【モバマス】ありがちな終末 (15)
・「アイドルマスター シンデレラガールズ」の二次創作です。
・アイドル出てきません
・鬱ではありませんがメタを含む好き嫌いのある話だと思います。メタが嫌いな人は読まないほうがよろしいかと
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●木曜日/事務所内
千川ちひろ「今週末でスタドリの販売、終了します」
モバP「えっ、困りますよ」
ちひろ「もう決定事項なので諦めてくださいね」
モバP「えええ…っていうか俺あれだけ沢山買ってるのに。なんで販売終了するんですか。ちひろさん相当儲かってたでしょ」
ちひろ「そこは否定しませんけど―――製造元が生産をやめちゃうので」
モバP「ちひろさんが調合してる脱法ドリンクじゃなかったんだ…」
ちひろ「ひどいこと言いますね?」
モバP「ごめんなさい。でもほんとあれがないと仕事に差し支えますよ」
ちひろ「大丈夫ですよ。これからはお仕事減りますから」
モバP「…どういうことですか?」
ちひろ「…」
モバP「ちひろさん?」
ちひろ「…プロデューサーさんは、この世界がゲームだって言ったら信じますか?」
モバP「あーそれで色々おかしかったのか。納得」
ちひろ「納得早すぎないですか!?」
モバP「いや、だって前々からおかしいと思ってましたもん」
ちひろ「たとえば?」
モバP「この間、綾瀬とキャシーと大原さんの三人でパン作りイベントやったじゃないですか」
ちひろ「ええ。『先生と一緒に♪目指せおいしいパン作りアイドルチャレンジ』ですね」
モバP「うちの事務所、大原みちるなんてアイドルは居ないのに。なんでひょっこり居たんでしょうね」
ちひろ「あー」
モバP「今までも結構あったことですからそういうものかなと思ってましたけど、やっぱおかしいなあと―――で、ゲームなんですか」
ちひろ「はい。『アイドルマスターシンデレラガールズ』って言うんですが」
モバP「アイドルものかあ…どんなゲームなんです?」
ちひろ「ちょっと触ってみます?」
モバP「え、触れちゃうものなんですか」
ちひろ「ええまあ」
モバP「ゲームの中の人間が大元のゲームに触るって頭おかしくなりそうですね」
ちひろ「やめておきますか」
モバP「いや、興味あるから触ってみたいです」
ちひろ「えーと…はいどうぞ」
モバP「古い携帯ですね」
ちひろ「大きなお世話です」
モバP「ちひろさん物持ちいいほうですよね。ふむふむ…(ポチポチ中)」
ちひろ「……」
モバP「えっこれだけ?簡単すぎませんか」
ちひろ「触ってすぐはそう感じますよねー。これが色々泥沼でして」
モバP「なるほど、プレイヤーは『プロデューサー』、つまり俺で」
ちひろ「はい」
モバP「ちひろさんは運営の手先で物販担当」
ちひろ「とげがある言い方ですね」
モバP「ごめんなさい…しかしつまり、俺ってプレイヤーに行動操られてたわけですか」
ちひろ「そうなりますね」
モバP「操られてたような気がしませんけどねえ。このゲーム、ちひろさんと呑みに行くコマンドもサボるコマンドもないですよ」
ちひろ「そんなコマンドあるわけないじゃないですか…どうです?」
モバP「納得行ったような、よくわからんような…ん?『アイドルマスターシンデレラガールズ』運営終了のお知らせ…」
ちひろ「そういうことです」
モバP「…(真剣な顔でポチポチ中)」
ちひろ「この世界の元になってるゲームの運営が終わるから、ドリンクの販売も終わるんです」
モバP「……」
ちひろ「その他にも、いくつかの機能が停止します」
モバP「ふむ…具体的には、どうなるんでしょうか」
ちひろ「…プロデューサーさん、冷静ですね」
モバP「冷静と言うわけでもないんですが。実のところどうなんですか。運営終了するとこう―――ブチッ、と世界が消えたり」
ちひろ「さあ」
モバP「さあ、って」
ちひろ「私にも解らないものですから」
モバP「……」
ちひろ「プロデューサーさんが言うように、私は運営の手先で、今まで運営からのお知らせをお伝えしたり、イベントの案内をしたりしてきました」
モバP「……」
ちひろ「今回の終了も運営から私にお知らせがありました。だから私は聞いたんです。運営が終わったら私達はどうなるんですか?これからどうしたらいいんですか?って」
モバP「運営は、なんて?」
ちひろ「何も命令はない、って」
モバP「何も」
ちひろ「もう何も命令しない。好きにすればいいって、それだけ―――それきり連絡は繋がりません。多分、二度と繋がることはないのでしょう」
モバP「……」
ちひろ「はっきり解ってる、具体的な話をしましょうか。まず、マニーやドリンクを使ったアイドルのトレードはできなくなるでしょう」
