(レッスン後)
慶(ルキトレ)「はい。それじゃあ、今日のレッスンはここまで。お疲れ様でした♪」
ありす「はぁ…はぁ…お疲れ様でした…」グテ-
慶「ありすちゃん。いくら疲れていても倒れてちゃ駄目よ。身体が冷えないうちにストレッチ。それからシャワーを浴びて風邪を引かないようにしなさい」
ありす「は、はい…」ノソノソ
慶「うん。じゃあ足伸ばして前屈からやりましょう。後ろから押してあげるね♪」グイ-
ありす「い、痛いっ! 痛いです!」ギシキシ
慶「ありすちゃんは硬いから柔らかくしていきましょうね~♪」グイ-
ありす「橘です! 痛いです! あいたたァァァ!」ギシギシ
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(しばらくして)
慶「はい。ストレッチ終わり」
ありす「ふぅ…痛かったですけど。身体は軽くなったような気がします」コキコキ
慶「そのためのストレッチだからね。怪我予防だけじゃなくて疲労回復効果もあるのよ。トップアイドルを目指すなら意識しなきゃ駄目よ。ありすちゃん♪」
ありす「橘です。でも…勉強になります」
慶「ふふ。それじゃあ私は帰るわね」
ありす「あ、慶さん。1ついいですか?」
慶「何かな?」
ありす「慶さんはお弁当を作ったことがありますか?」
慶「お弁当?」
ありす「はい。最近、お弁当作りを勉強しているのですが、どうもうまくいかなくて…。慶さんなら味や見た目だけでなく、食べる人の健康を考えたバランスのよいお弁当を作れるのではないかと思ったのですが、どうですか?」
慶「…」
ありす「…」ジ-
慶「(き、期待の眼差しを向けられている…!)」
慶「…」
慶「も、もちろん作れるわよ!」カッ!
ありす「本当ですか…!」パァァァ!
慶「あ、あたぼうだよ! なんといってもトレーナーだもの! スケジュール調整やレッスンはもちろんのこと、料理炊事洗濯まで完璧にこなせるのは当然のことなのよ!」バ-ン!
ありす「かっこいい…!」キラキラ
慶「そんなことないよ、私にかかればチョチョイのチョイだけどね♪」ニマニマ
ありす「よければ今度、私にお弁当作りを教えていただけませんか!」
慶「え?」
ありす「チョチョイのチョイなんですよね!」キラキラ
慶「…」エ-ト
(事務所・キッチン)
コソリ
慶「(ありすちゃんたちジュニア組はもう帰ったよね…今のうちにお弁当の研究をしなきゃ)」
慶「(でも…きちんとした料理なんてやったことないのよね)」
慶「…」
慶「(手元に料理本はないから、とりあえず手探りで作ってみようかな。もしも間違えちゃったらやり直せばいいしね)」
慶「(…そういえばお弁当の歌があったよね。それに沿って作ればそれなりのものが仕上がるはずだわ)」
慶「…これっくらいのお弁当箱に♪」ルンルン
慶「ささみささみささみささみささみささみささみ…」ギュウギュウギュウ
慶「ちょいと詰めて♪」ギッチリ
慶「2段スペースにささみささみささみささみささみささみささみ…」ギュウギュウギュウ
慶「をちょいと詰めて♪」ギッチリ
慶「完成~♪」
【ささみのみっちり詰まったお弁当】デ-ン!
慶「…」
慶「蒸したささみだけだと…味のバランスが悪いかな?」
慶「ええと。低カロリーのドレッシングをかけて…と」ドボドボドボ
慶「完璧♪」
【ひたひたのドレッシングに浸かったささみ弁当】デッテレ-♪
慶「ふふふ。やれば案外出来るじゃない♪」
コソリ
柚「こんにちは。慶サン♪」ニュッ!
慶「ひ、ひゃうッ!?」ビクゥ!
柚「へへへ。こっそり声かけ大作戦成功~♪」
「も、もう! 急に驚かすのは駄目ですよ! 柚ちゃん!」
柚「ごめんなさーい♪ ところで…なんだかいい匂いがしてきたけど。何か作ってたのカナ?」
慶「よくぞ聞いてくれました。お弁当作りをしていたんですよ♪」
柚「へー、お弁当…って、ん!?」
慶「どうかしましたか?」
柚「…」
柚「慶サン。この『ささみの詰まった箱』は何カナ?」
慶「自信作です♪」
柚「これお弁当なのォ!?」ガ-ン!
