サーニャ「眠い・・・」 (116)

一年くらい前に途中まで上げたのですが、当初の予想以上に長くなりそうだったために解答編を書いているうちに頭がぼうっとしてきてしまい、
最後まで書ききれずに途中で切ってしまった(ほんとにすみません)ものの再利用ですので、もしそちらを読んでくださっていた方がいらっしゃいましたらネタバレはご遠慮ください。

あと推理ものです。死人がでます。
前回それも不評だったので耐性のある方、パラレルだと割り切れる方のみ読んでください。


《501基地周辺上空》

サーニャ(夜間哨戒・・・疲れた・・・)

サーニャ(まさか一晩に2回もネウロイに遭遇するなんて・・・)

サーニャ(そんなに強くはなかったけれど・・・)

サーニャ「・・・ふぁ」

サーニャ「今日もエイラのベッドに入っちゃおうかな・・・」

ガチャ

サーニャ「」フラフラ

サーニャ「」バタン

「・・・」

サーニャ(あれ・・・いつもならエイラ、飛び起きるのに・・・)パチリ

エイラ「」

サーニャ「え、エイラ・・・?」

エイラ「」



サーニャ「きゃああああああああ!」

某月某日、午前六時三十七分、本人寝室にて、エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉が死亡しているのが発見された。

死亡推定時刻は午前5時前後。死因は不明。明確な外傷は認められず、病死・他殺の両方面で調査が進められることになった。


サーニャ「エイラ・・・どうして・・・どうしてっ!」グズグズ

ミーナ「サーニャさん・・・」

サーニャ「目を覚ましてよ・・・いつか、一緒にオラーシャに行ってくれるって約束したじゃない・・・!」ボロボロ

芳佳「サーニャちゃん・・・サーニャちゃんがいつまでも泣いてたら、エイラさんも悲しむよ」

サーニャ「芳佳ちゃん・・・!お願い・・・芳佳ちゃんの魔法で、エイラを・・・エイラを治してあげて・・・!」

芳佳「・・・無理だよ、サーニャちゃん。治癒魔法で身体は治すことが出来るけど、魂まで戻すことは出来ない」

サーニャ「っ!そんな・・・エイラ・・・」プルプル

全員「・・・」

サーニャ「今日もエイラのベッドに入っちゃおうかな・・・」

>>4
ほんとすみませんでした!1年ROMりましたんでそろそろ勘弁して下さい

ミーナ「・・・詳しい死因については今、衛生兵に調べさせているけど、目立った外傷も無いみたいだし、現時点では病死の可能性が高いみたいね」

リーネ「そんな・・・昨日まではあんなに元気だったのに・・・」

サーニャ「うぐっ・・・ひっく・・・エイラ・・・」

ミーナ「もちろん、他殺の可能性も捨ててはいけないわ。詳しい検視の結果が出るまで、全員自室待機とします」

全員「了解」

坂本「待ってくれ、ミーナ」

ミーナ「何?・・・少佐」

坂本「一応、だな、他殺である可能性を考えて、全員のアリバイを確認しておいた方がいいと思うんだが」

ミーナ「・・・そうね。サーニャさんには・・・酷でしょうけど」チラッ

サーニャ「うぅ・・・ぐす」ボロボロ

ミーナ「エイラさんの死亡推定時刻、午前5時頃の皆さんのアリバイを調べます。各自その時刻、何をしていたか報告して下さい」

ミーナ「と言っても大半は眠っていたでしょうけど」

芳佳「・・・あ、私は4時半くらいから起きていました。それで、隣で寝ているリーネちゃんを見てました」

ゲルト「? 4時半からずっと、ただリーネを見てたのか?」

芳佳「! そ、その、ちょっと触ったりもしましたけど・・・」

エーリカ「触ったって、何を?」

芳佳「そ、その・・・お、おっぱ・・・」

リーネ「よ、芳佳ちゃん・・・」

芳佳「そんなことはどうでもいいんです!とにかく、リーネちゃんは午前5時頃私の隣で寝てたからアリバイがあります!」

坂本「リーネ、間違いないか?」

リーネ「は、はい。私はサーニャちゃんの悲鳴で目覚めたので、多分6時半くらいに起きたんだと思います。その時には芳佳ちゃんが隣にいました」

ミーナ「なるほど」カキカキ

坂本「私は、朝5時には普段通り外で自主訓練をしてたんだが・・・それを証明できる者はおらんな」

坂本「ただ、6時過ぎにサーニャが夜間哨戒から帰ってくるところを見かけたから、サーニャが犯人でないことは間違いない」チラッ

サーニャ「・・・」

ミーナ「そう・・・」カキカキ

ルッキ「私、少佐が5時前から外で訓練してるの見てたよ?」

ミーナ「本当?ルッキーニさん」

ルッキ「うん。私、いつも通り、庭の木の上で寝てたんだ。そしたら少佐ったらまだ5時前だっていうのに、おっきな声で『れっぷうざーん!!』ずばばばばーっとかやってるから、目が覚めちゃった」

全員「・・・」

坂本「・・・いや、その・・・すまん」

ペリーヌ「気にしないで下さいまし、少佐。どうせルッキーニさんの耳が野生動物並みに良いだけですわ。私の部屋までは全く聞こえてきませんから、安心して下さい」

坂本「そ、そうか・・・」

全員(いや・・・聞こえてるんだけど・・・)

ゲルト「私も今朝は6時過ぎまで寝ていたな。ハルトマンが・・・起きているはずもないからアリバイを証明できる者はいない」

エーリカ「ちょっとー、トゥルーデ。勝手に決めつけないでくれる?心外だよ」

ゲルト「なんだ?起きてたのか?」

エーリカ「いや、寝てたけど」

ゲルト「・・・」

坂本「まぁ、ハルトマンが起きてたりしたらそれはそれで怪しいからな」

エーリカ「ひどいっ!」

ペリーヌ「私も今朝は、・・・事件が起こって、起こされるまで部屋で寝ていましたわ。証明できる人なんて当然いませんけど」

ミーナ「ふーむ・・・」カキカキ

ミーナ「私も今朝は、事件後に美緒に起こされるまでは部屋で寝ていたわね。7時ちょっと前だったかしら。昨晩中に片付けなくてはいけない書類が沢山あって、昨日は夜更かししてしまったから・・・」

坂本「最後にシャーリー、お前はどうなんだ?」

シャーリー「・・・寝てたよ、その時刻には。だけどさ」

坂本「?」

シャーリー「なぁ、このアリバイ調べにそんなに意味があるとは思えないんだが」

芳佳「どういう意味ですか?シャーリーさん」

シャーリー「今私たちは、エイラの事件を、他殺であり、この中に犯人がいるという前提で話している」

リーネ「それがどうかしましたか?」

シャーリー「気づかないのか?もし他殺だったとして、外傷が見当たらない場合、もっとも考えられるのは・・・毒殺だ」

坂本「・・・なるほど、そういうことか」

ルッキ「え?どういうこと?」

ゲルト「つまり、エイラ殺害の実行行為が行われたのは、死亡推定時刻よりずっと前かもしれない、ということだ」

エーリカ「・・・確かに毒物には即効性のものと遅効性のものがある。即効性のものならすぐに効果は現れるけど、遅効性のものなら、一日二日経ってから効果が出始めるものもざらにあるよ」

ミーナ「つまり死亡推定時刻におけるアリバイには意味が無い、ということね・・・」

全員「・・・」

ミーナ「とにかく。依然として病死の可能性が高い以上、検視の結果が出ないうちには、これ以上議論は進められないわ」

シャーリー「そうだな・・・」

ミーナ「先ほど言った通り、検視結果が出るまでの間、全員自室待機とします。他殺の可能性が残る以上、自身の安全のためにも、部屋から出るのは極力避けて下さい」

全員「了解」

《エイラ・サーニャの部屋》

サーニャ「うっ・・・ぐすっ・・・エイラ・・・」グズグズ


《ルッキーニの部屋》

ルッキ「・・・うじゅ?」


《バルクホルン・ハルトマンの部屋》

ゲルト「まさかこんなことになるとはな・・・」

エーリカ「まだいまいち実感がないや・・・昨日まで、あんなに元気だったエイラが・・・もういないなんて」

ゲルト「私もだ・・・こんなにあっさりと仲間を失うことになるとは・・・思ってもみなかった」

エーリカ「うん。・・・?」

ゲルト「どうした?」

エーリカ「今、何か変な音がしたような」

ゲルト「・・・そうか?私には聴こえなかったが」

エーリカ「気のせい、だったのかな?」

ゲルト「あんなことがあったあとだ。気が立っているんだろう」

エーリカ「・・・そうかもね」

パァン!

ゲルト・エーリカ「「!!」」

ゲルト「銃声!?」

エーリカ「棟の端の方だ!行こう、トゥルーデ!」

《隊員寝室棟、廊下》

ゲルト「宮藤!」

芳佳「バルクホルンさん!ハルトマンさん!部屋にいたら、ルッキーニちゃんの部屋の方から銃声のような音が聞こえて・・・ずっとドアを叩いてるんですけど、鍵を掛けているみたいで返事もしてくれないんです!」ガチャガチャ

エーリカ「私達も今それを聞いて飛び出してきたとこ!」

シャーリー「おい、今の銃声はやっぱりルッキーニの部屋か!?」

芳佳「シャーリーさん!」

ゲルト「仕方ない、ドアを破ろう!」

ゲルト「はっ!」ガシャァア

シャーリー「ルッキーニ!」

芳佳「ルッキーニちゃん!」

ゲルト「・・・これは!」

同日午前十一時四十五分、本人寝室にて、フランチェスカ・ルッキーニ少尉が殺害されているのが発見された。
死因は銃殺。頭部に銃弾を一発受けており、他に目立った外傷はない。また、現場の窓は割れ、床にはガラスが散らばっていた。

シャーリー「おい、ルッキーニ!ルッキーニ!」ボロボロ

ミーナ「シャーリーさん・・・」

サーニャ「ルッキーニちゃんも、エイラと同じ所に行ってしまったのね・・・」グスッ

エーリカ「・・・エイラが死んで、ルッキーニが殺された。この二つの事件、全く関係がないなんてこと、あると思う?」

ゲルト「・・・いや、ただの死亡事故でさえ、よくあることなんかじゃない。ましてや立て続けに人が死ぬなんて・・・偶然とは思えない。何か大きな一つの意思が働いていると考えたほうが、まだ納得出来るように思う」

