三浦「ヒキオへの恩返し」 (32)


八幡たちの学年が3年になった……夏頃


八幡「な、なんて?」

三浦「とりあえず、ヒキオには恩返しすっから」

戸部「そそ、俺もさヒキタニ君には世話になったしさ~」

八幡「まったく意味がわからない……」

三浦「あんたのことだから、どうせそう言うと思ったけど」




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三浦「2年の頃とかさ、あんた裏で色々やってくれてたじゃん?」

八幡「お前に話した覚えなんてないが」

三浦「どうでもいいっての。これはあーしのけじめみたいなものだし」

八幡「はあ」

三浦「つーわけで、放課後、あーしらに付き合いな。もう放課後だけど」

八幡「まあ、奉仕部もないしな。別にいいけど……」

八幡(断ったら、蛇に睨まれたカエルになりそうですしね)


戸部「よっしゃ、決まり! どこ行くべ?」

三浦「ボウリングでいいんじゃない? ヒキオ得意そうだし」

八幡「どんな先入観だ」

ボウリング場

戸部「よっしゃ、ストライク~~! へ~~い、ヒキタニ君!」

八幡「へ~い……」ハイタッチ

三浦「ヒキオ、ノリ悪すぎ」


八幡「いや、俺にノリの良さを求めるなよ……」

三浦「意外とボウリングの上手さも普通だし。スコア119って、なんか半端」

八幡「俺に何を求めてるんですかね」


三浦「ま、いいや。久しぶりにボウリング出来たし」

八幡「俺をここに連れて来た理由はなんだ?」

三浦「は? だから恩返しだって」

八幡「恩返しの定義が間違っている気がするが」

三浦「こんな美人とデート出来てること自体が、お釣りが来るレベルで恩返しだし」


八幡「自分で言うか……」


戸部「いや~、優美子の自信半端ねぇわ~! でも、俺は優美子みたいな可愛い子とボウリング出来るのは幸せだべ」

三浦「海老名に報告っと」

戸部「ちょちょちょ、それはないわ~!」

八幡「戸部って、海老名さんと付き合ってるのか?」

三浦「まだだけどさ。最近は姫奈もまんざらでもないっていうか」

戸部「ちょっとだけ行けるかも? ってなってんのよ。でもそれも優美子の一言で消え去りそうと言うか……」

三浦「あんた馬鹿なくせして、意外と女子人気高いしね」

戸部「いやいや、あくまでみんな友達だべ? 俺は海老名さん一筋だし」


八幡「まあ、お前らのグループは葉山を筆頭にモテるからな」

三浦「そうよね。結衣なんて、最近はさらに告白される機会増えたらしいし」


八幡「……」

三浦「あれ? ちょっと微妙な顔してる?」

八幡「別に」

戸部「いやいや、微妙な顔してるべヒキタニ君。俺の女に手を出すなよ、愚民共って感じだべ」

八幡「おい……」


三浦「変にカッコなんて付けないで、さっさと告白すれば? なんなら教室で手を引っ張って連れ出すとか」

八幡「お前、その話する為に呼び出したのか?」


三浦「まあね。恩返しってのも本当ではあるけど」

戸部「奉仕部の関係性、もどかし過ぎるわ~」

八幡「戸部もかよ」

三浦「あんたも格好つけてないで、早く告白しろし」

戸部「そそ。結衣はヒキタニ君の告白なら即答でOKするって!」

八幡「待て待て、なんだこの陰謀は」


三浦「結衣ってあの外見だから、やりたいだけの奴も多いんよね」


三浦「まあ、そういう面も考えれば、ヒキオなら無理やりとかはしないだろうなって」

八幡「なんか、高評価が逆に怖いんだが」

三浦「はあ?」

八幡(こいつの「はあ?」は本当に怖い)

三浦「あーしだけの評価じゃないし。姫奈も隼人も同じように言ってた」

八幡「……」

戸部「ヒキタニ君、やっぱさ高校の間に恋人欲しいべ?」

八幡「まあ、そりゃ」

三浦「なら、結衣にしろし。ヒキオには勿体ないくらいの彼女でしょ」

八幡「……」

八幡(不味い、非常に不味い……)

