P×朋花 からの 朋花×P
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※参考
ミリシタ版 夜想令嬢 特訓EP
以下本文
情欲を抱いて女を見る者は誰でも、すでに心の中で姦淫を犯したのである。
――マタイによる福音書(聖書協会共同訳)5章28節
※1
(プロデューサーさんのお部屋、意外と片付いているようですね……あんなようすだった割には)
アイドル・天空橋朋花は、自分を担当するプロデューサーの部屋の風景を、首を振ってじろじろと見回す。かくれんぼの鬼に似ていた。ファンや同僚アイドルから『聖母』とも呼ばれる朋花としては、そわそわした仕草だった。
朋花を担当するプロデューサーの部屋は、ほとんど真っ暗だった。
天井の照明はすべて落ちている。カーテン越しの窓の外は、夜に塗りつぶされている。光源といえば、窓際に据えられた木製の収納付きシングルベッド脇で、光量のしぼられたベッドサイドランプがひとつ点いているきり。ランプは黄色くて色温度が高い光で、プロデューサーの寝顔を半分だけ照らしている。
(……片付きすぎとさえ思えます)
朋花が首を曲げるだけで、ベッドのあるこの部屋から、キッチンと玄関ドアまで見える。すべて合わせても、朋花が実家で使っている私室と大差ない広さのワンルーム。
家財は、小さな机とノートパソコン。プロデューサーが横たわっているベッド。あとは無銘の真新しい140サイズ段ボールがいくつかあるが、中はタオル一枚さえ入っていない空っぽ。ベッド下収納さえもぬけの殻。
それきりだった。
(ものが少なすぎます……この部屋を引き払ってしまうつもりでしょうか? まるで、身辺整理でもしているような……)
朋花は、深夜にプロデューサーの暮らす部屋を眺めているが、彼から合鍵を渡してもらったわけではなく招待されたわけでもない。
そもそも朋花が立っている場所は、プロデューサーの暮らす部屋と同じ風景をしているが、同じ部屋ではない。
プロデューサーの夢の中であった。
朋花が立っているのは、プロデューサーの夢枕だった。
天空橋朋花という少女は、他人の夢の中に入り込んで、少しだけ――長くて一晩ほど――自由に行動することができる。朋花はその異能を秘密にしていた。アイドルになって以降に他人の夢へ入ったのは一回だけ。後輩アイドル・中谷育が怖い夢に悩んでいると聞いて育を助けるために一晩。それきりだった。
(呼ばれてもいないのに入り込んでしまって、良心がとがめてきますけれど……プロデューサーさんがいけないんですからね……?)
その日の昼、プロデューサーは朋花に対して『別のプロデューサーを紹介するから、自分は朋花の担当を下りたい』と申し出ていた。事務所も辞するつもりだという。朋花からすれば一方的な宣告だった。
(何の説明もなく、私のプロデューサーを降りようだなんて……無責任ですよ。その寝耳に水を流し込んで差し上げましょうか?)
朋花とプロデューサーのアイドル活動は上り調子だった。それらしい理由もなく担当プロデューサーが降りたとなると、アイドル業界のうわさスズメが訳知り顔でひそひそ騒ぐぐらいの知名度と存在感はあった。プロデューサーが朋花に申し出る顔も残念無念といった色だった。
だから朋花は、家族の介護でも手伝うとか、彼自身が体調を崩して療養しなければいけないとか、やむにやまれぬ事情があると推察した。それなら仕方ないと思った。だだをこねて彼を困らせたくなかった。
ただ朋花は、『仕方ないと思っ』て割り切るために、プロデューサーが辞する理由を知りたがった。朋花は彼が話してくれると――二人の間にそのぐらいの信頼はあるだろうと――思っていたが、プロデューサーは朋花に理由を教えなかった。朋花が食い下がっても、聞いてくれるなという雰囲気しか返してくれなかった。
(プロデューサー……私が、黙ってあなたの夢に入り込むのは……あなたが理由を教えてくれなかったせいです)
朋花は膝を曲げ腰をかがめて、プロデューサーの寝顔を近くで眺めた。朋花が最後に見た顔よりさっぱりとしたようすだった。どうやら彼は、風呂か歯磨きのあとにもヒゲを剃るたちらしい。寝顔に彼の『理由』は書かれていない。
(……あなたが教えてくれないことで、私が気分を害した。その腹いせで……つまり私怨、なんですけれども)
朋花がプロデューサーの肩に手をのばす。揺り動かす。いまはまだプロデューサーが夢を見ていないので、二人は彼が寝入る直前に認識していた彼の部屋にいる。
(あなたにとって、私はその程度だったんですか。私がそんな聞き分けのいい女だと思ったんですか)
朋花が彼を夢枕で揺り起こせば、夢が始まる。
「プロデューサーさん、プロデューサーさん――」
※2
「……朋花?」
「プロデューサーさん、まさか私の顔をお忘れではありませんね」
朋花がこじ開けた夢の扉は、朋花にもプロデューサーにも馴染み深い、39プロジェクトの劇場へつながっていた。
キャッチボールなら余裕でできそうな広いフロアを、いくつものキャスターつきパーティションが細かいスペースに仕切っている。朋花とプロデューサーが向かい合って立っているのも、そのスペースの一つだった。
朋花たちがたたずむスペースの中には、衣装立てが連なっている。朋花の視界に、まず4着が映っていた。
(ブラン・エ・ノワール <白と黒>、ブルームーン・プリズム、ル・シエル・エターナル <この永遠の空>、ナイツ・オブ・テンペランス……衣装、ですか? それも、私のものばかり……)
振り返って後ろを見ると、フラワー・テンプテーション、マドンナ・ポップ、マリア・レクイエムの3着があった。7着すべて、アイドル・天空橋朋花のため特別にデザインされたものだったので、ちらりと見るだけで『私のものばかり』と朋花は理解できた。
「私の……お懐かしいお衣装もありますね」
パーティションと同じくキャスターつきの姿見が4枚並んでいて、レッスンウェアをまとう朋花と、背広を着込み壁にもたれるプロデューサーが映っている。調光LEDと、劇場のステージ板を模した上敷きの床材とも映っている。どうやらここは、劇場のフィッティングスペースらしかった。
自前の施設で公演を開ける規模の劇場となると、衣装だけでなく照明、音響、舞台機構、資機材や資料置き場……とスペースはいろいろの用途でいくらでも必要だが、いろいろの用途がそれぞれどれだけ場所を必要とするかは、公演内容によってバラツキがでる。
