サシャ「ひと味違いますよ?」(62)
・サシャ「安心する味なんですもん……」の続きです
・話の都合上、ある程度食糧事情を無視しています
・進撃BD2巻特典ドラマCDの間接的なネタバレあり
―― 消灯時間前 女子寮 ユミルたちの部屋
クリスタ「……くしゅんっ」プルッ
ユミル「最近冷え込んできたなー。――ほらクリスタ、髪拭け髪」ポイッ
クリスタ「ありがとユミル……昼間はあんなに暑かったのに、夜は寒いね」フキフキ
ユミル「ああ、過ごしやすくなったよな。……とはいえ、寝苦しくてパンツ一枚で寝るクリスタを見られなくなると思うと寂しいな」
クリスタ「ぱっ、ぱんつ一枚じゃないもん!! 上も着てたもん!!」アセアセ
ユミル「しかもフリッフリのキャミソールな」ケケケ
クリスタ「~~~~!! もうっ、ユミルのばかぁっ!! いじわるっ!!」ポカポカ
ユミル「あっはっはっはっは、クリスタったら全然痛くないぞぉー。――そんで、かつてシャツ1パン1で寝てたサシャが今は上下きちんと着てるんだもんなぁ。いつの間にか逆転してるもんだからたまげたよ」
サシャ「だって、夜中に何があるかわかりませんし」パラッ...
ユミル「本当だな、世の中何があるかわかったもんじゃない」
クリスタ「そうだね、信じられないことが簡単に起きちゃうもの」
ユミル「サシャが本を読んでるなんてな、そんなのありえないのにな」
クリスタ「最近ちょっと寒くなってきたしね」
ユミル「……」チラッ
クリスタ「……」チラッ
サシャ「……」ジーッ...
サシャ「……」パラッ...
ユミル「ちょっと私医務室行ってくるわ」ガラッ
クリスタ「待ってユミル、そっちは窓だよ? 扉はこっちだから早く行こう?」ガタゴトッ
ユミル「クリスタこそ机の下に潜りこんでんじゃねえよ。……かわいいからいいけど」
サシャ「……もう、静かにしてくださいよ二人とも」ムー...
ユミル・クリスタ「」ビクッ!!
クリスタ「ひっ……! さ、サシャが反応した……!!」ガタガタガタガタ
ユミル「ば、馬鹿な……! ただの置物かそっくりさんだと思ってたのに……!!」ガタガタガタガタ
サシャ「正真正銘本物ですよ。……というか二人してなんですか? そんなに私が本を読んでたらおかしいですか?」ムー...
クリスタ「……ごめんねサシャ、悪気はないの」シュン...
ユミル「ちなみに何の本読んでるんだ?」
サシャ「料理本です」
ユミル・クリスタ「……」
ユミル「……」ガサゴソ スッ
クリスタ「……」ガサゴソ スッ
サシャ「……あの、無言でお菓子差し出すのやめてもらえませんか。もらいますけど」
ユミル「いや……ついに料理本で味を想像……いや、創造しはじめたんだと思うと、かわいそうで……」
クリスタ「ひもじいからって、本は食べちゃダメだからね……?」
サシャ「……私はいつまで食いしん坊さん扱いなんですか」ムー...
ユミル「他に真っ当な理由があるなら言ってみろ」
サシャ「……笑いません?」モジモジ
クリスタ「笑わないよ、安心して。……話してくれる?」
サシャ「えっとですね……今度、ライナーに料理を作ってあげようと思ってまして……」モジモジ
クリスタ「? どこかに食べにでかけるんじゃなくて、サシャが作るの?」
サシャ「はい。幸い、料理は一通りできますし……この前スイカを卸してもらった店で、食材も調達できそうなので、そうするつもりです」
ユミル「……大枚はたいて手間暇かけてまでやりたい理由は?」
サシャ「私、ライナーからはいつもいろんなもの、たくさんもらってて……何も返せてないんですもん」
サシャ「だから、少しでも返せたらいいなって思ってまして……」モジモジ
ユミル「……」キュンッ...
クリスタ「……」キュンッ...
サシャ「本当は、ユミルやクリスタにも作ってあげたいんですけど、その……予算がなくてですね……ごめんなさい。いつもお世話になってるのに」ショボーン...
サシャ「……あれ? 二人とも、どうしました? 変な顔して――」
ユミル「サシャ、疑って悪かったなぁっ!」ダキッ!!
クリスタ「絶対うまくいくよ! 頑張って!」ダキッ!!
