姉「マジカル☆ガール!参☆上♪」弟「」 (137)
弟「おはよー」
姉「おはよう」
弟「ふあ~…眠い…」
姉「朝からだらしないな。シャキッとしろ」
弟「だって…」
姉「飯はできてるぞ。私は朝練に行く」
弟「いってらっしゃい」
姉「お前も遅刻するなよ」
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弟(僕の姉ちゃんは高校の空手部主将だ)
弟(背も高く、普通の女子に比べてガタイもいい)
弟(僕にとってはゴリラみたいな姉だけど…)
弟(県大会を優勝する程の圧倒的実力、堂々とした振る舞い、おまけに成績優秀…)
弟(男女共に誰もが認める憧れの的、らしい)
弟(家では僕に勉強しろってうるさいだけだから苦手だ)
◆
姉『こら、弟。なんだこの成績は』
弟『ごめんなさい…』
姉『最近たるんでるんじゃないか?』
姉『遊ぶのもいいが、勉学を疎かにするなと何度もいっているだろう。母さんとも約束したのを忘れたのか?』
弟『ごめんなさい…』
姉『謝るくらいなら勉強したらどうだ。だいたいお前は……』クドクドクド
弟『…』グスッ
◆
姉『弟、ちょっと姉ちゃんと腕相撲してみようか』
弟『ええ…やだよ絶対負けるもん』
姉『お前も来年は中学生だろう?ちょっとは強くなったんじゃないか?』
弟『そうかなあ』
姉『私に勝ったらコンビニでなんでも買ってやるぞ』
弟『ほんと!?やる!!』
姉『ふん!!』
バキャッ!!
弟『あぎゃあああああ!!!』
姉『なんだ、だらしない』
弟『本気出すことないじゃん!この暴力女!!』
姉『何を言うか。お前が男のくせに弱すぎるんだ』
姉『だいたいお前は部屋でゲームばかりやって…私がお前ぐらいの時は……』クドクドクド
弟『…』グスッ
姉『プロテイン飲むか?』
弟『いらないよっ!』
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
弟(思い出したら腹立ってきたなあ)
弟(むかつく!絶対彼氏なんてできないよ)
弟(…)
弟(でもこの前試合見に行ったらファンがいっぱい応援してたもんなあ)
弟(女の人も多かったけど)
弟(人生は不公平だ)
〈夕方〉
弟「やばい!帰るの遅くなっちゃった!」タッタッ
弟「放課後友達の家でスマブラ大会してたらこんな時間に…」
弟「姉ちゃん絶対怒ってるよ…覇王翔吼拳とか使ってくるよ…」
弟「どうしよう…」タッタッ
〈家〉
ガチャ
弟「ただいま~…」ソッ
弟「…」ソロソロ
弟「…あれ?」
弟「姉ちゃんがいない」キョロ
弟「母さんは仕事だし…」
弟「部屋かな?」
< --!! --!!
弟(なんか姉ちゃんの部屋からきこえる)
弟(なんだろう)
弟(まさか僕をしばく為のリハーサル中とか…ひいい)ブルブル
< --!! --!!
ドタンバタン
弟(あわわわわわわ)
カチャ...
弟「…」コソッ
姉「マジマジ☆マジカル☆きらりんりん♪♪」
姉「マジカル☆ガール!参☆上♪」
姉「ダークサタンはマジカル☆ステッキでおしおき!なのっ☆」
弟「」
弟(そこには姉がいた)
弟(日曜の朝にやっている女児向けアニメのキャラクターのコスプレをした高校生の姉が)
弟(もうなんか見てらんない)
弟(むちむちバインバインだし)
弟(普段は声とか超低いのに無理して高い声だして咳き込んでるし)
弟(なんかツインテールだし…)
弟(…)
姉「マジ☆マジ☆マジカル☆」
弟「あのー…」
姉「ダークサタン!!今日こそ逃がさないわ☆」
弟「姉ちゃん…」
姉「魔法の力で何でもできちゃう~♪♪」クルッ
弟「…」
姉「…」
弟「…ただいま」
姉「…」
姉「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
弟「わあああああああああ!!!???」
姉「おっおまっ…!」プルプル
弟「おま?」
姉「…いつから、いた」
弟「えーと…」
姉「…」
弟「マジマジ☆マジカル☆きらりんりん♪♪」
弟「の、時くらいから…」
姉「ひゃあああ~…///」ヘナヘナ
姉「うぅ…///」
弟「…」
姉「シニタイ...」
弟「す、すごい格好だね、あはは」
姉「…」
弟「…」
姉「(´;ω;`)」ブワッ
姉「グジュ...ヒン...」グスグス
弟(どうしよう)
弟(泣かせてしまった)
弟(あの、無敵の姉さんを…)
姉「たのむ…みんなには内緒にしててくれ」グスグス
弟「え…」
姉「こんなのがバレたら私は生きていけない」グス
弟「…」
姉「ねっ?お願い…っ」ウルウル
姉「なんでもするからっ!」
弟「ん?」
姉「!」
弟「今『なんでもする』って言った?」
姉「あ、ああ…」
弟「ほんとーに、なんでもしてくれるの?」
姉「ッ!」ハッ
姉「えっえっちぃのはダメだぞっ!///」
姉「姉弟なんだからなっ!///」アワアワ
弟「…」
弟「」キュン
弟(あれ、なんだろ)
弟(なんか無性に、姉ちゃんがかわいく見えて…)
姉「~ッ///」ソワソワ...
