幼女「とうもろこし、いる?」(1000)

幼女「とうもろこし、いる?」

男「いらん」

幼女「ね~」

男「なんだ」

幼女「とうもろこし、食べる?」

男「いらねぇ」

幼女「う~~~~~」

男「どうした?」

幼女「とうもころし、たべる?」

男「とうもろこしだろ?」

幼女「う~~~~~!」

幼女「ね~」

男「どうした?」

幼女「チンチン電車のりたい」

男「却下」

幼女「う~~~~~~」

男「ダメなものはダメ」

幼女「乗りたい乗りたい~~~! チンチン電車のる~~~!」

男「我侭言うな」

幼女「う~~~~~!」

男「肩車ならしてやる」

幼女「やった~!」

幼女「めろん電車ってなあに?」

男「路面電車だ」

幼女「めろん電車だよ?」

男「路面電車だ」

幼女「う~?」

男「ロメン電車だ」

幼女「??」

幼女「やるくとやるくと」

男「ヤクルトだ」

幼女「おじちゃんも飲む?」

男「飲みかけたら最後まで飲みなさい」

幼女「う~」

男「どうした?」

幼女「おじちゃんもやるくと飲む?」

男「ヤクルトだ」

幼女「のむ?」

男「……少しだけだぞ」

幼女「うん!」

幼女「う”~~~」

男「ちょっと待ちなさい」

幼女「う”~~~?」

男「急に冷えたからな」

幼女「う~~~おはなちゅるちゅる」

男「鼻チーンだ」

幼女「う”~~~」

幼女「……」トテトテ

幼女「……」トテトテ

幼女「……」トテトテ

男「……?」

幼女「……」トテトテ

男「何やってるんだ?」

幼女「あ、おじちゃん」

男「うん?」

幼女「あのねあのね」

男「うん」

幼女「おはなでしおり作ったよ~~」

男「ほう」

幼女「おじちゃん本たくさん、つかって」

男「ありがとうな、大事に使うよ」

幼女「えへへ~」

幼女「動物ってな~に?」

男「熊とか犬とか猫とかだよ」

幼女「なんで~?」

男「動くからだよ」

幼女「動かないのは?」

男「動かないのは物だよ」

幼女「う~~~」

男「どうした?」

幼女「チンチン電車は動物なの~~?」

幼女「あれな~に?」

男「あれはタコだよ、赤いだろ?」

幼女「たこさん?」

男「そうだな、沢山いるな」

幼女「たこさんたくさん」

男「そうだな」

幼女「たこさんたくさん♪」

幼女「すいぞくかん、たのしいね!」

男「楽しいな」

幼女「じんべいざめ、大きいね!」

男「大きいな」

幼女「おじさんとどっちが大きいの?」

男「どっちだろうな?」

幼女「おじさんのほうが大きいよ!」

男「はは、ありがとうな」

幼女「うん!」

男「正直に言いなさい」

幼女「う~~~~」

男「顔を見なさい」

幼女「う~~~」

男「どうしてお弁当を残したんだい?」

幼女「たこさんういんなー、かわいかったから」

男「そうか」

幼女「ごめんなさい……」

男「私じゃなくてタコさんウインナーにごめんなさいだ」

幼女「うん、たこさんごめんなさい」

男「次はちゃんと食べるんだぞ?」

幼女「うん!」

男「週末どこか行きたい所あるか?」

幼女「う~~?」

男「どうした?」

幼女「おじさん、一緒ならどこでも」

男「そうか」

幼女「おじさんおじさん」

男「どうした?」

幼女「しりとり!」

男「林檎」

幼女「ごりら」

男「ラッパ」

幼女「ぱんつ」

男「つくえ」

幼女「えっち」

男「なっ?!」

男「どこでそんな言葉を覚えてくるんだろうか」

幼女「リカちゃんがタケルくんに言ってたよ」

男「どうなってるんだ最近の幼稚園は」

昼飯たべてきます

幼女「おじさん」

男「ん?」

幼女「車のりたい」

男「そうか。日曜日、海でも行くか?」

幼女「うん!」

幼女「う~~~~」

男「泳ぐにはちょっと寒いなぁ」

幼女「およぐ~~~」

男「風邪ひくぞ」

幼女「う~~~~」

男「泳ぐのはダメだが」

幼女「う~~~~」

男「波打ち際で遊ぶくらいなら良いか」

幼女「やった~~!」

男「こらこら、走ったらこけるぞ」

幼女「へぶっ?!」スッテーン

男「だ、大丈夫か?!」

幼女「うん! へーき」

男「……?」

幼女「へーきだよ?」

男「そ、そうか? どっか痛くないか?」

幼女「うん!」

幼女「おじさん、どうしたの?」

男「いや、てっきり大泣きするもんかと思ってな」

幼女「む~~」

男「ははは、そう怒るな。我慢できてちょっぴり大人になったな、偉いな」

幼女「おとな? えらい?」

男「褒めてるんだぞ?」

幼女「……」ペタペタ

幼女「……」ペタペタ

幼女「……」ザクザク

男「……?」

幼女「……」ペタペタ

男「何作ってるんだ?」

幼女「おしろ!」

男「ほう」

幼女「ここがおじさんの部屋」

男「ずいぶん狭いんだな」

ザザーン

幼女「あ~~~」

ザザーン

幼女「う~~~」

ザザーン

幼女「あ~~~」

ザザーン

幼女「う~~~」

男「引き波が’あ~~~’で打ち寄せ波が’う~~~’か」

幼女「おじさんおじさん」

男「ん?」

幼女「これあげる」

男「貝?」

幼女「きらきら♪」

男「ふむ」パキ

幼女「あっ」

男「これで私と二人分だ」

幼女「ありがと、おじさん」

男「こちらこそ」

男「日も暮れてきたな、そろそろ帰るか?」

幼女「う~~~」

男「まだ居るって?」

幼女「うん」

男「ちょっとだけだぞ」

幼女「うん!」

幼女「へっくち!」

幼女「へっくち!」

男「……すまない、私のせいで風邪をひかせてしまったな」

幼女「おじ……っくち! おじさん」

男「何だ?」

幼女「ごめんね」

男「なぜ謝る?」

幼女「おじさん、かなしい顔してる」

男「……」

幼女「いたいのいたいの、とんでけ~」

男「……」

幼女「いたいのいたいの、とんでけ~」

男「もういいよ、……ありがとう」

幼女「いたいの飛んでいった?」

男「飛んでいったさ、飛んでいったとも」

幼女「やった! ……っくち!」

男「ほら、いまお医者さんが来るから布団に入ってなさい」

医者「──、熱が下がば大丈夫ですね」

男「そうですか、ありがとうございました」

医者「いえいえ、では私はこれで」

男「えぇ、いつもありがとうございます」

医者「お大事に」

幼女「おじさん」

男「なんだ?」

幼女「えほん読んで」

男「わかった、どれを読めばいいんだい?」

幼女「ももたろう」

男「コホン、むかしむかしあるところに──」

男「──こうして鬼退治を果たしたももたろうは……」

幼女「……」スースー


男「眠ったか」

幼女「……」スースー

幼女「……」スースー

男「寝顔は姉さん似だな」

幼女「……」スースー

男「さて、書類の整理でもするか」

パタン

幼女「……おじさん……」スースー

チクタクチクタク

男「11時か、風呂入って寝るかな」

幼女「おじさん」

男「ん? どうした」

幼女「おしっこ」

男「一人で行きなさい」

幼女「う~~~」

男「怖いのか?」

幼女「う~~~」

男「しょうがない、一緒についていってあげるよ」

パタン

幼女「おじさん」

男「なんだい?」

幼女「いる?」

男「居るよ」

幼女「ほんと?」

男「ああ」

幼女「おじさん」

男「ん」

幼女「終わったよ」

男「そうか、戻ろうか」

幼女「……」ギュ

男「ん?」

幼女「こわい」

男「どうした?」

幼女「めがさめるとね、だれもいないの」

男「っ」

幼女「おじさん」

男「何だ?」

幼女「う~~~」

男「一人で眠れないのかい?」

幼女「う~~~」

男「わかったわかった」

先生「はーい、それじゃあ今日は似顔絵を描いてもらいます」

男の子「ねー、だれ書いてるの?」

幼女「おじさん」

男の子「おじさん?」

幼女「うん」

女の子「ヘンなのー!」

幼女「ヘンじゃないよ、おじさんだよ」

女の子「おとうさんとおかあさんはどうしたの?」

幼女「わかんない」

女の子「この子、たにんと暮らしてるのよ、フジュンだわ!」

幼女「たにんじゃないよ、おじさんだよ」

女の子「そんなのおかしいよ!」

幼女「おかしい?」

女の子「だってかぞくじゃないんでしょ?」

幼女「カゾク」

女の子「かぞくじゃない人と暮らしてるなんておかしいよ!」

幼女「おかしくないよ」

女の子「だいたい、そのおじさんってただのヘンタイじゃないの」

幼女「!」

女の子「いたっ?! なぐった! 今この子なぐったわ!」

男の子「わー、ケンカだー!」

先生「──というわけでして」

保護者「もう! うちの子に大怪我負わせるなんて信じられませんわ!」

男「大怪我って、子供の喧嘩でしょうに」

保護者「なんですって!?」

男「こうやって大人が出るまでもないでしょう、もう帰っていいですか?」

保護者「むきー!」

男「事情はわかりました、それでは失礼します」

保護者「あなた! ちょっと!」

男「なんですか?」

保護者「知ってますわよ、あの子があなたの子じゃない事くらい」

男「そうですが、それが何か?」

保護者「こーんな不出来な人間に育てられて子供が可哀想だと申し上げていますのよ」

男「その言葉、そっくりそのまま返してあげますよ」

保護者「なっ……」

男「それでは失礼します」

先生「あ、あの。ちょっと待ってください」

男「はい?」

先生「あの、ありがとうございました」

男「ちょ……頭を上げてください先生。それに私は何も御礼を言われるような事はしていないですが……」

先生「いえ、あの保護者さん、前々からよくああいう事言う人だったんですよ。ホントは、ちょっぴり嫌だなあって思ってたんですけど……」

男「あぁ、先生も大変なんですね」

先生「ええ。私はまだ日が浅くて何も言い返せなくて、あの、だから、ありがとうございます」

男「はい、それでは私はこれで」

先生「あ、あの」

男「まだ何か?」

幼女「……」

男「ここに居たのか」

幼女「……」

男「だいたいの話は先生から聞かせてもらったよ」

幼女「……」

幼女「……ごめんなさい」

男「うん、素直な良い子だ。でもおじさんに謝ってもだめだろ?」

幼女「……」

男「……」

幼女「……」

男「黙ってたらわからないぞ」

幼女「ねえ、おじさん」

男「ん?」

幼女「あのね、おじさんと一緒にいるの、ヘンなんだって」

男「っ!」

男「そんな事は無い、ヘンじゃないよ」

幼女「ねえ、おじさん」

男「なんだい?」

幼女「カゾクってなに」

男「家族?」

幼女「カゾクじゃない人と居たらヘンなんだって」

男「言われたのかい?」

幼女「うん」

男「それで怒ったのかい?」

幼女「ううん」

男「?」

幼女「あの子がおじさんの悪口言うからおこったの」

男「……」

幼女「だいすきなおじさんの悪口いうからおこったの」

男「……」

幼女「だから……、おじさん?」

男「……ん? どうした?」

幼女「どこかいたいの?」

男「どうしてだい?」

幼女「ないてるから」

男「はは、違うよ。これは」

幼女「ちがうの?」

男「痛いんじゃない、嬉しいんだよ」

幼女「泣いたらおとなじゃないんだよ?」

男「そうだね、おとなじゃないね」

幼女「泣いたらえらくないんだよ??」

男「そうだね、えらくないね」

幼女「いたくないのに、泣くの?」

男「あぁ、そうだよ。そうなんだ」

幼女「……う”ぅ」

男「泣きたい時は、泣いていいんだ」

幼女「う”うぅぅぅ”」

男「泣いていいんだよ」

幼女「うわぁぁぁああ”あああ”~ん」

男「よしよし」

幼女「ほんと、は。こわか、った」

男「そうだね」

幼女「たたいたら、いたくて、でも、でも、」

男「うん、うん」

幼女「ふえぇぇぇえええ~~~ん」

幼女「……ひっぐ……えっぐ」ギュ

男「ほら、顔がくちゃくちゃだ」

幼女「おじさん、も」

男「はは、そうだな」

幼女「鼻ちーんする?」

男「そうだな、鼻ちーんだな」

幼女「はい、てっしゅ」

男「ありがとう」

幼女「あ」

男「どうした?」

幼女「てっしゅ無くなっちゃった」

男「ほら、ハンカチ貸してあげるから拭きなさい」

幼女「ありがとおじさん」

男「さて、……もうそろそろ帰ろうか」

幼女「うん」


ガラガラ


女の子「……あの」

男「うん? 君は?」

女の子「その、」

男「どうしたんだい?」

女の子「ご、ごめんなさい!」

女の子「絵が、わたしより上手だったから。ちょっと……いけずしたくなって」

幼女「うん」

女の子「その……ほんとに、ひどい事いって、ごめんなさい」

幼女「ううん、こっちこそごめんね、いたかったよね」

女の子「ごめん……許してね」

幼女「ううん、ごめんなさい」


男「……二人とも偉いなぁ」

女の子「その、あの」

幼女「うん?」

女の子「よかったらともd」

保護者「まーーーーーー!!!!!! こんな所に居ましたの!!!!!」

女の子「おかあさん」

保護者「こんな人間と一緒の空間に居ちゃいけません! 帰りますわよ!!!」

女の子「あ、ちょ、待って」

保護者「か・え・り・ま・す・わ・よ!!!!」

女の子「……はい」

幼女「いっちゃった」

男「行っちゃったね」

幼女「おじさん、帰ろ」

男「ん、そうだね。我が家に帰ろう」

幼女「うんっ」

すんません
キリがいいとこまで来たんでちょっと出かけてきます
夕方には戻りますが、読んでる人少なそうだし落としてくれても構いません

ただいま。
保守感謝。
なんというヌクモリティ

幼女「おじさん」

男「ん?」

幼女「きもちいい?」

男「うん、気持ち良いよ」

幼女「上手にできてるかなあ?」

トントン

トントン

幼女「かたこってますなー、だんなさん」

男「念入りに頼む」

トントントン

トントントン

男「それにしても肩たたき券か」

幼女「うん、ぷれぜんと」

男「ありがとう、嬉しいよ」

幼女「あのね」

男「うん?」

幼女「おじさん、いつもありがとう」

男「ん、どういたしまして」

男「そろそろお風呂も沸いたかな」

幼女「かなー?」

男「もう一人で入れるだろう?」

幼女「う~~~」

男「ん?」

幼女「……」ギュ

男「ああ、わかったわかった。わかったからしがみ付くのを辞めなさい」

幼女「わーい!」

幼女「おふろおふろー♪」

男「こらこら、お風呂で走っちゃいけません」

幼女「はーい」

ザッパーン!

男「湯船に飛び込むのもダメです」

幼女「む~~」

男「ほら、シャンプーが目に染みるぞ。目つむってなさい」

幼女「はーい」

男「お客さん、どこかかゆい所はありませんか?」

幼女「ないよー?」

男「かしこまりました」

幼女「ねえ、おじさん。アレやって」

男「アレかい?」

幼女「アレアレ」

男「ん、わかった」

男「できた、東京タワー」

幼女「すごーい、かみがくもみたいー!」

男「曇か、どっちかと言えばモンブランだが……」

幼女「もんぶらん?」

男「あぁ、デザートだ。美味しいぞ?」

幼女「もんぶたん食べたい」

男「もんぶらん、な」

男「じゃあシャンプー流すから目つむってろ」

幼女「えー」

男「どうした?」

幼女「もんぶらんくずすのもったいないよ」

男「後で本物食べさせてあげるから」

幼女「ほんと?」

男「あぁ、約束だ」

幼女「やっくそく、やっくそく♪」

男「じゃあ目つむってなさい、流すぞ」

幼女「はーい」

男「それじゃ湯船につかってから出るぞ」

幼女「うん」

ザバーン

男「はぁ……生き返るなぁ」

幼女「わー、こうずい」

男「はは、こうずいだな」

幼女「ねえ、おじさん。水はどこにいくの?」

男「水は川に流れるんだよ」

幼女「そのあとは?」

男「川に流れた水は海に行くんだ」

幼女「そのあとはー?」

男「海に流れた水は蒸発して雨になるんだよ」

幼女「それでそれで?」

男「雨になって、また川に流れて、海にもどって。また雨になるんだ」

幼女「えぇ? そうなの?」

男「そうだよ、だから水を汚したら汚れた雨が降って皆が困るんだ。水は大事にしないといけないよ」

幼女「わかった!」

男「それじゃあ10数えたら出るか」

幼女「うんっ」

男「いーち」

幼女「にー」

男「さーん」

幼女「よーん」

男「ご」

幼女「ろーく」

男「なーな」

幼女「はーち」

男「きゅう」

幼女「はーち」

男「きゅう」

幼女「はーち」

男「こらこら、終わらないだろ?」

幼女「やだー、でたくない」

男「のぼせちゃうから、今日はこれで上がろう」

幼女「う~~~」

男「わかったわかった、明日も一緒に入ってあげるから」

幼女「やった~!」

幼女「おっきがえ、おっきがえ♪」

男「一人でボタン留められるか?」

幼女「できたー」

男「……見事に一段ズレてるな」

幼女「あれ?」

幼女「ありがとおじさん!」

男「こらこら、待ちなさい」

幼女「なーに?」

男「ドライヤーで乾かさないと風邪を引く」

幼女「うん」トテトテ

男「……?」

幼女「よいっしょ」コトン

男「あの?」

幼女「おじさん、座って」

男「この椅子に?」

幼女「うん」

男「座ったよ」

幼女「乗せて乗せて」

男「……」

幼女「う~~~」

男「わかったわかった」

幼女「おじさんの膝のうえ、たかーい」

男「じゃあ、乾かすぞ」

幼女「はーい」

男「歯磨きしたな?」

幼女「うん」

男「トイレも済ませたな?」

幼女「うん」

男「じゃあ布団敷いて……と、寝るか」

幼女「おじさんも」

男「あぁ、わかった。私も寝るよ」

幼女「おやすみなさーい」

男「あぁ、おやすみ」

幼女「……」スヤスヤ

男「眠りに入るのが早いな、色々あったし疲れているんだろうな」


パタン


男「さて、もう少し作業してから寝るか……ん?」


Prrrrrrrrrrr.....


