【安価スレ】あかるくたのしい傭兵生活 (19)
剣や魔法が飛び交う戦争真っ只中の世界で傭兵として頑張るスレ
採用したキャラがすぐ死ぬこともあったりするのでそういうのが嫌な方はブラウザバックお願いします
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いつの世も戦いは終わらない。命が世界に在る限り、争いは必ず発生する。
世界とは、命とはそういうものだ。闘争の中で生き続け、爛々と輝くもの。それこそが生命という灯火。
世界を焼き尽くし、燃え尽きるまで。闘争の日々に終わりは無い。
故に。戦争を生業とする職業の需要は尽きず、戦争に全てを奪われる被害者も後を絶たない。
彼もまた、その被害者の一人だった。
故郷を戦火に焼かれ、家族を喪い。身寄りの無い幼子は、物心が付く頃には既に奴隷として売り払われた。
買い手が付かず廃棄処分が間近に迫る少年を、一人の傭兵が端金で買い叩いたのだ。
まあ。この世界では売れ残った奴隷を買い集め少年兵として仕立て上げ、捨て駒とすることなど珍しくもないのだが。
野垂れ死ぬか戦場で安い命を無為に散らすか。それだけの違いである。
捨て駒一号となった少年に、名前は無かった。故郷と共に燃え尽きた、と言った方が正しいかもしれない。
貧困層に生まれた彼には、自身を証明し得る手段が家族しか無かった。それが全て荼毘に付し塵と消えたのだ。
今の彼は戦火に焼かれ、微かに残った燃え滓でしかない。風に吹かれて消えるような小さく弱々しい種火だ。
だったのだが。何の因果か、それとも奇跡か。消える運命にあった種火は燃え上がり、自身を買い叩いた主人さえ焼き捨てた。
幾多の戦場を越え、力と技術を磨いた少年は、とある酒宴にて反旗を翻す。
そして。悉くを弑した後に、姿を消した。
彼には名前は無く、過去も無い。あったのは、主人から与えられた仮初の身分だけだ。
それは叛逆と共に炎に消えた。そのため、彼が行方を晦ませても追跡はされず、晴れて自由の身分となる。
しかし、闘争の日々を生きていた者に、平穏な生活が馴染むはずもなく。
数日もしないうちに、少年は再度戦火に身を投じた。
【ハウンズレギオン】と呼ばれる傭兵部隊がある。
数年前に結成されたばかりの真新しい部隊だが、頭領を務める青年は無名にも関わらず、目覚ましい功績を挙げた。
ハウンズレギオンは要人警護から暗殺、果てには盗賊の捕縛に魔物の討伐など、報酬さえあれば大抵の荒事は引き受ける便利屋としての側面を持ち、依頼の達成率と部隊員の練度が評価され、依頼主(クライアント)からの評判は上々であった。
依頼次第でどこにでも与するので、敵になった時は面倒くさいことになると悪評もそれなりにあるのだが、大概の傭兵企業に当て嵌まることなので特に問題視はされていない。
寧ろ、金さえ積めば味方に付けられるので分かりやすくて助かるとまで言われている。
そんな業績が右肩上がりでウハウハなハウンズレギオンの代表【ディラック】は現在、品定めに町を彷徨いていた。
数日前に陥落した都市【オーリニアス】。反乱軍より奪還されたこの町では、反乱軍幹部の処刑が行われる。
広場に用意された処刑台には数台のギロチンが設置されている。
処刑人は国が手配した本職の方が努めており、その護衛をハウンズレギオンの隊員が担当している。
まだ入隊して間もないのもあって緊張が顔に出ているが、リラックスしてほしいものだ。どうせすぐ慣れることになるのだから。
万が一、幹部たちを救出せんと闘志に燃える反乱軍が襲撃してきたとしても心配は無い。
護衛担当には伝えていないが、保険として数名のエリートを各所に配置してある。ハウンズレギオン設立当初からの初期メンバーだ。実力は折り紙つきである。
「………っ!は、はいっ!!!」