弟「えーっと、じゃあ…」
姉「えっちぃのはダメだからなっ!!///」
弟「わ、わかってるよっ!!」
また明日~
弟「とりあえず宿題教えてもらおうかなぁ」
姉「お、おう」
姉(なんだ、それくらい…)ホッ
弟「その格好で」
姉「」
弟「ちゃんとキャラの口調で教えてね」
姉「」
弟「なんでもしてくれるんだよね?」
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
姉「ここの式を当てはめると…」
弟「ん?」
姉「面積の求め方は…」
弟「ん?ん?」
姉「円周率は3.14だから…」
弟「ん?ん?ん?」
姉「~~~~ッ!/////」プルプル
姉「円の面積の求め方はぁ~☆☆」
姉「半径×半径×3.14~♪♪」
姉「このおうぎ形はぁ☆直角だからぁ360分の90で計算しちゃ~うゾ☆」
姉「マジマジ☆☆」
弟「あっはっはっはっは!!」ゲラゲラ
姉「しねゾ☆」ブン
弟「わあああああ!!」ヒョイ
姉「チッ」
弟「暴力反対!暴力反対!」
姉「調子にのるなよ!このっ…」
弟「母さんに言うぞ!姉ちゃんの友達にもバラしちゃうぞ!」
姉「ぐっ…!」
弟「みんななんていうかなー!あの真面目な姉ちゃんが家では魔法少女のコスプレしてるって知ったら!」
姉「…」プルプル
姉「(´;ω;`)」ブワッ
姉「ふええ~~ん!!」ビ-
弟「えっ」
姉「しょ、しょうがないじゃん!」
姉「好きなものは好きなんだからぁ~!」ビ-
弟「…」
弟(どうしよう。また泣かせちゃった…)
弟(ていうか弱虫すぎない?)
弟(コスプレのせいなのかな…)
姉「びゃあああああああああ!!」
弟「ごめん、ごめんね。姉ちゃん」
姉「ウッ...ヒック...」グスグス
弟「もう無茶なこと言わないから」ナデナデ
姉「ほんとう?」
弟「うん」
姉「!」パァァ
姉「ならばしねゾ☆」ブン
弟「ひいい!!」ヒョイ
姉「チィ!」
弟「ヒキョーだー!!」
姉「うるさい!この愚弟が!!」
姉「姉ちゃんはお前をそんな風に育てた覚えはない!!」
弟「なんだよ!なんでもするっていっただろ!?」
姉「女の子には優しくしろっ!!」
弟「女の子?どこに?どこにいるの?」キョロキョロ
姉「」プッチ-ン
姉「貴様あああああ!!!」
< タダイマ-
姉「!」
弟「!」
母「あれ、何してんのあんた…」
弟「あ、いや、ちょっと具合悪くて」
母「なんで姉のベッドで寝てるの?」
弟「え!いやぁ~!僕姉ちゃん大好きだからさぁ~!あはははは!!」
母「あっそ…」
弟「…」ドキドキ
母「姉は?」
弟「さ、さあ!?トイレじゃない?」
姉(しまった…思わず弟と一緒にベッドに潜り込んでしまった)
姉(私だけ隠れたらよかったのに!何をやってるんだ私は…)モゾ
弟「アッヒョ!!?」ビク
母「!?」
母「なによ変な声出して…」
弟「な、なんでもっ…」
弟「エ゛ンッ!!」ビクン
母「!?!?!?」
弟(姉ちゃん!!何やって…)
姉(あつい…)モゾモゾ
弟(当たってる!当たってるって!)
姉(は?)
弟(当たってるんだよぉ!!)
