岡部「フェイリスの別荘でお泊り会をやったら大変な目に遭った」(145)

ラボ

まゆり「ねーねー、みんなでお泊り会しようよ~」

紅莉栖「男共抜きならな」

ダル「そんな冷たいこと言うなよぉ」

岡部「こればかりはダルに同意だ」

鈴羽「お泊りって言ったら、枕投げだよね!
小さい頃よくやったんだけどさ、あたしが本気で投げるといつの間にかみんな気絶してて…」

紅莉栖「何それ。冗談でしょう?
いくらなんでも枕で気絶なんて、アニメみたいな展開あるわけないじゃない」

鈴羽「…嘘だと思うなら、牧瀬紅莉栖にもここでお見舞いしようか…?」

岡部「そこ、余計な発言は慎め。
とりあえずお泊り会をするとしてもだ。ここでやってもやることはいつもと何ら変わらないのでは…」

バタンッ(ドアを開ける音)

フェイリス「お泊り会と聞いて、フェイリスがやってきたのニャ!」

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  | '`-イ:::    -・=- , (-・=-   | <キーボードの K と L 見てみ?
  |ヽ ノ (6    ⌒ ) ・ ・)( ^ヽ   |
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  |                    | パタン
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あー…面倒なのが来たぞ。
こいつが加わると、必ずと言っていいほど会話がカオスになるのだ。

ダル「フェイリスたんキターーーーー!」

まゆり「フェリスちゃん、トゥットゥルー♪」

岡部「貴様…どうやってこの会合の情報を嗅ぎつけた…!」

フェイリス「フェイリスのネコミミは、ただのネコミミじゃないのニャ…
ニャンと、1光年先の音も聴き分けられるニャ。これによって、ラボ内での会話は全てフェイリスの耳に入ったのニャ。
この能力は、後に起こる悪の機関との決闘のためフェイリスに託された、最後の希望ニャ」

