希「絢瀬絵里は危うい」 (25)
皆んなえりちの事を誤解してる。ずっと横で見てたから分かる。えりちは凄く危ういんよ。
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えりちは美人なんよ。それも超が付くほどの。この人がウチの親友って言ったらきっと皆んな羨ましがるだろうなってくらい(勿論、それが目的で友達付き合いをした訳じゃないんよ?ただ、それだけ整った容姿をしてるって事)
絵里「希、そこの資料取ってくれない?」
希「はい。どうぞ」
絵里「ありがとう」
女のウチから見てもちょっとした仕草に色気を感じるし不意に目があったりするとドキッとしてしまう時もある。
絵里「さてと、次は…これは穂乃果の字かしら?」
でもね、こんな事言ってええのかな?まあ、普段はキリッとしてる事が多いんやけどな。たま~に、たま~にね、なんて言うか…悪言い方をすると間の抜けた表情をするって言うか。
絵里「……」ポカーン
ポカーンと口を開けてぼーっとしてたりとか。こう言う時ってだいたいが何かに圧倒されてたり思考が追いつかなかったりしてる時なんやけど。ウチは心の中でえりち、口閉じてって叫んでるんやけど全然通じないの。
絵里「ぷっ…ふふっ…うふふ」
希「え?急にどうしたん?」
絵里「うん。これ、穂乃果の提案した企画なんだけど」
希「どれ?おおっ…」
絵里「よくこんな事が思い付くわよね。思わず圧倒されちゃった」
成る程。それであの表情。
絵里「これなら、もう古参は用無し。完全に任せちゃっても大丈夫そうね」
そう言って微笑むえりちの表情はやっぱり綺麗。
けど、やっぱり気をつけた方が良いと思う。ヨダレが垂れちゃわないか心配やったもん。
えりちは賢いんよ。考え方も大人だし気が利くし。もちろん勉強も出来る。ウチだってμ'sのメンバーに勉強を教える事が出来るくらいの学力はあるつもりやけど…それでも、えりちには敵わない(ちなみに歳下やけど真姫ちゃんにも敵わない)
絵里「真姫?そこ間違えてるわよ?」
真姫「え?あっ…本当だ」
絵里「ふふっ、真姫ちゃんでも間違える事あるのね」
真姫「からかわないでよ」
その真姫ちゃんにも勉強を教えてあげられるくらいえりちは賢い(本人曰く二歳も年上なんだからとの事らしいけどウチには無理や)
希「えりちが居るとウチの出る幕ないなぁ。まあ、どっちにしろ真姫ちゃんに勉強を教えるのはウチは無理やけどなぁ」
真姫「そんな事はないでしょ?にこちゃんじゃあるまいし」
けど、えりちはたまに誰でも知っている様な事を知らない時がある。
穂乃果「あれ?三人とも何してるの?」
絵里「ん~?今、真姫に勉強を教えてるのよ」
穂乃果「え?真姫ちゃんに?凄いね」
真姫「そう言う事だから邪魔しないでよ」
穂乃果「は~い」
絵里「あら?穂乃果…」
穂乃果「ん?何?」
絵里「その手にぶら下げてるのは…?」
穂乃果「あぁ…これ?カップラーメンだけど?今日は生徒会の仕事が長引きそうだからさぁ。海未ちゃんに隠れて部室で食べようと思って」
絵里「カップラーメン?」
穂乃果「うん。カップラーメン。絵里ちゃん好きなの?」
絵里「えっと…食べた事なくて」
穂乃果「え?カップラーメンを?嘘でしょ?」
絵里「存在は知ってたんだけど。食べる機会がないのよ」
穂乃果「え~そんな人居るんだ」
まあ、穂乃果ちゃんが驚くのも分かるよ。ウチも最初の頃はえりちのそう言う所にいちいち驚いてたわ。
穂乃果「じゃあ、絵里ちゃんにあげるよ。実は何個か持って来てるからさ。はい」
絵里「あ、ありがとう」
穂乃果「どういたしまして。あっ、でも海未ちゃんには内緒だからね?さ~てと、そしたらお湯を用意して来ようかな」
希「良かったな、えりち」
絵里「うん。それじゃあ、早速」
ベリ
穂乃果「え?絵里ちゃん何してるの?」
絵里「食べようと…」
穂乃果「お湯も入れないで?」
絵里「あっ…お湯を入れないと食べられないの?」
穂乃果「そりゃあね。麺硬いでしょ?」
絵里「確かに」
真姫「本当だ」
穂乃果「お湯を入れて三分間待つの」
絵里「分かったわ」
なんて穂乃果ちゃんに言われて目をキラキラさせている。よっぽどカップラーメンが珍しいんかな?