弟(姉ちゃんの割れた腹筋が!!!)
姉「ぁ…///」カァ
母「ん?今…」
弟(痛い痛い痛い!!)
prrrr...
母「あ、電話電話!」タタ
弟「…」
姉「…」
弟「もう大丈夫みたいだよ」
ゴソゴソ
バサッ
姉「…///」
弟「ふぅ…何とかやり過ごせたね」
姉「…」
弟「母さん気づいてないよね?」
姉「…」
弟「姉ちゃん?」
姉「…えっち」
弟「は?」
姉「弟の、えっちっ///」
弟(何いってんだこの人)
姉「」ハッ
姉「きょ、今日はもうおわりだ!」
姉「宿題はちゃんとやるんだぞ!私は風呂に入って寝る!!」
ガチャ バタン!
弟「」ポカ-ン
弟「…」
弟「『今日は』?」
〈翌日〉
弟「おはよー」
姉「おはよう。早く朝飯食べろ」
姉「みそ汁が冷めるぞ」
弟「はーい…」
姉「今日は真っ直ぐ帰るんだぞ」
姉「いいな?」
弟「わかったよ」
弟「今日も朝練?」モグモグ
姉「ああ」
弟「試合終わったばっかなのに…大変だね」
姉「試合だけが部活じゃない」
姉「日々の鍛錬こそが頂への一歩となる」キリッ
弟「そうですか…」
弟(いつもの姉ちゃんだなぁ)
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
〈放課後〉
弟「はぁ…今日も宿題いっぱい出されたなー」
ガチャ
弟「ただいまー」
姉「おかえりっ♪弟クンっ☆」キャルン
姉「お腹すいてるでしょ♪」
姉「マジカル☆ガールがクッキー焼いてあげたゾ☆」
弟「」
弟「姉ちゃん…部活は?」
姉「今日はオフだゾ☆」
弟「そう…」
姉「クッキー、食べるでしょ☆」
弟「うん」
弟(あ、おいしそ)
姉「手を洗いなさい」
弟「…はい」
弟「いただきまーす」
姉「あ!待ってゾ☆」
弟「え」
姉「はいっ♪あーん☆」スッ
弟「えぇ…」
姉「あーんっ☆」
弟「い、いいよ自分で」
姉「あーんっ!」
弟「自分で…」
姉「口を開けろ」
弟「…はい」
弟「…」モグモグ
姉「…うまいか?」
弟「うん、おいしい!」
姉「!」
姉「よかったぁ」フニャ
弟「…」モグモグ
姉「!」ハッ
姉「弟キュン☆クッキーまだまだあるんだゾ☆☆ジュースも入れてあげるにゃあ♪」
弟「なんかキャラがブレブレっすね」モグモグ
また明日~
弟(あれから姉ちゃんは僕の前で度々魔法少女になる)
弟(大体オフの日か日曜に母さんがいない日だ)
弟(いつもは厳しいけどコスプレした時は優しい。たまに素が出るのはやめてほしいけど)
弟(最近始めたお菓子作りが楽しいらしく、僕はおやつに事欠かない)
弟(最初は気味が悪かったけど、今は慣れちゃった)
姉「おい」
弟「なに?」
姉「中学で何の部活に入るか決めたのか?」
弟「いーよ帰宅部で」
姉「空手部は…ないんだったな確か」
弟「ナチュラルに空手やらせようとしないでよ…」
姉「昔はお前もやっていたのに」
弟「痛いの嫌いなんだ」
姉「スポーツくらいしたらどうだ?」
弟「そうだなー」
姉「男なら身体を使ってだな」
弟「あー差別だー」
姉「またそんな屁理屈を…」
弟「でも運動部の方が女の子にモテるかなぁ」
姉「不真面目な奴だな。そんな理由で始めても続くものか」
弟「姉ちゃんも空手やってて女の子にモテモテだもんね~」ニヤニヤ
姉「!」ムカッ
姉「女子だけじゃなく男子にもモテるぞ!」
弟「そうなの?」
姉「そうだ!」
弟「魔法少女でも?」
姉「…」プルプル
弟(あ、やべ)
姉「…その通りだっ!///」バン
姉「マジカル☆ガールは女児だけでなく大きなお友達にも大人気だからな!!///」
姉「モテモテで大変態だッ!!」
弟(何言ってんだこの人)
弟「あ!もしかして…」
姉「ん?」
弟「姉ちゃんコスプレ姿を自撮りしてツイッターとかにのせてるとか…」
姉「しっしてないしてない!!」アセ
姉「私はあくまで一人で楽しみたい派なんだっ!!」
弟「ほんと~?」
姉「しゃっ写真はとったりするが…それをインターネットにアップする勇気は私にはないんだ…」
弟(あ、やっぱり自撮りはしてるんだ)
弟「…見せてよ画像」
姉「え゛っ」
弟「見たいなぁ~」
姉「…ムリ」ボソ
弟「姉ちゃんのマジカル☆ガールが見たいなぁ~」
姉「たったまに、見せてやってるだろう…」
弟「実物とはまた違う良さがあると思うんだよな~」
姉「…///」ソワソワ
弟「見たいなぁ~」
姉「ち、ちょっとだけだぞ…」スッ
弟「おぉ…これは」
姉「…///」ソワソワ
弟(めっちゃ加工してる)
姉「……///」チラチラ
弟(ダレダコレ…あ、カラコンまでしてるんだ)
姉「………///」ドキドキ
弟(バインバイン過ぎでしょ。別キャラじゃないの?)
