杏「きらりん☆ルーム」 (46)
モバマスSSです
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あんきら前提です
地の文有りです
シンデレラプロにPは複数いる設定です
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トップアイドルになって歌が売れれば、印税生活で寝て暮らせると思っていたけれど
トップアイドルになろうとしている人は思ったよりも多くて
トップアイドルになるにはかなり努力しなくちゃならないとわかって
……うん、めんどくさい
そこそこでいいかもしれない
そこそこで売れて
そこそこでお金を稼いで
そこそこで暮らして行ければそれで満足
適当にサボって
適当に頑張って
適当にお金を貯めて
適当に引退して
杏は、そう思ってたんだ
だけどアイツがやってきて
Pも思ったよりはいい人で
まあ、少しくらいは頑張るというか、努力というか
身体を余計に動かしてもいいかな
ちょっとだけ
本当にちょっとだけね
そんな風に、杏は思ってたんだ
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朝食の匂いで杏は目を覚ます。
「ん……?」
身じろぎしながら目を開くと、目の前には空っぽの寝袋。
杏の布団のサイズでは明らかにはみ出るため、寝袋を活用して隣に寝ていたのは……
「杏ちゃん、朝だにぃ」
今は朝食を作っているきらりだ。
「ん……あ、きらり、おはよ」
ごろりと身体を回して時計を見ると、朝というより昼近い時間。
「朝ご飯作ったけど、食べゆ?」
「うん……ちょっと待って」
身体がだるいのは寝不足と言うよりも寝過ぎだろう。
「起きるから……うん……起きる……」
「にょわ~」
この口調はやばい。と意識する間もなく、被っていた布団を引っ剥がされる。
そのまま両脇から手を差し込まれて強引に起こされると、引きずられるようにして洗面所へ。
「お顔をきれいきれいして、それからご飯だにぃ」
「わかった、わかったからきらり、離してよ」
ふんす、とドヤ顔のきらりが杏をまっすぐ立たせ、その場を離れる。
見ていると、テキパキと布団を畳んで、立てかけてあったコタツをセットすると、その上に朝食を並べ始める。
焼きたてトーストにハムエッグ、簡単なサラダとカフェオレ。
「早く顔を洗ってね☆」
「わかってるよ」
杏は水道の蛇口を捻る。
いつの頃だろうか、こんな朝を迎えることが半ば当たり前になったのは。
朝はきらりに起こされるか、それともPに起こされるか。二者択一である。
きらりのほうが仕事が早いときはPが起こす。
きらりのほうが仕事が遅いときはきらりが起こす。
ちなみに、きらりに起こされるときは常に朝食付きなのである。
黙っていても出てくる食事というのは、杏にとってはかなり魅力的だ。
それに、きらりの調理の腕は悪くない。
「いただきます」
「いただかれちゃう☆」
「もぐり……美味しいね、これ」
「うっふふふ」
「なにこれ、目玉焼きになんか入ってる」
「隠し味ぃ☆」
「ん、美味しいから別にいいけど」
半切れのトーストを食べきったところでノックの音。
「杏、起きてるだろ? 開けるぞ」
Pの声である。
「いいよー」
「おう。……やっぱりきらりもこっちに泊まってたか」
お前ら、二人一部屋でも良かったんじゃないか、とPは言う。
ここ、シンデレラプロの女子寮は基本的に一人一部屋であるが、希望すれば二人で一部屋にもなる。
その場合は当然一人用の部屋よりも大きい部屋になるので、最初から二人部屋を希望する者もいるのだ。
「Pちゃんも食べゆ?」
「あー、俺はもう朝飯食って一仕事してきたから」
「早いんだね」
「つっても、ちひろさんの所に書類出してきただけだけどな」
「はい、Pちゃん、カフェオレ」
「……いや、だから……あー、頂くわ」