39プロジェクトの劇場の場合は、大きなフロアを一つとり、そこを可動式パーティションで区画した多目的作業スペースとし、公演ごとにレイアウトを組み替えて対応する。レッスンや音響など専用建材がなければ成り立たないものを除き、ほとんどはそのフロアで作業して、省スペース化をはかっている。
「懐かしい、というほどの年月かな。俺にはあっという間だったよ」
「そうでしょうか、私は……」
「年を食うと時の流れが早くなる、ってやつかもしれない」
「老け込むような齢でしょうか、あなたは」
朋花はプロデューサーに近づき、ひそひそ声を投げかける。
1フロアで可能な限りなんでもカバーしようとする劇場のやり方は、デッドスペース極小化という面では効果だった。
代わりに、備品があちこち動くので誰がどこに動かしたかの管理がたいへんだとか、隣やそのまた隣のスペースにまでおしゃべりが聞こえてしまうとか、それなりに深刻な問題も生じた。かしましい少女たちが集まる場所で、あれがない、これはどこにいった……などと、おしゃべりが筒抜けとなると、作業に支障をきたす場面もあった。
朋花は、その騒がしさを耳と肌で感じると、良くも悪くも、劇場にやって来たという気分になれる。
心持ちが、ただの少女だけでも『聖母』だけでもない、アイドルの色に塗り替わっていく。宙を舞えそうなステージ上の高揚と似ていて違う。うきうきするけれど、リラックスもできて、ときどき当惑もさせられる場所。
しかしプロデューサーの夢のとばりに描かれた劇場のフロアは、しぃんとした耳鳴りがにじり寄ってくるほど静かだった。寂しさが響いていた。劇場よりもむしろ、朋花の住む天空橋家の礼拝堂に近かった。
「プロデューサーさん、ずいぶんとおつかれのごようすで」
朋花とプロデューサーの距離は、どちらかが手を伸ばせば相手に触れられるぐらい。プロデューサーは壁にもたれかかったままだった。珍しく、だらしない姿勢だった。規律を重んじる天空橋家の薫陶を受けた朋花は、自分やファンやプロデューサーにハッキリと規律を求めてきた。壁にもたれかかるプロデューサーを見つけたら、夢であろうとなかろうと『気が抜けているんじゃありませんか~?』などと戒めるところだった。
「そういう朋花は、いつもの間延びがないな」
「間延び、って」
「間延びというか、噛んで含めるような、保母さんが子供に言い聞かせるようなあれだよ」
「ほぼさん?」
「保育士のこと、昔はそう言ったんだ」
※3
アイドル・天空橋朋花は、文節末を伸ばし、アクセントの切り返しを緩やかにしている。歌ったり演技したりナレーションしたりするときを除き、すべての発声がそうだった。
プロデューサーは、『間延び』が少女らしくなく、まさしく「保母さんが子供に言い聞かせる」さまに似ている、と言ったつもりらしい。朋花が『聖母』を名乗ることもあって、ファンや関係者や同僚アイドルの大半が、『間延び』が朋花のキャラ付けの一環だと思っている。
「保育士さんとは……言われれば、そんな気も、しなくもありませんが」
けれど、プロデューサーや、あるいは朋花をアイドルデビュー前から知る一部の「子豚ちゃん」や「天空騎士団」は、むしろ「保母さん」が朋花の素に近いと知っている。
「朋花の言葉は、チクリと刺さるから。声音だけでも丸めてもらわないと、なかなか受けづらくて」
「刺さるような痛いところの覚えがあるから、刺さるのではありませんか」
プロデューサーの『チクリと刺さる』と口にした響きこそ、朋花にも刺さった。
朋花は規律を重んじるたちだが、朋花自身は「他人へ積極的に『秩序を守れ』と言って回る人間ではない」と自分を見なしていた。事務所で永吉昴が野球に興じていても、双海亜美がプロデューサーにいたずらを仕掛けているのを見ても、秋月律子や田中琴葉が注意すると思って口うるさく言わなかった(松田亜利沙が不審な動きをしていたときは、さすがに釘を刺した)。
「痛いところの覚え、かぁ……聖母をただの女の子扱いしたとき、とか」
「いつのことですか。私、覚えが多すぎて、もう」
「確か、冬のカラカラに乾いて寒いったらない夜の……あぁ、思い出してもらう必要はないな」
朋花は、プロデューサーに右手首を掴まれていた。現実世界に置き去りにしたはずの体温と脈拍が、一気にここまで飛んできた。
「そういう自己完結、しないでいただきたいのですが……そうですっ、あなたは私に何の断りもなく、いきなりプロデューサーも事務所も辞めるなんて――」
プロデューサーの手が、朋花の手首を掴み、彼女の体をぐいと傾がせた。
いままでプロデューサーが朋花へ働いたことのない狼藉をされて、朋花は現実感をまったく抱けなかった。
掴まれたままの手首は現実以上の圧迫感を訴えていた。
※4
「ずいぶん弱々しげじゃないか、朋花」
「い、いきなり……プロデューサー、あ――ん、ん……っ!」
朋花はプロデューサーに手首を握られ引っ張られる。反発して後ろに下がろうとすれば、強引に引き寄せられ、力尽くで背中を壁に押し付けられた。
「昔は、俺の後ろから、プレッシャーだけで俺を金縛りにしてくれたのに」
「ら、乱暴は、やめ、てっ」
プロデューサーに至近距離から見下されて、朋花は『壁ドン』を思い出した。かつて、菊地真や徳川まつりが『壁ドン』を熱っぽく語り合っていたのを、どこかで聞いていたせいだった。
(じ、実際に体験――とは、厳密には言えませんが――させられてみると、威圧感、ありますね……)
しかしプロデューサーは、彼女らの話に出てきた少女漫画の男性より、ずっとギラギラ殺気立った目つきをしている。
「おかしいな。やめるなって言ったり、やめろって言ったり」
「それとこれとは、ぜんぜん話が違うじゃありませんかっ」
「違わない、って言ったら?」
プロデューサーの声は、朋花の鼻先近くから投げかけられているのに、声音は下から這い登るような聞こえ方をして、朋花の足腰がぐらついてしまう。朋花の手首に、プロデューサーの手がますます食い込む。食い込みの圧は感じるのに、痛みはほとんど感じない。夢にしたって出来すぎだった。
「朋花のプロデューサーやってるとね、魔が差すというか……朋花にこうしたくなるときがあって。もう最近は、朋花と並んでると、半分ぐらいそんな気分さ。それじゃあ、なぁ」
「まさかそれで、あなたは……私から……んぷっ!? んくっ……!」
朋花の返事をふさぐように、プロデューサーがくちびるを奪ってくる。
「んぐ、く、ふ、ぅ……ふぁ、んぅう……」
舌は、強引に朋花のくちびるの間をこじ開け、味蕾や口蓋をじわじわとたぶらかしてくる。朋花が首を振って逃れようとすると、もう片方のプロデューサーの手にうなじを抑えられ、ぐずぐずと抵抗が瓦解する。
(や、ぁ……そこ、は……っ!)
