※R-18要素はありません
「ふふふ、また今晩もきちゃいました」
司令官のことが大好きな朝潮ちゃんが毎夜司令官のベッドに潜り込んでくるのは当然のことである。
大好きだからベッドに忍び込む。純朴な感性に対し冷笑的で何かと鬱屈した現代社会には、いま正に求められている誠実さ。朝潮ちゃんは規範とされるべきだろう。
「ほら、ぎゅってしてください、あっ、もう……」
朝潮ちゃんが体全体を擦り付けるようにしてきたので、特に他意もなく掴みやすいお尻を撫でてあげると、脚を開いて股下を司令官に擦り付ける動きをする。
体を擦り付ける行為は古来より犬にみられる習性である。
そう。朝潮ちゃんは今、18世紀の偉大な思想家ルソーの「自然に帰れ」というテーゼをまさに実践しているのだ。人間の根源的無垢が失われつつある時代に警鐘を鳴らしているのだ。
朝潮ちゃんの社会派っぷりは評価されるべきだろう。
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「え? ボタン、はずすんですか……? ふふ、くすぐったいです……」
司令官がボタンを外し脱がせようとするので朝潮ちゃんも体をよじってあげた。朝潮ちゃんは脱がされたシャツとスカートを布団の隙間からベッド脇に落とす。
下種な勘ぐりはよしたまえ。女性用衣類のボタンが男性のとは逆の左側についている理由は歴史的に女性服のボタンが他者によって開け閉めされたことによる。
現在ではそうした来歴が意識されることは少ない、それに危機を感じた朝潮ちゃんは司令官に脱がしてもらうことによって、伝統と歴史を再認識しようとしただけなのだ。
朝潮ちゃんの歴史への尊敬は学ばれるべきだろう。
「司令官……んっ」
朝潮ちゃんは毛布の下から司令官の胸元を這い上がり首を出すと司令官の唇に噛みつくようにキスをする。
「ん……れろ、むちゅ」舌先と舌先を合わせるように吸い付く。
民俗学的にキスは原始的で野蛮な愛咬から生じたとの説がある。進化の過程で儀式化された殺すためでない攻撃性。
「攻撃性のない愛はない」と主張した動物学者コンラート・ローレンツはそうした無害化された攻撃本能は同一種族間で見られるという。
朝潮ちゃんは激しい接吻によって、司令官と己とが同一種であると体感的に理解しようとしたのだ。
いつ深海に堕し化け物となるやもしれぬこの身、ただ今だけは一つの人間としてありたい。そんなささやかな願いからの行動である。
朝潮ちゃんの謙虚さは見習われるべきだろう。
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