みほ「結婚してないの……私だけ」 (89)

居酒屋

佐織「あ、みぽりん! こっちこっち」

みほ「あ、みんな久しぶり。ごめんね遅れちゃって……仕事なかなか終わらなくて」

優花里「西住殿もお仕事お疲れ様です。さ、仕事の疲れを癒すためにもじゃんじゃん楽しんじゃいましょう」

華「それじゃ全員揃いましたし早速注文しましょうか」

みほ「あ、待っててくれたんだ。別に先に注文していても良かったのに」

佐織「みぽりんならすぐ来るって分かってたし。それにやっぱり五人揃ってのアンコウチームだからね!」

みほ「佐織さん」パァー


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麻子「こうしてみんなと話していると何だか昔に戻ったみたいだな」

華「そうですね。なんだかんだで私たち五人全員が揃うことはなかなかありませんでしたから」

みほ「私と優花里さんはたまに会ってたけどね……あとは佐織さんとはこの前一緒に話したかな」

佐織「うん。でもやっぱりみんなで集まりとなると新鮮だなぁ」

麻子「本当はいつでも集まれれば良いんだが……私も仕事とか……旦那の面倒を見るので忙しいしな」

華「そうですね……私も子供の面倒とか見るので忙しくてなかなか会えず申し訳ないです」

みほ「あはは……仕方ないよ。社会人になると自由な時間って減っちゃうもんだし」

佐織「だよねー。……私も最近育児とかで忙しいし」

麻子「しかし佐織が結婚できるとは意外だったな。てっきり婚活戦士にでも成り果てると思っていたんだが」

佐織「あー麻子ってば酷い! っていうか婚活戦士ってなに!?」

みほ「佐織さんが一番結婚するの速かったよね」

佐織「そりゃ結婚に向けて色々準備してきたからね! 何たって憧れのウエディングドレスだったもん」

優花里「武部殿のウエディングドレス姿とても素敵でした」

佐織「やだもー! そんなこと言ったら優花里さんだって来月頃には結婚するんでしょ?」

麻子「確か秋山さんの彼氏も戦車が好きだったんだな」

優花里「そうなんですよ! それで意気投合してしまいまして!」

華「戦車が好きな殿方って何だか珍しいですね」

優花里「それだけ戦車道が魅力的ってことです」

みほ「結婚式の日取りが決まったら教えてね。私も予定空けておくから」

優花里「西住殿わざわざありがとうございます! なるべく結婚式の日取りはみんなが集まりやすい日にしようかと思ってまして」

みほ「これでアンコウチームのほとんどが結婚することになるんだね」

沙織ですね笑 誤字ってましたすみません汗


沙織「そういえばみぽりんは好きな人とかいる? 職場で気になる人とか」

みほ「え? うーんそんなのはいないかなぁ。まだ好きな人とか出来たことないし」

華「好きな人がいない? えっとそれは今まででということでしょうか」

みほ「うん。あ、でも一人だけ気になる人がいるよ……」

優花里「西住殿の気になる人ですか! 誰なんですか?」

みほ「ボコ!」

沙織「……何でだろうそんな気がした。もーダメだよみぽりん……クマだけじゃなくて人間も好きにならないと」

みほ「勿論みんなのことは好きだよ。でも恋愛感情? みたいなのはボコだけかなー」

華「ある意味西住さんらしいですね」

麻子「実際、恋なんてふとしたキッカケでやってくるもんだ。無理に作ろうとしても録なことにならない」

麻子「今の旦那も……その……」ゴニョゴニョ

沙織「おお……麻子が赤くなるなんて! でもそうだよね。無理して付き合っても自分にとっても相手にとっても悪いことだしみぽりんにもきっと好きな人が出来るよ」

みほ「あはは……」

みほ(好きな人かぁ……)

みほ(沙織さんは気にする必要ないって言ってくれたけど)

みほ(みんなはもう結婚してるんだよね)

みほ(あれ……私だけ結婚してない?)

みほルーム

みほ「結婚かぁ」ゴロン

みほ「お姉ちゃんがした時に少し考えたことはあるけど」

みほ「人を好きになるって感情……よく分からない」

みほ「……でも寂しいって感情はあるんだよね」

ボコ「オイラボコダゼー」

みほ「あはは……そうだよね。私にはボコがいるもんね……一人じゃないのに寂しいだなんて変な話だよね」

みほ「喋るボコぬいぐるみ。愛里寿ちゃんからの贈り物……だけど」

みほ「最近の愛里寿ちゃんは何だかボコ愛が足りない気がする」

みほ「前までは限定品ボコとかにお金を躊躇いなく使ってたのに……最近では彼氏のためとか言って全然お金を使わなくなったし」

みほ「前に部屋にお邪魔した時もボコグッズが片隅に追いやられてた。あれじゃボコが可愛そうだよ」

みほ「確かにボコは五年前に放送が終了しちゃったけど」

みほ「放送が終了しても私たちのボコ愛は不滅だよって約束したのに」

みほ「なんだかみんな大人で私だけが子供のまま取り残されてるみたい」

みほ「よくよく考ると周りの人はもうみんな結婚してるんだよね」

みほ「もうこの歳だから当たり前なんだろうけど」

みほ「あーあ……嫌なこと考えたらもっと落ち込んじゃうなぁ」

みほ「あんまり考えすぎるのは良くないよね眠れなくなっちゃうし」

みほ「……」

みほ「おやすみ……ボコ」




みほ「……食パン美味しい」モシャモシャ


みほ「ボコ……行ってくるね」ガチャ


みほ(会社もずっと同じことの繰り返し)ガガガ

みほ(本当……私……どうして生きてるんだろう)ガガガ

みほ(本当は分かってる)

みほ(優花里さんは理髪店だし、麻子さんも仕事大変そうだし……忙しいのは私だけじゃないんだよね)ガガガ

みほ(なのになんでみんなは頑張れるのかなぁ)

みほ(やっぱり好きな人がいる……から?)

みほ「お疲れさまでしたー」

みほ(朝に出勤して終わるのは夕方過ぎ。帰宅時間も合わせると自由な時間なんて……)