ミーナ「つまりトゥルーデはエイラさんも何者かによって殺害されたと言いたいの?」

ゲルト「・・・そういうことになる。私達の中にエイラを殺した者がいるなんて思いたくはないが、現に第二の殺人、あえて第二というが、それが起きている」

ミーナ「・・・そうね。検視の結果が出るまでは、なんとも言えないけれど、私もかなりその考えに傾いてきているわ」

ミーナ「とりあえず、今できることを。遺体を調べましょう」

エーリカ「待った」

ミーナ「?」

エーリカ「その前に、確認したいことがあるよ」



エーリカ「宮藤、リーネはどこに行ったの?」

エーリカ「私達が廊下に出た時、ルッキーニの部屋の前にいたのは、宮藤一人だったよね?・・・同室のはずのリーネがいないのはどうして?」

宮藤「え、ええっと・・・リーネちゃんなら銃声が聞こえる少し前にお手洗いに行きましたけど・・・そういえば遅いですね」

エーリカ「・・・本当に?実は宮藤が犯人で、既にリーネを殺してるとかだったら洒落にならないんだけど」

宮藤「そ、そんなわけないじゃないですか!大体ルッキーニちゃんの部屋には鍵がかかってたんですよ!」

ドタドタドタ

リーネ「はぁ・・・はぁ・・・すみません、遅くなりました・・・っ!ルッキーニちゃん!?なんで・・・」

坂本「リーネ!」

芳佳「リーネちゃん!」

エーリカ「え、リーネ!?」

リーネ「お手洗いに行って、部屋に戻ったら芳佳ちゃんがいなくて・・・それで招集がかかったのだと思って人の気配のあるこっちまで急いで走ってきたんですけど・・・」

芳佳「だから言ったじゃないですか、ハルトマンさん!私は犯人なんかじゃありません!」

エーリカ「・・・リーネを殺したんじゃないかって言ったことは謝るよ。でもルッキーニ殺害に関してアリバイがあるわけじゃないんだ。無実が証明されたわけじゃない・・・人より怪しかったのが皆と同じになっただけだ」

芳佳「ハルトマンさん!」

リーネ「え?え?」

ミーナ「はい、そこまで。遺体の状態もよくわからない内に、する議論じゃないわ。・・・まずは、遺体を調べましょう」

ハルトマン「頭部に一発。それ以外に目立った外傷はないね」

坂本「! 遺体のポケットから部屋の鍵が見つかったぞ」ゴソゴソ

ミーナ「! ということは、密室殺人?」

坂本「いや、窓ガラスが割れているから密室ではないな。むしろそこから襲われたと考えるほうが妥当だろう」

ミーナ「・・・でも、ここは3階よ?バルコニーも無いし、窓の外に立つことなんて出来ないわ」

ゲルト「あそこからなら撃てるんじゃないか・・・?」

ミーナ「向かいの、棟・・・?」

坂本「なるほど、確かにあそこからなら・・・だが頭部を狙って撃つのには、相当の射撃の精度が必要になるな」

サーニャ「あれ・・・?」

坂本「どうした、サーニャ」

サーニャ「・・・ルッキーニさんの指の腹に血が付いています」

ゲルト「・・・!もしや」

ゲルト「ミーナ、ちょっとルッキーニの身体を動かしてもいいか?」

ミーナ「え、えぇ」

ゲルト「ハルトマン、手伝ってくれ」

エーリカ「別にいいけど・・・」

シャーリー「待った・・・私にやらせてくれ」

ゲルト「リベリアン・・・」

サーニャ「シャーリーさん・・・」



ゲルト「よっ・・・」

シャーリー「くっ・・・」



芳佳「こ、これは・・・」

坂本「・・・ダイイング・メッセージか」

同日、午後十二時二十五分、ルッキーニ少尉の遺体の下、丁度死角となる位置に、血で『L・B』と書かれているのが確認された。


坂本「L・Bか・・・」

ミーナ「L・B、L・B・・・リネット・ビショップ・・・!」

サーニャ「! リーネさんが・・・エイラと、ルッキーニちゃんを・・・殺したの・・・?」

リーネ「違います!私、そんなことしてません!」

ゲルト「だがリーネの射撃の腕なら、向かいの棟からルッキーニを狙うことはたやすいはずだ」

リーネ「そんな・・・」

シャーリー「お前がルッキーニを殺したのか・・・!遅れてきたのはルッキーニを撃って、向かいの棟から走ってきたからなんだろう!?」

リーネ「違います!私、そんなことしてません・・・」

エーリカ「・・・待った。リーネは犯人じゃない」

全員「!?」

ゲルト「どういうことだ?」

エーリカ「こんなこと、ちょっと考えればわかるはずなんだけどなぁ。頭を撃たれたら普通、即死、だ」

シャーリー「あ・・・」

エーリカ「あとは言わなくてもわかるだろ?ルッキーニにダイイング・メッセージが残せたわけがないんだ」

ゲルト「・・・犯人による偽装工作、というわけか」

エーリカ「つまり、逆に考えればリーネは犯人ではない。わざわざ自分に疑いを向けるようなメッセージを残す犯人なんていないからね」

エーリカ「それにルッキーニのこの傷、・・・焦げ跡があるんだ」

芳佳「!」

ミーナ「・・・どういうこと?」

エーリカ「宮藤はわかったみたいだね。こういう焦げ跡っていうのは、至近距離から撃たれた時に出来るものなんだ」

芳佳「つまり、向かいの棟から撃たれたわけじゃない、ってことですね」

エーリカ「・・・そうだ。ルッキーニはこの部屋の中で銃を突きつけられ、そして殺されたんだ」

エーリカ「それからきっと犯人は、ガラスを割り、あたかも外から狙撃されたかのように現場を偽装し、ルッキーニの指を使って現場に偽のダイイング・メッセージを残した」

エーリカ「だけど、遺体の焦げ跡については気が付かなかった。このことから考えるに、犯人は医学に精通していない者。そして、リーネを恨んでいるか、リーネが捕まっても構わないと考えているもの、じゃないかな」

ゲルト「そうすると、大分容疑者が絞られるな。宮藤、ハルトマンは焦げ跡のことを知っていたからそんなミスを犯すはずがない。そしてリーネも容疑者から外される。そして加えてリーネに恨みを持つ者が怪しい、か」

