———九月・清澄高校麻雀部
まこ(インターハイ団体戦で優勝したわしらは、新たな目標を秋季予選に定めていた)
まこ(しかし……)
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新入部員A「宮永さん!お茶買ってこようか?」
新入部員B「和ちゃん!何か欲しいものある?!」
優希「新入り!そこのコンビニまでタコス買ってこい!」
新入部員C「はいっ!」
まこ「………」
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まこ(なしてそうなるんじゃ!)
まこ(インハイの一回戦から決勝まで大活躍したわしを差し置いて注目は一年トリオにばっか集まっちょる!)
まこ(もう部長はわしじゃというに……!)
まこ(くそっ)
まこ「とうおるるるるるるるるるるるるるるるるるん」
まこ「!?電話……」
まこ「とおおるるるるるるるるるるる」
まこ「どこじゃ?!」
まこ「とぉるるる……」
まこ「!」
まこ「信じられんわ……。こういうのを奇跡っていうんじゃのう、めったにある事じゃない……」
まこ「卓の点棒ケースの中に、偶然公衆電話があるなんて……」
まこ「ぶつッ!!」
まこ「もしもし、はい。まこです」
まこ『そろそろ頃合いだ』
まこ「ボス!?」
まこ『我が「絶頂」を邪魔するものは排除せねばならん。直ちに一年トリオを抹殺せよ』
まこ「え、ええぇ〜〜???でも、わしがそんなこと……」
まこ『できるッ!』
まこ『いいかまこ。これは私が最も信頼するお前にしか頼めないことなんだ』
まこ「……ボス」
まこ『愛しのまこよ……。やってくれるな』
まこ「……はい。この命に代えても」
まこ『成功を祈る』
まこ『なぁに、心配はいらぬ……。私の【キング・クリムゾン】の腕と【エピタフ】があれば……』
まこ「ぷつっ!」
まこ「くぅ……!わかった、ボス!わしはやるッ!」
ガチャッ!
優希「こんにちはーーだっじぇい!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
まこ「………」
優希(……あれ?染谷先輩の雰囲気がなんか変だじょ)
優希「染谷せんぱい?」
まこ「……ふふっふふふふふっふふふふふふふふふふふふっ」
優希「?」
まこ「あっはっはっはっはっは!!!確かに!確かに見たぞ、この未来!」
まこ「ボスの言う通りぃぃぃ!……楽勝な仕事、じゃったのう」スッ
グシャァァッ
優希「げ……ぶっ」
優希「な……なにが……」
優希「起……き……」
ドシャァァッ
まこ「まず一人ィィィ!残るは咲と和……」
まこ「油断はせんッ!じゃが負ける筈がないッ!この『力』はッ!!」
・
・
・
ガチャッ
咲「すいません、遅れました」
新入部員A「宮永さん……原村さん……こ、これ……」
咲「え……?」
腰を抜かしているAが指した先には、血だまりが広がっていた。
一見、トマトジュースを溢したかにしか見えない水溜まり。
それが『血だまり』だと認識できたのは、その中心に倒れる小さな身体のおかげだった。
そこに横たわっていたのは、白目を剥いて腕をだらんと伸ばしている片岡優希の姿だった。
咲「……え?」
和「ゆーき!?」
駆け寄る和。優希の首に指を当てるが……
和「そ……そんな……」
咲「どういうことなんですか、Aさん……」
A「わかんない……私が来たときにはもうこうなっていて……」
和「……警察に連絡は」
A「い、今からします……!」カチャッ
咲「和ちゃん……」
和「……はい。染谷先輩のバッグが残っています」
和「染谷先輩に話を聞く必要がありますね」
咲「電話してみるよ」
Trrrr... Trrrr... Trrrr...
咲「………」
咲「……出ない」
和「………」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
咲「……一つ断っておくよ。私は決して疑いたくはない。今まで優しかったあの染谷先輩を」
咲「だけどッ!私は大切な親友の死体を目の前にして!染谷先輩を探し出さなくてはいけないと思っているッ!」
和「……探しましょう。染谷先輩を」
A「ね、ねえ……私はどうすれば……?」
和「ここで警察の応対をしてください」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
和「……咲さん?」
咲の態度は明らかにおかしく、目を見開き、金縛りにあったかのようにピタリと制止していた。
咲「何か……何か聞こえない?和ちゃん」
和「……?」
和も耳を澄ます。
確かに、何かが聞こえる。
『ピリリリ』『ピリリリ』——
咲「私は……まだコールを続けているんだ」
ピリリリ……
咲「……ロッカーの中からだ」
ピリリリ……
和「まさか……」
物音を立てないようにロッカーに近づく咲。
和が見ると、その手はぐっしょりと汗で濡れていた。
和(そうか……。ここに染谷先輩が隠れているとするなら、その理由は、犯行が終わった時にAさんが入ってきたから……)
和(つまり、染谷先輩が犯人という確たる証拠になってしまう……!)
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
咲「………」
開けるよ、という仕草を見せた。
和は緊張した面持ちで頷く。
ギィ……
中には何も——いや、掃除道具の中に紛れ込んでいる携帯電話があった。
外画面が光り、通知を知らせている。
咲「なにッ——」
しかしその時、『上』から気配がした!
まこ「まんまとひっかかったなァァァ!!!」
和「染谷先輩!?」
まこ「これでミッションコンプリート!【キング・クリムゾン】ッ!!」
まこは天井に張り付いて襲撃のチャンスを待っていたのだ。
そして、彼女の背中から『右腕』が現れ、咲に向かって『拳』を向けた!
まこ(勝ったッ——!!!)
咲の脳天に『拳』が迫った瞬間。まこは驚くべき状況に遭遇した。
和が、その『拳』を受け止めたのだ。突如現れた『盾』で!
まこ「な……に——!?」
『盾』を動かし、覗かせた和の風貌は別人のようになっていた。
制服は消滅し、露出の高い服、背には翼、そして左手には盾、右手には槍。
そう、彼女はネット上最強雀師『のどっち』の姿に変身していたのだ!
和「【エンジェル・ウィッチ】!!!」
和「これが私のスタンドです……。染谷先輩もスタンド使いだったとは驚きましたね」
和はそのまま、まこを盾で壁際まで押し込めた。
まこ「ぐっ!」
和「染谷先輩、質問に答えてください。優希を殺害したのは、貴方の『スタンド』ですか?」
まこ(和がスタンド使いなんて聞いてないぞボス……)
和「答えてください」
和が左手の『槍』を翳す。
しかし、その状況に反して、まこの口元には笑みが浮かんでいた。
和「——!?」
まこ「そんなチンケな『盾』でェェェ!!ボスのスタンドが止められるかァァァッ!!」
ゴシャァッ!!!
和「ぐぅっ!」
咲「和ちゃん!」
まこの両脇から『両腕』が現れ、和の身体を押し返した!
和(まずいッ……とんでもないパワーだ!)
まこ「………」ダダッ
咲「待て!」
和「咲さんッ!ダメです!」
咲「……!どうして!」
和「ここで逃げるということは……。ゆーきを殺害したのは染谷先輩で間違いないでしょう」
和「だから、咲さん一人で向かっちゃダメです。私も一緒に……」
咲「……!わかった、一緒に追おう!」
一方、まこは廊下を全速力で走り抜けながら思考を巡らせていた。
まこ(和のスタンド——見映えは派手じゃがパワーは完全にこちらの方が上じゃ)
まこ(問題は、咲にスタンドが『見えているか』という事ッ!)
『スタンド』は『スタンド使い』でしか視認できないというルールがある。
逆に、『スタンド』が見えている人間は『スタンド使い』なのだ。
まこ(咲が『スタンド使い』か否かという点が不明な今、戦いを挑むのは愚策)
まこ(一旦、ここは退くべきッ!)
まこが部室のある旧校舎を抜けたその時!
彼女は頭上から『鼓翼』を耳にした!
まこ「まさかッ!」バッ
和「染谷先輩!」
咲「逃がさないよッ!!」
まこが宙に目を向ける。
そこには、変身した和が翼をはためかせ空を飛んでいる姿、そして彼女が咲の身体を抱き、共に空に浮かんでいる姿があった!
まこ(くっ!!)
そう、ここで咲が姿を現すということは、彼女が『非力ではない』事を意味する!
つまり彼女は『スタンド使い』なのだ!まこはそう確信し、逃亡を再開した!
まこ「とぅおおおおるるるるるるるるるん」
まこ「なにッ!?」
まこ「とおおおおるるるるるるるる」
まこ「ボス!?いったい電話はどこに——」
まこが辺りを見回すと、校門の外に待機するタクシーがあった。
まこ(あの車内電話か!)
一方で和は、咲を地上に降ろし、空中からまこ向かって攻撃しようとしていた!
エンジェル・オブ・デス
和「【 天 使 の 投 擲 】!!」
まこ「!」
和(え……?)
和が放った『槍』。まこの背後から投擲したにも関わらず、彼女は平然とそれを回避した!
和(スピード、狙い、共に完璧だったハズ……だのに外れたッ!なぜ外したッ!?)
槍を回収している間にまこは校門を出、タクシーに乗り込んだ。
運転手「どちらまで?」
まこ「電話を寄越せェェッ!!!」
運転手「はっ?」
まこ「ガチャッ!」
まこが掴んだのは単なる車内の飾りだった。
だが彼女は意にも介せずそれを電話器と思いこみ、それに向かってまくし立てた。
まこ「ボス!優希は殺りましたが……予定外のことが起きました!」
まこ「咲と和!恐らくは二人とも『スタンド使い』ですッ!」
まこ『そうか。よくやった。それを突き止めただけでも殊勲だ』
まこ「……あ、ありがとうございますッ!」
そんな様子を、運転手は怪訝そうに伺っていた。
玄関外の和は槍を回収し、車に向かって一直線に飛んでくる。
まこ『まこッ!とりあえずそこを出ろ!』
まこ「えっ?」
まこ『早く!原村和が来ているッ!』
運転手「あの、お客さん?」
まこ「そ、そこの山の麓まで!」
運転手「?はい、わかりました……」
車が動き出すのを見て、和は速力を上げた。
まこ「く、来るッ!頼む!もっとトバしてくれぇ!!」
運転手「え?……はいはい」
猛スピードで道路を走っていったタクシーを見て、和は飛行をやめ、地面に降り立った。
咲「和ちゃん!どうだった?」
和「逃げられました……。自動車の速度にはさすがに追い付けません」
駆け寄る咲を見て、和はスタンドを解いた。
衣装は光の粉のように弾け飛び、服装は元の制服に戻っていく。
咲「そっか。だったら私たちも!」
咲は近くのタクシーを呼び止め、それに乗り込んだ。
運転手B「どちらまで?」
咲「とりあえず全速前進してください。途中で暴走してるタクシーがあると思うので、その後をつけてください」
運転手B「了解しましたー」
幾分か走らせると、道の先を行くタクシーの姿が見えてきた。
咲「運転手さん、あれです!」
一方、まこは追ってくるタクシーの存在に気付いた。
まこ「お、おい!もっとトバしてくれ!」
運転手「これ以上は無理ですよ」
まこ「いいからスピードを出せェェェェ!!ぶち殺されてぇのかてめえェェェェ!!!」
まこ『私の愛するまこよ……』
まこ「ボス!?」
まこ『慌てることはない。【エピタフ】の予知を見て的確な行動をすればよいのだ』
まこ『まこよ、【エピタフ】にはどんな未来が刻まれている?』
まこ「エ……【エピタフ】ッ!」
まこは【エピタフ】の映像に集中した。
そこに映っていた未来は——
まこ「ボ……ボスゥゥ!!どうしたらいいんだこれはッ!!」
まこ『まこよ、どうした!何が見えたのだ!』
まこ「車がッ!!このタクシーは事故に遭って大破するッ!!」
運転手「!?」
まこ『!?』
運転手「お、おい!あんた何言って——」
まこ『今すぐ眼鏡を外せ!まこォォォォッ!!!』
次の瞬間!大きな衝撃が車内を貫いた!
フロントガラスに別の車が突っ込んだのだ!
まこ「うわぁぁぁぁぁっ!!!」
グワァァァァッシャァァァァァッ!!!
咲「あ……」
和「運転手さん、止めてください!」
タクシーを降り、前方で正面衝突した二つの車体を見る二人。
両方のボンネットは圧縮されて原形を留めておらず、ガラスには至るところにヒビが入っていた。
咲「!」
咲は、鉄屑の横に横たわる『奴』を見て、咄嗟に身構えた。
タクシーの屋根の上にのぼり、その様子を伺う。
和「染谷先輩……?」
まこはうつ伏せになったまま動かない。
その身体の横には、『ヒビが入った眼鏡』が落っこちていた。
咲「和ちゃん、まだ近づかないで……」
和「……。はい……」
暫く、二人とまこは動かなかった。
しかし、三分ほど経った時であろうか——彼女の指がピクリと動いた!
咲「!!!」
和「【エンジェル・ウィッ——」
グシャァッ
和「……えっ」
咲「和ちゃん!?」
和には、『何が起きたのか』が分からなかった。
『いつの間にか染谷まこの身体は車体の横から消失し、何故か私の身体が攻撃を受けている』
これが、彼女の薄れていく意識が辛うじて導き出した答えだった。
咲「和ちゃん……染谷先輩……ッ!」
和がゆっくりと地面に倒れ落ちる。
そしてまこは、そんな彼女を見下しながら、その背後に直立していたッ!
まこ「……これは『試練』だ。過去に打ち勝てという『試練』と、私は受けとった」
まこ「人の成長は…………未熟な過去に打ち勝つことだとな……え?お前もそうだろう?宮永咲……」
咲「……過去?」
まこ「こんな奴らと群れて戦っていたという『過去』だ……。やはり間違いはない。私の【キング・クリムゾン】はこの世の『頂点』に選ばれたスタンド……」
まこ「『頂点』は一人だけだッ!私はお前たちを殺し!過去を殺し!そして永遠の『絶頂』を手にするッ!!」
咲「………」
まこ「優希、和!次はお前だ宮永咲ッ!」
『染谷まこ』は二人いた——
『まこ』と、『ボス』の二人だ。二人は一つの身体を共有し、とどのつまり『二重人格』を形成していた……。
『まこ』は『ボス』の力の一端を貸されていると思い込んでいたが、そうではない。
二人は一つなのだ……。つまり、『まこ』の精神は完全な形でスタンドを操ることができなかっただけなのだ。
今彼女は『ボス』の人格になっている。
それが意味することは、彼女のスタンド【キング・クリムゾン】は今、完全な形でその能力を使用できるということ——!!
まこ「【キング・クリムゾン】ッ!!!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
まこ「【キングクリムゾン】の能力の中では、この世の時間は消し飛び……そして全ての人間は、この時間の中で動いた即席を覚えていないッ!」
まこ「『空の雲は、ちぎれ飛んだ事に気づかず!』……『消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!』『結果』だけだ!!この世には『結果』だけが残る!!」
まこ「そして【エピタフ】——その予知は完全な私の勝利を指し示している!」
彼女の【キング・クリムゾン】の能力の一つ、【エピタフ】——
それは、『消し飛んだ時間』の先の未来を見せてくれる、云わば『予知能力』。
彼女が見たヴィジョンには、頭に致命傷を受ける咲の姿があった!
まこ「時間を消し飛ばしている間は、私は『傍観者』となり、この世の全てに触れることはできなくなる」
まこ「だが!時間が消し飛んだ後、『瞬間移動』したように見える私の攻撃に反応することなどできないッ!」
『消え去った時の中』で、まこは咲の背後に回り込んだ!
まこ「時は再び刻み始めるッ!【キング・クリムゾン】——!!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
時間は【キング・クリムゾン】の支配から脱した。
まこは車上に立つ咲目掛け、『拳』を振り抜く——ッ!!
咲「ハッ!?」
ゴシャァァァッ!
鈍い音がし、咲の身体はよろめき倒れて——
まこ「勝っ——」
——しかし。
まこは異変に気が付いた。
まこ「……な」
まこ「なんじゃァァァこりゃァァァァ!!!」
咲は倒れていなかった。倒れたのはまこの方だ。
まこの頭には大きな窪みが発生し、勢いよく血が吹き出た!
まこ「ぐぼぉぉぉぁぁぁぁっ!!!」
まこ(な、何故……!?【エピタフ】の予見では攻撃を受けていたのは咲の方だった筈……!)
まこ(だのに!何故!私の方がダメージを受けているんだッ!!)
道路に倒れるまこを、咲は冷たい目で見下ろしていた。
その視線に気付いたまこが叫びを上げる。
まこ「私を見下すなァーーッ!!宮永咲ィィーーーッ!!!」
咲「あなたのスタンド……それは……」
まこ「!」
咲「『瞬間移動』——?いや、そうじゃない。何故なら、あなたは事故に巻き込まれたから。そんな能力があるのなら事故に巻き込まれる筈がない」
推理を語り出す咲を、まこは呆然と見上げていた。
咲「だとしたら、どうして『瞬間移動』したように見える?それは……『あなただけが動くことができる』空間を作り上げているからじゃ……?」
まこ(な……なにィィィィ……!)
咲「それに、ここには『いつの間にか』野次馬が集まってる」
まこ「!」
まこが辺りを見回す。
『いつの間にか』、事故に遭った車両の周りには多くの人がたかっていた。
咲「本当に、いつの間にだよ……。まるでこの人たちも『瞬間移動』しているような……」
咲「つまり、他の人間が移動できる、それでも意思を持って動けるのはあなただけ……」
咲「あなたのスタンドは、『時を支配する』能力。そうじゃないですか?」
まこ(なんだ……こいつッ……!!!)
まこ(それが分かったところで何ができるッ!もう一度だ!)
まこ「【キング・クリムゾン】ッ!!!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
まこ(……。動かない……)
咲の冷たい眼は、『意思』を持たぬのに、言い知れぬ迫力を持っていた。
心臓を貫くような冷たさを——
まこ(考えろ……奴のスタンドの力を……!)
まこ(確かに【エピタフ】には、頭が吹き飛ばされた奴の映像があった)
まこ(だが実際にはダメージを受けたのは私の方ッ!何故だ……?)
まこ(……やはり、奴のスタンドは『ダメージを跳ね返す』能力!)
まこ(だとしたら、ここで戦っても勝ち目はない……)
まこ(……くっ、時間切れッ!)
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
まこ「………」
まこは、咲に背を向けて走り出した。
咲「!」
まこ(まず逃げる……。一旦退いて、奴のスタンドへの対処方法を考えるのだ……!)
咲「やれやれだよ。敵前逃亡するようなプライドもない人が、『頂点』になんてなれっこない」
道の奥からサイレンが聞こえてきた。
野次馬A「警察か!?」
野次馬B「いや、救急車だろ!」
野次馬C「……イテッ」
その時、そこにいた野次馬全員が痛みを感じた。
その痛みは重いものではなく、ただチクッとしたような軽いもの。
野次馬の輪の中にいた一人の少年がシャツを捲り上げると、その真っ白なお腹に赤いアザができていた。
一方、まこは山の麓まで来ていた。
まこ(奴のスタンド……このままでは勝ち目がない!完全なる無敵のスタンドだッ!)
まこ(だが攻略の糸口はある!)
まこ(私が——というより『まこ』が最初に宮永咲へ奇襲をかけたとき、なぜ原村和は彼女の盾になったのだ?)
まこ(恐らくあの二人はお互いのスタンドを知っていた。迷いなく、二人で私を追ってきたのだから)
まこ(だとすると、あの時は『ダメージを跳ね返す』ことができなかったということだ!)
まこ(あの時の状況——そして、宮永咲の性質——考えろ——!!)
山を登りながら思考を巡らす内、とうとうまこは答えに辿り着いたッ!
まこ(『奇襲』——『上から』——『見下ろす視線』——)
まこ(宮永咲——『嶺上開花』——!!)
まこ(そうかッ!これだッ!)
まこが最初に仕掛けた奇襲。その時、二人の位置関係は、まこが『上』で咲が『下』。
そして先程。二人の位置関係は、まこが『下』で咲が『上』。
まこ(これだ!)
スタンド能力は、使い手の性質が色濃く反映される場合がある。
和にしてもそうであったし、ならば咲もそうであるに違いない!まこはそう考えたッ
まこ(そう!奴のダメージ反射能力は、敵より『高い場所』にいないと発動できない!)
まこ(ちょうど咲が闘牌中に『嶺上』から場を支配するようにッ!)
まこ(そうと決まれば……ッ!!)
まこは山に登り、『木の上』に登り身を隠す!
そうとは知らず、咲がまこを追って山に入って行く!
まこ(……!)