みほ「さて夜ご飯買いにいかないと」

みほ「うわー! このお弁当美味しそう! やっぱり働いた後のお弁当は最高だよね……ついでに明日のお昼御飯の分も買っちゃおうと」ワクワク

みほ「えへへー今日は沢山お弁当買っちゃった。いつもこの時間だと美味しいお弁当入荷してなくて買えないんだよねー」ホクホク

???「やぁ」

みほ「きゃっ!? って貴方はえっと継続の」

ミカ「覚えていてくれたんだね」

みほ「あ、あの……どうしてここに」

ミカ「風に誘われてね」ポロローン

みほ「??」

ミカ「そのお弁当がね語りかけて来るんだ。僕を食べて欲しいってね」

みほ「えっと……つまりお腹空いてるんですか?」

ミカ「……」ポロローン

みほ「よ、良かったらウチに来ませんか? お弁当多めに買ってますしこんな場所で食べるのも寒いですし!」

ミカ「ありがとう……大洗の隊長が優しい人で良かったよ」

undefined

みほルーム

みほ「どうぞ寛いで下さい。あ、お酒とかって飲みます?」

ミカ「どんなものがあるんだい?」

みほ「えっとチューハイしかないです。ビールはあんまり美味しくなくて」

ミカ「じゃあ頂こうかな」プシュ

みほ「なんだか友達が部屋に来たの……久しぶりかも。高校を卒業して大学生になってからそこまで親しい人出来なかったから」

みほ「あ、迷惑ですよね……勝手に友達扱いなんてされても……すみません」

ミカ「謝る必要なんてないよ。友達という言葉が大切とは思えないけどね。でも貴方がそれで嬉しいと感じるなら友達それも良いのかも知れないね」

みほ「そ、それって私と友達になってくれるってことですか?」

ミカ「そんなに難しく考える必要はないよ。貴方がそう感じればそれはもう友達になれたってことなんじゃないかな」ポロローン

みほ「ミカさん……ありがとうございます。え、えっとそれじゃ……ミカさんも良ければみほって呼んでください」

ミカ「……え?」

みほ「その……ずっと貴方だと呼びにくいと思うので……あ、でもやっぱり……馴れ馴れしすぎましたかね」シュン

ミカ「そ、そんなことないよ。みほ……誰かを名前で呼ぶ……それが久しぶりで驚いたんだよ」

みほ「あれ……あのミッコさんやアキさんたちは」

ミカ「世の中には思い通りになってくれない相手の方が多いんだよ。アキもアッコも遠い世界に行ってしまった」

みほ「そ、それって死んだってことですか!?」

ミカ「ん? 単純に結婚しただけだよ」

みほ「ええっ!?」

ミカ「二人には好きな相手が出来てしまってね。途中から旅に一緒に来てくれなくなってしまったんだ」

みほ「この歳ですからね……私の周りもみんな結婚しちゃってて」

ミカ「みほは結婚しないのかい」

みほ「好きな人がいればしたいですけど……やっぱり実感が沸かなくて……ミカさんは結婚してるんですか」

ミカ「結婚に意味があるとは思えない。無理して相手を好きになる必要も好きになってもらう必要もないんじゃないかな」

みほ「それはそうかもですけど……やっぱり一人だと寂しいですし」

ミカ「寂しいのは悪いことなのかな?」

みほ「悪いかどうかは分かりませんが……辛いです。昨日同窓会で久しぶりにアンコウチームの皆さんと出会ったんですけど……」

みほ「みんな好きな人と結婚してその人のために働いて生き生きしてたんです」

みほ「みんな幸せで友達の幸福は嬉しいはずなのに不思議と取り残された気がして」

みほ「みんな大人になっていくのに私だけ子供のままなんだなって」

ミカ「大人になれば良いってもんでも無いんじゃないかな?」

みほ「それはそうですけど」

ミカ「大人も子供も大きな違いあるとは思えない。精々違いがあるとしてもお酒を飲めるかどうかくらいのものさ」

みほ「ミカさん……」

みほ(なんだろう。ミカさんといると何だか安心する)

みほ(大洗にいたときのあの私だけの戦車道を進んでた頃を思い出す)

みほ(あの頃は大変なこともあったけど毎日が充実してて)

みほ(どうしてこんなことになっちゃったんだろう……)

みほ「私……ミカさんがちょっと羨ましいです」

ミカ「私がかい?」

みほ「何て言うんだろう。自由な感じが憧れます。私なんていつも仕事のことでウジウジ悩んじゃって」

みほ「私……不器用だからお仕事いっぱいミスしちゃって……そのたびに落ち込んじゃって」

みほ「私もボコみたいに頑張らなきゃって思ってでも辛くて……」

ミカ「みほ……」

みほ「は、はい」

ミカ「仕事……それは人生にとって大切なことなのかな?」

みほ「……それどういう意味ですか」

ミカ「働くことに意味があるとは思えない」ポロローン

みほ「……そんなの分かってます。私だって本当は……働きたくなんて」グズッ

ミカ「……え、あの……」

みほ「でも仕方ないじゃないですか! ボコのグッズだって電気代だってそのお弁当だって……全部働かないと手に入らないんですから!」

ミカ「」

みほ「なのに意味なんて考えたら……考えたら本当に無くて……私の仕事も人生もみんな何も……」

みほ「どうせ私の人生に意味なんて……」

ミカ「みほ……ごめん」

みほ「あ……こっちこそすみません。何だか悪酔いしちゃったみたいで」

みほ「ただ本当に分からなくなっちゃって……みんなはちゃんと理由や目標があって働いてると思うんです」

みほ「でも私には何もない。ただ生きてるだけ……そんな気がして」

みほ「ミカさんの言う通りなんです。きっと私の人生に意味なんて無いんです」

みほ「だから謝らないで下さい。ミカさんの言ったこと事実ですから」

ミカ「……みほ」

みほ「あはは……ごめんなさい。こんな空気気まずいですよね。そうだ気分転換の為にもテレビでも見ーー」

ミカ「待ってみほ……少し話を聞いてほしい」

みほ「……はい」

ミカ「人生に意味がないならこれから見つければ良いんだよ」

みほ(そんな当たり前なこと言われても……それが出来ればこんなことになってないよ)

みほ(でもミカさんも元気付けようとしてくれてるんだしとりあえず合わせておかないと)

みほ「あはは……そうですよね。ありがとうございます」

ミカ「無理に合わせる必要なんてないんだよ。今の言葉で変わるほど人生ってものは単純じゃないからね」

みほ「……だったらどうすれば良いんですか」

みほ「戦車道はもう辞めちゃったしボコがいても寂しさは紛れるけど満たされない……なのにどうやって意味を見つけろって言うんですか」

ミカ「それならその……私はどうだろうか」

みほ「…………?」

ミカ「…………私の為に生きるっていうのも悪くないんじゃないかな」

みほ「え? ミカさん…………それってこ、告白ですか」ドキドキ

ミカ「運命のドアも玄関のドアも開ける鍵穴は小さいものなんだよ。私で良ければ運命のドアを開けさせてはくれないかい」

みほ「えっ…………あ……でも私たち女の子同士だし」テレテレ

ミカ「女の子同士……それはそんなに大切なことなのかな?」

ミカ「生き物にとって自然に振る舞うことはとっても大切なことなんだよ」

みほ「……ぁう」カァァ-

ミカ「好きだよみほ。君の意見も聞かせて欲しいな」

みほ(す、凄くドキドキする! ええっと確かにミカさんは魅力的な人ではあるけど……そんな簡単に了承しちゃっていいのかな)

みほ(でもこんなに胸が高鳴ったの初めてかも。他の人と接するときはこんな気持ちならなかったのに)

みほ(これが恋……なのかな。まだ正直分からないけど)

みほ(私はこの気持ちを信じたい)

みほ「あ……えっと私でいいなら……よ、よろしくお願いします!」

一ヶ月後

みほ「んんっ……もうこんな時間か…………朝ごはん食べないと」

みほ「あれ? 朝ごはんにとって置いたお弁当は……」

みほ「もしかしてミカさん?」

ミカ「…………」ポロローン

ミカ「夜中にね……語りかけて来たんだ。コンビニ弁当が僕を食べてってね」

ミカ「みほ風に言うとモグモグ作戦……になるのかな?」

みほ「あはは……夜中にお腹が空いちゃったんですね。ですが問題ありません。ちゃんとそういう自体も考慮してじゃーん!」

みほ「ちゃんと別の場所にもう一つ別のお弁当を隠しておきました」

みほ「昨夜食べたのはダミーのお弁当というわけです」

みほ「ということで頂きます。あ、ちゃんとミカさんの分もありますから」

ミカ「みほが優しくて助かったよ」

みほ「そ、そんな優しいだなんて」テレテレ

ミカ「みほのコンビニ弁当とても美味しかった。もう一つ貰ってもいいかな」

みほ「だ、ダメです。昨日はそれで朝ごはん食べられ無かったんですから!」

みほ「というわけでこれは食べちゃいます」モグモグ

みほ「えへへ……でもこうして毎日誰かと食べられるのって何だか幸せかも」

ミカ「私も幸せだよ。こうして毎日コンビニ弁当を食べられるからね」

みほ「あはは……」

ミカ「勿論みほと一緒に居られるのも幸せだよ」

みほ「わ、私もです」テレテレ

ミカ「ところで仕事の方は大丈夫なのかい? もう時間が大分と経っているよ」

みほ「あ、本当だ。それじゃ行ってきますね。あ、お昼ご飯は冷蔵庫にコンビニ弁当が入ってるから」タタタッ

みほ(ミカさんと一緒に暮らすようになって一ヶ月か…………)ガガガ

みほ(正直最初はこの気持ちが恋かどうか分からなかったけど)

みほ(今なら確信できる。これが恋だってこと)

みほ(ミカさんと出会うまでは仕事も辛いとしか考えられなかったけど)

みほ(今ではミカさんの為に頑張ることが出来る)

みほ(確かに女の子同士でこんな関係は珍しいのかも知れない)

みほ(でもミカさんといると勇気が貰えて……)

みほ(ミカさんまではいかなくても私ももっと自分に素直になれる気がする!)

みほ「お疲れ様でした!」

みほ「ただいま。今日もお弁当買ってきたよ」

シーン

みほ「あれ? ミカさん?」

みほ(いつもはカンテレで返事してくれるのに)

みほ(お風呂でも入ってるのかな?)