弟(でも…まぁ)
姉「どっどうだ…?」
弟「かわいいと思う」
姉「!」パァッ
姉「どっどれ!?」ズイ
姉「どの画像が、かっかわいいと思う!?」
弟「えっと、これ」スッ
姉「あーそれ!?それはな!結構頑張って撮ったんだ!ライトの角度とかにも気を付けて…」ペラペラ
弟(めっちゃイキイキしてる…)
姉「他には!?他には!?」
弟「これとか…」
姉「あ、これー!?これはちょっと世界観崩し過ぎちゃったかなーって思うんだけどぉ!でもでも!これはこれでアリかなーって!!」
姉「てか谷間強調し過ぎちゃったかなーって!!」
姉「この画像が好きなのぉ!?もう☆弟キュンのお・ま・せ・さんっ!」ウリウリ
弟「…」
弟「当たってるんだけど」
弟(腹筋が)
姉「!」ハッ
姉「やっやらしいなっ///」パッ
姉「何なんだ!お前は!」
弟「何だって…」
弟(かわいい)
姉「ふん!」プイ
弟(あれ、僕は今何を思ったんだ)
姉「ま、まぁお前が画像をほめてくれたのは良いことだな!」
弟「…」
姉「ネットに上げてみるかな!私も!」
弟「!」
弟「だっダメだよ!」アセ
姉「え?」
弟「その、もっとかわいいのが撮れてからの方が人気が出ると思う…」
姉「そうか?」
姉「別に人気者にならなくてもいいんだが…」
弟「…姉ちゃんかわいいから、たぶん人気出ると思う」
弟「だから、その、もっとかわいいの撮ってから出した方がいいと思う」
弟(何言ってんだ僕は)
姉「…」ポカ-ン
弟「…」
姉「そ、そうか…?」
弟「…」コク
弟(何となく、姉ちゃんのコスプレ画像をネットに上げてほしくなかった)
弟(恥ずかしいとかじゃなくて)
弟(そうじゃなくて…)
弟(魔法少女の姉ちゃんを、他の誰にも見せたくないような)
弟(独り占めしたいような)
弟(そんな気がした)
弟(僕は頭がおかしいのか…?)
弟(…)モヤモヤ
また明日ー
〈学校〉
< キリ-ツ! キョ-ツケ! レ-イ!
弟(だるいなぁ。早く帰ってゲームしたい)
先生「はい。おはようございます」
< オハヨ-ゴザイマ-ス!
先生「今日はみんなに気を付けてほしい連絡事項があります」
先生「最近〇〇駅付近で変質者が出没しているそうです」
< エ-!! コワ-!!
< ヘンタイダ-
ザワザワ...
弟(〇〇駅って…姉ちゃんが学校行くとき使う駅だよな…)
先生「静かに!実際に女性が絡まれたりしているのは夜間ですが…」
先生「生徒の皆さんは遅い時間に一人で外を出歩いたりしないように。特に女子は注意して下さい」
先生「いいですね?」
< ハ-イ!
