定規「くそっ、俺の力はメジャーには通用しないのか……!」 (24)


定規「俺はアメリカに行く!」

三角定規「いよいよか……お前ならば大丈夫だろう」

コンパス「日本の文具界で大暴れしたお前の実力、見せてやれよ!」

定規「ああ、絶対メジャーを打ち倒して帰ってくる!」

分度器「定規君……気をつけてね」

定規「心配するな。お前は日本で待っててくれ」

分度器「うん、待ってる」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1523273005


三角定規「あれから一ヶ月、定規のやつ、どうしてるだろうか」

コンパス「そりゃあ、きっと大活躍してるに違いないぜ!」

コンパス「分度器ちゃんもそう思うよなぁ?」

分度器「う、うん……」

三角定規「ちょうど今日、あいつの試合の中継をやるみたいだから見てみよう」

コンパス「おう、そうしよそうしよ!」

分度器「……」


テレビ『定規、またしてもメジャーに敗れましたァッ! これで泥沼の五連敗!』

テレビ『メジャーの圧倒的長さの前に屈しました!』



三角定規「え!?」

コンパス「な、なんで!?」

分度器「……!」


『定規如きがメジャーに挑戦なんて早すぎたんだよ……』

『長さを測定する道具としての格が違うよなぁ』

『俺は最初からこうなるって分かってたよ』



三角定規「くっ、ネットでの評判も散々だ……」

コンパス「ちくしょう、好き勝手書きやがって!」

分度器「定規君……」


アメリカ――

メジャー「HAHAHA、ジャパニーズ定規、ユーは弱いネー!」

メジャー「ミーよりずっと短いし、目盛りを巻くことのできるミーに比べて、収納性もバッド!」

定規「うぐぐ……!」

メジャー「とっとと日本に帰るがいいネー!」

定規「くそっ、俺の力はメジャーには通用しないのか……!」


定規「たしかに、陸上競技なんかでも使われ」

定規「数メートルどころか数十メートル測れるメジャーと俺とじゃ長さが違いすぎる……」

定規「それに、俺は巻くことができない……」

定規「腹囲や胸囲を測ることもできず、収納性じゃかなわない!」

定規「メジャーと互角に戦うためにも、なんとしても肉体改造しなければ!」


定規「俺を伸ばしてくれ!」

マッチョ「分かった……やってみる! むんっ!」グイッ

定規「うげげげっ! ギブだ、ギブギブ!」ミシミシ…



定規「伸ばすのは無理だ! だったら巻けるように折り曲げてくれ!」

マッチョ「しかし……」

定規「やってくれ!」

マッチョ「分かったよ……ぬんっ!」グイッ

定規「あっ、ダメだ! 折れる、折れるぅ!」メリメリ…


定規「ハァ……肉体改造は大失敗だった……」

定規「やっぱり、このまま日本に帰るしかないのか……」

定規(三角定規とコンパス、ガッカリするだろうなぁ……)

定規(それに分度器……)


男「お、こんなところに定規があった! ラッキー!」


定規「!」


定規「おい、お前!」

男「な、なんだよ? 使っちゃダメなのか?」

定規「いや、そんなことはないが……なぜ俺なんかを使うんだ?」

定規「俺なんかより、メジャーを使った方が……」

男「だって俺、紙に線引きたいんだもん」

男「さすがにメジャーじゃ、やりにくいでしょ~!」

定規「!」ハッ


子供A「あっ、定規があるー!」

子供B「ホントだー!」

子供A「スターウォーズごっこしようぜー!」

子供B「やろうやろう!」

ガキンッ! キンッ! ガキンッ!

定規(定規でチャンバラごっこ……)

定規(これも……メジャーにはできないことだ)


女「メジャーはいちいち目盛りを出したりしまったりするのが面倒だけど」

女「定規はそのまま使えるのが便利よねえ」

女「それに、ペンやカッターナイフみたいな他の文具と一緒にしまえるのもいいわぁ」

定規「……!」

定規「そうか……そうだったんだ!」


定規「メジャー! 今こそ分かったぞ!」

メジャー「何がデース?」

定規「俺はたしかに単純な長さや巻けるという点では、お前に勝てない!」

定規「だけど、俺にだってお前に勝ってる点はいくつもある!」

定規「ようするに、道具ってもんは一長一短、勝負するようなもんじゃないのだと!」

メジャー「オー、グレイト! やっと分かってくれたんデスネー!」

定規「!?」


定規「さてはメジャー、あんた最初から……!?」

メジャー「ハイ、ミーは最初からユーの実力を分かってました」

メジャー「だからこそ、ユーには自分から目覚めて欲しかったのデース!」

定規「そうだったのか……」

メジャー「さぁ、一緒にアメリカで物の長さを計りまショウ! マイフレンド!」

定規「よろしく、親友!」


テレビ『定規が、メジャーとともにアメリカで大活躍……』



三角定規「一時はどうなることかと思ったが、定規の奴、アメリカでも通用しているな」

コンパス「ああ、年俸もうなぎ登りらしいぜ! ネットでの評価も手のひら返しだしよ!」

分度器「定規君、よかった……」



定規「みんなには心配かけたな」ザッ…


分度器「定規君……!」

三角定規「定規!」

コンパス「どうしてここに!?」

定規「シーズンオフになったから、少しの間日本に戻ってきたんだ」

コンパス「ったく、帰ってくるなら連絡ぐらいよこせよ! 迎えに行ったのに!」

定規「悪い悪い、みんなを驚かせたかったのさ」

三角定規「……おっと」

三角定規「我々は失礼しよう、コンパス」ササッ

コンパス「おう、そうだな」ササッ

定規(こいつら、いらん気をつかいやがって……)


定規「二人きりになっちゃったな……」

分度器「うん……」

定規「……」

分度器「……」

分度器「あのね、定規君……」

分度器「お帰りなさい」

定規「ただいま!」


定規「ところで……伝えたいことがあるんだ、分度器」

分度器「なに?」

定規「またアメリカに行く時は、俺と一緒にアメリカに来てくれないか?」

分度器「……うん!」




三角定規「この世に、あの二人の愛を測定できる道具はあるかな?」

コンパス「ないない! 測定不能に決まってるぜ!」








― 完 ―

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom