喜多見柚「雨宿り」 (31)


ジリジリ


P「…暑いな」

P「(今日に限ってみると、梅雨も明けたんじゃないかって日和だ…)」

P「ぐへぇ」

楓「…大丈夫ですか?」ピト

ヒヤッ

P「うおう!」

楓「あ、ごめんなさい…そんなにびっくりされるとは思わなくて」クス

P「あ、い、いえ…こちらこそ」

P「……でもわざとでしょ?」

楓「もちろん♪」ニコ

P「…」ハア

楓「はい。水分補給は、ちゃんとしなきゃだめですよー?」ハイ

P「……」

P「…ありがとう、ございます」

楓「いえ」


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パキ


P「…」ゴク

楓「…」コクコク

P「…」プハ

楓「…」

楓「…ねっちゅー症には、ね、注意しよー…」ボソ

P「」ブッ

楓「!」


楓「い、いまの面白かったですか?」キラキラ

P「……いや…ち、ちょっと強引ですかね…」ボタボタ

楓「そうですかー…」シュン

楓「あ、えと…」ゴソ

楓「ハンカチ。どうぞ」

P「あ、どうも…」フキフキ

P「…」

楓「? どうかなさいましたか?」

P「…いえ」

P「(楓さんに笑わされて、楓さんにハンカチを借りるのって——)」

P「(なぜか物凄く釈然としない!)」

楓「?」キョトン


カンカン…


P「楓さんは——今日はレッスンでしたね」

楓「はい。まだ時間があるので…」ガサ

楓「お弁当買って来たんです。しばらくのんびりしてようかなって」

P「そうですか」


ガチャ


P「おはようございまーす」

楓「おはようございます」

P「……、!?」

小梅「あっ……お、おはよう…ございます」


P「……うん、おはよう。えっと…小梅さん?」

小梅「? な、なん…ですか?」サン?


「……」「……」「……」「……」


P「…この大量のてるてる坊主は一体…?」

小梅「あ、えと…こ、これは…」

P「なにか呼ぶところですか?」

小梅「? な、なんで…ぷ、プロデューサーさん、さっきから敬語なんです…?」

P「べつに怖くなんてないからな」

楓「わー。どれもちゃんとデザインがあるんですねー」スゴイ

P「! か、楓さん! 迂闊に近寄るとまずいですよ!」

小梅「??」


柚「?」

柚「あ! Pサンおはよー」フリフリ

P「お、柚か。おはよう」

柚「うん」グリグリ

P「…」

柚「?」キュ

P「……まさか、この大量のてるてる坊主は——柚が作ったのか?」

柚「う? うん。小梅チャンに手伝ってもらったんだー」

小梅「て、……て、手伝い、ました」フンス


「……」「……」「……」「……」


P「…そうですか」

柚「うんっ」ニパッ

P「(笑顔が眩しい)」


P「……えっと、まあ」

P「ほどほどにな」ハハ…

柚「はーい」

小梅「は、はい」

仁奈「仁奈を呼びやがりましたか!?」

P「お、おはよう仁奈」

仁奈「はいっ。おはようごぜーます!」ニパッ

楓「ぷっ」

P「そこー許可なく笑うのは禁止ですよー」

仁奈「??」


「……」「……」「……」「……」


ヒョイ


P「…これは……ずいぶん裾の長い服を来たてるてる坊主だな」

小梅「あ、そ、それ……あ、あの子が手伝ってくれた——やつ、です…」

P「……」ゾゾッ

P「ほ、ほぉお」

柚「Pサン震えてるよ? エアコン効き過ぎかなー」

P「お、おぉ…」

小梅「?」


小梅「……昔…お世話になった、人、だって…」

柚「そうなんだー」ヘー

P「(なぜ思い出の人を模したてるてる坊主を作ろうと思ったんだ、その子は)」ワカラン

小梅「え、えへへ……あの子も、けっこう…手伝って、くれました…」

P「……」チラ


「……」「……」「……」「……」


P「…」

P「(いよいよ、最初に言った台詞が妙な現実味を…)」ブル

柚「Pサントイレ行くー?」

P「余計なお世話だい」

柚「てへ?」


柚「でーきた!」モサ

P「…」

P「なあ」

柚「ん?」

P「今日はいい天気だけど——明日も晴れて欲しいとか、そういうことか?」

柚「…あー」

柚「ううん。違う違う」フルフル

P「?」


柚「これはこうするんだー」クル

P「?」


「……」「……」「……」「……」


P「…? ひっくり返すのか」

柚「うん。とーりつさせておくと、逆に雨が降るようになるんだって!」

P「とーりつ?」

小梅「と、…倒立、ですね。……そ、そんな風に、言われている地方も…あ、あるみたい、です」ハイ

P「ああ、倒立ね。なるほど」

柚「うん」

P「……」

柚「…」ニコニコ

P「え? 雨降って欲しいの?」

柚「? うん、そうだよ?」

P「……あ、そう」

柚「うんっ」


P「……まあたしかに」

P「…少しくら雨が降った方が、涼しいかもしれないけど…」

柚「うー…そういうことじゃないカモ…」

P「あれ?」

柚「もう。Pサンってば分かってないなー。分かってないったら分かってないよー」ペチペチ

P「いたい」

柚「てへ♪」ペチペチ

P「(…うちのアイドルは俺の頭を叩くのが好きだな)」コドモカ

楓「…」ペチペチ

P「楓さん。せめて真顔はやめてください」

楓「…」ニヤ

P「(こわっ)」


柚「♪」ペチペチ

楓「♪」ペチペチ

小梅「……」

P「…どうでもいいけど」

小梅「?」

P「小梅は叩かないんだな。届くようにしゃがんでやろうか」

比奈「どんな配慮ッスか」

P「いたのか比奈」オハヨウ

比奈「いま来たところでス」ウス

小梅「あ、…えへ。ぷ、プロデューサーさん…あ、ありがとう。でも、大丈夫」

P「そうか?」

小梅「う、うん」コクン

小梅「…だ、だって……わ、私の代わりに、あの子が……」//

P「……」

P「(なぜそこで照れる)」

比奈「プロデューサー」

P「うむ」

比奈「いままでお世話になりました」

P「いやいや! 冗談でもやめて!」

小梅「??」


比奈「てるてる坊主ッスか」

P「ああ」

柚「見てみてー。あれ、アタシが作ったPサン坊主!」ピッ

P「……意外と似てる。でもその呼び方はやめて」

比奈「スーツを模してあるだけにも見えまスけど」

柚「PサンはそれだけでPサンだって分かるからすごいよね!」

P「ちょっと傷つくぞ、それ」グサ

P「…? あれはキノコの形…?」

P「……」ヒョイ モゾ…

P「…ガチでキノコ入ってんじゃねーか!」バシッ