エーリカ「宮藤が犯人っていうのは、結局間違いだったみたいだね。ごめんよ」

芳佳「いえ・・・最終的に無実を証明してくれたのはハルトマンさんですから」

ミーナ「待って」

エーリカ「どうしたの、ミーナ」

ミーナ「それではおかしいのよ。私達は、銃声が聞こえた後、すぐにルッキーニさんの部屋の前に集まったはずよね?」

坂本「その通りだ」

ミーナ「その短い時間の間に、窓ガラスを割り、偽のダイイング・メッセージを残し、何らかの方法で密室を作り上げるなんて、無理があるわ」

ゲルト「・・・確かに」

サーニャ「・・・エイラがいれば・・・タロットで全部、解決してくれるのに・・・」グスッ

エーリカ「でもダイイング・メッセージが偽物である以上、犯人による偽装工作が行われたのは間違いない」

ミーナ「問題は、発砲から遺体の発見までの短い間に、どうやってそれをやり遂げたか、ということね」

シャーリー「・・・それについては一つの仮説を示せるかもしれない」

リーネ「シャーリーさん・・・!」

ゲルト「リベリアン!本当か?」

シャーリー「ああ。・・・まず前提が間違っているんだ」

シャーリー「確かに、銃声が聞こえてから、私たちはすぐにルッキーニの部屋に集まり、そこでルッキーニの遺体を発見した。その間に先程語られた偽装工作を完了するのは間違いなく不可能だ」

ゲルト「・・・だが現に偽装工作は行われた」

シャーリー「いいから、聞け、バルクホルン。私は、銃声から遺体発見までの間に行うのは無理だ、と言ったんだ」

ゲルト「!」

ゲルト「まさか・・・」

シャーリー「そうなんだよ。私たちは銃声が鳴った瞬間がルッキーニの死亡時刻だと勝手に思い込んでいた。だが実際は、私達が銃声を聞いた時には、ルッキーニは既に・・・殺されていたんだ」

ゲルト「サイレンサー、か」

シャーリー「ああ、犯人がルッキーニを殺害した時、犯人の銃にはサイレンサーが付いていたんだ。だからその時刻に銃声は聞こえなかった」

ミーナ「・・・なるほど」

シャーリー「そうしてルッキーニを殺害した犯人は、ガラスを割り、ダイイング・メッセージを偽装し、何らかの方法で密室を作ってから、私達に遺体を発見させる目的で、サイレンサーを外した銃を発砲した」

シャーリー「そして他の奴が部屋から出てくる前に、一度自室に戻り、あたかも今銃声を聞いて飛び出してきたかのように振舞ったんだ」

リーネ「・・・どうしてわざわざそんなことを?放っておいてもいつかは見つかりますよ・・・?」

シャーリー「おそらく自分が疑われないためだ。さっきも言った通り、犯人はルッキーニが、遠く離れた向かいの棟から撃たれたと思わせたかった。

シャーリー「だから銃声のあと、すぐ現場に駆けつけた者はルッキーニを殺害できない、と判断されると踏んだんだろう」

ゲルト「・・・」

シャーリー「・・・?どうした、バルクホルン。何かおかしいところがあったか?」



ゲルト「・・・いや、それだとお前が一番怪しいことになるぞ」

シャーリー「・・・え?」

ゲルト「確か、銃声を聞いて、真っ先にルッキーニの部屋のドアの前にやってきたのは宮藤だったな」

芳佳「あ、はい」

ゲルト「その後が私と、ハルトマン。そして次にやってきたのが・・・」

シャーリー「私だ・・・あ」

ゲルト「気付いたか」


ゲルト「遺体発見前に現場に駆けつけた者の中で、唯一犯人の疑いが残るのが、お前なんだ」

ゲルト「宮藤とハルトマンは、医学に通じ、焦げ跡のことを知っていたからあんな偽装をするわけがない。よって犯人ではない」

ゲルト「ハルトマンが犯人でないなら、奴とずっと行動を共にしていた私も犯人では有り得ない。わかるな?」

ゲルト「そしてその他のメンバーは私達がルッキーニの遺体を発見した後、つまり比較的遅くにやってきた。だとすると一番怪しいは誰だ?」

ゲルト「・・・お前だ」

全員「・・・」

シャーリー「・・・私がルッキーニを殺した、だと?・・・本当にそう思っているのか?バルクホルン」

ゲルト「・・・」

シャーリー「・・・」

ゲルト「・・・ふっ」

ゲルト「・・・流石にそんな訳はない、か。お前がルッキーニを殺す理由なんて思いつかないし、第一、偽装工作のトリックを見破り、早く現場に駆けつけた奴が怪しいと言ったのはリベリアン、お前だからな」

