ある王国の平和を脅かす魔王を倒すため、勇者たちが立ち上がった。
勇者「行くぞ、みんな!」
戦士「おうよ!」
魔法使い「どんな敵でもボクの魔法で燃やしてみせるさ!」
女僧侶「回復はわたくしにお任せ下さい!」
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王国の辺境に築かれた魔王城にたどり着いた勇者たち。
魔王「よくぞ、ここまでたどり着いた勇者ども!」
魔王「この城をキサマらの墓場にしてくれるわ!」
勇者「そうはいくか! この国の平和は俺たちが守る!」
戦士「へっ……そういうこった!」
魔法使い「魔王か……。相手にとって不足なしだね!」
女僧侶「皆さん、どうかお気をつけて!」
戦士「どおりゃあっ! 必殺、三連斬!」
ザシュシュシュッ!
魔法使い「燃えろ、ファイアボール!」
ボワァァァッ!
魔王「ぐ……舐めるでないわ! 喰らえ、黒い雷を! ──カァァァッ!」
バリバリバリバリッ!
戦士「ぐうっ! さすが魔族の王ってだけあるな!」
魔法使い「くそっ……予想以上の強さだ!」
女僧侶「皆さん、すぐに回復します!」パァァ…
勇者「よし、態勢を立て直せた!」
勇者「今こそ決着をつけるぞ、魔王!」
勇者「この国みんなの想いがこもった一撃……受けてみろッ!」
ズバシュッ!
魔王「ぐああああっ……!」
魔王「バカな……このワシが……! しかし、ワシは再び……」ボシュゥゥゥ…
こうして魔王は倒され、王国に平和が戻った。
しかし、程なくして──
魔王「さらなる力と兵力を得て、ワシはよみがえった!」
魔王「次は国一つを乗っ取るなどというチンケなことはいわん!」
魔王「この大陸ごと、ワシら魔族の住処に変えてくれようぞ!」
魔王の復活を知った勇者たちも──
勇者「まさか、こんな短期間で復活するなんて……!」
戦士「だが、俺たちだって修行は欠かしてねえ! やってやろうぜ!」
魔法使い「そうさ! またやっつければいいんだよ!」
女僧侶「わたくしも精一杯補助いたします!」
勇者「そうだな、今度こそこの国……いやこの大陸に平和を取り戻すんだ!」
勇者たちの祖国を含めた三つの王国を解放し、ついに本拠地に乗り込んだ勇者たち。
魔王「おのれぇ、またしてもワシのジャマをするか!」
魔王「今度こそキサマらを抹殺し、この大陸を手中に収めてくれる!」
勇者「よみがえったのなら、再び倒すまでだ!」
戦士「へっ、地獄に送り返してやるよ! 魔王さんよォ!」
魔法使い「ボクの魔法もだいぶレベルが上がった……覚悟するんだね!」
女僧侶「わたくしも前とはちがいます!」
魔王「ほざけ……。パワーアップしたのはワシとて同じこと……いざ勝負ッ!」
戦士「せいやぁ! 新技、五連斬!」
ザシュシュシュシュシュッ!
魔法使い「焼き尽くせ、ファイアウォール!」
ブオアァァァッ!
魔王「さすがにやりおる! ならば、闇の雷で切り裂いてやる!」
ズガガガガガガガガガガッ!
戦士「ちいっ……! 魔王の攻撃も前とは比べ物にならないぜ!」
魔法使い「ちぇ、楽勝とはいかないか……」
女僧侶(回復させながら、皆さんの能力を向上させる!)パァァァ…
女僧侶「今です、勇者さん!」
勇者「ありがとう!」
勇者「大陸中の人々の願いが詰まった一撃……受けてみろッ!」
ズバシュァッ!
魔王「な、なにぃぃぃぃ……!?」
魔王「この、ワシが、またしても……!」
魔王「だが……いつか必ず! いつか必ず! キサマらを……!」ボシュゥゥゥ…
こうして魔王は倒され、大陸に平和が戻った。
ところが、魔王は執念で再び復活し、今度は勇者たちのいる大陸のみならず、
地上全てをターゲットに侵略を開始した。
魔王「フハハハハ……!」
魔王「地上に存在する、五大陸全てをワシのもとにひざまずかせてくれるわァ!」
もちろん勇者たちも動く。
勇者「魔王め……! またしても復活したか!」
勇者「俺たち四人で、今度こそ復活できないように倒してやる!」
王から授かった船を活用し、五大陸全てを解放した勇者たち。
魔王「ぐ……新生魔王軍と、五大幹部をことごとく倒すとは……!」
魔王「だが、ここまでだ! ワシの手でまとめてあの世に送ってくれる!」
勇者「それはこっちのセリフだ!」
戦士「三度目の正直ってやつだ。今度こそブッ殺してやる!」
魔法使い「覚悟しな……今やボクの魔法は小さな町なら一瞬で灰にできるレベルなんだ!」
女僧侶「たとえ瀕死になっても、わたくしがいますのでご安心を!」
戦士「だああああっ! 細切れにしてやらぁ! 最強技、十連斬!」
ザシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!
魔法使い「骨ごと燃えてしまえ! ファイアストーム!」
ズオァァァァァ……!
魔王「昔のワシなら今の攻撃で終わっていただろうが……残念だったな!」
魔王「轟けい、暗黒の雷よ!」
ズガガガガァァンッ!
戦士「な、なんてヤロウだ……!」
魔法使い「猛毒が付加されてる雷だなんて……!」
女僧侶「大丈夫! どんな毒でもケガでも一瞬で治療します!」パァァァ…
勇者「よし!」シャキンッ
勇者「地上全ての生物の魂が宿ったこの一撃……受けてみろッ!」
ズバドシュァッ!
魔王「がふっ……!」
魔王「なんと、いう一撃……!」
魔王「これではもはや復活はできぬかも……しれぬ……!」
魔王「だが……ワシは……」ボシュゥゥゥ…
こうして魔王は倒され、全地上に平和が戻った。
三度目となる復活を果たした魔王。今度は海底に居を構える。
海を全て邪悪な瘴気で汚してしまおうという企みである。
魔王「この世界の七割を占める海……」
魔王「それを魔族しか受け入れられぬものにしてしまえば、人間は滅ぶ!」
魔王「今度こそ終わりだ、人間どもめ!」
かつてない危機に、勇者たちが挑む。
勇者「世界中の海をキレイにしてから、魔王がいる海底に乗り込むぞ!」
戦士「ったく、何回倒せば気が済むんだ、あのヤロウは!?」
魔法使い「ボクの炎はもはや海でも燃え尽きることはないからね、関係ないさ」
女僧侶「わたくしの呪文で海を浄化してみせますわ!」パァァ…
七つの海を浄化し、海底に潜む城に到着した勇者たち。
魔王「こんなところまで現れるとはな……どこまでもしつこい奴らだ!」
勇者「しつこいのはそっちだろう! いい加減、復活するのはやめろ!」
戦士「永遠に海の底で沈んでもらうぜ!」
魔法使い「水中で火葬なんてのも、なかなかオツなもんだろ?」
女僧侶「魔王を倒し、キレイな海を取り戻しましょう!」
魔王「舐めおって……。まぁいい、キサマらも暗黒の海の贄としてくれるわ!」
戦士「うおおっ! 究極奥義、十五連斬!」
ザシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!
魔法使い「炎の星を受けてみろ! ファイアスター!」
ズドォォォォンッ!
魔王「ぐぬぅ……!」
魔王「やるようになったではないか……! ならば、地獄の雷撃を受けてみよ!」
ズゴガァァァァンッ!