朋花は力を失いながら、ますます壁に強く押し付けられる。トップ寄りにまとめた大ぶりのシニョンが、壁にこすれてずりずりと痛々しく軋む。
「んくっ、ぁ、んぅう……! はふ、うぁ、ぷぁ……あぁ、このあたり、やっぱり、朋花は弱いんだな」
「よ、弱くなんて……聖母を何だと」
「俺はもちろん、まつりや美也にさえ触らせてなかったな」
プロデューサーの熱っぽくも得意げな声音が、朋花は腹立たしくてならなかった。
図星でもあった。
「それより……! き、キス……夢でも、したことなかったんですけどっ」
「そうか。ファーストキス奪っちゃったか……ただ、ね」
夢と現実が、境界線でつなぎ合わされたまま、入れ代わり立ち代わりくるくる回る。
「キスだけで終わらせられたら、たまんないよ、こっちは」
「あ、あなたは、私に、こうしたいって、思って」
「気づいていなかったのか、朋花? そんなおぼこには見えないが。何度か、俺に釘を刺してきたし」
朋花のうなじからプロデューサーの手が離れて、朋花の目の前でぬらりと揺れる。
(七つの大罪の淫蕩みたいなものでしょうか。でも、それって)
「つまり、朋花を抱きたくてたまらないんだ。セックスって言ったほうがわかりやすいか?」
「せ、せ……!? んぅううっ、く、はぁ、あ、あぁあ……っ」
※5
朋花も、アイドルが男の性欲を煽り立ててファンを釣ることを知っていた。ときに男が性欲に突き動かされて女に乱暴することも知っていた。
けれど、いま朋花に迫ってくるプロデューサーからは、単に釣られたり突き動かされたりした男の性欲と一線を画する、もっとおどろおどろしい感情を嗅ぎ取ってしまう。
「ひ、ぅうっ!? な、なんで、そ、こ……っ」
「なんで……? わからないか、朋花は」
朋花の感じたおどろおどろしさを上書きするように、プロデューサーの手は朋花の危惧を裏切る。
性欲に憑かれた男が手を伸ばしてくるような――少なくとも、朋花がそう想定していた――胸や尻のふくらみだの太腿だのは、軽く撫でるフリをするだけ。朋花は安堵混じりの戸惑いをにじませる。
そうした朋花の反応をプロデューサーは美味そうに舐めつつ、
「朋花が弱いのは、こっち、じゃないかって」
プロデューサーの手は、魔法か呪いのように不可思議に朋花へ絡みつく。
朋花が髪を撫でられると、内心の動揺までいっしょに撫でられた錯覚がした。肩胛骨に手のひらを押し付けられたら、肺腑や心臓を掴まれた錯覚までした。
「あぁっ、ん、ふぅ……っ! ぷ、プロデューサーさんっ、あなたっ……私の、そんなところ、見て……っ」
「あまり、見せてはもらえなかったが。それに、ちょっと気がとがめたし。朋花が見せたくないってのも、わかってたから」
プロデューサーと並んで、『子豚ちゃん』たちに愛と幸せを与えるべく励んでいた仕事の記憶が、厭うべき劣情でべっとりと汚された気がする。それでいて、上塗りされたプロデューサーの劣情が、朋花の肌に熱い痺れを呼ぶ。
「……っ! はぁ、はぁ……み、みだらな冗談は、よしなさい……っ! いまなら、まだ……っ」
「冗談、かぁ」
朋花の抗弁は、プロデューサーにとっても、朋花自身にとっても空虚だった。
(現実ならともかく、夢の中で……私を冗談でごまかしたり、貝のように黙ったりなんて……この人にできないはずです。そんなこと、私だって、よく――)
「ひぁあっ!? あ……せ、なか、は、あ……っ」
「あぁ、そんなに弱いんだったら、背中とか、首とか、衣装であんなに露出させちゃいけなかったか? 教えてくれれば、隠しておいたのに」
「んはぁ、ぅ、あっ……そんなこと、言うわけ……っ!」
「教えてくれなかったよな。『聖母の心を何もかも解き明かそうなんて生意気』なんて」
「な、生意気、って」
朋花の結い上げられたシニョンが、ぱさりとほどけた。
それを合図にしたかのように、朋花の手と足が力を失い、腰が落ちそうになって、かろうじてプロデューサーの腕と胸が彼女を支えた。
「いまは、なんだかしおらしいな、朋花」
「あ、ぁっ……ぷろ、でゅーさー、さん……っ」
(私……プロデューサーさんの、心の中に、勝手に入り込んで……)
朋花の背中は、プロデューサーの指が食い込んでいた。肩はプロデューサーの腕が締めつけていた。頬と髪はプロデューサーの胸板が押し寄せていた。
それらに朋花は、苦しさと奇妙な高揚を覚えていた。
※6
「は、ぁ……ふ、ぅあんっ、んふっ……! だ、めぇ……っ!」
白と青の半袖シャツと、ぴったりした灰色の膝丈パンツ。朋花のレッスンウェアのどこかへプロデューサーがシワを刻んだりピンと伸ばしたりするたびに、朋花から甘く弱々しい吐息が漏れる。
もはやどこが弱いかわからなくなるほど、朋花はプロデューサーに敏感に反応していた。
「好きだよ、朋花」
「んむ、ぁ……ひぅ、んっん……っ!」
「まぁ、朋花が『好かれたい』と思ってたような形じゃ、ないだろうけど」
「だ、だったら、お願い、て、止め、てぇ……!」
「この手が止まりそうもないから、届かないところに行こうと思ったんだが……」
朋花が手足をよじって逃れるには、もうプロデューサーに近づきすぎていた。
「……こうなってしまっては、しょうがないよな」
「しょうがない、なんて、言い訳っ、私は、ぁ……ひゃあぅっ!」
「半分ぐらいは、朋花のせいだよ」
朋花の抗弁は、か細く震えた。
性欲によって理性を捨ててしまった男は、よく「しょうがなかった」「あいつが悪い」と状況や他人へ責任転嫁する。もし朋花が、夢の外でプロデューサーに迫られていたとしたら、そう容赦なく指摘し、相応のおいたを食わせていたはずだった。
「んぁっ……! や、ぁ……そこ、触っちゃ、あ……あぁぅうう……っ!」
しかしいまの朋花とプロデューサーに限って言えば、『半分ぐらいは、朋花のせい』だった。
少なくとも、朋花は『朋花のせい』を否定しようとして、いっこうに言葉が浮かんでこない。
(わ、私が……プロデューサーさんに、みだらな思いを起こさせて、隠そうとしたのをつついて……そんなのっ、わかりませんっ……私以外にも、みだら……魅力的な方は、いたはずで――)
「そこで、私が鯛海老にとどめを刺そうとしたら、伊織ちゃんが悲鳴を上げてしまって、逃げられてしまったのです~」
「それは惜しすぎるのです! 鯛海老は、姫が呼びかけても食べられに来てくれない困ったさんですけど、お味はわんだほー! ですから」
(――えっ、美也さ……まつりさん、も……!?)