穂乃果「はい!出来たよ!召し上がれ~」
絵里「頂きます」
ちゅるちゅる~
絵里「ハラショー!美味しい!」
こう言う時、大人っぽいえりちが可愛い少女に見える。そんな事言ったらえりちはむくれるかもしれんけど。
絵里「希!カップラーメン美味しいわよ?」
希「うん。じゃあ、一口頂戴?」
ちなみに、えりちは一度ハマると割としつこい。
絵里「ねえねえ、聞いて?この間、新発売のカップラーメンを見つけたんだけど一緒に食べない?」
そういう時必ず付き合わされるのはウチなんよね。あんまり食べ過ぎると太っちゃうわ。
えりちは優しいんよ。年長者だからかな?周りをよく見てて人の異変に直ぐに気がつく。
絵里「海未?ちょっといいかしら?」
海未「何でしょう?何かありましたか?」
絵里「あなた…最近無理してるんじゃない?生徒会にお稽古に弓道部とスクールアイドルの練習。勉強だってあるんだろうし」
海未「大丈夫ですよ。いつもの事ですし」
絵里「今日のあなた。いつもよりダンスの動きにキレがなかったわよ?自分でも気が付かないウチに疲れが溜まってるんだわ」
海未「ですが…」
希「海未ちゃん?時には休む事も大事やろ?それで体を壊したら元も子もないんやから」
海未「分かりました。では、明日は一日大人しくしています」
絵里「うん、そうして。それだけで大分違うと思うわ。皆んな、自分の事となると中々気が付かないものだから。お互い声を掛け合って行きましょう!」
海未「はい!ありがとうございます」
絵里「うん」
えりちは仲間の事をよく見てる。でもな、さっき自分でも言っていたけどな。えりちは自分の事となると中々気がつかない。
海未「所で絵里…あの…このタイミングで大変言いにくいのですが…」
絵里「何?どうしたの?」
海未「ずっと言おうと思ってたのですが…練習着を裏返しに着てませんか?」
絵里「え?嘘?もしかして、練習中もずっと?」
希「うん」
絵里「気が付いてたの?だったら教えてよ。イジワル…」
練習終わってから家の事やって勉強もしてと。
海未「もしかして、絵里も疲れが溜まっているのでは?」
多分そうやろうね。えりちも中々自分の事は客観視出来ないみたいや。
えりちは頑張り屋さんなんよ。時々、頑張り過ぎて空回りしてしまう時もあるくらいなんやから。
希「な~、せっかくお泊りしてるんやから勉強はもうええんやない?」
にこ「そうよ。勉強なんていつでも出来るじゃない」
絵里「ダメよ。一応私達三年生なのよ?そもそも勉強会って名目でお泊り会をしてるんだから。にこなんて留年しても知らないわよ?」
にこ「だ、大丈夫よ」
真面目なんやから。まっ、そこがえりちの良い所なんやけどな。
にこ「ね~、本当にさ~。もういいじゃない」
絵里「はあ、分かったわよ。で?何するの?」
にこ「え?いや…何って言われると」
絵里「何よ?何もないの?」
にこ「だって…」
希「ゲームでもする?一応あるけど」
絵里「ゲームって…テレビゲーム?」
希「うん」
にこ「いいじゃない!たまにはそう言うのも」
絵里「でも…私、テレビゲームとかやった事ないわ」
えりちは頑張り屋さんなんよ。頑張り屋さんで…結構負けず嫌い。結構って言うか…。
絵里「もう一回。もう一回よ」
にこ「いや…もう眠いんだけど」
絵里「やっと操作の仕方が分かって来たの。後何回かやれば勝てるはずだから」