ミカサ「私も混ざる」ダキッ
サシャ「わぁっ!? もうっ、重いですよぉー三人ともー!」ジタバタジタバタ
クリスタ「ねえねえサシャ、私の妹になろうよ? それでね、二人で一緒にお菓子食べるの。いいでしょ? ね? そうしよ?」ギューッ
ユミル「もうお前クリスタと一緒にまとめて私のところに娘に来いよ、養ってやるからさー」ギューッ
ミカサ「いえ、サシャは私のところに嫁として来るべき。何故なら私たちは友だちだから」ギューッ
サシャ「あはは、お友だちなのにお嫁さんはちょっと無理がありますってー」テレテレ
ユミル「……」
クリスタ「……」
ミカサ「……」
サシャ「……」
ユミル「……ミカサ、いつからいた」
ミカサ「潜入成功」ニンニン
ユミル「……あのなミカサ。静かに入ってくるとこっちがびっくりするから、お前今度から大騒ぎしながら来い」
ミカサ「わかった、次から努力する」
サシャ「そっちのほうがよっぽどびっくりすると思うんですが……」
クリスタ「まあまあ。……ひとまずはいらっしゃい、ミカサ」
ミカサ「おじゃまします、サシャにクリスタ。それとユミル」
ユミル「私はオマケかよ」ケッ
サシャ「それでミカサ、どうしたんです? そろそろ消灯時間ですよ?」
ミカサ「私は、先人としてサシャに助言をしにきた」キリッ
クリスタ「先人?」キョトン
ミカサ「おいしいものを食べさせたいからと言って、奇をてらいすぎるのはよくない。び……びしびしそわーず? とか、えっと……難しいのはだめ」
クリスタ「ビシソワーズね。芋の冷たいスープ」
ミカサ「そう、それ。……私はこの前失敗した」ズーン...
ユミル「ほお、珍しい。首席様の失敗か……見てみたかったな」ケケケ
ミカサ「……」ムー...
ユミル「睨むな睨むな。殺気出てるぞ」
ミカサ「……というわけで、作り慣れている家庭料理が一番」
サシャ「なるほど、家庭料理ですか……となると、熊か鹿を見つけないとですね」
ミカサ「えっ」
サシャ「……」
ミカサ「……」
サシャ「……」
ミカサ「……」
サシャ「……」
ミカサ「……私には、提案した責任がある」
サシャ「はあ」
ミカサ「よし、狩ろう」ジャキンッ!! スクッ
サシャ「そうですね。そうしましょう」スクッ
ユミル「そうしましょうじゃねえよ。やめろ。座れ。あとミカサは包丁しまえ危ないから」
クリスタ「そうだよ、もう夜も遅いよ? 狩りはさすがに無理なんじゃないかな?」
ユミル「そういう問題じゃねえよ。いいから座れそこの山育ち二人」
クリスタ「ところで、ミカサって狩りしたことあるの?」
ミカサ「はじめてだけど、きっと上手くいくだろう。愛の力がある限り」ジャキンッ!!
ユミル「お前の愛は抜き身過ぎて危険だよ。――そもそもだな、熊だの狐だの猪だの鹿だの狩ってきたとして、どこで解体するつもりだ?」
ミカサ「えっと……営庭……?」ウーン...
ユミル「営庭を血で染めるな」
サシャ「じゃあ厩舎で」
クリスタ「馬は肉食じゃないよ? やめてね?」
ミカサ「……女子寮」
ユミル「女子全員を地獄に叩き込む気か」
サシャ「なら男子寮で!」
クリスタ「ライナーにごちそうする前に、他の男子に食べられちゃうんじゃない?」
ミカサ「……難しい」ウーン...
サシャ「ですね」ウーン...
ユミル「……もういいから。それで、サシャは何を作る気だったんだ? さっき料理本見てて少しは検討ついたろ?」
サシャ「えっとですね、最初はアイントプフにしようかと思ってたんですけど、スープはいつも食べてますし、他のがいいかなって」パラパラッ
サシャ「食材はある程度融通してもらえるので、凝ったものにしようかと思ったんですが……そしたら今度は時間が足りないんですよね。昼前に片付けまで全て終了しないといけないので」パラパラッ
ミカサ「! ……サシャ、これはどう?」ユビサシ
サシャ「これは……」
クリスタ「うん、いいんじゃないかな?」
ユミル「あんまり小難しいと作れねえだろうしなー。『子どもでも簡単』って書いてあるしいいんじゃねえの?」
サシャ「でも、これで勝負するのはかなり不安なんですが……それにこの料理、作ったことありませんし」
ミカサ「これは、二人の思い出の味。……大丈夫。仮に失敗しても、きっといい思い出になる。私が保証する」
サシャ「……いえ、失敗しないように勉強します! きっとこんな機会、もうないでしょうし!」グッ
クリスタ「ふふっ、頑張ってね」
ユミル「心配なら味見してやろうか?」
ミカサ「……横取りしてはダメ」ムー...
ユミル「冗談だっての」
―― 数日後 調理室
クリスタ「好きな人のために作ると味が変わる……っていうのは、本当なのかな?」シュルシュルッ
ミーナ「うーん、そうだね……やっぱり、その人のために丁寧に作ろうとするから、少しは変わってくるんじゃない?」シュルシュルッ
クリスタ「そんなものかなぁ……?」
ミーナ「こればっかりは実演してもらったほうがわかりやすいかもね。――ねえミカサ、この芋を切ってみてくれない?」
ミカサ「お安いご用」スッ
ミーナ「あっ、エレンのことを考えながら切ってみてね?」
ミカサ「エレン……」 シュルシュルッ スパッ
クリスタ「わあっ……! 大きさも均一だし、芽も完璧に取り除いてある!」
ミカサ「当然」エッヘン
ミーナ「次はジャンのことを考えながら切ってみて?」
ミカサ「ジャン……?」 シュルシュルッ スパッ
クリスタ「……芽はちゃんと取れてるけど、大きさが不揃いになったね」
ミカサ「……ジャンの口の大きさがわからない。ので、仕方がない」ムー...
ミカサ「もう行ってもいい? 切り終わった芋を運ばないといけないから」ヨイショット
クリスタ「うん、助かったよミカサ。どうもありがとう!」
ミカサ「どういたしまして」スタスタ...
ミーナ「……まあ、ミカサのは極端な例だけど、ちょっとした意識の違いで料理ってかなり違ってくるんじゃないかな?」
ミーナ「野菜の切り方一つで食感が変わるって言うし。味つけも、その人の好きな味にしようって思うもの」
クリスタ「なるほどなるほど」フムフム
ミーナ「だからね、私が料理下手なのは、私のせいじゃないんだよ……?」デローン...
クリスタ「私も、いつか上手くなるかなぁ……」ベローン...
ミーナ「こんなことなら、もうちょっと家の手伝いしておくべきだったなぁ……」
クリスタ「私、配給の食事係にはなりたくないなぁ……これだと逆にみんなの健康を駆逐しちゃうよ……」ズーン...
ミーナ「私も……」ズーン...
アニ「……うん、いい味」ズズッ
マルコ「どう? 進んでる?」
アニ「……」スッ
マルコ「? 味見していいの?」
アニ「……どうぞ」
マルコ「ありがとう。……うん、悪くないと思うな」ズズッ
ジャン「おいマルコ、何して……っと、アニも一緒か」
アニ「……あんたの意見も聞かせて」スッ
ジャン「どれどれ……んー、俺はもうちょっと濃い味のほうが好みだな」ズズッ
アニ「じゃあこのままでいいね」マゼマゼ
ジャン「なんで聞いたんだよ!?」
アニ「これ以上は薄くするしかできないんだよ。文句言うなら食べなきゃいいんじゃない?」マゼマゼ
ジャン「……」ジトッ...
マルコ「まあまあ、早く食器運ぼうよ。ジャン」
―― 食堂
ベルトルト「……薄い」ズズッ
ユミル「文句あるなら食うんじゃねえよベルトルさん」シャクシャク
ベルトルト「……ごめん」
ユミル「ったく、配給を想定した調理実習だかなんだか知らねえけど、女子だけ調理で男子は食うだけって不公平だよな。ベルトルさんもそう思うだろ?」シャクシャク
ベルトルト「……それは君が野菜の切れっ端の盛り合わせを食べているのと関係があるの?」
ユミル「……」ピタッ
ベルトルト「……」
ユミル「……実習サボってた女子は、スープ抜きだって」ボソッ
ベルトルト「……」
ユミル「……」
ベルトルト「……一口あげようか?」ソッ...
ユミル「……どうも」
コニー「おおっ、いつものよりうまいな!」ズズッ
ジャン「そりゃ冷めてねえからだろ。第一、味なんてそう簡単に変わんねえよ」ズズッ
マルコ「とか言いながら、アニにはしっかり注文つけてたよね」
ジャン「無視されたけどな」
ミーナ「……」
サシャ「……? どうしたんですミーナ、手が止まってますよ?」
ミーナ「あのさ、配給を想定した訓練、ってことは……ウォール・マリアが破られた時のための、訓練なんだよね……?」
コニー「……あー、そういうことになんのか」
マルコ「……」
ジャン「……」
サシャ「……って、ほらほら! 食事の時に暗くなってちゃダメですよ!」
コニー「んなこと言われたってよ……お前みたいにみんな脳天気になれやしねえよ、サシャ」
サシャ「脳天気とはなんですか! 腹が減っては巨人には勝てませんよ! 食事は私たちが戦うための活力になるんですからね、どんなものでもおいしくいただくべきだと私は説きます!」ダンッ!!
ミーナ「! そうだよね、腹が減っては戦はできぬって言うもんね。……よーし! 食べるぞー!」モグモグ
マルコ「あはは、サシャに教えられちゃったね」
ジャン「俺は単純じゃねえからな、そう簡単に割り切れねえよ」ケッ
ミーナ「……ねえジャン。このスープの具はね、ミカサがジャンのことを思って切ったんだよ?」
ジャン「!? な、なあミカサ! ミーナの話は本当か!?」ガタッ
ミカサ「? ……うん」
ジャン「そっか、その……ありがとな」テレテレ
ミカサ「?? ……どういたしまして」
マルコ(ちょろいなー、ジャン)
コニー(ちょろい奴)
サシャ(ちょろいですね)
―― 数分後
サシャ(えーっと……あ、いた)キョロキョロ
サシャ「……ライナー、ちょっといいですか」クイクイ
ライナー「どうした?」
サシャ「ええっと……三日後のお昼、空いてます?」
ライナー「……出かけるか?」
サシャ「いえ、そうじゃなくてですね……」モジモジ
ライナー「そういえば座学のレポートがあったな。あれか? 一緒にやるか?」
サシャ「そっちはもう終わらせましたよ。もう、そうじゃなくて……」
ライナー「そうか、よくやったな。偉いぞ」ナデナデ
サシャ「……///」カァッ...