モバP「ふむ」
ちひろ「だから、もしこのあとも世界が続くなら、プロデューサーさんは自分の足でアイドルを探す他なくなるわけです」
モバP「…」
ちひろ「今まで私からお知らせしてたような大型イベントはなくなると思います」
モバP「うーん…」
ちひろ「なんだか微妙な顔ですね」
モバP「いや、色々思うところがありまして…続けて」
ちひろ「?…あと、時間がこれまでどおりの扱いになるかどうかは解らないですが、覚悟したほうがいいと思います」
モバP「時間?」
ちひろ「17歳の子が何年も17歳のままだったりとか」
モバP「あー」
ちひろ「そうすると、アイドルの子たちもいつまでもアイドルをやっていられるわけでは無くなります。ドリンクが販売されなくなれば、プロデューサーさんの体力も有限になりますから、多数のアイドルを抱えたプロデュース活動は厳しくなるでしょうね」
モバP「まあ、うちみたいな弱小には縁の無い話ですね、あははは」
ちひろ「…プロデューサーさん、ほんと悲壮感ないですねえ」
モバP「なんか、操られてたって実感がないのと、前々から変だなと思ってたのと。あと…」
ちひろ「…あと?」
モバP「まあ、そのあたりは後ほど。アイドルたちには、この話伏せておきたいと思いますが、どうでしょう」
ちひろ「そうですね。聞いてどうなる話でもないですから…あと、できれば明日から、皆に休暇をあげたいですね」
モバP「最後になるかも知れないから?―――あー、それでこの週末の仕事の話がなかったのか」
ちひろ「はい」
モバP「てっきり何かの不手際でうちの事務所が干され始めたのかと思ってました」
ちひろ「ふふ、ごめんなさい」
モバP「ちひろさんも、どっか旅行にでも行くんですか」
ちひろ「うーん、いいえ。事務所にいようかなって」
モバP「自分だけ仕事ですか?」
ちひろ「今までずっと忙しくて後回しになってる事とか結構ありましたからね。ほら、給湯室のドア、ずっと軋んでたじゃないですか」
ちひろ「そういうの気になる方だったので。このさい色々やっておこうと思います―――プロデューサーさんは、どうします?」
モバP「うーん、そうだなあ…色々考えます。大事な休暇になりそうですから」
ちひろ「ふふふ、そうですね…」
●日曜日午後21時/事務所
モバP「あーやっぱり居たちひろさん」
ちひろ「あれ、プロデューサーさん。電気消しておいたのによく解りましたね…」
モバP「こんばんは。絶対残ってると思ったので」
ちひろ「お見通しですみたいな顔されるのイラッとします」
モバP「まあまあ。はいビール」
ちひろ「仕事場で呑もうっていうんですか―――いただきますけど(プシュ)」
モバP「それでこそです(プシュ)はいかんぱーい」
ちひろ「乾杯…」
モバP「(ぐびぐび)いやあ、ここで呑むとよけい美味いのはなんでだろう」
ちひろ「背徳の味、ですか?ふふ…」
ちひろ「……」
ちひろ「…」
モバP「……」
ちひろ「…アイドルの子たちは、休日をどう過ごしたんでしょうね」
モバP「綾瀬や白菊は、レッスンしてたみたいですよ。友達同士でおとまり会したり、勉強したりした子もいます。月曜にはミヤゲ話する、ってメールが沢山です」
ちひろ「そうでしたか…ごめんなさい、プロデューサーさんだけ微妙な週末にしちゃって」
モバP「そうですか?」
ちひろ「普通、世界が終わるかも知れないなんて言ったら平静じゃいられないでしょ」
モバP「実際ちひろさん、ずっと辛そうでしたもんねえ」
ちひろ「え」
モバP「しばらく前から顔が青くて調子悪そうで。皆心配してたんです」
ちひろ「バレないように振舞ってたつもりだったんですが…」
モバP「アイドルや俺に演技力で挑もうというのは無謀ですよ。事務仕事がパーフェクトだったのは流石ですけど」
ちひろ「なんか悔しい…」
モバP「でも、嬉しかった」
ちひろ「…」
モバP「あのゲーム、運営が終了告知を出したの、けっこう前だったじゃないですか」
ちひろ「…はい」
モバP「ちひろさんはずっと黙っておくこともできたけど、俺に言ってくれたから」
ちひろ「…それは違います」
モバP「…」
ちひろ「本当は、ずっと黙っておくつもりだったんです。聞いてできることは、何もなくて」
モバP「…」
ちひろ「だから、最後まで黙っておくのが最善だったはずなんです。ドリンクがどうとか言いださなければ、プロデューサーさんも静かに週末を楽しめたのに」
モバP「俺だったら、とても一人で抱えていられないなあ」
ちひろ「…」
モバP「だって世界が終わるかも知れなくて、期日が切られてて、自分だけしか知らなくて」
ちひろ「…」
モバP「知らない奴らは毎日楽しそう、ってキレますよきっと」
