梓「たまには私から抱きついて唯先輩を困らせてやるです」唯「どんとこいです!」フンス (38)

少し前に即興で書いたSSを手直ししたやつです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1565015465

梓「本当に抱きつきますよ、ギュッってしてやりますよ!」

唯「かもん!」

梓「……ほ、本当の本当ですよ! 唯先輩がどぎまぎしちゃう位強烈なのを」

唯「えい」ギュッ

梓「ぎにゃっ!? な、何するんですか唯先輩!?!?」

唯「えー、だってあずにゃんが焦らすんだもん~」

梓「もう、離してください!」

唯「えーやだよー」

梓「じゃあもし離してくれたら、100数えるまでに抱き着きます!」

唯「ほんと!? じゃはいっ」パッ

梓(ふふ、隙を見せましたね唯先輩!)

唯「いーち、にーい」

梓(唯先輩は100を数え終わったら抱き着くと予想しているに違いない!)

梓(その隙を突いて50くらいで抱き着けば、流石の唯先輩でも……!)

唯「さんからひゃく!」ダキッ

梓「うにゃあっ!?!?」

唯「んー、100も我慢出来ないよ~」

梓「うぅ、してやられたぁ……」フニャア

よくじつ!

唯「あっずーにゃん!」

梓「ストップです唯先輩!」

唯「人は急には止まれないっ」ドサッ

梓「あっ、ごめんなさい……」

唯「急にどうしたのあずにゃん」

梓「昨日のあれから、唯先輩を困らせる方法を寝ずに考えてきたのです」

唯「しっかり寝なくちゃ身体壊しちゃうよお」

梓「そして、一晩考えた末に辿り着いた結論。それは……」


梓「単純な攻めではダメだということです!」

唯「おぉ、既に何だか複雑……」

梓「手を繋ぐとかハグするとか、その程度の単純な攻めでは唯先輩の心を動かせないのです!」

唯「ほうほう」

梓「なんでそんな他人事なんですか……。だから手の込んだアプローチで、唯先輩をぎゃふんと言わせてやるのです!」

唯「でもあずにゃん昨日単純な攻めも出来なかったよね」

梓「そ、それとこれとは話が別です!」

梓「とにかく、何がなんでも唯先輩を困らせてやるです!」

唯「ばっちこいです!」フンス

唯「ところで、今から何をするの?」

梓「ちょっと待ってください、カバンに作戦ノートがあるので」

唯「りちぎだねえ」

梓「作戦その1『無反応』!」

梓「唯先輩に何をされても一切反応しない作戦です!」

唯「えー、無視!?」

唯「やだよー、無視は悲しいよあずにゃあん......」

梓(うっ、寂しそうに迫る唯先輩、可愛い……)

梓「じゃ、じゃあおしゃべりはありとします!」

唯「よかったあ」

梓「さぁかかってきてください!」

唯「じゃ早速、ぎゅー」ダキッ

梓「……」

唯「あったかあったか」ナデナデ

梓「…………」

唯「あったか~あったか~、って夏なのにここまでしちゃ溶けちゃうよっ!」

梓(セルフツッコミ……でもこれは中々良い兆候じゃ?)

唯「……」

梓(唯先輩の動きが固まってる……! やることがなくてどうしたらいいか困ってるんだ!)

唯「ねぇあずにゃん、ノーリアクションじゃ寂しいよ。何か言ってよ~」

梓「ダメです。思わず反応してしまうようなことでもしなきゃ動きません」

唯「あっムギちゃん。今日のおやつはたい焼き?」

梓「そんな罠には引っかかりませんよ!」

唯「むぅ……」

唯「うーん……」

梓(唯先輩が考えてる……! 最初の作戦がこんなにも上手くいくなんて!)

唯「……」

梓「打つ手はありませんよ。何があっても動じませんから!」

唯「……」

梓「だから唯先輩、降参は早めに……」

唯「…………」コテッ

梓(ね、寝てる!?)

唯「すぅ、すぅ……」

梓(ゆ、唯先輩の吐息が、髪の毛がうなじをくすぐって……!)

梓(お、落ち着け私。当の唯先輩は寝てるんだから、冷静に脱出すれば……)

梓「……普段と違って腕も挟まれるから、出られない」

梓(ど、どうしたら……!)