男「もしもし?」

『あ、起きてた?』

男「起きてるよ」

『よかったー、そっちが今何時なのかたまに忘れるのよね』

男「そうかい」

『あの子は元気?』

男「元気に寝てるよ」

『それはなにより、子供は寝るのが仕事だからね』

男「それより姉さん」

『何さ?』

男「今度はいつ帰ってくるのさ?」

『さあね』

男「さあね、って」

『そんな事言われてもねー、こっちはこっちで忙しいんだっての。体が4つくらい欲しいわよ。仕事と遊びとプライベートと自分磨きに』

男「まったく……、母親ならその中に子育ても入れてくれよ」

『それは言わない約束でしょー? こっちもあんたに全部押し付けちゃって負い目感じてるんだからさー』

男「とにかく、今年中に一回くらい戻ってきなよ。あの子も喜ぶ」

『こんな最低な母親が戻ってもあの子は喜びやしないわよ』

男「そんな事ないって」

『……そうかしら』

男「そうだよ」

『それよりあんたの方はどうなのさ?』

男「ん?」

『執筆、進んでるの?』

男「ぼちぼちだよ」

『どうせならこっちでも流通するくらいのモン書きなさいよね、取り寄せる輸送費も高いんだから』

男「俺はそんな事言いながらバカ高い国際電話を掛けてきてくれる姉さんが好きだよ」

『揚げ足を取るのがうまくなったじゃない? 作家っていう生き物はみんなそうなのかしら?』

男「とにかく、一度帰ってきなよ。年末くらいは休み取れるんだろ?」

『取れたら帰るわよ』

男「約束だぞ」

『はいはい、っと。ボスが戻ってきそうだわ、このへんでね』

男「あいよ」


プツ

ツーツーツー


男「ったく、どこで何やってんのやら」

幼女「おじさん……?」

男「ん」

幼女「いまのひと、だれ?」


男(しまった、軽率だった)

男(なんと答えるべきか……)

男「んー……」

幼女「?」

男「サンタさんだよ」

幼女「え?」

男「サンタさんにモンブランを持ってきてくれるように頼んだんだ」

幼女「ほんとっ?」

男「本当だとも、良い子に待ってたらサンタさんが届けてくれるよ」

幼女「良い子にしてるっ」

男「うんうん、そうだね」

幼女「さんたさん、もんぶらん♪」

男「はは、そんなに嬉しいのか?」

幼女「うんっ」

男「ところでどうして起きてきたんだい?」

幼女「あ」

男「?」

幼女「おしっこ……」


男「あちゃー……」

幼女「ごめんな……さい」

男「いいからいいから、とにかく着替えよう」

幼女「良い子に……ふえっ、良い子……に”っ」

男「大丈夫、ちゃんと謝る子は良い子だよ」

幼女「ふえっ……ふえぇえええぇぇぇぇえ~~~~ん」

フキフキ

フキフキ

男「フローリングの床で良かった」

フキフキ

フキフキ

男「よし……あらかた綺麗になったか」


男「ん? これは? あの子が描いた絵か」

ペラッ

男「4歳にしちゃ上手だなあ」

男「’おじさん、いつもありがとう’……か」

男「ありがとうを言いたいのはこっちなんだけどな……」

男「……久しぶりに何か書いてみるか」

男「……」カタカタカタ

男「……」カタッ

男「……」カチャ

男「……」

男「……」

男「ダメ、か」


チクタクチクタク


男「……今日はもう寝るか」

チュン

チュンチュン


先生「おはようございます」

幼女「おはよーございますっ」

男「おはようございます」

幼女「おじさん、行ってきます!」

男「おう、行ってらっしゃい」

先生「あの子、今日は特に元気ですね?」

男「えぇ、なんだか楽しみな事があるそうですよ」

先生「ふふ、そうなんですか?」

男「では私はこれで」

先生「あ、あの!」

男「はい?」

先生「この間の話──」

男「あぁ、考えておきますよ」

先生「あ、ありがとうございますっ」

保護者「あーーーら? 誰かと思ったら……」

保護者「暴力行為を容認した最低男じゃありませんの」

男「おはようございます」

保護者「あー、やだやだ。同じ空間にいるだけで息苦しいですの」

男「大変ですね、花粉症の方は」

保護者「むぐ……、気に入りませんの!」

女の子「……お母さん」

保護者「いいですの? あんな家の子と金輪際関わってはいけませんの!」

先生「ちょっと……っ」

男「いいですいいです、私は何を言われても構いませんから」

先生「でもっ」

男「それより、子供たちの事お願いいたします。先生」

先生「え? あ、はい」

男「では、私はこれで」

保護者「むっきー!!!!! あの男!!!」

保護者「今に吠え面かかせて……っ!! あら?」


TV『……また凶悪な事件が発生致しました……、先週土曜日未明……ショッピングモールで……』


保護者「ふふ、ふふふふふ、ふーっふーん♪」

保護者「いい! いいわ! なんて素晴らしいアイデアなの、あ・た・し!」

保護者「そうとくれば早速準備! 準備ですわよ!」

ワイワイ

ガヤガヤ


男の子「これあげる」

幼女「え?」

男の子「土だんご」

幼女「なんで?」

男の子「昨日、俺のせいで二人がケンカになっただろ」

幼女「……そうだっけ?」

男の子「そうだよ! だから、これ。仲直りのシルシな」

幼女「うん、ありがと。大切にするねっ」

男の子「へへっ、それじゃあな」

幼女「あ、まって」

男の子「ん? なんだよ」

幼女「い、一緒にあそばない?」

男の子「いいけど何する?」

幼女「あやとりとか、コマとか」

男の子「えー、サッカーやろうぜ」

幼女「さっかー?」

男の子「サッカー知らないの?」

幼女「う、うん」

男の子「しょうがねえなぁ、教えてやるよ」

男の子「こーやってボールをけるんだ」

男の子「てい!」

ポーン

幼女「すごい」

男の子「はっはっは、どうだ」

幼女「すごーい、田んぼの中までとんでったよ」

男の子「だろ? 田んぼの中に……」

「コラー! ボール蹴ったの誰だー!」

男の子「やっべぇ!!!!! に、逃げるぞ!」

幼女「え? へ?」

幼女「だめだよ、悪いことしたら謝らないと」

男の子「でも怒られるぞ?」

幼女「だめだよ。ちゃんと謝らないと」

男の子「う~ん……」

幼女「ほら、行こ」グイ

男の子「あ、おい」

「……なんじゃ」

幼女「おじいさんごめんなさい、ボールが田んぼに入ってしまいました」

男の子「ご、ごめんなさい!」

「またお前か!」

男の子「っ」ビク!

「……まぁ素直に謝った事だし、今日は許してやるかの」

男の子「ほんと?!」

「男に二言は無い」

男の子「やったぜじーさん、ありがとな!」

「まったく、ほんとに反省しとるんじゃろうな?」

幼女「あの、」

「なんじゃ? 見ない顔じゃの」

幼女「田んぼ、いたくない?」

「ん?」

幼女「やさい、いたくない?」

「……は、ハーッハッハ!」

幼女「?」

「そうかそうか、野菜の心配をしてくれるか。なに、大丈夫じゃよ、当たっとりゃせんわ」

幼女「ほんと?」

「ワシはボールを蹴り入れた事を怒ってるんじゃない、それを謝りに来ないガキ共に怒っているのじゃ。お前さんはちゃんとごめんなさいができるんじゃの」

幼女「うん」

「はっは、そうかそうか。いや、世の中まだまだ捨てたもんじゃないって事よの」

「さ、戻りんしゃい。先生が心配するぞい」

幼女「うん、おじいさん。ありがとう」

「なに、次からは気をつけてくれれば良い話じゃ」

幼女「またね、ばいばい」

男の子「おーい! はやく帰るぞー!」

幼女「まって」

男の子「ったく、足おせぇなぁ」

幼女「む~~~」

男の子「毎日はしったら速くなれるぞ」

幼女「はやくなってどうするの?」

男の子「足も鍛えて、サッカーも上手くなって、ワールドカップに出るんだ」

幼女「わーるどかっぷ?」

男の子「サッカーの世界大会だよ、4年に1回だけ世界のいちばんを決める大会があるんだ。世界中の人が注目するんだぜ」

幼女「へー」

男の子「ま、俺がワールドカップに出たら招待してやるよ」

幼女「うん!」

男の子「へへっ」


先生「もう! 二人とも一体どこへ行ってたの!」

男の子「げ!」

先生「とっくに休憩時間は終わってます!」

男の子・幼女「ご、ごめんなさい……」

とりあえずここまでで
ちょっと晩御飯たべてきます。
また夜に戻ります。

ただいま
みなさん保守ありがとです

幼女「でね、今日はこんなことがあったの」

男「ほう」

幼女「すっごくこわかったけど、がんばったよ」

男「えらいなぁ、良い子だ」

幼女「いいこ?」

男「うん、そうだな」

幼女「やった!」

幼女「それでね、おじさん」

男「ん?」

幼女「あたし、わーるどかっぷになる」

男「ワールドカップ?」

幼女「うん」

男「サッカーでもやるのかい?」

幼女「ううん」

男「??」

幼女「世界じゅうの人が、みんな見るんだって」

男「あぁ、そうだね。世界大会だからね」

幼女「だから、ひょっとしたらおかあさんがあたしを見つけてくれるかもしれないって」

男「あぁ、……そうだね」

幼女「男の子がね、つれてってくれるって」

男「あぁ、……そうだね。……そうなるといいね」

幼女「おじさん? どうしたの? 泣いてるの? どこかいたいの?」

男「いや、なんでもない。なんでもないんだよ?」

幼女「……」トテトテ

幼女「……」トテトテ

幼女「……」トテトテ

男「……?」

幼女「いたいのいたいのとんでけー」

男「……」

幼女「いたいのいたいの、とんでけー」

男「ありがとう、……ありがとう。もう痛くないよ」

幼女「ほんとっ?」

男「あぁ」

幼女「よかったね、おじさん」

男「ありがとう、助かったよ」

幼女「うんっ!」

男「もう遅いし、今日は寝よう」

幼女「うん、おじさんおやすみなさい」

男「私は隣の部屋にいるから、何かあったら呼びにきなさい」

幼女「わかった!」

男「おやすみ」

幼女『だから、ひょっとしたらおかあさんがあたしを見つけてくれるかもしれないって』


男「……」カタカタカタ


姉『こんな最低な母親が戻ってもあの子は喜びやしないわよ』


男「……」カタカタッ


先生『あの話……考えておいてくださいね』


男「……」カタン


保護者『あーーーら? 誰かと思ったら……』



男「……」

男「……だめ、か」

ワイワイ

ガヤガヤ


男の子「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」

幼女「あ」

男の子「おはよ!」

幼女「おはよう。ひょっとして、はしってきたの?」

男の子「へへっ、俺の家すぐそこだからさ。毎日走ってきてんの」

幼女「あのね」

男の子「?」

幼女「あたし、わーるどかっぷになるよ」

男の子「そっか! がんばれ!」

幼女「うんっ」

男の子「それでよ、昨日の香川のゴール見たかっ? すげーよなぁ、海外のチームに入って活躍するなんて」

幼女「かいがい?」

男の子「おう、サッカーうまくなれば外国だっていけるんだぜ」

幼女「さっかーうまくなったら外国いけるの?」

男の子「いけるいける、ブラジルだってスペインだっていけるぜ」

幼女「あたし、がいこくに行きたい」

男の子「なにーーーーーーーーっ?!」

男の子「それじゃあ……、今日から俺達は翼とコジローだ」

幼女「?」

男の子「ライバルってやつだな」

幼女「らいばるってなに?」

男の子「えっと、すごく仲の良い友達ってことかな?」

幼女「ともだち。……うん、わかった」

男の子「へへっ」

幼女「ねえ」

男の子「なんだよ?」

幼女「らいばるって何をするの?」

男の子「さあ? なんだろうな?」

幼女「??」

ワイワイ

ガヤガヤ


「あれれー? おっかしいなー!」

「どうしたでやんす? コナソくん」

「おかしいなー、この土だんご。壊れてるよー?」

「本当でやんす、事件のにおいでやんす」

「ペロッ……、これは……」

「なんでやんす? まさか青酸カリ……」

「土の味だ、間違いない」

「さっさと退散するでやんす、ずらかるでやんす~」

幼女「……」

男の子「おい、どうした?」

幼女「われてる」

男の子「なにが?」

幼女「もらった土だんご」

男の子「まー二日持てばいいほうだしな、土団子なんて──」

幼女「ちがうの」ポロッ

男の子「……それ」

幼女「こわれてるの」ポロポロ

女の子「ひっどーい! この子ったらせっかく作ってもらった土団子を壊してるわ!」

「え?」

「なになに?」

「またケンカ?」

幼女「ちがうよ、こわれてたの」

女の子「どうだか! せっかく貰ったものを壊すなんてサイテーよね!」

「貰った?」

「壊すってなに?」

「あれれー? おかしいなー」

「さっさと帰るでやんす」

男の子「ちょっと待て」

女の子「な……なに?」

男の子「こいつがそんな事するはずない!」

女の子「な、なんでよ?」

男の子「ライバルだからな!」

「あーもう、バーロー。みてらんねえ……しゃーねーな、この時計型麻酔銃で……と」


女の子「なっ?! とにかく。その子が壊したんだから、サイテーなのよ!」

コナソ「コホン、それがまずおかしいってんだ」

女の子「なにがおかしいの!」

コナソ「昨日はずっと俺と一緒に居たからな、こいつにいつそんな暇があったんだ?」

女の子「うっ……」

コナソ「アリバイが成立してるんだよ、こいつはシロだ」

女の子「そんな……そんなっ」

コナソ「それだけじゃない」

女の子「……」

コナソ「君は’貰った’土団子と発言したね?」

女の子「えぇ、したわよ! それが何か?」

コナソ「なぜそんな事を知っていたのか?」

女の子「……それは」

コナソ「それは? そこに最大の動機が潜んでいるんじゃねーか? お前は俺の事が──」

男の子「ムニャ?」

コナソ「(バッ、カ?! このタイミングで起きるだとっ?!)」

女の子「……っ」

「あ、逃げたぞ」

「どこ行くんだ~」

女の子「……っ」

タッタタタタタ

女の子「あぁぁああああああああああああ?!」

女の子「キラワレタきらわれた嫌われた!」

女の子「男の子から嫌われた」

女の子「どうしようどうしようどうしよう……」

女の子「なんで? なんでこんなことに……」

保護者『いいんですの? こっそりあの子に嫌がらせをしてやるんですの、やられたらやり返せですの』

女の子『えぇ? そんなの嫌だよ、それにもうわたし達……』

保護者『いいから! このままじゃママの腹の虫が治まらないの!』

女の子『でも……』

保護者『デモも大正デモクラシーもありゃしませんの! とにかく! 何か仕掛けてこないとご飯抜きですの!』

女の子『……』

保護者『返事は?!』

女の子『……はい』

保護者『それで良いんですの』

女の子『はぁ……どうしよう……』

女の子『あれは……?』



男の子『これあげる』

男の子『土だんご』

男の子『これ。仲直りのシルシな』

幼女『うん、ありがと』

書けてるかな?
1時間10レス位でさるさん食らってます。
時間空いたら確実にさるってますのでご了承ください。

女の子『男の子があの子と仲良くなってる』

女の子『胸が……ちくちくする』

女の子『……なんだかイヤだなあ』


保護者『いいんですの? こっそりあの子に嫌がらせをしてやるんですの、やられたらやり返せですの』

女の子『やられたら、やり返せ』

女の子『やられたら、やりかえせ』

女の子『でもっ、そんなのやっぱりだめだよ』


保護者『何か仕掛けてこないとご飯抜きですの!』


女の子『ヤラレタラ、ヤリカエス』

女の子『……誰も、見てない、よね?』

ガタッ

女の子『……』ビクッ

ニャーン

女の子『……はぁ。なんだ、猫か』

ニャーン?

女の子『ねぇ猫さん、わたしどうすればいいのかな』

ニャー

女の子『猫さん、あのね。わたし、家ではお父さんもお母さんもケンカばっかりでつまんないの』

ニャー?

女の子『でもね。あの子はお父さんもお母さんも居ないんだって』

ニャーン

女の子『それでも、見てるとわたしよりずっと楽しそうで。いいなって思った』

ニャア

女の子『ねえ猫さん、お父さんもお母さんも居ない方が幸せなのかな』

女の子『猫さん?』

女の子『そっか、つまんないよね。こんなはなし』


女の子『……』

女の子『……』

女の子『……、やっぱり帰ろう』

ニャーン

女の子『あ』

ニャ”ー!

ゴトン

女の子『どど、どうしよう。割れちゃった、だんご、割れちゃった』

ニャー?

女の子『……』

ニャー

女の子『……ううん、あなたは悪くないよ。悪いのはわたし、悪いことをしようとしたからてんばつが下ったんだよ』

ニャ?

女の子『ほら、いいから、あとはわたしがやるから』

ニャー

女の子『ばいばい、猫さん』

ワイワイ

ガヤガヤ


男の子『おい、どうした?』

幼女『われてる』

男の子『なにが?』

幼女『もらった土だんご』


女の子『(だいじょうぶ、きのう考えたとおりにすれば)』

女の子『(これでお母さんからも嫌われない、猫さんもわるくない)』

女の子『(わるいのは、わたしなんだから)』



女の子『ひっどーい! この子ったらせっかく作ってもらった土団子を壊してるわ!』

幼女「ねえ、そんなところでなにしてるの」

女の子「っ!」ビクッ

女の子「……」

幼女「……あのね」

女の子「……」

幼女「コナソくんが教えてくれたんだけど、猫さんの肉球のあとがあったって」

女の子「……」

幼女「それから、お母さんから、ひどい事言われてたって」

女の子「……」

幼女「あのね、えっと、だから」

女の子「……」

幼女「女の子は、何もわるくないよ」

女の子「……」

幼女「だまってたら、何もわからないよ?」

女の子「……」

幼女「ねえ」

女の子「なんで?」

幼女「うん?」

女の子「なんでわたしより、楽しそうなの?」

女の子「おとうさんもおかあさんも居ないのに」

女の子「なんで男の子と仲良くしてるの?」

女の子「ねぇ、なんで?」

女の子「なんで……」

女の子「なんで、わたしじゃないの……」

女の子「わたしなんか、もう……っ!」

幼女「そんなことないよ!」

女の子「え?」

幼女「猫さん、この子でしょ?」

ニャー

女の子「ど、どうして」

幼女「肉球がぴったりだったの、みんなで探したんだよ」

男の子「見つけたの俺な!」

ニャーン

幼女「猫さんをかばったんだよね? えらいよ。良い子だよ」

女の子「わたし、わだし……ひどい事、しようと、でもっ……」

幼女「もういいよ、だいじょうぶ」

女の子「ごべんな……さい、ひどい……ごめん……」

幼女「うん、うん。わかった、わかったよ」

幼女「あのね、おじさんが言ってたよ」

女の子「……ひっぐ、な……に?」

幼女「悪いことしたらごめんなさいって言うんだよ、それでおしまいっ」

女の子「あう……うん」

幼女「ね? 男の子も」

男の子「おう! なんだかよくわかんねーけど、土団子くらいならいつでも作ってやるぜっ! だから泣くな!」

女の子「うん、……うん!」

ニャー

幼女「はい、これあげる」

女の子「これは?」

幼女「土だんご、あんまりじょうずに作れなかったけど」

ニャ?

女の子「……ありがとう、ありがと……う」

幼女「仲直りのしるし、ね」

女の子「うんっ!」

男の子「雨ふって、ダンゴ固まるだな!」

女の子「それなんか違う気が……」

幼女「でもだんごよりとうもろこしの方が好きだなあ」

男「なにーーーーーーーーーーーーーっ?!」

幼女「どうしたの?」

男「なんでもねぇ! ちくしょーーーーーー!」

幼女「ヘンな男の子、ね?」

女の子「ふふ、そうだね」

女の子「あなたって不思議な子ね」

幼女「そう?」

女の子「うん」

幼女「あのね、秘密おしえてあげる。ぜったい誰にもナイショだよ?」

女の子「ひみつ?」

幼女「あのね、良い子にしてるとクリスマスにさんたさんがもんぶらん持ってきてくれるの」

女の子「さんたさん?」

幼女「だから良い子にならなきゃいけないの」

女の子「わたしのところにも来てくれるかしら」

幼女「ぜったい! ぜったいきてくれるよ!」

女の子「ふふ、素敵な秘密ありがとう」

幼女「それじゃあ、今日からあたし達らいばるだね」

女の子「ライバル?」

幼女「あのね、らいばるってすごく仲のいい友達らしいよ」

女の子「ライバル……ライバルか、うん。わかった。今日からわたし達、ライバルだね」

幼女「うんっ」

女の子「わたし、がんばる」

幼女「うん!」

女の子「よろしくねっ!」

すんません、今日はここまでという事で。
明日の午後にまたもどってきます。

いらないと思うけど酉つけときます


ただいま、保守感謝。
 

男「──へぇ、それで女の子とライバルになったのか?」

幼女「うん!」

男「こんな年齢から三角関係……なのか?」

幼女「ちがうよ、らいばるだよ」

男「うーん……、そうだな。ライバルだな」

幼女「うん、ふぉれでね。ふぉれでね」

男「口にもの入れたまま喋るんじゃない、しっかり噛んでからにしなさい」

幼女「……」コクコク

幼女「……」モグモグ

幼女「……」ゴックン

幼女「おいしい!」

男「そうかい」

男「よし、お昼ご飯食べ終わったら買い物に行こう」

幼女「わー! おでかけー!」

男「隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう」

幼女「ゆうえんち?」 

男「ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ」

幼女「う~~~~、たのしみ!」

男「はは、そうかい」

パタン

男「よし、乗ったな?」

幼女「うん」

男「シートベルトは?」

幼女「つけたよ」

男「よし」

幼女「しゅっぱーつ!」

ブロロロロロロロロロ……

幼女「くるまはやーい」

男「そうだな、自転車よりは速いかな」

幼女「ろけっととどっちがはやいの?」

男「う~ん、そりゃロケットの方が速いなぁ」

幼女「う~~~~」

男「空とんでるからな、相手は」

幼女「おじさんも空とべる?」

男「どうだろう」

幼女「あ、止まっちゃった」

男「赤信号だからな」

幼女「う~~~~」

男「歩いてる時も赤は止まれだろ?」

幼女「?」

男「車も同じさ」

幼女「おんなじなの??」

男「交通ルールってやつさ、守らないと皆が困るからね」

幼女「そっか、わかった!」

男「よし、着いたな」

幼女「うんっ」

男「じゃー、何から買おうか」

幼女「なにをかうのー?」

男「晩御飯の食材と、日用品と。あと好きなもの何でも1個買ってあげよう」

幼女「ほんとっ?!」

男「あぁ、本当さ」

幼女「やったぁ!」

幼女「わぁ……ひろーい」

男「そうだね、広いなあ」

幼女「おうちより広いね」

男「はは、家の100倍はあるかもな」

幼女「あ! きらきらがある!」

男「きらきら?」


○○宝石店


男「なん……だと……」

幼女『おじさん、これ欲しい!』

男『お、決まったか』

幼女『うんっ』

男『どれどれ』

幼女『あのね、なんでもひとつかってくれるんだよね』

男『ああ、約束だからね』

幼女『じゃあ、これっ!』

男『なになに……、真珠のネックレス?』


価格35万円


男『なん……だと……』

ナン……

ダト……


幼女「おじさん」

男「なん……だと……」

幼女「おじさーん?」

男「はっ?!」

幼女「おじさんどうしたのー?」

男「あ、あぁ、なんでもないよ」

幼女「おいていくよー?」

男「あぁ、すまない。もうきらきらは良いのかい?」

幼女「うんっ、あたしこれあるもん!」

キラッ

男「貝のネックレスか」

幼女「うん」

男「似合ってるぞ」

幼女「えへへ、おじさんとおそろい」

男「そうだな、おそろいだな」

男「それじゃあ食材を買おうか」

幼女「ごっはん、ごっはん♪」

男「好きなもん作ってやるぞ、何が良い?」

幼女「う~~~」

男「なんでもいいぞ?」

幼女「とうもころし!」

男「とうもろこしだろ?」

幼女「う~~~~~」

男「ははっ」

男「じゃあトウモロコシと、あと何だ?」

幼女「たこさんういんなー」

男「トウモロコシとウインナー……、パスタでいいか?」

幼女「あのね」

男「ん?」

幼女「おじさんのりょうり、何でも好き! だからパスタも好き!」

ワイワイ

ガヤガヤ


──ザリッ

『ターゲットを目視で確認しやした』

──、了解ですの。

『これから手はず通りに事を進めますぜ』

──、やっておしまい。

『はぁ……、しかしいいんですかい? あんな小さな子を……』

──、お灸を据えてやりますの! 天罰ですのよ! その為のお金は支払ってますの!