朋花の連想がプロデューサーの夢に干渉したのか、パーティションの向こうから、朋花にとっていま聞きたいのに聞きたくない二人の声が響いてきた。
「……まつり、美也、か。この声は」
「ぁ、うぁ、だ、めぇ……っ!」
朋花の肢体が、プロデューサーの腕でさらに強く締め付けられる。朋花は悲鳴じみた吐息を漏らす。
呼吸もままならないほど押さえつけられ、肌の熱い痺れが増して、いよいよ彼女の分別まで焦がしていく。
「……ほ?」
「どうか、しましたか~」
「ちょっと……不穏な気配、したのですが……」
足音と声が止まる。朋花は戦慄する。パーティションごしにこちらに気づかれたかもしれない。
(2人とも、プロデューサーさんの夢へ……? まさか、私じゃあるまいし、でも……)
他人の夢に入れる朋花ならともかく、まつりや美也が現実から夢の扉をこじ開けてここに侵入してくるはずがないのに、朋花は本気でまつり・美也の反応を恐れた。
※7
「見つかったら、まずいかな」
「あたり、まえ、です……!」
「だよな。これじゃあな」
「誰の、せいだと思って……っ!?」
朋花の抗弁に、プロデューサーは吐息だけで笑った。
「朋花のこんな顔、2人が見たら……どんな反応するか、楽しみだったんだけど」
朋花のあごと後頭部に、プロデューサーの手のひらが押し当てられる。
「ぁ……!? い、いきなり、なんで……っ」
「鏡で、自分の姿を見てみればいい」
プロデューサーの手のひらに、視界を捻じ曲げられる。向けられた先は、姿見のうちの1枚。
「見えるか?」
「み、見え……ふ、ぁ……!?」
朋花は一瞬、それが自分の姿だと認識できなかった。
ロングヘアもレッスンウェアもクシャクシャに乱れ、頭と顔はプロデューサーの手で半分弱も隠れている。けれど、その隠れた向こうにある蕩けた視線と表情は、見えてしまった。
「や、ぁ……こんな、私、わたし……っ!」
「こんな『聖母』は、とても見せられないか。刺激が強すぎて……」
いいえ、これは夢だから、私とプロデューサーさんの記憶の中だけ――と抗弁しようとして、朋花は答えに窮した。自分とプロデューサーの姿は現実でない……が、自分とプロデューサーの間でだけはこの淫行が共通の記憶となる。その矛盾を、改めて意識深くまでねじ込まれた。
「そこ……誰か、いるのですか?」
「どうでしょうね~。響さんのお連れかもしれません」
「それだと、姫はおしゃべりできないのです……」
プロデューサーは息を潜めつつ、より力を込めて朋花を抱き寄せた。まるで、プロデューサーが朋花をさらった盗賊で、まつりと美也が朋花を救出に来た騎士たち……などと、朋花は夢の中なのに夢想してしまう。
「それとも、見せてしまうのはしょうがないとして、助けを求めてみるか?」
朋花が抱かれながら見たプロデューサーの表情や呼吸は、朋花にばかり迫っていた。
(ぷ、プロデューサーがみだらな思いを起こしてしまう……のは百歩譲って、なんで、その対象が私だけなんですか……っ!?)
「あるいは、ひょっとすると……幽霊さんかも、しれませんね」
「幽霊? ……ひやっ、美也ちゃん、姫は、こっここわいのですっ!」
「本当ですか~?」
「こわいったらこわいのです!」
パーティションごしのまつりと美也の気配が遠ざかるまで、朋花とプロデューサーは息を潜めていた。
※8
まつりと美也が去ってから、ようやく朋花はささやきを漏らせた。
「プロデューサー……いまさら、逃げませんから……お願い、離して、ください……っ」
「へぇ、朋花……逃げないって? これの続きがまんざらでもないのかな」
けれど、プロデューサーの持つ成人男性の骨格と筋肉は、我が物顔で朋花の四肢を取り押さえたまま。
(私、本当は望んで……そんな、こと、私、は)
朋花は、プロデューサーの断固とした力加減から彼の劣情と執着まで感じ取って、意味をなさない程度の抵抗しかできなくなる。
「それに、もう気持ちよさそうな声を出しても、いいんだぞ」
「ひぁ、あ、く、ぅぅ、ぁぁああっ!」
レッスンウェアをしわくちゃにするほど愛撫を重ねていたプロデューサーの手が、いよいよ服に隠されていた朋花の肌へ、さらに粘膜へ迫る。くちゅ、くちゅ、という水音は、すぐに陵辱者の指先へついてまわる。
「……体のほうは、準備を進めてくれているようで」
「はぁっ、ん、ひうぅっ! ち、違います、そんな、これ、は……っ!」
「もっと優しくしてほしいかい。そっか、朋花、さっき……乱暴はやめて、って言ってたっけ」
「うっ、ぐ……ぅぅぅうっ……! ひぁっ、んうっ、ひうぅ……っ!」
朋花はくちびるを噛み締めた。
ここはプロデューサーの夢の中。プロデューサーのしたいことが実現する時空のはず。
そこで朋花の望みまで聞き入れられてしまったら、二人の望みの境がいよいよ曖昧になって、一緒くたに溶け落ちてしまう。そんな妄想に囚われる。
「ひぃぅっ!」
「ふ、ぅぅっ、すごい、締め付けだ……指一本だけなのに、めちゃくちゃきつい」
ついにプロデューサーの指先が、朋花の秘所を撫でた。純潔を保っている『聖母』の隠し所にあふれる潤いは、涙か愛液か。どちらにしても、プロデューサーが朋花の奥底に忍び入る助けとなってしまう。
朋花の膣口は、プロデューサーの長く骨ばった中指を、噛み付くともしゃぶり上げるともとれる具合で飲み込んでいく。飲み込むのと同時に、痺れて熱く疼かせる何かが、いよいよ朋花の奥まで侵食してくる。
「気持ちいいか、朋花」
「そ、んなっ……ひぅっ! やぁっ、あぁ、あぁああぁ……!」
ここで知るはずではなかった女の快感が、朋花に染み渡っていく。
玉のような汗が額や頬をつたう。レッスンウェアの灰色をしたボトムスは、朋花の熱と濡れ気を吸ったようにじっとり色を変えていた。
「朋花が気持ちよがってくれると、俺も興奮するよ」
「き、気持ちよくなんて、な……あッ、きゅぅっ!? ひぅ、ぁぁああっ!」
クリトリスをつままれた瞬間、朋花の嬌声が五線譜の上まで何度か突き抜けてしまう。プロデューサーの手付きは痛みを与えないものの、朋花が一度でも声を跳ねさせれば、そこを何度も捉えて責め続ける。
(こんな、の……プロデューサーさんの、手で、私が、ぁ、ああっ)
すでに心に弱みがあった朋花が、苦しいほどの快楽を休み無しに送り込まれれば、いよいよ侵食は止まらない。
「あ、ァ……ひぅっ、も……だ、め……ぁ、あ、ぷろ、でゅ……」
「……朋花のだめなところ、見たかったよ。すごく、いままで、ずっと」
「だ、め……本当に、だめ、で……っ」
現実と違って、夢に逃げ場はない。
※9
「だめって言われてもな。お別れなんだから、いっそ俺に愛想を尽かしたら、ちょうどいいだろう」
「や、ぁ……ひ、ぁあ、ぅああぁあ……っ!」
もう少し乱暴にしてくれたら、朋花は本心からプロデューサーを見限れたが、プロデューサーはそこまで朋花を突き放してやらない。くちくち、にちにちと湿った羞恥心が朋花から染み出して、レッスンウェアと、下着と、肌と、粘膜と、プロデューサーの指と、どんどん濡らしてしまう。喜悦に体が靡いていく。それを心に理解させられる。
心だけでなく、脚も開かされる。