弟「…」
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
〈夕方・〇〇駅〉
弟「…」ソワソワ
弟(もう部活は終わってるよな)
弟「!姉ちゃ…」
姉友「それでねー…」
姉「ふふ…」
弟(あれ、誰かと一緒だ)
姉「ん?弟じゃないか」
弟「…おかえり」
姉友「えっ!弟くん!?」
姉「ああ」
弟「は、はじめまして」ペコ
姉友「こんばんは!」
姉「何してるんだ、こんなとこで」
弟「別に…」
姉「この辺は今危ないんだ。ウロウロしてちゃダメだぞ」
姉友「そうそう!変質者がいるんだって~」
弟「…知ってるよ」
姉「じゃあ家に帰ってなさい。姉ちゃんは夕飯の買い物してから帰るから」
弟「うん…」
姉友「!」ピ-ン
姉友「もしかして弟くん、お姉ちゃんを迎えに来てくれたの?」
姉「えっ」
弟「!」
姉「そうなのか?」
弟「!ちっ違うよ!」アセ
姉「違うと言ってるぞ?」
姉友「えぇ~ウソだぁ。お姉ちゃんの事待ってたんでしょ?」
姉「そうなのか?」
弟「ぅ…///」
姉友「弟くんやっさしーい!」
姉「なんで私なんか迎えに来るんだ?」キョトン
姉友(マジかこいつ)
弟(マジかこいつ)
姉友「にぶちんやなぁ!あんたはホンマに!」
姉「え」
姉友「最近この辺物騒やろ!?女の子に痴漢しよーとする変態が出るって先生が学校でも言っとったやろ!?」
姉「あ、ああ」
姉友「弟くんかて知っとるんやろ?」
弟「う、うん」
姉友「姉!あんたが心配やから弟くんが迎えに来てくれとんねん!!」
姉「へ?」
弟「…」
姉友「めっっっちゃ良い子やん!優しい子やん!お姉ちゃんの事好きなんやなぁ。うちの兄貴とはえらい違いやでほんまに」ナデナデ
弟「…///」カァァ
姉「友、口調が…」
姉友「!あらやだわ!アタシったら!おほほほほほほほほほ!!」
姉「別に私は変質者なんて怖くないぞ」
姉「弟、心配しなくて大丈夫だ」
弟「ソウデスカ...」
姉友「はぁ…せっかく弟くん来てくれたのに。ごめんね?お姉ちゃんがこんなんで」ナデナデ
弟「いえ、別に、気にしてません…」
姉友「ああ~かわいい~。優しいし良い子だし気遣いまで…」ナデナデナデナデ
姉友「なぁ~弟くん、うちにこーへん?」
弟「え」
姉友「姉、この子うちのバカ兄貴とトレードしようやぁ」ギュウ
弟「ぐえ」
姉「!こっこら!離れろ!」
姉友「え~」
姉友「じゃあ私はこの辺で!」
姉「ああ、また明日な」
姉友「送ってくれてありがとね!弟くんもまったね~!」バイバ-イ
弟「さようなら…」
姉「…」
弟「な、なんか面白い人だったね」
姉「そうだな」
テクテクテク...
姉「あの、な。弟」
弟「ん?」
姉「今日は、すまなかったな。わざわざ迎えに来てくれて」
弟「い、いいよ別に…」
姉「…」
弟「…」
テクテク...
姉「その」
弟「?」
姉「お前が、私のことを心配してくれるなんて思いもしなかったんだ」
弟「あぁ…」
弟(そりゃそうだろうなぁ)
姉「姉として、ちょっと複雑だけど…嬉しかったよ」
弟「…」
姉「ありがとうな」ニコ
弟「…っ///」カァ
弟「別にっ。迎えくらいいつだって行ってあげるよっ」プイ
姉「ほんとうか?」
弟「…うん」
姉「じゃあしばらく頼もうかな」クスクス
姉「弟、手」スッ
弟「ええ、やだよ恥ずかしい」
姉「手!」
弟「…はい」
ギュ
姉「♪」
弟「…」
テクテクテク...
弟(姉ちゃんと手をつないで帰るなんて、いつぶりだろう)
姉「マジ♪マジ♪マジカル♪」
ブンブン
弟(何か超機嫌いい)
弟(恥ずかしいからつないだ手を振り回さないでほしい)
姉「スーパー寄ってから帰るからなっ」
弟「うん」
姉「何が食べたい?」
弟「え、ハンバーグ…」
姉「よしっまかせろ」
姉「マジカル☆ガールが作ってやるからなっ」
弟(あ、今日コスプレするんだ)
ーーーーーー
ーーーー
ーー
姉「弟キュン☆おいしいっ?」キャルン
弟「そのキュンっていうのやめて…」
姉「うまいかどうかきいている」
弟「はい、おいしいです」
姉「ほんとー?よかったぁ♪」
姉「デザートに抹茶ういろうがあるからネッ☆楽しみにしてるんだゾ☆☆」
弟「またシブいチョイスを…」
弟「そういえばさ」モグモグ
姉「ん?なあに?弟キュン☆」キャピ
弟「…もうすぐ母さん帰ってくる時間だよ」
姉「…」
弟「…」
・・・
姉「あああーーーっ!!!」
弟「!」ビク
姉「わ、忘れていたっ!」
姉「どどどどうし、どうしよう」アタフタ
弟「落ち着いて…」
姉「母さんのことすっかり忘れてたにゃあ!!」
弟(ひどい)
姉「ぬっ脱がなきゃ!脱がなきゃだぞ☆」
姉「弟ー!手伝え!」
弟「はいはい」
< タダイマ-!
