男「奴隷が欲しいんだけど」(55)

奴隷商人「ほぅ、奴隷をお求めですか?」

男「うん」

奴隷商人「ふむ、しかし随分お若いと見えますね」ジロ

奴隷商人「失礼ですが、おいくつですかな?」

男「今の時代、赤子でも奴隷を持つと思うけど?」

奴隷商人「それは王族か富裕層の方に限ります」

奴隷商人「貴方様はそういった方ですかな?」

男「いや、僕は只の冒険者だよ」

奴隷商人「ふむ…奴隷は安くても金貨30枚はしますが」

奴隷商人「金貨はいかほどお持ちですかな?」

男「安い奴隷を買えるだけはあるよ」

奴隷商人「…………なるほど」

奴隷商人(明らかに少年、歳は14あたりか…)

奴隷商人(身なりを見ても金貨30枚を持っているようには見えないな)

奴隷商人「おや…そちらの剣」チラ

奴隷商人「見せて頂いてもよろしいですかな?」

男「……いいよ」スッ

奴隷商人「ありがとうございます」カチャ

奴隷商人「竜の紋章に赤き刀身…まさか」

奴隷商人「これは、魔剣…?!」

奴隷商人「私はこの魔剣を知っております、貴方様はあの東の村の…?」

男「そうだけど、それが何?」

奴隷商人「では、貴方様が噂の炎剣の冒険者様なのですか?」

男「人が勝手に呼んでるだけだよ…」

奴隷商人「そうでしたか…こちらの魔剣はお返し致します」スッ

奴隷商人「貴方様の魔物討伐の話は商人の間でも話題になっております」

男「その魔物討伐の時の報酬が僕にはある」

男「これで、信用してもらえた?」

奴隷商人「はい、十分なほどに」

奴隷商人「どうぞ中へ、貴方様がお気に召す奴隷を必ずや提供致しましょう」

男「………」スタスタ

ーーー
ーー

奴隷商人「早速ですが貴方様はどのような奴隷をお求めでしょうか?」

男「種類があるの?」

奴隷商人「えぇ、勿論です」

奴隷商人「主人の性欲を満たす為の性奴隷」

奴隷商人「主人を守る屈強な守護奴隷」

奴隷商人「主人の邪魔な存在を排除する暗殺奴隷」

奴隷商人「多種多様な奴隷がおります」

奴隷商人「奴隷には何かに特化した者がおります」

奴隷商人「勿論、無垢な奴隷もあり貴方様のお好みに染め上げる事もできます」

奴隷商人「貴方様はまだお若い…性奴隷などはいかがでしょうか?」

男「僕は奴隷を買うのは初めてだ」

男「とにかく色々な奴隷を見て回りたい」

奴隷商人「かしこまりました…」

ーーー
ーー

奴隷商人「いかがでしたでしょうか?」

男「…………」

奴隷商人「ふむ、お気に召す奴隷はいませんでしたか…」

男「悪いね」

奴隷商人「いえいえ、奴隷とはいえ人との縁」

奴隷商人「お気に召さない奴隷など買っても仕方ありません」

スタスタ

手下「兄貴、こっちの奴隷の身体チェック終わりましたぜ」

奴隷娘「……………」

奴隷商人「ご苦労、どうだった」

手下「問題は無かったです、傷もないですしかなりの高値になりやすぜ」

奴隷商人「ほう、これはいい」

男「…………」

奴隷娘「…………」チラ

男「………ねぇ」

奴隷商人「はい、何でしょう?」

男「この娘はいくらなの?」

奴隷商人「生殖機能も問題ないので、そうですねぇ」ジロジロ

奴隷娘「………っ」ビク

奴隷商人「金貨80枚程でしょうか」

手下「おー、うちの奴隷の中でもかなり高いですね」

男「80枚、か」

男「この娘に質問とかしていい?」

奴隷商人「構いませんが…?」

男「じゃあ、質問するね」

男「君の素直な答えを聞かせて」

奴隷娘「…は、はい」コクン

男「君に主人が出来た時、君は主人を一人にしないと誓えるかい?」

奴隷娘「…………」

奴隷商人「??」

手下(変な質問をしやがるな…)

男「答えを聞かせて?」

奴隷娘「誓います…」

奴隷娘「私は、ご主人様を一人にはしません」ジッ

男「…そう」

男「決めたよ、商人」

奴隷商人「はい?」

男「僕は、この娘を買う」

男「これでいいよね」スッ

奴隷商人「は、はい」ズシ

ジャラ

奴隷商人「確認しろ」

手下「へ、へい!」

ジャラジャラ

手下「確かに金貨80枚ありやすね」

奴隷商人「受け取らせて頂きます、今鍵を…」

男「必要ないよ」チャキン

奴隷商人「何をなさる気ですか?!」

男「………」スッ

奴隷娘「………」ジッ

男「怖くない?」

奴隷娘「怖くありません」

男「……そう、良かった」ブン

ガキン バラバラ

男「これで、君を繋ぐ鎖はもうないよ」チャキン

手下「な、何てことを?!」

男「…??」

奴隷商人「ふむ、主人が奴隷の鎖を自らの剣で断ち切ることは奴隷を自由にするという意味なのです」

奴隷商人「貴方様はこの奴隷を買ったと同時に手放してしまったのですよ」

男「え、そうなの?」

奴隷商人「ご存知なかったのですね…」

男「ど、どうしよう…」

奴隷娘「ふふっ」

奴隷娘「私は先程誓いました」

男「え?」

奴隷娘「ご主人様を一人にはしません、私はご主人様に付き従います」ニコ

男「…ありがとう」

奴隷商人「素晴らしい奴隷ですな」

奴隷商人「また奴隷をお求めの際はこちらへお寄り下さい」

男「わかった、今日はありがとう」

奴隷商人「いえいえ、それではまた」

奴隷娘「………」ペコリ

スタスタ

手下「不思議な冒険者っすね」

奴隷商人「あれは冒険者などではない」

奴隷商人「東の村の魔剣を抜いた少年…」

奴隷商人「……彼は単なる『人殺し』だ」

ーーー
ーー


男「ここが僕の家だよ」

奴隷娘「とてもステキなお家です」

男「そうかな?結構ボロボロだけど」

奴隷娘「私には勿体ないほどです」

男「君が気に入ったならいいよ」

奴隷娘「はい、町から少し離れていますね」

男「こういうひっそりしたところが好きだから」

男「さぁ、中に入って」ガチャ

奴隷娘「………」

男「どうしたの?」

奴隷娘「」

奴隷娘「これから、よろしくお願い致します」ペコ

男「えっと…こちらこそよろしくお願いします」ペコ

奴隷娘「ご、ご主人様はそのようなことは…!」

男「僕がこうしたいの」

奴隷娘「そ、そうですか…」

男「ほら、中に入ろ?」

奴隷娘「はいっ!」

ガチャン

奴隷娘「わぁ…!」キョロ

男「そんなに珍しい物は無いと思うけど」

奴隷娘「私には何もかも貴重な物に感じます」

男「そう?君の好きに使っていいよ」

奴隷娘「私は奴隷です、ご主人様と同じ物は…」

男「なら、主人の命令として君は好きに使っていい」

奴隷娘「よろしいのですか?」

男「ここはもう君の家なんだし遠慮する必要なんてないんだよ」

奴隷娘「あ、ありがとうございます…!」

男「あぁ、君の部屋もあるからね」

奴隷娘「私に部屋…?!そ、そんな…」

男「…これも命令しなきゃダメ?」

奴隷娘「あ…うぅ…」

奴隷娘「本当によろしいのですね?」

男「うん」コク

男「さてと、まずは…」

グゥゥゥ

男「……ご飯食べようか」

奴隷娘「ふふ、わかりました」

奴隷娘「あの、私に作らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

男「それはもちろん構わないけど、いいの?」

奴隷娘「はい、精一杯作らせて頂きます」

男「じゃあ、お願いしようかな」

奴隷娘「はいっ!」

ーーー
ーー

男「す、凄い量だね…」

奴隷娘「申し訳ありません!その…精一杯やってたらこんなにたくさん…」

男「お腹空いてるし食べ切れるよ」

男「冷めない内に食べちゃお?」

奴隷娘「私もご一緒してよろしいのですか?」

男「一緒に食べた方がきっと美味しいよ」

奴隷娘「…ありがとうございます」

男「うわ、美味しい」モグモグ

奴隷娘「良かったぁ…」

男「料理はどこで覚えたの?」

奴隷娘「母から教わりました」

奴隷娘「立派な女性になれるようにと、小さい頃から」

男「そうなんだ、君の家族は…」

奴隷娘「………」

男「いや、今はいい」

男「いつか聞かせて欲しい、君の話を」

奴隷娘「…はい」

男「そういえば君、歳はいくつなの?」モグモグ

奴隷娘「16です」

男(…歳上か)