「み、見ないで、そんな、ところ……っ!」
「……初々しいなぁ。きれい、だよ」
ついに朋花は、レッスンウェアと下着を引き下げられ、両の太腿を割られる。ぴっちりと閉じた秘所にまばらな陰毛を見られ、それらにプロデューサーからの賛嘆を浴びせられる。熱さ冷たさの入り混じった身震いに襲われる。
「そんなところ、褒めて、私、は……やあっ、ふぁ……い、や、んぁっ……! ぷろでゅ……あぁあっ!」
プロデューサーが優しく舌先で陰核を転がして、陰唇をなぞってくる。朋花はクンニリングスの刺激を受けた経験などないが、秘すべきところを劣情混じりの優しさでもてあそばれているという状況だけでもじゅうぶん彼女は乱れてしまう。朋花の背筋を快楽が忙しく往来し、肌も髪も忙しく揺れる。
「朋花は、優しいのがお好みなんだ」
「い、言わないで、くださいっ……! 鬼の首でも、とったように……」
朋花はもう、自分が座っているのか、何かにもたれているのか、床に転がっているのかすら定かでない。それより、股の間から見上げてくるプロデューサーの笑みが、思ったより茶目っ気を含んでいるのに気を取られる。
プロデューサーが舌の代わりに、指を秘裂へと沈み込ませる。 秘裂の潤みを舐めるように絡め取りながら、陰核の根本をとらえてくる。
「あ、ぁああっ!」
パーティションを1つ2つ飛び越える嬌声。プロデューサーはそれで満足したような笑みを見せながら、指使いはかえって勢いを増す。陰核裏か根本かのGスポットを、膨らみがきざすまで指腹で撫でる。別の指では、陰核へ愛液を塗りつけるようにこね回す。
朋花は声を殺そうとするが愛撫に抗えず、あ、あっ、と絞り出させられる。プロデューサーが愛撫の手を止める。小休止は、朋花の反応を探っているのか、あえて余裕を与えているのか、単に喘ぎの余韻を味わっているのか。朋花にはすべて当てはまっていそうに思えて、羞恥とともに下くちびるを噛む。
※10
「可愛いよ、朋花」
「……っ、『聖母』に、可愛い、なんて、あなた、不遜な言い方をっ」
「別に、いま気づいたわけではないよ。前からさ」
羞恥を煽るプロデューサーのセリフに抗弁したら、返しの一言で羞恥を過去まで引き伸ばされた。
「そんな顔されたら、もっと可愛くなってもらいたくなるじゃないか」
「あ、あなたは、この期に及んで、私の、せいにっ」
「俺が、夢にまで見たことがあるのは朋花だけなんだよ」
プロデューサーがそう口走ったのと同時に、朋花の膣外と膣内を取り巻いていた指が、指関節一つほど深く食い込む。喜悦と羞恥が一段跳ね上がる。陰核が指先に押し倒され、こすり立てられ――チュクチュク、チュクチュクと水音が立ち――つまみ上げられ、ねじ伏せられる。
「う、ああっ!? ふあ、あぁっあああっ!」
朋花はプロデューサーの腕を掴み、彼の皮膚に爪痕を薄く刻みながら、膝から内腿までをわななかせる。水彩絵の具のような微かなとろみのある飛沫が、視界の端でくちゅりと散る。羞恥で散々に熱せられた興奮が、ついに沸騰して吹きこぼれを起こす。ふくらはぎや太腿など大きな筋肉も、指先の小さな筋肉も、プロデューサーの愛撫で揃って強張り、緊張に耐えきれなくなって弛緩して、また快感で叩き起こされ、朋花の神経と理性を揺さぶってやまない。
「や、ぁ、め……っ! う、く、ぐぐ、ふぅううっ……!」
朋花は目を閉じて、歯を食いしばった。そうしていないと、心臓や肺が抑えきれそうもなかった。鏡を見なくても、朋花は自分の姿が恍惚に染まっている、とわかってしまっている。できれば顔を隠したかったが、いまプロデューサーの腕を離したら、快楽を抑えられるかわからない。それほど朋花の随意筋は、意思から快楽に奪われている。
「可愛いよ、朋花」
(こんな、私……か、可愛いわけが……ぁ、ああぅうっ……!)
プロデューサーは、愛撫で朋花を追い詰めることと、朋花の反応を味わうことが同時にできないらしかった。指で激しく朋花をいたぶり、声で優しく朋花をたたえた。激しく優しく、行ったり来たりの繰り返し。プロデューサーは飽くことを知らない。
(や、ぁ……止まって、私の……こんなの、知らない、のに……っ!)
朋花は必死で声を殺していたが、声以外は性感に蝕まれていった。
激しく優しくの繰り返しが3往復したとき、朋花の内腿はピンと緊張して、当人の意識以上に必死で脚を閉じようとした。これ以上の愛撫が危険だと恐れ慄いているようだった。けれど両脚の間にプロデューサーが陣取っていて閉じ切れなかった。
5往復したとき、朋花の膣や下腹が刺激に耐えかねてか、かくかくと上下に細かく痙攣しながら、さらさらと涙のような愛液をこぼしてプロデューサーを濡らした。肌の上で骨盤や肋骨の一部が浮き沈みし、隠そうとして隠しきれない絶頂感を暗示していた。
「朋花のなにか我慢しているそぶりなんて、ほとんど見たことなかったけど、もったいなかったな」
「あっ……! あ、あ、ぁくっ、ぅうぁぅう……っ!」
「良かった。最後に、ここで知ることができて」
もう1往復。
もはや、なんのためにくちびるを噛み締めているかも曖昧になっていく。
※11
「……朋花」
「や……ぁ、はぁ、はぁ、あ……あ……」
朋花の肉体は焼かれたように熱く強張っているのに、朋花の意識は蕩けていた。
(あ……あれが、男の、人の……指よりも、ずっと……っ)
朋花は髪を撫でられながら頭を起こされて、プロデューサーの肉体を見た。ここまで手や腕や舌や胸板ぐらいまでしか感じていなかったが、ついに勃起したペニスを突きつけられる。
朋花には、それが大きいとも小さいとも判断できなかったが、少なくとも彼女の体が受け入れたことのある異物としては、これまででもっとも大きく太い棒だった。
「挿れるよ」
「う、ぁ……だ、めぇ……そんな、おかし、く……っ」
口以外はされるがままに脱力していた。プロデューサーになんなく足を開かされ、亀頭に秘所を割られる。
「ふ、ぅ、ぅぁ……っ!」
「息をちゃんと吐いて、力を抜くんだ。朋花」
質量と熱さが膣内を押し広げていく。これが男だ、と考えさせる間もなく一瞬で認識させるモノが、朋花の奥をぐりぐりと探る。
「……ま、だ、入ってくるの……! く、くる、し……っ!」
(な、ナカ……そんな、おく、まで、わたし、しら、な……っ)
朋花はため息とともにそれを耐えた。痛みは鈍く深く、それでいて指責めに比べれば我慢しやすい感覚だった。そのおかげで朋花は、これが夢であることを思い出した。
「く、ふぁ、あ……っ、う、ぅやあ、ぁあっああっ……!」
「あぁ、とうとう、朋花に……ははっ。もう、死んでもいいや」
プロデューサーは、快楽というより感慨に耽っている風で、朋花の奥底にペニスを挿入したまま何度もため息を漏らした。挿入して、朋花を押し倒しのしかかったまま、背中を曲げ、肩をうなだれさせて止まってしまった。子宮に向かって還ろうとして還れない赤子を思わせた。
静かな夢の中で、二人のため息が混ざり合うあたりだけが浮いていた。
(ぁ……わた、し、本当に、プロデューサーさんと、こんな、せ……せっくす、なんて……ぁ、あっ、んんっ……!)