ゲルト「本当にお前が犯人だったら、わざわざ自分の首を締めるようなことはしないだろう」


シャーリー「ははっ・・・わからないぜ?この展開まで予想していて、自分でトリックを暴けば疑われないと考えたのかもしれないぞ」

ゲルト「・・・ふん、お前がそんなに賢いわけがないだろう」

ジリリリリリリリリリリリリリリリリ


ミーナ「・・・電話が鳴ってるわ。ちょっと行ってくる」

坂本「ミーナ、ちょっと待て」

ミーナ「?」



坂本「何があるかわからん。全員で行こう」

《司令室》

ミーナ「・・・なんですって!?はい・・・はい・・・」

ガチャリ

ミーナ「・・・エイラさんについての、詳しい検視結果が出たわ」

サーニャ「・・・どうだったんですか」ギュッ

ミーナ「・・・結論からいうと、体内から毒物は検出されなかったわ」

ゲルト「! ・・・そうか、やはり病死だったんだな」

ミーナ「・・・」キュッ



ゲルト「・・・ミーナ?」

ミーナ「それが・・・調べたところ、全くの健康体だったそうよ」

全員「!」

サーニャ「!」ジワッ

坂本「ということはつまり・・・」

ミーナ「ええ、完全に原因不明の突然死、ということになるわね」

エーリカ「そんなこと!・・・あるわけない」ガタッ

ミーナ「落ち着いて、フラウ。確かに考えにくいことだわ。でもこれが、真正の検視結果なの」

全員「・・・」

サーニャ「うぅ・・・それじゃあ・・・エイラが死んだのは・・・ひぐっ・・・本当にただ、運が悪かっただけだって言うんですか・・・!」ボロボロ

ミーナ「サーニャさん・・・」

エーリカ「いや、そんなわけない・・・人の身体っていうのは、私達が思ってる以上に強く出来てるんだ」

エーリカ「何もないのに人が死ぬなんてこと、あるわけない!認めない・・・私は認めないぞ・・・!」



エーリカ「絶対にこの事件の真実を暴いてやる!!」

to be continued...

以上が出題編になります。一応ここまでで推理に必要な情報は出切っている(かな?)はずです。
それでは解答編始まります。

《談話室》

エーリカ「・・・とは言ったものの」

エーリカ(犯人はどうやってエイラを殺したんだろう・・・)

エーリカ(何か方法があるはずなんだけど)

エーリカ「あー、もう!わからない!!」

ゲルト「突然大声を出すな!」ゴツン

エーリカ「・・・痛い」プクーッ

芳佳「ハルトマンさん、大丈夫ですか?治癒魔法かけますか?」

ゲルト「大丈夫だ、問題ない」

エーリカ「なんでトゥルーデが答えるのかなぁっ・・・!」

エーリカ(別の視点から考えてみよう)

エーリカ(エイラの死が作為的なものだったとしたら)

エーリカ(つまり、エイラの死を第一の殺人事件だと構成するとしたら)

エーリカ(第一の事件と第二の事件、どちらも犯行が可能なのは誰か?)

エーリカ(まず第一の事件。・・・結局毒殺では無かったのだから、死亡推定時刻のアリバイが重要になってくるはずだ)

エーリカ(その時刻のアリバイがあったのは確か・・・)

エーリカ「リーネ、少佐、サーニャの三人か」

エーリカ(次に第二の事件。物理的にはほとんど全員にルッキーニ殺害は可能だ)

エーリカ(ただし、私は自分が犯人でないことは知っているし、一緒に行動していたトゥルーデも犯人では有り得ない)

エーリカ(さらに、宮藤は焦げ跡のことを知っていたから、あんな偽装をするわけがない)

エーリカ(リーネは偽のダイイング・メッセージに名前が残されていたことから犯人ではない)

エーリカ(シャーリーは・・・保留で)

エーリカ(すると犯人でないと考えられるのは・・・)

エーリカ「私、トゥルーデ、宮藤、リーネ、あとは括弧付きでシャーリーってところか」

エーリカ(すると残るのは・・・)

エーリカ「ミーナ、ペリーヌ・・・」



エーリカ「・・・ペリーヌ?」

エーリカ「あああああっ!」

ゲルト「五月蝿い」ゴツン

エーリカ「・・・痛い」

リーネ「どうかしたんですか、ハルトマンさん」

エーリカ「なんで気づかなかったんだろう!ルッキーニの遺体が発見されてから、私達一度もペリーヌを見てないよ!」

全員「!!」

シャーリー「本当だ・・・全然気づかなかった・・・」

坂本「まさか・・・」

サーニャ「ペリーヌさんが・・・犯人?」

芳佳「ペリーヌさんを探しに行きましょう!」

ミーナ「待って、危険だわ。もし彼女が本当に犯人だったとしたら・・・ここに皆でいた方が安全よ」

坂本「そうだ、ミーナ。固有魔法でペリーヌのいる場所はわかるか?」

ミーナ「ちょっと待って。・・・うーん、ここからじゃ捕捉できないところにいるみたいね」

ゲルト「だがどうする。ペリーヌが白か黒かはっきりしないままじゃ、私達も身動きが取れない。ずっとこうしてるわけにもいかんだろう」

ミーナ「そうね。・・・私がペリーヌさんを探しに行くわ」

坂本「そんな!危険だ!」

ゲルト「そうだぞ、ミーナ!」

サーニャ「ミーナ隊長・・・」

芳佳「ミーナさん!」

シャーリー「その通りだ!」



エーリカ「・・・ミーナなら大丈夫だよ。固有魔法もあるし、ペリーヌに遅れを取ったりはしないよ」

ミーナ「・・・ありがとう、フラウ」ニコッ

ゲルト「ハルトマン!お前何を・・・」

ゲルト「!」

ゲルト「・・・そういうことか」

ミーナ「皆さん、心配してくれてありがとう。でも大丈夫、私には三次元空間把握があるから」

ガチャ バタン

ゲルト「ハルトマン・・・」

エーリカ(現時点で一番怪しいのは姿を見せないペリーヌだ)

エーリカ(だけどそのペリーヌが、既に殺されていたとしたら・・・?)