咲が山に入ってくるのを確認したまこ。
しかし慎重に、虎視眈々とチャンスを伺うッ
まこ(まだ……)
咲「どこだ……?」
まこ(【キング・クリムゾン】の射程距離は数メートル程度だ……慎重に……)
咲「………」
キョロキョロと辺りを見回す咲が射程距離に入る!
まこはすかさず、咲の頭上——木の上から飛び降り、攻撃を仕掛けたッ!
しかし咲が感づくほんの、ほんの一瞬前!まこも何かに感づいた!
まこ(——!?)
まこ「【キング・クリムゾン】ッ!!!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
まこ「原村和……!」
まこは【エピタフ】の予知——『自分が槍で貫かれる』未来を見て【キング・クリムゾン】を発動させた!
槍が飛んでくると予知された背後を見ると、そこには『天使』の姿をした和がいた!
まこ(何故ここに……あのとき確かに致命傷を与えた筈……)
まこ(だが!それを考えている時間はないッ)
まこ(【キング・クリムゾン】で削り取れる時間は十数秒!もうすぐ時間は動き出すッ)
まこは『自分が咲の上』の位置関係を保ったまま、槍の軌道から身を逸らした。
そして、【エピタフ】で予見される新たな未来は——ッ!!
まこ「ぐっ……ふふふふふふはははははははははッ!!!!!」
まこ「よりにもよって……味方の槍に貫かれるとはお笑いものだなァ宮永咲ィ!!」
そこに映っていた未来は、『槍に貫かれている咲』だった!
まこ(もし『反射ダメージ』が発生しても、その矛先は原村和!)
まこ(私はそのまま頭上から宮永咲の頭をブチ抜くッ!)
まこ「さァ時は再び動き出すッ!これで終わりだァァァーーーッ!!!」
┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
咲「ハッ!」
咲が息を呑むッ!
当然ッ!目の前には迫り来る槍の鋒ッ!
空を斬り裂き!乾いた風の音を立ててそれは迫り来るッ!
そして同時に!頭上からは【キング・クリムゾン】の『拳』がッ!!
和「咲さんーーーーーッ!!!」
まこ「『帝王』はこの染谷まこだッ!依然変わりなくッ!!」
先に命中したのは『槍』ッ!
咲の身体を貫き!——そして、停止したッ
しかし次の瞬間、まこは目を疑うッ
『 槍 が 消 え た 』ッ!
まこ(何故……だ……)
消えただけなら良い……。
だが!その『槍』が跳ね返ったのは原村和ではなくッ!
まこ「なぜ私なんだァァァーーー!!!」
『槍』は!まこの腹に刺し込まれていた!
しかも!咲はその槍を掴み、一瞬でまこの身体を自らの『下』へ移動させたッ!
咲「『何故』?あなたは勘違いしてたみたいだね……私のスタンドの力を……」
まこ「な……に!」
咲「例えば……。和ちゃんから12000をロンされた時、必ずしも和ちゃんから12000を取り返す必要はない」
咲「あなたから12000をロンしたり!4000オールをツモるだけでも、私のトータルは『±0』になるッ!」
まこ「!」
咲「確かに、位置関係が『相手より上』じゃないと、このスタンドは使えない……。だけど、必ずしも『一番上』じゃなくてもいいんだ」
咲「なぜなら!『±0』は!『一番上』を目指すものではないからッ!」
まこ「プ……プラマイ0……」
咲「そう……。私へのトータルダメージが『±0』になるように、ダメージを『支配する』!」
咲「これが私の【リリィホワイト・リリス】!」
そう。和の傷を癒したのは、『和のダメージ』を『野次馬』に分割して分け与えたから。
言うまでもなく、この場合の咲のトータルダメージは『±0』であるッ!
咲「さ、落ちてください」
咲はまこの身体から槍を引き抜いた。
痛々しい音と血飛沫と共に、彼女は斜面を転がり落ちていった。
まこ「ちくしょォォオオオオオオォォォォォォーーーーーーッ!!!!!」
咲「……勝った」
________________
| 染谷まこ——再起不能 |
| スタンド名『キング・クリムゾン』 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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咲「……っていうのどうかな?今度の文化祭の出し物」
和「SOA」
カン
乙
スタジオアラタの人?
>>50
別人です
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