『はいはい、わかりましたぜ』

『ん』

──、どうしたましたの?

『ターゲットに接近する人物を確認しやした』

──、誰ですの?

『さあ? 資料にはなかった顔ですぜ』

──、むきーーーー! ここにきて邪魔者ですの?!

『どうしやす? 中止にしやすか?』

──、中止なんてありえないですの!

『はぁ……了解、切りますぜ』

──ザリッ

先生「あれ?」

男「あ、どうも」

幼女「わー、せんせー」

男「こんにちは、先生もお買い物ですか?」

先生「こんにちは、偶然ですね。そちらも?」

幼女「とうもころしと、たこさんういんなーだよ!」

先生「そう、良かったわねぇ」

幼女「うんっ」

男「今日はいつもとなんだか印象が違いますね先生」

先生「あはは、いつも幼稚園ではジャージですもんね」

男「そのスカート、とってもお似合いですよ」

先生「あ……ありがとうございます」

男「それでは、また明日」


先生「あ! あのっ!」

男「はい?」

先生「よ、よければ一緒に回りませんか?」

男「ええ、いいですよ。せっかくですからね」

先生「や、やった」

男「?」

幼女「……」じー

男「じゃあ行きましょうか」

先生「はいっ」

男「これと、これと。あと、これ……か」

先生「たくさん買われるんですね?」

男「ええ、大型店だとディスカウントされてますからね。このトイレットペーパーなんか地元のスーパーより150円も安いんですよ」

先生「そ、そうなんですか」

男「先生のカゴは随分インスタントが多いみたいですね?」

先生「え、あ、はい。あの、私……あんまり料理が得意じゃなくて、ついついこういうのに頼ってしまうんですよね」

男「それじゃあ栄養も偏るでしょう」

先生「そうなんですよ~」



男『よろしければ今度の日曜日、うちでご飯をご馳走しますよ』

先生『えぇ?! いいんですか?』

男『あの子がいつもお世話になっている御礼です』

先生『そんな……私は何も……』

男『いいえ、この際だから申し上げます』

先生『は、はい? なんですか?』

男『先生、ずっと一目見た時からあなたの事が好きでした。結婚を前提にお付き合いください』

先生『は……はい……喜んで……』

先生「そんな……でも……あぁ……」

男「先生?」

先生「ひゃっ!?」

男「どうしたんですか? 何か考え事でも?」

先生「な、なんでも! なんでもないです!」

男「そうですか?」

先生「ええ、なんでも! はい!」

男「……好き……な……ありますか?」

先生「好きっ?!」

男「何か好きな食べ物はありますか?」

先生「あ、……食べ物、ですか」

男「えぇ」

先生「肉じゃがとか、ビーフシチューとか」

男「おぉ、家庭的ですね」

先生「……を、作ってみたいです」

男「なるほど」

男「料理もやってみると意外と楽しいものですよ」

先生「そうでしょうか、私……不器用だから……」

男「始めてみると、新しい自分が見つかったりするかもしれませんよ」

先生「新しい……自分、ですか」

男「私もあの子を預かってから色々と初めてみましたが、料理も一通りは作れるようになりましたよ」

先生「すごいですね……子育てされてるんですもんね」

男「いや私なんてまだまだ。むしろあの子から教えられる事の方が多いくらいですよ」

>>298
すみません、誤字でした。


× 男「私もあの子を預かってから色々と初めてみましたが、──」

○ 男「私もあの子を預かってから色々と始めてみましたが、──」

先生「……あの」

男「?」

先生「こうしてると、その、夫婦、みたい……ですよね」

男「……しまった」

先生「え、どうしたんですか?」

男「あの子が居ない」

先生「へ?」

先生「どうしよう……、あの、私ったら会話に夢中になってて……ああ、ごめんなさい!」

男「落ち着いてください、子供の足です。そんなに遠くに行ったとは思えない」

先生「そ、そうですね」

男「先生はこの事を警備員に伝えてください、私はあの子を探してきます」

先生「は、はいっ」

すみません、とりあえずここまでで
もこの時間帯ならバンバン投下できると思いきやすぐさるっちゃいますね。
また夜に戻ってきます。

ワイワイ

ガヤガヤ


便利屋「で」

幼女「次はあそこあそこ!」

便利屋「なんであっしはお嬢ちゃんのお守りなんぞやってんでしょうね」

幼女「次は二階~!」

便利屋「へいへい、ちょいと待つっすよ」

幼女「はやくはやく~」

便利屋「っていうか、ターゲットが向こうからこっちに来るなんて。あっし今日まだ何もしてないっすよ……ラッキーというか幸運というか」

幼女「おいていくよ~」

便利屋「あ~もう、ちょっと待つっすよ~」

便利屋「はぁ……、いつまでこんな便利屋なんて仕事をやってるんすかね……あっしは」

幼女「るんるん♪」

便利屋「お得意さんからの依頼だから引き受けちまったけど……」

幼女「るーんるん♪」

便利屋「よく考えたらこれ誘拐なんじゃ……」

幼女「るんるーん♪」

便利屋「はぁ……正直もうこんな仕事辞めて実家に帰りたいですぜ……」

幼女「次あっち~」

便利屋「あ、こらこら。一人で行っちゃだめっすよ~、迷子になるっすよ~」

幼女「次はここ!」

便利屋「へいへい」


幼女「次はあっち~!」

便利屋「ふえ~い」


幼女「えっとね、次は──」

便利屋「屋上の遊園地がそんなに楽しいんすかねぇ」

幼女「つぎは~あっちに行きたい!」

便利屋「お嬢ちゃん、ちょっと休憩しやせんかい?」

幼女「う~~~~」

便利屋「アイスでも買ってきやすから」

幼女「わー! ありがと!」

便利屋「はぁ……子供は暢気でいいっすねぇ。ほら、あそこのベンチに座るっすよ」

便利屋「ほい、買ってきたっすよ」

幼女「お兄さんありがと!」

便利屋「お安い御用っすよ」

幼女「ねーえ?」

便利屋「何ですかい?」

幼女「お兄さん、だーれ?」

便利屋「あっしですかい?」

幼女「うんっ」

便利屋「お嬢ちゃんのおじさんのお友達……っすよ」

幼女「おじさんの?」

便利屋「えぇ、そうっすね」

幼女「じゃあ、お兄さんもとうもろこし食べにくる?」

便利屋「トウモロコシ?」

幼女「うんっ、ばんごはん」

便利屋「トウモロコシ、……か」

幼女「?」

便利屋「いや、なんでもねぇです」

幼女「あのね、とうもろこしってとってもおいしいんだよ!」

便利屋「知ってやすぜ」

幼女「たいようのあじがするの」

便利屋「っ」

────────
────
──


『いいかぁ、よく聞け息子よ。農家ってのは太陽の味を作ってんだよ』

『太陽の味?』

『おうよ、お天道さんがくれたものを父ちゃん達がこうやって形にしてるのさ』

『ふ~ん』

『見ろ、この玉蜀黍。太陽の色してんだろ?』

『ただの黄色じゃん』

『かっかっか、お前にゃまだわからんか』

『むー、なんだよ』


便利屋「……太陽の味、……か」




幼女「とうもころしきらい?」

便利屋「とうもろこし、ですぜ」

幼女「すき?」

便利屋「あっしの実家は農家ですぜ、玉蜀黍なんか毎日食ってやした」

幼女「えぇ~! いいなぁ」

便利屋「本場の玉蜀黍をしらないとはお嬢ちゃん、モグリですぜ」

幼女「もぐら?」

幼女「じゃあこんど、お兄さんの作ったとうもころし食べさせてね!」

便利屋「……っ」

幼女「どうしたの?」

便利屋「いや……、なんでも無いですぜ」

幼女「どこかいたいの?」

便利屋「心が……少し」

幼女「あのね」

便利屋「?」

幼女「なきたいときは、ないてもいいんだよ?」

便利屋「……はは」

幼女「いいんだよ」

便利屋「……お嬢ちゃんの方が大人っすね」

幼女「こどもだよ?」

────────
────
──


『子供なんかじゃねぇよ!』

『なんだと! 父ちゃんに向かってその口の利き方はなんだ!』

『うるせえ! なんでわかってくれねぇんだよ! もう……もう、こんな家かえらねぇよ!』

『……今何て言ったっ?!』

『もう出てくって言ったんだよ!』

『……お前はまだ子供だ、……アテはあるのか? ちゃんと食べていけるのか?』

『今更父親面すんじゃねーよ!』



便利屋「お嬢ちゃん、よく聞いてほしいっす」

幼女「なあに?」

便利屋「あっしは、お嬢ちゃんに嘘をついてやした。あっしは本当はおじさんの友達なんかじゃないんですよ」

幼女「えぇっ、そうなの?」

便利屋「本当は……悪の組織に雇われてる悪い人間なんですよ」

幼女「あくのそしき?」

便利屋「だから……、騙しててごめんなさいっす」

────────
────
──

『お前……俺を騙してた……のか?』

『はっ、ひっかかるお前の方が悪いんだろうが』

『ちょっと待ってくれよ、お前を信じて家まで飛び出してきたのによ!』

『そんなの知ったこっちゃねぇよ。金さえ貰えれば俺はそれでいいの、じゃ』

『まっ……待てよ! 待ってくれ!』

『ははは、あばよ~』

『そん……な……』


『くそ……あいつ……畜生っ……』

『何が儲かる話だ! 何が……くそ!』

『あれだけ親父に啖呵きって……家出までして、これからどうすりゃいいんだ……』

『金も全部もっていかれちまったし……』

ゴソゴソ

『ん? カバンの奥のほうに……なんだこの箱?』

カパ

『封筒と、なんだこりゃ、トウモロコシ?』

『ん? 封筒の裏に何か書いてるな』



少ないけれど、もっていきなさい。

それと、おなかがすいたらたべなさい。


父より。

モグモグ

『あぁ……』

モグモグ

『しょっぺぇなあ』

モグモグ

『……』

モグモグ

『太陽の、あじ……か』



便利屋「……あっしは、本当に……っ。……大バカ野郎なんすよ」



便利屋「ごめん。ごめんな、お嬢ちゃん」

幼女「お兄さんはわるくないよ?」

便利屋「いや、事実こうやってお嬢ちゃんを──」

幼女「お兄さん、一緒にあそんでくれたもん」

便利屋「そういう手口なんすよ」

幼女「アイスもくれたし」

便利屋「大人は金持ちなんすよ」

幼女「それに!」

便利屋「……それに?」

幼女「とうもころし好きなひとに悪いひとは居ないんだよ」

便利屋「──っ」

幼女「お兄さん、ちゃんとごめんなさいしたから」

便利屋「……え?」

幼女「あたし、今日はお兄さんと遊んだだけ」

便利屋「お嬢、ちゃん?」

幼女「お兄さんも、今日はあたしと遊んでただけ」

便利屋「お嬢ちゃん……」

幼女「あくのそしきなんかにまけないで」

便利屋「あぁ……、合点承知ですぜ」

幼女「それじゃ、あたしおじさんのところに戻るね」トコトコ

便利屋「お嬢ちゃん!」

幼女「うん?」

便利屋「あっしは……もう一度、最初から頑張ってみるっすよ!」

幼女「うんっ」

便利屋「あっしの作ったとうもろこし、食べてくれっす」

幼女「わかった!」

便利屋「達者で!」

幼女「ばいば~い」


男「……はぁ……。あの子、一体どこに行ってしまったんだ……」

男「私さえもっとしっかりしていれば……」

男「……だから、文章も書けなくなってしまったんだろうな……」

男「いや、今は弱音を吐いている場合じゃない」

男「まだ探していないところがあるはずだ」

先生「あのっ!」

男「あ、先生」

先生「警備員の人にも協力してもらいましたが、1階と2階には居ませんでした」

男「となると、3.4.5階ですか」

先生「それと、あと屋上ですね」

男「屋上?」

先生「えぇ、子供があそべる、ちょっとした遊園地みたいなのがあるらしいですよ」

男「遊園地?」

男『隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう』

幼女『ゆうえんち?』

男『ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ』

幼女『う~~~~、たのしみ!』


男「まさか……」

先生「あ、っと。どこ行くんですかっ?」

男「屋上です! たぶんそこにっ」 

先生「……居ませんね」

男「くっそ! 私は……、私は一体何をやっているんだ……」

先生「諦めないでください!」

男「っ」

先生「私達が諦めて、どうするんですか」

男「……」

先生「大丈夫です、きっと」

男「えぇ、すみません。ちょっと頭に血が昇っていました」

先生「きっと、きっと……お腹がすいたらもどってきますっ」

男「どういう理論ですか、それ──」


ピンポンパンポーン

「迷子センターです。白のワンピースに、貝のネックレスをした4歳の女の子を預かっております」

「繰り返します、迷子センターです──」

「──、2階の管理事務局までお越しください」

ピンポンパンポン


先生「ね?」

男「すみません、さっきの放送の子。私の家族かもしれないのですが」

「はい、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」

幼女「あ、おじさん!」

トコトコ

幼女「わ~、おじさんだ~!」

男「まったく……、急に居なくなるから、びっくりしたぞ」

幼女「ごめんなさい」

男「こわかったか?」

幼女「ううん、こわくなかったよ!」

男「そうか、よかった……本当に、よかった」

「しっかりしたお子さんですね。泣きもせず自分から’迷子です’って尋ねてきましたよ」

男「そうなのか?」

幼女「うんっ」

男「はは、こいつは参ったな」

「これからはちゃんと見ていてくださいね」

男「はい、ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ」

幼女「あ、せんせ~」

先生「良かった、ちゃんと見つかったんですね」

男「えぇ、本当に色々協力していただいてありがとうございました」

先生「そんな、頭を上げてください。私は何も……」

男「いえ、感謝してもしきれないくらいです」

先生「いえいえ、それじゃあ私はこれで……」

男「一度きちんと御礼をさせてください」

先生「え?」

男「次の休みの日にでも、私でよければご飯でもご馳走させてください」

先生「……」

男「先生?」

先生「へ?」

男「どうでしょうか?」

先生「え? あぁ、もう全然、全然オッケーです!」

男「でしたらまた詳しい事は後でご連絡致しますね」

先生「はひっ!」

幼女「せんせ~、何かヘンだったね?」

男「そうか?」

幼女「む~~~~」

男「さあ、帰って晩御飯を食べようか」

幼女「とうもろこし!」

男「パスタな」

幼女「とうもころし!」

男「とうもろこし、な。ん? ちょっと待ちなさい、口の周りに何かついてるぞ」

幼女「えっと、これはね。ア」

男「あ?」

幼女「あ~~、なんでもなーい」

ワイワイ

ガヤガヤ


男の子「んだよお前、迷子になったのか?」

女の子「えぇ? そうなの?」

幼女「うんっ」

女の子「だいじょうぶだったの? ヘンな人に連れていかれたりしなかった?」

幼女「ヘーキだよ!」

男の子「だっせーな、俺だったら絶対迷子なんかになんねーし!」

女の子「わたしだったら……、どうなるんだろう」

男の子「お前だったらぴーぴー泣いてそうだな!」

女の子「なっ、なんですって!」

男の子「ひえっ?」

ポーン

幼女「あ、ボールが」

男の子「やべっ、また雷ジジイの畑に……」

女の子「ふん、ジゴウジトクよ」

男の子「く……」


「こらー、誰っすかー。あっしの畑にボール蹴りいれたのはー、ダメっすよー」


三人「ご、ごめんなさーい」

保護者『失敗! 失敗ですの! あんな子供如きに諭されてどうするんですの! 連れ去って近くの公園に放置する契約でしたの!』

『奥さん、あっしはお金よりももっと大切な事を教えてもらいましたぜ』

保護者『むきーーーーーーーー! 何を生意気な! 世の中金、金、金ですの!』

『貰った金は返すっす、そんなに金が好きならもっていきやがれ』

保護者『べ・ん・り・や・ふ・ぜ・い・がぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!』

『あっしはもう店をたたみますぜ、仕事なら他を当たってくれ』

保護者『むきーーーーーーーー!』

保護者『おさまらない! このままでは腹の虫がおさまりませんの!』

保護者『このままでは終わりませんの!』

たぶんこの後すぐさるさんになるからこの辺りでちょっと休憩します
風呂入って11時くらいにまた戻ってきます

◇ ◇ ◇ ◇



キュキュ


ゴクゴクゴク


男の子「……、ぷはー! 生き返るぜ!」

女の子「もう、水道水がぶ飲みなんてはしたないわね」

男の子「こまけぇことはいいんだよ!」

女の子「まったく……おおざっぱなんだから。そう思わない?」

幼女「うん、おおざっぱ」

女の子「ほら、2対1よ?」

男の子「ぐ……」

男の子「2対1がなんだ、すーてきふりでも突破しなきゃゴールはうばえないだぜ!」

女の子「数的不利なんて難しい言葉よくしってるわね、意味わかってんの?」

男の子「もっちろん!」

女の子「どうだか、怪しいもんね」

男の子「あ、カアちゃんだ! おーーーーーーーーーーーーーーい!」

「かえるわよー」

男の子「じゃあな二人とも! まった明日~」

幼女「ばいばい」

女の子「またあしたね」

男の子「じゃあな~!」

女の子「それじゃあ次は何してあそぼっか?」

幼女「んーとね」

女の子「あやとりする?」

幼女「うんっ」

女の子「じゃあ取ってくるね」

幼女「あ、おじさんだ!」

男「おーい、迎えにきたぞ」

幼女「おじさーん!」

男「今日も楽しかったか?」

幼女「うんっ、あのねっ、今日はね──」

男「そうかそうか、帰ったら詳しく聞かせてくれ」

幼女「うんっ! それじゃああたし、帰るねっ」

女の子「あっ、うん……ばいばい」

幼女「ばいば~い!」

保護者「あーーーーーーーーーーーーーら?」

男「?」

保護者「ごきげんあそばせ」

男「保護者さん、こんにちは」

保護者「男性が毎日こんな時間に送り迎えって大変じゃあーーりませんの?」

男「いえ、私は自由業ですので時間の融通はきくんですよ」

保護者「まっ、まままままままま。定職には就かれてませんの?」

男「えぇまあ」

保護者「そのお年で定職に就かれてない……不憫、不憫ですの。わたくし、涙がほろりほろりとこぼれてしまいますの」

男「はぁ……」

保護者「知り合いの会社を紹介してあげてもいいですの。ちょーっと1年くらい遠い海での仕事ですの、オーッホッホ」

男「せっかくのお話ですが謹んでお断り致します」

保護者「まっ、人の厚意を無下にするなんて……ひどい人ですの」

男「私は今の生活に満足していますから」

保護者「後で後悔しても遅いですのよ」

男「えぇ、ありがとうございます」

保護者「……ふん」


女の子「……」

幼女「おじさんたち、むつかしいおはなししてるね」

女の子「ごめんね」

幼女「え?」

女の子「おかあさん、……ああいう人だから」

保護者「帰りますのよ!」

女の子「はい」

幼女「ばいばい」

女の子「ばいば──」

保護者「ほら! さっさと行きますの!」

男「私達も帰ろうか」

幼女「あのね、おじさん」

男「なんだ?」

幼女「あたしのおかあさんって、どんなひと?」

男「……ん」

幼女「おとうさんは?」

男「……」

幼女「どこに居るの?」

男「お前の両親は」

幼女「うん」

男「……すまん、今は話せない」

幼女「む~~~」

男「すまない……」

幼女「それじゃあ」

男「ん?」

幼女「さんたさんに聞いてみるね」

男「あ……あぁ、そうだな」


幼女「おやすみなさーい」


スヤスヤ

スヤスヤ


パタン


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr......