エーリカ(その場合、第一容疑者の地位はミーナが受け継ぐことになる)

エーリカ(ペリーヌが犯人でなかった場合、ペリーヌは既に殺されているんだろう)

エーリカ(犯人がミーナであれば、もう談話室には戻ってこれないはずだ。ペリーヌの遺体が見つかれば、次に疑われるのは自分なのだから)

エーリカ(私たちはひとまず安全を確保、そしてミーナかペリーヌが犯人であることを前提とした議論を進めることが出来る)

エーリカ(もし仮に犯人がここにいる誰かだったとしてもミーナは安全だし、これだけの人数がいれば、私達に対しても手は出せないだろう)

エーリカ(ペリーヌが犯人であった場合でもミーナがペリーヌに遅れを取るわけがない)

エーリカ(・・・これが最善の選択なんだ)



エーリカ(ちょっと露骨だったかな・・・ミーナ、気付いたろうな。あーあ)

ゲルト「・・・だがそれはエイラの死を他殺だと決めつけた上での判断だろう」

エーリカ「・・・他殺に決まっているさ」

ゲルト「証拠はあるのか?」

エーリカ「むしろ原因不明の突然死なんて戯言を信じられる根拠を、こっちが教えてもらいたいね」

ゲルト「・・・」

サーニャ「私は・・・私はハルトマンさんを信じます・・・!」

全員「!!」

サーニャ「根拠は、ありません・・・でもエイラが・・・エイラが何の理由もなく死んでいったなんて・・・信じたくないんです・・・!」

サーニャ「でないとエイラが・・・あまりにも可哀想で・・・」ボロボロ

全員「・・・」

エーリカ「・・・とりあえず、エイラの死は他殺、ペリーヌが犯人だと仮定して、話をしよう。まだ解決していない謎が一つある」

シャーリー「・・・密室、か」

エーリカ「シャーリーの説明したトリックをもう一度振り返ろう」

ゲルト「まず犯人はサイレンサー付きの銃でルッキーニを殺害。その後現場を偽装し、何らかの方法で密室を作ったのち、サイレンサーを外して発砲、私達が部屋から出てくる前に自室に戻り、さも銃声を聞いて飛び出してきたかのように・・・ん?」

シャーリー「ペリーヌは・・・現場に向かっていない。『銃声を聞いて飛び出して来て』いないな」

エーリカ「そう、ペリーヌが犯人だったとすると、シャーリーの言ったトリックでは不完全なんだ」

エーリカ(そうだ・・・私達と合流する必要がないのなら・・・)

エーリカ(簡単じゃないか。もともとあの部屋は・・・密室なんかじゃなかった)

エーリカ(それに、ルッキーニの性格を考えると・・・)

エーリカ「ペリーヌは・・・あの部屋の窓から脱出したんだ」

芳佳「窓って・・・あそこは三階ですよ!」

エーリカ「魔法力で肉体を強化して、飛び降りればどうということはないはずさ」

エーリカ「窓という選択肢が思いつかなかったのは、その場合、犯人はルッキーニの部屋にいる間に銃を発砲して私達をおびき寄せ、そのまま飛び降りたあと、また三階まで登って私達と合流しなきゃいけない、というのがネックだったからだ。

エーリカ「それには少し、時間がかかりすぎる。それが心理的な密室になっていたんだ」

ゲルト「だがあれ以来姿を見せていないペリーヌなら、それも可能、ということか」

エーリカ「うん、逆に言うと、あのあとルッキーニの部屋に集まってきた人には、窓から脱出するなんてことは出来ない。つまり、ペリーヌ以外には密室を作ることは不可能だ」

シャーリー「・・・決まりだな」

ゲルト「あとは・・・証拠だけ、か」

エーリカ(・・・証拠か)

エーリカ(飛び降りた時に何か落としたりしてたらいいんだけど・・・)

エーリカ(ん・・・?飛び降りた・・・?)

エーリカ(・・・3階の高さから飛び降りたのなら)

エーリカ「トゥルーデ!ちょっと証拠探してくる!」ガタッ

ゲルト「お、おい、待て!ハルトマン!危ないぞ!」

エーリカ(ルッキーニの寝室の窓の真下・・・ここに足跡が残っていれば犯人はペリーヌだという証拠になる!)

エーリカ「!」

エーリカ「な、ない・・・足跡が、ない・・・」

エーリカ(踏みならしたような跡もない・・・何ヶ月も誰も立ち入っていないみたいだ・・・)

エーリカ「そんな・・・何もないなんて・・・」

エーリカ(・・・あれ?)


エーリカ(・・・何も・・・ない?)


エーリカ(本来、ここになくちゃいけないものが何かあるんじゃないのか・・・?)

エーリカ(何か大きな思い違いをしているような・・・)

エーリカ「・・・」

     『・・・今、何か変な音が・・・』

                         『・・・鍵がかかって・・・』

『・・・頭部に一発か・・・』

                  『・・・向かいの棟から・・・』


『・・・ダイイング・メッセージが・・・』
     

                           『・・・窓ガラスを・・・』

          『・・・全くの健康体・・・』


『・・・無理だよ・・・』
              
                   『・・・大丈夫ですか?・・・』

            