奴隷娘「ご主人様はとても…そのお若いですね」

男「子供っぽいってこと?」モグモグ

奴隷娘「い、いえ!そういう訳では!」

男「まぁ、子供だけどね」

奴隷娘「美味しいですか?」

男「美味しいよ?」

奴隷娘「幸せそうに食べていらっしゃるので…」

奴隷娘「作った者として幸せです」

男「君も幸せなの?」

奴隷娘「はい!」ニコ

男「そっか…」

男「ご飯食べたらお風呂入って寝よう」

奴隷娘「お、お風呂ですか?」

男「うん、君も入ってね」

奴隷娘「あの…お風呂の後は…その…」ボソ

男「ん?」

奴隷娘「いえ…何でもありません」

ーーー
ーー

奴隷娘の部屋

奴隷娘「ふぅ…」ドサ

奴隷娘「お風呂に入ってしまいました」

奴隷娘(ご主人様とお部屋は別々ですけど…)

奴隷娘(奴隷としての初夜)

奴隷娘(私はご主人様に捧げなければいけない)

奴隷娘(ご主人様ははっきり仰らないけど)

奴隷娘(私は性奴隷なんだから…)

奴隷娘「おかしなところはないですよね…?」

奴隷娘「震えてはダメ」ブルッ

奴隷娘「ご主人様に初めてを貰っていただける」

奴隷娘「それは奴隷にとって何より嬉しいことなんだから」

奴隷娘「…よし」

ガチャ

ーーー
ーー

男の部屋

男「何か今日はいろいろあったなー」ドサ

男「誰かが側にいるって何か久しぶりだ」

男(これからどうなっていくんだろう)

男(あの娘をあんな簡単に買ってしまった)

男(人の人生を買ったんだ)

男「どうして行けばいいんだろう…って、言っちゃダメだよね」

男「とにかく今はあの娘と仲良くならないとね」

男「奴隷とか、そういうのは良く分からないし…」

男「ふぁ…今日はもう寝よう…」

コンコン

奴隷娘「ご主人様、まだ起きてらっしゃいますか」

男「あ、うん…中に入りなよ」

ガチャ

奴隷娘「失礼します」

男「その寝巻き、似合ってるね」

奴隷娘「ありがとうございます、私にこのような服を与えてくださって」ペコ

男「与えたって…それで、どうしたの?」

奴隷娘「は、はい…あの…」モジ

男「うん?」

奴隷娘「そちらへ寄ってもよろしいでしょうか…?」

男「いいけど…」

奴隷娘「………」ストン

男「………」

奴隷娘「………」チラ

男「…一緒に寝る?」

奴隷娘「ひゃいっ?!!」

男(ひゃいっ…??)

奴隷娘「あ…ぅぅ…」ドキドキ

男「じゃあ、もう寝るよ」

カチ

男「ねぇ…」

奴隷娘「は、はい」

男「近くない…?」

奴隷娘「あの…私、初めてで…」スリ

男「え?」

奴隷娘「上手くできるか分からないですけど…」サワ

男「………」

男「あのね」

奴隷娘「はい?」

男「僕は君を性奴隷として買った訳じゃないよ」

奴隷娘「……え?」

男「僕は君に側にいて欲しいって思ったから買ったんだ」

奴隷娘「で、ですが…私は奴隷です!奴隷はご主人様に奉仕しなくてはいけません」

男「奉仕は嬉しいけど…僕はそういう目的じゃないから」

奴隷娘「では…私はどうしたら…」

男「………」

男「………」ギュ

奴隷娘「ご主人様?」

男「こうして眠りたいな」

奴隷娘「……わかりました」ギュ

男「ありがとう」

奴隷娘「いえ、おやすみなさいませご主人様」

男「うん、おやすみ…」ウト

ーーー
ーー

ゴワァァァァァァァァ

男(あぁ、またこの夢か)

アアアァァァ!

男(何もかもが炎に飲まれて、周りは化け物だらけ)

男(今でも覚えてる)

男(忘れられるはずがない)

タスケテ

男(またこの声だ…)

男(助けてあげられないんだ)

?「貴方は本当に救世主ですねぇ」

男「っ…?!」バッ

?「さぁ、貴方の剣で救って下さい!」

?「憐れな憐れな信者達を!!」ニヤ

男「お前だけは…!」

?「ふひひひひひっ!!」

ゴワァァァァァ

男「あ……」

タスケテヨ

男「…ごめん」

ドウシテ

男「ごめんなさい」

ヒドイヨ

男(あぁ、きっと)

ーーー生きて

男(救われたのは僕なんだ)

ーーー
ーー

ピト

男「ん…?」パチ

奴隷娘「おはようございます、ご主人様」ニコ

男「あぁ、おはよう」スッ

奴隷娘「悲しい夢を見られたのですか?」

男「え?」

奴隷娘「泣かれていたので」フキ

男「あ、えっと…ちょっとね」

奴隷娘「朝食をご用意しますね」

男「うん、ありがと」

男(何も聞いて来ないんだなぁ)

男(泣いてるとこ見られたのか…)

男「はぁ…」

奴隷娘「???」

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