苗木「(昨夜、寝る前に葉隠君ととりとめのない話で盛り上がっていたら唐突に…)」
苗木「(「占いの豆知識だべ!」って感じで、キスする場所の意味を教えてもらった…)」
苗木「(…そもそも占いなのだろうか)」
苗木「(正直、教えてもらったところで実践する度胸が僕にあるかと言われたら無い)」
苗木「(けれど…)」
大神「…ぬ?」
大神「…苗木か。良い朝だな」
苗木「あ、おはよう、大神さん」
大神「うむ」
苗木「(好奇心半分、クラスメイトに僕がどう思われているのか気になるというところがある)」
苗木「(流石に全員だなんてことは欲張りは言わないけれど…)」
苗木「(…どうにか何人かにキスをしてもらうことは出来ないだろうか)」
苗木「大神さんはこれから鍛錬?」
大神「うむ」
大神「だが定刻までまだ多少の余裕がある」
苗木「そうなんだ」
苗木「じゃあ、良かったら少しだけ話相手になってもらっても良いかな?」
大神「我で良ければ構わんぞ」
苗木「ありがとう」
苗木「…ねぇ、大神さん?」
大神「なんだ?」
苗木「いきなりで悪いんだけど、少し変なこと聞いても良いかな?」
大神「内容の良し悪しは我が決めることだ」
大神「苗木が我に伝えたいと思うのならば、話すと良い」
苗木「ありがとう…それじゃあ…」
苗木「……僕にキスをするなら、どこにする?」
大神「……なんと?」
大神「…我が苗木に接吻だと?」
苗木「あ…ごめん…やっぱ気分悪くしちゃったかな…」
大神「…成程な」
苗木「え?」
大神「場所の指定ということは、何か意味があるのだろう」
苗木「…!」
苗木「(流石は大神さん…鋭いや…)」
苗木「あはは…その通りかな…」
苗木「一種の心理テストみたいなものかな…」
大神「ふむ…」
大神「……」
大神「…苗木よ」
苗木「あ、なにかな?」
大神「…接吻は実際に行った方が良いのか?」
苗木「…!!」
大神「…いや、我としたことがつまらぬことを聞いた」
大神「我みたいな女に接吻をされるなど、男には拷問でしか…」
苗木「それは違うよ!!」
大神「…!!」
苗木「拷問だなんて…そんなことあるはずがない…!」
苗木「むしろ信頼しているクラスメイト…ましてや大神さんにそんなことを言ってもらえるだなんて…」
苗木「光栄でしかないよ!!」
大神「……」
大神「…フッ」
大神「そうだな、苗木よ。主はそういう男だな」
大神「……大人しくしているのだぞ」スッ…
苗木「…あっ」
大神「……」チュッ…
苗木「……」
苗木「(頬に柔らかい感触が…)」
苗木「(それに…良い香りだな…)」
大神「……」
大神「本能のままに場所を選んだが…」
大神「我の選んだ選択にはどのような意味があるのだ?」
苗木「あ、え、えっとね…」
苗木「【頬】へのキスは…」
苗木「…僕に対して【親愛】の意味があるみたいだよ」
大神「……」
大神「…フッ。そうか」
苗木「(大神さん…満足そうな顔だ…)」
苗木「(そういえば【満足感】って意味もあるって葉隠君が言ってたな…)」
大神「さて、苗木よ。我はそろそろ鍛錬に向かう」
苗木「あ、う、うん…」
大神「…苗木」
苗木「…なにかな?」
大神「……」ポンポン…
苗木「わっ…?」
大神「良い余興だった。感謝する」
苗木「あ、いや…こちらこそありがとう…」
大神「…フッ」スッ…
苗木「……」
苗木「(親しみと愛情…か…)」
苗木「(大神さんらしいといえば大神さんらしいな…)」
苗木「(彼女にそう思ってもらえててよかった…)」
セレス「……中々愉しいショーでしたわ」
苗木「…わっ!?」
苗木「せ、セレスさん…」
セレス「…クスッ」
セレス「意外な組み合わせを目にしたかと思えば、随分と可愛らしいことをしていらっしゃいましたわね♪」
苗木「えっと…今のはその…」
苗木「…どこから?」
セレス「苗木くんが質問を始めた時からですけれど?」
苗木「ほぼ全部じゃないか!?」
セレス「……」
セレス「…苗木くん」スッ…
苗木「…え?」
セレス「…あ、んっ」くちゅ…
苗木「…っ!?」ビクッ…
苗木「せ、セレス…さんっ…」
苗木「(ぼ、僕の服の上から…)」
苗木「(む、胸に…しゃぶりついて…きて…!?)」
セレス「ん…はぁ…っ…」
セレス「……」
苗木「…今の…は…」
セレス「クスッ…」
セレス「わざわざ聞くまでも無いでしょう?」
セレス「貴方が知りたいこと…私はもう教えてさしあげましたよ?」
苗木「……」
苗木「(そうか…【胸】へのキスか…)」
セレス「今はまだ貴方はCランク…」
セレス「けれども光栄に思ってくださいな?」
セレス「そんな貴方を、この私が欲しているのですから…」
苗木「……」
セレス「いつか、私の【唇】を奪えるほどのナイトへと変貌すること…」
セレス「期待していますわよ?」
セレス「それでは…」スッ…
苗木「あ……」
苗木「(【胸】へのキスは【所有】を意味している…)」
苗木「(必要とされていると解釈するぶんには良いけど…)」
苗木「(その先に待っているのは希望か絶望か…)」
苗木「(…でも)」
苗木「(【唇】をアピールしてくるということは…)」
苗木「(…でも、相手はあのセレスさんだ)」
苗木「(もしかしたら僕をからかっているだけかもしれない…)」
苗木「(だって【唇】が意味するのは…)」
霧切「…何を考え込んでいるの?」
苗木「……」
苗木「…わっ!?き、霧切さん…」
霧切「…驚かせてしまったかしら。ごめんなさい」
苗木「いや、そんな霧切さんが謝ること…」
苗木「(霧切さんか…)」
苗木「(彼女もミステリアスで読めない子だよな…)」
苗木「(彼女は僕のことをどう思っているんだろう…)」
苗木「(セレスさんで、どっと疲れたけど…)」
苗木「(最後に、彼女に試してみても…)」
霧切「…?」
霧切「なに?私のことをジッと見て?」
苗木「あ、いや…ごめん…」
霧切「…謝られても困るけど」
苗木「あはは…そうだね…」
苗木「…えっと、霧切さんにちょっと聞きたいことがあってさ」
霧切「…何かしら?」
苗木「えーと…ちょっと変な質問なんだけどさ…」
霧切「前置きはいらないから。別にどんな質問でも構わないわ」
苗木「そ、そう…?」
苗木「それじゃあ…」
苗木「…もし、霧切さんが僕にキスをするとしたら、どこにする…?」
霧切「……」
霧切「え?」
霧切「キスって…接吻のこと…?」
苗木「…うん」
霧切「……」
霧切「…ちゅー?」
苗木「(あっ、ちゅーって言い方かわいい…)」
霧切「……」
霧切「……」ゲシッ…!