みほ「ミカさん? お風呂なの?」キョロキョロ

みほ(お風呂にもいない)

みほ(部屋に荒らされた痕跡はないし靴箱にミカさんの靴がない)

みほ(ってことはミカさんが一人で出ていったってことだよね)

みほ(一人で…………出ていった)

みほ(もしかして私のこと嫌いになって逃げちゃったのかな)

みほ「そ、そんな……ミカさん」ポロポロ

みほ「ミカさんがいないと…………私」

ミカ「みほ……帰って来てたんだね。丁度良かった今日みほの為に……みほ?」

みほ「え? あ……ミカさん? 帰って来てくれたんだ」グズッ

ミカ「……何かあったのかな?」

みほ「家に帰ったらミカさんがいなくて……それで寂しくなって気がついたら」

ミカ「悲しむ必要なんてないんだよ。心配する必要もない。だって私はずっとみほと一緒なんだからね」

みほ「う……ううっ…………ミカさん」

ミカ「おいで……私はどこにもいったりしないよ」

みほ「ミカさん」ギュッ

ミカ「よしよし」

みほ「ところでミカさんはどこに行ってたんですか?」

ミカ「これ……今日は私たちが付き合って一ヶ月だからそのお祝いにと思ってね」

みほ「あ……マカロンのセットだ!」

ミカ「みほに貰ったお小遣いが無くなってしまったけどね」

みほ「そんなのいいよ……こんなの貰えると思ってなかったから……嬉しい」

ミカ「でも結果的にみほを泣かせてしまったね」

みほ「それは私が泣き虫だから…………」

ミカ「だとしてもみほを不安にさせてしまったのは事実だよ。だからごめんね」チュ

みほ「ふぇ!? え、き、キス!?」アタフタ

ミカ「初めてだけど悪いもんじゃないね」ポロローン

みほ「あ……ああ」

ミカ「これで元気になったかな?」

みほ「う……///ミカさんずるいです」アタフタ

みほ「で……でもまだちょっとだけ落ち込んでるから」

みほ「だから今度はその額じゃなくて……唇に」

ミカ「みほ……良いんだね」

みほ「は、はい。初めてですけど……ミカさんに奪って欲しいんです」

ミカ「みほ……可愛いよ。ほら目を閉じーー」

プルルルルル! プルルルルル!

ミカ「」

みほ「」

ミカ「電話に出る必要があるとは思えない」

みほ「で、でも友達からかも知れないし……大事な要件かも知れないから」

ミカ「……分かった。君の判断に従おう」

みほ「あの……もしもし?」

まほ『ああ……すまない。今忙しかったか?』

みほ「あ、お姉ちゃん? ううん……今丁度仕事から帰って来たところ」

まほ『そうか……その……別にこれといった用事は無いんだがな。ちょっと心配になって』

みほ「心配?」

まほ『ほら……お前は一人で溜め込み過ぎることがあるから。無理してるんじゃないかって』

みほ「あはは……無理なんてして……きゃっ!?」

まほ『??』

みほ「も、もう……息吹きかけないで下さい!」

ミカ「電話が少し長いようだからね。からかいたくなったんだ……それで誰からの電話なのかな?」

みほ「お姉ちゃんから最近どうだって……」

ミカ「お姉さんもみほのことが心配なんだね」

みほ「うん……ってそうだ。早く電話でないと……もう悪戯しないでくださいね」

まほ『……みほ?』

みほ「あ、ごめんね。ちょっと電話中に転んじゃって」

まほ『転んだ!? 怪我はないのか?』

みほ「大丈夫! 全然問題ないから! それで何の話だっけ」

まほ『ん? ああ……その私もお母様もお前のことを心配している。だから仕事で忙しいかも知れないが時間があれば帰ってこい』

みほ「……」

みほ(お姉ちゃんは私と違って戦車道のお仕事をやってるんだよね)

みほ(結婚相手は西住流を継ぐものとしてお母さんが決めたらしいけど)

みほ(でもその結婚相手も良い人で今では子供もいて幸せそう)

みほ(当時はそんなお姉ちゃんが眩しくてなるべく会わないようにしていたけど)

みほ(今ならミカさんがいてくれるから……)

みほ(でも女の子同士の恋愛だから……もし困らせちゃったらどうしよう)

みほ「あ、あのね……お姉ちゃん」

まほ『なんだ?』

みほ「私ね……昨日友達と会っちゃったんだけど」

まほ『ん? ……ああ』

みほ「その娘ね。好きな人が出来たみたいなの。でもその好きな人っていうのが……同性みたいで……そういうのってどうなんだろう」

みほ「応援してあげるべきだと思う?」

みほ(思わず嘘着いちゃった。でもどうしてもお姉ちゃんの気持ちを確認しておきたいから)

まほ『私は同性だろうと構わないと思っている』

まほ『恋愛で大切なのは性別ではなく心だ。好きって感情が本物だったら……私は応援するよ』

みほ「そ、そうなんだ」

みほ(そっか……お姉ちゃんは同性同士でも気にしないんだね)

みほ(だったら勇気を出して言ってみようかな。いずれはちゃんと紹介しなくちゃだし)

みほ「実はね……お姉ちゃんに紹介したい人がいるんだ」

まほ『……紹介したい人? そうか……みほも遂にそういう人が出来たんだな』

みほ「え、えへへ」

まほ『なら熊本に帰ってくるのか?』

みほ「うん。すぐには無理だけど何とか休暇を取って帰省するよ」

まほ『分かった。みほがどんな人を紹介するのか楽しみに待ってる』

みほ「うん……じゃあね」ガチャリ


まほ「ああ……また」ガチャリ

まほ「そうか……みほもようやく大切な人と巡り会えたんだな」

まほ「お前が選んだ相手だ。例えどんな人が相手だろうと否定はしないよ」

まほ「それが同性同士であっても」

まほ「とはいえ……私はともかくお母様は……」

まほ「そこはみほの相手に期待だな」

みほ「というわけで熊本に行こうと思うんだけど……ミカさんも来てくれますか?」

ミカ「わざわざ実家に行く必要ないんじゃないかな」

ミカ「どのみちこの国では同性婚が認められてないからね」

ミカ「逆に言えばわざわざ両親と会いにいく必要がないってことさ」

みほ「確かにそうかも知れませんが……でも私は家族に認められたいんです」

みほ「そ、それにミカさんが素敵な人ってちゃんと分かって貰いたいですし」カァァ

ミカ「私としては両親と会わずに二人でのんびり過ごしたいんだけどね」

ミカ「でもみほがそこまで言うなら……私も行こう」

みほ「ミカさんありがとう! 大好きです!」ギュー

ミカ「ふふっ……みほは甘えん坊だね」ナデナデ

みほ「えへへー」

みほ(でも家族に紹介するってことはお母さんにも会わせないといけないんだよね)

みほ(お母さん……私たちの関係認めてくれるかな)

ミカ「どうしたんだい暗い顔をして……やっぱりお母さんに会うのが不安なのかな」

みほ「っ!? なんで分かるんですか」

ミカ「西住流ぐらい私も知っているよ。その家元となると厳しい人だろうからね」

みほ「……凄いですね。ミカさんは私のこと何でも分かっちゃう。私……不安なんです。お母さんに怒られたら別れるように言われたらどうしようって」

ミカ「みほ……聞いて」

ミカ「私たちは愛し合っている……そうだろう?」

みほ「はい。私はミカさんのこと大好きです」

ミカ「大切なのはそれだけだよ。他人のことなんて気にしなくてもいいのさ」

ミカ「だから家元に認められようと認められなくても私たちの関係は変わらないよ」

みほ「ミカさん……かっこいいです」キラキラ

西住本家

みほ「い、いよいよですね」ギュ

ミカ「そうだね。大丈夫不安がる必要なんてないんだよ」

みほ「うん……」ガチャ

みほ「お母さんお姉ちゃん……今帰ったよー」カチコチ

まほ「お帰り……みほ」

みほ「お姉ちゃん」

まほ「ふふっ……家族に会うだけなんだ。そんな緊張しなくても構わないさ」

みほ「あはは……そうだよね」

まほ「それで隣にいる人がみほの好きな人?」

みほ「うん。お姉ちゃんも会ったことあるよね……継続高校のミカさんだよ」

ミカ「久しぶりだね。黒森峰の隊長」

まほ「隊長は昔の話だ。普通にまほと呼んでくれて構わない。何ならお姉ちゃんと呼んでくれても構わないぞ」

みほ「お姉ちゃん!?」

まほ「ふふっ……冗談だ」

ミカ「今日のまほさんは機嫌がいいね」ポロローン

まほ「実はずっと心配してたんだ。みほは引っ込み思案なところがあるからな……ちゃんと相手が出来るかどうか」

まほ「だから……ミカさん。みほを好きになってくれてありがとう。私は二人とも幸せになって欲しいと願っている」

ミカ「大丈夫。必ず幸せにして見せるよ」ポロローン

みほ「私もミカさんと出会ってようやく恋って感情を知ることが出来たの……だから絶対に幸せになる!」

まほ「分かった。だがここからはそう簡単には行かない」

まほ「お母様は私と違って機嫌が良かろうと悪かろうと厳しい態度を取るだろう」

まほ「それでも二人には自分の意思を示して欲しい」

ミカ「私は初めからそのつもりだよ。これは私たちの人生だからね。他の人に縛られたりはしないってことさ」ポロローン

まほ「では……案内しよう」

まほ「お母様……失礼いたします」スーッ

まほ「みほとその婚約相手を連れてきました」

しほ「そう。上がって頂いて構いません」

まほ「だ、そうだ」

みほ「失礼……します」

ミカ「……」ポロローン

ミカ(なるほど確かに厳しそうな人だね)