ガチャ

律「ういっす~」

澪「あ、開いてる。唯か梓、先に来てたの……っ!?」

梓「せ、先輩方!?」

澪「あ、ご、ごめん梓っ!? こういうデリカシーの無いことをするつもりは……!」

梓「ちが、そういうんじゃありませんからっ!?」

律「そうだぞ澪。大方いつもみたいに、唯が強引に抱きついてただけだろ」

澪「な、なんだそれだけか......」

梓(あぁ、律先輩が冷静でよかった……)

紬「ストップ! それは違うわ二人とも!」

澪、律、梓「!?」

紬「梓ちゃんの腕の収まり具合を見て頂戴。綺麗に唯ちゃんの腕の中に入ってる」

紬「強引に抱きついたなら腕が外に出てたり、収まりが悪くなってるはず!」

紬「つまりこの状況は、二人の合意の上で成り立っている状況なのよ!」

澪律「な、なんだってー!?」

梓(た、確かに合意の上なのはそうだけど……!)

紬「部室では二人きり、そしてその二人は合意上でも抱き着き合う間柄」

紬「そして唯ちゃんが眠っているこの状況を鑑みるにきっと……」


梓『いつもつっけんとしちゃってすみません。皆の前じゃ素直になれなくて……』

唯『良いんだよ。それがあずにゃんの可愛いところなんだから』

梓『……せめて、誰もいない今くらいは、私の身体でよかったら好きに使ってください』

唯『ふふ、ありがとう、あずにゃん』


紬「……という優しい時間が流れていたに違いないわ!」

梓「間違いしかありませんよ!?!?!?」

梓「いや、いくら何でもお二人はこんなこと信じませんよね……?」

律「そ、そうだったのか……。何か悪いことしちゃったな……」

澪「素直になれないのは辛いもんな……ごめん」

梓「二人ともなんで丸め込まれちゃってるんですか!? 誤解です! 最早誤解を飛び出して六階です!?」

紬「今日はおいとましましょう。二人の時間は誰にも邪魔させちゃいけないわ」

澪「そうだな。じゃ、また明日」

律「唯が起きたらよろしく言っといてくれ」

梓「あっ、そんな、待ってください! 誤解なんです、誤解なんですってばぁ~!!」

梓「思わぬ深手を負ってしまいましたが、でもお陰でアイデアも降りてきました!」

梓「作戦その2『噂』です!」

梓「あらぬ噂を聞いたら、さしもの唯先輩だって照れて恥ずかしがるに決まってます!」

梓「やってやるです! 私と同じ位恥ずかしい目に合わせてやるです!」

唯(起きたら趣旨が変わってた……)

梓「え、えい!」ギュッ

唯「わあ、あずにゃん大胆」

梓「もうさっきので色々吹っ切れたです! さぁ唯先輩、このまま校舎を歩きますよ!」

唯「えっ、あずにゃん、ちょっと歩きづらいよ……」

唯「今からどこ行くの?」

梓「人が多い所です。たくさんの人の目に触れたらそれだけ噂になる確率が高くなるはずですから」

純「あれ、梓じゃん。何してんの?」

梓(チャンス! 純から憂やクラスメイトに話せば、確実に噂になる!)

梓「何って、見ての通りだけど」

純「えっ」

梓(面食らったような顔してる……! よし、インパクトも絶大……)

純「そ、そっか。いや否定はしないよ! 好きになるのは人それぞれだもんね、私は梓を応援するよ」

梓(……え、なんで私の話に……?)

純「で、でもさ、嗜好云々の前に、人前でそう抱き着くのはちょっとやめた方がいいよ」

梓(人前で抱き着き……はっ)

梓(もしかしなくてもこの状況、好意のベクトルが私→唯先輩になってない……!?)

梓(これじゃあ噂の渦中にいるのは私ってことになっちゃうよ!?)

