本日快晴なり。
どこぞの不幸な奴らが束になってかかろうとも、この天候を悪化させることは不可能であろう。
そんな絶好のお出かけ日和、吹雪型5番艦叢雲は非番であった。
叢雲(こんなにいい天気で仕事もないのに待機はしていないといけないだなんて、山城じゃないけど不幸だわ)
窓から射す暖かな光は優しく屋内を照らし、心なしか時間もゆったりと進んでいるかのようだ。
非番故に外出は叶わないが、窓際で日に当たりながら読書と洒落込むのもいいかもしれない。
そんな事を考えながら叢雲は自室のドアを開けた。
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吹雪「はぁ・・・・・」(この世の終わりを窺わせるような深いため息)
叢雲「・・・」
叢雲(おかしいわね、日当たりの悪い部屋ではないはずなのに暗く感じるわ)
叢雲「どうしたのよ、今日から3日間公休でしょ」
吹雪「・・・うん、ずっと秘書艦で働き詰めだからって司令官が。でもやりたいこともなくて」
叢雲「あいつ、急に3日も休みにしてもそれはそれで困るじゃない」
吹雪「ううん、違うの。お休み自体は結構前から決まってた」
叢雲「なら少しくらいなら予定でも組んでおけばよかったじゃない」
吹雪「でもね、3日だよ」
叢雲「へ?」
吹雪「3日間も司令官から離れなきゃと思うと、お出かけの予定なんてとても・・・」
叢雲「・・・」
吹雪「はぁ・・・・・」
叢雲(あいつに好意を寄せているって事は薄々勘付いてはいたけど)
叢雲(よもやここまで拗らせていたとはね)
叢雲(ていうか、同室だから仕方ないとはいえこの状態の吹雪と一緒は・・・)
吹雪「はぁ、こんな時はこれで紛らわそう・・・」
叢雲(ナチュラルに懐から司令官の写真を取り出したわね)
吹雪「ふふ・・・、うへへぇ・・・」
叢雲「・・・」
叢雲(我が姉ながら、さすがに引きかけたわ)
叢雲(でも、少し負のオーラが弱まった気がしないでもないわね)
吹雪「あぁ、やっぱり写真だけじゃ物足りないよぅ・・・」
叢雲(・・・また暗くなったわ)
叢雲「3日間はあんたの代わりに長門と陸奥が2人体制で秘書に就くんでしょう?」
叢雲「気兼ねなく休みを満喫したらいいじゃない」
吹雪「秘書艦のことは別に心配はしてないんだ。ただ、司令官の近くに居られない事が辛くて・・・」
叢雲(まぁ、そうなるわよね)
吹雪「しょうがない、これで元気だそう・・・」
叢雲(懐から・・・、ジップロック?中に入っているのは布?ハンカチかしら)
吹雪「すぅ・・・、ふへぇぇ・・・」
叢雲(匂いを・・・嗅いだ・・・・・。まさかとは思ったけれど、それをやって欲しくはなかったわ吹雪)
叢雲(きっとあれは、あいつのハンカチ。他人のハンカチをジップロックで保管して持ち歩く姉・・・)
叢雲(落ち着くのよ叢雲。匂いくらいならまだ異常性癖とまではいかないわ、多分)
吹雪「あんまり長く堪能しちゃうと薄まっちゃうからね、ちゃんと密閉しておかないと」
叢雲(・・・あれでも私の姉なのだから広い心を持って接しなければ・・・)
叢雲「吹雪、そんなに司令官が恋しいのなら執務室に顔を出しに行ったらいいんじゃないの?」
吹雪「う~んでも、せっかく司令官が休めるように配慮してくれたのに、要らない心配かけちゃいそうで」
叢雲(そういうところは常識的に気遣えるのに、何が吹雪をあそこまで歪めてしまったのだろう)
吹雪「あぁ・・・、司令官に会いたくなってきたよぅ・・・」
叢雲(・・・余計な事言わなければよかったわ)
吹雪「司令官・・・、司令官・・・」
叢雲(また懐から何か取り出して・・・、あれは、司令官の人形?)
吹雪「ふぅ・・・、よし」
叢雲(何をする気なの・・・)
吹雪「司令官」
提督?「なんだい?吹雪」
叢雲(・・・・・)
吹雪「私、寂しいです・・・」
提督?「大丈夫だ、俺がそばにいるじゃないか」
叢雲(・・・・・)
吹雪「そうでした、もう寂しくありません!」
提督?「よかった、元気な吹雪の方が俺は好きだぞ」
叢雲(・・・・・)
吹雪「・・・・・んふ」
叢雲『声にならないうめき声』
叢雲(はぁ・・・はぁ・・・、耐えた・・・耐えたわ・・・)
叢雲(腹話術が何気に似ていたせいでなおさらダメージが大きかったけど。何とか耐える事ができたわ)
叢雲「腹話術・・・上手なのね・・・」
吹雪「えへへ。お気に入りの人形でついやっちゃうから、いつのまにか上手くなったのかも」
叢雲「つい・・・、そう・・・」
叢雲「お気に入りなんだったらもっとキレイにしたらいいのに、少し汚れて見えるわよ」
吹雪「あまりキレイに見えないのは元からなの、素材が司令官のパン「ああぁぁあぁあぁあああ!!!」
叢雲「ふぅ・・・ふぅ・・・・」
吹雪「急にびっくりした!どうしたの叢雲ちゃん?」
叢雲「そこから先を聞きたくなかっただけよ!」
叢雲「ちょっと外の空気を吸ってくるわ・・・」
吹雪「・・・?うん、行ってらっしゃい」
叢雲(吹雪は私の姉・・・吹雪は私の姉・・・吹雪は私の・・・)
叢雲(・・・もぅムリ・・・わたし、アレの妹でいたくないよぅ・・・)
磯波「あ、叢雲ちゃんだ。なんだかお疲れムード?」
叢雲「磯波、遠征から帰ったのね」
叢雲「ちょうどよかったわ。私、今日から吹雪型やめるから」
磯波「へ?」
叢雲「5番艦の座も吹雪との相部屋もあんたに任せたわ。がんばって・・・」
磯波「え?ちょっと待ってよ叢雲ちゃん!やめるって何!?ええぇー!?」
おわり
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