兄「ほら、俺らが2年上がると同時に、妹もうちの高校に入学してきたでしょ？」

幼馴染「そうね、4月の妹はやけに大人しくて普通に美少女だったわ」

妹「我は今も美少女だ！ ……よね？」

兄「うん、妹はいつも可愛いよ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ぐふふっ…よ、よせやい！」

幼馴染「うお、言動が全く可愛くないわ！」

妹「ぬぅっ！」

兄「幼、あんまり妹を虐めないでやって」

幼馴染「つ、つい楽しくて…ごめんごめん」

妹「もぉ！ いつもそうやって我を玩具にする！」

兄「はい、妹も落ち着いて。全然話が進まないから」

妹「……むぐむぐ」←飴もらった

幼馴染(高校生にもなって飴で大人しくなるとは……)

兄「で、話の続きだけど」

幼馴染「ああ、妹が入学して…それで？」

兄「うん、それで妹って極度の人見知りじゃない？」

兄「だから4月中ずーっと誰とも話せなくて、唯一教室で声を発したのが自己紹介の時と咳をした時ぐらいっていう……」

幼馴染「え？ 誰にも話し掛けられなかったの？」

妹「……」

幼馴染「あの騒がしい妹が、沈黙しているっ……！？」

兄「……せっかく話し掛けられても、必死に首を縦に振ることしかできなかったらしい」

幼馴染「赤べこかよ！」

妹「あふぁへふぉひゃはひゃひふぉーっ！！」

幼馴染「赤べこ語で喋らないでよ！」

幼馴染「あー…つまりはあれね！」

幼馴染「高校デビューを盛大にやらかしたって感じねっ！！」

妹「ぐっ……！！」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

兄「7月になった今では、クラスメイトと簡単な受け答えは出来るようになったらしいけど」

兄「……まあ、既にグループは固まっちゃってる訳でして」

幼馴染「部活も入ってないんだっけ？」

妹「わ、我を拘束することは誰にもできないのだ……そう、たとえ時間であってもな……！」

幼馴染「あちゃー…もう完璧に寂しい青春コースじゃないの……」

兄「そう、この通り妹は詰んでるんだよ」

妹「は、はっきり言うなーっ！！」

幼馴染「……こんな騒がしい子も、教室に一歩足を踏み入れれば寡黙な美少女と化すのね」

兄「昼休みになって嬉しそうにこちらに駆けてくる妹を見るともう、涙が……」

幼馴染「待って私も泣きそうっ」

妹「わ、我は泣かないぞ！ 泣かない……ぐすっ」

幼馴染「妹の辛い現状は理解したわ……」

幼馴染「でも、それと学校を征服することにどんな関係があるの？」

幼馴染「てか学校征服って何よ」

兄「それは―――」

妹「待て！ ここからは我が話そう！」

妹「み、認めたくは無いがっ、確かに今我の学校での地位は最底辺にある……」

妹「1日の中でクラスメイトと２回以上話せたら幸運で、休み時間は周りが騒がしい中1人静かに読書するしかなくて、体育のペアはいつも先生か出席番号が近い人で、昼休みは自分の席を人に譲って、クラスで行ったというカラオケには呼ばれてなくて、放課後に見るお兄ちゃんの顔に救われる、そんな悲しい現状で―――」

妹「―――このままではいけない！ 来たる夏休みまでに、何としても一緒に遊ぶ友の1人は欲しい！」

妹「そんな想いから、我の学校での存在感…いや、地位を底上げする運動……つまりは」

妹「『学校征服』をすることにしたのだッ！」ﾄﾞﾔｧ

幼馴染「『のだッ！』ってそんな、どうだと言わんばかりの顔をしてこっち見られても……」

兄「……これで妹の辛い状況がわかったよね。だから…頼むよ！」

兄「幼馴染みのよしみで、どうか俺の妹を助けて欲しい！」

幼馴染「……分かったわよ。私もこの子の姉みたいなものだし、協力してあげるわ」

妹「お、幼さんっ……！」

兄「持つべきものは幼馴染みだね！」

幼馴染「で、学校征服の具体的な内容を話してもらえる？」

妹「ふっふっふっ！ よくぞ聞いてくれた！」

幼馴染「いや、さっきから結構訊いてたけど」

妹「我の行う学校征服の意味するところは、全生徒の上に我が立つこと……それ即ちッ！」

妹「―――我は生徒会長になるッ！！」

兄「えぇっ！？」

幼馴染「なっ…なんですってぇーッ！？」

幼馴染「……って兄も初耳かよ！！」

兄「え、えへへ……そういえば聞いてなかった」

幼馴染「冷静になりなさい。人望も度胸も無い妹にとって、生徒会長とは最も高い所にある存在よ？」

幼馴染「……現実を見なさい」

妹「現実なら嫌というほど思い知ったッ！！」

妹「だからこそ、私はこんな現実を認めない！ 私の高校生活がこんな形で終わっていいはずがないっ！」

妹「私は！！ 絶対に生徒会長になってみせるんだぁ！！」

兄「こ、こんなに熱い妹は見たことがない……！」

幼馴染「そうね、ゲームに負けてキレた時のあの熱さとは別ベクトルの……強い意志を感じるわ……！」

幼馴染「妹の覚悟は認めるけど……でも、どうやって生徒会長になろうっていうの？」

妹「ふふふ、そこで幼の出番だ！」

幼馴染「私の？」

兄「交友関係が広くて、皆に好かれる人気者で、テニス部のエース…そんなリア充の塊みたいな幼がバックに居てくれたら……」

兄「陰を極めた妹の株が上がると思ってね」

幼馴染「うーん、でもそれだけじゃあ票数は伸びないと思うわよ？ そんな絶対的なカリスマを持ってるわけでもないし……」

妹「何ッ！？」ﾊﾞﾘﾊﾞﾘｯ

兄「……まだ飴舐めてたのか」

幼馴染「生徒会長になれるのは2年生で、選挙において最も票数を稼いだたった1人のみ……」

幼馴染「１年生の妹が今から生徒会長になるのは不可能だけど、その布石として、副会長を狙う必要がある」

兄「確かに、毎年副会長だった人が生徒会長に選ばれてるね」

妹「なるほど！ ではまずは副会長になるとしよう！」

幼馴染「だーから話を最後まで聞きなさいって」

妹「むっ？」

幼馴染「その副会長になるためには、やはり生徒会長と同様に選挙の票数で勝る必要がある」

幼馴染「選挙権を持つ者は全学年、立候補者以外の全生徒よ。とても私なんかの影響力じゃ、そんなに多くの票を動かすことはできないわ……」

妹「な、なら我はどうすればっ……！？」

妹「……我には普通のJKになる道は残されていないというのかッ！？」

幼馴染「はやまらないのっ！」ﾍﾟｼｯ

妹「いてっ！」

幼馴染「いい？ 選挙において大事なのは名前を売ること…とにかく知ってもらうことが必要なの」

兄「名前を広める……」

幼馴染「そこで私からの提案よっ！」

妹「な、なんじゃ！？」

幼馴染「……うふふ、簡単よ」

幼馴染「名付けて―――！！」


幼馴染「―――朝の挨拶運動大作戦！！ よっ！！」


妹「あ、挨拶だとぉーっ！！？」

兄「……妹、女の子がしちゃいけない顔してるよ」

幼馴染「毎朝校門の前に立っていれば、そのうち顔を覚えてもらえる」

幼馴染「そして選挙で、あっ！ この人毎朝見る人だ！ とりあえず入れよっ！ …ってなるのを狙うって寸法よ！」

兄「さすがは幼…素晴らしい案だよ」

幼馴染「もっと褒め称えなさい」

妹「うぅ…しかし我は極度の人見知りかつコミッ…コム…コミミュム…コミュ障なのだ」

妹「そんな我が毎朝知らない人達に挨拶をするなど……」

兄「でも今の自分を変えたいなら、何かアクションを起こさなきゃ。前に進む時だよ、妹」

兄「安心して。俺達が後ろを歩いてるから、ね？ 幼」

幼馴染「てか、コミミュムの方が言い辛くない？」

兄「それ今関係ないよ、幼」

妹「そ、そうだな！ 自分が変革せずに周りにそれを求めるというのも非常に我儘だ！」

妹「……よし！ 明日の朝から、我の本気を見せてくれよう！」

兄「その調子！」