鈴羽「それって本当?
だとしたら、あたしにも協力させてほしい。
これでも結構腕っ節はいい方なんだ」

フェイリス「もちろんだニャ…
スズニャンの秘奥義、ピロー・ファイティングさえあれば、あの守りの堅い機関の突破口を開けるかもしれないニャ!」

鈴羽「ピロー…何それ?」

まゆり「よくわからないけど、きっとスズさんは選ばれた戦士なんだよ~」

紅莉栖「はいはい、厨二病乙」

ダル「言っていることはわからないけど、フェイリスたんかわいいよフェイリスたん」


岡部「ええい!話が脱線しまくっているではないか!
俺達は今、まゆり発案のお泊り会の話をしているのだ!」

紅莉栖「そういえばそうだった。やるとしても、どこに泊るの?
…言っておくけど、私が寝泊まりしているホテルはダメだぞ」

岡部「そんなことは言われなくても分かっているぞセレセブよ。
だが先程から言っている通り、我がラボには金銭的な問題がだな…」

フェイリス「だったら、フェイリスの別荘に来るといいニャ」

岡部「えっ…お前、別荘持ってたのか?」

フェイリス「昔、パパが持ってたものニャけど、あるニャ。どうかニャ?」

ダル「フェイリスたんの別荘キタコレ!」

鈴羽「へぇ、別荘かあ。あたしも、自分の別荘持ちたいなあ」

紅莉栖「確かに、場所的には悪くないわね…
でも、部屋が男女共用ってことはないわよね…?」

フェイリス「その心配はいらないニャ。ちゃんと部屋は分けられるニャ。
さあ、どうするニャ、凶真!この選択は、凶真に委ねられたのニャン!」

ビシッと俺を指差すフェイリス。

岡部「まさか、俺を誘き寄せるための罠ではあるまいな。
俺はそんな初歩的な手に乗る程、バカでは―――」

まゆり「えーっ、お泊り行かないのー?」

ダル「何言ってるんだよオカリン!
フェイリスたんがそんなことするわけないだろ常考!」

鈴羽「フェイリスは私の仲間であり、ラボの仲間だよ!
その仲間を疑うなんて、見損なったよ。岡部倫太郎」

岡部「うぐっ…」

何故俺が悪者になっているのだ…
仕方ない、ここはラボメンの意見を汲むことにしよう。
あくまで、意見を汲んでやるだけなのだ。ビビってなどいない。

岡部「…わかった。お前の厚意を素直に受け取ることにしよう」

フェイリス「そうこなくっちゃニャ!それで、日程はどうするニャ?」

岡部「まあ待て。行くと決まった以上、誘いたい奴がいてな。
そいつらに連絡を取ってから決める」

俺は、携帯でルカ子の電話番号を呼び出す。

Prrrrr…

るか『もしもし…岡…いえ、凶真さん。こんにちは』

岡部「ああ、俺だ。ルカ子よ。エーリューズニルへと赴く勇気はあるか」

紅莉栖「まーた北欧神話か…」

るか『え、エー…す、すみません…何でしょうか…?』

岡部「エーリューズニル。死の女王の館だ」

るか『そ、そんなところへ…行くんですか…?』

岡部「ああ、そうだ。お前ならそこへ行っても生き残れるだろう。何故なら、お前は俺の弟子なのだからな」

るか『岡部さんが、そう言うなら…僕も、行きます。
明日以降は、予定が空いているので…岡部さんの都合に合わせますね』

岡部「わかった。詳しい日時が決まり次第追って連絡しよう。
合言葉は…」

るか『エ、エル・プサイ・コンガリィ…?』

岡部「コングルゥだ!いい加減覚えろ。ではな」

ピッ

まゆり「るか君、何だって~?」

岡部「いつでもいいそうだ。だが問題はもう一人だ」

次に、閃光の指圧師…シャイニング・フィンガーに、お泊り会に誘う旨をメールで送信する。
すると1分もしないうちに、返事が来た。

『件名:ゴメン!
本文:誘ってもらって嬉しいんだけど、
最近仕事が立て込んでて、参加できそうにない><
私抜きで楽しんできて。そのかわり、帰ったらお話聞かせてね!』