カフェオレを飲んだPは、次のトーストに取りかかる二人をじっと見ている。
「どしたの? パン食べたいの?」
「そういうわけじゃないが……ああ、もうどうせ昼過ぎにはわかることだしな……」
「なに?」
「杏じゃなくてきらりのほうだよ」
「ふみゅ?」
「きらり、お前の担当から俺は降りることになった」
「え?」と二人同時に。
驚きの声はきらりよりも杏のほうが大きいくらいだった。
それも、Pが降りるという部分ではなく、自分ときらりの担当が別人になるという部分への驚き。
「どういうこと?」
「きらりの担当が別の人になるんだよ」
「誰?」
「敏腕Pさんだよ」
「え、その人って、確か、菜々さんや幸子ちゃんの担当だよね」
「そう。ウチでもトップクラスの腕利きな、敏腕Pさんだぞ」
「それって」
「上の方が、きらりは菜々や幸子、あるいはまゆや凛、未央、卯月クラスと判断したってことだな」
二人の言葉を待たずにPが早口で言う。
「でも勘違いするなよ、こんなものはただの順番だ。杏よりきらりのほうが早いってだけだ」
そのまま、Pは言い切る。
「杏ならすぐに追いつける。それまできらりは待ってりゃいい」
「……勝手に決められても杏は困るよ?」
「あれ?」
「疲れるじゃん」
「……お前、そこは嘘でも追いついてみせるとか言えよ」
「杏は正直なんだよ」
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「はじめまして、敏腕Pです」
きらりは何も言わない。いや、言えない。
渋谷凛、本田未央、島村卯月の三人を誰もが認めざるを得ないトップアイドルに押し上げた男がそこにいるのだ。
さらには、佐久間まゆ、輿水幸子、安部菜々をアイドルの座に押し上げた男。
まさにアイドルメーカーの異名を持つ男。
765プロの伝説とまで呼ばれるプロデューサーには及ばない、とは本人の弁だが、間違いなく匹敵はする男。
「明日、いえ、この瞬間から、貴方の担当となりました、よろしくお願いします」
「よ、よろしくおにゃ……お願いしゃー……します」
「緊張しなくていいですよ、諸星さん」
「もろっ?」
「これからは僕たちはパートナーですから」
右手を差し出す敏腕P。
「貴方がその気でいる限り、僕は貴方を徹底的に押し上げます」
「……ハピハピ、できる?」
「うーん。少し、違いますね」
「にょ?」
「貴方が、みんなをハピハピにするんです」
「そうしたらきらりも一緒に!」
「ええ、ハピハピできますよ」
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担当を替えたきらりの快進撃が始まった。
今までの鳴かず飛ばす、知る人ぞ知るマイナーアイドルの位置など一瞬にして消え失せた。
あとはただ、トップへの道のりだけ。
とはいっても驚きの声は、事務所内には少なかった。
だからこその、敏腕Pなのだから。彼が担当になるとは、そういう意味なのだ。
それでは、担当を替えられなかった杏はどうなのか。事務所に期待されていないということなのか。
「そういうわけじゃない」
とPは、車のハンドルを握りながら言う。
「事務所の力だって無限じゃない。一度にバックアップできる人数には自然と限りがある」
杏よりきらりのほうが早いだけ。ほんの少し、順番が違うだけ。
それはすでに、杏と話すときのPの口癖のようになっていた。
「だから、別にいいって、そういうのは」
そして杏は、いつもそう答えるのだ。
「杏は今のままでいいの。売れて印税生活になるのはいいけれど、疲れたくはないからね」
どこであろうと、この会話の流れは変わらない。
寮であろうと、事務所であろうと、スタジオからの帰りの車の中であろうと。
「寮に戻るコースでいいのか?」
「あ」
寮に戻るか、レッスンスタジオへ行くか、事務所へ行くか、あるいは何処か別の場所に寄るか。
杏の場合は別の場所と言ってもかなり限られているのだけれど、最近は寄る場所が一つ増えている。
