって、
すぐに仲良くなれた。もちろん、デビューは私のほうが早いけれど、
いつか三人で仕事をしよう、とプロデューサーを交えて話をしていた。

私は私で仕事も増え、いつからか、1人きりで仕事に向かうことも増えた。

凛「はぁ…」

こうなることはわかっていた。卯月も未央も、まだ駆け出し。
プロデューサーとの時間が多いのも仕方ない。

だけど。

凛「さみしいなぁ…」

P「どうかしたか、凛」
凛「あ、プロデューサー…」

聞こえてたんだ、と思ったけれど、ここは事務所の一角。
プロデューサーが帰ってきているとは思わなかった。

凛「聞こえ、たの?」
P「うん、まぁな」

優しいなぁ。疲れてるのに。

P「最近は島村と本田の2人ばっかりだったからな。すまん」
凛「ううん。平気。ごめんね、私、1人で大丈夫だからさ」

P「そうはいかない」
P「言ったろ?俺は凛の輝く姿を一番近くで見たいんだ。
  たまには凛の仕事に、一緒に行かせてくれよ。今日、グラビアだろ?」

凛「う、うん」

今日は午後からグラビア。三人もプロデュースしておいて
1人1人把握してるなんて、本当に凄いなぁ。



結局その後、私のプロデューサー同伴でのお仕事は大成功。

「赤面した表情」が良かった、っていうのはディレクターさんの言葉。

私としてはこの表情はプロデューサーがいないと出来ないので
撮影のときはついて来て貰おうかと思った。

P「馬鹿、そんなことできるわけ無いだろ」
凛「恥ずかしいの?」

当たり前だ!プロデューサーは視線を前に向けたまま続ける。
今は帰りの車内、事務所への帰り道だ。

P「あ、そうそう。凛の曲が着メロトップ10に入ったみたいだ!これでランクも上がるな!」
凛「ほんと?嬉しいな」

友達からも卯月や未央からも、ダウンロードしたよ、って言われていたが
まさかここまでとは思わなかった。

私の歌が、声が。認めてもらったような気がした。

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