岡部「ふむ…指圧師は不参加か。仕方がない、こちらで日程を決めてしまおう」

話し合いの結果、明後日の午前6時、秋葉原駅の電器街口に集合することになった。

次の日 某スーパー

紅莉栖「やっぱり料理は食材の買い出しからよね」

まゆり「そうだね~、えっへへー」

紅莉栖「せっかくのお泊り会なんだから、私達も料理しなきゃね」

まゆり「まゆしぃはね、バナナのからあげが食べたいのです」

紅莉栖「バナナのからあげ…悪くないわね。バナナとからあげもカゴに入れておきましょ」

まゆり「やった~!ありがとう、クリスちゃん♪」


次の日、AM 5:30 秋葉原駅

岡部「なあ、ダル」

ダル「なんぞ」

岡部「お前は朝早くから俺に電話をかけて、こう言ったな。『もう皆集まってるから早く来い』と」

ダル「うん」

岡部「誰もいないではないか」

ダル「フヒヒ、サーセンwww
いやぁ、早く来すぎちゃって。むしゃくしゃしてやった。でも反省はしていない。キリッ」

岡部「………」


AM6:00

岡部「全員いるな?」

まゆり「えっとねー、フェリスちゃんがいないよ~」

岡部「なんだと…?
あいつ、まさか逃げたのではあるまいな」

俺の白衣が引っ張られる感触。

るか「あ、あの…凶真さん…」

岡部「ルカ子。どうしたのだ」

るか「ぼ、僕なんかで、この大勢の人達を…守れるのでしょうか…?」

岡部「…?」

るか「だって、死の女王の館に行くって…」

ああ。あの話か。
全く、ルカ子は何でも信じる…本当に純真無垢な奴だ。

紅莉栖「漆原さん、本気にしなくていいわよ。それは全部岡部の妄想だから」

るか「えっ…そうだったんですか!?」

岡部「失敬な。この俺の語る内容は全て厨二病の妄想ではなく真実だ。
何故なら―――」

フェイリス「みんニャー!お待たせニャンニャン~!」

5分遅れでフェイリスが来た。
なんとも悪いタイミングで話をぶった切ってくれる。
そして、相変わらずのネコミミにメイド服か…。

フェイリス「遅れてしまって申し訳ないニャ。もう出発するニャン?」

岡部「ああ。各自、切符を買う者は買ってきて、ホームに突入するぞ」

鈴羽「うーん…」

岡部「どうした、バイト戦士よ」

鈴羽「ねえ岡部倫太郎…切符ってどうやって買うの?」

岡部「…お前、切符の買い方も分からないのか?」

鈴羽「うん。電車乗るの初めてだからさ~」

初めて…?18にもなって乗ったことがないというのか?
そういえばこいつは移動手段が自転車だったな…なら仕方ないのかもしれん。
俺は鈴羽に切符を買い与えてやった。

岡部「ほら、行くぞ」

鈴羽「あ、ありがとう」


俺達は、電車を使い、別荘の最寄り駅まで行った。
何故移動手段がフェイリスのリムジンではなく電車なのかと言うと、
フェイリス曰く「こっちの方が旅行している気分になれるからだニャン♪」
らしい。旅行じゃなくてお泊り会なのだがな…
そして、フェイリスの道案内を頼りに…
朝9時頃、別荘に到着した。

岡部「な…」

まゆり「わぁ…」

るか「……」

鈴羽「おおおおーっ!」

ダル「別荘って…レベルじゃねーぞ…」

紅莉栖「あ、ありのまま今起こったことを話す。
普通の住宅街を歩いていたと思ったら、いつの間にか目の前にセレブな家が建っていた…
何が何だか分からないと思うが…」

岡部「ねらーめ」

紅莉栖「へっ…!?いや、違う!絶対に違うからな!」

普通の一軒家と比べてもかなり高級そうな外観。
明らかに別荘と呼ぶにふさわしくない…そんな家が建っていた。

中に入る。玄関から、居間へ。かなり広い。
すごくロイヤルな雰囲気が広がっている。

フェイリス「ここがフェイリスの別荘ニャ。
一人一部屋あるから、ゆっくりしていってね!」

一人一部屋…だと…

エロくなる?

>>21
エロくはならない

岡部「…俺だ。今、敵の基地に侵入した。
とんでもなく豪勢な家だ。どんな罠が待ち受けているか分からない。
…ああ。必ず生きて帰ってくる。エル・プサイ・コングルゥ」

俺は、とりあえず自分の部屋に行って荷物を置いてくることにした。
ドアに、かわいらしい字で「凶真」と書かれたネームプレートがかけてある。
なるほど、ここが俺の部屋か。

6畳くらいあった自分の部屋に、荷物を置いて居間へと戻る。
その時俺の目に映った光景は、
雷ネットでフェイリスにボコボコにされたダルの姿だった。

ダル「うはっ…やっぱフェイリス強いよフェイリス…」

鈴羽「あたしもやる!こう見えても、岡部倫太郎より強いんだよ~」

ダル「阿万音氏…オカリンは雷ネットではドがつくほどの初心者なんだぜ…」

鈴羽「…」


別の方を見渡してみる。
台所で、まゆりと紅莉栖とルカ子が、昼飯の準備をしていた。

紅莉栖「まゆり。このバナナを包丁で切って」

まゆり「了解なのです!とんとんとん~」

るか「ああっ、まゆりちゃん!そのやり方じゃ危ないよ~…」

紅莉栖「これを粉にまぶして…」

るか「牧瀬さん…い、一体何を…」

頑張れ、ルカ子。ラボの存続は、お前の手にかかっている。


AM11:00


俺は何もすることがないので、自分の部屋で雑誌を読んでいた。
「サイエンス」。科学的知識がちりばめられた、良書である。俺の持っている科学的知識も、大体はここから学んだ。
紅莉栖の論文も、この雑誌に載ったことがある。

コンコン(ドアを叩く音)

岡部「入っていいぞ」

エロなし?