指で絶頂に慣らされた朋花の膣内は、ペニスで火照りきった奥底をえぐられていた。感慨から戻ってきたプロデューサーが、緩やかに腰を使い始めると、やがて膣粘膜と腰がプロデューサーを艶かしく受け入れていく。
「……あぁ、んぅぁっ……! おく、きちゃ……あ、あっあっ……!」
「気持ちいいよ、朋花、朋花の、おまんこ……いつまでも、こうしていたい……っ!」
朋花は、入れられたばかりよりも自分の膣内が狭くなっている、と自覚していた。膣の浅いほうが子宮を守るように必死でペニスを締め付ける一方、かんじんの奥のほうはさらなる刺激を求めてか、プロデューサーの切っ先に靡くようにもぞついていた。
「あ、あなたに、お、奥、されたら、ぁ……あ、あ、あぁあああ……っ!」
緩やかなままのピストンに、グチュ、グチュと行儀の悪い水音が混じってきて、朋花の羞恥を上塗りする。同時に勢いづいたプロデューサーは、朋花の膣内をすべてペニスで征服しようとばかりに、丹念に抜き差しを繰り返す。撹拌するように斜めに出入りしたかと思えば、入り口まで引いてそこで子宮を焦らしてから一気に突き入れる。あるいは、奥に突き刺したままプロデューサーが朋花を抱きしめて足腰を揺らし、遅く重い責めを食い込ませる。
「あうっ……! も……だ、め、あ、あっ……! は、ぅあっ……あう、あゃ、あ……! い……っくっ……!」
朋花にやってきたアクメは、彼女の雌欲から染み出したものなのか、プロデューサーのみだらな欲望に中てられたのか、判然としなかった。くちびるの端からあふれるよだれも、額や乳房から滑り落ちる汗も、秘所から漏れてにちゃにちゃと鳴る愛液も、すべてアクメのようだった。
「根本から、先まで……吸い付かれて、イクときの朋花、舐め回してるみたいだ……声が詰まるのも、エロ過ぎて……朋花、あぁ……!」
「い……や、ぁっ……! い、いって、なんか、いません……んんぅ、ふぅぁ、あぅ……っ!」
※12
朋花が呼吸や声を詰まらせると、プロデューサーは彼女を気遣ってか、体温と体温を絡ませるように深く結合して、抱き合ったまま呼吸を整えさせた。それがまた、朋花の被征服感を増幅させる。
(プロデューサーさん、あんな嬉しそうに、して……こんな、私を……プロデューサーさんは、望ん、で……っ)
しばらくすると、プロデューサーが動きを再開する。
浅いところも奥まったところも漏らさず、ペニスを擦り付け刻みつけていく。
「ふぁ、ああ、あ、あぁ、奥っ……子宮、潰され……あぐ、ふ、くぅ……ぅううぅ……っ!」
指のときの激しく優しくと同じような展開だったが、朋花をつんざいたり串刺しにしたりする快楽は、一往復一往復がずっとじんわりと残った。それを塗り重ねられると、朋花の中も外も、いよいよ快楽の色ばかりになる。
「い、イク、イっちゃい、ますから……や、やめ、おねが……ぁ、ああっ、っくいくい……く……っ!」
「く、ぅ……朋花がイクと、締まる、締まって、俺、も……!」
要領をつかんできたのか、プロデューサーの抜き差しは容赦がなくなる。亀頭をぐりぐりと子宮口へ押し付け、引き抜く際にカリ首でクリトリス裏をえぐった。切り返しのたびに、朋花は絶頂感に膣内どころか下腹部も下肢も塗りつぶされ、震え上がるばかり。
「っく……い、……ぃ……あ、あ、う、あ゛っ……!」
声を噛み殺すなんて夢のまた夢。それでも朋花は気を張って抑えようとするが、抑えようとすればするほど、快楽は報復じみて強くなった。
「やァ、ふか……い゛っ……こ、これぇ、いぐの、とまら……んん、ッ、アあ、おお゛……ッ」
朋花はプロデューサーの前で快楽に抵抗していた。弱音を吐くより、快楽に屈することは耐え難かった。夢の中だということも忘れて、必死に身を捩って逃れようとする。しかしプロデューサーに体重をかけて覆いかぶされ、四肢で絡め取られペニスで串刺しにされ、どうあっても逃れられないと叩き込まれてから、また秘所がピストンにさらされる。
「朋花が、こんなイキ顔見せてくれるなんて……しかも、俺のチンポで……いまでも、夢みたいだ……」
再度の抵抗を封じるためか、プロデューサーは朋花を四つんばいに押し倒してから、改めて後ろからペニスを突き刺した。
「い、や、おねが……こんな、かっこう、だ、め……っ」
「バックだと……あぁ、朋花の弱いところ、髪も、うなじも、背中も、近くていいな……」
熱くたぎるペニスが、ずぐずぐと朋花の入り口を睥睨して、また膣内に侵入する。
「よ、よくないです、そんな、の……あ、あ、あ、あぁ゛っ!! や、あ、こん……な……う、そ……」
「嘘じゃないよ、ほら、見るんだ……」
プロデューサーが朋花の後ろ髪を引っ掴む。現実逃避の真似で床に突っ伏された朋花の顔を、強引に上げさせる。
「あ、あ……い、やっ……こんなの、は……恥ずかし……っ!」
朋花は、後ろから四足の哺乳類のように貫かれたまま、汗だくの肌と蕩けた表情をまとう。床は朋花の形に濡れた跡がついている。鏡越しにそれらの痴態を見せつけられ、朋花はぶるりと背中が震えてしまう。その震えは鏡には映っていないが、プロデューサーにはしっかりと見られているはずだった。
「ああ゛、あ゛……く、くぅ、しい、です……奥、は、はまっ……子宮、にぃ……!」
指より長いものも太いものも受け入れたことのなかった朋花は、子宮口を開かれ貪られているかどうかなど、知るよしもなかった。ただ、ペニスを突き入れられながら、胃袋と心臓をまとめて鷲掴みにされたような感覚が、朋花に知るよしもない叫びを口走らせた。
※13
「ん、んん、んん゛ん゛っ! ぁ、あ、あ゛あ゛っ、い、いく、イキます、から、ぁ、や、やめ……ぇ、ぁ、ああ……っ! ぁあ……っ」
朋花の顔や首は、肌から湯気が立ちそうな体温と水分に、長い髪の毛が絡みついて、いよいよ狂気じみてくる。プロデューサーのペニスがポルチオに達するたび、朋花の背は快楽とも苦悶ともとれる角度で仰け反って、四肢は大きすぎる快楽に怯えて震えが止まらない。それでもプロデューサーは朋花の腰を掴み、抜き差しを繰り返す。
「いぐ、ぅ、ぅううぅっ……イグ、いぐいぐいぐっ……ぷろ、でゅ……ぁ、あ……い、ぐ……っ」
絶頂を宣言してしまうことへの羞恥も、いまの朋花には生易しかった。朋花の喘ぎは、強すぎる快楽をもたらしてくるプロデューサーへの非難と哀願がもみくちゃになっていた。
(膣奥……深い、の……奥から、イク、イッて、しまうから……だから、止めて……休ませ、てぇ……っ)
「こんなに、苦しそうなのに、朋花、いっしょうけんめい感じてて……あぁ、朋花……っ!」