しほ「良く帰ってきてくれましたね……みほ」

みほ「う、うん」

しほ「まほから話は聞いています。この娘が貴方の好きな相手ですか」

みほ「うん……ミカさんは私が落ち込んだ時慰めてくれてとても優しくて……初めてずっと一緒に暮らしたいって思えた人なの」

みほ「だから私……ミカさんと結婚するつもりだよ」

しほ「そう。でも日本では未だに同性婚が認められていません」

しほ「それは貴方も分かっているはずです。昨今では些か価値観が寛容になったとはいえ世間からは冷たい目で見られることでしょう」

しほ「それでも貴方はミカさんを愛し続けることが出来るのですか」

みほ「ミカさんに出会う前の私だったら出来なかったと思う」

みほ「いつも人の目を気にして他の人とは違う行動を取っちゃわないかって不安でビクビクしてた」

みほ「でもね……ミカさんはそんな私に自分らしくある素晴らしさを教えてくれたの」

みほ「だから……ミカさんと離れるつもりはありません!」

しほ「みほの話は分かりました。ではミカさん今度は貴方に聞きたいことがあります」

ミカ「はい」

しほ「まず貴方はみほを幸せにする覚悟がありますか」

ミカ「覚悟があれば良いってものでもないんじゃないかな」

しほ「」

ミカ「…………」ポロローン

しほ「つまり娘を幸せにする覚悟がないと?」

ミカ「覚悟があれば良いってもんじゃない。幸せは風の気まぐれだからね」

しほ「」

ミカ「…………」ポロローン

しほ「分かりました。とりあえずその話は置いておきます」

しほ「二人で幸せになるにはお金も必要になります」

しほ「みほもそれなりに働いてはいますがこれから年を重ねていく上で一人では賄えない部分も出て来るでしょう」

しほ「二人で支え合っていく為にも聞いておきますが……貴方はどのようなお仕事を?」

ミカ「仕事をすることに意味があるとは思えない」

みほ「ミカさん……カッコいい」キュンキュン

まほ「…………」アワアワ

しほ「」

ミカ「…………」ポロローン

しほ「貴方は……仕事をしていないと?」

ミカ「人生ってのはね。何も仕事をすることだけが正しいってわけじゃないんだよ」

ミカ「人生で大切なのはどれだけ自分に正直で生きていくことなんだ」ポロローン

みほ「お母さんも心配しないで……ミカさんは私が養ってみせるから!」

しほ「」

しほ「ミカさん……二人だけで話したいことがあります。他の二人には出ていくように」

みほ「え……二人だけ。そんなミカさんと離れるなんて……」

まほ「きっとお母様もみほが居ては話せないことがあるんだろう。ここは大人しく従おう」

ミカ「大丈夫。私一人でもやってみせるよ」

みほ「うん。……私信じてるから……何かあったらそのカンテレで連絡してください」

ミカ「了解」ポロローン

まほ(たかがお母様と話すぐらいで大袈裟な)

まほ(い、いや大袈裟とも言えないな)

まほ(お母様……ミカの発言にすっかりご立腹だ)

まほ(何とか隠密に終われば良いが)

ミカ「それで私に話したいことっていうのは何かな?」

しほ「分かっているはずです」

ミカ「……?」

しほ「単刀直入に言います。ウチの娘と別れて下さい」

ミカ「それはみほが決めることだよ。お母様である貴方が決めることでは無いんじゃないかな?」

しほ「確かにこれは親の傲慢かも知れませんね。ですが貴方は西住流にふさわしくないと判断しました」

ミカ「元から流派を継ぐつもりはないんだけどね。私はみほと一緒にいられれば……」

しほ「それも控えて頂きたい。今の貴方はみほにおんぶに抱っこの状態です。そんな状況で貴方がみほを幸せに出来るとは思いません」


しほ「それは何も同性同士だからではありません」

しほ「これは貴方の人間性の問題です。職に就かない世捨て人ではとても娘を任せられない」

ミカ「…………みほさんはそういうところが好きだと言ってくれたよ」

しほ「でしょうね。私はみほとまほ二人の娘に対して西住流に恥じないよう厳しく教育をして来ました」

しほ「ですが厳しく教育しすぎたのかも知れません」

しほ「勿論その教育方法自体は間違っていたとは思っていませんが、それによってみほが内向的な性格になってしまったことは否定しません」

しほ「そんなみほが貴方のような自由な生き方に憧れ好意を抱くこともある意味仕方のないことでしょう」

しほ「貴方は西住流とは対極の生き方をしてるのですから」

ミカ「みほと私は愛し合っている。それで問題ないんじゃないかな」

ミカ「自由であること……それが悪いとは思わない」

しほ「貴方の生き方は否定しません。ですが現実がそんなに甘くないことも事実です」

しほ「貴方は二人の間に口出しするべきではないと言っていましたが」

しほ「親である以上。子供に幸せであって欲しいと思うのは自然のことです」

しほ「ミカさん……貴方は二人が愛し合えば問題ないと考えているようですが」

しほ「現実的な問題として金銭はどうするのですか」

しほ「今はみほの稼ぎに依存してる状態です。みほの仕事で二人分の生活費を稼ぐのは難しいはずです」

しほ「それにもしみほが病気になったらどうなるのです?」

しほ「お金もなければ手術もできません。お金を貯めたくとも現状では二人でやりくりするのが精一杯です」

ミカ「その時は風が何とかしてくれるさ。具体的に言うとお母様のーー」

しほ「もしかして私からお金をたかるつもりですか!」

しほ「貴方はさっきこれは二人の問題だと言いました」

しほ「なのに困れば親に借りるというのですか?」

ミカ「……」ポロローン

しほ「勿論ただ別れてくれというのも酷な話でしょう」

しほ「貴方たちは愛し合っている。それは事実のようですから」

しほ「ここに五百万用意しています」

ミカ「五百万……」

しほ「これは言うなれば手切れ金です。五百万を差し上げますので娘と会わないで下さい」

しほ「無理に別れを切り出す必要がありません。貴方の言い方を真似るなら風のように消えるだけで良いのです」

ミカ「……」

みほ「あ、お帰りなさい。お母さんとどんな話をしていたんですか?」

ミカ「ちょっとした雑談をしただけだよ。みほが気にすることじゃない」

みほ「そうなんですか? その何かお説教されたんじゃ」

ミカ「…………」ポロローン

みほ「今のカンテレは図星のカンテレですね」

みほ「ごめんなさい。ウチのお母さん厳しいから」

ミカ「問題ないよ。気にしてないからね」

しほ「今日はもう遅いですし泊まっていきなさい」

しほ「せっかく実家に帰ってきたのです。家族の思い出作りも大切ですから」

しほ「ミカさんも大切な思い出は作っておいた方が良いでしょうし」

ミカ「思い出……それは作るもんじゃなく勝手に出来るものなのさ」ポロローン

しほ「では私は部屋に戻ります。何か用があれば訪ねて下さい」

まほ「ふぅ……しかしお母様がいると緊張してしまうのは何とかしなければな」

まほ「この歳になって未だに親が怖いだなんて恥ずかしくなってしまうよ」

まほ「あれも西住流を思ってこそだとは分かっているんだがな」

まほ「ミカさん……お母様に何を言われたかは大体察しが付く」

ミカ「…………」

まほ「きっと厳しいことを言われたんだろう」

まほ「でも分かって欲しい。お母様が厳しいのは一重にみほのことを考えてのことだ」

ミカ「そうなのかも知れないね。でもまほさんが気にするようなことは起きてないよ」

まほ「む、そうなのか。それなら良いんだ」

まほ(あのお母様の態度からしててっきり一波乱あったと思ったんだが)

まほ(考えすぎだったのだろうか)