ちひろ「短気ですもんね、プロデューサーさん」
モバP「だから、アイドルたちを思いやって何も言わないでいてくれたちひろさんを、俺は尊敬するし。最後に俺に打ち明けてくれたのをうれしいとも思うんです」
ちひろ「…プロデューサーさん」
モバP「できれば男らしく平気な顔でずっと一緒にいて、ちひろさんの不安や愚痴を聞いてあげたかったんですが―――情けない話で、色々考えて、飲み込むのに連休全部使っちゃいました」
ちひろ「…打ち明けたときは、平気そうに見えてましたよ?」
モバP「だってあそこで俺がうろたえたら、ちひろさん『ふふ、冗談です冗談♪』とか言って、二度と話してくれなかったでしょ」
ちひろ「…否定できないです」
モバP「と、いうわけで最後の三時間になっちゃったけど、つき合わせてください。ちひろさんの不安も愚痴も、聞きたいです」
ちひろ「プロデューサーさん…」
モバP「はい、もう一度乾杯」
ちひろ「ふふ…はい」
モバP「美人と差し向かいなんて贅沢ですよねー」
ちひろ「もう―――ねえプロデューサーさん」
モバP「はい」
ちひろ「私達、どうなっちゃうんでしょうね」
モバP「…」
ちひろ「運営が終わったら、プロデューサーさんが言ったみたいに、この世界は消えるんでしょうか。私達は、アイドルの子たちはどうなっちゃうんでしょう。今までがなかったことになるなんて、あの子たち、可哀想すぎます」
モバP「…」
ちひろ「私はどうなるんでしょう。怖いな。怖いです…」
モバP「―――俺は、意外と悪いことにはならないって思ってます」
ちひろ「…」
モバP「触らせてもらったあのゲームは簡単なもので、こうやってビールを飲むコマンドもないし、二人で冗談を言うコマンドもなかった。俺たちがこうして話してるのも、今俺をプレイヤーが操ってるからじゃないでしょう、きっと」
ちひろ「……」
モバP「うまく言えないけど―――俺たちはきっと、ゲームで定められたものだけで出来てるわけじゃないんだ、って思うんです」
ちひろ「そう、だと、いいですね」
モバP「まあ、ゲームだとしても、アイドルたちやちひろさんに出会えたのはうれしい。アイドルの皆もいつも楽しそうにしてた。いいゲームだったんだろうと思います―――あ、でも不満はあったな」
ちひろ「不満?」
モバP「イベントとか、全部決まったことがちひろさんから降りて来てたじゃないですか。俺も企画を立てたりイベントを立案したりしたい!」
ちひろ「…ふふふ、そうですね」
モバP「でしょ?月曜日が来たら、二人で新しい企画考えましょうよ。すごく楽しい奴。あいつらの活動期間が限られてくるっていうなら、余計、頑張らなくちゃ」
ちひろ「プロデューサーさんらしいです」
モバP「―――ゲームが終わっても、アイドルや俺たちは楽しくやってるよ」
ちひろ「プロデューサーさん?」
モバP「消えたりしない。俺たちはずっと頑張っていくから、心配しないで―――と」
ちひろ「……」
モバP「どういう終わり方になるにせよ、続くにせよ。そう胸張って言えるように、最後までやって行きたい、って」
ちひろ「……」
モバP「それに『もう命令しない、好きにしろ』って言われたんでしょ。それは、俺たちが続くってことだ。そもそも、運営はちひろさんに言う必要だってなかった。この世界が消えるなら、その後についての文言なんて、いらなかったんだから」
ちひろ「…そう、ですね」
モバP「と、まあ、3日かけて、これだけ考えたんです」
ちひろ「えっ」
モバP「ちひろさんの不安を軽くするほど説得力あったかは、わかんないですが」
ちひろ「プロデューサーさん…」
モバP「たくさん話しましょうよ、ちひろさん。楽しかったこと。これからの希望のこと。不安なこと。俺もいっぱい言いますから」
ちひろ「…はい」
モバP「そしてできれば―――月曜日からも、よろしくお願いします。俺たちには、ちひろさんが必要だ」
ちひろ「…私も、この仕事は大好きです。プロデューサーさん、月曜日からも、よろしく」
モバP「なんかプロポーズとかしそうな流れですが、そういうのは月曜以降にお預けってことでひとつ」
ちひろ「わざわざそんな付け足しするとか性格悪い…!断っちゃおうかな!!」
モバP「断ってくれてもいいですよ」
ちひろ「え」
モバP「そしたら何度も申し込みますから!」
ちひろ(///)
―――話は続いていく。
時計はその間も、針を刻んでいた。
23時55分。
23時59分。
そして0時01分―――
(おしまい)
ご拝読ありがとうございました。
拝読とか書いちゃった
のたうちまわるほど恥ずかしい
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