プロデューサーは、朋花の非難かあるいは哀願を聞いて、ますますペニスを猛らせる。
「はっ、あ……おねが……もう、私、イクの、だ……イッて……ほぉっ!? お、ぁおおあ゛あ゛……ッ!」
「朋花……ごめんな、もう……俺も、イキそうだ、これで、最後、だから……!」
朋花の肉壷は、とうに主から離反して、突きこまれるプロデューサーのペニスを、抱きしめたり引きずり回したりしていた。快楽に適応し、作り変えられつつあった。
夢から目覚めた時にどうなっているか、プロデューサーどころか朋花にさえわからない。
「とも、か……もう、出る……中に、中に、出す、ぞ……っ!」
「はっ、あ、はっ……ナカ、なかは、だめ……っはぁぉ、んっ……!? くっ、ふぅ……っ、い、やっ、やめ、おねが、ぁ……ぷろでゅーさんっ……ぁ、あっ……」
作り変えられた朋花の肉壷は、射精が近いという宣言だけで、精液を搾り取るための締め付けを強めた。ぬちゃぬちゃと水音が立って、声帯のない膣口が催促しているように響いた。
「へぅぅ、う、ぁ……ぷろでゅ……ぁ、んぁっ……――なか、ぁ……っ!」
朋花の膣粘膜は、奥に突っ込まれたペニスがびくびくと何度か震えるのを感じたきりだった。顔を上げると、鏡に映るプロデューサーの表情が見えて、それで自分が本当に膣内射精されたと気づいた。
(あ……おなか、に……あふれ、ぇ……こんな……覚えたら、私、は……っ)
朋花が射精に気づくのを待っていたかのように、子宮から圧倒的な恍惚がとめどなく溢れた。プロデューサーの拘束も解けていて、ついに朋花は犯されたまま床に突っ伏した。
「……ごめんな、朋花」
プロデューサーは茫然自失の面持ちでしばらく朋花を見下ろしていたが、やがて彼女に背を向けて、パーティションの一枚をどかして立ち去ろうとする。
その足が、止められた。
「……え?」
「なに、泣きそうな顔してるんですか……プロデューサーさん~?」
「な……と、朋花……きづ、いて……っ!」
スペースを区切っていたパーティションのうち一枚は、プロデューサーの手で半分も退かされていた。そのまま彼が歩き出せば、朋花を置き去りに出来た。
しかし朋花が突っ伏したまま左手を伸ばして空を掴んでいた。ただそれだけでプロデューサーの足は、杭を打たれたように動かなくなっていた。
「う、動かな……どう、して……っ」
「夜想令嬢の頃を、思い出してしまいますね~」
(あなたの夢に……勝手に上がり込んだのは、私の咎です……が、それにしたって……)
朋花が、快楽と苦悶が焼き付いたままの足で、ゆらゆらと立ち上がる。
陵辱を忘れたようにぴっちり閉じていた秘所が、歩くとほころんで精液か愛液か何かがどろりと溢れて、内腿を垂れ落ちながら膝まで斜めの軌跡を描く。
「あなたは、本当に……私を怒らせた理由、わかっていないみたいですね~。本当にしょうがない人、です」
「とも、か、ぁ」
朋花がプロデューサーに近づいていく様子は、詰め寄るというには弱すぎた。すがりつくというには強すぎた。プロデューサーの口は、朋花の名前を一度漏らしたきり、あとは無音で虚しく開け閉めされるだけ。
「そうやって……自分だけで勝手に解決した気分になって私を置き去りにするの、傷つくんです」
あと4000字ぐらいなんですが
書き直しが必要なところを見つけてしまったので
続きは夜に投下します
また参考が一つ抜けていました
ttps://www.famitsu.com/news/202007/11201080.html
※14
「……動かな……朋花、俺を止めたのか、どうして……!?」
「さぁ~? あなたが知るのは、いつのことになるのやら」
朋花が左手のひらを床へ向けると、まるで指図されたようにプロデューサーの腰が抜けた。
「あなたは、ときどき……おそろしく察しが悪くなりますからね」
床に座り込んだプロデューサーに、朋花はしゃがみこんで視線を合わせた。その所作は、直前まで陵辱されていた男に相対しているのに、まるで子供を相手にした保護者のように堂に入っていた。
「二度も私に黙って去っていこうなんて、よっぽど後ろめたいことがおありのようで」
対してプロデューサーは、まさにいまから叱られようという子供。目を伏せようとしたが、かなわなかった。朋花の左手が、今度はプロデューサーのあごを絡め取って、あっさりと視線を朋花の顔へ向けさせた。
「そんなに、私に欲情したのが罪深い……とお思いで。私の前から、黙っていなくなるよりも」
もはやプロデューサーは、朋花の許しなしに一言半句も紡げない。
「……『情欲を抱いて女を見る者は誰でも、すでに心の中で姦淫を犯したのである』……ご存知ですよね?」
「う、ぁ……っ」
朋花の左手が、プロデューサーに食い込む。指先が動脈越しに心臓の鼓動をすくい、縛る。
「痛みますか~?」
「い、痛、ぁ……えっ、痛みが、ある……? まさか、これ、夢じゃ――」
「――夢ですよ。でも……事ここに至れば、どちらにしたって同じこと」
(私に欲情して、犯した。それを罪と思うなら、もうあなたは手遅れ。私から離れたって、私から許されない限り、自罰意識で潰れるだけ)
朋花は、プロデューサーが自分なしではやっていけないと――そうなってしまうほど、彼の心の深みに夢を通して入り込んだと――信じた。
仮にそうでないとしたら、これからそうしてあげようと
「あなたは、私の元に戻るしかないんです。それがおわかりにならないなら……私が、これから叩き込んであげましょう」
そこにあるのなら迷わず護ってあげる、忘れないで――と口ずさみかけて、朋花は自分の気負いっぷりがおかしくて、つい頬を緩めてしまった。
「あなたの夢の中で、私があなたの足を止められた。あなたが、本当は私に止めてほしかった……そうでしょう?」
朋花は、プロデューサーを首絞めから解放しても、その圧迫の余韻も引かぬうちにペニスをむんずとつかみ、強引にしごきたてた。まだ生々しい交合の余韻がぬちゃぬちゃと鳴った。プロデューサーの口からうめき声が、鈴口から出し残った精液が弱々しく漏れた。
「な、ぁ……朋花、なに、を……っ」
「おとなしくすることです。さっきの私と同じぐらい、ね」
※15
意気消沈したプロデューサーの声と表情に反して、ペニスはびくびくと震えながら、早々と剛直の勢いを取り戻す。自分の手でプロデューサーの男性器を思いのままにしてしまう感触。朋花はそこはかとない満足感で頬が緩んでしまうのを自覚した。
「だ、だめだ、ぁ……ああ! 朋花が、こんなこと、やっちゃ……」
「あなたが私にするのはよくて、私があなたにするのはよくないのですか~?」