梓「ま、待って純! これは誤解……!」

純「ここは二階だよ。じゃ梓。お幸せにね」

梓「……がくっ」

梓「先輩だけじゃなく親友にも誤解されてしまった……」

唯「まぁまぁ、落ち込まないでよあずにゃん」

唯「私はあずにゃんと噂になれたら嬉しいけどなあ」

梓「っ……// で、でも根も葉もない噂ですよ?」

唯「根も葉もないのにそう想われるってことは、それだけお似合いってことでしょ?」

梓「べ、別にそうとは限りませんよ!」

梓(なんでこういうことをしれっと言えるんですかこの人は……)

梓(その後もいくつか試してみたものの、ろくな成果は得られませんでした)

梓「うぅ、他に何か方法は……」

唯「あずにゃん。これ面白そうだよ!  『ロマンチックな台詞』大作戦!」

梓「や、こ、これはダメです! 深夜テンションで書いてそのままにしてただけで……」

唯「えー、良い作戦だと思うけどなあ。あずにゃんに可愛い台詞言われたら、すごくドキドキしちゃうよ」

梓「ほ、本当ですか……」

梓「じゃ、じゃあ、唯先輩はどんな台詞が言われたいんですか?」

唯「やっぱりシンプルに『唯先輩大好きだニャン?』かなっ! 勿論ネコミミ猫手つきで!」

梓「そんな恥ずかしいこと絶対やりませんよ!? っていうかそれのどこがいいんですか!?」

唯「えー、絶対イチコロなのに……こうやってちょっと手を絡める感じにして」

唯『あずにゃん、大好きっ?』

梓「っ……///」

梓(か、可愛い……!/// 心臓がキュンキュン、って止まらない……!)

梓(で、でもここでそれを認めちゃったら何が何だかに……)

唯「……あずにゃん、ダメ?」チラッ

梓「」ボフッ

なかのけ!

梓(唯先輩、可愛かったなぁ……)ポーー

梓「って、ほんとは違うんです!」

梓「うぅ、本当は私が唯先輩を困らせたいのに……」

梓「こうなったら、今日も夜通しで作戦を考えてやるです!」

なかのけ!

梓(唯先輩、可愛かったなぁ……)ポーー

梓「って、ほんとは違うんです!」

梓「うぅ、本当は私が唯先輩を困らせたいのに……」

梓「こうなったら、今日も夜通しで作戦を考えてやるです!」

なかのけ!

梓(唯先輩、可愛かったなぁ……)ポーー

梓「って、ほんとは違うんです!」

梓「うぅ、本当は私が唯先輩を困らせたいのに……」

梓「こうなったら、今日も夜通しで作戦を考えてやるです!」

うしみつ!

梓(ダメだ、どの作戦も上手くいきそうにない……)

梓(こんなに時間をかけたのに、何もアイデアが浮かばない……)

梓「んん……」ゴシゴシ

梓(ダメ、まだ眠る訳には……)

梓(……あ)

ドサッ

ピピピピッ

梓(37.2℃……。大分熱は引いてきた方、かな)

梓(流石に二日続けて徹夜は身体壊しちゃうよね)

梓(バカなことしたなぁ……)

ピーンポーン

梓(誰か来たみたい)

唯「あずにゃん、大丈夫!?」

梓「唯先輩……そんなに慌てふためかなくても」

唯「だってだって、昨日まであんなに元気だったのにいきなり休んじゃうんだもん!」

唯「大変なことになっちゃったかと思って心配したよ……」

梓(……唯先輩、スゴく困った顔してる……)

梓(それなのに、勝ち誇った気持ちより、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ)

梓(……私、意地になってやりすぎちゃったんだな)

梓「唯先輩、ごめんなさい」

唯「……ダメだよあずにゃん。唯先輩が許すには条件があります」

梓「なんですか?」

唯「今日私が帰るまで、ずっと素直になってください」

梓「……困りますよぉ」

唯「じゃあ、これでおあいこだね」

梓「……ふふ、ありがとうございます。唯先輩」

唯「ささ、あずにゃんや。ここにおいで。私のおなか枕は柔らかいよ」

梓「はい。お邪魔します……」ポフッ

唯「あったか~あったか~」ナデナデ

梓(唯先輩のお腹、あったかくて良い匂いがする……)

梓(……)ギュッ

唯「わふっ、あ、あずにゃん?」

梓「素直になってって、言われましたから……」

梓(紅潮していく顔を見せないよう、私は一層唯先輩の懐に潜りこんだ)

唯「……あずにゃん」

梓(唯先輩が、ちょっと困ったようなトーンで笑った)


おしまい

ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
けいおんSSよ蘇れ蘇れ……

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