部室

雪乃「それで、あなたはなんて答えたのかしら?」

八幡「待て、雪ノ下。カップが凶器に見えて仕方ない」

雪乃「凶器になるかどうかは、あなたの返答次第ね」


八幡「何も答えてねぇよ。一方的な話だぞ」

雪乃「あら、でも三浦さんの話は的を射ているわ」

八幡「……」

雪乃「由比ヶ浜さんは、あなたからの告白であれば受け入れるでしょう」

八幡「雪ノ下もそう思うのか?」

雪乃「ええ。なにを嬉しがってるのかしら? 気持ち悪いわよ全てが」

八幡「……」

雪乃「由比ヶ浜さんも大変ね。あの子の性格的に、告白される男子を断るのは嫌でしょう」

八幡「ああ。それなりに良い奴が告白してそうだしな」

雪乃「そうね、少なくともあなたよりも数段対外的な評価は高いでしょうね」


八幡「俺より低い奴なんて、この学校にいねぇよ」

雪乃「……そんなことないわよ」


八幡「……」


雪乃「私の評価では、最低でも葉山くんよりは上かしら」

八幡「お前の中の葉山は最低クラスだろ……喜んでいいのか?」

雪乃「ええ、喜んでいいと思うわ。私、美人だから」


八幡「……この学校は自信家が多いな……。葉山は絶対に自分が格好いいとは言わない」


雪乃「あら、心外ね。あなたも自分のこと容姿は悪くないとか言ってなかったかしら?」

八幡「俺のは負け犬の遠吠えだからな。お前や三浦はびっくりするくらいその通りだから性質が悪い」

雪乃「どこまで自分に自信がないのかしら、この男は。まあいいわ、それよりも由比ヶ浜さんだけれど」

八幡「おう」


雪乃「個人的には、告白され続けている事態は好ましくないわ」

八幡「三浦の奴も言ってたな。危険な状態にならなければいいけどって」

雪乃「だから、比企谷くんにとりあえず彼氏になるように言ったわけね……全く」

八幡「あいつ、身持ち堅いと思うけどな」

雪乃「それだけれど。由比ヶ浜さんの場合、少しでも気を許すとズルズルと言ってしまう危うさがあるわ」

八幡「主体性薄いしな、あいつ。雪ノ下はその点、安心だが」

雪乃「そうね……私の心を動かせる人間なんて……まあ、居るかもしれないわね」

八幡「はあ?」

雪乃「なんでもないわ」

雪乃「それで、あなたはどうするのかしら?」

八幡「三浦と飯を食いに行く約束をしてしまった」

雪乃「あら、今日は雪男が出るかもしれないわね」

八幡「せめて、雪が降るって言えよ。そんな珍獣が出て来るレベルでありえねぇのか」

雪乃「あなたと三浦さんが一緒に歩く日が来るなんてね」


八幡(なんか楽しそうだなこいつ。気のせいか?)

雪乃「これもあなたの今までの行いのおかげなのかしらね」

八幡「どういう意味だ?」

雪乃「他人から嫌われることばかりしてきたのに……随分と出世したように映るでしょう」

八幡「三浦の隣を歩くのが出世か? 生贄の間違いだろ」

雪乃「個人的にはどちらでもいいのだけれど。対外的な話をしているのよ」

八幡「そういうことか」

雪乃「最近、察しが悪くなってない? 余裕が出て来て調子に乗っているのかしら?」

八幡「上げるのか落とすのか、どちらかにしてくれませんかね」


八幡(……しかし、本当に不味いな)