プロデューサーの返事を待たず、朋花はペニスの切っ先をぎゅうと締め付ける。
さっきと逆で、こんどは床に打ち沈んだプロデューサーへ、朋花が上からのしかかる。
「お――ふぉ、ぉお……っ!」
「これなら鏡も、いらないでしょう。その目を、そらさないでください」
朋花の指先がカリ首に引っ掛けられたまま、秘所へと導かれていく。閉じていた秘所が、今度は自分からペニスをくわえ込んでいく。
「あ、はぁ、あ――ふふ、ぅ、ふぁ……意外と、あっさり入るものですね~。もしかして、私とシたりなかったんですか~?」
「ぐ、ふぁ、あ、ぉ、ほぉお……っ!」
朋花がじりじりと腰を沈めてペニスを根本までくわえ込むまでに、プロデューサーは何度も首を震わせたが、ついに朋花とその結合部から目をそらせなかった。
(あぁ、はは、あっ……ナカで繋がっていたの、思い出して……でも、私は、プロデューサーさんの顔も見えるこちらのほうが……♥)
結合部から染み出す水音は、ぷじゅ、ぐじゅ、と、ぬるく気怠くなっていた。
「ぁ、くぉ、ほ、ぉ……し、しま、る……っ!」
「こうやって、私がしっかり引き締めていないと……プロデューサーさんは、身を持ち崩してしまいますよね」
動く側がペニスから膣内に変わっただけで、構図もまるでひっくり返ってしまった。
さっきは、プロデューサーのペニスが朋花の膣内を雄性で塗りつぶそうとしていた。いまは、朋花の膣内がプロデューサーをがんじ搦めに制圧すべくうごめいていた。
「プロデューサーさん、お返事は?」
「ぅあ、ああっ、ああっ……!?」
「お返事、できませんか。したいこと勝手放題にして、お部屋どころか頭まで空っぽになってしまったんですか」
朋花は、膣と下肢とでプロデューサーのペニスを縛りつつ、目線と両腕でプロデューサーの顔もとらえた。
(お部屋がおかしなほどきれいさっぱりだったのは……私と離れて、事務所も辞めて……まさか、この世からもお別れ、なんて魂胆だったのではないでしょうね?)
朋花は腰を前後にゆっくりと動かして、膣内でプロデューサーの勃起をみちみちと舐めしゃぶる。それでいて、プロデューサーに向ける説諭は、子豚ちゃんや天空騎士団に呼びかけるのと同じぐらい穏やかな調子だった。
「空っぽなら、好都合。あなたの中に、私を詰め込んで差し上げます。よろしいですね~」
「あ、ぁ、朋花、が……? なか……な、なに、を……」
「私のことが心に浮かぶうちなら、あなたは、迂闊な真似ができなくなるはずですので~」
朋花は膣でも腰でも、全力でプロデューサーを食いにかかっていた。
「ん、ふぅぁ……♥ プロデューサーさんったら、こっちばかり立派でぇ……♥」
「うぐ、ぁ、あっ、あっあっ」
固く強靭な肉茎は手加減なしに圧搾し、敏感なカリ首や鈴口は膣襞でさわさわとくすぐってくる。ゆめまぼろしでも望めない膣奉仕が、プロデューサーを朋花へ依存させていく。
「もう、わかってますか~? 独りよがりは、だめなんですっ。ひとりぼっちに、なっちゃうんですっ」
「わ、わかった、もう、勝手、しないか、ら、ぁ……だめっ、あ、あ、あっ、ああっ……!」
「……確かに、前に『弱音を許されているのは、子豚ちゃんたちだけ』……とも、私は言った気がしますが」
「あ、あぁ、そうだった……ほあぁ、あお゛っおぉ!?」
※16
強制的な慈悲と、拷問的な快楽が、プロデューサーを代わる代わる打ち据える。くじければ無理やり起こす。朋花が腰を叩きつける音は、いつからかズシズシと体重以上に重く響いていた。
「でもあなたはっ、私から……あ、ぁあぅっ♥ 私からぁ、ふつうの女の子みたいに、弱音っ、聞き出しておいてっ」
「だ、だって、俺は、ぁ……朋花の、ため、に゛……ぃ、い゛ぅう゛っ!?」
「だったら……あなたが私に何も言わないのっ、おかしいでしょうっ!」
朋花が、額と額がくっつこうかという勢いでプロデューサーの瞳を覗き込む。腟内がそれに合わせて前に傾き、刺激が一気に変わってしまって、プロデューサーは瞬き10回分ぐらいジタバタもがくだけだった。
もちろん、そんな抵抗で朋花の説諭は終わらない。
「反省、してますか?」
「……うぁ、あぅ、えぅ……っ、ゆ、ゆるし、て……朋花、ぁ、ゆるし……ぅううっ……!」
「反省してますかって聞いてるんですっ!」
「あ、ぐ、ぁああ゛、も゛、もぅ゛、で、でるっ、ぅううっ、ああぁ……っ!」
後背位では獰悪に朋花を陵辱していたプロデューサーが、いまは射精直後のペニスに粘膜でぎちぎち噛みつかれ悶え狂うだけの存在となる。泣こうがわめこうが抗えない。
「もうだめ? プロデューサーさん……現実じみた言い訳、おっしゃるのですね~」
「あ、あ゛ぅ、あ、ほぁ、も、も、限界、がぁ……っ!」
「終わらせません。私に黙っていなくなるなんて許しませんから」
「わ、わ゛がっだ、わかっだから、朋花、ともか、もっと、や゛、や゛ざじぐ……」
「へぇ……やさしく、ですか~?」
朋花の、折檻にも似た騎乗位の動きが緩やかになる。表情も、プロデューサーのペニスをくわえこんでいるにもかかわらず、『聖母』のように優しげとなる。つられてか、プロデューサーの顔も安らかに緩む。
「……その顔つき、鏡越しにさっき見ました。ダメですね、やっぱり」
穏やかな交合は長く続かなかった。
「ぁあお゛っおぉ!? と、ともか、な、んで……ぇう、うぁ、あ、ひぃいい゛ぅう゛ぁあっ!」
「あなた、さっきそんな顔で『死んでもいい』なんて口走ったじゃないですか。それはいけません。だから、厳しくします」
「っぎゃぁっ!? あっ、もっ、もう出な、あぁっあっ……」
「私に、黙ってっ、いなくなるなんて、許しませんっ! 許しませんからっ」
朋花が夢の中にいられなくなるまで、プロデューサーの夢は終わらなかった。
※17
「……あ、ぁ……っ♥」
朋花が寝室で目を開けると、天空橋邸の外は夜明け前と見えた。
(……ぬ、濡れて……ちょ、ちょっと、やりすぎましたか……?)
朋花の寝間着と下着は、彼女が起きてすぐ違和感をおぼえるほど、ぐっしょりと濡れていた。
(お風呂、入りたい、沸かさなきゃ……でも、その前に)
朋花は寝たまま手探りでスマートフォンを引き寄せ、メッセージアプリを起動させる。
『プロデューサーさん』
タップ、送信。
さらに既読がつくかどうかも確かめず、続きを書き殴って送りつける。
『私に黙っていなくなるなんて許しません』
(おしまい)
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