――翌朝

兄「お、おはようございます」

モブ「？ おはようございまーす」


幼馴染「あ、2年の子だー！ うっすー！」

幼馴染「ん？ ああ、３組の！ うっす！」

幼馴染「なんだよー後にしてよー！ …え、今？ 見ての通り挨拶運動よーあははっ！」

ざわざわ…


兄「さすがは幼、人脈が広すぎる」

兄「実はもう学校征服してたりして」

兄「……そして妹は」

妹「ひ、ひひっ…ひゃあ……」

兄「大丈夫？ 取り憑かれてるの？」

妹「お、おにっ……ちゃ……」

妹「人間……こわ……」

兄「大変だ、臆病な化け物みたいになってる」

キーンコーンカーンコーン…

幼馴染「…っと、もう始業五分前ね」

兄「そろそろ教室に戻ろうか。妹――」

妹「」ﾀﾞｯ

兄「速い……！ まさに神速！」

幼馴染「どんだけこの空間が嫌だったのよ」

兄「言い出しっぺはあいつなのになぁ」

幼馴染「あの根性をどうにか叩き直さないといけないわね……」

兄「……あんまり手荒な真似はしないでよ。大切な妹なんだから」

幼馴染「甘やかしてもいい事ないわよ。今追い込まれないと、あの子はきっと後悔することになる」

幼馴染「この先の人生を、後ろ向きで進みたくはないでしょ？」

兄「……」

――1年A組教室

妹「はぁ……はぁ……」

妹(人に話し掛けようとすると気が動転して何も言えなくなる……)

妹(知らない人に自分から話し掛けるなんて……私には無理だ……)

委員長「妹さん、おはよう！」

妹「ッ！」ﾋﾞｸｯ

委員長「はは、相変わらず話し掛けられると過剰に反応するね」

妹「い、いんちょ……」

委員長「そうだよ？ 僕はこのクラスの委員長で、君のクラスメイト」

妹(このボーイッシュで堂々とした態度の女子は、この教室の委員長を務めている)

妹(授業の準備を進んで手伝ったり、テストで学年5位以内に入ったり、私のような日陰者に話し掛けたりと、絵に描いたような真面目っぷりだ)

妹(……正直あまり好きじゃない。私と話す時、義務感のようなものが感じられて…)

委員長「……？ そんなに僕を見つめてどうしたの？」

委員長「黙って見つめられると、いくら同性でも照れるなぁ」

妹「あっ……」ﾍﾟｺｯ

委員長「ふふ、頭下げなくていーよ！」ﾆｺｯ

妹(眩しい笑顔……いや、眩しいのは垣間見えた白い歯だ。口元は笑みのポーズを取ってるだけで、目は笑っていない)

妹(……やっぱり苦手だ)

妹(それにしても、いくらどんな人間にも気配りをする委員長とは言え、ここまで長く話すことはなかった)

妹(なんで、今日に限って……？)

委員長「そういえば妹さんさ、朝校門で何かやってたよね？」

妹「あ……」

委員長「あれは何なの？ 委員会…には入ってないよね、妹さんは黒板係だもんね」

妹(……そうだ。今日に限って私はいつもと違うことを――変化を加えようとしたんだ)

妹(違うことをすれば違う結果が得られるのは極自然のことだった……)

妹「あれ、は……」

委員長「うんうん」

ガララ…

数A教師「ほーい、席につけー」

妹「……」

委員長「ああ、タイミングが悪いなぁ」

委員長「妹さん、また後で聞かせて！」

妹「……」ﾍﾟｺｯ

妹(後で……ということは、また話すのか？)

妹(……苦痛でしかない。やはり、朝の挨拶運動なんてするべきでは―――)

妹(……後悔しない為にしたことを後悔、か。私は一体何なのだろう……臆病な化け物……？)

妹(休み時間。委員長は授業が終わるとすぐ寄ってきた)

委員長「で、今朝は何を！？」

妹(そんなに気になることなのか？)

委員長(あの寡黙というか根暗で絡み辛くて存在感薄くてクラスの雰囲気を少し悪くする毎日がお葬式みたいな暗くて無駄に整った顔をしている……)

委員長(そんな妹さんが、朝校門の前に立って何かをやっていた……？)

委員長(どんな心境の変化だろう……)

委員長(普段はミジンコ程の興味しか抱かなかったけど、さすがに今日の行動は十分私の好奇心を刺激する！)

委員長(妹さんは、一体何を！？)

妹「あ……」

委員長「あ？」

妹「挨拶、う、んどぅ……」

委員長「挨拶運動？」

妹「……」ﾍﾟｺｯ

委員長(声が蚊の羽音みたいにか細くて聞き取り辛いことこの上ないが、確かに今挨拶運動と言った……？)

委員長(……というか、肯定するなら首を縦に振るだけでいいのに、身体をくの字に折って一礼するの本当に笑えるわ)

妹(……今の委員長も笑顔だけど、いつもとは違った雰囲気を感じる。心から笑ってるようだけど、何かどす黒いような……)