レストラン

三浦「うっわ、ヒキオと二人でこんなとこ入ったのバレたら噂になりそう」

八幡「嫌ならすんなよ。俺は帰るぞ」


三浦「別に嫌とか言ってないし。勘違いすんなし」

八幡「それで、由比ヶ浜はどうなんだ?」

三浦「それが今日も告白されてさ。付き合うのはないんだけど、話の流れで遊び行ったわけで」

八幡「今日の話だろ? てことは……」

三浦「そそ、ゲーセンとかで遊んでるって」

八幡「もしかしてだとは思うが、そこに行くんじゃないよな?」

三浦「とりあえず飯食べたら行くし」

八幡「マジか……」


ゲーセン


八幡「どこに居るんだ? まさか、この街の中から探すなんて言わないだろうな?」

三浦「一応、結衣とはラインで場所とか確認してるし。あ、あーしらが追ってるのは伏せてるけど」

三浦「えっと、このゲーセン来てるみたい。会うと不味いから、プリクラ機に隠れるし」

八幡「お、おい……マジか」


三浦「あ、結衣たち居たし」

今はこんなところで


A君「由比ヶ浜さん、これこれ」

結衣「あ、これクレーンキャッチャーじゃん。取れるぬいぐるみが可愛いって噂の」

A君「うん。よし、俺が取って由比ヶ浜さんにプレゼントするよ」

結衣「ええ~? う、うん、ありがと……」


プリクラ機の中

三浦「普通にカップルしてるし」

八幡「楽しそうだな」

三浦「結衣もまんざらでもなさそうね」

八幡「……」

A君「よし、取れた!」

結衣「ええっ? 100円で取るなんて、地味にすごくない?」

A君「けっこう得意なんだ、これ。はい、よかったら受け取ってよ」

結衣「うん、ありがとう」

A君「よかった。じゃあ、次は向こうに行ってみる?」

結衣「あ、うん。そうだね」


三浦「あれ、結衣からライン来たし。A君、けっこう良い人かも…だってさ」

八幡「悪い人間なんて、そうそう居ないだろ」

三浦「そういう意味じゃなくて。一緒に居てもいいかなって意味でしょ。付き合うのは断ったけど」

八幡「……」

三浦「どうすんの?」


八幡「わかんねぇよ。俺は別に」

三浦「ちょっと、あんた。結衣に告白する気ないとか言わないよね?」

八幡「なんで由比ヶ浜に告白すること前提なんだよ……」

三浦「だから恩返しだって言ってんでしょ」

八幡「これは恩返しなんて言わない」

三浦「恩返しだっての」

八幡「違う」


隣のプリクラ機


B君「あれ? あの二人って……」

C子「三浦さん……?」

数日経過

雪乃「それで、由比ヶ浜さんはどうだったのかしら?」

八幡「楽しそうだった」

雪乃「そう、強引になにかをされているわけではないのね」

八幡「んなわけあるか」


雪乃「それを背後から三浦さんとストーキングしていると」

八幡「三浦が居なかったら、完全に犯罪者だな」

雪乃「そういうことを言っているんじゃなくて……」

八幡「……?」

雪乃「まあ、いいわ。あなたはどうするつもりなの?」

八幡「俺がなにかをするの前提なのか?」

雪乃「あら、何もしないつもりなの? 少しはヤキモチを妬いたのでしょう?」

八幡「……」

雪乃「今の段階で、あなたが由比ヶ浜さんを奪えば、とても優越感に浸れるでしょうね」

八幡「俺がそんなもん欲してると思ってるか?」

雪乃「いいえ。これでもあなたのことは信用しているもの」

雪乃「私はそれよりも危惧していることがあるわ」

八幡「なんだ?」

雪乃「……なんでもないわ」

八幡「?」


教室


三浦「最近どうなん? 結衣」

結衣「え、なにが?」

三浦「とぼけんなっての。いろんな男子と遊び行ってるでしょ?ラインにも入るし」

結衣「うう……。優美子にラインしてる理由はわかってるよね?」

三浦「まあね。正直な話、迷惑なんでしょ?」

結衣「そこまでは言わないけどさ……あはは」

三浦「良かったし。このまま流されて付き合うなんてことにならないで」

結衣「なるわけないじゃん」

三浦「でもさ。二人で遊びに行っても疲れない奴も居るでしょ?」

結衣「うん、まあね。彩ちゃんとか」

三浦「他には?」

結衣「ええ? えっと……」


三浦「……はっきり言えばいいのに」

結衣「あはは……」

レストラン

八幡「由比ヶ浜も仕方なく行ってるわけか」

三浦「ま、そういうこと。急ぐ必要もないと思うけど、さっさと告白」

八幡「告白前提なのが、なんか変だぞ」


三浦「これだから童貞は。思い切りが足りないというか」

八幡「高校生で経験あるのは犯罪だからな?」


三浦「しかし結衣も、なんでこんな男好きになったかな~」

八幡「犬助けられたからだな」

三浦「はあ?」

八幡「なんでもねぇよ」

B君「あれ、あの二人また……」

C子「本当だっ! 三浦さんと比企谷くん?だっけ……もしかして」


------------

それから数日経過


戸部「優美子、優美子」

三浦「なに?」

戸部「あれから、例の件どうなった?」

三浦「あとはヒキオが考えることだし。あーしの恩返しはここまでね」

戸部「そっか~。いんや~ヒキタニ君と結衣のカップルなら安心してみてられるべ」

三浦「あーしとしては納得してるわけじゃないけど……」

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