まほ「部屋は用意してある。ウチは広いからな三人で寝るには十分だろう」

みほミカ「…………え?」

まほ「ん……どうしたんだ? 不思議な顔をして」

みほ「え、えっと……もしかして三人一緒の部屋なの」

まほ「当たり前じゃないか。私も妹と会えなくて寂しかったんだ」

みほ「そ、それは分かるんだけど……その出来ればミカさんと二人がいいというか……その……」ゴニョゴニョ

まほ「あ、ああ……そういうことか。すまないな……その……察しが悪くて」

みほ「え、えへへ……こっちこそごめんね。折角実家に来たっていうのに」

まほ「なに。別に構わないさ。とりあえず夕飯までまだ時間がある……それまでは一緒に話そう。お互い積もる話もあるだろうしな」

みほ「うん。でものろけか仕事の話ばっかりになっちゃうよ」

まほ「ふふっ……それで構わないよ。みほの愚痴も幸せな話も全部聞いておきたいんだ」

みほ「すっかり夜になっちゃったね」

ミカ「フカフカのお布団に柔らかな枕……人はそれだけで幸せになれるんだよ」

みほ「あはは……そうだね。でも私はお布団や枕なんて無くてもミカさんさえいれば幸せだよ」

みほ「えへー……ミカさん暖かいです」ギュー

ミカ「私もみほがいてくれて幸せだよ」

みほ「あの……これからも一緒にいてくれますよね?」

みほ「その……ミカさんって風のような人だからいつか居なくなるんじゃないかって心配で」

ミカ「……大丈夫。これからも風はみほの側に流れて続けていくよ」

みほ「ミカさん……」

みほ「わざわざお母さんに会ってくれてありがとうございます」

みほ「本当は分かっていたんです。ミカさんが私の両親に会いたがってないってことぐらい」

みほ「でもミカさんの魅力をみんなに知ってほしくて私たちの関係を家族にも認めてほしかったんです」

ミカ 「大丈夫。確かに最初は会うのに反対だったけどね」

ミカ「でも今では来て良かったと思ってる。お夕飯が美味しかったからね」

みほ「それなら良かったです」

ミカ「みほ……大好きだよ。それは今だって変わらない」

みほ「ミカさん……」

みほ「あの……今二人きりですし……実家でっていうのも変な話ですけど……えっと」モジモジ

ミカ「良いんだね」

みほ「はい。今度こそキスお願いします」

ミカ「分かった。ほら目を閉じーー」

コンコン ガタッ

まほ「夜遅くにすまない……私の枕がここに」

みほ「もう! お姉ちゃんは帰って!」ペシッ

まほ「ぐふっ……みほお願いだから枕を投げないで……」

まほ「でも確かにこれが探してた枕だ。ありがとう、みほ」ガチャリ

みほ「もう……お姉ちゃんってば。折角良いところだったのに」プンプン

ミカ「これもまた風の気紛れなのかも知れないね」ポロローン

まほ「もう帰るのか」

みほ「うん明日は仕事だし色々準備しないとだから」

ミカ「みほが働いてくれているおかげで私は食べることが出来るんだよ」ポロローン

みほ「うん! 私決めたから……ミカさんの為に働くって!」

まほ「……それは良いことなのか」

ミカ「誰かの為になにかをするってのは良いことだよ」

ミカ「私は何かをするより何かをしてもらう方が好きだけどね」

まほ「みほ……もし何かあったらすぐに連絡するんだ」

まほ「今の話でますます心配になってきた」

みほ「もう……大袈裟だなぁ。それじゃお姉ちゃんさようなら」

まほ「ああ……元気でな」

ミカ「…………」ポロローン

みほ「ところでミカさん……」

ミカ「どうかしたのかい?」

みほ「その大きな鞄は何ですか?」

ミカ「この中にはね。人生にとって大切なものが詰まっているんだよ」

みほ「大切なもの?」

ミカ「ふふっ……気になるかい?」

みほ「はい。気になりますけど……」

ミカ「それじゃ中身を見てごらん」ガサゴソ

みほ「え? これってお金!? いっぱい入ってる!」

ミカ「君のお母様から貰ったんだよ。今日はこれで焼き肉を食べにいこうか」

みほ「え、お母さんが?」

ミカ「…………」ポロローン

みほ「で、でもこんなに貰っちゃって良いのかな」

ミカ「善意はありがたく貰っておくべきだと思うけどね」ポロローン

みほ「そ、そっか……お母さん私たちのこと応援してたんだ。後でお礼の電話しとかないと」

ミカ「それは辞めておいた方が良いんじゃないかな」

みほ「え? どうしてですか?」

ミカ「娘には内緒にって言われていたからね」

みほ「内緒……? なんでだろう」

ミカ「西住流の威厳とかあるのかも知れないね」

みほ「威厳か……確かにお母さんいつも厳しかったし今さら優しくしてくれるのも段取りがいるのかも」

ミカ「……それを考えたって仕方ないさ。今大事なのはお金で焼き肉が食べられる……それだけだよ」

みほ「そうですね。私ずっとコンビニ弁当ばかり食べてたから焼き肉は久しぶりだなぁ」ワクワク

ミカ「…………」ポロローン

二週間後

みほ「はぁ……今日も疲れちゃったなぁ」

みほ「私は早くミカさんに会いたいのに残業だなんて」

みほ「ミカさん……お腹空かせてないかなぁ。一応お昼ご飯は用意してるけどせめて夜は一緒に食べたいから」

みほ「だから早く帰らなくちゃ」

???「……い…………すか!」

みほ「ん? 誰かの怒鳴り声? 嫌だなぁウチのアパート壁が薄いから誰かの声とかよく聞こえるんだよね」

みほ「あ、あれ……でも今の声どこかで聞いたことあるような」

???「どうし………………るんですか!」

みほ「あ、あれ……これ私のアパートから聞こえてくるような」

みほ「こ、怖いけど確認しなきゃ」ガチャリ

しほ「貴方は手切れ金を確かに受け取ったはずです!」

しほ「だというのにどうして貴方がこの部屋に!」

みほ「お母さん?」

しほ「……みほ」

ミカ「みほ……ごめん」

しほ「謝るなら今すぐ出ていったらどうですか!」

みほ「え……お母さんそれどういう意味? お母さんは私たちのこと応援してたんじゃないの」

しほ「応援って何のことですか?」

みほ「え……だって私たちを応援するために五百万円くれたんじゃなかったの?」

しほ「……あれは手切れ金です。ミカさんは西住流に相応しくありせん」

しほ「このままではみほの将来が不幸になります。だからもう会わないようにとお金を渡したのです」

みほ「お、お母さん酷い! 私からミカさんを奪うだなんて!」

しほ「……こうなるから隠密に済ませたかったのです」

しほ「聞いてみほ……確かに今は若いから勢いで何でも出来るように思えるけど現実はそうではありません」

しほ「これから先歳を重ねれば働くのが大変になり保険金だって多くなってしまう」

しほ「そんな状況で貴方は二人分の生活を養うことが出来るのですか」

みほ「やってみせます! ミカさんの為なら」

しほ「口で言うことなら誰だって出来ます! 実際生活が苦しいのは事実であるはずです。それに毎日コンビニ弁当ばかり食べてこんな状況ではいずれ体だって壊れてしまいます」