苗木「…いたっ!?」
霧切「…苗木くんの癖に、生意気よ…」
苗木「…何も言ってないのに…」
霧切「でも、失礼なこと考えていたでしょう」
苗木「(むしろ、ポイント高いぐらいなんだけどなぁ…)」
霧切「変な質問って言うからどんな質問かと思えば…」
苗木「…最初にそう言ったでしょ?」
霧切「…流石に予測出来ないわよ」
霧切「……」
霧切「…苗木くん」
苗木「…な、なにかな?」
霧切「…ばか」スッ…
苗木「えっ…?」
霧切「……んっ」ちゅっ…
苗木「……」
苗木「…き、霧切…さん…」
霧切「…わかってて聞いたんでしょうね?」
苗木「あ…」
苗木「(軽く触れ合うだけの、一瞬…)」
苗木「(それでも、まるで強い電撃が走ったような…)」
苗木「(【唇】と【唇】が触れ合ったキス…)」
霧切「……」
霧切「…私だって」
苗木「…え?」
霧切「色々、考えてたり、したんだから…」
霧切「どうやって想いを伝えよう…」
霧切「場所や、言葉…貴方になった…」
霧切「なのに…考えた時間が一瞬でこんな…」
霧切「苗木くんの癖に……」
霧切「本当に…生意気…」
苗木「霧切さん…」
苗木「……」
霧切「…ちゅー?」
こ れ は お ち ま す わ
苗木「霧切さん…」
霧切「…なに?」
苗木「その…あ、ありがとう…」
苗木「えっと…嬉しかったよ…」
霧切「……」
苗木「まさか霧切さんにそんな風に思ってもらえてただなんて…」
霧切「~~~っ!!」
霧切「…貴方、やっぱりバカよ…!」
苗木「…えっ?」
霧切「…ばかっ!」ダッ…!
苗木「あっ…!霧切さん…!」
苗木「……」
苗木「(霧切さん…)」
苗木「(…僕は)」
苗木「(…僕はなんて中途半端な態度をとってしまったんだろうか)」
翌日
セレス「…まぁ、一言で言うならば」
セレス「最低、ですわね」
苗木「ううっ…」
セレス「…霧切さんも可哀想に」
セレス「苗木くんみたいなEランクに想いを馳せてしまうだなんて…」
苗木「返す言葉も無いよ…」
セレス「……」
セレス「…男なら行動で示しなさいなっ!!!」
苗木「…えっ」
セレス「…これ以上、私を失望させないでいただきたいですわね」
苗木「…セレスさん」
苗木「…ありがとうっ!!」ダッ…
セレス「……」
苗木「(さりげなくランク下がってた…)」
大神「…セレスよ」
セレス「…何かご用でしょうか?」
大神「主は、良かったのか?」
セレス「……」
セレス「私は奪う側のギャンブラーです」
セレス「これまでも他人を破滅に追い込み、幸せを奪い続けて生きてきましたわ」
セレス「けれども…」
セレス「私は人の幸せを好き好んで奪うわけではありません」
セレス「それだけのことです」
大神「…そうか」
セレス「…今回は不器用ではありますが駆け引きなどに頼らずに大胆不敵な選択を取ることを選んだ…」
セレス「霧切さんの、勝利…です」
大神「……」
大神「…我のプロテインでも飲むか?」
セレス「…丁重にお断りいたしますわ」
苗木「…霧切さんっ!!」
霧切「…苗木くん」
苗木「……」
苗木「…あの…僕…」
苗木「霧切さんに、伝えたいことがあるんだ…」
霧切「……」
霧切「中途半端な態度は、もう許さないから…」
苗木「…!」
苗木「…うん!」
苗木「…しっかりと伝えるよ!!」
苗木「僕の…霧切さんに対しての気持ちを…」
霧切「……」
霧切「…やっぱり貴方って、バカで、生意気ね」ニコッ
苗木「(【唇】へのキス…その意味は…)」
苗木「(―――相手への【愛情】)」 終里
何故残っているんだ兄弟!?
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