慶「何か変でしょうか?」
柚「変というか…前衛的というか…ただのささみを保存しているタッパーになってるというか…」
慶「考えてみてください。柚ちゃん」
柚「何をカナ?」
慶「ささみは高タンパク低脂肪という理想的な食材なんですよ♪」グッ!
柚「だから何!? そんな嬉しそうな顔されてもこのお弁当の狂気はまるで薄まらないよ!? 際立つだけだよ!?」
慶「ええい。文句を言う前に私の料理を食べてみてください! せい!」グイ-
柚「あ、ちょ…モグァァァ」
モゲモグ
柚「…」ゴクリ
慶「どうですか?」
柚「ささみだね。予想をまるで裏切ることのないささみだね」ゲプ-
慶「パサつかないように下処理はきちんとしたんですよ」
柚「うん。普通に食べられる味」
慶「ふふふ。よかったです」
柚「でも、ほかの料理は?」
慶「え?」
柚「ご飯、ハンバーグ、しゅうまい、プチトマト…いろんな料理が入ってこそのお弁当だよね?」
慶「…」
慶「!」ハッ!
柚「うわァ…痛烈なポンコツの波動を感じるよ…」
(しばらくして)
柚「はっきり言ってね。これはお弁当じゃないよ。慶サン」
慶「…はい」ズ-ン
柚「ていうか。どうしてお弁当を作ってるのカナ」
慶「かくかくじかじかの見栄っ張りでして…」
柚「柚が発見してよかったよ。このままだと『いちごささみ弁当』が爆誕して死人が出るところだったからね」
慶「私はいちごよりバナナが好きです! あれほどエネルギー吸収に長けた果物は他にありませんから!」カッ!
柚「知らないよ。あと間違ってもバナナはお弁当に入れないでね」
慶「フィリピン産でも?」
柚「産地は関係ないんだよ!?」
慶「柚さんはお弁当を作ったことはあるんですか?」
柚「柚は食べる専門なんだー」
慶「うーん…では料理を教えてもらうことはできなさそうですね…」
柚「料理と言ったら…響子チャンカナ」
慶「ええ。でも響子さんは地方公演で数日こちらにはこれませんから」
柚「ふむ困ったね。このまま『地雷』を放置していくわけにもいかないし…」
慶「地雷って私のことですか?」
柚「他に誰か?」
カチャ
美波「話は聞かせてもらったわ!」バ-ン!
慶「!」
柚「ね、熱血先生…!?」
美波「誰であろうと困っている人を見かけたら手を差し伸べる…」
美波「そう! それが私! 熱血先生こと新田美波よ!」バ-ン!
慶「ね、熱血先生はお弁当を作ることができるのですか…!!」
美波「もちろん。未来の妻として当然よ♪」フフン
柚「誰の妻になるのかはさておき。美波チャンはやれば大抵のことはできちゃうからね。すごいんだよ」
慶「美波さん! どうか私にお弁当作りを教えていただけませんかッ!」ビシ-ッ!
柚「角度45度の完璧なお辞儀だね。さすが体育会系」
美波「答えは…」
柚「…」ゴクリ
美波「YESよッ!!!」ババ-ン!!
柚「ヒュー♪ この無駄に熱いノリがたまらないよね~♪」
慶「おお…神よ…!」ガタッ!
柚「神格化が過ぎるよ。人に向かってひざまずいてお祈りのポーズを取る人なんて柚は初めて見たよ」
美波「人間よ…我を崇め讃えなさい」フフフ
柚「こっちはこっちで増長してるし!」
(しばらくして)
美波「さて! 冗談はさておき! みなみのお弁当教室を開催するわよ!」カッ!
柚「よっ! 待ってました先生!」パチパチパチ
慶「よろしくお願いします! 熱意だけは誰にも負けません!」カッ!
美波「では、とりあえずお手本として作ってみましょうか。2段弁当だから…おかずとご飯の詰める順番は気にしなくてもいいわね。材料は何があるの?」
慶「数kgのささみです」
美波「うん。ささみ以外で何があるのかしら?」
慶「そういえば冷蔵庫にはひき肉や野菜、冷凍食品などもありました。役に立つかはわかりませんが」
柚「役に立つどころかメインを張れるよ」
美波「うん。これだけあるなら問題なさそうね。冷蔵庫には卵もあるみたいだし…」ガサゴソ
美波「…だいたいイメージは固まったわ。柚ちゃん手伝ってちょうだい。ハンバーグとナポリタンをチンしてくれる?」
柚「はーい♪」サッ
美波「そうしたらほうれん草をさっと茹でてゴマとあえて…炒り卵…レンコンを刻んで入れたさひき肉とささみの炒め物…おかずのスペースが余るからトマトとブロッコリーを入れて…と」テキパキテキパキ
慶「おお…流れるような作業…!」
美波「あとは詰めて…と」
美波「できた! 完成よ!」
【美波弁当】ジャ-ン!