エーリカ「! ・・・そういう、ことか」

《談話室》

バタン

ゲルト「ハルトマン!無事で良かった・・・!」

エーリカ「心配かけてごめんね、トゥルーデ」

エーリカ「でも・・・」



エーリカ「・・・真犯人、わかっちゃった」

ゲルト「どういうことだ・・・?ペリーヌは犯人じゃなかったっていうのか?」

エーリカ「うん、私の早とちりだったみたい。ごめんね」

エーリカ「本当の犯人は・・・」




エーリカ「・・・宮藤とリーネの共犯、それしか考えられない」

サーニャ「・・・芳佳ちゃん・・・と、リーネさんが・・・エイラを・・・?」

芳佳「そんな・・・!私の潔白はハルトマンさんが証明してくれたんじゃないですか!」

リーネ「・・・それにダイイング・メッセージの偽装のことはどう説明するんですか・・・?」

ゲルト「・・・確かに、なんで焦げ跡のことを知っていたはずの宮藤が、向かいの棟から撃たれたように見せる、なんてトリックを使うんだ?」

シャーリー「私たちなら気づかないと踏んでいた、ってところか・・・?」

エーリカ「いや、違うよ。まず前提が間違っていたんだ。現場は向かいの棟から撃たれたように偽装されたんじゃない」



エーリカ「ルッキーニは、実際に、向かいの棟から撃たれたんだ」

ゲルト「! 何を言ってるんだ・・・!それなら焦げ跡のことはどうなる!?」

リーネ「そうですよ・・・!遠距離からの狙撃では焦げ跡は付かない、ハルトマンさんが言ったんじゃないですか!」

エーリカ「焦げ跡?・・・それは致命傷になった傷のことでしょ?」

芳佳「!」

ゲルト「なんだと・・・?」

エーリカ「向かいの棟からの銃撃は、致命傷ではなかったんだ。せいぜい、重症ってとこかな」

エーリカ「ルッキーニは、即死ではなかった」

エーリカ「そうなってくると、ダイイング・メッセージの意味も変わってくる」

エーリカ「あれは、偽装なんかじゃなかったんだ」

エーリカ「フランチェスカ・ルッキーニは、最後の力を振り絞って、自らの血で、向かいの棟から自分を狙った狙撃手の名前を記した」

エーリカ「L・B。リネット・ビショップ、お前だ」

リーネ「・・・」

エーリカ「その後、共犯の宮藤がルッキーニの部屋に入り、ルッキーニにまだ息があるのを確認すると、瀕死のルッキーニの頭部に向けて引き金を引いた」

エーリカ「これが、致命傷になった傷だ」

シャーリー「・・・ハルトマン、悪いが何を言ってるのかわからない」

シャーリー「ルッキーニの傷は、頭部への銃撃一発だけだったんだぞ・・・?」



エーリカ「・・・本当にわからないの?エイラの遺体が見つかった時のこと、思い出してみて?」

シャーリー「・・・?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《エイラ・サーニャの部屋》


サーニャ「エイラ・・・どうして・・・どうしてっ!」グズグズ

ミーナ「サーニャさん・・・」

サーニャ「目を覚ましてよ・・・いつか、一緒にオラーシャに行ってくれるって約束したじゃない・・・!」ボロボロ

芳佳「サーニャちゃん・・・サーニャちゃんがいつまでも泣いてたら、エイラさんも悲しむよ」

サーニャ「芳佳ちゃん・・・!お願い・・・芳佳ちゃんの魔法で、エイラを・・・エイラを治してあげて・・・!」

芳佳「・・・無理だよ、サーニャちゃん。治癒魔法で身体は治すことが出来るけど、魂まで戻すことは出来ない」

サーニャ「っ!そんな・・・エイラ・・・」プルプル

全員「・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

シャーリー「・・・!」

エーリカ「・・・思い出した?」

シャーリー「治癒魔法・・・か」

エーリカ「・・・そうだ。宮藤は死んだエイラの『身体を治す』ことは出来るんだ。ルッキーニの傷を塞ぐことも出来たはずだ」

ゲルト「ま、待て!そんなこと・・・あまりに突飛すぎる!」

エーリカ「私もそう思ったよ。だけど論理的に突き詰めていくと、それしか考えられないんだ」

ゲルト「・・・それなら答えてもらおう。まずお前が、ルッキーニが向かいの棟から撃たれたと断言した根拠はなんだ?」

エーリカ「ルッキーニの部屋の真下に、ペリーヌの足跡を探しに行った時に気付いたんだ」

エーリカ「本来ここに無くてはいけないものがない、ということに」


エーリカ「そう・・・割られた窓ガラスの破片が全くといっていいほど落ちていなかったんだ。ルッキーニの部屋の中には沢山散らばっていたのに。これがどういうことかわかる?」

シャーリー「・・・窓ガラスは、外から割られたのか」

エーリカ「そう。そしてあの部屋の外には足場なんてないから、窓の外に立ってガラスを割るのは不可能だ。だとすると考えられるのは・・・」

ゲルト「向かいの棟からの狙撃によって割られた、か・・・確かにそれしか考えられないな」

エーリカ「そしてルッキーニの部屋から弾痕が見つかっていないことから、弾丸がルッキーニに命中したことは間違いない」

エーリカ「・・・だけどその傷に焦げ跡が出来るわけがないんだ。だとすると、焦げ跡のある傷はそれとは全く別に付けられたことになる」

エーリカ「つまりルッキーニの遺体には元々2つの傷があったはずなんだ」

ゲルト「だが私達が遺体を発見した時には、傷は頭部の傷の一箇所しかなかった」

エーリカ「そうすると、最初の傷はどこに行ってしまったんだろう。・・・治癒魔法によって塞がれたとしか考えられない」



シャーリー「捜査を撹乱するために、治癒魔法を使ったのか・・・」

エーリカ「そう。そして、これがエイラの『原因不明の突然死』の正体でもあったんだ」

サーニャ「・・・!」

エーリカ「おそらく宮藤は、エイラを何らかの方法で殺害した後、治癒魔法で遺体の損傷を隠し、・・・死因がわからないようにしたんだ」

サーニャ「・・・そんな・・・エイラ・・・っ」

エーリカ「・・・話をルッキーニの事件に戻そう。ルッキーニを殺害した宮藤は、まず治癒魔法でリーネの撃った傷を塞ぎ、それから部屋を出てサイレンサーを取った銃を発砲するだけで良かった」