>>27
エロはないんだ すまない

ガチャッ

フェイリス「凶真、大変ニャ!」

ダル「台所からの異臭がすごすぎて、もう何が何だかわからないレベル」

鈴羽「あれは凶器にもなりうるね。漆原るかは気絶してるし」

岡部「くっ…早くも、我がラボから犠牲者が…!
ここは、俺が出るしかあるまい。奴らの暴挙を、一刻も早く阻止しなければ…!
お前達はここで待っていろ。…心配するな。ルカ子の敵は俺が取る」

そう言って俺は部屋を後にする。うまくキマっていただろうか。


ダル「…どう見ても死亡フラグです。本当にありがとうございました」


PM0:00

鈴羽「あれから1時間近く経ってるけど…岡部倫太郎、戻ってこないよ…?」

ダル「オカリン…無茶しやがって…」

フェイリス「ニャニャッ!?
凶真とるかニャンは二人とも男ニャ…もしかして、もしかするニャ…?」

ダル「台所には、まゆ氏と牧瀬氏…女二人…ハッ!オカリン、けしからん…! フェイリスたん、阿万音氏、僕は行くお」

フェイリス「ダルニャン、ダメニャ!ダルニャンまで犠牲になること、ないニャ~!」

ダル「止めないでくれ…僕は、ここにいる二人の女子を守るため、敢えて戦場に足を運ぶんだ…
フェイリスたん。もし僕がこの戦いで生き残ったら…結婚しよう」

フェイリス「それはお断りニャ」

ダル「ああんっ…ひどい…もうどうにでもなれー!」

ガチャッバタンッ

鈴羽「何だったんだろう、今の茶番は…」

フェイリス「フェイリス達も行ってみるかニャ?」

鈴羽「…そうだね」

居間

まゆり「オカリン、るか君!しっかりして!」

紅莉栖「うーん、何がまずかったのかな…
漆原さんも途中で気絶しちゃうし…」

ダル「こ、これは一体…どうしたんだってばよ?」

紅莉栖「あ、橋田。岡部の奴、私の料理を味見しただけで気絶しちゃったのよ。
大袈裟よね」

ダル「オカリンェ…」

フェイリス「さっきよりもひどい異臭…とりあえず、換気扇をつけるニャ!」

ブオオオオオオオオオン(換気扇の音)

鈴羽「これでよし、と…」

るか「う、う~ん…」

まゆり「あっ、るか君!大丈夫?」

るか「まゆり…ちゃん…」

るか「あ、そうだ…料理は…料理は、どうなりました…?このままだとお昼ごはんが…」

ダル「るか氏…もういい…もう休め…!」


結局、俺は12時30分頃に目を覚ました。
案の定、まゆりと紅莉栖が作った昼飯は食えたものではなかったので、近くのコンビニで昼飯を買ってきた。
あの二人にはもう飯を作らせてはいけない。俺は心に堅く誓った。


PM2:00 居間

携帯の音がうるさい。
多分、あの指圧師が俺の携帯にメールの雨を降らせているのだろう。

『差出人:閃光の指圧師
 件名:楽しんでる?
 本文:さっきから返信ないけど、楽しんでるのかな?
 私は休憩中。仕事がつらくて死にたい。』

岡部「…鬱だ死のう、ってやつか。
仕方ない、暇だし返事を出してやるか。」

俺は指圧師に適当にメールを返した。

まゆり「オカリン、誰とメールしてたの?」

岡部「シャイニングフィンガー、桐生萌郁だ」

まゆり「そっか…萌郁さん、来られなくて残念だったね…」

岡部「仕方あるまい。奴は俺達と違って社会人なのだ。忙しくもなるだろう」

まゆり「それよりオカリンも外に出ようよ。みんなお庭でサッカーやってるよ~」

岡部「お前…それは俺に体力がないことを知っての発言か…?」


PM7:00

サッカーは鈴羽とまゆりの土壇場だった。フェイリスはメイド服が汚れるから、という理由で参加していなかったし、俺とダルと助手は終わってからもしばらく息を切らしていた。
あと、ルカ子がよく転んだ。あの姿にはなぜかそそられるものがあった。

それから、ルカ子とフェイリスが作った晩飯を食べた。
普通においしかったのだが、フェイリス補正がかかったのか、ダルはいつもよりたくさん食べていた。
助手はorzの体制を取って落ち込んでいた。