男「姉さん?」

『よー、元気してるか弟よ』


男「元気さ、相変わらずだよ」

『相変わらず暗い声してるなー!』

男「姉さんに似て暗い声してるよ」

『あっそ』

男「そっちはどう?」

『さっむい、昨日から雪ふってる』

男「こっちはまだ暑いよ」

『日本の夏は世界で一番蒸し暑いわ、誇って良いわよ』

男「あんまり誇らしげに思えないんだけど」

男「それで、今日はどうしたのさ。声がいつにも増して弾んでる気がするけど」

『捜査に進展があったの』

男「へぇ」

『これであの人の冤罪を証明できるかもしれない』

男「……姉さん」

『なによ』

男「その台詞、聞いたの5回目だよ」

『捜査にはね、現場100回っていう言葉があるの』

男「うん」

『まだ5回目よ』

男「……101回になったら?」

『そんなの決まってるわ』

男「?」

『102回目になるだけよ』

男「いつになるんだよ、それまで」

『いつまでもよ』

男「今日、あの子に言われたよ」

『何て?』

男「お母さんはどんな人かって」

『……そう』

男「なぁ姉さん、そろそろ帰ってこいよ、一回でいいから会ってやれよ」

『だめ、まだだめ。もう少し』

男「あの子の子供時代は一回しか無いんだぞ」

『わかってる』

男「わかってない」

『わかってるわ』

男「わかってないよ……」

『……そうね、ごめん』

男「姉さんにとって大事なものは何か、もう一度かんがえなよ」

『……』

男「旦那さんの事、諦めろって言ってるんじゃないよ。ただ、自分の娘と顔を合わせるくらい……」

『怖いの』

男「怖い、ね」

『あの事件の後、あたしは夫を選んだ。……この手は二つあるのにね』

男「あの子は姉さんを待ってる」

『あたしがあの子の立場だったら母親の事、きっと憎んでると思う』

男「姉さん」

『自分を捨てて外国で旦那の冤罪を証明する事が生き甲斐のバカな女、それがあたしよ』

男「あんまり自分の子供を見くびらない方が良い」

『──っ』

男「あの子は、姉さんが思ってるよりずっと強いよ」

『はっ、だったらなおさらよ』

男「……姉さん」

『……もう切るわね』

男「クリスマス、あの子が楽しみにしてる」

『クリスマス?』

男「サンタさんがモンブランを持ってきてくれるってな」

『そう』

男「姉さん」

『切るわよ』

男「姉さん!」


プツッ

ツーツー……ツーツー……


男「アメリカ合衆国と日本か」

男「絶望的な距離だな……物理的にも精神的にも」

男「いっそのこと、こちらから乗り込むか?」

男「いや、……それじゃあ意味がないんだよな」

男「姉さんが、ちゃんとあの子を受け入れる事ができなきゃいけないんだ」


男「その時が来たら……」


男「その時が来たら、私は喜べばいいんだろうか?」

男「はっ、何を」

男「そんなの喜ばしいに決まってる」


男「……喜ばしいに、決まってる」

チュン……

チュンチュン


幼女「おじさーん、朝だよー!」

男「ん……、あぁ、おはよう」

幼女「おはよー!」

男「随分はやいな」

幼女「えへへ、早起きしちゃった」

男「偉いな、早起きは三文の得と言うからね」

幼女「さーもん?」

男「……プ」

幼女「?」

男「……ク、あはははは」

幼女「おじさん?」

男「いや、すまない。……ははは、さーもん、そうか。サーモンか」

幼女「おじさんがおかしいー」

男「はぁ笑った、ありがとう。暗い気持ちも吹き飛んだよ」

幼女「う~~~~」

男「ん?」

幼女「おじさんばっかりわらってずるい!」

男「あはは」

幼女「う~~~~、またわらった~!」

おじさんは魔法使いかな・・・

男「よーし、それじゃ着替えて朝ごはんだ」

幼女「うんっ」

男「今日のお弁当は気合を入れて作ってあげるよ」

幼女「えーっ、なになに?」

男「そうだな、トウモロコシとタコさんウインナーと、あとそれから──」

幼女「やったぁ!」

とりあえず今夜はここまで、
また明日午後から書きます。

ほす

こっち夏で向こう雪、オーストラリア付近かと思ったらアメリカ…?
こまけー事はいいかw

ほっす

保守時間の目安 (平日用) 
00:00-02:00 60分以内    
02:00-04:00 120分以内    
04:00-09:00 210分以内    
09:00-16:00 120分以内     
16:00-19:00 60分以内    
19:00-00:00 30分以内.   

保守時間目安表 (休日用)

00:00-02:00 40ms以内                  
02:00-04:00 90ms以内       
04:00-09:00 180ms以内       
09:00-16:00 80ms以内        
16:00-19:00 60ms以内      
19:00-00:00 30ms以内 

自分で持ってきちゃった☆アハッ(´艸`o)゚.+:

おはようじょ

ただいま
保守感謝

幼女「う~~~~~」

「わん!」

幼女「わんわん!」

「う~~~~~~」

幼女「う~~~~」

「わん! わん!」

幼女「わん!」

「う~~~~」



男「どっちが犬だ」

まってたぉ!

「わん! わん!」

幼女「このこ、どうしたの?」

男「お隣さんが旅行に行くみたいでな、預かってきたんだ」

幼女「へぇ~」

男「こわいか?」

幼女「ううん」

男「実を言うとな」

幼女「うん?」

男「私は……その、すこし」

幼女「どうしたの、おじさん?」

男「犬が、怖いんだ……」

「わん!」

男「……」ビクッ

幼女「こわくないよー?」

男「そ、そうか?」

幼女「あたまなでなでしてあげると喜ぶよ?」

男「頭……噛まれないか?」

幼女「だいじょうぶ、ほら」

「くぅ~ん……」

幼女「ね?」

男「む……」

幼女「ほらほら」

男「……ぐっ」

「わん!」

男「ひっ?」

幼女「……」

男「……」

幼女「……おじさん」

男「あー……ゴホゴホ。おかしいな、風邪か? すこしうがいをしてこよう」

スタスタ

幼女「おじさん、君がこわいんだって」

「わん!」

幼女「こんなにかわいいのにねー」

「わんわん!」

幼女「お名前はなんていうの?」

「わん!」

幼女「んー?」

「わん! わん!」

幼女「あ! ワンちゃんね?」

「わん!」

幼女「よろしくね、ワンちゃん」

男「エサは……、貰ったドッグフードでいいんだよな」

男「お手、伏せ、おかわり、待て……」

男「ちょっと難易度高すぎやしませんか?」


幼女「おじさーーん」

男「ん? なんだ?」

幼女「ワンちゃん、おなかすいたみたい?」

「くぅ~ん……」


男「そ、そうか」

男「このお皿に盛って……と」

「わん!」

男「う……さすがにゴールデンレトリバー、……でかいな」

幼女「よかったね、ごはんだよー?」

「わん! わん!」

幼女「さあお食べ~」

男「ちょ、ちょっと待て」

幼女「なーに?」

男「なんでもこの’大型犬の育て方’という本によるとだな……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「ふせ」

「くぅ~ん……」

幼女「おて」

「わん!」

幼女「まて」

「くぅ~ん……」

幼女「よくできました~、たべていいよ」

「わん!」

男「なん……だと……」

幼女「つぎはどうするの?」

男「え~とな、ちょっと待て」

幼女「わくわく♪」

男「ええっと、なになに? ’一日一度は適度な散歩に連れていくべし’?」

幼女「わ~、おさんぽ!」

「わん!」

幼女「わ、すっごくよろこんでるよワンちゃん」

男「尻尾がふりふりだな」

幼女「散歩に行けるのがうれしいんだねっ」

男「次は散歩か……幸い晴れてるし。となると問題は……首輪にこの紐を引っ掛けないといけないのか」

「わん!」

男「……」

「わん?」

男「……お、おとなしくしててくれよ……」

「くぅ~ん?」

男「よし……良い子だ、そのまま、そのまま……」

「わん!」

男「ひえっ?!」

幼女「も~、おじさんこわがりなんだから」

男「不甲斐ない……」

幼女「ほ~ら、散歩いこうね~」

ヒョイ

カチ

「わん!」

男「この手際の良さ……私よりデキる……」


男「いかんいかん……気を取り直して。それじゃあ近くの公園でも回っていこうか」

幼女「うんっ」

男「こうして見ると同じくらいの身長だなあ」

幼女「背中に乗れそう?」

男「はは、まさかそんな事──」

「わん!」

幼女「わーい」

男「──ちょっとパワフルすぎるんじゃないかあの犬……」

幼女「おじさんおじさん」

男「ん?」

幼女「なんだかもっと遊んで欲しそうだよ?」

「わん!」

男「ええっと? ’ボールやフリスビーで遊んであげてください’って書いてあるな」

幼女「ぼーる?」

男「あぁ、たしかお隣さんから預かっていたものが……」

ガサゴソ

男「あった、これか」

幼女「これをどうするの?」

男「投げるらしい」

幼女「投げてどうするの?」

男「とってきてくれるみたいだぞ?」

幼女「え~! かしこい!」

男「よし、まず私が手本を見せてやろう」

「わん!」

男「いくぞ」

「わん! わん!」


ポーン

テンテンテン……

コロコロコロコロ……


「くぅ~ん?」


男「なぜだ……なぜ動かん……」

幼女「おじさん」

男「うん?」

幼女「つぎあたしが投げてみるね」

男「あ……ああ、そうだね」

幼女「ワンちゃん投げるよ~」

「わん!」

幼女「えいっ」

ポーン

「わんっ」

パクッ

幼女「きゃ! すご~い!」

テクテクテク

幼女「ちゃんと持ってかえってきて、えらいねぇ」

「わん! わん!」

男「はは、すごいな。子供は」

男「なんでも吸収して、素直で」

男「それに引き換え、私ときたら……」


「くぅ~ん?」

男「ん?」

「くぅ~ん」

男「なんだ? ひょっとして心配してくれているのか?」

「わん!」

男「……」ビクッ

幼女「お~じ~さんっ。こわくない、こわくないよ?」

男「あ、あぁ……」

────────
────
──


姉『こわくない、こわくないってば』

『でもさっきこいつ、俺の事噛んだもん!』

姉『ちょっとじゃれてただけじゃない、大げさな』

『血! 血がでたよ!』

姉『あー、はいはい。青い血じゃなくて良かったねえ』

わん!

『ひえぇ?!』

姉『おー、じゃれてるじゃれてる』

『姉ちゃん助けて!』

姉『はっはっは~! あんたこいつに相当気に入られたねぇ』

『嫌だっ、こわいよ』

姉『だから怖くないって』

『う~~~~』

姉『よかったねぇ、一日遊んでもらえて』

『……もう犬なんか大っ嫌いだ!』

姉『あらそう』

『きらいきらいっ、大っ嫌い! 噛んでくるし、のしかかってくるし、吠えるし怖いし』

わん!

『ひあっ?!』

姉『あっはははははは、あんた面白すぎ!』

姉『あのね』

『なんだよ』

姉『こっちが怖い怖いって思ってたら向こうもそう思っちゃうの』

『だから何だよ』

姉『まず心を開かないとね、人間関係も一緒なのよ?』

『むつかしい話はわかんねーよ』

姉『そうね、おこちゃまにはちょーーーっと早かったかなーーー?』

『バカにすんな!』



男「心を、開く……ね」

幼女「おじさーーーん」

男「ん? どうした?」

幼女「そろそろかえろっ」

男「あぁ、そうだな。日も暮れてきたからね」

「わん!」

幼女「えへへ、いっぱい遊んだね?」

「わん! わん!」

幼女「わわっ、くすぐったいよう」

「くぅ~ん」

幼女「も~」

男「はは、すっかり仲良しだな」

幼女「うんっ!」

幼女「ただいまっ」

「わん!」

男「さて、晩御飯つくるか」

幼女「今日はなに~?」

男「今日は肉じゃがだ」

幼女「わ~い!」

男「すぐ作るからリビングで待っててくれ」

幼女「うんっ」

「わん!」

幼女「いこっ、ワンちゃん!」

「わん!」

幼女「その前にワンちゃんもご飯だべようねっ」

男「ちょっといいか?」

幼女「うん?」

男「あの、その」

幼女「どうしたの?」

男「わ、私にやらせてくれないか?」

幼女「うんっ!」

男「ありがとう」

幼女「おじさん、がんばって!」

男「あぁ、やってみるよ」

「わん!」

男「だいじょうぶ……こわくない、こわくない」

「くぅ~ん?」

男「お、おぉお、お手」

「わん」

男「ふ、せ」

「わんっ」

男「おかわり」

「わん!」

男「ま、待て」

「くぅ~ん……」

男「よしっ、食べていいぞ」

「わん!」

幼女「わ~、食べてる食べてる」

男「上手くいった……」

幼女「ねえおじさん」

男「うん?」

幼女「こわくなかったでしょ?」

男「あぁ……そうだな」

幼女「ねっ!」



男「よーし、じゃあもう一回だ!」

「わん!」

幼女「うんっ」

「わん! わん!」

幼女「たくさん食べてるねっ」

「わん!」

男「……なんだ、こんなに簡単な事だったんじゃないか」

「わん!」

幼女「そうだよ? かんたんかんたん♪」

男「……最初の一回を踏み出す勇気が、私には足りなかったのかもな」

幼女「ゆーきゆーき」

男「はは」

幼女「わたしもおなかすいた~」

男「おっと、ごめんごめん。もう出来てるよ」

幼女「わーい」

幼女「いただきますっ」

「わん!」

男「ゆっくり噛んでたべなさい」

幼女「……」コクコク

幼女「……」モグモグ

幼女「……」ゴックン

幼女「おいしいっ!」

「わん!」





「すみませんね、旅行中この子を預かってもらっちゃって」

男「いえいえ、お役に立てて光栄ですよ」

「今度お菓子でもお作りしますね」

幼女「わ~い、おかしおかし♪」

「ほら~、ポチ。かえるわよ」

「わん!」

「あら? ポチったらちょっとおデブちゃんになったかしら~? 明日からダイエットしましょうね~」

「くぅ~ん……」




男「ポチよ……すまん……、ついつい食べさせすぎてしまった……」

幼女「またおいで~」

「わん!」

とりあえずポチ編はここまで。
また晩御飯たべたら戻ってきます。

ただいま、保守ありがとうございます。
今夜はエビチリソースでした。

さるにならない程度で投下していきます。

ワイワイ

ガヤガヤ


先生「ごっめんね、みんな。このプリント、ほんとは先週渡すはずだったんだけど……先生ちょっと忘れてて」

男の子「しっかりしろよー!」

先生「ごめんごめん、おうちの人に渡してね」

幼女「はーい」

先生「それから、最近物騒な事件が増えてるらしいわ。みんなも気をつけてね」

「事件?」

「ほらコナソくん、さっさと帰るでやんす」

女の子「事件ってなーに?」

先生「えーっと」

幼女「?」

先生「なんだっけ……」

男の子「ほんっと、先生しっかりしろよー」

先生「とにかくっ、みなさん無事でいてください!」

「はーい」

先生「それじゃあ今日は終わります、さようなら」

「せんせー、さようならー! みなさん、さようならー!」

保護者「迎えに来ましたの」

女の子「おかあさん」

保護者「かえりますのよ」

女の子「あのね、えっと。さっき先生が」

保護者「なんですの? わたくしは忙しいんですの、さっさと帰りますのよ」

女の子「あ……うん」

保護者「ほら、さっさと車に乗りますのっ」

女の子「おかあさん、おやすみ」

保護者「まったくあの人ったら今日も帰ってこないんですのっ!」

女の子「おかあさん」

保護者「まったく何を考えて……、ん? どうしましたの?」

女の子「おやすみなさい」

保護者「ん? もうこんな時間ですの?」

パタン

女の子「……はぁ」

保護者「まったく、……あの人の事だけでも忙しいのに」

保護者「あのクソ生意気な若造を思い出すだけで虫唾が走りますの」

保護者「何かないですの?」

保護者「あのクソ生意気な青二才に一泡拭かせる方法は無いですの?」

保護者「……やはり私が直々に」

保護者「いや、それじゃあバレバレですの」

保護者「かといってまた誰かに任せて失敗したら……」

ピラ

保護者「ん? このプリントは……学費の納付のお知らせですの?」

保護者「げ、明日までじゃありませんの!」

保護者「まったく、もっと早く知らせて欲しいですの。仕方ない、明日の帰りにでも銀行に……」

保護者「!」

保護者「良い事を思いつきましたの」

保護者「この方法ならわたくしがその場に居てもなんら不思議ではありませんの」

保護者「あの男の吠え面をリアルタイムで拝むことができますの!」


保護者「ふっふーん♪」

保護者「そうと決まればさっそく準備ですの!」

保護者「必要なものは、覆面とあとモデルガンもあればリアリティが増しますの」

保護者「ちょっとびっくりさせてあげますの」

保護者「あの青二才の恐怖に怯える面が思い浮かびますの、きひひっ」

幼女「おじさん、これ。先生が渡してって」

男「ん? なんだ?」

『お食事のお誘い、待ってます』

男「うげ、忘れてた」

幼女「なんて書いてるのー?」

男「先生、怒ってたか?」

幼女「ううん、ご機嫌だったよ?」

男「そっか……、後で電話するか」

幼女「あとこれ渡してって言われたの」

男「ん? 学費の納入か、明日にでも銀行いくか」

幼女「ぎんこー?」

男「ああ、帰りに寄ってもいいかい?」

幼女「いいよー!」

ワイワイ

ガヤガヤ


保護者「あら?」

男「どうも」

保護者「あなたも学費の納付に?」

男「えぇ、まぁ」

保護者「奇遇ですの、わたくしもですのよ」

男「そうですか」

「3番でお待ちのお客様──」

保護者「そういえば今日は比較的空いてますのね」

男「そうなんですか?」

保護者「えぇ」

男「こんなもんじゃないんですか? 銀行って」

保護者「おかしいですの」

男「なにがです?」

保護者「他の親御さん達も納付のプリントを貰ってるはずですの、なぜこんなに少ないんですの?」

男「先生が渡すのを忘れてたって聞いてますけど」

保護者「まぁ、そうですの? まったく、若い先生はこれだから困りますのね」

男「はぁ……」

「4番でお待ちのお客様──」

男「そういえばお子さんはどうしたんですか?」

保護者「車で待たせてますの、振込みが終わったらすぐ帰りますの」

男「そうですか」

保護者「あなたこそ連れ子ちゃんはどこに居ますの?」

男「退屈だって言うんで横の公園で遊ばせてますよ」

保護者「あらそうですの?」

男「ええ」

「5番でお待ちのお客様──」

保護者「あなた、作家先生って聞きましたの」

男「ええまあ」

保護者「どんな本を書かれてますの? 参考までに教えて欲しいですの」

男「どんな……と言われましても」

保護者「まっ。まさか人様には言えない様な恥ずかしいものですの? ああいやですの」

男「よければ贈呈しましょうか?」

保護者「いりませんの、興味がありませんの」

男「そうですか」

ザワザワ

ザワザワ

保護者「それより──」

男「なんだか騒がしいですね」

保護者「そうですの?」

男「なんでしょうか?」




「全員静かにしろ!」

銀行員「ひっ?!」

「こいつが何だか分かるよな。おねーさんよお、風穴を開けられたくなかったら大人しく言う事を聞いてもらおうか」

銀行員「け……拳銃っ?」

「このバッグに有り金全部入れろ、全部な」

銀行員「ひっ」

「はやくしろ!」

「あー、人質のみなさん。誠に残念なお知らせだがよ、今からこの銀行は俺たちが占拠した」

「大人しくしてろよ、騒いだり暴れたりしたら手が滑ってコイツの引き金を引いちまうからよ」

「俺も本当はそんな事したかないが、不幸な事故が起こらないとも限らないからな……へっへ」

「まだ五体満足で居たいだろ? そうだろ? ケガはしたくないもんな、わかったら一箇所に固まれ」


保護者「ちょっと! どういう事ですの! 話とちが──」

「あぁ?! なんだこのババア!」

ドガッ!