エーリカ「あとは私達が銃声を聞いて飛び出してくるのを待ち、一芝居打つだけでいい。窓ガラスを割る必要も、密室を作る必要もなかったんだ」

ゲルト「どういうことだ?」

エーリカ「私達はルッキーニの部屋の扉に鍵がかかっていたと思い込んでいたけど、よく考えると鍵がかかっていると言ったのは宮藤だけだったよね?他は誰も確認していない」


エーリカ「あの時、本当は扉に鍵なんて、掛かっていなかったんだ」


エーリカ「・・・これが、この事件の真相だ」

芳佳「・・・」

リーネ「・・・」

全員「・・・」

芳佳「・・・その推理は、間違っています」

全員「・・・!?」

芳佳「リーネちゃんは、この事件に関わっていません!私が・・・私が全部一人でやりました!」

リーネ「芳佳ちゃん!?」

芳佳「・・・リーネちゃんは黙ってて。私があの部屋でルッキーニちゃんを撃ったんです。窓はきっと風か何かで割れただけで・・・!」

エーリカ「・・・そんなわけないだろ!それならルッキーニの残したダイイング・メッセージのことはどうなる?」

芳佳「あれは・・・私が、リーネちゃんに・・・罪を擦り付けようと思って書いたもので・・・」

エーリカ「なのに今はリーネを庇おうとしてる。・・・矛盾してるよ」

芳佳「・・・っ!それは・・・」

リーネ「・・・芳佳ちゃん!いいの、もういいの!」

芳佳「リーネちゃん・・・」

リーネ「ハルトマンさんの言うとおりです。私が、向かいの棟からルッキーニちゃんを撃ちました」

芳佳「・・・」

ゲルト「それで・・・一体何故、こんなことを・・・?」

芳佳「・・・あの二人が、私のおっ・・・リーネちゃんに手を出したりするから・・・許せなかった・・・リーネちゃんの・・・は私だけのものなのに・・・」

リーネ「・・・私が芳佳ちゃんに相談したからなんです。エイラさんと、ルッキーニちゃんに胸を触られるのが嫌だなって。そうしたらいつの間にかこんなことに・・・」

ゲルト「たったそれだけのことで、エイラとルッキーニを殺したのか・・・!」

芳佳「!! それだけのこととは何ですか!・・・聞き捨てなりませんね・・・おっぱいは・・・絶対なんです!」

ゲルト「宮藤・・・!?」

リーネ「芳佳ちゃん・・・」

芳佳「おっぱいとは、迷える者たちを導き救いを与える、聖なる存在です」

芳佳「私がしたことはその聖域に土足で踏み込む者共に天誅を与えただけ。当然のことをしたまでです。そもそもおっぱいというのは・・・」

全員「・・・」

そうして宮藤少尉がおっぱいについて熱弁を振るう中、バルクホルン大尉が憲兵に連絡。

速やかに駆けつけた憲兵隊は宮藤少尉、リネット曹長を拘束した。

憲兵隊に連れられ、搬送車に乗せられる最後の瞬間まで、宮藤少尉は壊れた蓄音機のように、ただただおっぱいについて語り続けた。

もしかしたら、彼女はとっくにおかしくなっていたのかもしれない。それが今回の事件の引き金だった・・・のかもしれない。

もっと早くに宮藤の異変に気づいていれば・・・残された一同は、その気持ちが拭えなかった・・・

fin.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《その後》

ミーナ「ただいま。ペリーヌさん見つけたわよ」

ゲルト「ミーナ!結局ペリーヌは・・・?」

ペリーヌ「ここにいますわ。・・・一体、何が起こっていますの?」

ミーナ「・・・どうやらルッキーニさんの事件の銃声が聞こえていなかったみたい。朝からずっと自室待機していたらしいわ」

ゲルト「馬鹿な!あんなに大きな音、聞き逃すはずがない!」



エーリカ「・・・あ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《エイラ・サーニャの部屋》


ルッキ「私、少佐が5時前から外で訓練してるの見てたよ?」

ミーナ「本当?ルッキーニさん」

ルッキ「うん。私、いつも通り、庭の木の上で寝てたんだ。そしたら少佐ったらまだ5時前だっていうのに、おっきな声で『れっぷうざーん!!』ずばばばばーっとかやってるから、目が覚めちゃった」

全員「・・・」

坂本「・・・いや、その・・・すまん」

ペリーヌ「気にしないで下さいまし、少佐。きっとルッキーニさんの耳が野生動物並みに良いだけですわ。私の部屋までは全く聞こえてきませんから、安心して下さい」

坂本「そ、そうか・・・」

全員(いや・・・聞こえてるんだけど・・・)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エーリカ「・・・まさか、本当に聞こえてなかったとは」

ゲルト「人騒がせなやつだな」

シャーリー「全くだ」

ミーナ「・・・はぁ」



ペリーヌ「・・・なんで私、怒られているのですの?」

おわり

ここまで読んで下さりありがとうございました。
トリックに治癒魔法はノックス的にはアウトですが伏線はそれなりに張ってたつもりなんで許してください。
でもレス見てる感じだと意外と受け入れてもらえたようで嬉しかったです。では!

読んだ
リーネの狙撃のときサイレンサー使っても窓が割れる音がするはずでは?

>>115
現場の偽装が話し合われている時にも窓が割れる音については議論されていないことから、
発砲音はさすがに聞こえるけど窓が割れる程度の音は聞こえないくらいの防音環境があるということで。
一応エーリカが「何か変な音がした」と感じた時に窓ガラスが割れた、と考えています。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom