P「見てたらめっちゃ長いなぁ、って思って」
凛「まぁ、うん。長いけど」
P「ちょっと触ってもいい?」
凛「……? よくわからないけど、はい」
P「すごい。さらさら」
凛「……」
P「沖縄の砂みたい」
凛「もっと他に良い例え方あると思うんだけど」
P「いや、でもほんとにさらさらですごい」
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○
凛「…………もういい?」
P「もうちょっと」
凛「……」
P「こんなさらさらだから衛星中継みたいなんだなぁ」
凛「衛星中継?」
P「うん。衛星中継」
凛「よく意味が」
P「んー、じゃあ、ぴょんってジャンプしてみて」
凛「はい。どう?」
P「ほら、それ」
凛「???」
P「今ジャンプしたでしょ?」
凛「うん」
P「それに伴って髪も上に跳ねる」
凛「そうだね」
P「凛が着地する」
凛「うん」
P「それに伴って髪もすとんといつもの状態に戻る」
凛「あー。私の動作にちょっと遅れて髪がついてくるから、ってこと?」
P「そう」
凛「変なこと思い付くなぁ」
○
P「衛星中継は理解できた?」
凛「まぁ、うん。意味は。でもさ、これ当たり前のことだよね」
P「そうとも言うな」
凛「そうとしか言わないよ」
P「いいじゃん。衛星中継」
凛「どこが?」
P「いろいろ」
凛「アバウトだ」
P「何というか、素敵だと思う」
凛「よくわからないなぁ」
P「褒めてるのに」
凛「……じゃあ、もう一回。どう?」
P「素敵だと思う」
凛「そっか」
○
凛「衛星中継、好きなんだ」
P「どうだろう。そんなことはないと思うけど」
凛「他の人にも衛星中継してもらうとか」
P「他の人?」
凛「うん。……けど今は声かけられそうな人がいなさそうかな。言っておいて悪いんだけどさ」
P「あ、千川さんとか」
凛「見てくるね」
P「ん」
○
P「いた?」
凛「いなかった」
P「じゃあお手洗いか給湯室じゃない?」
凛「もっかい見てくるね」
P「ん」
○
P「あ、来た」
凛「連れてきたよ」
ちひろ「お疲れ様です。用事、って凛ちゃんが言ってましたけど何かありましたか?」
P「お疲れ様です。ええ、実はですね。千川さんにジャンプして欲しくて」
ちひろ「…………はい?」
P「ジャンプをしていただきたいんです」
凛「あの、ちひろさんすみません。私から説明しますね」
○
凛「……というわけなんですけど」
ちひろ「私、そんなことのために呼ばれたんですか」
P「そんなこととは失礼な」
ちひろ「なんで私が怒られるんですか」
凛「たぶん、ジャンプしてもらえればプロデューサーも納得するので……」
ちひろ「うう……凛ちゃんに言われると……なんで凛ちゃんもこんなことに付き合ってるんですか……」
凛「すみません……」
ちひろ「はぁ、わかりました。いきますね……はい。これで満足ですか?」
P「ええ。ありがとうございます」
ちひろ「それで、プロデューサーさんは衛星中継が好きなんですか?」
P「衛星中継は別にそうでもないということがわかりました」
ちひろ「………………」
凛「あの、ちひろさん」
ちひろ「…………」
P「なんか申し訳ないです」
ちひろ「ホントですよ! それに、いつまでも休憩室で凛ちゃんと遊んでないでお仕事終わったなら帰ってくださいね?」
P「はい」
ちひろ「凛ちゃんも!」
凛「はい」
○
P「凛のせいで怒られた」
凛「元はと言えばプロデューサーのせいでしょ」
P「わざわざコーヒー淹れてる最中のちひろさん連れてきてジャンプしろなんて言ったらそりゃ怒るよ」
凛「まぁ、うん」
P「ちゃっかりコーヒー2杯もらってるし」
凛「ちひろさん優しいよね」
P「俺のデスクの左の一番下にある引き出し、ちょっとお高いクッキー入ってるからこそっとちひろさんのデスクに置いてきてよ」
凛「え、私が?」