・卵と甘辛肉の二色丼
・ほうれん草の胡麻和え
・アスパラガスのベーコン巻き
・冷凍ハンバーグ
・冷凍ナポリタン
・プチトマト
・ブロッコリー
・いちご
柚「わー、美味しそう。ささみも有効活用してるし…すごいっ♪」
美波「時短意識だったから冷凍食品を活用したけど。本当は原材料から作るのがベストね」
柚「『TOKIO』じゃないんだから。これで充分だよ」
美波「じゃあ、2人もやってみてちょうだい。作った料理はそこにあるから、詰めるだけね♪」
慶「はい!」
柚「はーい♪」
柚「ご飯にお肉と卵~、っと♪」サッ
柚「おかずをちょいちょい…」
柚「できたー♪」
【お弁当】ジャ-ン!
美波「綺麗にできたわね♪」
柚「えへへ~♪」
慶「はい! 私も出来ました! 先生!」ピッ
美波「じゃあチェックを…って」
【ささみ詰め】ジャ-ン!
美波・柚「何故!?」ガ-ン!
慶「盛り付け方が下手でしたか?」
美波「そこじゃないわよ!? よくみてちょうだい!」
慶「…?」
慶「あ! トマトが入ってません!」ハッ!
柚「トマトだけじゃないから! ありとあらゆる要素が足りなくてお弁当としての形を留めていないから!」
慶「はい。まずはご飯を詰めて…と」ギュウギュウ
柚「うんうん」
慶「そして炒り卵と肉そぼろを綺麗に盛り付けまして…」パラパラ
美波「ええ」
慶「これで二色丼です」スッ
【ささみ詰め】デデ-ン!
美波・柚「「何故!?」」ガ-ン!
慶「ふむ…おかしいですね?」
美波「おかしいどころじゃないよ!」カッ!
柚「もはやイリュージョンだよ!」カッ!
美波「正しい工程で盛り付けたのにどうしてその結果ささみ詰めが生まれるの!?」
慶「これが私の力…!」ワナワナ
柚「この覚醒はどこでどう役に立つのさ…」
美波「駄目ね。失格です」ブブ-
慶「ま、待ってください先生! まだおかず部分が残っています!」
美波「…今度はできるかしら?」
慶「もちろんです! 見ていてください! この容器におかすを隙間なく詰めて…」
美波「そうね」
慶「ささみささみささみささみささみささみ…」ギュウギュウギュウ
美波・柚「「アウトォッ!!!」」バ-ン!
慶「完成です♪」スッ
美波「慶さん。今度という今度は情状酌量の余地なしよ」
慶「…はっ! い、いつの間に私はささみを…!」ガ-ン!
柚「ええ…無意識だったの?」
美波「どれだけささみに捉われているの…」
慶「ご、ごめんなさい! でも! ささみは身体作りにいいんですよ!」カッ!
柚「でも、慶サンが作りたいのは『お弁当』だよね?」
慶「ぐぅ」
美波「そうね。トレーナーさんとしてよくても…お弁当を作る1人の人間としては失格よ!」カッ!
慶「人間…失格ッ!」ガガ-ン!
ガクッ!
慶「うぅ…私なんてどうせ…何の取り柄もない半人前でちょっと可愛くて愛嬌があり…未来もあるだけの人間です…」
柚「自虐をしているようでわりとポジティブだね」
美波「ええ。この前向きさは見習いたいわ」
慶「…」ズ-ン
柚「あ、でもやっぱり落ち込んでる」
美波「…」
美波「慶さん。顔を上げてちょうだい」スッ
慶「先生…」
美波「貴女はたった一度の失敗で諦めるの?」
慶「…」
美波「違うでしょう。人間、転ぶことは恥ずかしいことではないわ。起き上がらないことが恥ずかしいの! 七転び八起き! 転んだらまた立ち上がればいいじゃない!!」カッ!
慶「せ、先生…ッ!」ジ-ン!
