未央「そういう発言は正統派の人達に迷惑がかかるからやめたほうがいいと思うよ」

凛「まるで私がイロモノみたいな言い方だね」

未央「ん？そう言ってるんだよ？」

凛「でも実際、皆自分のプロデューサーの匂い嗅いだら好きな匂いだなって思うよきっと」

未央「そもそもクンカーの資質がある人しか、意識的に好きな人の匂い嗅いだりしないってば」

凛「そうかなあ。私とか志希とかはまぁ、生まれつきだって言われても仕方ないけどさ。美嘉とかは後天的っぽくない？」

未央「あー……。言われてみれば？」

凛「そう。女の子は誰しもが潜在的クンカーなんだよ。私は他の人より早く目覚めただけ」

凛「だから私がプロデューサーの上着を拝借するのは何もおかしくない。OK？」

未央「自分を正当化しているようにしか聞こえないなぁ」

凛「はぁー。未央はまだ目覚めてないからそんな風に言えるんだよ。一回未央も自分のプロデューサーの匂いを嗅いでみてよ。そしたら私の言いたいことが分かるはずだから」

未央「えぇー？」

凛「丁度そこに未央Pさんの上着かけてあるしさ。ほら、ぐいっと」

未央「いやいやいや。そもそも人の上着勝手に嗅ぐとか道徳的にダメだからね？」

凛「私も最初は罪悪感があったけど、最終的には屈したよ」

未央「屈するなぁ」

凛のP「おーい、凛。帰るぞー」

凛「あ、来た」

りP「ん？未央ちゃんもまだ事務所に居たのか。どうする？未央ちゃんも送ろうか？」

未央「あ、大丈夫です、うちのプロデューサーが送ってくれるんで」

りP「そっか。じゃあ行くぞ凛」

凛「うん。じゃあね、未央」

未央「ばいばーい」

未央「うちのプロデューサーは遅いですなぁ……」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

未央（いつもの感じからして、事務所に戻ってくるまで後十五分くらいかな……）

未央（十五分間、一人きり）ﾑﾗｯ

未央「……」ﾁﾗｯ

未央のPの上着『……』

未央（ちょっと嗅ぐくらい……いいよね？）ｽｯ

未央（大丈夫大丈夫。別にこれはプロデューサーの匂いに興味あるとかじゃないから。そりゃ悪い匂いはしないと思うよ？でもしぶりんみたいにはならないよ絶対）ﾋﾗｯ

未央（しぶりんの馬鹿げた言葉を未央ちゃんが直々に証人となってありすちゃんよろしく論破してやろうってだけだから。他意はないから大丈夫）ﾊﾞｻｯ

未央「未央ちゃんは　ノットクンカー　普通の子　っと……」ｸﾝｸﾝ

未央「……」ｸﾗｯ

未央「……」

未央「……」ｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝ

未央「あぁ……プロデューサーの匂い好き……」ｸﾝｸﾝ

みP「遅くなったな。さぁ帰ろうか未央」ｶﾞﾁｬｯ

未央「！？」

みP「！？」

未央「ププププロデューサー！？あれ！？来るの早くない！？」

みP「いや、いつもこれくらいだけど……？」

未央（……じゃあ私、十五分間もトリップしてたの！？ヤバない？？？）

みP「えっと……嗅いでた、のか？その上着」

未央「か、嗅いでました……」

みP「……」

未央「……」

みP「……あの、とりあえずその上着返してくれないか」ｽｯ

未央「えっ、やだ……」ｻｯ

みP「えっ」

未央「あっ」

未央「う、嘘嘘！返す返す返します！」ｼｭﾊﾞｯ

みP（未央のさっきの表情……とても寂しそうだった……）

みP（思えば、自由奔放な性格とは裏腹に、未央からわがままらしいわがままを聞いたことがない）

みP（俺を困らせないように必要以上に遠慮してきたんだろう。そんな未央が初めて見せたわがままなんだ）

みP（それなら俺はプロデューサーとして……いや、一人の大人として）

みP「やだ……っていうなら仕方ないな。その上着は貸してやるよ」

未央「え……や、やったぁ！」

未央「プロデューサーありがとう！」ｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝｸﾝ

みP（やっぱ止めさせた方が良かったかなぁ）

みP「ほら、そろそろ帰ろうぜ」

未央「後五分……」ｸﾝｸﾝ


りP「まったく、事務所にスマホ忘れるなんて凛はおっちょこちょいだなぁ」ｶﾞﾁｬｯ

凛「いいじゃん別に……」ﾋﾟﾀｯ

未央「あっ」ﾋﾟﾀｯ

凛「あっ」

未央「……」

凛「……だから言ったじゃぁーん！」ﾋﾞｼｨｯ

未央「うぐ……」

凛「ほらね！？ほらねぇぇえ！？良いでしょ！？病みつきになるでしょ！？」

未央「はい……なります……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

凛「ふぅ……ま、分かればいいんだよ分かれば。じゃあクンカーのグループに招待しとくから。これからはクンカー同士、協力して上着を拝借していこうね」

りP「渋谷ちょっとこっち」



　　－おわり－