「きらりのマンション」
「ん?」
「お泊まりだから、プロデューサーは帰って良いよ」
「おう。明日はどうするんだ?」
「いつもの時間に来てよ」
「お前なぁ、人を便利屋扱いしやがって」
「ふふふ、プロデューサーと他のアイドルのスケジュールはチェック済みだよ。杏を迎えに来てもロスにはならないはずだよ」
「お前、ウチの事務所のスケジュール担当にならね?」
「アイドルより稼ぎがイイなら考えるよ」
「よし、アイドル頑張れ」
そして車が止まる。
「トランクの荷物、運んでよ」
「いつの間に荷物積んでたんだ……ああ。これか?」
「そうそう。それから杏のカバンも」
ちゃっかりと身一つで飛び出す杏。
抗議するPには目もくれず、地下駐車場直結のエレベータへと駆け込んでいく。
「遅いよ、プロデューサー」
「てめぇ……」
該当階に着くと、懐から鍵を取り出し、勝手知ったるとばかりにドアを開ける杏。
なにやら神妙な顔になると、Pに静かにするようにジェスチャーしながら部屋の奥へと入っていく。
少し間を空けて戻ってきて
「きらりが寝てる」
「よし、寝起きドッキリしに行こう」
「早苗さんに電話するよ?」
「ごめん、帰る」
「じゃあ荷物、ここ、えーと……この玄関マットの上に置いといてくれるかな、うん」
てめこの野郎、早苗にチクるんじゃねえ、などとブツブツ言いながら荷物を置くP。
「……なあ、杏」
「ん?」
「お前、そろそろ……」
「ん?」
「……いや、なんでもない。はしゃいで明日遅刻するなよ」
「わかってるって」
訝しげな顔の杏を置いて、Pは帰っていく。
少し考えて、杏は首を振ると玄関の鍵を閉める。
そして荷物を持つ。
これは、寮で使っていた寝袋だ。
布団があるのに何故寝袋。
簡単な話で、散らかし放題だった杏の部屋では、杏一人がギリギリ寝られるスペースしかないことが多い。
そのため、きらりが泊まっていくときは専用の寝袋を使っていた。そもそも杏用の布団では、きらりは足がはみでてしまう。
もっとも、寝袋にがっちり入ってしまうと風情も何もないので、胸から上は出していたことが多いのだけれど。
あと、普通に一緒に寝ると杏が潰されそうになるというは内緒だ。「お前は寝相が悪い」とはさすがの杏も正面切っては言えない。
何故これをもってこいと言われたかは、杏にはわからない。
きらりが暮らしているマンションなのだ。きちんと片づいているに決まっているし、部屋が狭いと言うこともないだろう。
「きらりぃ?」
寝室に入り、そっと声をかける。
もし寝ているのなら起こしてもいいとは言われているけれど、せめて優しくは起こしたい。
「きらり? 杏だよ」
「にょ?」
ばくん、とバネ仕掛けのように起きあがるきらりに、思わず杏は後ずさる。
「ちょっ、怖いって、きらり」
「お目目バッチで、おっすおっすだにぃ、杏ちゃん」
飛びつこうとするきらりとさらに後ずさる杏。
「きらり、全力抱きつきは勘弁だからね」
「にゅう、杏ちゃんの意地悪」
「きらりはもうちょっと力加減を覚えた方がいいよ」
「杏ちゃんだけだよ?」
「余計悪いよ」
此処で杏が荷物を示す。
「言われたとおり持ってきたけど、どうすんの? これ」
「杏ちゃん、ここでお泊まりすると落ち着かないんだにぃ」
「んー、杏にはね、此処は広すぎるし、ベッドも大きすぎる」
「だから、きらりがお部屋を作っちゃったの」
「部屋?」
きらりの示す部屋の隅を見て、杏は思わず笑ってしまう。
そして納得した。
あれなら、ちょうどいい。
自分にはちょうどいい。
そして、きっと、自分と一緒に眠るきらりにも。
部屋の隅に置かれた小さなテント。
テントの入口には、可愛くデコレーションされた看板が掛かっている。
【きらりん☆ルーム】
「杏ちゃん専用だにぃ♪」
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「あれ?」
杏は足を止めた。
此処は女子寮。
目の前には自分の部屋に入るためのドア。