保護者「きゃっ?」

男「……女性に暴行を加えるのは感心しませんね」

「なんだお前! この銃が見えないのか! 大人しくしてないと──」

男「わかりました、大人しくします」

「……っち、わかればいいんだよ。はやくあっちに行けっ」

男「保護者さん、大丈夫ですか?」

保護者「え……えぇ、大丈夫ですの……でもあなた」

男「これくらいなんでもないです、平気ですよ」

「おい! まだか!」

銀行員「ひっ」

「はやくしてくれよ、俺は急いでるんだよ。わかるか? 早くしないと車に乗ったこわーいおじさん達が俺を追っ掛けにきちまうからよ、へっへ」

銀行員「あの……でも……」

「口ごたえしてる暇があったらとっとと手を動かしやがれ!」

銀行員「ひぃ」

保護者「ご、強盗ですの……ほ、本物、本物の」

男「静かにしていましょう、彼らを刺激するのはあまり得策ではないです」

保護者「……彼ら? 犯人は一人ですのよ?」

男「最初に’この銀行は俺たちが占拠した’って言ってたじゃないですか。少なくともあと1人は実行犯がどこかに潜んでいるはずです」

保護者「そんな……」

男「とにかく今は静かに──」


「はやくしろっていってんだろうが!」


保護者「ひっ」ビクン

男「……」


ザワ

ザワ


「ねーねー、なんか騒がしくない?」

「見て見て、パトカーがいっぱいきてるよ」

「事件とか?」

「まさか銀行強盗だったりして」


幼女「……ぎんこー?」


「やだー、こっわーい」

「ちょっと聞いた? 拳銃もって立てこもりだって!」


幼女「……おじさん?」

「はい、ここから立ち入らないでください」

「危険ですので、みなさんは下がってください~」



警部「……状況は?」

「従業員、客を合わせて少なくとも15人以上が内部に取り残されたままです」

警部「犯人の人数は? 要求は?」

「確認されているのは1名、要求などは現在届いておりません」

警部「……ふむ」

「いかがいたしましょう、警部」

警部「何か要求があった場合は最大限譲歩しつつ人名の救出が最優先だ」

「はっ」

警部「隙があればいつでも制圧できる準備を整えておけ、いいな」




「あーあーあーあー、まったく。ねーちゃんがトロトロしてるから車に乗ったこわーいおじさん達が到着しちゃってくれやがったじゃねえの」




銀行員「そんな……、私は何もっ」

「お前、通報しやがったな?」

銀行員「ひっ?」

「死ぬか?」

銀行「……いや……いや……」

「はっは、嫌だよな。そうだよな、よーし、それじゃあ今から言う番号に電話をかけろ」

男(あの男、……巧妙だな)

男(もう一人犯人がいる事をちらつかせて私達を動かせないように仕向けた)

男(潜んでいるとしたらこの、人質の中に紛れ込んでいるのだろう)

男(……、もし騒いだり暴れたりした場合、最悪射殺……)


男(だが、あの言葉が嘘だったら?)

男(実行犯は一人だとすれば、上手く隙をつければ……)

男(いや、……何をバカな、危険が大きすぎる)

男(くそ、打つ手がないな)

『よーーーーーーう、俺が誰だかわかってるよな?』

警部「あぁ、だいたいな」

『だったら話は早い、早速逃走経路を用意してもらおうか』

警部「そんな要求がのめると思っているのか?」

『あらー? そんな事言っていいのかな? こっちには人質が居るんだよ? 俺と違って善良な一般市民がよ、へっへ』

警部「く……」

『15分後にまた連絡する』

よーーーーーう!

「ち、話のわからねぇおっさんだぜ」


子供「えっ……えっ、びえぇぇぇぇぇぇ~~~ん!」

母親「こらっ、静かにしてなさい」

子供「えぇぇぇぇ~~~ん!!」

母親「お願いだから静かにしてちょうだいっ」


「あー? なんか騒がしいなあ」


母親「……」

「お前が親か」

母親「……はい」

「黙らせろ」

母親「……、はい……」

男「ちょっと待ってくれ」

「なんだぁ?!」

男「子供に手を出すなんて最低だぞ」

「あんだと?!」


ザワザワ

ヒソヒソ

ソウヨネ

「お前ら黙れっ!」

ザワザワ

男「まだこんなに小さいんだ。お腹が空いたら泣く、お漏らしをしたら泣く、当たり前だろ」

「うるせえ、黙れっ!」

男「その子に手を出して見ろ、私が許さないぞ」

「く、……言わせておけば! 撃てるんだぞ、お前なんか簡単に──!」

男「撃てるものなら撃ってみろ、本当に撃てるのならな」

「なめやがって……!」


犯人B「待て、熱くなるな」

犯人B「無駄弾を撃つんじゃない」

犯人A「でもよっ」

犯人B「黙れ」

犯人A「……っち」


犯人B「おいお前」

男「はい?」

犯人B「お前の首に俺が当ててるモノ、何かわかるな?」

男「……」

犯人B「こいつはただの包丁だが、昨日俺が丹精込めて磨いたものでね。さて、どんな切れ味なのか試してみたい気分だ」

男「そいつで料理を作れば最高に美味しいんだろうな」

犯人B「まだディナーの一品にはなりたくないだろ? 大人しく座っていろ」

男「……わかった」

犯人B「そろそろ時間だな、もう一度電話をかける」


警部「……俺だ」

『やあ』

警部「……さっきの声と違うな」

『そこは今気にしなくても良い』

警部「……なんだ」

『要求は聞き入れられましたか? 警部さん』

警部「いま上と相談中だ」

『随分と悠長なんですね、あまりに遅いとあらぬ行動を取ってしまうかもしれませんよ?』

警部「まて! はやまるな!」

『なーんてね、冗談ですよ』

警部「……く」

『5分後、水と食料を寄越してください。正面玄関前に警部さん、あなたが一人で置きに来るんだ。こちらは私が受け取りにいきましょう、もちろん、妙な真似をすれば……わかってますね?』

犯人A「ほらよ、水だ。飲ませろ」

母親「……」

犯人A「……っち」



男「すみません」

犯人A「またお前か! なんだ!」

男「その子、随分と苦しそうにしてると思いませんか?」

犯人A「あぁ?!」

男「頬も随分赤い、熱があるみたいだ」

犯人A「だから何だって言うんだよ!」

男「人質なら私が請け負う、だから女性と子供達を開放してほしい」

犯人A「お前、何を勝手な事を──」

犯人B「まて」

犯人A「でもよ、こいつ生意気だぜ?」

犯人B「確かにこれだけの人数を俺ら二人で見るのはあまり現実的じゃない、こいつの言うとおり人質は少ないほうが良い」

犯人A「……っち」

男「どうなんだ」

犯人B「いいだろう、その通りにしよう」

男「ありがたい」

犯人B「ただし──」




「ちょ、ちょっと。だめですよ、入ったら!」



幼女「おじさん、おじさんが中に!」

「警察に任せて、下がっててください」

幼女「いやっ、離してっ! 助けにいくの!」

警部「どうした?」

「いや、この子が……」

警部「ん~? お嬢さん、どうしたのかな?」

幼女「おじさんが、中にいるの」

警部「おじさん?」

幼女「あたしのおじさん!」

警部「そうか、君のおじさんは必ず私達が助けるからね」

幼女「う~~~~~」

警部「市民を守るのが警察の仕事だ、任せてくれ。お嬢さん」

幼女「む~~~~~」

警部「約束しよう、必ず助け出してみせる」

幼女「……わかった、よ」

警部「誰か、この子を頼む」



「警部、犯人から連絡です」

警部「わかった」

『よーーーーーーーーーう、俺だ。逃げ道作ってくれた?』

警部「今、調整中だ」

『調整中ね、言葉をコロコロ変えちゃって役者だねえ? そんなに自分の首が大事?』

警部「何を……」

『良い知らせをくれてやる』

警部「何だね?」

『いまから女と子供を解放する』

保護者「……どうしてあたくしだけ……」

男「すみませんね、てっきり私以外は解放してくれると思ってたんですが」

保護者「……いえ」

男「幸い水も食料も届いています、じっくり助けを待つことにしましょう」

保護者「あの」

男「はい?」

保護者「どうして、あなたはそんなに平然としてますの?」

男「昔ね」

保護者「?」

男「ちょっと……色々ありまして」

保護者「何ですの?」

男「姉が──」



犯人A「よーーーーーーーーーう、楽しくお話してるところ悪いな。どうやら警察はお前ら救う気は無いらしいぜ?」

保護者「なっ? そんな事ありませんのよ!」

犯人A「せっかく人質を一部解放してやったのによ、俺らの要求に応える気は無し」

保護者「それはっ」

犯人A「お前らの命なんざ、結局あいつらには関係ねーって事だ」

保護者「そんな……そんなはず……」

犯人A「へっへ、お前も哀れだよなぁ」

保護者「……く」

犯人A「おっと、あんまり動かないこった。こいつが火を噴くぜ?」

保護者「……」

男「それくらいにしないか」

犯人A「あぁ?!」

男「あまり人をからかうもんじゃない」

犯人A「ったくよ! お前、ほんっとに生意気だよなあ! 居たぜ、俺の知り合いにもお前みたいなやつがよ! あーもう思い出しただけでも反吐がでそうな程良い人ぶったヤツがな!」

男「それは良い、その人とぜひ知り合いになりたいものだな」

犯人A「残念ながらお前はここでお終いだけどな」

犯人B「やめろ、バカ」

犯人A「……っち」

犯人B「つまらない事で熱くなるな、目的を忘れるな」

犯人A「わーったよ」

        /ヽ  ,. . .-‐…‐- . .
        {_/)'⌒ヽ: : : : : : : : : 〉`: 、

        {>:´∧;;;;;/. : : : : : : : : : : : : :ヽ
      /: : : /;;;;;;Y: : : : : : : : : : : : : : : : : : .___
.   /: : : :/丁⌒: : :∧ : : /: /` }: : : : : :ハ;;;;;;}

   /: : : :/: : :{: : 八: :{:>x/| /   |:i : : :}: : : };;;∧    保護者ですの!
.  /: : :/} : : :八Y⌒jY´んハ从  从-‐ノ: : :/Y: : :.
 /: : / /: :/: : : V(.  弋ツ    心Yイ : ∧ノ: : ハ
 !: : :!//i: : : : : 个i ''''     , {ツ /彡く: ハ: : : :i
 }: : :ヽ  / : : : i: :´{入   _     /: : : ∧: i i: : : |
〃. : : : ∨: : : :/l: :/⌒ヽ、  `  イ: : : :/ }: リ: : :ノ
: : :/\: : V : /ノ:/     VT爪_八: : : { 彡. : イ{
: :( /: \:} /: :/{     rv\j  { >‐=ミー=彡ヘ: ヽ
`)' ){: (  ): : :{八   /ヘJ ̄ ̄ {_/ /   \j: : 八: :}
 (  ー=ミ  彡'  ト、 / / 〔o〕     `トしヘ. _ \{ j ノ
   r=彡' ー=ァ |\{.      . -‐、‐=ァ′  ヽ  \(
   `フ   (   |   \_/  x个彳)   ∧   \
             ヽ   | _/  ∨ {\  /、ヽ     ヽ
            ヽ  ー-ヘ.    ∨j   ヽ{__>  . _}
            〉    \   \
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           /           \   \
            〈               j\   \
          / ー--==ニニ=く  \


ザワ

ザワ


先生「……ハァ……ハァ」

幼女「あ、先生」

先生「……ハァ……、無事?」

幼女「あたしは、外で遊んでたから……でもおじさんがまだ中に居るの」

先生「そんなっ、さっきニュースで人質は解放されたって」

幼女「おじさんが……がんばってるみたいなの」

先生「え?」

幼女「おじさんが、みんなを助けたんだって。けーぶさんが言ってた」

先生「そうなの?」

幼女「だから、あたしも、がんばっておじさんを待つの」

先生「……そう、でもこのままだと風邪をひいてしまうわ」

幼女「へーき」

先生「でも」

幼女「へーき」

先生「……じゃあ先生もここで待つわ」

幼女「せんせ?」

先生「無事くらい祈らせてもらってもバチは当たらないでしょ?」

幼女「うんっ」

先生「お願い……無事で居てっ」

女の子「おかあさん……遅いなあ」

女の子「でも車から出ちゃいけないって言われてるし……」

女の子「もうかなり経つよね」

女の子「……ちょっと、ちょっとだけなら良いよね?」

女の子「出ちゃえ」

パタン

女の子「うぅ、さむいなぁ」

女の子「はぁ……おかあさん、なにやってんだろ」

ザワ

ザワ

女の子「なんだろこの人だかり……」

女の子「う~ん、背伸びしても見えないや」

女の子「すみません、とおして……」

女の子「ぷは」

女の子「やっと出た」

女の子「あれ、……あそこに居るのって」

幼女「……」

先生「……」

女の子「二人してなにやってるんだろ? おーい」

先生「────というわけなの」

女の子「え?」

先生「あなたのお母さんは、あの中よ」

女の子「そん……な……」

先生「辛いでしょうけれど、今は待つしか……」

女の子「……うそ、うそだ……」

女の子「おかあさん、さっきまで、そばにいたのに」

女の子「ねえ、なんで?」

女の子「なんで?」

女の子「わたしがおかあさんの言う事守らなかったから?」

女の子「わたし……わた……たしがっ」

幼女「大丈夫だよ」

女の子「おかあさん、ほんとはね、ほんとは、いい人なんだよっ」

幼女「大丈夫」

女の子「本当はずっと怖がりで、いつも誰かにかまって欲しくて、寂しがりやさんなのっ」

幼女「うん」

女の子「ちょっと……お父さんとケンカしちゃって……最近はずっと大変で……でもっ、でもっ」

幼女「うん、わかるよ。大丈夫」

女の子「わたしが、わたしが……うぅ……」

幼女「大丈夫だよ、おじさんが何とかしてくれるよ」

女の子「うぅ”……う~、うえぇぇええええ~~~ん、おかあさあああああん」

幼女「よしよし、こわくない。こわくないよ」




幼女「おじさん、……大丈夫だよね?」



保護者「ちょっと、大丈夫ですの?」

犯人A「るっせぇ! ほっとけ! こんなのかすり傷だ! 畜生、バリケード張るのも一苦労だぜ」

保護者「いいから見せますの!」

犯人A「……なんでもねぇっていってんだろ」

保護者「確か絆創膏が……ありましたの、これを張っておきますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「ふん、大人しく言う事を聞きますの」

男「おい、これはこっちで良いのか?」

犯人B「ああ」

男「よ……っしょっと」

犯人A「……良いのかよ」

男「何がだ?」

犯人A「俺らはお前らを人質に取ってるんだぜ? なんつーか、そのよ、なんで協力的なんだ?」

男「これから共同生活が始まるわけだしな、仲が悪くてはお互い損しかしないだろ?」

犯人A「……」

男「そういう事だよ」

保護者「そういう事ですの」

犯人A「……っち」

保護者「わかったらさっさと絆創膏を張りますのよ」

犯人A「あーもう、わかった。わーったよ!」


犯人B「……」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「あんた、子供がいるのか?」

犯人B「……なぜそんな事を聞く?」

男「子供が泣いた時、水を要求してたから。優しい人だと思ったよ」

犯人B「はっ、強盗に優しいもクソもないだろう」

男「ははは、そりゃそうだ。言えてる」

犯人B「……ガキが、一人」

男「そうか、元気で?」

犯人B「さあな、別れた嫁についていったよ。もう10年以上会ってない」

男「10年か、そしたらもうかなり大きくなってるんじゃないか?」

犯人B「もう……見てもわかんねえよ」

男「実は私も今、子育て真っ最中なんだが」

犯人B「お前が……?」

男「なかなかどうして、手間がかかるものだな。子供というのは」

犯人B「そりゃそうだ、腹が減ったら泣くし、小便を漏らしただけで泣く。夜はうるさくてかないやしねぇ」

男「まったくだ」

犯人B「まぁ……悪くはなかったがよ」

男「そうだろ? そういうもんだよな」

犯人B「ふ」

男「会いたいとは思わないのか?」

犯人B「思ったさ」

男「なら」

犯人B「今更こんな親父に会ってどうする、わざわざ失望させてやることはないさ」

男「そうかい」

犯人B「……時間だ、電話をする」




犯人A「どわっ」

保護者「もう! 何をやってますの! 殺人的に不器用ですの!」

犯人A「さっきからうるせぇんだよ! 何様のつもりだよ!」

保護者「いいから貸しますの!」

犯人A「あ、ちょ」

保護者「こんなもの、こうすれば」

犯人A「……この女……瞬間接着剤、鍵穴にぶちこみやがった」

保護者「何を言ってますの、あなたがあまりに下手糞だから代わりにやっただけですの!」

ザワ

ザワ


警部「内部の様子はどうだ?」

「人影が動いているのが確認できますが、それ以外は……遮蔽物が邪魔をしています」

警部「くそ! あまり長引くと人質にも悪影響が出る……」

「警部、どうされますか?」

警部「ぐ……、上からは待てと言われている……」

「ですが!」

警部「わかっている! このまま長引けば長引くほど我々は不利だ……」

「だったら」

警部「軽率な行動に出て人命が失われたらどうする!」

「っ」

警部「耐えるんだ、機会を待て」

「はっ」




保護者(……これでいいんですのね?)



男『ちょっといいですか?』

保護者『なんですの?』

男『し、あまり声を大きくしないで聞いてください。犯人達に聞かれたくない』

保護者『……はい』

男『リマ症候群という言葉に聞き覚えは?』

保護者『ありませんの』

男『なら、今から極力犯人側に協力的な態度をとってください』

保護者『なっ』

保護者『そんな事……危険ですの』

男『大丈夫、彼らも罪を大きくはしたくない様ですし。我々を傷つける事は考えにくい、大切な人質ですからね』

保護者『でも……そんな事をしてどうなりますの?』

男『少なくとも、このまま膠着しているよりはマシな程度です』

保護者『そんなっ』

男『でも。そこからなにか糸口をつかんでみせます、必ず』

保護者『……わかりましたの』

男『生きて帰りましょう』

保護者『当たり前、ですの』

さるさん解けたかな?

すいません今日はここまでという事で。
また明日午後に戻ってきます。
もう少しだけお付き合いいただけたら幸いです。

唯「とうもろこし、いる?」

澪「いらん」

唯「ね~」

律「なんだ」

唯「とうもろこし、食べる?」

律「いらねぇ」

唯「う~~~~~」

澪「どうした?」

唯「とうもころし、たべる?」

澪「とうもろこしだろ?」

唯「う~~~~~!」

ただいま
いつも保守ありがとうございます。

TV『さて、続きまして昨日からお伝えしているニュースですが……○○市の銀行に強盗二人が立てこもる事件が発生しています』

TV『現場からお伝えします、そちらの様子はどうですか?』


『はい、現場です。時折中で人影が動いているのがこちらからは確認できますが、警察側と犯人側で膠着状態が続いております』

『冬空の下、現場には緊張と疲労の色が見て取れます』

『情報によりますとまだ人質二名が中に取り残されたままという事で、安否が心配されます』

『事件発生から36時間、一向に解決の糸口が見出せないまま、事態は平行線を辿っております。現場からは以上です』


TV『ありがとうございました。捕らわれている二名は子供を近くの幼稚園に通わせている親という事で、子供達も相当心配されているのではないでしょうか』

TV『なお、この実行犯は先月のショッピングモールへの強盗事件、先々月のATM襲撃事件と同一犯かと目されており────』

TV『────続きまして専門家の方の意見を聞いてみましょう』


プチン

──フッ


男「ん……? 電気が」

犯人A「消えた?」

男「停電か?」

犯人A「ブレーカーを見てくる、妙なマネはするなよ」

男「わかったよ、懐中電灯をもらってもいいかな?」

犯人A「あぁ、ほら。つかえ、お前も」

ポイ

保護者「わ、わ。いきなり投げるなんて危ないじゃないですの!」

犯人A「ったく、うるさい人質だぜ」

保護者「ふん」

カチ

カチカチ

カチ


男「ん? ちょっと壊れてるのかな?」


カチ

カチ


男「あ、ついた」

保護者「わたしくのと交換しますの?」

男「いや、いいですよ」

保護者「ああはやく明るくなって欲しいですの」

男「大丈夫ですよ」

保護者「……」

男「きっとね」

ゴト

保護者「ひっ」

男「大丈夫、怖くないですよ」

保護者「はぁ……、なんだかどっと疲れましたの」

男「ちょうど外も暗いですし、少し睡眠を取られては?」

保護者「あなたが起きているのにわたくしだけ眠るわけにはいきませんの」

男「そうですか」

保護者「そうですのよ」

保護者「それにしても、ただでさえこんな状況で停電とか……勘弁願いたいですのよ」

男「大丈夫ですか? お手洗いとか」

保護者「……」

男「あまり我慢なさらない方が……」

保護者「……そうですのね」

男「なあ」

犯人B「なんだ?」

男「女性がお手洗いに行きたいそうだ」

犯人B「……好きにしろ」

男「わかった。ほら、立てますか?」

保護者「ありがとう、ですの」

保護者「大丈夫、一人で行けますのよ。懐中電灯もあることですし」

男「わかりました、お気をつけて」



犯人B「……」

男「エアコンも切れたみたいで、少し寒いですね」

犯人B「……あぁ」

男「ついてませんね、停電なんて。向こうの仕業ですか?」

犯人B「これが計画的な停電なら警察がこの隙に突入してるだろ、そうじゃないってことはどっかに落雷でも落ちたか」

男「あるいはケーブルが焼ききれたか」

犯人B「……どっちにしろ、状況は変わらんさ」

男「そうですか」

犯人B「お前も……子供が居るんだったな」

男「そうですね」

犯人B「すまないな」

男「何を?」

犯人B「……いや、あの時間お前がここに居なければ、巻き込む事もなかったと思ってな」

男「あの子は、強い」

犯人B「?」

男「子供ってのは、大人が思うよりも、もっとずっと強いものですよ」

犯人B「あ? ……あぁ、そうだな」

男「きっと今も私の無事を祈ってくれていると思いますよ」

犯人B「はっ、それはそれは」

男「あなたのお子さんも、……同じ気持ちなんじゃないでしょうか?」

犯人B「さあな」

男「……」

犯人B「もう顔も思い出せないんだ、何を考えているかなんてわからねえよ」

男「どんなお子さんだったんですか?」

犯人B「……そうだな、子供のくせにやけに強気で、よく転んで、よく泣いて、よく喋る……どこにでもいる子供だな」

男「特別ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたにとっては、ね」

犯人B「……」



ドン!