そして…ここから、俺の悪夢が始まる。

フェイリス「ニャフフ…知っているかニャ?
この家の裏道をまっすぐ通ると、そこは地獄の番犬すら入ることを躊躇する、魔性の森ニャ。
この領域に足を踏み入れた者で…生きて帰ってこられたのは誰一人として…居ないのニャ」

暗い部屋の中、上向きの懐中電灯で自分の顔を照らし、語るフェイリス。

岡部「フッ…なるほどな。貴様はそこの凶悪なる真実を俺に暴いてもらおうと…
そういう算段だったわけだな。フェイリス・ニャンニャンよ!」

フェイリス「そういうことニャ。
実は、そこで行方不明になった人の中に、フェイリスのお兄ちゃんもいるんだニャ!
だから、凶真…お願い、お兄ちゃんを…助けて…。」


るか「フェイリスさん…そんなに、辛いことが…あったんですね…」

紅莉栖「なんかもうついていけない」

ダル「禿同」

まゆり「でもオカリンには分かるみたいだよ?」

鈴羽「なにがなんだかわからないけど…
フェイリスのお兄さんのためなら、私は戦うよ」

紅莉栖「つまり…これから何が始まるんです?」

フェイリス「フニャアアアアア!肝試しニャー!」

一同「!?」

これは俺も驚いた。不意打ち過ぎるぞ、フェイリス。

フェイリス「あの森には、邪気が眠っているのニャ。
その邪気にあてられた者は、暴徒と化して、通行人を襲うのニャ。
これから、くじで通行人3人と、暴徒4人を決めるニャ」

くじの結果、俺、まゆり、紅莉栖が通行人になった。

フェイリス「10分後の7時40分に凶真達は行動を開始して欲しいニャ。
それじゃ、隠れるニャー!」


PM7:40

岡部「そろそろだな」

俺達は裏道を通り、森の中に入る。

まゆり「オカリン、なんだか怖いね。えへへ」

紅莉栖「全然怖がってるようには見えないけど…」

紅莉栖は俺の白衣を掴んでいる。

岡部「…どういうつもりだ?」

紅莉栖「う、うるさいな。何だっていいじゃない」

岡部「まさか、怖いのか?天才少女・牧瀬紅莉栖とあろうものが…」

紅莉栖「怖くなんてないわよ!」

こんな薄気味悪いところだと言うのにいつものように言い合いをしている。
いつもなら煩わしいのだが、今はそうでもしていないと緊張で頭がおかしくなりそうだ。
と、その時。

「うおおおおっ!」

木の陰から突然、白い布をかぶった何者かが飛び出してきた。
だが、声に迫力がない。これはダルだな。

岡部「…ダルよ。お前には人を驚かすという気があるのか?」

ダル「…子供の頃はこれでちびったもんだけど、もう大人なんだなあ…俺ら…」

紅莉栖「(ちょっと…びっくりしちゃったじゃない…)」

それから、俺達は森を歩き回り、ルカ子と鈴羽の襲撃を受ける。
ルカ子は驚かす側なのに、逆に俺達に驚いていた。
鈴羽は、普通に回し蹴りを仕掛けてきた。間一髪のところでかわすことができた。
これが当たっていたら、間違いなく首を折られていただろう。別の意味で怖い。

