エレン「どういうことだ？」

アルミン「言葉通りだよ、エレン。少し前から僕はいくつか特殊な能力が使えるようになったんだ」

エレン「特殊な能力ってたとえば何だ？エア友達とかか？」

アルミン「違うよ！それは能力でも何でもないよ！」

エレン「はは、悪い。アルミンが突然変なこと言い出すからつい、な」

アルミン「全く、エレンったら信じてないね？」

エレン「当たり前だろ、むしろいきなり信じる方が怖いわ」

アルミン「もう、仕方ないなあ。あまり気は進まないけど、特別に見せてあげるよ」

アルミン「よっと」ﾌﾞｵﾝ

エレン「！？」

アルミン「どう？驚いた？」

エレン「え…？何それ？板？てかどっから出したそれ？」

アルミン「板じゃないよ。ランディング・ボードっていうんだよ。これで信じたでしょ」

エレン「あ、ああ…いつの間にそんなことが出来るようになったんだ？」

アルミン「さあ…正直、気が付いたら出来る様になってたからね。よく解らないんだ」

エレン「へー…でもアルミンなんでそれを俺に話したんだ？」

アルミン「いや、エレンも同じことが出来る様になったんじゃないかと思ったんだけど…」

エレン「？」

アルミン「その様子だと違うみたいだね」

エレン「アルミン以外にもこんなことが出来るやつはいるのか？」

アルミン「多分ね」

エレン「へー…アルミン以外の奴も見てみたいな。ひょっとしたら巨人を倒すのに役立つのもあるかもしれない」

アルミン「ふふ、エレンらしいね」

アルミン「でも気を付けてね、これは僕の経験なんだけど能力に目覚めた人は時々性格が変わるみたいなんだ」

エレン「性格が変わる？」

アルミン「うん、僕がこのボードを使っているときは語尾がおかしくなったよ」

エレン「ん？そんだけ？」

アルミン「あくまでも一例さ。他の能力を使うときはもっと変わるよ」

エレン「他にって、まだあるのか？」

アルミン「うん、でも他のは見せてあげないよ。いくらエレンでもね」

エレン「そうか、まあ無理にとは言わないけどな」

アルミン「分かってくれて嬉しいよ。さて、今日はもう寝ようか」

エレン「ああ、明日は休日だしな。お休み、アルミン」

アルミン「うん、お休みエレン」

～翌日～

エレン「ふわ…よく寝た。うん？」ｺﾞｿ

エレン「なんで俺の枕元に本が置いてあるんだ？」

エレン「なんだこの本、十字架が書いてあるな…」

アルミン「エレン、起きてる？早くしないとごはんなくなっちゃうよ」

エレン「ああ、今行く！ま、後でいっか」

―食堂―

ミカサ「おはようエレン、アルミン」

エレン「ああ、おはよう」

アルミン「おはよう」

ミカサ「もう席は取ってあるから」

アルミン「有難う、僕達はご飯取ってくるね。行こうエレン」

エレン「ああ、そうだな」

エレン「…」ﾁﾗ

ライナー「…」

ベルトルト「…」

アニ「…」

ジャン「…」

マルコ「…」

アルミン「エレン？どうかした？」

エレン「え？ああ、何でもない。行こうぜ、アルミン」

アルミン「？」

エレン「…」ﾎﾞｰ

ミカサ「エレン、どうしたの？さっきからあまり食べていないけれど」

アルミン「さっきも何か上の空だったよね、何かあったの？」

エレン「あ、ああ、いや…」

ミカサ「エレン、我慢するのは良くない。悩みがあるのなら打ち明けるべき」

エレン「いや、なんか最近みんなの雰囲気が変わったなーと思って」

ミカサ「…」

エレン「いや、多分気のせいだとは思うんだけどさ。なんかピリピリしてるっていうか…」

エレン「うまく言葉には表せないんだけどさ、なんか違うような気がするんだよな…」

アルミン「気のせいじゃない？僕はあんまり感じないけど…」

エレン「そうか、まあ考えすぎかな…」

アルミン「多分そうだと思うよ。ねえミカサ？」

ミカサ「アルミンの言う通りだと思う。エレン。あまり気にしない方が良い」