ライナー「それで? 当番を代わってほしいとかか?」
サシャ「違いますってば……あ、あの、その日のお昼ごはん、一緒に食べません?」
ライナー「それくらい構わないが……約束するほどのことか?」
サシャ「……私が、作るんです。昼ごはん。調理場借りて」
ライナー「……」
サシャ「嫌ですか?」
ライナー「……」ブンブン
サシャ「本当ですか?」パァッ...
ライナー「……いや待てよ、そういやその日の朝は当番があったような」
サシャ「あ……そうですか……じゃあこの話はなかったことに……」ショボーン...
ライナー「――いいや、その日は何があっても必ず行く」
サシャ「え、でも当番は……」
ライナー「そんなもんなんとかする。先に準備して待っててくれ」
サシャ「……それじゃあ、待ってますね」ニコッ
アニ「……ねえ、あれ付き合ってないんだよね?」
クリスタ「そうだよ?」モグモグ
アニ「……求愛行動見せつけられるこっちの気分になってほしいもんだよ。ねえベルトルト」
ベルトルト「」ドゴッ バシャーン!!
アニ「!? えっ、ちょっ、何? 何?」オロオロ
エレン「おいベルトルトお前何皿に顔突っ込んでんだぁっ!? しっかりしろ!!」ユサユサユサユサ
ベルトルト「ま、待ってエレッ……エレン、揺すらないでっ……!」プルプルプルプル
―― その日の晩 男子寮 エレンたちの部屋
ライナー「ただいま。……お、珍しい客だな」
ジャン「よっ、邪魔してるぜ」パラパラ...
ベルトルト「ジャンはアルレルト書院、秋の新作を見に来たんだよ」パラパラ...
ライナー「……お前もだろベルトルト」
アルミン「ライナーも選ぶ? 今なら新作全部揃ってるよ? ライナー好みのお尻がステキな女子もいるけど」
ライナー「いや、遠慮しておく。……それで、暇なエレンは一人寂しく隅で歌ってるのか」
エレン「くちくーくちくー♪」ゴロゴロ
ジャン「黒髪貧乳姉と、金髪巨乳妹か……悩むまでもねえな」スッ
ベルトルト「……ちょっと待ってよジャン。君、妹同盟はどうしたの?」ジロッ
ジャン「悪いなベルトルト。……今の流行は姉属性なんだよ。妹はもう過去の遺物だ」
ベルトルト「……君とは話し合う必要がありそうだ」スクッ
ジャン「面白ぇ、受けて立つぜ」スクッ
アルミン「ジャンは黒髪なら誰でもいいからね」キッパリ
ジャン「いやいや、誰でもいいわけじゃねぇよ!?」
アルミン「そしてベルトルトは金髪なら選り好みしないよね」
ベルトルト「ちょっ!?」
ジャン「んだよお前も誰だっていいんじゃねえか!!」ユサユサユサユサ
ベルトルト「誤解だよ! 誰だっていいわけじゃない!!」ユサユサユサユサ
ライナー「……ところでエレン、三日後の昼、暇か? もしよかったら当番代わってほしいんだが」
エレン「あー……その日はミカサとアルミンで散歩する予定なんだ。悪い」
ライナー「散歩?」
エレン「ああ、ミカサの頼みでな」
アルミン「ライナー、何か用事でもあるの?」
ライナー「ちょっと野暮用があってな」
アルミン「内容次第ではジャンが協力してくれるってよ?」
ジャン「おい勝手に人を巻きこんでんじゃねえよ!」
アルミン「延滞料金五割引」ボソッ
ジャン「乗った」
ライナー「あー……今度、サシャとメシを食べる約束をしてだな……」
アルミン「へえ、二人で出かけるの?」
アルミン『おおーっとライナー照れております』コソコソ シュッシュッ
ジャン『アルミン、お前ライナーの死角で手信号しながら会話するって器用すぎるだろ』コソコソ クルッ
ライナー「いや、どうやら……作ってくれるらしい。サシャが自分で」
アルミン「……手料理ってこと?」
ライナー「そうなるな」
アルミン「……」
アルミン『浮かれライナー』クルクルッ ミョーンミョーン
ベルトルト「」ガツンッ
ライナー「!? どうしたベルトルト、いきなり床に倒れ込んで!!」
ベルトルト「や、やめてアルミン……っくく」プルプルプルプル
アルミン「まあベルトルトのことは置いといて。……ご飯を食べるのが好きな人は、作るのも上手だって言うよね。期待していいんじゃないかな」
ライナー「だよな。……だよな!」ソワソワ
エレン「でもサシャの料理だろー? ……どうなんだ?」
ライナー「出来がどうであれ、女の手料理で喜ばない奴がいたら俺はそいつをぶん殴りたい」キリッ
ジャン「そればっかりは俺も同意見だ」キリッ
ライナー「……わかってくれるか、ジャン」
ジャン「ああ、わかるぜ……仕方ねえな、途中からでいいなら俺が引き受けてやるよ。当番」
ライナー「おお……助かる」
ジャン「いいってことよ。ただし、ちゃんと借りは後で返せよ」フッ
エレン「そういや、この前食ったミカサの料理はうまかったなー」
ジャン「」ピクッ
ジャン「おい、エレン……今、聞き捨てならねえことを口走ったよな……?」
エレン「なんだよ、ちなみに食ったの俺だけじゃねえからな」
アルミン「ちょっ、エレン!」
ジャン「アルミン、お前も……食ったのか……?」