違和感が一つ。
常に笑みを絶やさない涼しげ男が立っている。
杏は、この男が好きじゃない。
「直接会うのは初めてでしょうか? 双葉さん」
何度も見たことはある。
いつも、きらりと一緒にいる男。
「敏腕Pさん、だよね?」
「はい」
「そこ退いて。部屋に入れない」
素直に横に除けると、敏腕Pは頭を下げる。
「お話があるんですが、入ってもよろしいですか?」
「汚れてるよ?」
「多分片づけてあると思いますよ」
「見たの?」
自分の声が鋭くなっている、と杏は感じていた。
そして頭の中で別の自分が言っている。
この男は悪くない、と。
私は我が侭なんだ、と自分に言い聞かせながら、杏はドアを開ける。
そこには、綺麗に片付けられた部屋。
「いいえ。しかし、仕事帰りの諸星さんをここまで送ったのは僕ですから」
「……いいよ、入りなよ」
部屋に入り、畳まれた布団を背にして座る。
敏腕Pは、後ろ手にドアを閉めるがそれ以上は入ってこない。
「入らないの?」
「ここで充分ですよ」
「あっそ」
「この部屋、諸星さんが片付けたんですよね」
「……」
「貴方が、諸星さんにお願いしたんですか?」
「は?」
「以前は毎日ではないにしろ、朝食も準備していたそうで」
「関係ないでしょ」
「ええ、関係ないんですよ。これまでも、これからも」
そっぽを向いていた杏の顔が敏腕Pに向けられる。
「どういう意味?」
「諸星さんの時間を貴方に割かせないで欲しい」
「それは……」
「諸星さんが勝手にやっている? だったら拒否してください」
杏の返事を待たず、敏腕Pは突然座り込む。
当惑する杏の前で、頭を下げる敏腕P。それは、土下座の体勢だった。
「僕が勝手を言っていることはわかっています。しかし、お願いです」
「貴方と諸星さんの親しさも知っています。それでもお願いします」
「今は、諸星さんの時間を奪わないでやってください」
なんで、と言いかけた言葉を杏は堪える。
なんで頭を下げる。
なんでお願いするの。
もっと居丈高になれば、反抗することが出来る。
事務所の方針だと切って捨てられれば、恨むことが出来る。
たけど、こんなことでは。
「……きらりをトップアイドルにするためだよね」
トップアイドルになりたい。
それは皆同じ事。
ほんのちょっとだけ、杏は違うけれど。自分以外がどう思っているかは知っている。
それでも、友達を蹴落としてまでなりたいのかと言われれば、言葉を失うだろう。ここはそんなアイドルの集まりだ。
友達の足を引っ張るなと言われれば、友達のために必要だと言われれば……
「絶対、トップアイドルにしてよね」
敏腕Pは何事もなかったかのように立ち上がる。
「そのための、僕ですよ」
「きらりに伝えてよ」
「今決めた。絶対に杏も、そっちに行くって」
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Pは寮の駐車場に立っていた。
敏腕Pの停めた車と、駐車場に設置された自販機の間に。
コーヒー二本を開けたところで、敏腕Pが寮から出てくるのが見える。
「よお」
「やっぱり、いたんですか」
車とPを見比べながら、敏腕Pはつかつかと歩く。
「ちょっと、話したいことがあってな」
「諸星さんのことでしたら、譲れませんよ?」
敏腕Pの歩みは止まらない。
「杏のことなら、是非譲ってもらいたいんだがね」
「事務所の方針と言ってもですか?」
歩みは止まらない。運転席ドア横に立つPと、ヘッドランプ横を歩く敏腕P。
「俺が言ってるのは、俺らの裁量でどうにでもなる部分だ」
「それは、今現在が最大限譲歩している状態ではないですか?」
ドアに手を伸ばす敏腕P。その手を取るP。
「きらりを潰すなよ。俺が育てたアイドルだ」
「今は、僕が諸星さんの担当です」
Pの手を振り払う敏腕P。
「貴方こそ」
「あ?」
「僕がいずれ担当になる予定の子……双葉さんを、ちゃんと育ててあげてくださいよ」