エレン「それもそうか。ところでアルミン、昨日俺の枕元に本置いたか？」

アルミン「置いてないよ、どうして？」

エレン「いや、今日起きたら枕元に本が置いてあってよ。誰のか分からないんだ」

ミカサ「…！」

アルミン「いや、僕は置いていないけど…エレンのじゃないの？」

エレン「いや、俺のじゃないんだよな…」

ミカサ「エレン、後でその本を見せてほしい」

エレン「え？まあいいけど…どうしたんだお前？」

アルミン「確かに、ミカサが本に興味を示すなんて珍しいね」

ミカサ「その言い方はひどい、私だって本を読まないわけではない」

アルミン「あ、ごめん。そういう意味で言ったんじゃないんだ。ただ…」

ミカサ「分かってる。アルミンに悪気はない。エレン、朝食が終わったら持って来て欲しい」

エレン「ああ、別にいいけど…」

ミカサ「では私は倉庫裏の森で待っている」

エレン「ここじゃ駄目なのか？俺が持ってくればいいんだろ？」

ミカサ「なるべく人に見られたくない。ので、人気がない場所が好ましい」

エレン「…、わかった、倉庫裏にもっていくわ」

ミカサ「有難う。では、私は先に行ってる」ｽｯ､ｽﾀｽﾀ

エレン「あ、おい！…行っちまった。何だったんだ一体？ま、いいや、とりあえず持っていこう7

―倉庫裏―

エレン「ここら辺にいるかな？」

ミカサ「エレン」ｽｯ

エレン「ウワッ、いきなり出てくるなよ。心臓に悪いだろ」

ミカサ「そんな事より、本を見せてほしい」

エレン「そんな事って…まあいいや、はい」つ

ミカサ「これは…」

エレン「知ってんのか、ミカサ」

ミカサ「いや、詳しくは解らない。エレン、これを私に譲ってほしい」

エレン「なんでだよ、それお前のじゃないだろ。俺はこれを持ち主に返したいんだ」

ミカサ「エレン、これはとても危険なもの。だから渡してほしい」

エレン「いやだよ、つーか危険なものだったら教官あたりに渡した方が良いだろ」

ミカサ「エレン、いい加減にして。どうしていうことを聞かないの？」

エレン「いい加減にするのはお前の方だろ、これは俺のところにあったんだから持ち主が現れない限り俺が管理していいじゃねえか」

ミカサ「エレン！！いいから本を渡して！」

エレン「いい加減にしろ！なんでお前の言うことに一々従わなくちゃなんねえんだ！」

ミカサ「…はあ、もういい」

エレン「そうか、じゃあ俺はかえ…」

ミカサ「力ずくで奪うから」ｽｯ


ﾄﾞﾝｯ！！！！

エレン「…ッ！！」

ミカサ「へえ、今のを避けるなんてなかなかやるわね」

エレン「…いきなりなにしやがる」

ミカサ「別に？エレンが言うこと聞かないから強硬手段に出ただけ」

エレン「お前…本当にミカサか？」

ミカサ「何を言っているのエレン？私はミカサ。あなたの、”家族”」

エレン「…」

ミカサ「さ、エレン。その本を渡して？」

エレン「今のお前には、渡せないな…」

ミカサ「そう…じゃあこうしよう」ｽｯ…ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ

エレン（髪の毛を毟った？）

ミカサ「いうことを聞かないエレンには、これが丁度良い」

ｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻ

エレン「なっ…！」

ミカサ「さあ、エレン。お仕置きの時間」

エレン「虫を…操っているのか…」

ミカサ「そう、髪を毟る代わりに虫の大軍を操る。それが私の能力の一つ」

エレン「チッ…」ﾀﾞｯ

ミカサ「逃げても無駄。虫からは逃げられない」

エレン（不味い不味い不味い！まさかミカサが能力者だったなんて…とりあえず、今は逃げる！）

エレン「…！！」

ｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻｶｻ

エレン「囲まれた…！」

ミカサ「だから言ったでしょう？逃げても無駄だって」