アルミン「う、うん……食べたよ……?」
ジャン「……」プルプルプルプル
ベルトルト「……ジャン? 大丈夫?」
ジャン「おっ、俺、今日ミカサの手料理食ったしぃっ!? 全ッ然悔しくねえしぃっ!?」
エレン「でも味つけアニじゃなかったっけか。厳密にはミカサの料理じゃねえよな」
ジャン「言うなよそれを!!」
ベルトルト(アニの手料理……)モンモン
アニ『……ベルトルトのために、弱火でじっくりコトコト煮込んだんだよ。このスープ』
ベルトルト「……いい」ホッコリ
ジャン「だろ? わかってくれるかベルトルト、女の手料理の素晴らしさを!!」
ベルトルト「うん。すごく……いい」ホンワカ
ジャン「あーあ、俺も女の手料理食ってみてえ……いや待てよ。そういえば今日、アニに頼まれて味見したな」
ベルトルト「」ピクッ
ジャン「あーでもあれは厳密には手料理じゃねえし、ノーカンだよなー……どうしたんだよベルトルト、怖い顔して」
ベルトルト「今夜は寝かせないよ、ジャン」ガシッ
ジャン「……は?」
\ギャー!!/
―― 数日後 昼前 調理場
ライナー「――悪い、引き継ぎに手間取った!」ガチャッ バタンッ
サシャ「おかえりなさい。そんなに慌てなくても、まだ何もできてませんよ?」クスッ
ライナー「そ、そうか」ホッ
サシャ「そんなに楽しみだったんですか?」
ライナー「……まあな」
サシャ「取り敢えず座って待っててください。 腕によりをかけて作りますからねー」ガサゴソガサゴソ
ライナー「一人で大丈夫か?」
サシャ「こう見えて、料理は得意なんですよ? 任せてください!」グッ
サシャ(よーっし、いいところ見せるチャンスです!)ザクッ
サシャ「……ザクッ?」
サシャ「……ライナー」
ライナー「どうした」
サシャ「指……切っちゃいました……」ポタポタ...
―― 数分後
サシャ(まだ何もしてないのに……しかも失敗ですらないって……)ズーン...
ライナー「止まったか? 血」
サシャ「はい……お騒がせしました……」
ライナー「で、この材料をどうするか、だが……」
サシャ「どうしましょうね……この手じゃ、生肉は触れませんし」ショボーン...
ライナー「……よかったら、一緒に作らないか?」
サシャ「え? 一緒に……ですか?」
ライナー「切ったり混ぜたりするくらいなら手伝えると思うんだが……どうだ?」
サシャ「は、はいっ! それでいいですお願いします!」
ライナー「じゃあやってみるか。……ところで、今日は何を作る気だったんだ?」
サシャ「ハンバーグですよ。……二人だけの、秘密の味です」
ライナー「作ったことあるのか? ハンバーグ」
サシャ「いいえ、はじめてです。でも、作り方はちゃんと本読んで覚えてきましたし、食堂の店員さんにコツも教えてもらったんですよ?」
ライナー「……勉強してきたんだな」ジーン...
サシャ「おいしいごはん、食べてもらいたいですからね」エヘヘ
サシャ「……さて、はじめましょうか。まずはこの玉ねぎをみじん切りにしてください」コトッ
ライナー「……目に染みるんじゃなかったか、玉ねぎって」ピタッ
サシャ「あはは、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。皮は剥いて水につけておきましたし、さっさと切っちゃえば平気です。時間との勝負ですよ」
ライナー「よ、よし」スッ ザクザクザクザク
サシャ「おおー……手際いいですね。やったことあるんですか?」
ライナー「刃物はそれなりに使ってるからな。料理そのものははじめてだ」ザクザクザクザク
サシャ「!! じゃあっ、今日は私がちゃーんと教えてあげますよ! ねっ?」
ライナー「そうだな、よろしく頼む。……ところでみじん切りってどれくらいだ?」
サシャ「んー……もうちょっと細かいほうがいいですかね」
ライナー「まだ細かくするのか。……そもそも大きさが揃わないな」
サシャ「最初からうまくできる人なんていませんよ。ほらほら、頑張ってください!」
サシャ「……はい、いいですよ。お疲れさまでした!」
ライナー「結構神経使うな、これ」カタマワシ
サシャ「料理なんて慣れですよ、慣れ。じゃあ、混ぜちゃいますね。混ぜるのはスプーンでもできますから」ザラザラ
ライナー「玉ねぎはそのまま入れるのか?」
サシャ「お店だと炒めたものを使ってるらしいんですが……今はあら熱取ってる時間もないですし、このまま入れます。本当は甘味が出るから炒めたいんですけどね」
サシャ「えーっと、挽肉とー、溶き卵……っと」コンコン パカッ
ライナー「そっちに置いてあるパンは? 食うのか?」
サシャ「違いますよー、粉々にして一緒に混ぜるんです。そのまま焼くと肉汁が逃げちゃいますからね。卵は繋ぎです」マゼマゼ
ライナー「……待てよ、今朝はパンが出なかったよな? わざわざ買ってきたのか?」
サシャ「いいえ。これ、昨日のパンですよ。このために残しておいたんです」ジャーン!!