犯人A「いてっ?」

保護者「いったたたたたた。もう! どこを見てますの!」

犯人A「あぁ?! お前こそ何勝手にほっつき歩いてんだよ!」

保護者「お手洗いですの、許可はいただいてますのよ」

犯人A「……っち」

保護者「停電、直りそうですの?」

犯人A「ちょろいもんだぜ、これをこうして、こうして……」

保護者「随分慣れた手つきですのね」

犯人A「昔、仕事でな」

保護者「まぁ! 昔から強盗を?」

犯人A「バカ、ちげーよ。ちゃんと給料もらって働いてたさ」

保護者「そんな真面目な人がどうしてこんな事を?」

犯人A「……」

保護者「わたくしで良ければ聞きますのよ」

犯人A「……友人を一人、だましたんだよ。俺は」

保護者「ご友人を?」

犯人A「儲け話──、まぁ。金がすぐ手に入るから協力してくれっていったらホイホイ付いてきやがってよ」

保護者「まぁ」

犯人A「その時俺はギャンブルで作った借金でヤキが回っててな、どうしても金が欲しかったんだよ」

保護者「お金……」

犯人A「まったくバカなヤツだ。今思い出しても笑えるくらいにな」

保護者「でも、素敵なご友人ですのね」

犯人A「……バカだよ、あいつは最後の瞬間まで自分が騙されてるなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった」

保護者「それは、あなたを信じていたからでは無いですの?」

犯人A「……信じていた、か」

保護者「そうですのよ、世の中そんな人はあまり居ないですのよ?」

犯人A「……」

保護者「それだけあなたとその人の間に絆があったんじゃありませんの?」

犯人A「……ずっと、後悔してるんだ」

保護者「?」

犯人A「どれだけ悪い事をしたかわかってる、これが成功したら海外でやり直すつもりなんだ。時期がきたらちゃんと償いだってする」

保護者「それなら……」

犯人A「ただ」

保護者「?」

犯人A「俺はあいつになんて顔して会えばいいか、わからねえんだ……」

「お嬢ちゃーーーーーん!」

幼女「あ、お兄さん!」

「ハァ……ハァ……テレビで見やしたよ!」

幼女「すごい汗、大丈夫?」

「いやもう、居ても立ってもいられなくなって走ってきたんすよ。お嬢ちゃんこそ、ずっとここに?」

幼女「……うん」


先生「あの、どちら様で?」

「おっと、申し遅れやした」

「あっしは、幼稚園のお隣で農家をやっとるもんでさあ。以後お見知りおきを」

先生「あ、雷さんのところの?」

「へいそうです、いつも父がお世話になってます」

先生「いえ、いつも新鮮な野菜を届けてくださってありがとうございます」

畑の兄さん「へへっ、お役に立てて光栄ですぜ」

キキーー

バタン


畑の兄さん「父ちゃん!」

「バカ息子が一人で先に突っ走りよってからに! 老人に運転させよって!」

畑の兄さん「で、でもよ」

「なにをボサっと突っ立っとるんじゃ?」

畑の兄さん「え?」

「さっさと手伝うんじゃ、新鮮な野菜のカレーを作って皆さんに体力をつけてもらうぞい」

畑の兄さん「合点承知だ!」

先生「あの、私も手伝います」

幼女「あたしも!」

女の子「わたしも!」

畑の兄さん「よーし、全員協力してやるっすよー!」


「おー!」


幼女「けーぶさん、これたべて」

警部「ん? カレーかい?」

幼女「みんなでつくったの」

警部「ありがとう、いただくよ」



「警部っ、中の様子がっ」

警部「……ん? 電気が消えたな」

「どうします?」

警部「待て、なんだ……? 光が……?」

--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「……」


--・・
-・
--・

--・・
・・
--・-・


警部「メッセージだ……人質は二人とも無事だっ」

幼女「おじさん!」

女の子「おかあさん!」

男(さて……、私にできる限りの事はした)

男(子供を上手に使って人質を解放して、犯人のもう一人を炙り出した)

男(犯人側からある程度の信頼を得る事もできた、少なくともトイレに行くくらいの自由を勝ち取った)

男(電気を落としてこちらの意思も外に伝えた)

男(だが……まだ向こうには拳銃がある)

男(……くそ)

男(あと一手で良い、突入の機会を作りさえすれば……)

男(……何か、何かないのか……?)

パ


保護者「あ、電気が付きましたの」

男「ほんとですね」

犯人A「ちょろいもんよ」

犯人B「……」

保護者「おなか空きましたの……」

犯人A「あいつら、何か美味そうなモン食ってやがるな」

保護者「この香り……カレーですの?」

犯人A「ったく、暢気なもんだぜ」

犯人B「そういやあいつも……カレーが好きだったな……」

保護者「ま、そうですの?」

犯人B「嫁が入院してた時な、俺が作ったカレーをうめえうめえって食いやがるんだよ」

男「当たり前ですよ」

犯人B「あん?」

男「あなたが丹精込めて作ったカレーが不味いわけありません」

犯人B「……」

男「子供は意外と、そういうところに敏感なんですよ」

犯人B「そうか……、そうだったのか……」




チクタク

チクタク




男「なあ」

犯人B「……なんだ?」

男「今からでも自首しないか?」

犯人A「ばっ! 何言ってんだてめぇ!」

男「これ以上罪を重くする事はない、今ならまだ。やり直せる」




チクタク

チクタク


先生「はい、これ食べて元気だしてくださいね」

畑の兄さん「まだまだあるっすよー」







チクタク

チクタク


警部「中の合図でいつでも突入できるようにしておけ」

「はっ」







チクタク

チクタク


幼女「おじさん……」

女の子「おかあさん……」





チクタク

チクタク



男「どうなんだ」

犯人B「……」

男「なあ?」

犯人B「そうだな……、もう疲れた……か……」

犯人A「ちょ、待てよ。お前! それでいいのかよ!」

犯人B「……」

男「お前はどうするんだ?」

犯人A「決まってるだろ! お前らがそのつもりならこの銃で……」

チクタク

チクタク



犯人A「あれ? 銃が無い、どこに──」

保護者「お探しのものはこれですの?」

犯人A「なっ」

保護者「形勢逆転ですの!」

犯人B「……俺達の負けだ、もう……ここまで、だ」

犯人A「ばか……な」

保護者「大人しくしてもらいますのよ!」

男「さあ、外に電話をかけてもらおうか」



「突入! 突入だ!」

「ほら、暴れるな」

「大人しくしろ!」

犯人A「いってぇ! いてえよ! 暴れねえから押さえつけるの辞めろって!」

「静かにしろ!」

「ほら、さっさと歩け!」



犯人B「……ありがとう」

男「はい?」

犯人B「俺たちは、本当は……誰かに引導を渡して欲しかっただけなのかもしれない」

男「まだやり直せますよ、きっと」

犯人B「そうだろうか」

男「諦めちゃだめです」

男「保護者さん! すごいじゃないですか、一体いつの間に奪っていたんですか?」

保護者「ふふ、敵を欺くにはまず味方からですの」

男「いやぁ、もうダメかと思いましたよ」

保護者「これで一件落着、ですのよ」

男「ですね」

保護者「帰りますの、わたしく、少し疲れてしまいましたの」

フラッ

男「あ、」

ガシ

保護者「かたじけませんの」

男「いえ」

保護者「これで、生きて帰れますのね」

男「そうですね」

保護者「……今回はあなたに助けられましたの、だから借り一つという事にしておきますの」

男「は?」

保護者「あたくし、借りたものはキチンと返す主義ですのよ」

男「はは、そうですか」

保護者「ま、まぁ。これから特別に仲良くして差し上げてもよろしくってですの」

男「はい。これからもあの子共々、よろしくおねがいしますよ」




畑の兄さん「いやー、良かった。良かったっすねぇ」

先生「無事に解決してくれて、本当に……」

畑の兄さん「あっしはもう、ハラハラドキドキで……」

先生「私も……」

畑の兄さん「ところで犯人ってどんな人なんっすかね」

先生「さ、さあ?」

畑の兄さん「ちょっと見にいくっすよ」

先生「あ、ちょ」



犯人A「──お前っ」

畑の兄さん「……」

犯人A「……」

畑の兄さん「……久しぶりっすね」

犯人A「……」

畑の兄さん「面会! 絶対いきやすよ!」

犯人A「……」

畑の兄さん「元気してるっすよ!」

犯人A「……っち」

畑の兄さん「わかってるんすか!」

犯人A「ったく、いつまで経ってもとんだお人好し野郎だぜ……」

「さあ、歩け」

犯人A「あーもう、わかった。わかったってば」




先生「……あのひと」

犯人B「……」

先生「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」

犯人B「なんだ?」

先生「あ……あのっ」

犯人B「……」

先生「……」

「ほら、行くぞ。とっとと歩け」

犯人B「……あぁ」

先生「……」




バタン

犯人B「……そうか……、知らない間に……大きくなったんだな……」



幼女「おじさん! おじさん!」

男「ただいま」

幼女「おかえり!」

男「すまないな、随分待たせた」

幼女「あのね、あのね!」ギュ

男「うん?」

幼女「あたし、ずっと。信じて待ってたよ! ずっと! おじさんなら大丈夫って!」

男「あぁ……」

幼女「おじさん! おじさん! おじさんが……ぶじ……ぶ……ふえぇぇぇぇぇ~~ん」

男「よしよし、怖かったかい?」

幼女「ごわ”ぐな”い”……」

男「ほら、私は大丈夫」

幼女「おじさん……おじさん、ずっと、ずっとあたしのそばに居て……」

男「……」

幼女「ずっと……離れないで……」



先生「ずっと泣かなかったんですよ、この子」

男「先生」

先生「おじさんを待つんだって、ずっと。むしろ女の子を気遣ってさえいました」

男「……そうですか」

先生「でも、安心して溢れてきちゃったみたいですね」

先生「私も……ずっと不安だったんですよ」

男「先生」

先生「怪我はないですか?」

男「えぇ、おかげさまで」

先生「痛いところは?」

男「ずっと座っていたからお尻が少し痛むくらいですね、ははは」

先生「もう!」

男「すみません、ご心配をおかけしました」

先生「心配くらいさせてください」

男「……はい」



女の子「おかあさん!」

保護者「あら」

女の子「おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん!!」

保護者「はいはい、おかあさんですのよ」

女の子「うぅぅぅぅうううう~~~~~~」

保護者「不安にさせてごめんなさいですの」

女の子「おかあさん……」

保護者「わたくし、あなたに謝らないといけない事がありますの」

女の子「え?」

保護者「振り返るとわたくしの自分勝手であなたに随分辛く当たってしまった事が沢山ありますの」

女の子「そんな……良いよ、そんな事」

保護者「いいえ、わたくし、間違ってましたの。今回の事で色々気づかされましたの」

女の子「おかあさん」

保護者「あの人を見習って、わたくしも今日からがんばりますの……だから、ついてきてくれますの?」

女の子「そんなの……」

保護者「?」

女の子「そんなの、当たり前だよっ! わたしのおかあさんはおかあさんだけなんだからっ!」



「お前……」

保護者「あなた……どうして……」

「よかった……無事で……、心配したんだぞ……」

保護者「仕事で東京だったのでは……」

「お前の命より大切なものが他にあるか!」

保護者「ふふ……、うれしい事を言ってくれますの」

「すまない、今までつまらない意地ばかり張ってしまって……」

保護者「わたくし達、今まですれ違ってばかりで……もっと話し合うべきでしたのね」




警部「それでは後日、色々とお話をお伺い致しますので──」

男「ええ、わかりました」

警部「あの」

男「?」

警部「新人の頃、あなたの姉上には色々とお世話になっておりました」

男「あぁ、そうですか」

警部「今は、お元気で?」

男「……えぇ、まぁ。向こうで元気にしてますよ」

警部「そうですか、それは良かった。よろしくお伝えください」

男「わかりました」

警部「それでは、失礼致します」

男「お疲れ様でした、警部さん」

二箇所間違ってました。
申し訳ない、どうやら疲れてるのは自分の方みたいです。

>>638
×保護者「わたしくのと交換しますの?」
○保護者「わたくしのと交換しますの?」

>>671
×保護者「帰りますの、わたしく、少し疲れてしまいましたの」
○保護者「帰りますの、わたくし、少し疲れてしまいましたの」

保護者「大団円ですのよ」

男「さ、我々も帰りましょう」

保護者「ですのね」

幼女「かえろっ、おじさん」

保護者「かえりますのよ、二人とも」



「あの~……、お取り込み中すみません。ちょっといいですか?」

保護者「ん? 誰ですのあなた?」

「えぇ、すみません奥さん。あの男性をちょっと脅かす仕事を請け負ってたんですが……」

保護者「……」

「ちょっと寝坊しちゃいまして、へへっ」

保護者「……ナンノ事デスノ? 誰デスノ、アナタ」

「えぇっ、そりゃないですよ」

警部「む。あやしい人物だな」

「ちょ……やべっ、にげろっ」

警部「あいつを追えっ!」

「ひえぇぇえぇええ~~~~!!!!」

とりあえずここまでで、
また晩御飯たべたらもどってきます。


保守ありがとうございます。
パン粉を買いにいったら自転車がパンクして大変でした。
ゆっくり投下していきます。

先生「由々しき事態だわ」




先生「12月、世間じゃクリスマスムード一色じゃないですか」

先生「恋人の居ないクリスマスを今年も送るなんて……あぁ」

先生「あの約束も……なんだかんだで延び延びになってるし」

先生「うぅ~~~~」

先生「がんばれ、私!」グッ

先生「う~~~~~」


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr....


先生「はい?」

『あ~、ひさしぶりぃ?』

先生「久しぶりじゃない、学生時代以来?」

『そうね~、あのさ』

先生「どうしたの?」

『あたし彼氏できたよ』

ピ


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr....


先生「なに?」

『ちょっとちょっと、いきなり切る事ないんじゃない? ひどくない?』

先生「どうせ自慢されるってわかってるんだもん」

『まぁねぇ』

先生「う~~~」

『それでクリスマスはオシャレなレストランでお食事なわけよ』

ピ


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr....

先生「それで?」

『あんた可愛いんだし彼氏が出来ないのが不思議でならなかったわけよ』

先生「あ~あ~、もうききたくないいやみはききたくない」

『ちゃんと好きな人にはアプローチしなさいよ? 良い人が居たなって思っててもそのうち他の女に取られちゃうんだからね』

先生「わ……わかってるよ、そんなの」

『ほんとにぃ?』

先生「わかってるよ!」

『その声は好きな人が居る声ですねぇ~? 誰? 誰なの?』

先生「なっ、関係ないでしょもうっ」カァアア

『かっかっか』

先生「もう、切るよ」

『へいへい、またかけるねぇ~デートの報告をしてあげよう』

先生「いらないっ」

ピ




Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr....


先生「もう! 何よっ!」


男『あ……すみません……』

先生「あっ」

男『お取り込み中でしたか?』

先生「あのっ、これは、そのっ」

男『すみません、でしたらまた掛けなおしますね』

ピ

先生「あぁぁぁあ、私ったらなにやってるの!」

先生「ばかっ、ばかっ」

先生「うぅぅぅ~~~~」



「せんせー?」



先生「ん? どうしたの?」

「おべんとう、たべないのー?」

先生「あ、うん。すぐ食べるねっ」

「残さず食べないとだめだよー?」

先生「うん、そうだね」

「先生の様子が変でやんす、事件の匂いでやんす」

「事件……?」

「コナソくんメガネがキラリと光ってるでやんす」

「…………これはっ」

「どうしたでやんす?」

「このリンゴはっ……」

「まさか毒リンゴ……」

「おいしい」

「とっとと帰るでやんすよコナソくん」

幼女「あのねあのね」

男の子「ん?」

幼女「やっぱりとうもろこしが一番だと思うの」

男の子「そうか~?」

幼女「うんっ」

男の子「俺はスイカの方が好きだぜ」

幼女「スイカはデザートだよ?」

男の子「とうもろこしだって野菜かどうか怪しいぜ?」

幼女「野菜だよ」

男の子「野菜っていうショーコあんのかよ?」

幼女「う~~~~~、いじわる~~~~」

男の子「へへっ」

幼女「先生に聞いてみようよ」

男の子「だなっ」

女の子「せんせー?」


先生「……」ポー


幼女「ねぇ、今日なんだか先生ヘンじゃない?」

女の子「そうよね。いつもおっとりしてるけど、今日はそれが一段と増してる気が……」

幼女「せんせー?」

先生「……」ポー


男の子「わかった! 先生は……」

幼女「先生は?」

男の子「先生はっ、地球を侵略しにきた宇宙人に操られてしまったんだっ」

女の子「えーーーー! ……って、そんなわけあるかっ」

幼女「えーーーーーーー! そうなのっ?!」

女の子「ほら、一人信じちゃったじゃないの」

男の子「へへっ」

女の子「ったく、発想が子供なんだから」

男の子「お前も子供だろうよ」

女の子「あんたは特に、よ」

男の子「じゃーお前はなんで先生がポーっとしてるのかわかるのかよ」

女の子「わかるわよ」

男の子「なんだよ?」

女の子「それは……」

幼女「それは……?」

女の子「ずばり、恋よ」

男の子「ねーよ」

女の子「はぁ?!」

男の子「ないない、それはない」

女の子「なんでよっ」

男の子「あの先生が?」

女の子「そうよ」

男の子「ないない、先生にかぎってそれはない」

幼女「こい?」

女の子「そうよ、恋よ」

男の子「だからないってば」

女の子「なんでそんな頑なに否定すんのよ」

男の子「だったら相手はだれなんだよ」

女の子「そんなの決まってるじゃない」

男の子「だれだよ」

女の子「だれって、そりゃ……」

幼女「だーれ?」

女の子「はぁ……、子供ばっかりだわ」


ワイワイ

ガヤガヤ


「せんせー、さようならー! みなさん、さようならー!」


幼女「あ、お兄さんだ!」

畑の兄さん「おーっす、お嬢ちゃん。元気してるっすか?」

幼女「うんっ」

畑の兄さん「先生はどこっすか?」

幼女「んっと、こっち!」

畑の兄さん「ありがとうっす」

幼女「いいよー」

幼女「ねえお兄さん」

畑の兄さん「ん? どうしたんすか?」

幼女「あのねー、しつもんがあるの」

畑の兄さん「あっしでわかる事なら協力しやすぜ」

幼女「メロンは野菜なの?」

畑の兄さん「難しい質問っすねぇ」

幼女「むつかしいの?」

畑の兄さん「実は畑で取れるものはみんな野菜なんっすよ」

幼女「スイカも?」

畑の兄さん「そうそう、だからスイカもメロンもイチゴもみんな野菜って事になってやす」

幼女「けど?」

畑の兄さん「果物って言っても問題はないっす、人によっちゃ木から取れたら果物だって言う人もいるっすよ」

幼女「へー!」

畑の兄さん「野菜であり、果物でもある。そんなトコっすかねぇ」

幼女「ありがとお兄さん」

畑の兄さん「お役に立てたっすか?」

幼女「うんっ」

畑の兄さん「そいつは良かった」

申し訳ない。


>>736
×畑の兄さん「そうそう、だからスイカもメロンもイチゴもみんな野菜って事になってやす」
○畑の兄さん「そうそう、だからスイカもメロンもイチゴもみんな野菜って事になってやす……けど」