柚「(『こち亀』の名言…)」
美波「さぁ…もう一度作りましょう…。何より! 私が指導したにも関わらず! あんな犬の餌みたいなものを錬成させたままじゃプライドが許せないわ!」バ-ン!
慶「は、はい! よろしくお願いします! 先生!」
美波「やるわよ! 付いてきなさい!」
慶「はいッ!!」
柚「青春だなぁ」
(こうして美波と慶の地獄のレッスンが始まった)
カゼノナカノス-バル-♪
スナノナカノギ-ンガ-♪
美波「まずはキューピー3分間クッキングの動画を見続けるわよ! アップとして3時間分から!」
慶「押忍!」
柚「なんで柚まで縛られて参加させられてるの!?」ギシギシ
美波「さあ2人とも! ここで料理の真髄を学びなさい!」カッ!
柚「」
イャァァァァァァッ!!
(雨の日も風の日も)
美波「土井善晴先生は言ったわ…料理とは楽しいもの! 重くないもの! 慶さんは気負い過ぎるのをやめなさい!」カッ!
慶「押忍ッ!!!」
美波「リラックス!」
慶「お、おーす…」ヘニャリ
柚「柚は気負いなんてないよ」
美波「免許皆伝ね!」シュルルル
柚「あ、ほどいてもらえた」パラリ
(どんなにくじけそうになっても)
慶「ま、またささみを錬金してしまいました…!」ガクッ
美波「落ち込んでいる暇はないわ! 慶さん! 立ち上がりトライし続けましょう! 私はできると信じているわ!」カッ!
慶「せ、先生…!」ジ-ン
慶「私…やります! うぉぉぉぉぉっ!!!」
ボ-ン!
【ささみ】デレレッテレ-♪
慶「ウワァァァァァ!!!!」ガクッ!
美波「もう一度よ! 『ささみの錬金術師』!」
慶「変な異名が付いてます!」
柚「冷蔵庫の中の材料で作った適当パフェは美味しいナー」ムシャムシャ
(特訓は続いた)
慶「うぉぉぉぉぉっ!!!」
美波「今度こそ…!」
ボ-ン!!
慶「出来た…! ハンバーグです…!」
【ささみフライ】ジャ-ン!!
柚「それ『ささみフライ』だよ!?」ガ-ン!
慶「や、やはり駄目です…!」ガクッ
美波「いいえ。違うわ…」
柚「?」
美波「よく見てみなさい! 中身にはチーズが入っているのよ!」
ザクッ!
ピカ-!
【ささみチーズフライ】デデレ-ン♪
慶「!!」
美波「進歩…したわね」グズッ
柚「料理って何だっけ?」
(そして…)
慶「出来ました! 先生!」
【普通のお弁当】テッテレ-♪
美波「うぅ…よく頑張ったわね」ポロポロ
柚「美波チャン。本当にお疲れ様」
美波「もう2度とやりたくないわ…」
柚「大丈夫だよ。こんな生徒は2度とやってこないから」
慶「先生…どうか私のお弁当を食べてください…!」
美波「ええ…いただくわ」
スッ...モグモグ
慶「ど、どうでしょう…?」
美波「しょっぱいわね…」
慶「な、なんと…!」
美波「ふふ、ごめんなさい。慶さんが成長してくれた嬉しさで涙が止まらないのよ。とっても美味しいわ」ポロポロポロ
慶「先生ーっ!」ガシッ!
美波「お疲れ様! 慶さん!」ガシッ!
柚「…一件落着、カナ?」
(後日)
ありす「今日はよろしくお願いします。慶さん」
慶「うん。大船に乗ったつもりでいてね♪」
慶「(美波さんから教わったこと…絶対に無駄にはしないわ…!)」カッ!
慶「じゃあ私と同じ通りに作ってみて」
テキパキ...
テキパキ...
【普通のお弁当】ジャ-ン!
ありす「うわぁ…!」キラキラ
慶「(よかった。出来たぁ…)」ホッ
慶「お料理はそこにあるから。とりあえず詰めてみようか♪」
ありす「はい。任せてください」フンス
ありす「詰めて…と」ギュウギュウ
ありす「出来ました!」スッ
【いちご詰め】デデ-ン!
慶「あれェ!?」
終わり
以上です
お読みいただきありがとうございました
ささみは筋肉を付けたい人に好まれているイメージ
このSSまとめへのコメント
安定のクールタチバナさん12歳。