ライナー「取っておいたのか? このためだけに?」
サシャ「材料費も馬鹿になりませんし、おいしい料理のためですから!」エッヘン
ライナー「まあ、肉があるから高いのはわかるが……これ、全部でいくらかかった?」
サシャ「…………えーっと」
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「サシャ。言え」
サシャ「かなりオマケしてもらって、給金二ヶ月分……でしたかね」
ライナー「……」
サシャ「あっ! あの、今回はお金はいりませんからね!?」アタフタアタフタ
サシャ「こうやって手伝ってもらっちゃってますけど、本当は私がご馳走したかったんです。……せめて材料だけでも、そういうことにしておいてください」
ライナー「……こりゃ何を返したらいいかわからんな」
サシャ「わ、私が返してるんですよ! ライナーは黙って受け取っておけばいいんです!」
ライナー「これで何もしなかったらバチが当たるぞ?」
サシャ「だったら先に私に当たってますよ。私が無事なんですからライナーだって大丈夫です」
ライナー「……まあいい。続けるか」
サシャ「はい、頑張りましょう! ……というわけで、このパン粉砕してください。できるだけ細かく」ニッコリ
ライナー「……この固いパンをか?」
サシャ「そうですけど?」
ライナー「…………手で?」
サシャ「はい」
―― 数分後
ライナー(痛ってえ……)ヒリヒリ
サシャ「さすがライナー、早いですね! お疲れさまでした。――挽肉、玉ねぎ、パン粉、溶き卵、塩に胡椒にナツメグは、分けてもらったのを入れたっと……」マゼマゼ
ライナー「いつまで混ぜてるんだ? それ」ヒリヒリ
サシャ「粘りが出るまでです。ちゃんと混ぜないと、焼いてる途中で割れちゃうんですよ」マゼマゼ
サシャ「さてと。――それでは火を起こすので、その間に成形しててください」ガサゴソ
ライナー「どんな形にすればいいんだ?」
サシャ「楕円形です。それと、真ん中は指を押しつけてヘコませてくださいね? その前に二、三回投げて空気抜くのを忘れずに」
ライナー「投げるのか!?」
サシャ「両手でキャッチボールするんですよ、こんな風に」ミブリテブリ
ライナー「む、難しいな……」コネコネ
サシャ「ほらほらー、早くしないとお肉腐っちゃいますよー?」ニヤニヤ
ライナー「急かすな、難しいんだぞこれ」コネコネ
サシャ「――はい、お疲れ様でした。後は私がやりますよ」
ライナー「料理って疲れるんだな……」グッタリ...
サシャ「さっきも言いましたけど慣れですよ、慣れ。もう少しでできるので、あっちで座って待っててください」
ライナー「わかった。行ってる」スタスタ...
サシャ(えーっと、お皿お皿……)ガサゴソ
ライナー「……」
サシャ(……おっと、そろそろ引っ繰り返さないと)パカッ
ライナー「……」ウロウロ
サシャ(焼き色もいい感じですね、よしよし……)ジューッ
ライナー「……やっぱり何か手伝う」ヒョコッ
サシャ「もうないですよ。いいからあっちで待っててください」キッパリ
ライナー「……いや、でも暇で」
サシャ「ほーら、早く戻ってください! ここは神聖な厨房なんですよ、用事のない人はお引き取りください!」グイグイ
ライナー「……わかった。でも、何か手伝いが必要だったら呼んでくれ」
サシャ「呼びますって、大丈夫ですよ」
ライナー「……」
サシャ(火加減はこのくらいを維持するっと……)チラッ
ライナー「……」ウロウロ
サシャ(……子どもみたいでかわいいですね)クスッ
サシャ(って、ライナーもまだ子どもですよね……たまに忘れちゃいそうになりますけど)
サシャ(……喜んでもらえたら、安心する味だって言ってもらえたら、いいな)
サシャ「♪~」ジューッ
ライナー「……」
ライナー(随分楽しそうに料理するんだな、サシャは)
ライナー(……あれだけ楽しそうだと、こっちも見てて気分がいいな)
―― 昼前 食堂
サシャ「誰もいませんね。……当たり前ですけど」キョロキョロ
ライナー「昼には少し早いからな」
サシャ「まあ、人目がなくていいですよね……というわけで、お待たせしました! ハンバーグです!」コトッ
ライナー「……」
サシャ(……あれっ? 無反応ですか?)アセアセ
ライナー(うまそうだな……)ジーン...
サシャ「あ、あの……何か一言……」ボソボソ
ライナー「……ソースと野菜はどこから持ってきたんだ?」
サシャ「ええっと、全部あそこのお店からのおすそ分けですよ。……知ってます? 最近あのお店大人気なんですよ? なんでも治安がよくなったとかなんとかで」
ライナー(……ミカサの仕業だな)
ライナー「……もう、食べていいんだよな?」ソワソワ
サシャ「はいどうぞ、冷めないうちに召し上がってください!」クスッ
ライナー「よし……じゃあ、いただきます」
ライナー「って待て、お前の分は?」ピタッ
サシャ「ありませんよ? 私は食堂のごはん食べるつもりだったんですから」
ライナー「……じゃあ、二人で分けるか」キリワケ
サシャ「えっ!? いいですよそんな!」アタフタアタフタ
ライナー「二人で作ったんだから分け合うのが筋だろ。それに、俺だけ食ってたら一緒に昼メシ食ってることにならん」
サシャ「なら私、フォーク取ってきますね」ガタッ
ライナー「いや、洗い物は少ないほうがいいだろ」
ライナー「……ほらサシャ、あーん」フォーク ズイッ
サシャ「」
サシャ「…………え、…………………………」
ライナー「どうした? 食べたくないのか?」
サシャ「い、いや……あ、あの………………///」カァッ...
ライナー「食うなら早くしろ。ソースが垂れる」
サシャ「じゃ、じゃあ……あ、あー…………」ソーッ...
ライナー「なんてな」パクッ
サシャ「っ!? あああああああああああっ!? ライナーのばかぁっ!! いじわるぅっ!!」バシバシバシバシ
ライナー「悪い悪い叩くな叩くな! ……じゃあ、欲しいならそう言ってみろ」
サシャ「!? 言ってみろって、ライナーがくれるって言ったんですよ!?」
ライナー「じゃあいらないのか?」
サシャ「……」
ライナー「……」
サシャ「ひ、ひとくち、ください……///」モジモジ
ライナー「よく言えました。ほら」ヒョイッ
サシャ「……」 ...パクッ
ライナー「どうだ?」
サシャ「……自分で言うのもアレですけどおいしいですね」モグモグ
ライナー「だよな。……玉ねぎの形が残ってるけどな」モグモグ
サシャ「でも、これはこれでひと味違っていいんじゃないですか? こういうのも私、好きですよ」
ライナー「そういうもんか?」
サシャ「料理には作った人の性格が出ますから。普段はわからない面がわかったりするので、そういう面も含めて私は好きですね」
ライナー「……お前って、メシの時はいつも幸せそうだよな。作ってる間もずっと楽しそうだった。こっちも見てて気分がいい」
サシャ「だって幸せですもん」エヘヘ
ライナー「そうか」
サシャ「ライナーはどうですか? おいしいですか? 安心する味でした?」
ライナー「……ああ、うまいよ」
サシャ「なら、よかったです」
コニー「……そんで、ライナーが一口食う度にサシャが口開けるからよ、まるで雛に餌やる親鳥みてえな感じだったなー」
ジャン「へえ…………そう…………」プルプルプルプル
コニー「例のごとくサシャが口回りベタベタにするもんだからよ、ライナーが口元拭いてやってたな。サシャはされるがままっていうか、むしろされたがってるっていうか」
ジャン「ふうん……………………………………そっかぁ………………………………」プルプルプルプルプルプルプルプル
マルコ「やめてあげて、コニー、やめてあげて」クイクイ
コニー「えー、だってジャンが報告しろって言ったんだぞ?」
ジャン「ああそうだ……俺ぁ確かにお前に監視を頼んだがよ……うおあああああああああああああっ!!」ガリガリガリガリガリガリガリガリ
マルコ「ジャン!? ジャーン!! やめるんだ! 床を掘っても何も出てこないぞ!!」ガシッ
ジャン「俺もミカサと食べさせあいっこしたいいいいいいい!!」ジタバタジタバタ
マルコ「あーそれは無理かなー」
コニー「無理だろー」
ジャン「あああああああああああああ!!」ゴロゴロゴロゴロゴロ
―― 夜 女子寮 ユミルたちの部屋
サシャ「♪~」スリスリ
ミカサ「♪~」スリスリ
ユミル「……おい、なんだあそこのかわいい女子二人は。なんで笑顔で顔と肩寄せあってるんだ」
クリスタ「二人とも、今日はいいことあったみたいだね」クスッ
サシャ「ハンバーグ、おいしかったです……幸せでした……」ホンワカ
ミカサ「私も、今日はエレンとアルミンと三人で一緒にお散歩した。……ので、幸せだった」ホンワカ
ユミル「その様子だと、ハンバーグはうまく作れたのか? サシャ」
サシャ「いえ、やっぱりうまくいきませんね。お店のとは違って」
サシャ「でも……ひと味違ってましたから、私は満足です♪」
おわり
終わりです。読んでくださった方ありがとうございましたー
誰かが誰かに料理を作ってあげるSSは結構見るので共同作業にしてみました
今回の『サシャ「ひと味違いますよ?」』で、SSは二十一作目になりました
他に『どきどきっ☆第104期訓練兵団!』というSS(全三部+番外編)も書いた&この前完結しましたので、よかったら暇つぶしにどうぞー&あちらも読んでくださった方はありがとうございました! 結構読んでくださってる方がいてびっくりしました
今回のオマケはエレン・ミカサ・アルミンの幼なじみ三人組です。ちょっと長め。読みたい方だけどうぞ!