P「うん。お願い」
凛「……私も悪いことしちゃったし、それくらいはしなきゃか」
P「行ってらっしゃい」
凛「ん。行ってくるね」
○
P「おかえり」
凛「ただいま」
P「置いてきた?」
凛「置いてきたよ」
P「許してくれるかな」
凛「どうだろう」
○
P「話は戻るんだけどさ」
凛「うん」
P「別に衛星中継が好きなわけではないことがわかっただろ?」
凛「そうだね」
P「つまり、俺の好きなのは衛星中継ではなく、単純に凛の髪ってことになるわけだよな」
凛「…………それは、その、私に聞かれても知らないけど。そうなの?」
P「そうなの」
凛「そうなんだ。……触る?」
P「お言葉に甘えて」
○
凛「あ」
P「……?」
凛「後ろ」
P「あ、千川さん。お疲れ様です」
ちひろ「なにしてるんですか」
P「ちょっと髪を慈しんでます」
ちひろ「そういうことじゃなくてですね。凛ちゃんもなんで普通に撫でさせてるんですか」
凛「衛星中継の話になる前は私の髪の話をしていて、それで、流れで」
ちひろ「流れで……」
凛「その、ちひろさんも良かったら」
ちひろ「…………ほんとにさらさらですね」
P「でしょー? 最初はすごいさらさらーって話をしてて」
ちひろ「ちょっとだけ納得しました」
P「そろそろ交代してもらってもいいですか?」
ちひろ「まだだめです」
P「凛を取られた」
凛「私、プロデューサーのものじゃないよね」
P「凛までそういうこと言う」
○
ちひろ「…………」
P「黙々と撫でてる」
凛「どうしよう」
ちひろ「やっぱり、若さだけじゃなくて、普段からケアとかもしっかりしてるんですよね」
凛「……」
ちひろ「こんなに長いのに毛先まで綺麗で、すごいわ」
凛「……あの」
ちひろ「髪の毛一本だって、商売道具なのよね。毎日毎日の努力が窺えて……」
凛「その、ちひろさん?」
ちひろ「……はっ、つい夢中に」
凛「本来の目的、ってなんだったんですか?」
ちひろ「おいしそうなお菓子をいただいてしまったので、お返しに……と思ってチョコレートを。凛ちゃん好きよね?」
凛「え、ありがとうございます」
ちひろ「はい、どうぞ!」
凛「ん。……おいしい」
ちひろ「こんなかわいい反応してもらえたら、プロデューサーさんが凛ちゃんを甘やかしてしまう理由もわかります」
P「ですよね」
ちひろ「でも、あんまり用もないのに遊んでちゃダメですよ? 私もそろそろ帰りますから」
P「はーい」
○
凛「行っちゃったね」
P「俺にチョコなかったな」
凛「チョコ欲しかったの?」
P「別に」
凛「私がちひろさんとばっかり遊んでたから退屈だったんでしょ」
P「ちーがーいーまーすー」
凛「素直じゃないね」
P「凛こそ、ちひろさんにあーんってしてもらってでれでれだったくせに」
凛「あれは仕方ないでしょ。この歳になって大人の女の人にあーんなんてされるなんてさ」
P「嬉しかった?」
凛「……ちょっと」
P「それは何よりで」
○
凛「もしもだけどさ」
P「うん」
凛「私がショートにしたら、どう?」
P「えー」
凛「嫌?」
P「嫌ではないけど」
凛「え、嫌じゃないんだ」
P「嫌ではないけど、寂しい」
凛「衛星中継が見られなくなるから?」
P「それもある」
凛「……ちょっと待っててね」
P「?」
凛「………………よし。はい、即席だけど疑似ショート。こんな感じでお団子ヘアーみたいなのはどう?」
P「普通にめちゃくちゃかわいい」
凛「アリなんだ」
P「もちろん」
凛「じゃあ、解いたら?」
P「素敵」
凛「もう私だったらなんでもいいんじゃないかな」
P「そうかもしれない」
凛「……触る?」
P「お言葉に甘えて」
凛「どう?」
P「凛って髪めっちゃ長いよな」
凛「今更?」
おわり
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