みほ「私はミカさんが現れる前まで心が壊れそうだったんだよ?」

みほ「ずっと寂しくて働くことも生きることも辛くて」

みほ「そんな私をミカさんは救ってくれたの!」

みほ「お母さんは私に対して何もしてくれない」

みほ「黒森峰の時だって……お母さんは西住流じゃないって怒るだけだった!」

しほ「それは……みほの為に」

みほ「……お母さんずるいよ」

みほ「好きな人と引き離すのが私のためなの?」

しほ「…………」

みほ「私はこの歳でようやく恋を知ったの。誰かに必要とされたんだよ」

みほ「なのに……それまで奪うの?」

みほ「私は戦車道のプロになれなかった。その時点でもう西住流は関係ないはずだよ」

みほ「私本当は嬉しかったの」

みほ「お母さんが五百万くれたって聞いて私たちのこと認めてくれたんだって」

みほ「なのに……本当はその逆だったなんて」

しほ「……確かに私は親として不甲斐なかったのかも知れません」

しほ「西住流を重視するあまり子供をあまり見てやれなかった」

しほ「みほがその重圧に苦しんでいたこともそれをまほが守ろうとしていたことも知ってます」

しほ「でもみほ……貴方は私の娘です。娘のことが大事なのは親として当たり前のことです」

しほ「そしてこのような現状を母として見過ごすわけにはいきません」

みほ「お母さん……私を大事だっていうなら……そっとしておいて欲しいかな」

しほ「……みほ」

みほ「勿論お母さんのお金を取っちゃったことは謝ります。ちょっと使っちゃったけどお金も全部返すから」

ミカ「…………」

みほ「だからもう私たちの関係に口を出さないで」

しほ「お金は返さなくて結構です。ただ私は」

みほ「お母さん……ごめんなさい」

みほ「お母さんの気持ちは分かるけどそれでも私はミカさんと離れるなんて考えたくない」

みほ「それにもうお母さんに縛られたくない」

しほ「みほ……分かりました。そこまで言うのでしたらその覚悟を示してもらいます」

みほ「覚悟?」

しほ「はい。貴方とミカさん……二人が愛し合っているという覚悟です」

ミカ「覚悟があれば良いってーー」

しほ「」ギロッ

ミカ「……」ポロローン

ミカ「それで覚悟って言うのは何を示せば良いのかな?」

しほ「私たちは西住流です。となれば決める方法は決まっていると思いますが」

みほ「戦車道……」

しほ「形式は2VS2の殲滅戦……場所や日にち後日伝えます。勿論場所や戦車はこちらが用意しましょう」

しほ「もし戦車道で貴方たちが私に覚悟を示せたのなら……私は親として二人を見守ることにします」

しほ「その代わり貴方たちの覚悟が示せなかった場合は二人とも別れてもらいましょう」

みほ「そんな……戦車道だなんて」

みほ「私もうずっとやってないんだよ?」

みほ「なのに……現役のお母さんと戦うだなんて」

しほ「嫌ならばそれまでの覚悟ということです」

みほ「お母さん……」

ミカ「質問良いかな?」

しほ「ええ」

ミカ「まず戦車の性能だけど……使用する戦車を貴方が決めるのではこちらが不利になる可能性があるんじゃないかな」

ミカ「片方がティーガーでこっちがCV33なんてこともあるかも知れないからね」

ミカ「だから戦車は同機体でお願いするよ」

しほ「西住流はそのようなことをしませんが貴方たちがそれを心配することも無理のないことでしょう」

しほ「分かりました。同じ機体になるよう手配します」

ミカ「それともう一つ……」

しほ「何ですか」

ミカ「戦車は一人で乗るもんじゃない。他の乗員はこちらで用意させてもらうよ」

しほ「それは構いませんが貴方たちにあてがあるとは思えません」

みほ「そ、そうですよ。ここは大人しくお母さんから乗員を借りた方が……」

ミカ「戦車道に必要なものは風が運んでくれるのさ」

ミカ「だからみほも心配する必要はないよ。それにみほにだってアテはあるだろう」

みほ「……それはそうですけど」

みほ「でもみんな仕事があって家庭があって……私なんかが迷惑を掛けちゃうわけには」

ミカ「みほのダメなところは一人で頑張り過ぎることだ」

ミカ「辛いときは誰かに頼れば良いのさ。私みたいにね」ポロローン

みほ「ミカさん……」

みほ(これは私たちの家庭の問題で自分で解決しなきゃって思ってた)

みほ(だけど……私も負けたくないから)

みほ(だから迷惑を掛けちゃうかも知れないけど)

みほ(あんこうチームのみんなにも一緒に戦って欲しい)

みほ「分かりました。絶対に勝ちましょう!」

ミカ「もしもしアキかい?」

アキ『あ、その声はミカ? 久しぶり……急にどうしたの』

ミカ「実は頼みがあってね」

アキ『またお金? もうミカに渡すお金は無いんだからね。この前貸した20万だって返してないよね!?』

ミカ「いつか返すよ。今がその時じゃないってだけさ」

アキ『もう! ミカはそればっかり!』

アキ『それで頼みたいことって?』

ミカ「実はとある企業が私のカンテレを気に入ったらしくてね」

ミカ「アイドルとして雇ってくれるんだ。でもお金が必要でね三十万ほど必要なんだけど」

ガチャ ツーツー

ミカ「……」

プルルルルル ガチャ

ミカ「ごめんアキ。今のは冗談」

アキ『もう! 次言ったら怒るからね』

ミカ(もう怒っているような気がするけどね)

アキ『それで用事って?』

ミカ「それはねーー」

みほ「も、もしもし」

沙織『あ、みぽりん。どうしたの? みぽりんから電話掛けるなんて珍しいね』

みほ「う、うん……えっとね」

みほ(アンコウチームのみんなにちゃんとお願いするって決めたのに)

みほ(いざ告げようとすると断られないかって迷惑かけないかって思って口にできない)

みほ(ミカさんから勇気を貰ったはずなのに)

みほ(情けないなぁ……私)

沙織『みぽりん……何か悩み事?』

みほ「……え?」

沙織『なんだかみぽりんの声が辛そうだったから』

沙織『もし悩みとかあるんだったらさ、遠慮なく言ってみてよ』

沙織『みぽりんは優しいから迷惑かけないようにって一人で抱え込んじゃうかも知れないけど』

沙織『私は全然平気だよ。迷惑かけない関係も良いけど迷惑掛け合って助け合うのも友達でしょ?』

みほ「沙織さん……ありがとう」

みほ「実はねーー」



沙織『そっかぁ……ついにみぽりんにも好きな人が出来たんだ』

みほ「うん……でも。同棲を認めて貰うには戦車道でお母さんに勝たなくちゃいけなくて」

沙織『オッケーみぽりん! 私も協力するよ! 他のみんなにも声掛けておくね』

みほ「あ、待って!」

みほ「声は私から掛けておくから……私の問題なんだもん。頼みごとまで人任せじゃダメだと思うんだ」

沙織『分かった。みぽりん頑張って!』

みほ「うん!」

まほ『聞いたぞ……お母様からこっぴどく怒られたそうじゃないか』

みほ「怒ってるのはこっちだよ。私が心配なのは分かるけどお母さんってばすぐに否定するんだもん」

まほ『ははは……そう言ってやるな。実際私もミカさんの返答を聞いてお前を任せるかどうか悩んだぐらいなんだからな』

みほ「もう……お姉ちゃんまでそんなこと言うなんて」

まほ『なあ……みほ。本当にミカさんと付き合って後悔しないんだな』

まほ『味方をするわけではないが、お母様の言っていることは事実だ』

まほ『お前一人の給料では二人分の生活費は厳しいんじゃないか?』

みほ「お姉ちゃん……私ね今までずっと決まった道しか進んで来なかった気がするの」

みほ「西住流として黒森峰に入って戦車道を初めて……楽しかった戦車道が段々と嫌いになっていって」

みほ「大洗に転校してようやく自分の戦車道を見つけたけど」

みほ「結局大学に入ってそれも消えちゃって……後はずっと流されるままに生きてた」

みほ「きっと選択肢すら与えられていなかったんだと思う」

みほ「そんな人生の中でようやく見つけたんだ。私の進むべき道を」

まほ『……そうか』

まほ『前にも言ったが私はお前の味方だ』

まほ『ちゃんと考えてその道を選んだのなら応援するよ』

みほ「ありがとう……でもお姉ちゃんは今回敵側なんだよね?」

まほ『いや……今回私は審判を任されたよ。みほには悪いがしっかりとジャッジするつもりだ』

みほ「それは……構わないけど」

みほ「本当にお姉ちゃんは出ないの?」

まほ『ああ……私もてっきりお母様のペアにさせられるんじゃないかと思ったんだかな』

まほ『なんでも急遽別のパートナーが決まったらしい』

みほ「別の……パートナー」

みほ(お姉ちゃん意外にお母さんのパートナーが務まるのって限られてくるけど)

みほ(一体誰なんだろう?)

戦車道 林道ステージ


みほ「い、いよいよ……ですね」

ミカ「緊張しているのかい」

みほ「す、少し」

ミカ「緊張しても仕方のないことさ……後は風が何とかしてくれる。それに」

みほ「それに?」

ミカ「私はみほのことを信じているからね。この勝負……きっと勝てるさ」

みほ「不思議とミカさんがそういうと何だかそんな気がして来ます」

まほ「戦車の準備が出来た。付いてきてくれ」

みほ「あ、うん」

みほ(パーシングが四つ。これが試合で使う戦車……ドイツ戦車じゃないんだね)

みほ(パーシングは重戦車ではあるけどそれなりのスピードは出せるし全体的に癖は少ないかな)ブツブツ

みほ(となると純粋な戦車の力量で差が出やすい)ブツブツ

みほ(私やミカさんとお母さんが1VS1だと私たちの勝ち目は無さそう)ブツブツ

みほ(それなら先にお母さんのパートナーを潰して2VS1の状況を作り出すのが理想だけど)ブツブツ

みほ(お母さんもそれは既に承知しているだろうから必ず2人で戦うようにするはず)ブツブツ

みほ(どっちにしてもお母さんよりそのパートナーを倒す方が先だよね)ブツブツ

ミカ「みほ……作戦を考えるのは良いけど対戦相手をよく見てごらん」

みほ「対戦相手? え? 対戦相手って……!」

千代「ふふっ、二人ともごきげんよう。私がしぽりんのパートナーの島田千代よ」

ミカ「……島田流の家元が相手のようだね」ポロローン

みほ「な、なんで…… 愛里寿ちゃんのお母さんが」

千代「ふふっ、二人ともごきげんよう。私がしぽりんのパートナーの島田千代よ」

ミカ「……島田流の家元が相手のようだね」ポロローン

みほ「な、なんで…… 愛里寿ちゃんのお母さんが」

千代「理由は色々あるけど……大学選抜戦の時に島田流は西住流……いいえ西住みほに敗北したわ」

千代「まあそれはそれで廃校も免れたし良かったんだけど」

千代「あれを見て私も一度戦ってみたいなぁって」

みほ「え……えぇ!? そんな理由で!?」

千代「だって貴方高校を卒業してから戦車道を辞めちゃったじゃない」

千代「だから戦う機会があるなら今しかないって思ったの」

ミカ「おばさんが無理をする必要ないんじゃないかな?」

千代「まだまだ若いです! 私まだ二十代って良く間違えられるんだからね」

みほ「確かに外見はそのままですよね」

ミカ「家元は二人とも見た目が変わらないね」

ミカ「もしかすると戦車道は若さを保つことにも役立つのかも知れない」ポロローン

千代「二人とも結婚を認めて欲しかったら私たちにその強さを示しなさい」

みほ「わかりました……」

みほ(ど、どうしよう)