姉「!」
弟「!」
姉「はっはやくはやく!」ヌギヌギ
弟「もーいいじゃん」
姉「よくないっ!」
弟「母さんくらいバレたって…」
姉「イヤだっ!そんなの舌をかみきってしぬぅ!!」
弟「大げさな」
姉「あーん!チャックが下ろせないー」バタバタ
姉「やって!弟キュンやってー!」
弟「はいはい…」
弟「固っ!なにこのチャック固い!」ゴソゴソ
姉「やばいやばい!母さん来るって!」
姉「早くしろ!」
弟「無理だって!ていうか服のサイズ絶対合ってないだろ!」
姉「しょうがないだろ!これしかなかったんだから!」
弟「むちむち過ぎて脱ぐのも着るのも大変だろ!これ!」
姉「なんだとう!?私がデブだといいたいのかっ!?」
弟「そうじゃなくて、その、胸が…」
姉「やん☆弟キュンのスケベッ♪」クネッ
弟「手伝わないぞ!もう!」
ガチャ
母「ただいまー…」
弟「あ」
姉「あ」
母「…」
・・・
母「どちら様?」
姉「はじめまして」
姉「マジカル☆ガールと申します」キリッ
弟「ブッ!」ビチャ
弟(その後姉ちゃんは母さんにも爆笑された)
弟(舌をかんであの世にいこうとする姉ちゃんを止めるのに必死だった)
弟(母さんに写真撮りまくられてる姉ちゃんは死んだ魚の目をしていた)
弟(『かわいいから大丈夫だよ』とよくわからないフォローをしておいたけど…)
弟(ものすっごい落ち込んでたからしばらくはコスプレはしないかも)
弟(ちょっと残念…かな)
弟(よくわからないや)
また明日~
〈朝〉
弟「おはよー」
姉「おはよう」
弟「今日も部活?」
姉「ああ…」
弟(何か元気ないな)
弟「姉ちゃん、今日も迎えに行くよ」
姉「え。いや、そんな。悪いし」
弟「一緒に帰ろう?」
姉「…うん」
弟(姉ちゃんはちょっと元気になったみたいだった)
弟(そうだ。今日の夕飯は僕が作ってあげよう)
弟(カレーくらいなら作れるだろ)
弟(たぶん…)
弟(…)
弟(最近姉ちゃんの事考えてばっかだな)
〈夕方・〇〇駅〉
弟(遅いなぁ姉ちゃん)
弟(練習長引いてるのかな?たまに自主練して帰るからな)
弟(こういう時ケータイがないと不便だ)
弟「ふわぁ…ねむ…」
弟「…」
弟「トイレ…」テテッ
ーーーーー
ーーー
ー
< ジャアアアアア...
弟「ふー…」
「りんご」
弟「へ?」
「りんご。りんご。りんご」
弟(うわ、なんだこのオッサン…)
「りんご、いる?」
弟「…いりません」
弟(くさっ。逃げよ)
「…」
「ンンンンンンンンンンンン!!!!!」
ガバアッ!!
弟「わあああああああああ!!?」
姉(すっかり遅くなってしまった…)
姉(弟が迎えに来てくれる事をすっかり忘れて稽古に打ち込むなんて)
姉(姉失格だな、私は)ハァ
姉(お詫びにアイツの好きなものを今日も作ってやろう)
姉(マジカルガールは…)
姉(しばらくいいか)
姉(母さん、ツイッターにアップとかしてないだろうな)ムカムカ
姉「…」キョロキョロ
姉(弟がいない)
姉(帰ってしまったか…まぁこんな遅い時間になってしまったからな)
姉(飯は一人で食べているだろうか)
姉(私も何か買って帰るか…)
< ワアアアアアアアアア!!?