まゆり「フェリスちゃん、いないね~」

岡部「奴め、俺に怖気づいて逃げたのではあるまいな」

まゆり「…あれ?クリスちゃんは?」

岡部「…?さっきまで後ろにいたはずなんだがな…
まあ、きっと大丈夫だろう。恐怖のあまり、逃げ出したとかそういうオチだ」

まゆり「そっか。クリスちゃんも女の子だもんね」

俺とまゆりは、最後に残ったフェイリスを探し出すべく、森を探索していた。
暫く歩いて、俺は気付く。
後ろがやけに静かだ。まさか…

岡部「まゆり…?」

まゆりまでもがいなくなっていたのだ。

岡部「おい、まゆり!どこだ!」

呼んでも返事はない。
そういえば、あいつはいつも少し目を話しただけでいなくなるんだった。

岡部「まゆり!まゆり!」

やばい。
一人になった瞬間、急に怖くなってきた。何者かに襲われたら…

岡部「一旦、別荘に戻ろう…」

そう思い、Uターンをした時。

「凶真…」

岡部「!?」

背後からの怪しい声。

「凶真…どうして…」

恐る恐る振り返る。
そこで俺は見たものは。
血にまみれた、フェイリスの姿だった。
頭から血を流しており、目が血走っていて。

岡部「うああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

俺は大声で叫び、全速力で逃げた。


フェイリス「…ちょっとメイクがリアル過ぎたかニャ。
でも、凶真を撃退する作戦は大成功だニャン♪」

別荘に戻った俺が見たのは、居間でおいしそうにからあげを食べるまゆりと、
分厚い本を読んでいる紅莉栖の姿だった。
紅莉栖は、行動中にフェイリスに捕まり、別荘に連れて行かれたらしい。
まゆりは、からあげの匂いにつられていなくなったと言う。

岡部「…」

鈴羽「あ、岡部倫太郎!どうだった?」

岡部「俺はこの世で最も恐ろしいものを見てしまった…フェイリスが、フェイリスが…」


フェイリス「フェイリスがどうかしたニャ?」

岡部「フェイリスが、血まみれで…うわあああっ!」

背後にフェイリスが立っている。血がついたまま…血…?

岡部「これ…メイクか?」

フェイリス「そうだニャ。暗くてよくわからなかったかニャ?
でも、あの時の凶真はすごかったニャ。フェイリスが逆に驚いちゃったニャ♪」

岡部「…はあ…」

今日は、酷い目にあった…

まゆり「あれ、オカリン。どこ行くの?」

岡部「…もう寝る」

俺はふらふらとした足取りで、自分の部屋へと向かった。


PM10:00

俺はベッドに横たわる。

岡部「なんか今日は災難だった…そんな気がしてならない」


ピロピロリン♪

何だ?メールか?
どれどれ…

『差出人:閃光の指圧師
件名:さよなら
本文:ごめんね。もう、耐えられない…』

岡部「…は?」

お前は何を言っているんだ。
俺は急いでメールを送る。

「待て、早まるな!」と。

しかし、そのメールに返信はなかった。

岡部「…おい、おい。どうなってるんだよ…」

俺は別荘を飛び出し、萌郁のアパートへと向かった。


AM0:15

萌郁のアパートへ着いた。

岡部「おい!指圧師!桐生萌郁!いるか!」

返事がない。

岡部「くそっ…!」

ドアノブをひねる。

岡部「…鍵がかかってない…?」

俺はドアを開けた。そこにあったのは…
自分の腹から血を出し、銃を持ったまま倒れている、萌郁だった。

岡部「う、うそだろ…
なんで死んでるんだよ…」

笑えない冗談だ。
さっきのフェイリスのように、メイクなんだろ?
そう思うしかなかった。

俺は、急いで萌郁のアパートを後にした。

何かの冗談だ。きっと一晩寝れば何もかも元に戻っているのだろう。
そう思った。


俺は、ラボに戻って。

横になって、寝た。

次の日…

携帯の音が騒がしい。
こんなにメールを送ってくるのは指圧師だけだ。
…ん、指圧師?あいつは死んだはずではなかったのか。
恐る恐る携帯をチェックする。
すると、閃光の指圧師からのメールが1通。フェイリスからのメールが1通来ていた。

『差出人:閃光の指圧師
件名:ゴメン!
本文:実は、ある人から「ドッキリに付き合って欲しい」
って言われて。死んだふりをしていたの。
岡部君には悪いと思ったんだけど、その人の表情を見ていたら、断れなくて。
ゴメンね。』

岡部「…」

俺はまさか、と思い、フェイリスのメールを見る。


『差出人:フェイリス
件名:ごめんなさい
本文:凶真、ごめんね。
私、ちょっと悪ふざけをしてみたくなって…
凶真だったら、乗ってくれるかなと思って、このドッキリを思いついて…
ただ、凶真を驚かせたかっただけなの。でも今考えたら、悪ふざけがすぎたなって思った。
ごめんなさい。』