ミカサ「丁度いい、このままエレンも私のモノにしてあげる」

エレン（やばい！このままじゃ…）

ﾋｭﾝ

エレン「！！」

アルミン「エレン！！大丈夫！？」

エレン「アルミン！」

ちょっと休憩。
どこかおかしいとこありますかね？

アルミン「逃げるよエレン！捕まって！」

エレン「あ、ああ…」

アルミン「よし、このまま飛んで逃げるよ！」

ミカサ「アルミン…あなたもそうなのね。でも逃がさない｡…行きなさい」

ﾌﾞｩｩｩｩｩｩﾝ…ﾌﾞｩｩｩｩｩｩｩｩﾝ

エレン「アルミン！なんか大量に飛んできたぞ！」

アルミン「あれは…蜻蛉と蜂かな？なんにしてもこのままじゃ追いつかれる」

エレン「どうすんだアルミン！」

アルミン「仕方ない、あまり使いたくはなかったッスけど」ｽｯ

エレン「なんだそれ、鉄か？」

アルミン「エレン、ちょっとだけ煩いかもッス。くらえ！」ﾌﾞﾝｯ

ｶｯ…ﾄﾞｫｫｫｫｫﾝ！！

エレン「なッ…爆発した？」

アルミン「金属を爆発させる。これが僕のもう一つの能力ッス」

エレン「そうなのか…つかアルミン喋り方どうしたんだ？」

アルミン「昨日言ってた能力の影響ッス。これに乗ってる間はなぜかこの喋り方になるッス」

エレン「ああ、そういえば言ってたな…そんな風になるのか」

アルミン「とりあえず下に降りるッス。エレンも状況が知りたいでしょ」

エレン「ああ、頼むわ…」

アルミン「さて、何から聞きたい？と言ってもぼくもそこまで詳しいわけではないんだけど」

エレン「（喋り方戻ってるな）えっと、聞きたいことは沢山あるんだが…まずは、助けてくれて有難うな。アルミンが来なかったら危なかった」

アルミン「ふふ、どういたしまして」

エレン「そんで、聞きたいことだよな…能力については昨日も言ってたよな」

アルミン「そうだね、通常では有り得ない事が出来るようになる力…いつ発現するか、それがどんな物なのかは誰にも解らない」

エレン「代わりに性格、又は精神に変化が現れるんだったか？」

アルミン「偶にね。変化が激しい人とそうでない人で個人差があるらしいけど、ミカサは…激しかったみたいだね」

エレン「そうか…」

アルミン「ところでエレン、なんでミカサに襲われたの？（なんとなく予想はつくけど）」

エレン「ああ、今朝言ってた本を見せたらよ、なんか血相変えて譲ってくれって言い出したから断ったらそのまま…」

アルミン「なるほど、エレンちょっとその本を見せてもらってもいいかい？」

エレン「いいぞ、これだ」つ本

アルミン「…！これは…」

エレン「なんかわかったのか、アルミン？」

アルミン「エレン、これは唯の本じゃないよ」

エレン「え？」

アルミン「この本には膨大な魔力が込められている。それこそ、巨人を全て駆逐できるほどの魔力が」

エレン「えっと…話に付いていけないんだが…」

アルミン「待ってエレン。まず質問に答えてほしい。最近変な夢を見なかった？」

エレン「夢？いや、見ていないけど…」

アルミン「そう…なら最近身の周りにおかしな事が起こったりしなかった？」

エレン「いいや。しいて言うならその本だけだな」

アルミン「そうか…（ならエレンはまだ覚醒前ということか。仕方ないここは僕が教えるしかなさそうだ）」

アルミン「エレン、君の聞きたい事に答えよう。今から僕が言うことはすべて事実だ。信じるかはエレンの自由だけどね」

アルミン「そしてこの話を聞けば、もう君は戻れない。避けられない戦いに身を投じることになる。それも巨人とではなく人間同士の戦いに」

エレン「……、ああ」

アルミン「それでもいい？もう元の生活には戻れないかもしれないけれど…」

エレン「愚問だぜ、アルミン」

アルミン「え？」

エレン「すでにお前とミカサはその中にいるんだろう？なら俺だけ仲間外れにしないでくれよ」

エレン「俺達は、”三人”で外の世界に行くんだ。忘れた訳じゃないだろう？」

