さやか「祈りの温度」 (18)
今日、あたし達のクラスに転校生がやってきた。
頭の出来はあたしの親友の仁美に匹敵して、運動神経はあたしをかるぅく追い抜いていく。
そんな、超がつくほどの完璧美少女転校生にもう一人の親友のまどかが、何やらただならぬ興味を持っているみたいだった。
何せ、暇があれば視線で転校生を追いかけている様子だ。
あたしはそんな転校生について、うんうんと悩みの呻きを上げるまどかと、仁美と一緒に街を歩いている。
目的地はいつものファーストフード店。
普段消極的なまどかが何やら積極的に初対面の人と関わろうとしている姿を見て、あたしと仁美は感慨深げに思わず頷く。
あたしの嫁に積極性が加わればもう何も怖くないのだぁ!
店内に入って、席についたあたしたちは相も変わらず、転校生の話に花を咲かせる。
どうやら転校生は、容姿端麗、文武両道だけじゃなくちょっとサイコな電波ちゃんでもあるらしい。
しかもまどかの方も『夢の中で会ったような……?』なんて言い出す始末。
「ギャップ萌えかぁ。それが萌えなのかぁ」
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今日の放課後の出来事をベッドに横たわって思い返す。
血塗れの変な生き物。怯えるまどか。コスプレをした転校生。
奇妙な景観。不気味な生き物。吐き気のする笑い声。大量の植物を象った何か。
華のような三年生。変身する姿。魔法少女。魔女。
そして、キュゥべえ。
世界の裏側。魔法少女と魔女。
願いと祈り、希望と絶望。
祈りの資質、奇跡の権利。
全っ然、分かんない。
考えてもなに一つだって分からない。
だけど、直感的にあたしには一つだけ分かったことがある。
転校生、暁美ほむらは『嘘つきだ』。
授業の合間の休憩時間に、屋上でまどかとキュゥべえと魔法少女のことについて考えた。
あれやこれやと意見を出してはみたものの、結局のところあたしにもまどかにも命に代えても叶えたい願いなんて、思いもつかなかった。
そんなときにタイミングよく、転校生が現れた。
「何の用だよ。昨日の続きか?」
短く、牽制するようにあたしは射る。
「いいえ。ねぇあなた昨日の話覚えてる?」
あたしの問いには短く答え、視線さえも向けぬまま、まどかに対して問いかけた。
その姿勢にあたしは思わずむっとする。
あたしと、まどかはマミさんに連れられて魔女退治に同行した。
不気味で不全な魔女の結界。
グロテスクで精彩を欠いたような魔女。
対峙して、傷つきながらも魔女を圧倒して、あたしたちに微笑むマミさん。
その姿は眩しく輝いて見えて、まさに圧巻といった感想を持った。
魔女がマミさんに倒されると、結界がぐずぐずと崩れていく。
いつの間にか、あたしたちは廃ビルの中に戻ってきていた。
マミさんはグリーフシードを使って、ソウルジェムの穢れを取り除いて見せてくれた。
そして、どこかを流し見るとその方向に使いかけのグリーフシードを投げた。
「もう一度くらいなら使えるわよ?」
陰から現れた転校生がグリーフシードを掴み取った。
「私は何もしていない。これはあなたが持っているべきよ」
感情を殺したような仮面をかぶって転校生はグリーフシードをマミさんに投げ返すと、背を向けて歩き出した。
――。
嫌な奴。
恭介のお見舞いに来た帰りに、病院で孵化しかけのグリーフシードをみつけた。
まどかにマミさんを呼んでもらいに行って、あたしはグリーフシードを見張る。
キュゥべえと話をしながらお菓子に塗れた結界の中でマミさんたちが来るのを待つ。
いざというときは覚悟を決めなくちゃいけないかも。
願い、どうしようかな。
魔女が孵るギリギリで、まどかとマミさんが間に合った。
そこからは怒涛の展開だった。
マミさんが、魔女を倒したと思った。
マミさんが魔女に喰いちぎられたと思った。
目の前を手がない転校生が横切った気がした。
気づけば、右半身を食い破られた転校生がマミさんの横に横たわっていた。
あたしとまどかは悲鳴も出なかった。
マミさんと転校生は何か言葉を交わしているみたいだった。
そして、もう一度マミさんが魔女を倒した。
あたしは転校生のことを誤解してたのかな?
恭介がお医者さんに突き付けられた現実は、『諦めろ』だった。
焦燥して、生きることを諦めたようにあたしを拒絶する恭介を見て、
「奇跡も魔法もあるんだよ」
咄嗟にそう、啖呵を切った。
見習い魔法少女として、あたしはマミさんに弟子入りした。
病院での一件以来まどかは転校生にべったりだ。
その前も何かと、転校生の話をしたがるまどかにあたしは少し、辟易してる。
暁美ほむらは、きっと『嘘つき』なのに。
隣町の魔法少女が突然やってきて、殺し合いになった。
アイツは、あたしやマミさんとは違う魔法少女だ。野放しになんてして言い訳がない。
でも、あたしは弱かった。きっとマミさんが止めに入らなければ死んでのはあたしの方だった。
正しくっても、弱ければ意味なんてないのかな。
キュゥべえに騙された。騙された、騙された!
聞いてないよ。ソウルジェムが、こんなちっぽけな石ころがあたしたちの魂だなんて。
これがないとあたしたちは生きてすらいけないなんて。
これが砕けたらあたしは死んじゃうなんて!
ねぇ、まどか。転校生の話なんてしないでよ。
今苦しんでるのは、あたしなんだよ。
それに――、
あたしのためって、何?
こんな、小さな石ころになったあたしに為になるも、ならないもあるわけないじゃん。
アハハハハ。
何言ってるのさ、おかしい。
もう一緒にはいられないかな。
ねぇ、恭介。あんたを助けてあげたのは、あたしなんだよ。
――、ッ!
あたし嫌な子だ。
ふらふらと、夜の街をさまよっていると、転校生とぶつかった。
手を差し伸べられたけれど、その手を払いのけて自力で立ち上がった。
あぁ、ダメだ。体がふらつくよ。
「あなた、死にたいの?」
そう言って、転校生はあたしにグリーフシードを投げてよこした。
ゆっくりと拾い上げて、投げ返す。あんたがマミさんにしたことだ。
「あたしは!あたしには利益も見返りも必要ない。正しくあるために、せめて綺麗であるために魔法少女として生きる。
魔女を倒せないあたしなんて、世界に必要ないもんね」
もう、何を言っているのか、、、、、、、分かんないや。
「ならいっそ、」
転校生が魔法少女に変身した。
あたしのソウルジェムに銃口が突き付けられてる。
まぁ、いいや。あたしはもういらないからね。
「ほむらちゃん、やめてよ……」
まどかの声がした。
ふらつきながらまどかと転校生の前から逃げ出したあたしは、近くの駅から電車に乗り込んだ。
電車の中では、ちゃらちゃらした男たちが何かを話している。
話の内容があたしと被る。そんな気がした。
いらいらする。
「ねぇ、この世界って守る価値あるの?」
「答えてよ」
あぁ、スッキリした。
あっ、杏子だ。
「あたしってホント馬鹿」
涙が頬を伝う。
ピシリッ、とソウルジェムが割れる音がした。
終わり
依頼出してきます。
関連
マミ「心の温度」
杏子「心の温度」
このSSまとめへのコメント
悪くはない…が、本編をさやかの視点で書いただけのストーリーで全くオリジナリティが無く面白みがないな…
SSならではのオリジナル作品を所望する
※1
本編でマミは助かってないだろ