ディラックが軽く手を振ると、護衛の隊員がぎこちない敬礼を返す。小さく笑ったディラックは、広場を後にした。
オーリニアスを擁する小国【ベリルセラ】は現在、圧政に堪え兼ねた民衆によって絶賛革命中である。
殺意しか感じられない理不尽な重税に、王の気分一つで改正される無法極まる法律。司法も王族に掌握されているので自浄作用も完全に死んでいるオマケ付きだ。紛うことなき独裁政治である。
正直、一度綺麗さっぱり滅んだ方が国の為と思えるような腐敗っぷりだが、別に革命に加担するつもりはない。
我々は傭兵だ。報酬次第で何だってやる阿漕な商売に、正義や信念、誇りといった崇高な物など不要だ。そんな素晴らしい物は野良犬にでも食わせてやればいい。さぞ利口なワンちゃんになるだろう。
手を貸してほしいのなら誠意を見せろという話だ。金さえ積めば簡単に雇え、不義理を働かなければ裏切らない仁義に篤い優良企業なのだから。
そんな滅亡待ったなしで内戦の絶えないベリルセラは傭兵からすれば絶好の稼ぎ場であり、実際実入りが良いのでハウンズレギオンも幾らかの戦力を本拠地から派遣している。
ついでに戦力を補充できれば万々歳だと、ディラックは奴隷商人の元を訪ねる予定を立てている。もちろんアポ取りはちゃんとしている。
捕虜や奴隷を買い取るわけだが、全員が全員戦力として計上されるわけではない。
前線を張る実動隊の他にも、兵站を担当する輜重隊、医療を担当する衛生隊、諜報活動や工作を担当する特務隊と人手が必要な部署は他にもある。
どこに配属するかは本人のやる気と適性、その場のノリで決まる。もし合わないなら人事異動すれば良い。
処刑が始まるまであと三時間。サクッと商談を済ませてしまいたいものだ。
ディラックとハウンズレギオンの設定はここに 参考になれば
【ディラック】
今をときめく傭兵部隊【ハウンズレギオン】の代表取締役兼総指揮官。
ディラックは仮称であり本名は不明。何なら出身地も年齢も不明。二十代前半と本人は考えている。
黒髪赤目が特徴的で、目だけは無駄に綺麗と取引先から言われることがある。
座右の銘は【生きてるだけで丸儲け。卑怯汚いは敗者の戯言】。
空間魔法を習得しており、虚数空間と呼ばれる異空間への干渉を得意とする。
空間魔法を悪用した戦法は『防ぐ手段が無さすぎてヤバい』と非常に評判が悪い。
最近酒の美味しさに気づいた。
【ハウンズレギオン】
二ヶ月前に設立六周年記念パーティーを開いたばかりの新進気鋭の傭兵部隊。
スローガンは【あなたの意味を知れる場所】。
隊服は黒と赤を基調とした軍服であり、改造は自由。
代表取締役兼総指揮官をディラックが務めているが、難しい仕事に関しては部下に丸投げしている。
本人が言うには『学が無い自分がやったら三日で潰れる』らしい。
本拠地の場所は秘匿されており、各地の町に現地民を雇った支部を設置している。
それでもたまに本拠地が襲撃されているのはご愛嬌。
メンバーの雇用は基本ディラックが担当しているが、ハウンズレギオン隊員が拾った孤児や要人から推薦された人材を登用することも稀によくある。
独自の階級制度を採用しており、本人の能力や功績を評価された優秀な隊員はエリートの認定を受ける。
現時点で存命の初期メンバーは皆エリートであり、エリート認定の是非は現エリートの面々が行う。
エリートになると、給与及びボーナスの大幅増額、物資支給の優遇、マイハウスの所有許可、独立部隊の指揮権、デザートのおかわり自由といった特権が授与される。
契約時に設定される解約金を支払うことで任意に契約解除を行えるが、原則として個人的な理由での脱退は認められない。
しかし特例措置が適用される場合があるので要相談。
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