岡部「…」


ああ。
俺は騙されてたのか…
安堵と悔しさがごちゃ混ぜになる感情。

岡部「なんだろうな、この感じ。」

俺は、いつの間にかフェイリスの家へと足を運んでいた。

家にいなかったので、タワーの前で待ち伏せすることにした。
それから1時間後くらいに、フェイリスがやって来た。

フェイリス「…!」

俺は、フェイリスの口を手で押さえていた。
何をやっているんだ、俺は。

フェイリス「きょ、凶真…!」

岡部「…動くな」

フェイリス「ど、どうして、こんなことを…」

岡部「それはこっちの台詞だ。人をからかうにも限度ってものがあるだろう」

フェイリス「そ、そうだけど…」

メールで謝っていたじゃないか。俺は…
なんでこんなことをしているんだろう。

俺は、自分のしていることに耐えられなくなって、フェイリスを解放し、その場を去った。
フェイリスから呼びとめられた気がしたが、構わず走った。

ラボに戻ると、まゆりと紅莉栖とダルがいた。

まゆり「あ、オカリン!あのねあのね、フェリスちゃんが探してたよ~」

岡部「…知っている」

ダル「フェイリスたんね、オカリンのこと傷つけちゃったって。すごく落ち込んでた」

岡部「…知っているさ」

紅莉栖「彼女のところに行ってあげたら?」

岡部「…もう行って来た」


ラボの中に不穏な空気が漂う。
どうすればいいんだ、俺は…

俺は、フェイリスに電話をかけてみることにした。
多分あんなことをした俺からの電話なんて、出ないと思うけど。

Prrrrrr…

フェイリス『もしもし…凶真?』

出た。

岡部「ああ。俺だ」

フェイリス「昨日は本当にごめんなさい。
怒るのも無理、ないよね…」

岡部「確かに…凄く腹は立ったが…
お前は、ただ俺を驚かせたかっただけなんだろう?」

フェイリス「うん…」

岡部「だったら、もういい。
これが、俺を陥れてケラケラと笑っていたら、多分俺はお前を許さなかった」

フェイリス「…」

岡部「なんだかんだ言って、結構楽しかったからな。お泊り会。
今度はドッキリなどなしで、俺を驚かせてくれ」

フェイリス「…今度?」

岡部「ああ。今度だ」

フェイリス「…よかった。
もう、見限られちゃったのかなって思ったから…」

岡部「最初はそれも考えたな」

フェイリス「う…」

岡部「まあまた近いうちに、お泊り会…計画しようじゃないか」

フェイリス「うん…ありがとう、凶真」


岡部「その代わりといっては何だが…頼みがある」

フェイリス「?」

ラボ

ガチャッ

まゆり「あ、オカリ…あれ?どちらさまですか?」

ダル「ちょ、マジで誰ぞ?」

紅莉栖「体格は岡部にそっくりだけど…」


岡部「フッ…俺は正真正銘、本物の鳳凰院凶真だ!
フェイリスのメイクによって、俺は頭に思い描いていた、鳳凰院凶真を具現化することができた!
フゥーハハハ!」

ダル「あ、ああ…そう…」

まゆり「何が何だかわからないけれど、オカリンが元気になってよかったのです」

紅莉栖「はあ…またうるさくなるな…」

それから俺はフェイリスの家に足しげく通うようになった。

このメイクをしている状態の俺はあまりに恐ろしい存在のようで、
秋葉原を歩いていると皆が道を開けた。

ちなみにこのメイクを両親に見せたところ、「誰お前」と口をそろえて言われたことは秘密だ。

後にネットで写真がUPされるほどに有名となり、
まさに「狂気のマッドサイエンティスト 鳳凰院凶真」として名を馳せたのは、今から1年後の話である。

これで終了な訳だが…
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

ちょっと展開を急ぎすぎました。次からはこれをバネにして頑張ろうと思います
ちなみにルシッドとドラマCDは全く触れていないしアンソロネタもパクってはいないはず

こんなSSにまで乙と言ってくれるお前らの優しさに泣いた

もっとネタを煮詰めてからまた来るのでその時はよろしくお願いします

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