委員長「へえ、あの妹さんが……」

妹(どういう意味か、など今更聞く必要も無いくらい分かりきっている)

委員長「あ！ ごめんね、馬鹿にしてるつもりはないんだけどねっ」

妹「……」ｺｸｯ

委員長「そっか、朝の挨拶運動か」

委員長「……もしかして、生徒会役員を狙っていたり？」

妹「ひっ！」ﾋﾞｸｯ

委員長「い、妹さん？」

妹(ず、図星を突かれて思い切り情けない声を出してしまった……)

妹(今まで教室で発した中で最も大きな声だったかもしれない。周りのクラスメイト達の若干名が、こちらの様子を伺っているのが視界の端に見える)

委員長「ふふ…その様子だと、どうやら図星みたいだね」

委員長「そっかぁ、ふふふ…妹さんも、生徒会役員を狙っていたのかぁ」

妹(も？ ……ということは、委員長は……)

委員長(こんな根暗女が生徒会を目指すなんて、世の中分からないものだね)

委員長(だとしたら、挨拶運動の狙いは、普段目立たない自分の顔と名前を売ることか)

委員長(ふん、なんて愚かな発想だ。そんなことで、あの生徒会に近付けるとでも……？)

委員長(私の優秀な成績、普段の学校生活の態度は生徒のみならず先生にも、非常に良いことで知られている)

委員長(そんな私と…妹さんのような、どっちつかずの成績、薄氷のような存在感、明らかにコミュニケーション能力が欠如した人間が張り合うというのか？)

妹「……ぁ、ぁの、ぃいんちょも……？」

委員長(……面白い)

委員長(この妹という女子…ただ陰で燻っているだけの存在と気にも止めていなかったが……興味が湧いた)

妹「……？」

委員長「……そうだよ、僕も生徒会役員――」

委員長「より正確に言うなら、副会長を目指しているんだ。妹さんとはライバル関係にあるね」

妹(この人も……まあ、それもそうか。これだけ優秀な人間が目指さない道理が無い)

委員長「あ、そうだ！ ねえ、妹さん」

妹「……？」

妹(――嫌な予感がした)

委員長「朝の挨拶運動なんだけど、明日から僕も交ぜてくれないかな？」

委員長「ほら、副会長を目指す者同士、一緒にやろうよ！」

妹「！」

妹(誰かと一緒に何かをする……)

妹(たったそれだけのことでも、何か意見を発したりして我を出すのに臆病で、他人への気遣いが煩わしいと感じる私は、非常に苦手で嫌いだった)

妹(……しかし、これはまた違った理由で……嫌だ)

妹(私と委員長が同じ空間で、同じことをする……そんなことをすれば、両者の差がよりはっきりと表れてしまうだろう)

委員長「沈黙は肯定とみなす！」

委員長「ってことで、明日からご一緒させてもらうね！ 朝８時くらいからでいいよね？」

妹「ぇ……ぁ……」

委員長「ふふ、何だか僕…こんなに妹さんと話せてテンションが上がってるみたいだ」

キーンコーンカーンコーン…

委員長「おっと…それじゃあ、また後で」

妹「……あ」

妹(後で、は後何回続くのだろう)

妹(……てか私、今日めっちゃ人と接してない？ 大丈夫かな、蕁麻疹とか出てないかな……)

今更ですが完結するまではsage進行の方がいいですね…
次からそうします。申し訳ありませんでした…

投稿者である>1の好きな方でいいと思いますよsage進行かどうかは

>>23
進めるの遅いのにいちいちageてたら迷惑かな？と思ったんです
とりあえずsage進行でいきます

妹(やっと昼休みになった……)

妹(一刻も早くお兄ちゃんの所に向かわねば…自分の中の何かが欠乏して死ぬ……)

委員長「妹さん！」

妹(何でまた来るんだよ！！ …あれ？手に何か持って……)

委員長「へへ、えっと……」ｽｯ

妹(弁当持って何する気だよおおおお！？)

委員長「あのね」

妹(や、やめろ！言うな！それ以上いけない……！！)

委員長「一緒に」

妹(やめてえええええええ！！！)

委員長「弁当」

妹「あぁ……あっ……ぁ……！」


委員長「……食べよ？」ﾆｺｯ


妹「ごっぱぁ！！！！」ﾊﾞﾀｯ

委員長「へ！？」

「うわぁ妹さんが凄い声出して倒れた！」
「泡吹いてる！早く保健委員！」
「……妹さんってあんな声してたんだ」

委員長(……少し興味が沸いたから一緒に弁当でもと思ったのに、なんだこれ)