みほ(お母さん一人を倒すだけでも大変なのに……)

みほ(ううん……そこで諦めちゃダメだよね)

みほ(確かにお母さんや千代さんは強いかも知れないけど)

みほ(それと同じぐらい私には頼れる友達や恋人がいるんだもん)

アキ「ねぇミカ? 今日はいつにも増してやる気だね」

ミカ「そう見えるかい?」

アキ「うん。普段のミカは何考えてるのかあんまり分かんないけど」

アキ「今のミカは戦おうって意思を感じるかな」

ミカ「勝つことに意味があるとは思えない」

ミカ「でもみほがそれを望むのなら私はそれに従うだけさ」

アキ「そっか……今のミカにとって風はみほさんなんだね」

ミカ「……」ポロローン

アキ「よし! そうと決めれば見せつけちゃお! ミカたちの愛が本物だってね!」


みほ「みんなごめんね。忙しい中集まらせちゃって」

麻子「気にするな……。困った時はお互い様だ」

沙織「そうそう。もう謝るのはナシだからね! 決めたんでしょ? 好きな人のために戦うって」

沙織「私たちだってみぽりんの恋の応援したいし!」

沙織「それに何だか恋人を認めて貰うために両親と戦うっていう恋愛漫画みたいなシチュエーション結構憧れてたんだよねー」

華「最後の台詞さえ無ければ良い言葉だったのですが」

麻子「認めてもらうのは西住さんであって沙織じゃないしな」

沙織「もー! そんなの分かってるよ! そういうのに近いシチュエーションだから喜んでるってだけ」

優花里「何にせよ。私たちは西住殿と一緒に戦えることを後悔していません」

優花里「確かに成人になってお仕事がありお互いに会える時間は減りました」

優花里「でも私たちの友情は今だって変わっていないはずです」

麻子「そういうことだ。仲間がピンチなら有給の一つぐらい取ってやるさ」

みほ「みんな……」

みほ「ありがとう。私……みんなの気持ちを無駄にしない」

みほ「この勝負絶対に勝ってみせる。そしてお母さんに私たちの関係を認めてもらうんだ」

沙織「それじゃみぽりん。久しぶりにアレやろっか?」

みほ「う、うん!」

あんこうチーム「パンツァーウォー!」

試合中

アキ「とりあえず索敵はしてるけど」

ミッコ「全然敵が見えないぞー」

ミカ「相手の一人は変幻自在の島田流だからね」

ミカ「私たちじゃ考え付かないところに隠れているのかも知れないね」

ミカ「私たちの目的は偵察。あまり離れすぎるのは良くないね」

ミカ「そろそろ戻……」

ミシッ

アキ「あれ? 今上から何か聞こえたような……」

ミカ「ミッコ、左」

ミッコ「あいよー」キュルルルル

ドーン

アキ「砲弾!? 上から?」

ミカ「木の上を見てごらん?」

千代「……」

アキ「へぇー戦車って木の上登れちゃうんだ」

ミカ「普通はあり得ないけどね。それが出来る辺り島田流なんだろうけど」

ミカ「アキ、みほさんと連絡は出来るかい」

アキ「それがあっちも今交戦中なんだってさ!」

ミカ「そう……つまり西住流の家元はみほさんと戦ってるってことだね」

アキ「それでミカはどうするの?」

ミカ「……ここで決着を付けよう」

ミカ「トゥーダ!」

千代「そう簡単に当たりませんよ」キュルルルル

アキ「木の上から飛び降りた!」

ミッコ「そのままドリフト!? 背後に」

ミカ「ミッコ下がって」

ミッコ「やってるけどさー……うわぁっ」ドコーン

ミカ「片輪が外れてしまったね。パーシングだけど……やれるかい?」

ミッコ「大丈夫! あの時だって出来たんだ。もう一度やってやる!」キュルルルル!

千代「大学選抜戦の時と同じね。それにしてもBTならともかくよくパーシングであんな動きが出来るわね」

千代「でも私にその手は通用しないわよ! 撃たれる前に撃つ」ドコーン

アキ「わわっ!? 今のでリタイが全部」

ミカ「大丈夫。こういうときこそ風を利用するのさ」

千代「なっ!? 爆風を利用してパーシングがこっちに!」

ミカ(人生に大切な時が何度か訪れる)

ミカ(……今がその時だ)

ミカ「ドゥーダ!」

ドコーン!

誤字修正ドゥーダ→トゥータへ

ミカ「アキ、みほさんと連絡は出来るかい」

アキ「それがあっちも今交戦中なんだってさ!」

ミカ「そう……つまり西住流の家元はみほさんと戦ってるってことだね」

アキ「それでミカはどうするの?」

ミカ「……ここで決着を付けよう」

ミカ「トゥータ!」

千代「そう簡単に当たりませんよ」キュルルルル

アキ「木の上から飛び降りた!」

ミッコ「そのままドリフト!? 背後に」

ミカ「ミッコ下がって」

ミッコ「やってるけどさー……うわぁっ」ドコーン

ミカ「片輪が外れてしまったね。パーシングだけど……やれるかい?」

ミッコ「大丈夫! あの時だって出来たんだ。もう一度やってやる!」キュルルルル!

千代「大学選抜戦の時と同じね。それにしてもBTならともかくよくパーシングであんな動きが出来るわね」

千代「でも私にその手は通用しないわよ! 撃たれる前に撃つ」ドコーン

アキ「わわっ!? 今のでリタイが全部」

ミカ「大丈夫。こういうときこそ風を利用するのさ」

千代「なっ!? 爆風を利用してパーシングがこっちに!」

ミカ(人生に大切な時が何度か訪れる)

ミカ(今がその時だ)

ミカ「トゥータ!」

ドコーン!

あんこうチーム

沙織「みぽりん。あっちも敵と交戦中だって」

みほ「分かりました。とりあえず向こうはミカさんに任せます」

みほ「私たちは目の前の敵を……」

華「ですが……向こうの方が戦車の技術は上みたいです」

麻子「西住さんのお母さんの指示も中々だが他の乗員もそれなりの腕利きみたいだな」

みほ(林道だと木が邪魔してパーシングの車体じゃ動きにくいはず)

みほ(なのに……こんなに速く動けるなんて)

優花里「西住殿どうすれば……?」

みほ(正直お母さん相手に通用するかは分からないけど)

みほ(やるしかない……!)

みほ「私に考えがあります」

しほ「動きが変わった?」

装填手「え? そうでしょうか?」

しほ「敵の砲撃が私たちを狙うものから誘き出すものに変わりました。気を付けるように」

しほ(きっとみほには作戦があるのね……)

しほ「だとしても西住流に後退は許されない」

しほ「いいでしょう受けて立ちましょう!」

しほ(距離的にまだ当てることはできないはず)

しほ(まずは距離を詰めてリタイを狙いたいたいところだけど)

みほ「今です! 撃て!」ドコーン

しほ「この距離で砲弾!?」

しほ「やはり焦りすぎたようですね。砲撃が明後日の方向ではありませんか」

しほ「今なら装填に時間が掛かるはず。距離を詰めるチャンスです」

しほ「全速前ーーぐっ!?」

しほ「今の衝撃は何!? 後ろから? 砲撃された!?」フリムキ

しほ(違っ……これは大木!?)