戦士「つ、つええ……!」
魔法使い「敵さんもボクらに負けないぐらいパワーアップしているようだね……!」
女僧侶「ですが、わたくしの手にかかれば大丈夫!」パァァァ…
勇者「魔王ッ!」
魔王「ぬうっ!?」
勇者「全地上と海のエネルギーを授かった一撃、受けてみろッ!」
ザバッシャァッ!
魔王「ぐおおおおおっ……!」
魔王「ワシの体が……海の底にあいた穴に飲まれてゆく……」
魔王「海が、ワシを……拒絶するというのか……」
魔王「ぐああああああああっ……!」
ズゴゴゴォォォォォ……
勇者「ふぅ……。これでもう、さすがに復活できないだろう」
戦士「だよな!? もう終わりだよな!?」
魔法使い「一応修行は続けるけど、もう二度と復活しないで欲しいね!」
女僧侶「ですが、まだ因縁は断ち切れていないような気がします……」
この女僧侶の予感は、的中してしまうことになる。
………………
…………
……
~~~
魔王「天空に築き上げたワシの城から、地上に裁きの雷を降り注がせてやるわ!」
勇者「魔王め! 海の底からよみがえったか!」
戦士「飛行船で乗り込むしかねぇな! オレの絶命技、五十連斬を喰らわせてやる!」
魔法使い「ったく、どうやったら死ぬんだよ……魔王ってのは」
女僧侶「諦めてはいけません! それが魔王の狙いなんですから!」
~~~
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勇者「ここが月か……。あれが俺たちの住んでいた大地……あんなに丸かったなんて……」
戦士「くっ、体がふわふわして動きにくいな」
魔法使い「ボクの魔法は空気がなくても関係ないけどね」
女僧侶「わたくしの魔法があれば、この環境でも48時間生存できます!」
魔王「来おったか! キサマらを殺し、この月からの砲撃で、人間を滅ぼしてくれる!」
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魔王「待ちくたびれたぞ、勇者ども! この燃え盛る太陽がキサマらの死に場所よ!」
勇者「太陽系の平和……お前などに乱させはしない!」
戦士「暑くてかなわねぇな……。とっとと倒して、終わりにしようぜ!」
魔法使い「ボクのファイアサンで、魔王なんかあっという間に滅してやる!」
女僧侶「たとえ皆さんの肉体が砕けても、即座に再生してみせますわ!」
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勇者「数万光年の旅の果て、やっと魔王のいる巨大人工惑星にたどり着いた……!」
戦士「銀河のほとんどはオレたちが解放した……。ここまでだぜ、魔王さんよォ!」
魔法使い「今やボクの魔法は、星ぐらい一発で消せるからね。魔王なんかイチコロさ」
女僧侶「わたくしたちの手で、わたくしたちの銀河系を救いましょう!」
魔王「長旅ご苦労……。この銀河の果てで、決着をつけるのもよかろう!」
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魔王「フハハハハ! ようこそ、勇者ども!」
魔王「全宇宙の運命を賭けた、一大決戦といこうではないか!」
勇者「望むところだ……! 宇宙中に悲劇をもたらしたお前を、俺は決して許さない!」
戦士「へっ、オレらが負ければ宇宙は終わりってか……! 上等ッ!」
魔法使い「ボクのファイアコスモスで、存在そのものを燃やしてやる!」
女僧侶「破壊された惑星はわたくしが直しますので、思う存分戦って下さいませ!」
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……
…………
………………
勇者「復活した魔王の居場所がやっと分かった!」
勇者「どうやら魔王は数千もの並列世界(パラレルワールド)をダミーにしながら」
勇者「現在は2025次元に潜み、軍団に指令を出しているらしい!」
戦士「オレの無限次元斬で、次元ごと切り裂いてやるぜ!」