委員長(さ、誘い方がまずかったというの……！？)

――保健室

委員長「……なんでこの僕がこんな所で弁当なんか」ﾎﾞｿｯ

妹「……」

委員長「はぁ…君が倒れるからだぞー、えいっ」ﾌﾟﾆﾌﾟﾆ

妹「うぅん……」

委員長「お、ほっぺ柔らかい…えい、えい」ﾌﾟﾆﾌﾟﾆ

兄「失礼します」ガラッ

委員長「！！」

兄「…あれ、先生いないみたいだね」

幼馴染「そのカーテンの裏で生徒とよろしくヤってるんじゃない？」

兄「はは、まさかぁ」

シャッ

委員長「あ…」

兄「え…」

幼馴染「これは…」

妹「すぅ……」

兄「い、妹が誰かとよろしくヤっているっ……！？」

幼馴染「ｷﾏｼﾀﾜｰ！！！！」

委員長「ヤッ…！？ ち、違います！これは！！」

兄「赤飯炊かなきゃ…」

幼馴染「ﾀﾏﾘﾏｾﾝﾜｰ！！！！」

委員長「……何なんだこの人達！」

委員長「カクカクシカジカ！！」

兄「……なるほど、妹が迷惑をかけたようだね」

委員長「ああ、お兄様でしたか」

委員長「で、そちらの方は？どこかで見たような……」

幼馴染「私はその子の飼い主よ！」

兄「俺の妹を勝手にペットにしないで、幼」

幼馴染「えーでもそんなようなものじゃなーい？」

委員長「幼……？ はっ！ 貴女は……！」

幼馴染「んにゃ？」

委員長「貴女はあのっ…テニス部の幼先輩！？」

幼馴染「そーだけど？」

委員長「み、皆の憧れの幼先輩が何故こんな所に……！？」

幼馴染「だからその子の様子を見に来ただけよ」

兄「幼は一年生にも人気なんだね」

幼馴染「ふっ、まあ悪い気はしないわねっ！」

委員長(妹さんみたいな人があの幼先輩と繋がっていたとは……)

委員長(それに、お兄様だという人もちょっとイケメンだし……)

委員長(本当に何だ？ この子は……？)

兄「しかし妹が誰かと一緒にいるなんてね、驚いちゃったよ」

幼馴染「ねっ！明日は大災害でも起こるのかしら？」

委員長「確かに妹さんはいつも一人でしたね」

委員長「だけど僕は、ずっと彼女のことが気になっていて…それで今日やっと話せたというか……」

兄「！」

委員長(まあ嘘だけど。さすがに興味が沸いたから、なんて言ったら上から目線ぽくて、変な印象を持たれかねないしね)

兄「そう、そうだったんだね……！」

委員長「は、はい」

幼馴染「私は応援してるわ！！いやむしろさせて！！」ｶﾞｼｯ

委員長「は……？よく分かりませんが、ありがとうございます……？」

兄(そうか…確かに妹は黙っていれば超絶美人だものな……)

幼馴染(そんな娘がずっと黙っていれば、人を惹きつけるのは自明の理……)

兄(友達よりも先に恋人ができそうだね、妹よ！)

幼馴染(この女の子もかなり可愛いし、美形と美形の百合が咲き乱れる花畑だわっ！)

幼馴染(ああっ……！その花畑にダイブしたひっ……！！)

委員長(なんだこの人達の視線は…生暖かいなんてものじゃないぞ……！？)

妹「うーん……あれ？ お兄――」

妹「こほんっ！ 兄よ、よくぞ来たな！！ …ってここはどこだ？」

兄「あ、起きた？ ここは保健室だよ」

妹「保健室だと？何故だ？」

幼馴染「何か教室でいきなり泡吹いて倒れたって聞いたけど」

妹「ああ！そう言えばそうだったな！」

妹「いや、聞いてくれるか兄よ！実は先ほどな、我ったら委員長に弁当の誘いを受け――」

委員長「……や、やあ」

妹「……へっ？ 委員長……？」

委員長「その、妹さんのことは残念ながらあまりよく知らなかったんだけど……」

委員長「な、何か意外だなー…あはは……」

妹「ッ！！！？」

兄「凄い形相で凍りついてる……」

幼馴染「女の子がしちゃいけない顔パート2ね」