自分が勝つまでやめない。どんだけ負けず嫌いなんや。しかもタチが悪いのが。
にこ「え?負けた…」
絵里「やったわ!ねえ、希!やっと勝てたわ!」
希「良かったなぁ」
結局、上達しちゃうし。
絵里「さあ、希!今度はあなたの番よ!負けないから」
希「え?まだやるん?」
絵里「もちろん!」
にこ「もう…にこは寝るから」
そして結局ウチが付き合わされる。
えりちは頼り甲斐があるんよ。下級生からはもちろん同級生からも一目置かれてるみたい。
ことり「ん~…困ったなぁ」
穂乃果「どうしたの?」
ことり「あのね、新しい衣装を作らなきゃと思って部費と照らし合わせてたんだけど…予算が合わなくて」
穂乃果「え?足りない感じ?」
ことり「うん。足りると思ったんだけどなぁ」
絵里「ねえ?計算が間違ってる可能性はない?」
ことり「でも…パソコンで自動的にやってるみたいだけど…」
絵里「表計算ソフトを使ってるんでしょ?もしかしたら数式が間違ってたりそもそも打つ場所や文字が間違ってる可能性もあるかもしれないわ」
ことり「え?そうなの?私、パソコンとか全然詳しくないから」
絵里「誰でも最初はそうよ。ちょっと待っててね。確認するから」
カタカタ
絵里「やっぱり。ここが間違ってたのね。ことり、大丈夫よ!」
ことり「ありがとう絵里ちゃん」
穂乃果「凄いね、絵里ちゃん!パソコン詳しいんだね」
絵里「ん~詳しいって言うか…」
穂乃果「って言うか?」
勉強したんやもんね?生徒会に入ったからにはパソコンくらい使えなきゃって。頼り甲斐があるのは裏で努力してるから。
ガチャ
にこ「あちゃ~。急に雨が降って来たんですけど」
穂乃果「うわっ!?ずぶ濡れだ…」
花陽「うぅ…天気予報では晴れって言ってたのに」
絵里「大変。風邪引いちゃうわよ。ちょっと待ってて」
ゴロゴロゴロ
パチっ
にこ「え?停電?」
絵里「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
ドンガラガッシャン
穂乃果「え?な、何?」
にこ「なんか嫌な音が…」
パチっ
穂乃果「あっ!点いた!」
絵里「希…希ぃ…」
希「えりち…痛い痛い…もう点いたって」
絵里「え?あっ…ゴホン。さて…」
頼り甲斐があるえりちやけど暗いのが苦手なのは…もう皆んな知ってるから誤魔化さなくてもいいと思うんやけど。
にこ「あーーーーーっ!!?パソコンがぁぁ」
絵里「え?ああ…」
まあ、これ以上ファンが増えても困るしね。
えりちは危ういんよ。
絵里「ふう。希も結構忘れっぼいわよね。教室にスクールバックを忘れるなんて」
希「いや~、あはは」
絵里「おかげで すっかり暗くなっちゃったわ」
希「夜道は怖い?」
絵里「バカ言わないで。これくらいは平気よ」
希「ふ~ん。そっか」
絵里「そうよ」
希「ワザとやったりして」
絵里「何が?」
希「忘れ物したの」
絵里「へ~、そう」
希「うん。今日みたいな日はちょっと長く一緒に居たかったりして」
絵里「知ってたわよ」
希「知ってた?」
絵里「気がついてたもの。最初から」
希「は?ちょっ…最初からって?」
えりちは危うい…いや、危ういのは 私 の方みたい。
完
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