畑の兄さん「で、先生はどこでやしたっけ」

幼女「あっちあっち」

畑の兄さん「あ、ちょっと待っておくれやす」

幼女「お兄さんはやくー」

畑の兄さん「今いきやすよー」


先生「……」ポー

幼女「先生っ!」

先生「ひゃいっ?!」

幼女「先生~、お兄さんが先生にようじだって」

畑の兄さん「どもども」

先生「あ、こんにちは」

畑の兄さん「聞くところによると先生、夜はインスタントばかりだとか」

先生「だ、誰からそんな事を……」

幼女「し、し~らないっと」

畑の兄さん「そこで、取れたての野菜をプレゼントさせてください」

先生「えぇ、いいんですか?」

畑の兄さん「園長先生もうちのリピーターなんすよ、味は折り紙付きでやす」

先生「そんな……悪いですよ」

畑の兄さん「いいですいいです、あっしも昔はここで育ちましたし、せめてもの恩返しっすよ」

先生「じゃあ、ありがたく頂きますね」

畑の兄さん「はい、気に入ったらまた言ってくださいね。すぐ持ってきやすから、なんせお隣ですからね」

先生「はい、ぜひ」


男の子「……畑の兄さんか」

女の子「へ?」

男の子「先生の好きな人って、畑の兄さんだったのか!」

幼女「えぇっ?!」

保護者「なんの騒ぎですの?」

男の子「あのね、実は……カクカクシカシカ」

保護者「そうでしたのっ?! ……いままで全く気がつかなかったですの」

女の子「えぇっ? えぇぇ?」

保護者「そうと決まれば早速二人をくっつけますの、善は急げですの。わたくし達が恋のキューピットですのよ」

男の子「おー!」

幼女「おー!」

女の子「えぇぇぇぇぇぇっ?!」


保護者「そうと決まれば早速行動ですの、みんな聞いて欲しいですの……カクカクシカシカ」

男「ホームパーティー?」



幼女「うんっ、みんなで集まってやろうって」

男「私も行っていいのかい?」

幼女「うんっ、保護者さんがね。おじさんにはぜひ来て欲しいって」

男「はは、そいつは行かないと後が怖いなあ」

幼女「こんどの日曜日だって!」

男「日曜? 日曜か……」

幼女「どうしたの?」

男「たしか先生も参加するんだったな?」

幼女「そうだよー?」

男「なら、いいか。よし、私も行くよ」

先生「肉と野菜、どっちが好きかって?」

男の子「俺は断然肉派なんだけど、先生はどっちかなーって」

先生「そうねぇ……お肉も美味しいけれど、お野菜も美味しいから」

男の子「畑の兄さんの野菜、うめーよな!」

先生「そうだね、美味しいね」

男の子「それじゃ俺、サッカーしてくる!」

先生「は~い、気をつけてケガしないでね」



男の子「やっぱりだ、野菜が好きだってよ。間違いねぇ、畑の兄さんにベタ惚れだぜありゃ」

幼女「わぁ~」

女の子「……」

男の子「なんだよさっきから黙りこくって、ノリ悪いなー」

女の子「そんな……ばかな……」



保護者「コホン。え~、本日はお日柄もよくみなさんお集まりいただきありがとうございますの」



保護者「料理もたくさん用意しましたの、冷めない内にいただいてくださいまし」

男の子「おー! すっげー!」

幼女「おいしそう……」

男「おぉ、これはすごい」

保護者「それでは皆さん、かんぱーい」



「かんぱーい!」

幼女「おじさん、これ、これ食べたい!」

男「よし、今取ってあげるよ」

幼女「はやくはやく! なくなっちゃう!」

男「たくさんあるから大丈夫だよ」

畑の兄さん「う~ん、お嬢ちゃんはいつも元気っすね」

男「はは、全くです」

畑の兄さん「それにしても保護者でもないあっしがなんで呼ばれたのか……」

男「お隣のよしみでしょ? 気兼ねせず楽しみましょうよ」

畑の兄さん「はぁ……実はあっし……こういう場がちょっと苦手でして」

男「私もですよ」

畑の兄さん「そうなんで?」

男「こう、女性が多いと特にね」

畑の兄さん「はは、たしかに。右を見ても左を見ても母親の方ばっかりですもんね」

幼女「おうち、おっきいね!」

女の子「こんなに人が入ったのは初めてかも」

幼女「たのしい?」

女の子「うん」

幼女「そっかぁ」

女の子「とっても、……たのしいっ」

幼女「よかったね」

女の子「あのね」

幼女「うん?」

女の子「おかあさん、前よりとっても笑うようになったの」

幼女「そうなんだ」

女の子「わたし、今とっても楽しいよ!」

幼女「うんっ」

先生「あう……畑の兄さんとずっと二人で話してるなぁ……」

先生「うぅ~~~~、何話してるんだろう……」

先生「私も混ざりたいなぁ……」

先生「うぅ~~~~」

先生「勇気がっ、勇気がでないっ……」

先生「がんばれ! 私っ!」


保護者「……」

保護者「あつい」

保護者「あつい視線ですの……っ」

保護者「畑の兄さんの方をじいと見つめるあの視線……間違いないですのっ」

男の子「だろー? 俺が言うんだから間違いないって」

保護者「なんとかして二人を近づけますの、ミッションですのよ」

男の子「おー!」

保護者「!」

男の子「早速行くぞー!」

保護者「ちょっと待ちますの、ターゲットが動きましたの」

男の子「お? おぉ」


先生「はぁ……とりあえずおなかすいたし、何か食べよう。これ美味しそうだなぁ、なんの野菜使ってるんだろう」

畑の兄さん「あっと、すいやせん。これ食べます?」

先生「あ、お先にどうぞ」

畑の兄さん「いえいえ、あっしが盛りますよ。レディーファーストっす」

先生「あ、ありがとうございます」

畑の兄さん「いやしかし、楽しいパーティーっすね。みんなが笑顔だ」

先生「そうですねぇ」

畑の兄さん「良い仕事されてるっすね、先生」

先生「そんな……私は何も、ただあの子達の成長のお手伝いをしてるだけですよ」

畑の兄さん「成長のお手伝い、いいじゃないですか。畑も同じですよ」

先生「はは、そうですね。まだ言葉が通じるだけ子供達のほうがわかりやすいですけれど」

畑の兄さん「雨にも負けず、風にも負けずってやつでさぁ」

先生「文字通り、ですね」



男の子「……おぉ」

保護者「良いっ、良いムードですのっ」

男の子「……おぉ」

保護者「押せっ、押し倒せですのっ。既成事実ですのよっ」

男の子「鼻血でそう」

畑の兄さん「それじゃ、あっしはあっちの料理を食べてきやす」

先生「あ、はい」


男の子「あ、どっか行っちゃった」

保護者「あら……残念ですの」

男の子「でも間違いないよね」

保護者「えぇ、間違いないですの」

女の子「既に間違いだらけだと思うけど……」

幼女「これおいしいよー」

女の子「そうね、わたしたちはお料理たべてましょ」

幼女「これもおいしいよー」

先生「あれ? あの人は……? どこいったんだろう?」




男「……」カキカキ

男「なんだろう、あの日を境に少しづつ書けるようになってきかのかもしれないな」

男「だけど……まだ足りないな……」

先生「こんな所に居たんですか」

男「あ、先生」

先生「何をやっているんですか?」

男「えぇ、ちょっとメモを」

先生「メモ?」

男「思い浮かんだ言葉を忘れないうちにしたためておくんです」

先生「さすが作家さんですね」

男「すみません、クセで。最近はやってなかったんですけどね」

先生「どんな言葉を書いてたんです?」

男「いやお恥ずかしい、人様に見せられるようなものではないですよ」

先生「そ、そうですか……」

男「あー、コホン。まぁ、すこしなら……」

先生「本当ですかっ」

男「えぇでも、その……」

先生「?」

男「私、字が下手糞で……」

先生「大丈夫! 読めますっ、暗号の解読とか得意なんですっ」

男「あ、暗号ってそんな」

先生「す、すみませんっ」

男「はは、面白い人ですね? 先生」

先生「す……すみません……」

先生「ええっと。とうもろこし……? たこさんういんなー……?」

男「あ!」

先生「これは?」

男「すみません、そっちは晩御飯のレシピでした」

先生「……」

男「お恥ずかしい」

先生「ひょっとして、……結構おっちょこちょいです?」

男「いえ、……実はかなり」

先生「意外な一面、発見です」

男「あの子が来てからしっかりしようと、色々頑張ってはいるんですけどね。……日々精進です」

先生「料理もされて、育児も仕事も……尊敬しちゃいます」

男「いや、あの子が居たから。私は変われたのかもしれません。今の私があるのはあの子のおかげですよ」

先生「そうなんですか?」

男「実は私、ついこの間まで全く文章が書けなくなってしまっていたんです」

先生「え?」

男「情けない話ですが……私はわりと根を詰めるタイプらしくて、一度悩み始めるともうどんどん落ちていってしまって……」

先生「なんとなくわかります、それ」

男「それで、ちょっと荒れていた時期がありましてね。あの子が来るちょっと前の話です」

先生「あまり……そんな姿を想像できないんですが……」

男「はは、そうですか?」

男「まぁとにかく、そんな私もあの子の力を借りて少しずつですが立ち直っていきました。あの子に感謝ですよ、本当に」

先生「たしかに……あの子はなんだか不思議な力を持っている気がしますね」

男「私も時々、そんな気がしますよ」

先生「あのっ」

男「はい?」

先生「つ、つかぬ事をお伺いしますが……」

男「なんですか? 私でよければ何でもお答えしますよ」



先生「あ……あの、ご、ご結婚はされてらっしゃらないんですよね……?」


畑の兄さん「結婚? あっしはもう結婚してますぜ?」



保護者「……」

男の子「……」

女の子「ほーら、だから言ったじゃない」



「え、……えぇぇぇえええええっ?!」



畑の兄さん「えぇ?! あっしが先生の事をっ?!」

保護者「お恥ずかしい……早とちりでしたの……」

幼女「このパイおいしいね~」

男の子「……やべっ」

女の子「ちょっと! どこ行くのよあんた!」

男の子「ギクッ」

男「えぇ、恥ずかしながらまだ独身を貫いておりますよ」

先生「あの……私っ」

男「先生?」

先生「私っ、あのっ……!」


幼女「おじさーん? せんせー?」


先生「!」ビクッ

男「ん? どうしたんだい?」

幼女「もうみんな帰るって~」

男「そうか、わかった。すぐ行くよ」

幼女「せんせーもかえる?」

先生「……あぁ、えぇ、あの。そうね……」

幼女「せんせー、さよーなら~!」

先生「……は~い……さよ~なら~~」



先生「……」

先生「~~~~~!!」

先生「……っ」

先生「~~~~~~っ!!」



先生「やだ……」

先生「私ったら……」

先生「人生最初の告白のチャンスだったのにっ!」

先生「あ……う……だめだ……もう、一生分の勇気使い切った……」

先生「寝よう……」

幼女「おじさん、おやすみなさい」



男「あぁ、おやすみ。私はもうすこししたら寝るよ」

幼女「うんっ」

パタン


男「……」

男「……いや」

男「……いやいや、おかしい」

男「私?」

男「……いやいや、有り得ない」

男「……でも」

男「いや……」

男「……いや、でも……」

幼女「どうしたのおじさん? すごいクマだよ?」


男「結局一睡もできなかった……」

幼女「運転大丈夫?」

男「すまない……今日はタクシーにしてくれないか?」

幼女「うん、いいよ?」



男の子「どうしたんだよせんせー? すごいクマだぜ?」


先生「結局一睡もできなかった……」

男の子「一日大丈夫かよー!」

先生「ごめんみんな、今日一日自習で」

男の子「じしゅうってなんだよ、早く歌うたおうぜー!」



後日


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr....


先生「はい?」

男『あの~……私ですが』

先生「あっ、はいっ、はいっ、私です!」

男『ど、どうですか。今週の日曜日、よろしければお食事でも』

先生「へあっ?!」

男『だ、だめでしょうか』




先生「い、いきますいきます! すぐいきます!」


簡単にまとめてみた。


>>1->>48
幼女とおじさん

>>49->>220
幼女とライバル's

>>247->>260
谷亮子(ry

>>267->>363
幼女と便利屋

>>369->>410
幼女のおかあさん

>>450->>489
幼女とワンちゃん

>>506->>695
銀行強盗 ~保護者とおじさんと、時々、幼女~

>>712->>772
先生とおじさん

というわけで今日はここまでです。
また明日午後から書きます。
今夜は冷えるみたいです、暖かくして寝ましょうね。

ただいま、保守ありがとうございます。
ゆっくり投下していきますね。

────────
────
──


姉『よ』

男『……』

姉『……』

男『アメリカから、帰ってきたんだ、姉さん』

姉『えー……』

男『……』

姉『……』

男『……』

姉『と、いうことで。この子の事! よろしく!』

男『……』

姉『よろしくっ』

男『はぁっ?!』

姉『一生のお願いっ! こんな事あんたしか頼れないのよ!』

男『ちょ、ちょっと待てよ! よろしくって何だ! だいたい何かおかしいと思ったんだよ昨日知らない荷物が大量に家に届いたからっ!』

姉『あははー、もう届いてたの? 最近の引越し業者って手際いいのね』

男『姉ちゃん』

姉『う?』

男『お断りだ、荷物は送り返す。その子もちゃんと姉ちゃんが育てるんだ』

姉『……』

男『自分の子だろ? 自分で育てるのが筋ってもんじゃないのか?』

姉『それが出来ないから頼んでるんじゃない!』

男『あんたこの子の何だ! 母親じゃないのか!』

男『いや、そりゃ旦那さんの事……知ってるけどさ、事件に巻き込まれたってのも聞いてる』

姉『居ても立ってもいられないの! どうしてもあの人の無実を証明しなきゃ……いけないの……』

男『でも、有罪判決が……』

姉『銀行強盗で人質を買って出ただけでグル扱いされただけよ、証拠さえ出てくればちゃんと無罪が……』

男『姉ちゃん』

姉『?』

男『……、だったら。この子も一緒に連れて行ってあげなよ、家族だ、一緒に居るのが道理だ』

姉『ダメ、だめよ』

男『なんで』

姉『絶対あたし、捜査ばっかりで子育てなんかしなくなる』

男『両立はどうしたのさ、姉ちゃんの持論だったろ?』

姉『時と場合によるのよ』

男『今は子育てを捨ててもいいと?』

姉『ちがっ……だからあんたにこうやって頼んでっ!』

もう一度聞くが、このスレだけで終わるの?

男『……こっちだって暇じゃない』

姉『おねがいっ』

男『締め切りだって迫ってるんだ』

姉『そこをなんとかっ』

男『書きたい事だっていっぱいあるし、他の事に時間を取られたくない』

姉『……おねがい……っ、どうしても、あたしはやらなきゃいけないのよ……っ』

男『……』

姉『……』

男『……』

姉『……』

男『顔、あげてくれよ……』

◇ ◇ ◇ ◇



幼女『あ~~~~~~~』

バタバタ

幼女『う~~~~~~~』

バタバタ

男『やれやれ、部屋がちらかってしょうがないな……』

幼女『あ~~~~~~』

ビリビリ

男『こ、こらこら。本を破るんじゃない!』

幼女『うええええええ~~~~~ん』

男『なっ、泣くな、泣くなったら』

幼女『おじちゃん』

男『なんだ?』

幼女『あのね』

男『?』

幼女『とうもろこし、いる?』

男『いらん』

幼女『ねえ』

男『なんだ』

幼女『とうもろこし、食べる?』

男『いらねぇ』

幼女『う~~~~~』

男『どうした?』

幼女『とうもころし、たべる?』

男『とうもろこしだろ?』

幼女『う~~~~~!』

男『す、すまん、私が悪かった、だから泣くな。ほら、食べるから』

幼女『う~~~~~!』

男『ほら、ほら。おいしいぞ?』モグモグ

幼女『おじちゃんおいしい?』

男『あぁ、うまい、うまいぞ』

幼女『よかったあ!』

男『ほっ……どうやら機嫌が良くなったみたいだな』

幼女『……う……ぅ”っ』

男『……今度は何だ……』

幼女『……おじっご……』

ポタポタ

男『なん……だと……』

幼女『おじちゃん』

男『ん?』

幼女『本たくさん?』

男『ああ、これは私が書いた本だよ』

幼女『へー!』

ペラペラ

幼女『う~~~?』

男『ちょっと難しいかな?』

ペラペラ

幼女『かんじがたくさん』

男『はは、そりゃそうだ』

幼女『……』トテトテ

幼女『……』トテトテ

幼女『……』トテトテ

男『……?』

幼女『……』トテトテ

男『何やってるんだ?』

幼女『あ、おじちゃん』

男『うん?』

幼女『あのねあのね』

男『うん』

幼女『おはなでしおり作ったよ~~』

男『ほう』

幼女『おじちゃん本たくさん、つかって』

男『ありがとうな、大事に使うよ』

幼女『えへへ~』

◇ ◇ ◇ ◇


男『とうとう今日から幼稚園だなっ』

幼女『わーい!』

男『その制服、似合ってるぞ』

幼女『ちょっとぶかぶか』

男『すまん……すぐ大きくなると思ってワンサイズ上のを頼んだんだが……』

幼女『うんっ、だいじょうぶだよっ』

男『よかった』

幼女『いこっ』

男『よーし、行くか』

幼女『ようちえんっ、ようちえんっ♪ とーもだっちひゃっくにんでっきるっかなー♪』

男『……』

幼女『……だいじょうぶ?』

男『……できたっ、できたぞ!』

幼女『おー!』

男『苦節2時間……ついにお弁当の完成だっ』

幼女『おじさんおじさん!』

男『ん? なんだ?』

幼女『じかんじかん!』

男『やばっ……』

幼女『はやくはやく』

男『急ぐぞっ』

幼女『おじさん』

男『なんだー?!』

幼女『おべんとう忘れてるー』

男『なん……だと……』

男『あの~……すみません』

先生『はい?』

男『これ、お弁当なんですが。朝忘れちゃいまして、届けてもらってもいいですか?』

先生『いいですよー』

男『ありがとうございます、ええっと。年少の2組の──』

先生『ちょうどよかった』

男『?』

先生『2組の担任、私なんですよ』

男『そいつは良かった、よろしくお願いします』

先生『それにしてもこんな時間に、お仕事は大丈夫なんですか?』

男『ええ、私こうみえて作家でして。時間は自由がきくんですよ』

先生『そうなんですかぁ、仕事と子育て両立されて偉いですね』

男『いえ、あの子は姉の子なんです。実は私が今預かっているだけでして……』

カパ


男『さて、食器あらって風呂にでも入るか』

男『……』

男『ウインナーは嫌い……だったか……?』

男『いや、この本には子供はウインナーが好きと書いてある……』

男『私の味付けが不味かったか……?』

男『明日、訳を聞いてみるか……』

男『なんだか怒ってばっかりだな……いかんいかん、子供は褒めて育てると書いてあるのに』

男『正直に言いなさい』

幼女『う~~~~』

男『顔を見なさい』

幼女『う~~~』

男『どうしてお弁当を残したんだい?』

幼女『たこさんういんなー、かわいかったから』

男『そうか』

幼女『ごめんなさい……』

男『私じゃなくてタコさんウインナーにごめんなさいだ』

幼女『うん、たこさんごめんなさい』

男『次はちゃんと食べるんだぞ?』

幼女『うん!』


男『そういう考えなのか……、まだまだ子供はわからないな……』




男『迎えにきたぞー』


幼女『おじさん!』

男『元気だったか?』

幼女『うんっ!』


『かえるわよー!』

男の子『わー! かーちゃんだ!』


『かえりますのよー』

女の子『おかあさん、まってよ~』


幼女『……』

男『さ、私たちも帰ろうか』

幼女『うん……』

幼女『おじさん』

男『ん? どうした? 寝付けないのか?』

幼女『おかーさん、どこ?』

男『……それは……』

幼女『おとうさんは?』

幼女『……めがさめると、だれもいないの』

幼女『おかあさんも、おとうさんも、いないの』

幼女『あたしだけ、あたしだけなの』

幼女『おじさん』

幼女『あたし、いらない子なのかな』

幼女『ねぇ、おじさん』

幼女「おじさん!」



幼女「おじさん! どうしたの?!」

男「…………、うぅ……」

幼女「おじさん!」

男「……夢……、か……?」

幼女「なんだかとっても苦しそうだったから……」

男「あ……あぁ、すまない」

幼女「だいじょうぶ?」

男「……夢じゃない、よな」ギュ

幼女「わ、わ。おじさん、くるしいよ」

男「すまん、今だけ、こうさせてくれ……」

幼女「……うん」

男「私達は……家族だ……、家族なんだぞ……?」

幼女「うん、そうだよ? あたりまえなんだよ?」

男「当たり前……あたりまえ、か」

幼女「うんっ」

男「そうか、そうだな……」

幼女「? ヘンなおじさん」

男「もうこんな時間か、朝ごはんを作らないとな」

幼女「今日はおでかけするのー?」

男「そうだな、お休みだし今日はどこにいこうか?」



幼女「おじさんと一緒だったらどこでも!」

申し訳ない、ちょっと早いけどキリが良いのでここでいったんおわりで
またもうちょっとしたら戻ってきます。

>>823
なるべく善処しますが無理な場合柔軟に対応します。

ただいま。
いつもいつも保守すみません

幼女「わくわく♪」

男「ん~?」

幼女「わくわく♪」

男「どうした?」

幼女「あのねあのね」

男「うん?」

幼女「おうち……えんとつないけどさんたさん大丈夫かなあ」

男「あぁ……、そういえば……もうそろそろか」

男「なんかサンタさんにお願いしておくこと無いか?」

幼女「もんぶらんっ」

男「そうかそうか」

幼女「あのねあのね」

男「ん?」

幼女「ずっとずっと楽しみにしてたのっ」

男「ほう」

幼女「どこからくるのかなぁ、えんとつないから。屋根かな? 窓かな?」

男「出現方法に興味深々か……」

ブロロロロロロ……


男「……それにしても、寒いな」

幼女「さむいねぇ」

男「もうすこしカーエアコン強くするか」

幼女「うんっ」

男「……」

幼女「……わあ」

男「……寒いわけだ」

幼女「ゆき! ゆきだよ! おじさんっ!」

男「そうだな、雪だ」

幼女「わー! すごーい!」

男「って、こらこら。窓から手を出すんじゃない」

幼女「さぁあなたからメリークリスマス♪」

男「私からメリークリスマス♪」

幼女「サンタクロースイズカミングトゥータウン♪」

男「そんな楽しみか?」

幼女「うんっ!」

男「うん、力いっぱいの良い返事だ」

幼女「ねぇ聞こえてくるでしょ鈴の音がすぐそこに♪」




サンタクロース イズ カミング トゥー タウン



Prrrrrrrrrrrrrrrrr.....