「勝手に火付けといて、俺に押し付けるかよ?」
「僕が言わなきゃ貴方が言ったでしょう?」
気が抜けたように、自販機にもたれかかるP。
忌々しそうに敏腕Pを睨みつけている。
「……はあ……凛も未央も卯月も、菜々もまゆも幸子も、育てた連中、みーんなお前が持っていくんだもんなぁ……」
「誰一人、先輩のことは忘れてませんでしたよ?」
思い出したように、敏腕Pはニヤリと笑う。
「忘れないどころか、アイドル投げ出して先輩の奥さんになった人もいるじゃないですか」
「アイツは例外だろ」
「片桐さん、惜しかったなぁ。いいアイドルだったのに」
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担当が替わる。
そう聞いたときの杏の第一声は
「ごめん」
Pは手を振りながら笑う。
謝ったのは杏が初めてではない。
デビューから一人前になるまでの踏み台の時期。それを支えるのがPだと理解した者は皆、大同小異似たような言葉を放つのだ。
「それが解ってくれたなら充分だ」
「最後にさ」
「ん?」
「引っ越し手伝ってよ」
「……あのな」
それでも否というわけがなく、Pは荷物を車に積み込んでいる。
杏の荷物はさほどない。プライベートでの洋服はTシャツとスパッツがあれば充分。
仕事着はスタジオや事務所に置いてある、かさばるものと言えば寝具、そしてゲーム機とパソコンくらいのものだ。
「本当に、きらりの使っていた部屋にしたんだな」
きらりはもう引っ越している。
杏が敏腕Pの担当に替わったとき、きらりはさらにその上、専属プロデューサー付きになってしまったのだ。
「別にいいよ。ルームシェアまで考えていた訳じゃないからね」
生活リズムは全く違うのだ。四六時中一緒はさすがに辛い。
「杏が使えそうなものは残していくってきらりが言ってたし、折角だから甘えることにするよ」
無駄遣いは出来ない、と杏は言う。
お金を貯めて、悠々自適のニート人生を送りたいという人生設計に変更はない。
ただそれは、「トップアイドルを目指してきらりと並ぶ」、その後の目標。
「きらりに言えば養ってくれるんじゃね? 今のきらりなら、杏一人くらい行けるだろ」
「それは杏の希望とはちょっと違うよ」
部屋に入った二人は、早速きらりの残していったものを確認する。
まだ使っていない食器、封の開けてない調味料や缶詰、トイレットペーパーやゴミ袋。
使えるには使えるが、持っていくのも面倒くさいようなものが置き去りにされている。
「雑貨が結構あるな」
「缶詰は嬉しいなぁ……ゲッ、これスパムじゃん」
「マッシュルームとか、茸類の缶詰があったら恵んでくれ、今度の新人が大好きらしくてな」
「マッシュルームねぇ……」
「あと、パン」
「それはないと思う」
「……帰りにコンビニで買ってくか」
「食い意地の張った新人だね」
「ニートの次は食欲魔人か……一体俺が何をした」
「あのね」
しばらく無駄口を叩き合いながら探索を続けていると、寝室へ行った杏が感極まったように呻いた。
どうしたのかとPが駆け寄ると、
「きらりん☆ルーム」
綺麗に飾られたテントが、寝室の隅に置かれている。
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トップアイドルにはまだなっていないけれど
トップアイドルになろうとしている人に混ざっているけれど
トップアイドルになるにはあと少しだとわかって
ある日気が付くと、きらりが杏の部屋にいて
きらりがきらりん☆ルームの中にいて
「また、杏ちゃんのお部屋にお泊まりだにぃ☆」
そんな風に笑っていて
まあ、これも悪くないかな
杏は、そう思ったんだ
以上お粗末様でした
きらりの誕生日には間に合わなかったけど、杏の誕生日には何とか……
久しぶりにあんきらを書いたんだ
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