しほ(じゃあさっきの砲撃はあの大木を落とすために……)

操縦士「隊長! 敵が急速接近しています!」

しほ「しまった!? 注意が削がれた!?」


華「すみません。本当は前方の木を倒すはずだったのですが」

みほ「いえ……どのみちお母さんの気を逸らせたのでそれで十分です」

みほ「ここで決着を付けましょう!」ブロロロ

しほ「しまった注意を削がれた!?」

みほ「ここで決める!」

しほ「それはこちらの台詞です!」

みほしほ「「撃て!」」

ドーン パシュ

まほ「…………」

まほ「試合終了……勝者は西住&島田流チーム!」

みほ「……そんな」

ミカ「ごめん。パーシングの装甲を撃ち抜けなかった」

みほ「いえ……私もです。後少しってところでやられちゃいました」

みほ「負けちゃったから私……もうミカさんとは……会えないんでしょうか」

沙織「ちょっとそんなのってないよ!」

沙織「そりゃ負けちゃったのは事実だけどさ」

沙織「みぽりんの恋人はみぽりん自身が決めるべきだよ!」

優花里「そうですよ。そんな試合に負けたからって別れろなんて酷すぎます!」

ミカ「皆さん。落ち着いて……」ポロローン

みほ「ミカさん……」

ミカ「大丈夫。私たちが別れることなんてないさ」

ミカ「だって条件はしっかりと満たしたはずだからね」

みほ「条件を満たしたって……だって私たちは負けちゃって」

ミカ「大事なのは勝つことじゃない。示すことさ……だろう?」

千代「貴方本当に鋭いのね。私もしぽりんも別に勝敗で決めようだなんて思ってないわ」

みほ「え……」

千代「いくら貴方たちでも私たちに勝てるとは思ってないもの」

千代「今回私たちが戦車道を行ったのは貴方たち二人が本当に愛し合っているのか、それとも行き当たりばったりの感情で動いているのか見極めるためだったのよ」

千代「そうでしょ? しぽりん?」

しほ「……常夫さんに言われたのですがどうやら私たち西住家は皆口下手のようです」

しほ「きっと話したところで拗れ関係はより悪化していたことでしょう」

しほ「だからこそ言葉ではなく戦車を使うことで貴方たちの気持ちを確認したかった」

沙織「じゃ、じゃあ二人は!?」

しほ「合格です。ミカさん……みほのこと頼みましたよ」

ミカ「勿論」ポロローン

千代「ミカさん今回の試合。お見事だったわ」

千代「私を倒せなかったとはいえ、パーシングをあそこまで使いこなし的確な指示を下したのは貴方の実力よ」

ミカ「……ミッコたちが居てくれたからね。ここまで戦えたんだ」ポロローン

千代「…………」

千代「ミカさん……貴方プロリーグに興味はない?」

ミカ「プロリーグ。戦車道のかい?」

千代「ええ……貴方ならって思ったんだけど」

ミカ「……悪いけどそれは辞退させてもらいます。人生という旅にその鞄は大きすぎますから」

千代「…………そう」

千代「折角の良いチャンスだと思ったのに」

千代「でもそれが貴方の選択だものね。ちゃんとみほちゃんを幸せにしてあげるのよ」

ミカ「……」ポロローン

しほ「みほ……今まで冷たく接してごめんなさい」

みほ「お母さん……」

しほ「黒森峰の時、確かに私は貴方を責めました」

しほ「情より勝利を優先してこそ西住流。貴方の行動は西住に相応しくないと激しく糾弾しましたね」

しほ「それは優しい貴方にとってどれほど辛い言葉だったのか」

しほ「あの頃の私にはその配慮が足りなかった」

しほ「私はいつの間にか西住に拘るあまり貴方たちを娘として見てやれなかったのかも知れません」

しほ「そんな私に貴方たち二人の関係を決める権利はありません」

しほ「でもそれでも確かめたかったのです」

しほ「もっとも私は口下手だからこういう形でしか意志疎通は出来なかったけど」

みほ「お母さん……今までありがとう」

みほ「確かにお母さんは厳しくて怖かった時もあったけど」

みほ「それでも私……お母さんのおかげで……ここまで成長できたから」

みほ「だから後は心配しないで」

みほ「お母さんに育てて貰った私だもん」

みほ「絶対にミカさんと幸せになってみせる!」

しほ「……みほ」

しほ「話が長くなってしまいましたね。さ、ミカさんの元へ帰りなさい」

みほ「……うん。また実家に帰るからね」

しほ「ふふっ……楽しみにしています」

しほ「まほ……審判お疲れ様でした」

まほ「いえ……疲れたのはお母様の方でしょうから」

まほ「それにしてもお母様や島田流の家元は当然としてみほたちも素晴らしい腕前でした」

まほ「姉として嬉しい限りです」

まほ「それにようやくお母様もみほと仲直り出来たみたいですし」

しほ「私は貴方に対しても謝らなければいけないのかも知れませんね」

まほ「…………」

しほ「私の西住流に固執した考えが貴方たち二人を追い詰めてしまった」

しほ「みほが黒森峰から離れると分かった時、貴方は初めて私に激昂しましたね」

しほ「あのときにようやく気づいたのです。私は二人のことを何も知らなかったのだと」

しほ「きっとその頃の私にとって貴方たちは西住を知らしめる道具程度にしか扱っていなかったのかも知れません」

しほ「まほ……みほを守るためによく頑張りましたね」

しほ「みほの盾になってくれてありがとう」

まほ「お母様……それを聞けただけで十分です」

まほ「それに私は西住の道に足を踏み入れて後悔をしたことは一度たりともありません」

まほ「今でも戦車道は好きですし……今は支えてくれる大切な人がいますから」

しほ「……まほ」

千代「しぽり~ん。まぽり~ん」

まほ「ま、まぽりん……」

しほ「ごほん……人前でその呼び方は辞めてとあれほど」

千代「相変わらず真面目ね。まぽりんもしぽりんの娘で可愛そうよねー」ワシャワシャ

まほ「べ、別に私は……今のお母様で満足してますので」

千代「もーしぽりんと同じで真面目なんだから??」

しほ「それよりどういう風の吹き回しだったのですか」

千代「なにが?」

しほ「あの戦いは西住流の問題によって生じたもの」

しほ「なので本来ならば貴方ではなくまほが私のパートナーとして出るはずでした」

しほ「なのに急に貴方が参加したいって言うから……」

千代「それは前にも言ったけど娘の仇って言うか……」

しほ「そのわりにはみほの話には興味を示さなかったような気もしますが」

しほ「どちらかと言えばその婚約者のミカさんの話を聞いてから……」

千代「もうーしぽりんは深く考えすぎよ」

千代「西住流の貴方が二人の愛を見極めようとしたように」

千代「私も島田流として二人を見届けたかった……それだけよ」

千代「はい。これでその話は終わり。それじゃ飲みに行きましょうか!」

しほ「その前に戦車の回収作業を指示しないとまほ……お願いできますか」

まほ「はい。その程度のことでしたら……あれ?」

しほ「どうかしましたか?」

まほ「パーシングが2両無くなっている」

しほ千代「…………え?」

みほ「い、いいのかな? 勝手に戦車を盗っちゃっても」

ミカ「盗ってるんじゃない借りてきただけさ」

アキ「そーそー。いつか返すから問題ないって」

ミカ「家元の皆さんは優しいからね。きっと許してくれるよ」

みほ「そ、そういう問題なのかな……」

麻子「ミカさんに言われた通り後を付いてはいるが一体どこへ向かうつもりなんだ」

ミカ「……結婚式会場さ」

みほ「ここは山? うわぁ……凄いキレイ」

ミカ「丁度夕方だからね。夕焼けに照らされて一体が黄金色に染まるんだよ」

ミカ「ここは私のお気に入りのスポットなんだ」

ミカ「ビルや車そういった物に囲まれる生活も悪いもんじゃない」

ミカ「でもそれだけの世界は悲しいかならね」

みほ「ミカさん……ここ素敵です。こんな場所にこんな景色があるなんて全然知りませんでした」

ミカ「気に入ってくれたなら良かったよ」

ミカ「知っていることだけど私たちは同性同士だから結婚はできない」

ミカ「だからこれが結婚式代わりってことにしようと思ってね」

みほ「私……ミカさんがいるだけでも幸せなのに」

みほ「こんな場所にまで連れていってくれるだなんて」

みほ「私の大切な思い出……増えちゃいました」

ミカ「みほ……結婚式には二人はどうすれば良いのかな?」

みほ「え、えーっと」

ミカ「私はみほとキスがしたい。ずっと出来なかったからね」

みほ「で、でもみんなも見てるし」

ミカ「みんなが見ている……それはそんなに大切なことなのかな?」

みほ「大切っていうか恥ずかしーー」

ミカ「好きだよ。みほ」チュ

みほ「んんっ……んぐ……キ、キスされちゃった」アワアワ

ミカ「みほが可愛かったからね」

ミカ「それでみほの気持ちも聞きたいかな」

みほ「そんなの決まってます!」

みほ「私も……ミカさんのことが大好きです!」チュ



これにてこのssは終わります。
佐織→沙織
パンツァーウォー→パンツァーフォー 
ドゥーダ→トゥータなど
誤字が多くてすみません。以後気を付けます。ここまで読んで下さってありがとうございました!
それではHTML申請しておきますね

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