男「先生ですか?」

『あ。あの、今から伺っても大丈夫ですか?』

男「えぇ、さっき買い出しに出かけて、もうだいたい準備はできてますので」

『それじゃあ……今から行きますね』

男「はい」

幼女「せんせいくるのー?」

男「あぁ、もうすぐ着くってさ」

幼女「うふふ、たのしみ♪」

男「うまいもん沢山つくったからな」

幼女「わあい!」


男「なあ」

幼女「うん?」

男「お前はどうしたい?」

幼女「なにが?」

男「いや……なんでもない、忘れてくれ」

幼女「ヘンなおじさん?」

男(なんとかして……逃げ腰なサンタさんを捕まえないとな)

男(私もそろそろ覚悟を決めないと……)


────────
────
──



Prrrrrrrrrrrrrrrrr.....



男『はい?』

『私です』

男『警部さん、その節はどうも──』

警部『やあ、すみませんね。署まで来てもらって』


男『いえ、丁度暇でしたから』






警部『実は先日逮捕した二人から大変興味深い供述が出てきまして』

男『というと?』

警部『3年前のインディアナポリス銀行強盗事件、覚えてますね?』

男『……えぇ、姉が今その山を追ってるはずです。たしか’パークマンサー’……』

警部『そうですね、日本でも度々彼らの構成員が強盗などの犯罪を企てております』

男『それと今回の事と何か関係が?』

警部『それが、今回の事件。あの二人の供述から世界的犯罪組織’パークマンサー’が背後に見え隠れしているんですよ』

男『まさか、そんな』

警部『えぇ……。それで、これからするお話はあなたの姉上が追っている事件とも関連してくる話なのですが……』

男『一体、どういう?』

警部『3年前の事件の日の犯行計画書なるものが犯人うちの一人の家から押収されましてね』

男『……』

警部『これが妄想の類ならば我々も無視できるのですが、あまりに酷似しているんですよ。その事件の報告書と』

男『まさか……』

警部『あの事件の構図を描いた人物がいるという事です。あの男の身辺を洗えば確実にね、もしくは、あの男自身が……』

男『それじゃあ!』

警部『ええ、あの事件の実行犯と繋がっている可能性は大きいでしょう。その方面から、姉上の旦那様の無実を証明する事も……』

男『警部さん!』

警部『いや、お手柄はあなたですよ』

男『いや、私はそんな、何もしていませんよ』

警部『あなたが居たからこそ、我々は犯人を逮捕することができた。あたながあの場で行った様々な処置によってね』

男『……実は、私もあの事件を調べていたんです』

警部『ほう?』

男『あの事件は私も納得のいかない点が多々ありましたから』

警部『……』

男『だから、友人のつてを使ったりして、色々と情報を仕入れていました』

警部『それが今回、計らずも役に立ったと』

男『因果応報、ですかね』

警部『さあ』

男『ありがとうございます警部さん、姉にも伝えてみます』

警部『いえ、これくらい後輩として当然です』

男『姉も立派な部下を持てて幸せだと思います』

先生「私っ! 幸せですっ!」



幼女「うんっ」

先生「こんな美味しいケーキが食べられるなんて……、私っ、幸せですっ!」

男「はは……そんな大げさな」

先生「いいえ! このクリームとイチゴのミックスがなんとも言えない具合に絡まって……口の中で甘美なワルツを踊るんです……」

男「な、なるほど……」

幼女「せんせー、おいしいねー」

先生「そうね、毎日こんなお料理が食べられるなんて羨ましい……」

男「よ……よければまた今度、お料理をお教えいたしますよ」

先生「え?」

男「肉じゃがとか、ビーフシチューとか……を、作ってみたいって仰ってましたよね」

先生「い……ぃいんですか?」

男「え、えぇもちろん。私でよければ、ですが……」

先生「……」

男「あの、先生?」

先生「ぃ」

男「い?」

先生「ぃやったーーーー!!」

幼女「せんせいが跳んではねてるっ」

先生「全身で嬉しさを表現してみましたっ」

男「はは、本当に面白い人ですね」

幼女「ねえねえ」

男「うん?」

先生「どうしたの?」

幼女「ふたりはけっこんするのー?」

男「ぶっ」カァアア

先生「なっ」カアアァァ

幼女「しないの~?」

男「な……なぜそんな事を……」

先生「そ、そうですよ……

幼女「だってらぶらぶだもん♪」

男「こ、こら。大人をからかうんじゃありませんっ」

幼女「おじさん顔真っ赤~♪」

>>867
う~、度々すみません。

×先生「そ、そうですよ……
○先生「そ、そうですよ……」

幼女「二人は家族になるんだよね?」

先生「こ、こら」

幼女「ねっ?」

先生「も~~~~~」

幼女「……いいなぁ、家族」

男「……」

幼女「あ、これおいしいっ」

幼女「おいしいっ、これもこれも♪」



男「先生、私ね」

先生「はい?」

男「あの話、受──」


Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr.....


男「──っと。すみません、ちょっと電話でてきます」

先生「はい、お構いなく」

『ねえ』

男「ん?」

『あたし今、どんな気分だと思う?』

男「最高にハイ! ってやつ?」

『……まぁ、そうね』

男「なんだよ、調子狂うなあ」

『あたしが、どれだけ手を尽くしても八方塞だったものを。あんたは易々と手に入れるのね』

男「偶然さ」

『……そう』

男「それより姉さん」

『なによ』

男「知ってるぞ、いま日本に来てるんだろ?」

『誰から……』

男「警部さんに全部教えてもらった」

『あのクソ真面目な後輩め……』

男「今時珍しい義理堅い人じゃないか、姉さんの部下とは思えないくらいに」

『……たしかに』

男「さて」

『……なによ』

男「姉さん」

『……』

男「俺の言いたいこと、わかるよな?」

『……』

男「コホン。’まず心を開かないとね、人間関係も一緒なのよ?’」

『……それ』

男「ご明察、姉さんが俺にくれた言葉だよ」

『う……』

男「あの子は強い」

『……』

男「姉さん、いつまで逃げているんだ……最初の一回を踏み出す勇気さえあれば、あとはなんとかなる」

『14 01 18 09 20 01 19 01  14  10 09』

男「は?」

『あんたに挑戦状よ、……そこで待ってるわ』

プツン

男「お、おい?!」

14 01    18 09   20 01     19 01   14   10 09


男「なんだこの数字の羅列……さっぱりわからん……」

先生「どうしたんですか?」

男「あ、えっと」

先生「……!」キラーン

男「どうしました?」

先生「これ、暗号です」

男「な、なんて書いてあるんですか?」

先生「えぇ……っと」

男「……」

先生「な り た  さ ん じ」

男「い、今何時ですかっ?!」

それから。

おじさんと先生はあたしを車に乗せて

あっちの道が近いだとか、こっちの道が近いだとか言いながら運転していたのはぼんやりと覚えている。

二人で歌ったあのメロディー

サンタクロース イズ カミング トゥー タウン

ねえ、おじさん。

本当は、サンタさんはずっと近くに居てくれたんだよね。

窓越しに過ぎ去っていく町並みがどれもこれも懐かしい映像で再生される。

おじさんと過ごした時間はとてもとても暖かいもので、でも。

あたしはまだ子供だったから、おじさんの葛藤とか全然理解できなくて。

おじさんにたくさん、たくさん迷惑をかけた気がする。

ごめんねって言ったら、おじさんはきっと

「そんな事気にするな」

って笑うんだろうね。

ねえ、おじさん。



ピンポンパンポン


ただいま7番ゲートにノースウェスト航空……ミネアポリス……国際空港……



姉「……久しぶりに会って見たら随分男の顔になってるじゃない」

男「だれかさんのおかげでね」



男「警部さんから話は聞いてるけれど」

姉「……」

男「旦那さんの件。とりあえず、一歩前進?」

姉「あんたのおかげね。……どれだけ御礼を言ったらいいか……」

男「やめてくれよ、姉弟だろ、それより──」


幼女「……」

男「ほら、お母さんだぞ?」

幼女「……」ギュ

姉「……」

幼女「……」

男「どうした?」

幼女「おかあさん?」

男「そうだぞ、お前のお母さんだ」

幼女「おかあ……さん?」

姉「そうよ」

幼女「お、かあ、さん?」

姉「そう、そうよ……あたしがあなたのお母さんよ」

幼女「……」ギュ

男「ほら、いつまで私の足にしがみついているんだ? あれだけ会いたがっていただろう?」

幼女「……あ、あう……」

男「ほら、おかあさんも待ってる」

幼女「……う~~~~」

男「行ってあげなさい、ほら」

幼女「おかあさああああああん!!」

姉「ごめん、ごめんねっ。一人にして……ごめんねっ」

幼女「わあああぁぁぁぁあん~~~!!」

姉「つらかった?」

幼女「う……ぐ……、ぜん”ぜん”……」

姉「あたしは……毎日つらかった……」ギュ

幼女「あ”のっ……あのね……」

姉「うん?」

幼女「おかあさんの、かお、おもいだせなぐて……」

姉「そう……」

幼女「誰が、あたしのおがあさんが……わからなぐて……」

姉「……うん」

幼女「わーるどかっぷ、ぐひっ、みつけて……」

姉「わかった……うん、わかった……」



その後わたしは顔がくちゃくちゃになるくらい泣いた。

あのときお母さんの顔が思い出せなかったけれど、お母さんの胸の中で抱かれると

なんだか懐かしい気持ちがしたんだ。

それで

「ああ、この人がわたしのお母さんだ」

ってわかったの。

おじさんが嬉しい様な困ったような顔であたしを見ていたの、今でも覚えているよ。

ずっと。

ずっと、見ていてくれたんだもんね。

姉「そうだ、これ、これ渡さなきゃ」

幼女「こ……れ。な、あに?」

姉「モンブランよ、とっても甘くて、おいしいんだから」

幼女「あ、……さんたさん?」

姉「さっきサンタさんから貰ってきたの、娘にあげなさいって」

男「……ん」

幼女「たべていい?」

姉「えぇ、ゆっくり味わって食べてね」

幼女「うんっ!」

姉「ふふ」

幼女「……」

姉「どう?」

幼女「しょっぱい!」

初めてのモンブランの味は塩味だったよ。

とっても

とっても優しい味だったよ。

優しい優しいサンタさんがくれた、とっても優しい味だったよ。

ありがとうね、おじさん。

あ、おじさんに御礼を言っちゃいけないか。

ありがとう、サンタさん。

うん。

ありがとう。

男「これからは、本当の家族の元で暮らすんだよ」

幼女「おじさんは?」

男「私は日本に残るよ」

幼女「……」

男「いままでありがとう」

幼女「あのね」

男「うん?」

幼女「お兄さんが言ってたの」

男「うん」

幼女「畑で取れたものはみんな野菜っていうんだって、スイカもメロンのイチゴも……だから」

男「……」

幼女「だから、おじさんもあたしの家族なんだよ!」

男「……そうだな」

幼女「家族は、離れていてもかぞくなんだよ!」

男「そう、……そうだな」


離れていても家族だって

どこに居ても家族だって

ずっと、きっと。

距離が遠くても

すぐに会えなくても

心が、繋がってるよね?

あたしにそう教えてくれたのは

おじさんなんだよ?

幼女「いつか、遊びにきていい?」

男「いつでも来なさい」

幼女「うんっ」

先生「またねっ」

姉「それじゃあ……時間だから」

男「うん、仕事がひと段落したら一度そっちに行くよ」

姉「待ってる」

男「元気でな」

姉「そっちもね。ふふ、お幸せに」

先生「へっ?! いや、あの、その、私はっ」

姉「こんな不出来な弟ですが、よろしくおねがいします」

先生「いやそんなこちらこそ……」

男「あー、ゴホゴホ……んん……ゴホゴホ」




男の子「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」


女の子「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」



幼女「みんな!」

男「ど、どうして?」

保護者「もう、水くさいですのよ。お見送りくらいさせてくださいまし」

先生「えへ、私が連絡しちゃいました」

畑の兄さん「ゼェ……ゼェ……、あんなに飛ばしたの初めてですぜ……。三途の川が見えるかと思いやした」



男の子「まさかお前が先に外国いっちまうなんてな!」

幼女「うん」

男の子「俺もサッカーうまくなってすぐに外国いくからな!」

幼女「うんっ、待ってるっ」


女の子「行っちゃうんだ……」

幼女「そうだよ」

女の子「わたしたち、ライバルだからねっ」

幼女「うんっ、ライバルっ」


保護者「これから寂しくなりますのね」

幼女「うん……」

保護者「いつでも戻ってきますの、わたくしいつでも歓迎いたしますのよ!」

幼女「うんっ」


畑の兄さん「あっし、とうもろこし送りやすぜ!」

幼女「お兄さんの野菜、好き! いっぱい送ってね!」

畑の兄さん「合点承知ですぜ!」

幼女「うんっ」





飛行機の中で、お母さんとたくさんたくさんおじさんの話をしたよ。

どれもこれもが宝石みたいにきらきらで。

もらった貝のネックレスと一緒くらいきらきらしてたよ。

話せば話すほど、磨けば磨くほどキラキラが増していって、

とても、とても大切な思い出になっていく気がするの。

あたし、おじさんの事、とっても大好きだよ!

ほんとにほんとに、ありがとう!




先生「行っちゃいましたね」

男「ええ、そうですね」




男「先生、私ね」

先生「なんですか?」

男「この間、先生からいただいていた絵本の話、受けてみようと思うんですよ」

先生「まぁ」

男「実はもうタイトルは決まってるんです」

先生「聞かせていただいても?」

男「’とうもろこしと、たこさんういんなー’」



何年か後。



「あれ? あなたー」

「うん? どうした?」

「あの子から手紙、届いてますよっ。それと、ほら、こんなにっ」





P.S.

こっちで取れたとうもろこしです。

とってもとっても、おいしいよ。






おしまいおしまい。

乙!


ASは書くの?

ちなみに
>>418
「オーストラリア付近かと思ったらアメリカ…?」
っていう鋭い質問がありましたが
とうもろこしを英語はインディアコーンというらしいです。
それにかけてアメリカ・インディアナ州、さらに姉の職業警察官とかけてインディアナポリスにしてみました。

その時そこまで深く考えてませんでしたけど……

すげーよかった(⊃Д`)
>>1ありがとう!

>>907
需要があれば……まぁ、あまり無いと思いますが……
そんなこと言いながら後日ひょっこりスレ立ててるかもしれません

こんな長いSS初めて見た
エロなしはやはりいい

>>1

鼻水とまんねぇや

>>933
こんなに長いのは自分でも始めてです、900超えるなんて尋常じゃないですよねw

続編期待(^q^)

>>938
幼女「鼻ちーんする?」

男「そうだな、鼻ちーんだな」

幼女「はい、てっしゅ」

乙!


>>1
ペンネームは何と申す?

>>945
野球的な何かの人~とかって言われてます。

もういいやツイッター晒すからもしこのSS気に入ったらフォローしてくださいw

ttp://twitter.com/#!/nanakoro7

製本化はまだですか?

続編やるならわかりやすいスレタイにしてくれ

>>950
こんな時「ああ、絵とか描けたらなあ……」って思いますねぇ。

>>953
わかりやすい……、となるとやっぱり「とうもろこし」でしょうか……?

                          刀、           , ヘ
                  /´ ̄`ヽ /: : : \_____/: : : : ヽ、
              ,. -‐┴─‐- <^ヽ、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
               /: : : : : : : : : : : : : :`.ヽl____: : : : : : : : : : : : : : : : : : /
     ,. -──「`: : : : : : : : : :ヽ: : : : : : : : :\ `ヽ ̄ ̄ ̄ フ: : : : :/

    /: :.,.-ァ: : : |: : : : : : : : :    :\: : : : :: : : :ヽ  \   /: : : :/
    ̄ ̄/: : : : ヽ: : : . . . . . . . . . . .、 \=--: : : :.i  / /: : : : :/
     /: :     ∧: \: : : : : : : : : : ヽ: :\: : : 〃}/  /: : : : :/         、
.    /: : /  . : : :! ヽ: : l\_\/: : : : :\: ヽ彡: : |  /: : : : :/            |\
   /: : ィ: : : : :.i: : |   \!___/ ヽ:: : : : : : :\|:.:.:.:/:!  ,': : : : /              |: : \
   / / !: : : : :.ト‐|-    ヽ    \: : : : : l::::__:' :/  i: : : : :{              |: : : :.ヽ
   l/   |: : :!: : .l: :|            \: : : l´r. Y   {: : : : :丶_______.ノ: : : : : :}
      l: : :l: : :ト、|         、___,ィ ヽ: :| ゝ ノ    '.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
      |: : :ト、: |: :ヽ ___,彡     ´ ̄´   ヽl-‐'     \: : : : : : : : : : : : : : : : : : イ
        !: :从ヽ!ヽ.ハ=≠' , ///// ///u /           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      V  ヽ|    }///  r‐'⌒ヽ  イ〉、
              ヽ、______ー‐‐' ィ´ /:/:7rt‐---、       こ、これは>>1乙じゃなくて
                  ィ幵ノ ./:/:./:.! !: : : : :!`ヽ     とうもろこしなんだから

              r‐'T¨「 |: | !:.∨:/:./: :| |: : : : .l: : : :\   変な勘違いしないでよね!

野球的な…の作者さんだったんですか!?

スレタイにとうもろこしは必須だなw

>>962
そうです。
ひょっとしてお久しぶりかな?

あっちは続きで主人公がゴシュで天界で野球やったりしましたが……
このSSは一体どうなるんでしょうね

>>964
おkwww
わかったwww


フォローさせてもらったぜ

あっ、野球の人なのか

乙でした

>>972
全員フォロー返しさせてもらってます

>>974
幼女「野球したい」

男「野球場に行こう」

幼女「わーい」

っていう展開をずーっと書きたくて書かなかった今回。

もしもしからだと
フォローってか
ページが表示されないww

野球的なって?

>>977

アドレスの最後に
nanakoro7

これコピペでいけるかな?

>>978
ちょうどここでまとめてもらってたので良かったら。
ttp://blog.livedoor.jp/minnanohimatubushi/archives/1389785.html

レスしていただいたみなさん
読んでいただいたみなさん
支援してくれたみなさん
乙してくれたみなさん
感想くれたみなさん
ROMってるみなさん

最後になりましたがありがとうございます。
また何か書いた時は読んでやってください
ノシ

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