姉「!?」
姉「なんだっ!?」タッ
そこには大男がいた。
齢は三十半ばだろうか。
垢だらけのつぎはぎだらけの作業服を着ている。
その男が、閑散とした駅の便所で、弟を羽交い締めにしていた。
「帰命頂礼地蔵尊
此れはこの世のことならず
死出の山路の裾野なる」
男が地蔵和讃を唱えはじめた。
「西の河原の物語
聞くにつけても哀れなり
数も限りの荒砂の」
太い声が空気を搏っている。
足がすくむような恐怖の感情が姉を襲った。
弟が、私を呼んでいる。
助けを求めている。
「数も限りの荒砂の
上に集まる幼児が」
大男が経文を唱え続けている。
どうする。
助けを呼ぶか。
ここは駅員も不在の人っ子ひとりいない駅構内。
恐らく誰も来ない。
近隣の住宅地まで駆けて人を呼んでいる間に、弟が何をされるかわかったものではない。
戦うか。
大男は2m近くの身長である。
腕は丸太のように太い。
肩幅が異様に広く、胸が分厚い。
姉との体格差を考えると、勝算はまるでない。
弟の目に絶望が宿りはじめた。
その目を見た時、姉の口は意思とは関係なく言葉を発していた。
「私の弟を離せ、このクソ野郎」
大男の貌が赤くなり、徐々に浮腫み始めた。
瞬間、姉の身体は吹っ飛ばされていた。
便所の個室の扉を突き破り、洋式便器の角でしたたかに頭部を打ち付けた。
姉は唸りながら血と唾を吐いた。
倒れている姉の首に大男の両腕がかかった。
万力で締め上げるような力だった。
締められた瞬間に呼吸が止まった。
頸骨をへし折られてしまう。
姉は足をとばした。足は相手の股間に入った。
大男は呻き声を上げ、姉の首から手を離した。
姉は腰を落としたまま喘いだ。
首が曲がっている感じがする。頸骨にひびが入ったかもしれない。喉が痛い。うなじも痛い。
痛みは肩にまで拡がっていた。
一秒の何分の一かで反撃が遅れていたら、完全に骨をへし折られていたかもしれない。
不意に、怒りと荒々しい絶望感が姉を襲った。
もし、いま闘わなければ、私の弟は助からない。
この変質者に襲われ、心に傷を負い、最悪の生涯を送ることになろう。
そんな事は、決して許されない。
負けられない、という意志が、かつてない切実さで姉の意識の最前線におどりでた。
姉は頭をふり、呻き声をあげ、ゆっくりと立ち上がった。
大男が一歩踏み出してきた。
姉は両腕をだらりとたれ、顎をつきだし、夜店の殴られ人形のように呆然とした様子を装って立った。
大男はゆっくりと狙いをつけ、野球の投手がモーションをおこすよう片足を高く上げて上体をのけぞり、腕をいっぱいに後ろへひき、そして襲いかかってきた。
姉は頭をさげ腰をひくと、大男に向かって牛のように猛然と飛び込んだ。
襲いかかった大男の喉に、姉は正拳突きを叩き込んだ。
大男は、沈黙して崩れ落ちた。
また明日~
姉「はあ…はあ…」
弟「姉ちゃん!」タッ
姉「来るなっ!!」
弟「!」
姉「まだだ…まだ死んでないっ!!」
弟「!?」
「コヒュ-...コヒュ-...」
姉「かすかに息をしている」
弟「こ、ころすの!?」
姉「ああ、こいつはころす」
姉「起き上がってくる。さっき倒せたのは半分まぐれみたいなものだ」
弟「何もころさなくても…」
姉「うるさいっ!!」
弟「!」ビク
姉「しんでもいい奴なんてこの世には腐るほどいるんだ…ころさなくちゃころさなくちゃころさなくちゃ…私がやらなくちゃ…」ブツブツ
弟「姉ちゃん!」
姉「そうだこんなやつ生きてる価値なんてない私の大切な最も大切なものを奪おうとしたこいつに生きてる価値なんかない私が今ここでやらなければ今後同じことをし続けるだろう私にはこいつの命を奪う権利がある大丈夫だ正当防衛だ私は弟を守らなくちゃいけないんだ」ブツブツ
姉「首のっ骨っ折ればっ」ハァッハァッ
弟「姉ちゃんっ!」
姉「折ればっ!折ればっ!おれれれれれ」ハァッハァッ
弟「マジカル☆ガールはそんな事しないよっ!!」
姉「!!!」
姉「…そうだっけ」
弟「そうだよ」
姉「…」
弟「…」
姉「はやぁ」ポテ
弟「姉ちゃん!」
姉「けいさつ…きゅうきゅうしゃ…」
弟「うん!うん!ケータイ借りるね!」
姉「こわかったあ…」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