魔法使い「魔王によって消滅させられた無数の外宇宙、内宇宙は」
魔法使い「ボクのファイアビッグバンで0.1秒につき100個は復活させられるよ!」
女僧侶「失われた生命はわたくしの絶対時空復元魔法で全て復元してみせますわ!」
勇者「…………」
勇者「ところでさ、ふと思ったんだけど……」
勇者「俺たちと魔王の戦いは、どんどん規模が膨らんでいる一方だけど──」
勇者「これから先、どうなっちゃうのかな?」
勇者「このまま永遠に戦い続けるのかな? それともいつか終わりがくるのかな?」
戦士「…………」
魔法使い「…………」
女僧侶「…………」
戦士「そういや、んなこと考えたこともなかったな……」
戦士「いや、昔は考えてたかもしれねえが、すっかり今の状況に慣れ切っちまって……」
女僧侶「どうなってしまうんでしょうか……」
勇者「…………」
魔法使い「仮説を思いついたんだけど、ちょっといいかな?」
勇者「仮説?」
魔法使い「今や片手で宇宙を創造できるボクの口からいうのも変かもしれないけど……」
魔法使い「宇宙の終わりにはいくつかの説があって」
魔法使い「その中の一つに、『ビッグクランチ』っていう説がある」
勇者「ビッグクランチ?」
魔法使い「一言でいうと、膨張を続ける宇宙は、いずれ収縮に転ずるって説さ」
戦士「それがどうしたってんだよ?」
勇者「……なるほど。つまりこの戦いも宇宙と同じように、いずれ最高潮に達したら」
勇者「どんどん規模が小さくなっていく、と?」
魔法使い「そういうこと」
魔法使い「ま、規模が小さくなってもゼロになるってことはないと思うけどね」
魔法使い「魔王やボクたちのような存在がいる限り……」
魔法使い「そして、いつか再び膨張を始めるんだろう」
戦士「膨張して収縮して……永遠に終わらない戦いってやつか。ロマンがあるな!」
女僧侶「魔王との戦いは、わたくしたちのライフワークになっていますしね」
ウゾウゾ…… ウゾウゾ……
勇者「おっと! 別次元から、スライムの軍団がやってきたぞ!」
戦士「スピードは秒速十億光年ってところか……まるでスローモーションだぜ」
魔法使い「ボクのファイアディメンションでまとめて消滅させてやる!」
女僧侶「わたくしの回復魔法の出る幕はなさそうですね」
勇者「スライム軍団を突破したら、一気に魔王のいる次元に攻め込もう!」
オーッ!!!
──────
────
──
それから三年余りの月日が流れ──
勇者たちはある小さな民家で暮らしていた。
勇者「魔法使いの仮説が当たっていたようだな」
勇者「いつからか、だんだんと魔王との戦いの規模が小さくなっていき……」
勇者「おそらく今が、戦いの規模が“もっとも収縮した瞬間”だろう」
戦士「ああ、まちがいねぇ。感覚で分かるぜ」
戦士「それによ、戦いの規模が小さくなっていくにつれて」
戦士「オレたちが使える技もどんどんチャチになっていきやがった!」
戦士「あんだけメチャクチャに強くなったってのに……あ~、歯がゆいぜ!」
魔法使い「仕方ないよ。きっとそういう風にできてるんだよ」
女僧侶「そうですよ! どうせまたすぐ膨張するんですから!」
戦士「お気楽でいいよなぁ、お前たちは」
勇者たちが談笑していると、一人の老人が民家に入ってきた。
村長「おお、勇者さん。頼みがあるんじゃ」
村長「隣村に住む魔王が、またウチの畑を荒らしてきて困っとるんじゃ」
村長「なんとかしてくれんか?」
勇者「分かりました! お任せを!」
戦士「へっ、オレの一連斬を浴びせてやるぜ!」
魔法使い「ボクのファイアマッチで、魔王を火傷させてあげるよ!」
女僧侶「わたくしの回復魔法で、かすり傷ぐらいなら治せますわ」
勇者「さぁ、みんな、出発だ!」
おわり
昔別板で投下したSSを改題・修正したものです
ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
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