アルミン「エレン…！」

エレン「ミカサだって絶対に俺が何とかして見せる。だからアルミン、全部話してくれ」

アルミン「分かった。僕が知っていること、全部は話すよ」

それから、俺はアルミンから知っていることをすべて教えてもらった。

それによると、俺達が知らないだけで能力が使える奴は結構いるらしい。

アルミンの場合、自分の変化に気が付いた夜に、不思議な夢を見たとのこと。

その後、自分の能力について、使い方や、制限などが勝手にわかったらしい。これを覚醒と呼んでいる、とアルミンは言っていた

俺はそんな夢を見たことがないため、まだ覚醒前であり、どんな能力が使えるのかもわからない。まあ、時が経てば追々分かって来るだろう。

だが一番の問題はそこではない。

アルミンの話によれば、最近能力者たちによる殺し合いが多発しているらしい。

原因はアルミンにもわかってないらしいが、夜になるとちょくちょく戦闘が起きているそうだ。

幸いまだ死者もおらず、戦闘の規模も小さいものらしいが放ってはおけないだろう。

アルミン「僕が知っているのはこれぐらいだよ」

エレン「そうか…俺の知らないところで、そんなことが起きていたのか」

アルミン「まあ、ばれないように細心の注意を払っていたみたいだしね。それで、エレンはこれからどうするの？」

エレン「決まってんだろ、関わったからには最後までやるさ。とりあえず、人間同士の争いは止めさせたいかな」

アルミン「エレンならそういうと思った」

エレン「だが俺一人じゃ無理だ。なんせ自分の能力さえ把握できてないからな。だからアルミン、手伝ってくれるか？」

アルミン「ふふ、愚問だよエレン。僕たちは親友だろう」

エレン「アルミン…有難う」

？？？「ヒュー、いい友情だなあ、二人とも！」

エレ・アル「！？」

エレン「お前、なんでここに…？」

？？？「なんでって、そりゃお前ここら辺で何かあったみたいだし？確認みたいなやつさ」

アルミン「…ということは君も能力者なんだね、ジャン」

ジャン「ああ、まあそういうこった。見たところそこの死に急ぎ野郎も全部知ってるって顔じゃねえか」

エレン「まあな、ジャンお前は…」

ジャン「その先は言わなくていい。お前らが予想している通りだ」

アルミン「エレン、ここは逃げるんだ。僕が時間を稼ぐ」

エレン「馬鹿言え！お前を置いていけるか、やるなら一緒に逃げるぞ」

アルミン「でも…」

エレン「大丈夫、そう簡単にはやられないさ。それよりあっちだ。ジャンのやつ、すっかりやる気だぞ」

ジャン「話は終わったか？」

エレン「ああ、ジャンひとつ質問をしたいんだが…」

ジャン「悪いが、それは勝負が終わってからにしてもらおう。生きていたらの話だがな」

アルミン「エレン…」

エレン「ああ、話し合いは無理のようだな。…来るぞ」

ジャン「さあ行くぜ…」ｽｯ

ジャン「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ　　それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり」

ジャン「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり　その名は炎、その役は剣」

ジャン「顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ」

ジャン「魔女狩りの王（イノケンティウス）！！」

ｺﾞｵｫｯ！！！

エレン「なっ…これは」

アルミン「炎の…巨人！？」

ジャン「そう、これが俺の能力の一つ”魔女狩りの王”だ」

ジャン「言っておくが、こいつの温度は３０００℃。下手に触ることはお勧めしないぜ」

アルミン「…どうする、エレン」

エレン「いきなりこんなのか…ちょっとやばいかな」

ジャン「ククク、さあて始めようかあ！」ｺﾞｵｯ