弟(姉ちゃんは入院した)
弟(首の骨にヒビが入ってるらしい)
弟(歯も一本抜けちゃった…)
弟(自分の帰りが遅かったことをとても後悔していた)
弟(僕の方こそ姉ちゃんに謝りたかったのに、お前は謝るなと逆に怒られてしまった)
弟(いつもは気丈な姉ちゃんが、怖い思いをさせてごめんね、と目に涙を溜めて僕に頭を下げた時は心臓が止まるかと思った)
弟(入院生活はヒマでしょうがないそうだ)
弟(身を呈して僕を救ってくれた姉ちゃんに、何かできることはないかな…)
弟(僕にできることなら何でもしてあげたい)
弟(僕に何が…)
弟(…)
〈病院〉
姉「ヒマだ」ズ-ン
姉友「まーたそんな事言ってー。私が来てあげてるじゃん?」
姉「体を動かしたいんだ」
姉友「ダーメ!」
姉「もう何日も稽古をしていない。このままでは…」
姉友「このままでは?」
姉「また何かあった時弟を守れない…」
姉友「…」
姉友「弟くんなら大丈夫だって!」
姉「あああ…今あいつ、どこにいるんだろう?学校は終わってるよな…真っ直ぐ帰ってるのか…?」
姉友「随分心配性になっちゃったわねー」
姉友(まぁ無理もないか…)
姉「あいつの身に何かあれば私は、私は…」
姉友「あんたはとりあえず体を治しなさいな!弟くんだって今頃あんたの事心配して…」
< トントン!
姉友「おや、誰かな?」
姉「…弟か?」
ガチャッ
弟「マジマジ☆マジカル☆きらりんりん♪♪」
弟「マジカル☆ガール!参☆上♪」キャルンッ
姉友「」
姉「」
弟「ってわあああああああああ!?」
弟「なんで友さんもいるのっ?///」
姉「なんでって…」
姉友「お見舞いに…」
弟「あああ…」ヘタヘタ
弟「もうダメだ、しのう…」
姉「待て待て。写真を撮ってからだ」スッ
姉友「弟くん。なんでそんなコスプレ…」
姉友「!」ピ-ン
姉友「わかったで!!」
姉友「姉!!あんた実はマジカル☆ガール(日曜朝8:30からテレビ朝日で放送中の女児と大きなお友達に大人気のアニメーション番組)の大ファンやな!!」ビシ
姉「ななな何をバカなっ」ギクッ
姉友「日頃からテレビの前でマジカル☆ガールがんばえ~!とかやっとるんやろ!!」
姉「っ!!」ギクギクッ
姉友「それを見た心優しい弟くんが、入院中ヒマしてるあんたを元気づけるために身体をはってレッツコスプレ!!」
姉友「そーいうわけやな!?」ビシッ
弟「あ、いやまぁ、概ねその通りっす」
姉「違う!私はマジカル☆ガール(現在放映中のシリーズで14作目)なんて…」
姉友「ウチの目はごまかせへんでぇ!!工藤!!」
姉「あああああああああ!!!」
姉「ううう…そうなんだ。私は高校3年生にして女児向けアニメが大好きなダメなお姉ちゃんなんだ…」ガク
姉友「まま、ええわ。そんなんどうでも」
姉「…」
姉友「問題は…」クルッ
弟「?」
姉友「あーん!!かわいいーーっ!!」ギュッ
弟「!?!?!?」
姉「なっ!?」
姉友「弟くんかわええなぁ~ほんまええ子やしこんな女の子のコスプレが似合うなんて反則やでぇ~」スリスリ
弟「あの、いや、僕は…///」
姉「やめろっ!マジカル☆ガール弟から離れろ!!」
姉友「ガールなのに弟とは…反則や!最高!!」スリスリスリ
姉「ああああああああ!!!!」
姉「私もっ!私もスリスリしたい!!」パタパタ
姉友「あんたは大人しくしときっ!」
姉友「なあ!弟くんさっきの!さっきのもっかいやってーや!!」
弟「え…」
姉友「決め台詞やって!!」
弟「ま、まじまじ…まじかる…」
姉友「…」ワクワク
弟「まじ…まじ…」
姉友「…」ワクワクドキドキ
弟「…」
姉「…」
姉友「…」
弟「マジマジ☆マジカル☆きらりんりん♪♪」
弟「マジカル☆ガール!参☆上♪」キャルル-ン
姉友「エクセレエエエエントォ!!!!」
ガバァッ!!
姉友「ファンタスティーーック!!」チュッチュッ
姉「あああああああああああ!!!!」
姉「私も!!私もチュッチュするぅ!!」バタバタ
弟「(死んだ魚の目)」
おわり
ありがとうございました。
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