輝子「あ、あ…き、キノコをいじめないで…」

P「お前もいたのか!」

輝子「い、いましたよー。…どうせぼっちですけど…」フヒ

輝子「フヒ、さ、さり気ないキノコアピールだよ……こ、これでプロデューサーの脳裏にはキノコの残像が刷り込まれ…」ブツブツ

P「こえぇよ」

比奈「じゃ、私らも一緒にてるてるキノコ作るッス」

輝子「……」

比奈「う、うん」コクン

P「てるてるキノコて」


シュッ


楓「プロデューサーさんも、お一つどうですか?」

P「…………」

楓「?」

比奈「まあたしかに、そんな台詞と一緒に、楓さんティッシュを渡されるのはある意味——」

P「それ以上は言わんでいい」

比奈「ッス」

楓「??」

P「…そうですね。じゃあ一個、俺も作ろうかな」

楓「はい」ニコ



柚「よーし」パンパン

柚「あーしたあーめになーれ♪」

P「でもやっぱお願いするのは雨なんだ」グリグリ

柚「てへ!」

P「(なんか勢いでごまかされた)」







ザー…


P「……」

P「…お、恐るべしあの子……そして、てるてるキノコ…。まさか本当に雨になるとは…」

P「…まあ、梅雨だしな。そりゃ雨くらい、いくらでも降るか…」ハア

P「さて。じゃあ傘持ってと」


バシャバシャ


P「……まあ、涼しげなのは悪くないな」

柚「そうだね」

P「……」

P「びっくりした」

柚「えー。そうでもなさそうだけど」ケラケラ

P「いつからそこに?」

柚「さー?」

P「…傘は?」

柚「ん? 持ってない。パーカー着てるし、大丈夫かなって!」

P「大丈夫じゃないだろ」

柚「…。てへ」

P「……ったく」


ギュ


柚「…」

P「梅雨なんだから。傘はちゃんと持ち歩くんだぞ」

柚「…うん。ごめんなさい」

P「いや、べつに怒ってるわけじゃないけど」



ギュ


P「…」

柚「くっつかないと濡れちゃうからね」

P「そうだな」

柚「うん」


ザー…


P「…ちょっと…雨が弱くなるまで、そこで雨宿りして行くか」

柚「あ、うん。いいと思う」

P「そっか」

柚「うん」


ザアアアアア…


柚「ふにゃー。びしょびしょだよー…」フルフル

P「猫みたいだな。ほら、タオル」ポイ

柚「ありがとっ」ワシワシ

柚「…ん」ブル

P「寒いか?」

柚「…ん、ちょっと…」

P「俺の上着も濡れちゃってるからな…」

柚「また、くっつけばいいと思う」

P「…そうだな」

柚「うん」


ザアアアアア…


P「……雨、強いなぁ」

柚「強いねぇ」

P「梅雨だな」

柚「梅雨だね」

P「…この前楓さんとも、こんな風に雨宿りしたよ」

柚「ほう」

P「へ?」

柚「Pサン。女の子といるときに、べつの女の子の話はしちゃだめだよ! 習わなかったの?」ペチ

P「いて」

P「…すいません」

柚「えへへ。いいよー」

柚「…いまは、アタシとお話してくれてるし」

P「うん」


ザアアアアア…


P「…」

柚「…」

P「…」

柚「…雨ってさ」

P「ん?」

柚「…黙ってても、話してなくても、音があって……静かにならなくて、いいよね」

柚「アタシの代わりに喋ってくれてるみたいで」

P「……そうかもな」

P「…なあ」

柚「ん?」

P「…すごく柚らしくない台詞だと思ったって言ったら、怒るか?」

柚「…へへ。ううん。自覚あるし」

P「はは。そっか」

柚「うん」


柚「でも、ま」

P「ん?」

柚「たまには、こんなアタシもいいんじゃないかと」

柚「…ね?」ニコ

P「…うん。いいと思う」

柚「…そっか。ありがと」

P「いえいえ」

柚「……」エヘヘ…


サアアア…


P「そろそろ弱くなって来たな…行くか」

柚「あ、うん」

柚「…」

P「柚?」

柚「…Pサン、ごめんね…」ボソ

P「…」

柚「…あ、えと…な、なんでもないよ! 行こっか!」パッ

P「…」

P「うん」


P「なあ柚」

柚「うん?」

ポン

柚「わぷ」

P「…また来年、一緒に雨宿りでもしようか」

柚「…」

柚「…へへ。なにその約束…」クス

柚「……でも、うん。喜んで!」

P「おう」

柚「てへへ。…ありがとーPサン」ニヘラ

P「どういたしまして」

書き溜めがあるとはいえ物凄くさくさく投下しちゃいました。

終わりです。
読んでくれた方には感謝です。ありがとうございました。

>>28 いつもどうもです。
今回は大勢でしたが、ありがとうございました。

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