おまけ:ミカサの手料理編
―― 休日 昼 食堂
エレン・アルミン「「ごちそうさまでしたぁっ!!」」パァンッ!!
ミカサ「……お粗末様でした」
エレン「ああー……久しぶりに満腹だー……」ホンワカ
アルミン「うん……こんなに幸せな気分になるのはいつ以来かな……」ホンワカ
ミカサ「二人に喜んでもらえて、私も嬉しい」
エレン「お前料理ほんっと上手だなぁ……」
アルミン「そうだね。ミカサは将来、いいお嫁さんになるよ」
ミカサ「!! アルミン、それは本当? 本当?」クイクイ
アルミン「うん。本当だよ」ニコッ
ミカサ「……///」テレテレ
エレン「さてと……腹ごなしに片付け手伝うか」ヨッコラショ
ミカサ「!? い、いや……片付けも、私がやるからいい」ブンブン
アルミン「遠慮しないでよミカサ。こんなにおいしいものご馳走してもらったんだから、労働しなきゃバチが当たるよ」
エレン「というわけで厨房入るぞー」ガチャッ
ミカサ「あっ……! ま、待ってエレン!」
エレン「えーっと他に洗うものはっと……あれ? この鍋なんだ?」パカッ
アルミン「これは、スープ……? でも、さっき出てなかったよね」
ミカサ「……」モジモジ
エレン「おいミカサ、これなんだよ。説明しろ」
ミカサ「あの……それは、びしびしそわーずっていう……料理」
アルミン「ビシソワーズ、かな? 芋の冷たいスープだよね?」
ミカサ「う、うん。でも、その……失敗した、ので、後で一人で食べる……つもり、だった」
エレン「一人で食べるって……何言ってんだ、俺たちにもくれよ。こんな量一人じゃ食べ切れねえし、捨てちまうのももったいないだろ?」
ミカサ「で、でも……おいしくない。とてもまずい。きっとお腹を壊してしまう」オロオロ
アルミン「ミカサが失敗した料理って、逆に食べてみたいかも」
ミカサ「……笑わない?」
エレン「何言ってんだ。まずいなら笑い飛ばすくらいでちょうどいいだろ」
アルミン「そうそう、思いっきり笑ってあげるから安心してよ」
ミカサ「……じゃあ、用意する。少し待っててほしい」
―― 数分後
ミカサ「おまたせ。どうぞ」コトッ
エレン「……うまそうだよなぁ?」
アルミン「うん、おいしそう。……そういえば、さっきの料理かなり豪勢だったよね。このスープの材料も馬鹿にならないでしょ? いくらかかったの?」
ミカサ「ざっと給金半年分」ドヤァ
アルミン「エレェェェン!! 今すぐ財布を出しなさい!!」クワッ!!
エレン「!? ちょっ、引っ張るな、やめろってアルミン……っ! いやーやめてー乱暴しないでー!!」ジタバタジタバタ
アルミン「な……空っぽ……だと……?」ワナワナワナワナ...
ミカサ「待って、アルミン。私、お金はいらない」
アルミン「でも、給金半年分なんて……!」
ミカサ「お金は貯めてあったからいいの。大丈夫」
ミカサ「でも……もしもらえるのなら、違う形で見返りはほしい」
アルミン「見返りだなんて……そんなことないよ、当然の権利だ! ねえミカサ、してほしいことなんでも言って!」
エレン「逆立ちで営庭一周か? 教官のパンツでも盗んでくるか?」
ミカサ「――今度の休みの日に、ずっと一緒にいてほしい」
アルミン「……え? それだけ?」
ミカサ「うん。何もいらない。三人でいられればいい」
ミカサ「最近三人でいられることが少なかったから……一緒にいたい」
ミカサ「出かけなくても、例えば……散歩とか、そういうことでいい、ので」
エレン「……そんなんでいいのか?」
ミカサ「二人からは、もうたくさんもらってるから、私はそれでいい。充分」
アルミン「ミカサって、欲がないよね……」
ミカサ「ううん、そんなことない。……どっちか一人じゃ我慢できないから、私は結構よくばり」
アルミン「……スープ、食べよっか」
エレン「そうだな、冷めちゃうしな」
ミカサ「エレン、これは冷たいスープ。これ以上冷めない」
エレン「そうだっけ? ……まあいいや、いただきます」
アルミン「いただきます」
ミカサ「召し上がれ。……それと、いただきます」
エレン「ははっ、これかなりまずいな」ズズッ
アルミン「そうだね、まずいね」ズズッ
ミカサ「……うん、まずい」ズズッ
おわり
以上よくばりなミカサでした。食糧事情については特典のドラマCD聞いて無理矢理軌道修正かけたので、肉はそんな簡単に手に入らないだろ!!とか細かいところは気にしないでください
というわけで今回は甘ったるすぎたので次回は夜の立体機動(未遂)予定です。(未遂)なので残念ながらR-18にはなりません。あとたぶんエロくない
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