マリオ「ただいま」 (19)
「おかえり、兄さん」
ピーチ姫がクッパに拐われて、マリオがクッパを助けに行く。
慣れてはいけないけれど、この展開にも慣れてしまった。
「僕も行くよ」そう言ったけれど、一人で大丈夫だからとまたお留守番だった。
毎日毎日二人が無事か不安だったけれど、久し振りに見た兄さんは
達成感と安堵が混ざった表情だったので、無事に助け出せたんだなあって。
「ピーチ姫は無事に助け出したよ」
本人の口から聞くとやっぱり安心する。
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「流石兄さんだね。色々話を聞きたいけれど疲れているだろうから」
今日はゆっくり休んでまた明日冒険の話を聞かせてよ。
そう続けようとしたけれど、兄さんが何か言いたそうだったから
僕は言葉を飲み込んだ。
「そうそう、今回の神様は最悪だったんだ。普段の調子が出なくてね
いつもはしない些細なミスばかりさ。何度も敵に当たって、穴に落ちて、流砂に飲まれ溶岩に……とにかく大変だった」
「それは災難だったね、本当にお疲れ様」
「それに聞いてくれよ。今回初めてドッスンに、しかも三回も潰されたんだ
経験したこと無かったから驚いたけど、アイツに潰される時全く痛くないんだな
大分楽だった」
ドッスンかあ。僕も潰された事があるから分かるけれど
早すぎて苦痛は感じないし、いろんな敵のなかでも良心的な方だとは思う。
特にワンワンやパックンフラワーなんかと比べると大分マシだ。
あいつらの牙は鋭くて、皮膚や肉を突き破って骨にも食い込むくらい深く
しつこく刺さるから、気を失いかける程痛いもの。
「兄さんってドッスンに潰された事なかったんだね。今知ったよ
確かにアイツにやられるのはそんなに辛くは無いけどさ、意識が無くなる直前に
一瞬だけ聞こえる自分の身体が弾ける音。アレのせいで僕は苦手だな」
僕がそう言うと、兄さんもその音を思い出したのか少しだけ苦笑い。
「他にも……そうそう、お化け屋敷のステージで八回くらいやられたよ。さすがに多すぎるよなあって自分でも思うけど」
お化け屋敷……嫌な響きだ。
迷路のように迷ってしまうし、隠し通路があったり、天井が落ちてきたり。
何より僕の苦手なオバケが……ああ、思い出したくもないや。
「トゲに刺さったりクラッシャーに吹き飛ばされたり。アイツのパンチって当たり所が悪いと暫くの間、目眩や吐き気が治らないんだよ」
「あー……そうなんだ」
僕はソイツに当たったことはまだ無いけれど、話を聞いただけでも気分が悪くなってきた。絶対に当たりたくないなあ。
自分の意思ではどうにもできないけれど。
「それでようやくゴールが目と鼻の先に見えてさ、終わりだと思ったら手前にいたテレサに当たって中間地点からやり直しさ。
次にゴールまで来た時、テレサに謝られたからな。
マリオさんすみませんって」
「あはは、テレサに謝られたんだ……まさかマリオが自分なんかに当たるはずがーとか思っていたのかな。そう思っていたら兄さんが当たるもんだから、びっくりして謝っちゃったとか?」
「さあ、分からないけどね。他のステージでも僕は酷かったよ。
何回も何回もやられてやり直してまたやられて、クッパを倒すまでに……五回くらいゲームオーバーになったかな、確か」
「それは確かに多いね。普段ゲームオーバーになること自体、稀なのに」
「ああ、多すぎる」
他にも兄さんは色々話した。
1UPキノコを取ろうと追いかけてたら敵に当たってやり直し。
ヨッシーと一緒に谷底に落ちる。
焦りすぎて毒水の中に。
慎重に行き過ぎて時間切れ。
よそ見して敵に当たる。
ジャンプし忘れて溶岩の中に。
全て自分達がやられた時の話だけど、今回は本当に些細なミスが多いなあ。
いや、些細なというか緊張感が足りないというか、とにかく何度も王国を世界を救ってきた兄さんらしくないミスばかりだ。
話を聞くだけだと、兄さんのただの油断や注意不足のように思えるけど
本当はそうじゃない。これは兄さんの意思じゃない。
ピーチ姫やキノピオ達やクッパ軍団、他にもこの世界に住んでいる人達なら誰でもそのことを知っている。
「まあ最近は敵や仕掛けが前より強化されて難易度が上がっているからなあ、仕方ないとは思う。とはいえ、神様も僕達の事を考えてほしいものだな」
そういう兄さんの顔は少し悲しそうで辛そうな表情だった。
僕より冒険の回数が多い分、怖い体験や大変な思いも沢山経験してるからかな。
「全くだよ。僕達だって生きているし、いくら死なないったってその時が来る度に痛みや恐怖を鮮明に感じているんだから。もう少し気を付けてもらいたいよ」
一番いいのは平和で穏やかな日々がずっと続くこと。
僕達だって危険を犯したくないし、敵だってわざわざ倒されたくもないはずだ。
クッパだって毎回やられてばかりなのに、倒されると分かっているのに、それでもピーチ姫を拐うんだから一番大変な思いをしているかも知れない。
本当はそんなことしたくないって、前に本人から聞いたから。
でもきっとアイツはまたピーチ姫を拐うか、世界を我が物にしようと悪事を働いて。
兄さんが、僕が、時にはキノピオ達や姫本人までが体を張ってクッパを倒さなければならないのかなあって。
何となくそんな気がする。
何を書いていたんだろう自分は
本当にすみません
ペーパーシリーズかサンシャインの新作気長に待ってます
書き忘れてたので今更ですが
読んでくださった方、ありがとうございました。
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